解析概論/第9章/I
目次 |
[編集] I.概括論
[編集] 105.集合算
我々の目標は Euclid 空間の点集合にあるのだけれども,本節(§105-112)の概括論においては,まず抽象的に任意の集合を考察する.任意といっても,一つの集合
を取って,それの部分集合のみを考察の対象とする.
以下,集合
と,その元
とを,一つの空間 (
) と,その空間の点 (
) とに当てはめて考えるならば,わかりよいだろう.もっとも,
をただちに一つの(抽象的)空間,
をその空間の点と称することに,何等の差し障りもない[* 1].
が集合
の元であることを
と書く.
の否定を
と書く.
が
の部分集合なること(
ならば
)を
と書き,
は
に含まれるという.
かつ
のとき,集合
と
とは相等しいという:記号
.従って
なる場合にも
である.
のどれかに属する元の全部をもって,一つの集合を作ることができる.それを
の合併といい,
と書く.集合の合併は交換律および結合律に従う.
集合が有限個または可算個あるときには,それらに番号をつけて
と書いて,その全体を集合の列
という.この列の集合の合併を
(あるいは略して
)と書くが,番号のつけ方は随意である.なかんずく,重要なのは
に共通の元がない場合で,そのとき
を単純列,またその合併を単純和[* 2]と省略して,特に記号
を用いる.
のどれにも属する元の全部をもって,一つの集合を作ることができる.それを
の共通部分または交わりといい,
(または積の形に
)と書く.集合列
の場合には
と書く.
に共通の元がないときは,交わりはないが,陳述の便宜上,交わりは空集合であるといい,数字
を流用して,それを
と書く.集合の積に関しても,交換律および結合律が成り立つ.
に属しない
の元全体は一つの集合を成す.それを
の余集合といい,それを
と書く[* 3]のが慣例であるが,本書ではおりおり簡明に
とも書く.
の各元
は,
か
か,どちらか一方に属する.すなわち
は
と同値である.もちろん,
.


ならば或る
に関して
.故に
はすべての
に関して
すなわち
を意味する.従って
を意味する.すなわち
と
とは互に余集合である.
に
を代用すれば,第二の等式を得る.
に属して,
に属しない元の全体を
と書く.従って



最後の等式の右辺は単純和である.
なるときは,
を
に対する
の余集合という.
が
に含まれるとき,
に対する
の余集合に関しても(1)は成り立つ(
に
を代用してもよいから).
これらは合併および共通部分の意味から,(2)のようにして導かれる.また(2)を適用して,一方の等式の両辺の余集合を作れば,他の等式が得られる.ファイル:図
集合列に関しても分配律は成り立つ.すなわち

を単純和
に修正することができる.例えば
とすればよい.
に関して,上極限
,下極限
および極限
を次のように定義する:

なるとき,それを
とする.
この定義からみえるように,
は
の順序には関係しない.すなわち
は無数の
に共通なる元の全体で,
は有限個を除いたほかの全ての
に共通な元の全体である(除かれる集合は元によって違いうる).故に
.
が増大列,すなわち
ならば,

が減少列,すなわち
ならば



の各元
に,一つの数
が対応するとき,
を
における点函数という.
特に
なるとき
,
(余集合)なるとき
なる函数
を
の定義函数という.逆に,
または
なる値のみをとる点函数
が
において与えられるならば,
なる点
の全部を
とすれば,
はすなわち
の定義函数で,また
は余集合
の定義函数である.
において,
の定義函数を
とすれば,


[編集] 106.加法的集合類(
系)
の部分集合の一類 M が次の条件に適合するとき, それを
系(または加法的集合類)といい
系 M に属する集合を M 集合系と略称する [* 1] .
- 1°.M集合の列
の合併はM集合である.すなわち
…) ならば
.- 2°.M集合の差はM集合である.すなわち
ならば
.特に,空集合は
として M に属する.
前節 (5),(6) によって,
なるとき,
も M 集合である.
M の中に最大の集合
があるとき(すなわち
ならば
),M を 閉じた
系 という.この場合には 2°を次の条件で置き換えてよい.
- 2'.M は
と同時に,
に対する
の余集合
を含む.
実際,
ならば
で,
.
の部分集合の任意の一組
があたえらるとき,
に属する集合から,列の合併および引算(差を作ること) によって,次から次へと週ずる集合の全体は,一つの
系を成すであろう.それは
を含む最小の
系(
から生ずる
系)である.
のすべての集合は一つの
系を成すが,それは
を含む.このように
を含む
系は確かに存在するから,
を含むすべての
系の共通部分は,すなわち
から生ずる
系である.
に属する集合列の合併として生ずる集合を一般的に
,またその交わりとして生ずる集合を
というように書けば,
またそのようにして,すでに生じた一組の
からさらに生ずる
は,みなこの
系に属する. (故にこの最小
系でも,ほとんど無際涯というべきで,いささか心もとない.すでにできている
系ならば安心である!)
- ↑ 類=class は論理学上の意味で言う.または通俗的に族(family),系(system) などとも言う.外延では,M は
の特殊の部分集合を元とする一つの集合(集合の集合)である. 故に
は ‘
は一つの M 集合である’ことを意味する.
は無限列に関して加法的になることを,また M は mesurable (後出) を示唆する.
[編集] 107.M 函数
σ 系
に属するある M 集合
において,点函数
が定義されているとする.すなわち
は集合
の元である:
そのとき,一つの実数
に関して,
なる
の全体の集合
は一般には必らずしも M 集合を成さないであろう.もしも,その集合
が各〻の実数
に関して M 集合ならば,
を M 函数と略称する.
これより後,或る指定された性質
を有する(または条件
に適合する)点
の全体の集合を
または 
と書く.例えば,上記 M 函数の定義においては,集合
を定義する条件
は

で,
が M 函数であるとは,すなわち,すべての実数
に関して

となることである.今ここでは集合
の元は
,ただしその
は
で
であるが,これらは当然として省略すれば,簡明に

さて,すべての実数
に関して

が M 集合なることは,同等なる条件である.――第一と第三と,また第二と第四とは
に対して互に余集合だから,もちろんだが,

だから,すべてが同等である.故に M 函数の定義において,(2) の四つの集合のうち,どれを取ってもよい.
が M 函数ならば,
は M 集合である.逆は成り立たない.
![]() |
なるとき |
![]() |
![]() |
| なるとき |
として,
を
の正の部分,負の部分という.すなわち
であるが,
が M 函数ならば,
も M 函数である.
に収束する単調減少の有理数列を
とすれば,
だから.次の定理は,証明の手段として,しばしば応用される.
は階段的なる M 函数の増大列[* 2]
の極限である.階段的なる函数とはその函数の取る相異なる値が有限個に限ること(値域が有限集合なること)をいう.
の値を十進数で書き表して,小数点の上下共に
位で打切って,それを
の値とすればよい.
は多くとも
この相異なる値を取る.すなわち階段的だから,それが M 函数であることをみるには,
のとる各〻の値
に関し
が M 集合であることを確かめればよいが,この集合は
に等しいから,よろしい.
は明白である.一定の M 集合
を共通の定義域として有する函数のみを考察するとき,次の諸定理が成り立つ.
が M 函数ならば,

ならば,
なる有理数
がある.よって

が M 函数ならば,
,(
は実数), (2º)
, (3º) 
,特に
に関しては明白.
だから,一般に M 函数の平方が M 函数であることを示せばよいが,
は,
ならば
,
ならば
,また
ならば,
だから,よろしい.
に関して

も M 函数である.
と置けば
.
も同様.また
と置けば,
は M 函数で減少列をなす.従って
は M 函数である.
も同様(または
から).
を函数値として許容する.これは場合の区別から生ずる煩雑を緩和して,陳述を簡明にする手段にほかならない.そこで
と差別するために,個々の実数
を有限という.函数
は有限とは,それが
または
なる値を取らないことをいう.故に有限は有界とは違う.なお運用上,次の規約を設ける.

は無意味とする.
を略して
とも書く.
の項にも
を許容する.級数
の項に
または
が含まれる場合には,
をも込めて,
のすべての正の項の和を
とし,
をも込めて,すべての負の項の和を
とするとき,
が
となる場合を除いて,
の値は確定で,
を
の値と規約する. M 函数
が有限でないときにも

は
に対する余集合の記号である.任意の集合
において与えられた点函数
に対応する
内の集合

を
の函数とみるとき,それは単調減少,すなわち
なるとき 
であるが,なお (3) によれば
![\left.\begin{matrix}
E(t)=\displaystyle\bigcap_{t'<t}E(t'),\\[10pt]
E(-\infty)=E\qquad E(\infty)=\displaystyle\bigcap_{t'<\infty}E(t').
\end{matrix}\right\}](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/b/9/1/b91d6a4eb3e77b5e6dc9ff56837a87dd.png)
今逆に条件 (4) に適合する集合
が
において与えられているとすれば,それから (3) に適合する点函数
を定義することができる.それには
なる
の上限が
なるとき,
とすればよい.――それは明白であろう.実際,
ならば,
,従って
.故に
.また
ならば,
,すなわち
だから,
なら
.従って (4) から
.故に
.すなわち (3) が成り立つ.
なるときは,
とするのであるが,そのときには,すべての
に関して
だから (3) は
でも成り立つ.また
ならば,(3) は
となる.
が有限なるときには,
なる
は実数の一つの切断の下組で,
がその下組の最大数である.それは
を意味する.
さて,すべての有理数
(あるいは,実数内に稠密に分布されている数の可算集合に属する
)に対応して,
内に集合
が与えられているとき,任意の実数
および
に対して

によって
を定義し,また
とすれば,
は条件 (4) に適合する.実際,
のとき
とすれば,

従って

逆に
とする.今
として,
なる
を取れば,
だから,(5) によって
.
の
は任意の有理数だから
.故に (4) が成り立つ.
もしも
が M 集合ならば,(5) は M 集合の列の共通部分だから,
が M 集合,従ってそれから定義される点函数
が M 函数である.
[編集] 108.集合の測度
集合の一類
(
は σ 系をなさなくてもよい)に属する各集合
に実数または
を対応せしめる函数
が定義されているとき,
を
における集合函数という.σ 系
における集合函数に関し
が単純和なるとき,下記 (1) の右辺が確定(401 頁,[附記]参照)で

ならば,
は加法的であるという.
は交換律に従うから,級数
は絶対収束をする.ここで絶対収束とは,無条件収束の意味,すなわち,級数
が項の順序および括り方に無関係に,一定の値(
をも込めて)を有することをいう.
(1) が無限列に関して成り立つことを強調するためには,‘完全に加法的[* 1]’ともいうが,我々はむしろ (1) が有限列に関してのみ成り立つことを,‘弱い意味で加法的’ということにする.
さて,次のように測度の定義を立てる.
における集合函数
が完全に加法的で常に正なる(負でない)とき,
(または
とも書く)をもって,
の測度とする.
の値として
をも許容するが,
なるときは,
は
が有限なる集合
の増大列の極限(合併)として,‘到達される’とする.(すなわち
なる集合列
の存在を仮定する.)[* 2]
差し越しながら,この仮定のもとで
となる(下記定理 87).
ならば,
は単純和だから,定義によって
.また,定義によって
だから,
.すなわち
は‘単調増大’である.
は閉じた σ 系であるから,最大集合
を有する,故に
なる
がある場合には,
から
.従って仮定によって
なる集合列
が存在する.そのとき
で,
.すなわち
が定義の末端に述べた集合列である.空集合に関しては,
.――実際,定義によって
なる
はある.従って
から,
.
だから
.
これらは定義の言葉尻であるが,重要なのは
の完全加法性である.完全加法性は連続性を意味する.すなわち次の定理が成り立つ.
とすれば,
.

がすべて有限ならば,
だから,

ならば,
.すなわち
.
とすれば,
なる仮定の下において,
.[編集] 109.積分
閉じた σ 系
において測度
と,集合[* 1]
における点函数[* 1] とが与えられているとき,
における
の積分を次のように定義する.
なるとき,


の任意の分割とする.すなわち
を
の有限単純和とする.そのとき,
における
の値の下限を


に関する上限
を集合
の上の
の積分といい,それを

として
を許容するが,その場合,
または
が
なるとき,規約
(401 頁)を適用する.
の符号が一定でない場合には,それを正・負の部分(400頁)に分けて,
として,

で,右辺が
の形になる場合だけを除いて,この定義は有効で,積分の値は確定する.このように定義された積分の値が有限であるとき,
は
の上で積分有限(積分可能[* 2])であるという.
次の定理は積分の定義から,ただちに,得られるものである.
が単純和で,
の上で
が確定ならば

としてよい.また積分の定義 2.によって
としてよい.さて
を
の分割
として,


の分割である.それらを
と書けば

は任意だから,上限へ行って

の任意の分割を
とすれば,それを合わせて
の一つの分割
が得られて

は任意だから上限へ行って


において
は定数に等しいから,
.これは積分の定義によって明白であろう.
ここで
が M 函数であることを用いた.そのために
が M 集合で,
が確定する.
において
ならば,両辺の積分確定のとき,

とすれば,
は単純和である.さて
では積分の定義 1.から (1) を得る.
では積分の定義 2.から,(1) の左辺は
,右辺は
だからよい.また
では
で,
だから,(1) が成り立つ.故に 1.によって
において (1) が成り立つ.
が有限なるためには,
が有限なることが必要かつ十分である。
とすれば,1.によって

の正,負の部分
(400頁)を用いて,

が有限なることと同等であるから,4. が得られる.
において
は有界で,
,また
は積分有限とすれば,
の中間の或る値
をもって

ならば,
.
が有限ならば,
の測度は
である.
の積分が有限である.よって
としてよい.もしも
に関して
とするならば,
を一つの成分とする
の分割
において,すでに
.従って
.それは矛盾である.
が有限なるとき,
とすれば,
のとき 
上記 6.,7.,8.に関連して,次の定理を記録しておく.それは後に至って,一般的の見地から証明されるであろう(419 頁,6.および[注意]参照).
が有限で
ならば
のとき 
[編集] 110.積分の性質
積分の性質を続けて述べる.
,従って(前節 3.)

の極限へ行って

の分割
において,
として


は任意だから,上限へ行って

,すなわち
と書いて

ならば,(
でも)右辺は
で,左辺は
だから,問題はない.同様に,
ならば,(
でも)問題はない.よって,
とする.
をもって

と
が同時に出ていてはいけない.特に,右辺の各積分が有限なるとき,左辺も有限で,等式が成り立つのである[* 2].
に関して,次の式を証明すれば十分である:

に関して
,かつ

が存在すれば(特に
(定数)ならば),

は積分有限である.また §109,6.,7.によって,
と仮定してよい. まず一般に
と置けば,
で,
は増大列だから,定理 88によって,

だから



に適用すれば(上記の仮定
を用いて),

を引いて,

から,



のはずであるから,(9),(10) から

だから,等式が成り立って,(7) を得る.
定理 90 が上記のように寛大な条件の下において成り立つことは,Lebesgue の理論の著しい成功というべきであろう.
以上,積分の最も重要な性質を述べたが,ここで,積分の定義そのものを反省してみよう.我々は
を分割して
における
の下限
をもって
を作って,その上限として積分を定義したが,同様の立脚点において,
における
の上限
をもって,和
を作り,
の下限として積分を定義することも考えられる.しかし,
は有限,また
において
は有界(
)なる根幹的の場合においては,このような定義からも積分は結局同一に帰する[* 5].
に目盛り


のこの分割
に関しては



は特別な分割であるが,一般に二つの分割
を合併して分割
が作られる.すなわち




は任意だから

を用いて

は任意に取れるから

を有限列
に分割して
を定義したが,上に述べたような思想圏において,
を無限単純列
に分割して,そのような分割
に関して
を定義して,
をもって積分を定義することである.然るに,
は
の再分と考えられるから,
であるが,一方
であるから,
である.
に関しても同様である.Riemann 積分に関して §30 に述べた Darboux の和においては,このような結果は得られなかった.あそこでは,
を単に有界としたが,ここでは
を M 函数とした.あそこでは
をば,区間を区間への分割に限定したが,ここでは,M 集合
を自由に M 集合に分割することを許したのである.
§109 に述べた積分の定義は簡明であるが,なお Lebesgue の定義との連絡のために,次の定理をつけ加える.簡明のために正なる函数を考察する.
において
とする.正数の範囲に目盛り
)

なる条件の下において,

に対応して,

を取れば,
のとき,

のとき


による(§109,6.).さて,ここで二つの場合を区別する.
と置けば,
は単調減少であるが,
だから,

すなわち積分
は Riemann 積分
に等しい.次の定理は後に至って応用されるが,それ自身としても興味あるものである.
§109,5.において
とすれば,
において
なるとき,
で,これが本来の平均値の定理ともいうべきものである.この関係は,加法的集合函数としての積分の特徴である.すなわち次の定理が成り立つ.
- ↑ 400 頁脚注参照.
- ↑ 2.0 2.1
が無意味(
)になる点
があっても,定理の‘ただし書き’の下では,それらの点
の集合
の測度は
である.実際,右辺の各項が,例えば,
でないとすれば,各〻の
が
となる点
の集合の測度は
である(前節 7.).故に測度
の集合
を無視して,上記左辺の積分を
の上の積分と書くのである(前節 6.). - ↑ 次の定理 91 によれば,この関係 (8) は404 頁 (2) と同様である.
- ↑ ある M 集合
の部分集合なる M 集合の全体は
を最大集合とする閉じた σ 系を成す.それを
とする.
における函数
の積分
が確定であるとき,
における
の積分
が
における加法的集合函数であることを,簡略して積分は集合函数として加法的であるという(401 頁,[附記]参照). - ↑
,または
が有界でない場合には,
による定義は適切でない.これら極限の場合をも順調に包括するためには,
を取らねばならない. - ↑ この
は通例
と書くのだけれども,和はすべての自然数
の上にわたるのだから,
.すでに 401 頁の規約を設けた上は,上記のように
に
を附記するのが正当である.特にここでは
に関する項が別になるのだから,明瞭のために,この記法を取った. - ↑
の部分集合なる M 集合の成す σ 系における加法的集合函数を,簡単に
における加法的集合函数という.以下同様.
[編集] 111.加法的集合函数
σ 系
における加法的集合函数
の定義は既に述べた(403 頁),すなわち
に関して
.これより後,簡単のためこの定義に次の条件を追加する.
集合
の内で,
は有限である:
ならば 
この条件のために次の定理が成り立つ.
は
において有界である.すなわち一つの定数
をもって,
なるとき,
.
と置けば定義の (2º) によって
,もしも
が有界でないとするならば,任意の
をもって

が存在する.従って


または
の内で
は有界でないはずである.今両者のうちで
が有界でないほうを改めて
と書いて,同様の考察を継続すれば,

を得る.そこで
とすれば


が加法的ならば,
のとき 
が与えられているとき

が定義される.
を空集合とすれば,
だから,上記の
は
,
は
,従って

をそれぞれ
の正の変動(または変分),負の変動といい,また
を
の絶対変動(または全変動)という.
は加法的である.
を単純和とし,
と書いて,
を証明する. 任意に
を取って
とする.然らば上限としての
の意味によって,

がある.そこで
とすれば,これも単純和で,
だから,

は収束するが,
は任意だから
. 逆に
とすれば,
は単純和で,

は任意だから
.故に
.すなわち
は加法的である.従って
も加法的である.
は
内で到達される.すなわち
なる分割があって[Hahn の分割],

ならば,
,
ならば,
.
なる
に関しては


の存在を示せばよい.そうすれば(定理 96)


2º も (4) から得られる.実際,(4) から
だから,
なるとき
.同様に
だから,
なるとき
.
次に,
ならば,2º によって
,従って
.また
ならば
.故に
は
の Hahn 分割である.それが 3º である.
を求めよう.
と置く.そのとき
より小なる一定の
に対して

が
内にある.そうして


に関して


で
は任意だから,
の極限へ行って,
. 一方,
から,
.よって 404 頁 (2) と同様に(あそこの
に
をあてて),

に行って
.
すなわち
は (4) に適合する.
[編集] 112.絶対連続性 特異性
σ 系
における一つの測度
に基づいて,一般の加法的集合函数の連続性を考察するために,次の定義を立てる.
において加法的なる集合函数
が
なるとき 
を
において絶対連続という.
また
が
ないでほとんど常に
なるとき,すなわち
なる一つの集合
以外で常に
なるとき,
を特異函数という.そのとき,
で
なのだから,
.
次のことは定義によって明白であろう.
の正・負の成分
および絶対変分
は絶対連続である.
が絶対連続で,
が任意の実数ならば,
も絶対連続である.一般に絶対連続な函数
の実係数
をもっての一次結合
は絶対連続である.
において絶対連続なる函数の列
が,すべての
に関して
に収束するならば,
は絶対連続である.
の各集合において
が絶対連続ならば,
は
の合併
においても絶対連続である.上記 1.-4.において‘絶対連続’を‘特異’で置き換えてもよい.
において絶対連続で,かつ特異な函数は常に
に等しい.
が特異ならば,
.その
が絶対連続ならば,
から,
.従って
.
が絶対連続ならば,
なるとき
なることを証明する.定理 96 によって
の場合を考察すればよいが,今間接法を用いるために,
で,しかも
ではないと仮定する.然らば
の中に,或る数
に関して
なる
が無数にあって,その中から
なる
を取り出すことができるであろう.それらの
に関して
と置けば,
,従って
.
は任意だから,
.故に絶対連続性の定義によって
.然るに404 頁 (3) と同様に[* 1]
.これは不合理である.故に
ならば
.すなわち
なるとき
なることは,
なるとき
なることを意味する.それを見越して,絶対連続の定義を既述のように立てたのである.
であっても,それは
,すなわち
が空集合であるのではない.だから単に
からしてすでに
が保証されることは,高度の連続性といわねばならない.
の測度が有限なるとき(または一般に
が有限測度の集合列の合併であるとき),
において加法的なる集合函数は絶対連続な函数と特異函数との和として一意に表わされる[Lebesgue の分割].
は前の通りとして,
において加法的なる集合函数が絶対連続なるためには,それが或る点函数の不定積分であることが,必要かつ十分である[Radon-Nikodym の定理].
,また
は
において加法的として,
なる
に関し,

と
なる M 集合
との存在を証明する.然らば
,従って
なるとき,
だから,
は特異函数で,また
は絶対連続であるから(前頁,6.)定理 99 にいう Lebesgue の分割の可能性が確定する. また
ならば,それを単純和に直すことができるから,加法性によって
においても (2) が成り立つ.Lebesgue の分割が一意的であることは簡明である.今

は特異,
を絶対連続とすれば,

に等しい(前頁,5.).
Lebesgue 分割が一意だから,(2) から定理 100 にいう条件の必要性がわかる.それが十分であることは既知である(§109,6.).
さて,(2) の証明であるが,
に関する Hahn の分割(定理 98)
によって,例の通り
としてよい.仮定によって
だから,
を任意の有理数として,
において加法的なる
に Hahn の分割を適用して,
において
,
において 
.すなわち
は
に対する余集合(以下同様).また,負(
)なる有理数
に対して,
と置く.然らば,
なるときにも,(3) は成り立つ. 今,任意の実数
に対して

に関して,
において 
において 

に対して (3) から

のはずだから,
.故に
は特異函数である.よって
と置けば


が求められればよい.このような
は 402 頁に述べたようにして,
と置いて,(4),(7) の集合
から得られる. 実際,そのとき

なる
と
なる
に関して
なるとき 
ここで,§110,(18) の仮定が,
において成り立つ.実際,(4),(7) によって
だから,(8) の前段の式によって,
において
,従ってあそこの
は空集合となり,
が成り立つ.
は仮定した.
,従って
だから,(9) によって,
なる
に関して





および点
とである.本節の集合算は,それに基づいて公理式に組立てられるであろう.
を含む.![\begin{align}
x&\in E\{f(x)\geqq 0\}\\[5pt]
x&\in E\{f(x)< 0\}
\end{align}](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/2/3/2/2327ff16a4744b97ca5f15c06f394965.png)
![\begin{align}
f^+(x)&=f(x),\\[5pt]
f^+(x)&=0,
\end{align}](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/e/d/0/ed079c63d9c13758c5df6384871b85a9.png)
![\left.\begin{align}
f^-(x)&=0\\[5pt]
f^-(x)&=-f(x)
\end{align}\right\}](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/f/f/e/ffe7d27681ea2310227d711d02167154.png)
で,
が M 函数であることは明白だから(
)の意味に用いる.厳密に正(
)に限定する必要のある場合には,それをことわることにする.
の意.減少列も同様.
の余集合を
とすれば

.さて
だから
.故に

.
に関して
ならば,
なるとき,
だから,
. さて
だから,


だから,
. こんどは
から,

を仮定する.
ならば


だから,等号が成り立って,


とする.
と置いて
を得る.従って
とすれば,
.さて弱い意味の加法性から
従って 
に対して,
なる
だから,上記のように
.すなわち
.
は任意だから
. また
は増大列の収束,同様に
は減少列の収束を示す記号.
を取り,

は単純和だから,
だから,
,従って(
でも)
.
とすれば
とする.
として,
と置く.然らば,
で,
.――なぜなら:
とすれば,或る
,従って
だから.故に

なるとき




として,

だから,

としたから,
で,
).
として上記
(
,すなわち
が階段的で,それぞれ有限個の相異なる値
を取るとする.

と置けば,
は単純和で,
において
.よって(

を
に符号に従って,
とする.然らば
から,
が単純和ならば,

とすれば(






ならば,


なるすべての
に関して
なるとき 

を適用する.
と
とを別々に考察すればよいから,
とすれば,
の場合には,
と置いて
,従って
.また
だから,定理は
を得る(
なる 



を用いて

は任意であるから,
ならば,
,よって
から,
が無意味(
が
の部分集合なる M 集合の全体は
とする.
における
が
は通例
と書くのだけれども,和はすべての自然数
.すでに
を附記するのが正当である.特にここでは
に関する項が別になるのだから,明瞭のために,この記法を取った.
に関して述べたのと同様である.
の場合に帰する.
を単純和とすれば,

だから,


ならば,
を単純和として,