解析概論/第9章/II

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目次

[編集] II.Lebesgue の測度および積分

解析概論/第9章/Euclid空間 区間の体積 解析概論/第9章/Lebesgue測度論 解析概論/第9章/零集合 解析概論/第9章/開集合・閉集合 解析概論/第9章/Borel集合 解析概論/第9章/集合の測度としての積分

[編集] 119.累次積分

前節の方法を応用して,高次元積分を低次元積分のくりかえし(累次積分)に帰せしめることができる.すなわち次の定理が成り立つ.

定理 110.
Fubini の定理] R^n における L 函数 f(x,y)\,(x\in R^p,y\in R^q,p+q=n) に関して,積分
(1)
J=\int_{R^n}f(x,y)d\mu
が確定であるとする.然らば[* 1]
(2)
J=\int_{R^p}\left(\int_{R^q}f(x,y)(dy)\right)(dx).

定理の意味は次の通りである.積分 (1) が確定(または有限)ならば,ほとんどすべての x に関して,f(x,y)R^q における L 函数で,積分 \textstyle\int_{R^q}f(x,y)(dy) は,ほとんどすべての x に対して確定(または有限)で,R^p における L 函数となる.そうして (2) の右辺の積分が確定(または有限)で,(2) が成り立つというのである.

[証]
(1º)
f(x,y)\geqq0 の場合.
そのとき,f(x,y) から生ずる縦線集合

  E=E\{(x,y,z);x\in R^p,y\in R^q,0\leqq z\leqq f(x,y)\}
R^{n+1} の L 集合で,(1)JE の測度である(定理 109).すなわち
J=\mu E,
故に.(§118,(23)
(3)
J=\int_{R^p}mE(x)\,(dx).
ここで E の断面 E(x)(y,z) 空間における縦線集合,m 派その空間における L 測度である.前に述べたように,mE(x) は或る零集合に属する x に対して無意味のこともあろうが,その零集合を無視しても,(3) の右辺の積分の値には影響はないのである. さて,E(x) が L 集合なる x に対して,f(x,y)R^q における L 函数であり,
(4)
mE(x)=\int_{R^q}f(x,y)\,(dy).
故に (3)(4) から (2) が得られる. (1) の積分が有限のときには,(3) によって,(4) の積分は,ほとんどすべての x に対して有限である.
(2º)
f(x,y) が正負の値を取る場合.
f^+f^- とを別々に考察すれば,1º.によって
(5)

  \int_{R^n}f^{\pm}(x,y)d\mu=\int_{R^p}\left(\int_{R^q}f^{\pm}(x,y)(dy)\right)(dx)
を得る.(1) の積分が確定なら,(5) の左辺の積分の一方(少くとも)は有限で,その差が (1) の積分に等しい.また,(5) の右辺の内側の二つの積分は,1º.によって,或る零集合に属しない x に対しては,ともに L 函数で,そのうちの一方は有限である.故に
(6)

  \int_{R^q}f(x,y)\,(dy)=\int_{R^q}f^+(x,y)\,(dy)-\int_{R^q}f^-(x,y)\,(dy)
はほとんどすべての x に対して確定である(無意味 \infty-\infty でない).(6) の両辺を空間 R^p において積分すれば,(5) の右辺の差が,(2) の積分に等しいことがわかる.
(証終)

累次積分における積分の順序が自由にできるところにも,Lebesgue 積分の優秀性が認められるであろう.

次の定理は,定理 110 からの直接の帰結であるが,定理 110 とあわせて,積分の順序の変更に関し,実用上,有効である.

定理 111.
R^n\,(n=p+q) における L 函数 f(x,y) に関し,累次積分

  I=\int_{R^p}\left(\int_{R^q}|f(x,y)|(dy)\right)(dx)
が有限ならば,f(x,y)R^n における積分は有限である.

  1. (dx),(dy)x 空間 R^py 空間 R^q における積分を示唆する.

[編集] 120.Riemann 積分との比較

Lebesgue 積分と Riemann 積分との関係を考察するに当って,解説を透明にするために,予備的の説明から始める.

R^n の有界なる集合 E において,有界なる任意の函数 f(x) が与えられているとする.点 x の近傍 U(すなわち x を内点とする開集合)と E との共通部分における f(x) の値の上限 \textstyle \sup_{x\in U}f(x)[* 1] U が縮小するとき,減少(不増大)するであろう.すべての U に関するそれの下限


  \bar{f}(x)=\inf_U(\sup_{x\in U}f(x))

は点 x において確定する.xE 内を動くとき,\bar{f}(x)E における函数である.大小の関係を逆にすれば,同様にして函数


  \underline{f\!}\,(x)=\sup_U(\inf_{x\in U}f(x))

が確定する.上記において任意の U の代りに,単調に x に収束する開区間の列 W_1\supset W_2\supset\cdots\supset W_n\supset\cdots を取ってもよい.任意の U の内に或る W_n が含まれ,また任意の W_n の内に或る U が含まれているから,それは明らかであろう.さて

\underline{f\!}\,(x)\leqq f(x)\leqq \bar{f}(x)

で,点 x_0 において f(x) が連続なることは,すなわち

\underline{f\!}\,(x_0)=f(x_0)=\bar{f}(x_0)

である.もしも等号が一方のみ成り立つときは f(x)x において半連続という(f=\bar{f} ならば上半連続,f=\underline{f\!} ならば下半連続). 今 E の全局において,一律に \bar{f}(x),\underline{f\!}\,(x) を定めるために §116 に述べたような基準格子系列 \{\mathrm{G}^{(n)}\} を取るならば,各点 x は格子 \mathrm{G}^{(n)} において一定の(半開)区間 w^{(n)} に属する.そこで


  M^{(n)}(x)=\sup_{x\in w^{(n)}}f(x),\quad
  m^{(n)}(x)=\inf_{x\in w^{(n)}}f(x)

と置けば[* 2]M^{(n)}(x),m^{(n)}(x) は階段的なる B 函数で,それらは,それぞれ,一定の x に関し,n と共に単調(広義)に減少または増大する.従って


  M(x)=\lim_{n\to\infty}M^{(n)}(x),\quad
  m(x)=\lim_{n\to\infty}m^{(n)}(x)

とすれば,M(x),m(x) も B 函数である(§107). さて M(x),m(x)\bar{f}(x),\underline{f\!}\,(x) との関係はどうであるか.もしも点 x が格子系列の各 \mathrm{G}^{(n)} において,区間 w^{(n)} の内点であるならば(上記の W_nw^{(n)} の開核を代用してもよいから)


  M(x)=\bar{f}(x),\quad m(x)=\underline{f\!}\,(x)

であるが,もしも x が或る \mathrm{G}^{(n)} において,従って \mathrm{G}^{(m)}\,(m\geqq n) において,区間 w^{(n)} の境界上(格子線上)にあるならば,(Uw^{(n)} に限定されるために)


  M(x)\leqq \bar{f}(x),\quad m(x)\geqq \underline{f\!}\,(x)

ではあるが,そのような除外点(すなわちすべての格子線上の点)は零集合(B 系)だから,

(1)

  M(x)\simeq \bar{f}(x),\quad m(x)\simeq \underline{f\!}\,(x).

従って \bar{f}(x),\underline{f\!}\,(x) は B 函数である[* 3]

以上を前置きとして,Riemann 積分の考察に移る.§90 に連絡して有界なる f(x) が有界なる区間 K において与えられているとする.§90 で述べたように,分割 \Delta は基準格子系列 \mathrm{G}^{(n)} によるものに限定してよいから,s_\Delta,S_\Delta の代りに s^{(n)},S^{(n)} と書く.そうすれば,それらは階段函数の L 積分として,次のように表わされる.


  S^{(n)}=\int_K M^{(n)}(x)dm,\quad s^{(n)}=\int_K m^{(n)}(x)dm,

従って n\to\infty の極限へ行って(定理 90),


  S=\int_K M(x)\,dm,\quad s=\int_K m(x)\,dm.

従って (1) から


  S=\int_K \bar{f}(x)\,dm,\quad s=\int_K \underline{f\!}\,(x)\,dm.

このように,Darboux の和 S,s は L 積分として表わされる.そこで,Riemann 積分可能の条件 S=s

\int_K(\bar{f}(x)-\underline{f\!}\,(x))dm=0

であるが,\bar{f}(x)\geqq f(x)\geqq\underline{f\!}\,(x) だから,これは K において

\bar{f}(x)\simeq f(x)\simeq \underline{f\!}\,(x)

ということに帰する(§115).換言すれば:

定理 112.
有界なる区間 K において有界なる f(x)Riemann 積分が可能なるために必要かつ十分なる条件は,K における f(x) の不連続点が零集合をなることである.その場合 Riemann 積分は Lebesgue 積分に等しい. この意味において Lebesgue 積分は Riemann 積分の拡張である.
零集合は区間を含みえない.Riemann 積分可能なる函数は,任意の区間内に連続点を有することを 96 頁で述べたが,それは当然である.Riemann 積分可能なる函数は,ほとんど各所連続である.
[注意] 
上記,Riemann 積分は本来の意味でいう.いわゆる広義積分で絶対収束をしないもの(一次元)は §109 の意身で \infty-\infty の形になって Lebesgue 積分としては成り立たない(例えば \textstyle\int_0^\infty \frac{\sin x}x dx=\infty-\infty).それを除けば,絶対収束の場合,広義の Riemann 積分は Lebesgue 積分である(§94 および定理 88 参照).

  1. \sup の下の x\in Ux\in U\cap E の意.以下同様.
  2. M^{(n)}(x) は,x\in w^{(n)} のとき t\in[w^{(n)}] に関する f(t)\sup の意.m^{(n)}(x) も同様.
  3. 格子系列の原点を動かしてみればわかる.

[編集] 121.Stieltjes 積分

Euclid 空間 R^n において,区間の函数 \mu(w)\geqq 0 が加法的であるとする.そのとき,\mu(w) を区間の体積 m(w) に代用して,Lebesgue 式に,それをひとつの σ 系の集合 e にまで拡張して,\mu(e) を完全に加法的にすることができるならば,その \mu(e)§108 の意味の測度として,その測度に基づいて,積分論を組み立てることができるであろう.或る条件の下において,それは実際可能である.そのようにして定義される積分を Lebesgue-Stieltjes 積分という.

今一次元空間 R^1 に関して,その大要を述べる.

Stieltjes は初め一つの変数 x の有界変動の函数 \varphi(x) を取って Riemann 式に積分を定義した.すなわち区間 [a,b] において,積分されるべき函数を f(x) とするとき,区間の分割
(\Delta)

  a=x_0<x_1<\cdots<x_{n-1}<x_n=b\qquad \max(x_i-x_{i-1})=\delta
に対応して作られる和

  \sum_{i=1}^n f(\xi_i)(\varphi(x_i)-\varphi(x_{i-1})),
  \quad x_{i-1}\leqq \xi_i\leqq x_i,
が,\delta\to 0 のとき,一定の極限値を有するならば,それを \varphi(x) に関する積分
(1)
\int_a^b f(x)d\varphi(x)
としたのである.このような意味での積分 (1) を,今は Riemann-Stieltjes 積分という.本来の Riemann 積分は \varphi(x)=x になる特別の場合である.最も簡単な場合として,f(x) を連続とすれば (1) が可能であることは,Riemann 積分の場合と全く同様である(これを §39 で述べた).

今,有界変動の函数 \varphi(x) から,R^1 において区間の加法的函数を導くために,まず (-\infty,+\infty) において \varphi(x) を有界で単調増大とする.\varphi(x) が区間 [a,b] においてのみ与えられているときには,x<a なるとき \varphi(x)=\varphi(a)x>b なるとき \varphi(x)=\varphi(b) として,\varphi(x) の定義を (-\infty,+\infty) に拡張する.そうして開区間 (x_1,x_2) および一点 x から成る集合 [x] に関して,区間 w の函数 \mu(w) を次のように定義する.

(2)

  w=(x_1,x_2)\colon\quad\mu(w)=\varphi(x_2-0)-\varphi(x_1+0),
(3)

  w=[x]\colon\qquad\mu(w)=\varphi(x+0)-\varphi(x-0).

任意の区間は開区間と一点からなる集合との単純和に分割されるから,その区間における \mu(w) を加法的に定義することができる.例えば閉区間

w=[x_1,x_2]=[x_1]+(x_1,x_2)+[x_2]

に関しては

\begin{align} \mu(w) 
 &=(\varphi(x_1+0)-\varphi(x_1-0))+(\varphi(x_2-0)-\varphi(x_1+0))+(\varphi(x_2+0)-\varphi(x_2-0))\\
 &=\varphi(x_2+0)-\varphi(x_1-0).
\end{align}

このように定義された \mu(w) は区間に関して加法的である.例えば (x_1,x_2) の内に分点 x を取れば(x_1<x<x_2),

\begin{align}
  (x_1,x_2)&=(x_1,x)+[x]+(x,x_2),\\
  \mu(x_1,x_2)&=(\varphi(x-0)-\varphi(x_1+0))+(\varphi(x+0)-\varphi(x-0))+(\varphi(x_2-0)-\varphi(x+0))\\
  &=\varphi(x_2-0)-\varphi(x_1+0)
\end{align}

で,ちょうど (2) と合う. これは,しかしながら,弱い意味の加法性である.実際は \mu(w) は完全に加法的である.(3) からみえるように,w=[x] なるとき,x\varphi(x) の連続点ならば \varphi(w)=0 だから,加法に関しては考慮を要しない.\varphi(x) の不連続点は無数にあっても,可算であるが[* 1],もしも w が開区間およびそれらの点の列に分割されて,

w=\sum_{i=1}^\infty w_i ならば \mu(w)=\sum_{i=1}^\infty \mu(w_i).

これは §113 と全く同様にして証明される.

よって §114 と同様の方法によって,R^1 において σ 系を成す集合 e の一類にまで,mu(e) を拡張することができる.その σ 系は,少くとも,すべての B 集合を含むであろう.

この \mu(e) を測度として定義されるのが,Lebesgue-Stieltjes 積分である.特に積分範囲が区間 [a,b] であるときは,積分を

\int_a^b f(x)\,d\varphi

と書く.記号は (1) と同じであるが,積分が Lebesgue 式か,Riemann 式かを明示することが必要である. 一般の有界変動の函数 \varphi(x) は二つの増大函数の差: \varphi(x)=\varphi_1(x)-\varphi_2(x) として表わされる.その場合には,定義として


  \int_e f(x)\,d\varphi=\int_e f(x)\,d\varphi_1 -\int_e f(x)\,d\varphi_2

とするのである.


  1. 単調増大函数 \varphi(x) の不連続点を,そこでの飛びが \bigl[\tfrac{1}{n+1},\tfrac{1}{n}\bigr)(n=0,1,2,\ldots) の範囲にあるものに分けて算えればよい.
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