解析概論/第9章/有界変動・絶対連続の点函数

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[編集] 126.有界変動・絶対連続の点函数

R^1 において加法的なる集合函数 F(e) に対応して点函数 f(x) が定義される.すなわち e=(-\infty,x) なるとき F(e)=f(x) とするのである.今最も興味ある場合として,F(e) を連続と仮定する.すなわち \delta e\to 0 なるとき F(e)\to 0 とするのである.\delta e は集合 e の径,すなわち R^1 においては,e を含む区間の幅(長さ)の下限である.故に e が一点から成り立つとき,F(e)=0 で,f(x) は点函数として連続である.

さて,F(e) が有界なる e に対して有限,したがって有界(定理 94)であることを仮定するならば,F に対応する f(x)e において有界変動である.F の正負の変分 F^+,F^- および絶対変分 V=F^+ +|F^-| に対応する点函数を,それぞれ f^+(x),f^-(x) および v(x) と書けば,


 f(x)=f^+(x)+f^-(x),\quad v(x)=f^+(x)+|f^-(x)|

で,f^+(x),|f^-(x)| は単調増大である(§111). さて,F(e) を既述の意味([[解析概論/第9章/絶対連続性 特異性|§112)で絶対連続とする.すなわち me=0 なるとき,F(e)=0F の加法性のために,それは me\to 0 のとき,F(e)\to 0 を意味するのであった(419 頁).F(e) のこの絶対連続性は,それに対応する点函数 f(x) の性質として次のようにいい表わされる.――今互に重なり合わない小区間 w_i=[x_i,x_i'] の有限列の合併を w とし,それら小区間 w_i における f(x) の変動の絶対値の和を

V(w)=\sum|f(x_i)-f(x_i)|

と書くならば,

mw=\sum|x_i'-x_i|

で,F(e) の絶対連続性によって,mw\to 0 のとき,V(w)\to 0.詳しくいえば,任意の \varepsilon>0 に対応して \delta が定められて,

(1)
mw<\delta なるとき V(w)<\varepsilon

ならしめうるのである.函数 f(x) のこの性質を Vitali が絶対連続と名づけた.これが絶対連続という用語の由来である.すなわち,Vitali の意味で絶対連続なる点函数に対応する集合函数 F(e) が絶対連続と名づけられたのである.

逆に f(x) が絶対連続ならば,F(e) も絶対連続である.――まず f(x) が絶対連続だから,(1) において \varepsilon を固定して,それに対応する \delta を取って,任意の区間を長さが \delta を超えない小区間に分けて,それらの区間の数を p とするならば,その区間における任意の小区間群 \textstyle w=\sum w_i に関して,V(w)\leqq p\varepsilon だから,f(x) は有界変動である.故に f(x) が単調増大なる場合を考慮すればよいが,そのとき F(e)\geqq 0 だから,今 mE=0 とするならば,E\subset G_n,mG_n\to 0 なる開集合 G_n の列があって,F(G_n)\to 0.故に F(E)=0.すなわち F は絶対連続である.

同様の意味で,特異なる集合函数 F(e) に対応する点函数 f(x) をも特異というならば,f(x) に関しては,K を任意の区間とするとき,任意の \varepsilon>0 に対して m(K-w)<\varepsilon で,V(w)<\varepsilon なる区間列 wK 内に存在する.

さて区間 K において f(x) を連続とする.その区間内で x を固定し,h を動かして,

  \Delta(x,h)=\frac{f(x+h)-f(x)}{h}
と書いて,
1)

  \bar{D}_f^+(x)=\varlimsup_{h\to+0}\Delta(x,h),
2)

  \underline{D\!}\,_f^+(x)=\varliminf_{h\to+0}\Delta(x,h),
3)

  \bar{D}_f^-(x)=\varlimsup_{h\to-0}\Delta(x,h),
4)

  \underline{D\!}\,_f^-(x)=\varliminf_{h\to-0}\Delta(x,h)
と置く.h\to+0 は‘h>0,h\to 0’の略記,h\to-0 は‘h<0,h\to 0’の略記である.

もしも 1)2) が一致するならば,その共通の値を D_f^+(x) と書く.それは x における f(x) の右への微分商である.同様に3)4)が一致すれば,その共通の値 D_f^-(x) は左への微分商である.もしも 1)―4)がすべて一致すれば,その共通の値 D_f(x) はすなわち x における f(x) の微分商で,その場合 f(x)x において微分可能である.狭い意味では,D_f(x) が有限なることを要求し,広い意味では \pm\infty をも許容する.

今,f(x) が集合函数 F(e) に対応するとするならば,1)―4)§122 に述べた F(e) の微分商の特別の場合,あそこの e[x,x+h] または [x-h,x] に限定した場合で,これらの e の正則性の指数は \tfrac12 である.

このように h が限定された結果として,導函数は B 函数である.例えば \bar{D}^+ に関していえば \varlimsup の意味によって,h を有理数に限ってもよいが,f の連続性から,\Delta(x,h)x に関して連続で、\bar{D}^+(x) は連続函数列の \varlimsup として B 函数である(§117).

以上を前置きとして,f(x) を区間 K=[a,b] において連続かつ有界変動として,f(x) に対応する(完全)加法的集合函数 F(e)§121 参照)に §§124125 の定理を適用すれば,次のような結果が得られる.

1.
区間 K において連続かつ有界変動なる函数 f(x) は,ほとんど常に微分可能で,微分商はほとんど常に有限である.
2.
区間 t_0\leqq t\leqq t_1 において \varphi(t),\psi(t) が連続かつ有界変動ならば,x=\varphi(t),y=\psi(t) によって定義される曲線はほとんど各点で接線を有する.
3.
区間 [a,b] の点を x とすれば
f(x)-f(a)=\mathit\Phi(x)+\int_a^x\Delta(x)\,dx.
右辺の \Delta(x)前頁 1)―4)の四つの微分商の中のどれでもよい.\textstyle \int_a^x[a,x] における L 積分で,\mathit\Phi(x) は特異函数である. 特に f(x)f'(x)Lebesgue の意味の不定積分であるためには,f(x) が絶対連続であることが必要かつ十分である.
4.
特異函数は,ほとんど常に微分可能で,微分商は 0 に等しい.

最後に,特異函数 \mathit\Phi(x) のなるべく手近な実例を作るために,§115 に述べた三進集合 E を考察する.区間 K=[0,1] において三進集合 E を作るために,次々に K から取り去った区間は第 n 回には 2^{n-1} 個であったが,それらの区間において \mathit\Phi(x) の値を左から順に 1/2^n,3/2^n,\ldots,(2^n-1)/2^n とする.すべての n に関して,このように \mathit\Phi(x) の値を決めるならば,\mathit\Phi(x)K において稠密に分布される E'(余集合)において決定するが,それを K において連続なる \mathit\Phi(x) に拡張することができる.この \mathit\Phi(x)K において単調に 0 から 1 まで増大し,零集合 E 以外の各点では \mathit\Phi'(x)=0E の点では一般に \mathit\Phi'(x)=\infty であるが,E' を組成する区間の端では,右または左への微分商が 0 になるであろう.

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