解析概論/第9章/絶対連続性 特異性

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[編集] 112.絶対連続性 特異性

σ 系 \mathrm{M} における一つの測度 \mu に基づいて,一般の加法的集合函数の連続性を考察するために,次の定義を立てる.

E において加法的なる集合函数 F(e)

(1)
\mu e=0 なるとき F(e)=0

なる条件を満たすとき,F(e)E において絶対連続という.

また F(e)E ないでほとんど常に 0 なるとき,すなわち \mu(e_0)=0 なる一つの集合 e_0 以外で常に 0 なるとき,F(e)特異函数という.そのとき,e=e_0e+(e-e_0)F(e-e_0)=0 なのだから,F(e)=F(e_0e)

次のことは定義によって明白であろう.

1.
絶対連続な函数 F の正・負の成分 F^+,F^- および絶対変分 V は絶対連続である.
2.
絶対連続な函数は線型空間を成す.すなわち F.G が絶対連続で,a が任意の実数ならば,aF,F+G も絶対連続である.一般に絶対連続な函数 F_i\,(i=1,2,\ldots,n) の実係数 a_i をもっての一次結合 \textstyle \sum_{i=1}^n a_iF_i は絶対連続である.
3.
E において絶対連続なる函数の列 \{F_n(e)\} が,すべての e\subset E に関して F(e) に収束するならば,F は絶対連続である.
4.
集合列 E_n の各集合において F が絶対連続ならば,FE_n の合併 \textstyle E=\bigcup E_n においても絶対連続である.

上記 1.-4.において‘絶対連続’を‘特異’で置き換えてもよい.

5.
E において絶対連続で,かつ特異な函数は常に 0 に等しい.
F が特異ならば,e_0\subset E,\mu e_0=0;\,F(e)=F(ee_0).その F が絶対連続ならば,\mu ee_0=0 から,F(ee_0).従って F(e)=0
6.
積分 \textstyle \int_e f(x)d\mu を集合 e の函数とみて,それを不定積分という.不定積分が E の上で有限ならば,E 内の e でも有限で,それは加法的であるが(定理 91),それは E において絶対連続である(§109,6.).
[注意] 
上記の定義において,絶対連続という用語は奇異に感ぜられるであろう.この用語の由来は後に述べるが,ここで集合函数の連続性に関して手近な解説をしておこう.まず F(e) が絶対連続ならば,\mu e\to 0 なるとき F(e)\to 0 なることを証明する.定理 96 によって F(e)\geqq 0 の場合を考察すればよいが,今間接法を用いるために,\mu e_n\to 0 で,しかも F(e_n)\to 0 ではないと仮定する.然らば \{e_n\} の中に,或る数 \eta >0 に関して F(e_n)>\eta>0 なる e_n が無数にあって,その中から \mu e_n<\delta^n\,(0<\delta<1) なる \{e_n\} を取り出すことができるであろう.それらの e_n に関して e_0\leqq \varlimsup e_n と置けば,\textstyle e_0\subset \bigcup_{n\geqq p}e_n,従って \textstyle \mu e_0\leqq \sum_{n\geqq p}\mu e_n < \frac{\delta^p}{1-\delta}p は任意だから,\mu e_0~0.故に絶対連続性の定義によって F(e_0)=0.然るに404 頁 (3) と同様に[* 1]F(e_0)=F(\varlimsup e_n)\geqq \varlimsup F(e_n)\geqq \eta>0.これは不合理である.故に \mu e_n\to 0 ならば F(e_n)\to 0.すなわち \mu e_n=0 なるとき F(e)=0 なることは,\mu e\to 0 なるとき F(e)\to 0 なることを意味する.それを見越して,絶対連続の定義を既述のように立てたのである.\mu e=0 であっても,それは e=0,すなわち e が空集合であるのではない.だから単に \mu e\to 0 からしてすでに F(e)\to 0 が保証されることは,高度の連続性といわねばならない.
定理 99.
E の測度が有限なるとき(または一般に E が有限測度の集合列の合併であるとき),E において加法的なる集合函数は絶対連続な函数と特異函数との和として一意に表わされる[Lebesgue の分割].
定理 100.
E は前の通りとして,E において加法的なる集合函数が絶対連続なるためには,それが或る点函数の不定積分であることが,必要かつ十分である[Radon-Nikodym の定理].
[証]
定理 99100 を一括して証明するために,\mu E<\infty,また F(e)E において加法的として,e\subset E なる e に関し,
(2)
F(e)=F(eH)L\int_e f(x)\,d\mu
なる M 函数 f(x)\mu H=0 なる M 集合 H\subset E との存在を証明する.然らば e\subset E-H,従って eH=0 なるとき,\mathit{\Phi}(e)=F(eH)=0 だから,\mathit{\Phi} は特異函数で,また \textstyle \int_e f(x)d\mu は絶対連続であるから(前頁,6.定理 99 にいう Lebesgue の分割の可能性が確定する. また \textstyle \mu E_n<\infty, E=\bigcup E_n ならば,それを単純和に直すことができるから,加法性によって E においても (2) が成り立つ.Lebesgue の分割が一意的であることは簡明である.今
F(e)=\mathit{\Phi}_1(e)+\mathit{\Psi}_1(e)=\mathit{\Phi}_2(e)+\mathit{\Psi}_2(e)
で,\mathit{\Phi_1,\Phi_2} は特異,\mathit{\Psi_1,\Psi_2} を絶対連続とすれば,
\mathit{\Phi_1-\Phi_2=\Psi_1-\Psi_2}
において,左辺は特異,右辺は絶対連続だから,両辺は 0 に等しい(前頁,5.).

Lebesgue 分割が一意だから,(2) から定理 100 にいう条件の必要性がわかる.それが十分であることは既知である(§109,6.).

さて,(2) の証明であるが,F に関する Hahn の分割(定理 98E=P+N によって,例の通り F(e)\geqq 0 としてよい.仮定によって \mu E<\infty だから,r>0 を任意の有理数として,E において加法的なる F(e)-r\mu eHahn の分割を適用して,
(3)
e_r において F(e)\geqq r\mu e, e'_r において F(e)\leqq r\mu e
とする.ただし,e'_r=E-e_r.すなわち 'E に対する余集合(以下同様).また,負(\leqq)なる有理数 r に対して,e_r=E と置く.然らば,r\leqq 0 なるときにも,(3) は成り立つ. 今,任意の実数 t に対して
(4)
E(t)=\bigcap_{r<t}e_r
と置く(402頁).然らば,(3) から,実数 t に関して,
(5)
E(t) において F(e)\geqq t\mu e,
(6)
E(t)'=\bigcup_{r<t}e'_r において F(e)\leqq t\mu e
であるが[* 2],今
(7)
H=E(\infty)=\bigcap_{r<\infty}e_r
と置けば,任意の r に対して (3) から
F(H)\geqq r\mu H.
F(H)<\infty のはずだから,\mu H=0.故に \mathit{\Phi}(e)=F(eH) は特異函数である.よって H'=E=H と置けば
F(e)=F(eH)+F(eH'),\quad \mu e=\mu eH'
だから,(2) を得るには,
F(eH')=\int_{eH'}f(x)\,d\mu = \int_e f(x)\,d\mu
なる f(x) が求められればよい.このような f(x)402 頁に述べたようにして,E(\infty)=E と置いて,(4)(7) の集合 E(t), -\infty\leqq t\leqq \infty から得られる. 実際,そのとき
(8)
E(t)=E\{f(x)\geqq t\},\quad E'(s)=E\{f(x)<s\}
であるが,(5)(6) によって,-\infty<t\leqq s<\infty なる t,se\subset H' なる e に関して
(9)
e\subset E\{t\leqq f(x)\leqq s\} なるとき t\mu e\leqq F(e)\leqq s\mu e.

ここで,§110,(18) の仮定が,H' において成り立つ.実際,(4)(7) によって E(0)=E,E(\infty)=H だから,(8) の前段の式によって,H' において 0\leqq f(x)<\infty,従ってあそこの e_\infty=E(\infty)\cap H' は空集合となり,\mu(e_\infty)=0,F(e_\infty)=0 が成り立つ.F(e)\geqq 0 は仮定した.

さて,H'\subset E,従って \mu H'< \infty だから,(9) によって,e\subset H' なる e に関して
F(e)=\int_e f(x)\,d\mu
を得る(定理 93415 頁[注意]).
  1. 同所 \muF を代用して \varlimsup に関する不等式が得られる.
  2. e\subset E(t)' ならば,\textstyle e=\sum_{r<t}e^{(r)},e^{(r)}\subset e'_r を単純和として,\textstyle F(e)=\sum F(e^{(r)})\leqq \sum r\mu e^{(r)}\leqq t\sum \mu e^{(r)}=t\mu e.
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