解析概論/第9章/積分

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[編集] 109.積分

閉じた σ 系 \mathrm{M} において測度 \mu e と,集合[* 1] E における点函数[* 1] とが与えられているとき,E における f(x) の積分を次のように定義する.

1º.
f(x)\geqq 0 なるとき,
(\Delta)
E=e_1+e_2+\cdots+e_n
E の任意の分割とする.すなわち Ee_i\,(i=1,2,\ldots,n) の有限単純和とする.そのとき,e_i における f(x) の値の下限を
v_i=\inf_{x\in e_i}f(x)
として,和
s_\Delta = \sum_{i=1}^n v_i\mu e_i
を作る.そうして,全ての分割 \Delta に関する上限 \sup s_{\Delta} を集合 E の上の f(x)積分といい,それを
\int_E f(x)\,d\mu
と書く.ただし,s_\Delta として \infty を許容するが,その場合,v_i または \mu e_i\infty なるとき,規約 0\cdot \infty= \infty\cdot 0= 0401 頁)を適用する.
2º.
f(x) の符号が一定でない場合には,それを正・負の部分(400頁)に分けて,f(x)=f^+(x)-f^-(x) として,

  \int_E f(x)\,d\mu = \int_E f^+(x)\,d\mu - \int_E f^-(x)\,d\mu
によって積分を定義する.右辺の二つの積分がともに \infty で,右辺が \infty-\infty の形になる場合だけを除いて,この定義は有効で,積分の値は確定する.

このように定義された積分の値が有限であるとき,f(x)E の上で積分有限(積分可能[* 2])であるという.

次の定理は積分の定義から,ただちに,得られるものである.

1.
E=E_1+\cdots+E_p が単純和で,E の上で \textstyle \int_E f(x)d\mu が確定ならば
\int_E f(x)\,d\mu= \sum_{i=1}^p f(x)\,d\mu.
[証]
p=2 としてよい.また積分の定義 2.によってf\geqq 0 としてよい.さて \textstyle E=\sum_{i=1}^n e_iE の分割 \Delta として,

  e_i^{(1)}=E_1\cap e_i,\quad e_i^{(2)}=E_2\cap e_i\quad (i=1,2,\ldots,n)
とすれば
E_1=\sum e_i^{(1)},\quad E_2=\sum e_i^{(2)}
E_1,E_2 の分割である.それらを \Delta_1,\Delta_2 と書けば

 s_\Delta\leqq s_{\Delta_1}+s_{\Delta_2}\leqq \int_{E_1}+\int_{E_2}.
\Delta は任意だから,上限へ行って
\int_E\leqq \int_{E_1}+\int_{E_2}.
逆に E_1,E_2 の任意の分割を \Delta_1,\Delta_2 とすれば,それを合わせて E の一つの分割 \Delta が得られて
s_{\Delta_1}+s_{\Delta_2}=s_\Delta\leqq \int_E.
\Delta_1,\Delta_2 は任意だから上限へ行って
\int_{E_1}+\int_{E_2}\leqq\int_E.
故に
\int_E=\int_{E_1}+\int_{E_2}.
2.
E において f(x) が階段的で,互に異なる有限個の値 a_1,\ldots,a_p を取り,
E_i=E\{f(x)=a_i\}\quad (i=1,2,\ldots,p)
とする.然らば \textstyle E=\sum_{i=1}^p E_i は単純和だから,1.によって

  \int_E f(x)\,d\mu= \sum_{i=1}^p\int_{E_i}f(x)\,d\mu
  = \sum_{i=1}^p a_i\mu E_i.

E_i において f(x) は定数に等しいから,\textstyle \int_{E_i}=a_i\mu E_i.これは積分の定義によって明白であろう.

ここで f が M 函数であることを用いた.そのために E_i が M 集合で,\mu E_i が確定する.

3.
E において f(x)\leqq g(x) ならば,両辺の積分確定のとき,
(1)
\int_E f(x)\,d\mu\leqq \int_E g(x)\,d\mu.
[証]
E_1=E\{0\leqq f(x)\leqq g(x)\},\,
  E_2=E\{f(x)< 0\leqq g(x)\},\,E_3=E\{f(x)\leqq g(x)< 0\}
とすれば,E=E_1+E_2+E_3 は単純和である.さて E_1 では積分の定義 1.から (1) を得る.E_2 では積分の定義 2.から,(1) の左辺は \leqq 0,右辺は \geqq 0 だからよい.また E_3 では \textstyle
  \int_{E_3}f(x)\,d\mu= -\int_{E_3}f^-(x)\,d\mu;
  \int_{E_3}g(x)\,d\mu= -\int_{E_3}g^-(x)\,d\mu
で,0<g^-(x)\leqq f^-(x) だから,(1) が成り立つ.故に 1.によって E において (1) が成り立つ.
4.
\textstyle \int_E f(x)\,d\mu が有限なるためには,\textstyle \int_E|f(x)|d\mu が有限なることが必要かつ十分である。
[証]
E_1=E\{f(x)\geqq 0\},\, E_2=E\{f(x)< 0\},\,E=E_1+E_2, とすれば,1.によって

  \int_E|f(x)|d\mu = \int_{E_1}|f(x)|d\mu+\int_{E_2}|f(x)d\mu.
故に,f の正,負の部分 f^+,f^-400頁)を用いて,
(2)

  \int_E|f(x)|d\mu = \int_{E_1}f^+(x)d\mu + \int_{E_2}f^-(x)d\mu.
さて,(2) の左辺が有限なることは,その右辺の二つの積分が有限なることと同等であり,それは,\textstyle \int_E f(x)d\mu が有限なることと同等であるから,4. が得られる.
5.
[平均値の定理].E において f(x) は有界で,m\leqq f(x)\leqq M,また g(x) は積分有限とすれば,m,M の中間の或る値 c をもって (m\leqq c\leqq M)
\int_E f(x)|g(x)|\,d\mu= c\int_E |g(x)|\,d\mu.
m|g|\leqq f|g|\leqq M|g| だから,3.によって

  m\int_E |g|d\mu\leqq \int_E f|g|d\mu\leqq M\int_E |g|d\mu.
さて 4.によって左右両端は有限だから,表記の等式を得る.
6.
\mu E=0 ならば,\textstyle \int_E f(x)\,d\mu=0
積分の定義 2.によって f\geqq 0 としてよい.E の任意の分割 \Delta において,\mu E=0 から \mu e_i=0,従って(v_i=\infty でも)s_\Delta=0
7.
\textstyle \int_E f(x)d\mu が有限ならば,E\{f(x)=\pm\infty\} の測度は 0 である.
この場合,f^+(x),f^-(x) の積分が有限である.よって f\geqq 0 としてよい.もしも E_1=E\{f=\infty\} に関して \mu E_1\ne 0 とするならば,E_1 を一つの成分とする E の分割 \Delta において,すでに s_\Delta=\infty.従って \textstyle \int_E=\infty.それは矛盾である.
8.
\textstyle \int_E f(x)\,d\mu が有限なるとき,e_n=E\{|f(x)|\geqq n\} とすれば,
n\to\infty のとき \mu e_n\to 0.
[証]
この場合,4.によって \textstyle \int_E |f(x)|d\mu は有限である.また,任意の n に関し,1.3.によって

  \int_E|f(x)|d\mu\geqq \int_{e_n}|f(x)|d\mu\geqq \int_{e_n}n\,d\mu=n\,\mu e_n.
故に n\to\infty のとき \mu e_n\to 0

上記 6.7.8.に関連して,次の定理を記録しておく.それは後に至って,一般的の見地から証明されるであろう(419 頁,6.および[注意]参照).

9.
\textstyle \int_E f(x)d\mu が有限で e\subset E ならば
\mu e\to 0 のとき \int_e f(x)d\mu\to 0.

  1. 1.0 1.1 本節では,M 集合,M 函数のみを扱うから,一々それをことわらないこともある(以下同様).
  2. 積分の値が有限であることを intégrable,または Lebesgue に従って sommable という.邦語ならば,積分確定\pm\infty でも),積分有限などと短くいえる.
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