解析概論/第9章
目次 |
[編集] 第 9 章 Lebesgue 積分
[編集] I.概括論
[編集] 105.集合算
我々の目標は Euclid 空間の点集合にあるのだけれども,本節(§105-112)の概括論においては,まず抽象的に任意の集合を考察する.任意といっても,一つの集合
を取って,それの部分集合のみを考察の対象とする.
以下,集合
と,その元
とを,一つの空間 (
) と,その空間の点 (
) とに当てはめて考えるならば,わかりよいだろう.もっとも,
をただちに一つの(抽象的)空間,
をその空間の点と称することに,何等の差し障りもない[* 1].
が集合
の元であることを
と書く.
の否定を
と書く.
が
の部分集合なること(
ならば
)を
と書き,
は
に含まれるという.
かつ
のとき,集合
と
とは相等しいという:記号
.従って
なる場合にも
である.
のどれかに属する元の全部をもって,一つの集合を作ることができる.それを
の合併といい,
と書く.集合の合併は交換律および結合律に従う.
集合が有限個または可算個あるときには,それらに番号をつけて
と書いて,その全体を集合の列
という.この列の集合の合併を
(あるいは略して
)と書くが,番号のつけ方は随意である.なかんずく,重要なのは
に共通の元がない場合で,そのとき
を単純列,またその合併を単純和[* 2]と省略して,特に記号
を用いる.
のどれにも属する元の全部をもって,一つの集合を作ることができる.それを
の共通部分または交わりといい,
(または積の形に
)と書く.集合列
の場合には
と書く.
に共通の元がないときは,交わりはないが,陳述の便宜上,交わりは空集合であるといい,数字
を流用して,それを
と書く.集合の積に関しても,交換律および結合律が成り立つ.
に属しない
の元全体は一つの集合を成す.それを
の余集合といい,それを
と書く[* 3]のが慣例であるが,本書ではおりおり簡明に
とも書く.
の各元
は,
か
か,どちらか一方に属する.すなわち
は
と同値である.もちろん,
.


ならば或る
に関して
.故に
はすべての
に関して
すなわち
を意味する.従って
を意味する.すなわち
と
とは互に余集合である.
に
を代用すれば,第二の等式を得る.
に属して,
に属しない元の全体を
と書く.従って



最後の等式の右辺は単純和である.
なるときは,
を
に対する
の余集合という.
が
に含まれるとき,
に対する
の余集合に関しても(1)は成り立つ(
に
を代用してもよいから).
これらは合併および共通部分の意味から,(2)のようにして導かれる.また(2)を適用して,一方の等式の両辺の余集合を作れば,他の等式が得られる.ファイル:図
集合列に関しても分配律は成り立つ.すなわち

を単純和
に修正することができる.例えば
とすればよい.
に関して,上極限
,下極限
および極限
を次のように定義する:

なるとき,それを
とする.
この定義からみえるように,
は
の順序には関係しない.すなわち
は無数の
に共通なる元の全体で,
は有限個を除いたほかの全ての
に共通な元の全体である(除かれる集合は元によって違いうる).故に
.
が増大列,すなわち
ならば,

が減少列,すなわち
ならば



の各元
に,一つの数
が対応するとき,
を
における点函数という.
特に
なるとき
,
(余集合)なるとき
なる函数
を
の定義函数という.逆に,
または
なる値のみをとる点函数
が
において与えられるならば,
なる点
の全部を
とすれば,
はすなわち
の定義函数で,また
は余集合
の定義函数である.
において,
の定義函数を
とすれば,


[編集] 106.加法的集合類(
系)
の部分集合の一類 M が次の条件に適合するとき, それを
系(または加法的集合類)といい
系 M に属する集合を M 集合系と略称する [* 1] .
- 1°.M集合の列
の合併はM集合である.すなわち
…) ならば
.- 2°.M集合の差はM集合である.すなわち
ならば
.特に,空集合は
として M に属する.
前節 (5),(6) によって,
なるとき,
も M 集合である.
M の中に最大の集合
があるとき(すなわち
ならば
),M を 閉じた
系 という.この場合には 2°を次の条件で置き換えてよい.
- 2'.M は
と同時に,
に対する
の余集合
を含む.
実際,
ならば
で,
.
の部分集合の任意の一組
があたえらるとき,
に属する集合から,列の合併および引算(差を作ること) によって,次から次へと週ずる集合の全体は,一つの
系を成すであろう.それは
を含む最小の
系(
から生ずる
系)である.
のすべての集合は一つの
系を成すが,それは
を含む.このように
を含む
系は確かに存在するから,
を含むすべての
系の共通部分は,すなわち
から生ずる
系である.
に属する集合列の合併として生ずる集合を一般的に
,またその交わりとして生ずる集合を
というように書けば,
またそのようにして,すでに生じた一組の
からさらに生ずる
は,みなこの
系に属する. (故にこの最小
系でも,ほとんど無際涯というべきで,いささか心もとない.すでにできている
系ならば安心である!)
- ↑ 類=class は論理学上の意味で言う.または通俗的に族(family),系(system) などとも言う.外延では,M は
の特殊の部分集合を元とする一つの集合(集合の集合)である. 故に
は ‘
は一つの M 集合である’ことを意味する.
は無限列に関して加法的になることを,また M は mesurable (後出) を示唆する.
[編集] 107.M 函数
σ 系
に属するある M 集合
において,点函数
が定義されているとする.すなわち
は集合
の元である:
そのとき,一つの実数
に関して,
なる
の全体の集合
は一般には必らずしも M 集合を成さないであろう.もしも,その集合
が各〻の実数
に関して M 集合ならば,
を M 函数と略称する.
これより後,或る指定された性質
を有する(または条件
に適合する)点
の全体の集合を
または 
と書く.例えば,上記 M 函数の定義においては,集合
を定義する条件
は

で,
が M 函数であるとは,すなわち,すべての実数
に関して

となることである.今ここでは集合
の元は
,ただしその
は
で
であるが,これらは当然として省略すれば,簡明に

さて,すべての実数
に関して

が M 集合なることは,同等なる条件である.――第一と第三と,また第二と第四とは
に対して互に余集合だから,もちろんだが,

だから,すべてが同等である.故に M 函数の定義において,(2) の四つの集合のうち,どれを取ってもよい.
が M 函数ならば,
は M 集合である.逆は成り立たない.
![]() |
なるとき |
![]() |
![]() |
| なるとき |
として,
を
の正の部分,負の部分という.すなわち
であるが,
が M 函数ならば,
も M 函数である.
に収束する単調減少の有理数列を
とすれば,
だから.次の定理は,証明の手段として,しばしば応用される.
は階段的なる M 函数の増大列[* 2]
の極限である.階段的なる函数とはその函数の取る相異なる値が有限個に限ること(値域が有限集合なること)をいう.
の値を十進数で書き表して,小数点の上下共に
位で打切って,それを
の値とすればよい.
は多くとも
この相異なる値を取る.すなわち階段的だから,それが M 函数であることをみるには,
のとる各〻の値
に関し
が M 集合であることを確かめればよいが,この集合は
に等しいから,よろしい.
は明白である.一定の M 集合
を共通の定義域として有する函数のみを考察するとき,次の諸定理が成り立つ.
が M 函数ならば,

ならば,
なる有理数
がある.よって

が M 函数ならば,
,(
は実数), (2º)
, (3º) 
,特に
に関しては明白.
だから,一般に M 函数の平方が M 函数であることを示せばよいが,
は,
ならば
,
ならば
,また
ならば,
だから,よろしい.
に関して

も M 函数である.
と置けば
.
も同様.また
と置けば,
は M 函数で減少列をなす.従って
は M 函数である.
も同様(または
から).
を函数値として許容する.これは場合の区別から生ずる煩雑を緩和して,陳述を簡明にする手段にほかならない.そこで
と差別するために,個々の実数
を有限という.函数
は有限とは,それが
または
なる値を取らないことをいう.故に有限は有界とは違う.なお運用上,次の規約を設ける.

は無意味とする.
を略して
とも書く.
の項にも
を許容する.級数
の項に
または
が含まれる場合には,
をも込めて,
のすべての正の項の和を
とし,
をも込めて,すべての負の項の和を
とするとき,
が
となる場合を除いて,
の値は確定で,
を
の値と規約する. M 函数
が有限でないときにも

は
に対する余集合の記号である.任意の集合
において与えられた点函数
に対応する
内の集合

を
の函数とみるとき,それは単調減少,すなわち
なるとき 
であるが,なお (3) によれば
![\left.\begin{matrix}
E(t)=\displaystyle\bigcap_{t'<t}E(t'),\\[10pt]
E(-\infty)=E\qquad E(\infty)=\displaystyle\bigcap_{t'<\infty}E(t').
\end{matrix}\right\}](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/b/9/1/b91d6a4eb3e77b5e6dc9ff56837a87dd.png)
今逆に条件 (4) に適合する集合
が
において与えられているとすれば,それから (3) に適合する点函数
を定義することができる.それには
なる
の上限が
なるとき,
とすればよい.――それは明白であろう.実際,
ならば,
,従って
.故に
.また
ならば,
,すなわち
だから,
なら
.従って (4) から
.故に
.すなわち (3) が成り立つ.
なるときは,
とするのであるが,そのときには,すべての
に関して
だから (3) は
でも成り立つ.また
ならば,(3) は
となる.
が有限なるときには,
なる
は実数の一つの切断の下組で,
がその下組の最大数である.それは
を意味する.
さて,すべての有理数
(あるいは,実数内に稠密に分布されている数の可算集合に属する
)に対応して,
内に集合
が与えられているとき,任意の実数
および
に対して

によって
を定義し,また
とすれば,
は条件 (4) に適合する.実際,
のとき
とすれば,

従って

逆に
とする.今
として,
なる
を取れば,
だから,(5) によって
.
の
は任意の有理数だから
.故に (4) が成り立つ.
もしも
が M 集合ならば,(5) は M 集合の列の共通部分だから,
が M 集合,従ってそれから定義される点函数
が M 函数である.
[編集] 108.集合の測度
集合の一類
(
は σ 系をなさなくてもよい)に属する各集合
に実数または
を対応せしめる函数
が定義されているとき,
を
における集合函数という.σ 系
における集合函数に関し
が単純和なるとき,下記 (1) の右辺が確定(401 頁,[附記]参照)で

ならば,
は加法的であるという.
は交換律に従うから,級数
は絶対収束をする.ここで絶対収束とは,無条件収束の意味,すなわち,級数
が項の順序および括り方に無関係に,一定の値(
をも込めて)を有することをいう.
(1) が無限列に関して成り立つことを強調するためには,‘完全に加法的[* 1]’ともいうが,我々はむしろ (1) が有限列に関してのみ成り立つことを,‘弱い意味で加法的’ということにする.
さて,次のように測度の定義を立てる.
における集合函数
が完全に加法的で常に正なる(負でない)とき,
(または
とも書く)をもって,
の測度とする.
の値として
をも許容するが,
なるときは,
は
が有限なる集合
の増大列の極限(合併)として,‘到達される’とする.(すなわち
なる集合列
の存在を仮定する.)[* 2]
差し越しながら,この仮定のもとで
となる(下記定理 87).
ならば,
は単純和だから,定義によって
.また,定義によって
だから,
.すなわち
は‘単調増大’である.
は閉じた σ 系であるから,最大集合
を有する,故に
なる
がある場合には,
から
.従って仮定によって
なる集合列
が存在する.そのとき
で,
.すなわち
が定義の末端に述べた集合列である.空集合に関しては,
.――実際,定義によって
なる
はある.従って
から,
.
だから
.
これらは定義の言葉尻であるが,重要なのは
の完全加法性である.完全加法性は連続性を意味する.すなわち次の定理が成り立つ.
とすれば,
.

がすべて有限ならば,
だから,

ならば,
.すなわち
.
とすれば,
なる仮定の下において,
.[編集] 109.積分
閉じた σ 系
において測度
と,集合[* 1]
における点函数[* 1] とが与えられているとき,
における
の積分を次のように定義する.
なるとき,


の任意の分割とする.すなわち
を
の有限単純和とする.そのとき,
における
の値の下限を


に関する上限
を集合
の上の
の積分といい,それを

として
を許容するが,その場合,
または
が
なるとき,規約
(401 頁)を適用する.
の符号が一定でない場合には,それを正・負の部分(400頁)に分けて,
として,

で,右辺が
の形になる場合だけを除いて,この定義は有効で,積分の値は確定する.このように定義された積分の値が有限であるとき,
は
の上で積分有限(積分可能[* 2])であるという.
次の定理は積分の定義から,ただちに,得られるものである.
が単純和で,
の上で
が確定ならば

としてよい.また積分の定義 2.によって
としてよい.さて
を
の分割
として,


の分割である.それらを
と書けば

は任意だから,上限へ行って

の任意の分割を
とすれば,それを合わせて
の一つの分割
が得られて

は任意だから上限へ行って


において
は定数に等しいから,
.これは積分の定義によって明白であろう.
ここで
が M 函数であることを用いた.そのために
が M 集合で,
が確定する.
において
ならば,両辺の積分確定のとき,

とすれば,
は単純和である.さて
では積分の定義 1.から (1) を得る.
では積分の定義 2.から,(1) の左辺は
,右辺は
だからよい.また
では
で,
だから,(1) が成り立つ.故に 1.によって
において (1) が成り立つ.
が有限なるためには,
が有限なることが必要かつ十分である。
とすれば,1.によって

の正,負の部分
(400頁)を用いて,

が有限なることと同等であるから,4. が得られる.
において
は有界で,
,また
は積分有限とすれば,
の中間の或る値
をもって

ならば,
.
が有限ならば,
の測度は
である.
の積分が有限である.よって
としてよい.もしも
に関して
とするならば,
を一つの成分とする
の分割
において,すでに
.従って
.それは矛盾である.
が有限なるとき,
とすれば,
のとき 
上記 6.,7.,8.に関連して,次の定理を記録しておく.それは後に至って,一般的の見地から証明されるであろう(419 頁,6.および[注意]参照).
が有限で
ならば
のとき 
[編集] 110.積分の性質
積分の性質を続けて述べる.
,従って(前節 3.)

の極限へ行って

の分割
において,
として


は任意だから,上限へ行って

,すなわち
と書いて

ならば,(
でも)右辺は
で,左辺は
だから,問題はない.同様に,
ならば,(
でも)問題はない.よって,
とする.
をもって

と
が同時に出ていてはいけない.特に,右辺の各積分が有限なるとき,左辺も有限で,等式が成り立つのである[* 2].
に関して,次の式を証明すれば十分である:

に関して
,かつ

が存在すれば(特に
(定数)ならば),

は積分有限である.また §109,6.,7.によって,
と仮定してよい. まず一般に
と置けば,
で,
は増大列だから,定理 88によって,

だから



に適用すれば(上記の仮定
を用いて),

を引いて,

から,



のはずであるから,(9),(10) から

だから,等式が成り立って,(7) を得る.
定理 90 が上記のように寛大な条件の下において成り立つことは,Lebesgue の理論の著しい成功というべきであろう.
以上,積分の最も重要な性質を述べたが,ここで,積分の定義そのものを反省してみよう.我々は
を分割して
における
の下限
をもって
を作って,その上限として積分を定義したが,同様の立脚点において,
における
の上限
をもって,和
を作り,
の下限として積分を定義することも考えられる.しかし,
は有限,また
において
は有界(
)なる根幹的の場合においては,このような定義からも積分は結局同一に帰する[* 5].
に目盛り


のこの分割
に関しては



は特別な分割であるが,一般に二つの分割
を合併して分割
が作られる.すなわち




は任意だから

を用いて

は任意に取れるから

を有限列
に分割して
を定義したが,上に述べたような思想圏において,
を無限単純列
に分割して,そのような分割
に関して
を定義して,
をもって積分を定義することである.然るに,
は
の再分と考えられるから,
であるが,一方
であるから,
である.
に関しても同様である.Riemann 積分に関して §30 に述べた Darboux の和においては,このような結果は得られなかった.あそこでは,
を単に有界としたが,ここでは
を M 函数とした.あそこでは
をば,区間を区間への分割に限定したが,ここでは,M 集合
を自由に M 集合に分割することを許したのである.
§109 に述べた積分の定義は簡明であるが,なお Lebesgue の定義との連絡のために,次の定理をつけ加える.簡明のために正なる函数を考察する.
において
とする.正数の範囲に目盛り
)

なる条件の下において,

に対応して,

を取れば,
のとき,

のとき


による(§109,6.).さて,ここで二つの場合を区別する.
と置けば,
は単調減少であるが,
だから,

すなわち積分
は Riemann 積分
に等しい.次の定理は後に至って応用されるが,それ自身としても興味あるものである.
§109,5.において
とすれば,
において
なるとき,
で,これが本来の平均値の定理ともいうべきものである.この関係は,加法的集合函数としての積分の特徴である.すなわち次の定理が成り立つ.
- ↑ 400 頁脚注参照.
- ↑ 2.0 2.1
が無意味(
)になる点
があっても,定理の‘ただし書き’の下では,それらの点
の集合
の測度は
である.実際,右辺の各項が,例えば,
でないとすれば,各〻の
が
となる点
の集合の測度は
である(前節 7.).故に測度
の集合
を無視して,上記左辺の積分を
の上の積分と書くのである(前節 6.). - ↑ 次の定理 91 によれば,この関係 (8) は404 頁 (2) と同様である.
- ↑ ある M 集合
の部分集合なる M 集合の全体は
を最大集合とする閉じた σ 系を成す.それを
とする.
における函数
の積分
が確定であるとき,
における
の積分
が
における加法的集合函数であることを,簡略して積分は集合函数として加法的であるという(401 頁,[附記]参照). - ↑
,または
が有界でない場合には,
による定義は適切でない.これら極限の場合をも順調に包括するためには,
を取らねばならない. - ↑ この
は通例
と書くのだけれども,和はすべての自然数
の上にわたるのだから,
.すでに 401 頁の規約を設けた上は,上記のように
に
を附記するのが正当である.特にここでは
に関する項が別になるのだから,明瞭のために,この記法を取った. - ↑
の部分集合なる M 集合の成す σ 系における加法的集合函数を,簡単に
における加法的集合函数という.以下同様.
[編集] 111.加法的集合函数
σ 系
における加法的集合函数
の定義は既に述べた(403 頁),すなわち
に関して
.これより後,簡単のためこの定義に次の条件を追加する.
集合
の内で,
は有限である:
ならば 
この条件のために次の定理が成り立つ.
は
において有界である.すなわち一つの定数
をもって,
なるとき,
.
と置けば定義の (2º) によって
,もしも
が有界でないとするならば,任意の
をもって

が存在する.従って


または
の内で
は有界でないはずである.今両者のうちで
が有界でないほうを改めて
と書いて,同様の考察を継続すれば,

を得る.そこで
とすれば


が加法的ならば,
のとき 
が与えられているとき

が定義される.
を空集合とすれば,
だから,上記の
は
,
は
,従って

をそれぞれ
の正の変動(または変分),負の変動といい,また
を
の絶対変動(または全変動)という.
は加法的である.
を単純和とし,
と書いて,
を証明する. 任意に
を取って
とする.然らば上限としての
の意味によって,

がある.そこで
とすれば,これも単純和で,
だから,

は収束するが,
は任意だから
. 逆に
とすれば,
は単純和で,

は任意だから
.故に
.すなわち
は加法的である.従って
も加法的である.
は
内で到達される.すなわち
なる分割があって[Hahn の分割],

ならば,
,
ならば,
.
なる
に関しては


の存在を示せばよい.そうすれば(定理 96)


2º も (4) から得られる.実際,(4) から
だから,
なるとき
.同様に
だから,
なるとき
.
次に,
ならば,2º によって
,従って
.また
ならば
.故に
は
の Hahn 分割である.それが 3º である.
を求めよう.
と置く.そのとき
より小なる一定の
に対して

が
内にある.そうして


に関して


で
は任意だから,
の極限へ行って,
. 一方,
から,
.よって 404 頁 (2) と同様に(あそこの
に
をあてて),

に行って
.
すなわち
は (4) に適合する.
[編集] 112.絶対連続性 特異性
σ 系
における一つの測度
に基づいて,一般の加法的集合函数の連続性を考察するために,次の定義を立てる.
において加法的なる集合函数
が
なるとき 
を
において絶対連続という.
また
が
ないでほとんど常に
なるとき,すなわち
なる一つの集合
以外で常に
なるとき,
を特異函数という.そのとき,
で
なのだから,
.
次のことは定義によって明白であろう.
の正・負の成分
および絶対変分
は絶対連続である.
が絶対連続で,
が任意の実数ならば,
も絶対連続である.一般に絶対連続な函数
の実係数
をもっての一次結合
は絶対連続である.
において絶対連続なる函数の列
が,すべての
に関して
に収束するならば,
は絶対連続である.
の各集合において
が絶対連続ならば,
は
の合併
においても絶対連続である.上記 1.-4.において‘絶対連続’を‘特異’で置き換えてもよい.
において絶対連続で,かつ特異な函数は常に
に等しい.
が特異ならば,
.その
が絶対連続ならば,
から,
.従って
.
が絶対連続ならば,
なるとき
なることを証明する.定理 96 によって
の場合を考察すればよいが,今間接法を用いるために,
で,しかも
ではないと仮定する.然らば
の中に,或る数
に関して
なる
が無数にあって,その中から
なる
を取り出すことができるであろう.それらの
に関して
と置けば,
,従って
.
は任意だから,
.故に絶対連続性の定義によって
.然るに404 頁 (3) と同様に[* 1]
.これは不合理である.故に
ならば
.すなわち
なるとき
なることは,
なるとき
なることを意味する.それを見越して,絶対連続の定義を既述のように立てたのである.
であっても,それは
,すなわち
が空集合であるのではない.だから単に
からしてすでに
が保証されることは,高度の連続性といわねばならない.
の測度が有限なるとき(または一般に
が有限測度の集合列の合併であるとき),
において加法的なる集合函数は絶対連続な函数と特異函数との和として一意に表わされる[Lebesgue の分割].
は前の通りとして,
において加法的なる集合函数が絶対連続なるためには,それが或る点函数の不定積分であることが,必要かつ十分である[Radon-Nikodym の定理].
,また
は
において加法的として,
なる
に関し,

と
なる M 集合
との存在を証明する.然らば
,従って
なるとき,
だから,
は特異函数で,また
は絶対連続であるから(前頁,6.)定理 99 にいう Lebesgue の分割の可能性が確定する. また
ならば,それを単純和に直すことができるから,加法性によって
においても (2) が成り立つ.Lebesgue の分割が一意的であることは簡明である.今

は特異,
を絶対連続とすれば,

に等しい(前頁,5.).
Lebesgue 分割が一意だから,(2) から定理 100 にいう条件の必要性がわかる.それが十分であることは既知である(§109,6.).
さて,(2) の証明であるが,
に関する Hahn の分割(定理 98)
によって,例の通り
としてよい.仮定によって
だから,
を任意の有理数として,
において加法的なる
に Hahn の分割を適用して,
において
,
において 
.すなわち
は
に対する余集合(以下同様).また,負(
)なる有理数
に対して,
と置く.然らば,
なるときにも,(3) は成り立つ. 今,任意の実数
に対して

に関して,
において 
において 

に対して (3) から

のはずだから,
.故に
は特異函数である.よって
と置けば


が求められればよい.このような
は 402 頁に述べたようにして,
と置いて,(4),(7) の集合
から得られる. 実際,そのとき

なる
と
なる
に関して
なるとき 
ここで,§110,(18) の仮定が,
において成り立つ.実際,(4),(7) によって
だから,(8) の前段の式によって,
において
,従ってあそこの
は空集合となり,
が成り立つ.
は仮定した.
,従って
だから,(9) によって,
なる
に関して

[編集] II.Lebesgue の測度および積分
解析概論/第9章/Euclid空間 区間の体積 解析概論/第9章/Lebesgue測度論 解析概論/第9章/零集合 解析概論/第9章/開集合・閉集合 解析概論/第9章/Borel集合 解析概論/第9章/集合の測度としての積分
[編集] 119.累次積分
前節の方法を応用して,高次元積分を低次元積分のくりかえし(累次積分)に帰せしめることができる.すなわち次の定理が成り立つ.
定理の意味は次の通りである.積分 (1) が確定(または有限)ならば,ほとんどすべての
に関して,
は
における L 函数で,積分
は,ほとんどすべての
に対して確定(または有限)で,
における L 函数となる.そうして (2) の右辺の積分が確定(または有限)で,(2) が成り立つというのである.
の場合.
から生ずる縦線集合

の L 集合で,(1) の
は
の測度である(定理 109).すなわち


の断面
は
空間における縦線集合,
派その空間における L 測度である.前に述べたように,
は或る零集合に属する
に対して無意味のこともあろうが,その零集合を無視しても,(3) の右辺の積分の値には影響はないのである. さて,
が L 集合なる
に対して,
は
における L 函数であり,

に対して有限である.
が正負の値を取る場合.
と
とを別々に考察すれば,1º.によって

に対しては,ともに L 函数で,そのうちの一方は有限である.故に

に対して確定である(無意味
でない).(6) の両辺を空間
において積分すれば,(5) の右辺の差が,(2) の積分に等しいことがわかる.累次積分における積分の順序が自由にできるところにも,Lebesgue 積分の優秀性が認められるであろう.
次の定理は,定理 110 からの直接の帰結であるが,定理 110 とあわせて,積分の順序の変更に関し,実用上,有効である.
における L 函数
に関し,累次積分

の
における積分は有限である.- ↑
は
空間
,
空間
における積分を示唆する.
[編集] 120.Riemann 積分との比較
Lebesgue 積分と Riemann 積分との関係を考察するに当って,解説を透明にするために,予備的の説明から始める.
の有界なる集合
において,有界なる任意の函数
が与えられているとする.点
の近傍
(すなわち
を内点とする開集合)と
との共通部分における
の値の上限
は[* 1]
が縮小するとき,減少(不増大)するであろう.すべての
に関するそれの下限

において確定する.
が
内を動くとき,
は
における函数である.大小の関係を逆にすれば,同様にして函数

の代りに,単調に
に収束する開区間の列
を取ってもよい.任意の
の内に或る
が含まれ,また任意の
の内に或る
が含まれているから,それは明らかであろう.さて

において
が連続なることは,すなわち

は
において半連続という(
ならば上半連続,
ならば下半連続). 今
の全局において,一律に
を定めるために §116 に述べたような基準格子系列
を取るならば,各点
は格子
において一定の(半開)区間
に属する.そこで

は階段的なる B 函数で,それらは,それぞれ,一定の
に関し,
と共に単調(広義)に減少または増大する.従って

も B 函数である(§107). さて
と
との関係はどうであるか.もしも点
が格子系列の各
において,区間
の内点であるならば(上記の
に
の開核を代用してもよいから)

が或る
において,従って
において,区間
の境界上(格子線上)にあるならば,(
が
に限定されるために)


従って
は B 函数である[* 3].
が有界なる区間
において与えられているとする.§90 で述べたように,分割
は基準格子系列
によるものに限定してよいから,
の代りに
と書く.そうすれば,それらは階段函数の L 積分として,次のように表わされる.

の極限へ行って(定理 90),


は L 積分として表わされる.そこで,Riemann 積分可能の条件
は

だから,これは
において

において有界なる
の Riemann 積分が可能なるために必要かつ十分なる条件は,
における
の不連続点が零集合をなることである.その場合 Riemann 積分は Lebesgue 積分に等しい. この意味において Lebesgue 積分は Riemann 積分の拡張である.[編集] 121.Stieltjes 積分
Euclid 空間
において,区間の函数
が加法的であるとする.そのとき,
を区間の体積
に代用して,Lebesgue 式に,それをひとつの σ 系の集合
にまで拡張して,
を完全に加法的にすることができるならば,その
を §108 の意味の測度として,その測度に基づいて,積分論を組み立てることができるであろう.或る条件の下において,それは実際可能である.そのようにして定義される積分を Lebesgue-Stieltjes 積分という.
今一次元空間
に関して,その大要を述べる.
の有界変動の函数
を取って Riemann 式に積分を定義した.すなわち区間
において,積分されるべき函数を
とするとき,区間の分割



のとき,一定の極限値を有するならば,それを
に関する積分

になる特別の場合である.最も簡単な場合として,
を連続とすれば (1) が可能であることは,Riemann 積分の場合と全く同様である(これを §39 で述べた).
から,
において区間の加法的函数を導くために,まず
において
を有界で単調増大とする.
が区間
においてのみ与えられているときには,
なるとき
,
なるとき
として,
の定義を
に拡張する.そうして開区間
および一点
から成る集合
に関して,区間
の函数
を次のように定義する.

![w=[x]\colon\qquad\mu(w)=\varphi(x+0)-\varphi(x-0).](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/7/c/9/7c953f7e5f4adde6ec34aa99d562d570.png)
を加法的に定義することができる.例えば閉区間
![w=[x_1,x_2]=[x_1]+(x_1,x_2)+[x_2]](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/d/b/6/db6d3146618456afdb52e2066351e010.png)

は区間に関して加法的である.例えば
の内に分点
を取れば(
),
![\begin{align}
(x_1,x_2)&=(x_1,x)+[x]+(x,x_2),\\
\mu(x_1,x_2)&=(\varphi(x-0)-\varphi(x_1+0))+(\varphi(x+0)-\varphi(x-0))+(\varphi(x_2-0)-\varphi(x+0))\\
&=\varphi(x_2-0)-\varphi(x_1+0)
\end{align}](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/e/9/f/e9fac93e97de37704c0f154b2ad85f74.png)
は完全に加法的である.(3) からみえるように,
なるとき,
が
の連続点ならば
だから,加法に関しては考慮を要しない.
の不連続点は無数にあっても,可算であるが[* 1],もしも
が開区間およびそれらの点の列に分割されて,
ならば 
よって §114 と同様の方法によって,
において σ 系を成す集合
の一類にまで,
を拡張することができる.その σ 系は,少くとも,すべての B 集合を含むであろう.
を測度として定義されるのが,Lebesgue-Stieltjes 積分である.特に積分範囲が区間
であるときは,積分を

は二つの増大函数の差:
として表わされる.その場合には,定義として

- ↑ 単調増大函数
の不連続点を,そこでの飛びが
の範囲にあるものに分けて算えればよい.
[編集] III.集合函数の微分法
[編集] 122.微分法の定義
において,集合函数
が与えられたとき,点
における
の密度ともいうべきものを考察して,
における点函数を導き出すことができる.例えば,
を中心とする
次元立方体(区間の意味でいう)を
として,
が
に収束するとき

の極限を考察する.そうして
のとき,

を点
における
の上・下微分商といい,両者が一致するとき,その共通の値

を単に微分商という.
が変動するとき,これらの微分商を点
の函数とみて,それを
の導函数という[* 1].
上記の定義において,
に収束させる
を立方体に限る必要はない.例えば,
を中心とする
次元の球としてもよい.これらはいわゆる対称的微分商であるが,最も一般には,
を含む任意の集合
を取ってもよい.ただし
なるとき,
の形に若干の制限を加えることが適切でもある.
があまりに極端な形を取ることを防ぐためには,集合
を包む最小の立方体を
として,

をかりに
の正則性の指数 と名づけて,それが
でないことを要求する.これは十分寛大な制限である.以下,我々は
に収束する閉集合の列
において,
が一定の正数(
)よりも小でないとき,
を正則といい,
の下限
を
の正則性の指数という[* 2].
以下,集合函数
は少なくともすべての B 集合に対して定義されているものとし,また微分商に関しては
に収束する集合
を正則なる閉集合に限定して


を一般的に上,下,または単に導函数という.極限値として
を許容すれば,
は各点
において確定するが,
は必らずしも存在しない.
が存在するとき,
は
において微分可能であるという.通例は
を要求するが,広義では
をも許容する.
導函数を導くために集合
に課せられる制限が加重するに従って,
は増大(不減少)し,
は減少(不増大)することは当然である.
の意味は明瞭であろうけれども,念のために説明をする.簡明のために
を
と略記する.
を含んで
に収束する正則なる閉集合を一般的に
と書いたのだが,なお精密に
を中心とする半径
の円(二次元に即していう)に含まれる
の全体を
とする(点
をも正則なる閉集合と見られないでもなかろうが,それは
から除外する).そうして
に属する
に対する
の値の集合(値域)の上限を
とすれば,それは
が減少するに従って単調に減少する.そこで
とすれば,

これが (1) の意味である.
はまた数列の
に基づいて

としても定義される.ここで
は
に収束する正則なる閉集合の列である.(3) は (1) の左の式と同等である.実際,まず
を含む上記の円の最小半径を
とすれば
.従って
.故に
.
さて,一方において,
とすれば,
なる
があるが,
の極限へ行って
,
は任意に取れるから
.すなわち (3) における
は実は
で,
は或る集合列
に関する
に等しい.
に関しても同様である.
- ↑ 微分法,微分商,導函数は,意味よりも言葉の響きにたよって,仮用する.元来,点
における
等も,その
を動かして生ずる点函数
等も,統一的に dérivée(導き出されたもの)と呼ぶフランス式が最も簡潔である.この意味では,
を(微分商の代りに)導来数,
を導来函数,また集合函数
から点函数
を導き出す算法を(微分法の代りに)導出法(derivation)とでもいうべきであろう.ここでは,単独に‘微分’というものはない.従って微分係数も困る.我々は思想の実質を重視して,用語の詮議にあまり多くの関心を有しないが,
など,明確な表現があるから,安心である! - ↑
だけが要求される場合,
の定義において
を,立方体の代りに,球にしてもよい.
[編集] 123.Vitali の被覆定理
において任意の集合
の各点
に収束する正則なる閉集合の列が与えられたとき,それらの集合の中から単純列
を抽き出して,それだけで,ほとんど全く
を覆うことができる.すなわち
に含まれない
の点は零集合を成すのである:

と総称する.
は有界で,集合
に正則性の指数は一定の正数
より大きいとする.
を含む一つの有界なる開集合を
として,集合
は
に含まれるもののみをとっても差し支えない.
から任意に一つの集合
を取り出して,
に触れない集合
の径の上限を
とし,それらの集合
の中から
の径
なる一つの集合
を取り出す.同じようにして,次々に
を定めて行く.すなわちすでに
までが定められたとき,
なる閉集合がまだ全く
を覆っていないならば,それに触れない集合
の径の上限
だから,その中から
なる
が取り出されるのである.このようにして,
から取り出される有限または無限の単純列
が定理の条件 (1) に適合するのである.
まず仮定によって,
を包んで
なる円
があるが[* 1],
だから,
は収束する.従って
のとき,(円
の直径)
,故に
.
さて,
に属して
に属しない点
があるとして,その
に収束する集合
の中の任意の一つを
とすれば,
は
の中のどれかと交わる.――さもなければ,すべての
に対して
で,
に矛盾する.

を同心の
にまで
倍(
,後述)に拡大するとき,
は収束するから,十分大きい
に対して,


がある.この点
は
に属しないから,
を含んで
に交わらない
の集合
があるが,前にいったように,
は
の中のどれかと交わるのだから,
の中で
と交わる最初のものを
とすれば,
で,
は
とは交わらない.従って

は
には属しないのだから,
は
の外部の点
を含む.また
は
内にある
と交わるから,
の内部の点をも含む.従って

とすれば,これは (3) と矛盾する.すなわち
は不合理である.故に (1) が成り立つ.
を中心とする半径
の円の内部を
とする.
の点
が
に含まれ,かつ
に収束する
の集合列の正則性の指数が
よりも大きいとして,そのような点
の集合を
とする.従って
は増大列で,
. さて 1º によって,集合
の単純和
でほとんど
が覆われる.すなわち

は有界だから
は収束する.よって十分大きく
を取って

と置くとき



は開集合
に含まれ,その各点に正則性の指数が
より大きい集合
の列が収束するから,前と同じようにして,それらの
集合の中から単純なる有限列
を取り出して

は閉集合
の外にあるから,

は集合
の有限単純列で,

から始めて,どこまでも続けられるから,記号を変えて,集合
の或る単純列
に関し,各〻の
に対して,(6) が成り立つと見てよい.そのとき,(7) によって
は増大列だから,

は集合
の単純和で,

を決めておいて,任意に
を取れば,
から


は任意であったから,
を得る.これから
を用いて

をもって,(1) を得る.- ↑
は正則性の指数
に関係する定数.二次元では
でよい.
[編集] 124.加法的集合函数の微分法
準備として,B 集合に関する次の考察を挿入する.
を正なる加法的集合函数[* 1]とする.一般的に開集合を
,閉集合を
で表せば,

であるが,B 集合
に関しては

が成り立つ.それを見るために,(1) を成立せしめる L 集合
の一類を
とする.
任意の閉区間
は
に属する.実際,
なる列
があるから,定理 95によって,

さて,
は σ 系をなす.
から
だから,
と共に余集合
が
に属する.次に,
とすれば,
である.実際,
とすれば,(1) によって,
から

なる
がある.今,
とすれば,


然るに
は閉集合の増加列の極限だから,

なる
があって(定理 95),
である.すなわち

なる
がある.
は任意だから,(1) が成り立ち,
である.
任意の閉区間が
に属するから,
は少なくともすべての B 集合を含む.すなわち
が B 集合なら (1) が成り立つ.
を正なる加法的集合函数とし,任意の集合
の各点において
とすれば,
で,
を含む B 集合
関して,
.
を集合
を含む B 集合とする.然らば,任意の
に対応して,(1) によって,

なる開集合
がある.また任意に
なる
を取れば,仮定によって,
の各点
に収束する正則なる閉集合
の列があって,
.これらの集合の中から
に含まれる単純列
を取って,ほとんど
を覆うことができる(定理 113).故に (2) から

仮定により
だから
,また
は任意,
も任意だから,
.
において
ならば,
.実際,この場合,任意の
に関して
.
は有限だから
.
は前の定理の通りとする.任意の集合
において
,ならば,ほとんど
を覆う B 集合
が存在して

として証明すればよい.そのとき任意の
に対して,

とする.
とすれば,仮定によって,
の各点に収束する正則なる閉集合
の列があって,
だが,それらのうち,
に含まれる単純列
を取って,ほとんど
を覆うことができる(定理 113).そこで
とすれば

今,
に対応する
を
と書いて,改めて
とする.すなわち

従って
とすれば,

を加法的なる集合函数とする.今

なる点
の集合を
とする.もしも
とするならば,或る有理数
に関して

なる点
の集合を
とするとき,
.また,
(定理 114).
然らば,ほとんど
を覆う或る B 集合
に関して(定理 115)

一方,
から(定理 114)

従って

だから,これは不合理である.故に
,すなわち

の符号が一定でないならば,

で,
.故に定理は成り立つ.
が加法的集合函数の単調列で,

ならば

を増大列として,

と置けば(減少列の場合には
と置く),
で,
は減少列である.故に
も
に関して減少列である.そこで

を示せばよい.
もしも,これが真でないとするならば,或る
に関して

なる集合
が存在すべきである.然らば(定理 114),
なる任意の B 集合
に対して,

だからこれは不合理である.
は加法的で,L 集合
の内で常に 0 に等しいとする.すなわち
ならば
.然らば,
において
.
として十分である.或る B 集合
をとって,
とする(§117).
かつ
なる
の集合を
とすれば,
(定理 114).仮定により
だから,
.さて,
なる
の集合は
の合併であるから,それは零集合である.故に
において
.然るに
だから,
において
.
に関しては
.- ↑ L 集合に対して定義される,完全に加法的で,有限なる集合函数の意.以下同様.
はもちろん L 測度である.
[編集] 125.不定積分の微分法
の定義函数を
として,
と書けば,

すなわち
の内では
,余集合
の内では
.
と置けば

故に
が微分可能なる点において,すなわち,ほとんど各所(定理 116),

さて,
においては
.従って(定理 118)
.また
においては
,従って
,従って (1) から
.[* 1]
を積分可能(有限)なる点函数,

とすれば,

の導函数
は積分可能で,
は
の不定積分と一つの特異函数との和に等しい.右辺の積分において,
内の或る零集合
では
が存在しないこともありうるが,そのような
は積分範囲
から除くべきである.それを了解の上で,上記のように書いた.
は常に存在して,

であるから,積分記号の下へ
または
を入れてもよい.
以上,我々は
を 446 頁に述べた一般的の意味に取ったが,あるいはそれを狭義にしても,結果は同じである.狭い意味を,かりに記号
で示せば,

[編集] 126.有界変動・絶対連続の点函数
において加法的なる集合函数
に対応して点函数
が定義される.すなわち
なるとき
とするのである.今最も興味ある場合として,
を連続と仮定する.すなわち
なるとき
とするのである.
は集合
の径,すなわち
においては,
を含む区間の幅(長さ)の下限である.故に
が一点から成り立つとき,
で,
は点函数として連続である.
が有界なる
に対して有限,したがって有界(定理 94)であることを仮定するならば,
に対応する
は
において有界変動である.
の正負の変分
および絶対変分
に対応する点函数を,それぞれ
および
と書けば,

は単調増大である(§111). さて,
を既述の意味([[解析概論/第9章/絶対連続性 特異性|§112)で絶対連続とする.すなわち
なるとき,
.
の加法性のために,それは
のとき,
を意味するのであった(419 頁).
のこの絶対連続性は,それに対応する点函数
の性質として次のようにいい表わされる.――今互に重なり合わない小区間
の有限列の合併を
とし,それら小区間
における
の変動の絶対値の和を


の絶対連続性によって,
のとき,
.詳しくいえば,任意の
に対応して
が定められて,
なるとき 
のこの性質を Vitali が絶対連続と名づけた.これが絶対連続という用語の由来である.すなわち,Vitali の意味で絶対連続なる点函数に対応する集合函数
が絶対連続と名づけられたのである.
逆に
が絶対連続ならば,
も絶対連続である.――まず
が絶対連続だから,(1) において
を固定して,それに対応する
を取って,任意の区間を長さが
を超えない小区間に分けて,それらの区間の数を
とするならば,その区間における任意の小区間群
に関して,
だから,
は有界変動である.故に
が単調増大なる場合を考慮すればよいが,そのとき
だから,今
とするならば,
なる開集合
の列があって,
.故に
.すなわち
は絶対連続である.
同様の意味で,特異なる集合函数
に対応する点函数
をも特異というならば,
に関しては,
を任意の区間とするとき,任意の
に対して
で,
なる区間列
が
内に存在する.
において
を連続とする.その区間内で
を固定し,
を動かして,





は‘
’の略記,
は‘
’の略記である.もしも 1),2) が一致するならば,その共通の値を
と書く.それは
における
の右への微分商である.同様に3),4)が一致すれば,その共通の値
は左への微分商である.もしも 1)―4)がすべて一致すれば,その共通の値
はすなわち
における
の微分商で,その場合
は
において微分可能である.狭い意味では,
が有限なることを要求し,広い意味では
をも許容する.
今,
が集合函数
に対応するとするならば,1)―4)は §122 に述べた
の微分商の特別の場合,あそこの
を
または
に限定した場合で,これらの
の正則性の指数は
である.
このように
が限定された結果として,導函数は B 函数である.例えば
に関していえば
の意味によって,
を有理数に限ってもよいが,
の連続性から,
は
に関して連続で、
は連続函数列の
として B 函数である(§117).
以上を前置きとして,
を区間
において連続かつ有界変動として,
に対応する(完全)加法的集合函数
(§121 参照)に §§124,125 の定理を適用すれば,次のような結果が得られる.
において連続かつ有界変動なる函数
は,ほとんど常に微分可能で,微分商はほとんど常に有限である.
において
が連続かつ有界変動ならば,
によって定義される曲線はほとんど各点で接線を有する.
の点を
とすれば

は前頁 1)―4)の四つの微分商の中のどれでもよい.
は
における L 積分で,
は特異函数である. 特に
が
の Lebesgue の意味の不定積分であるためには,
が絶対連続であることが必要かつ十分である.最後に,特異函数
のなるべく手近な実例を作るために,§115 に述べた三進集合
を考察する.区間
において三進集合
を作るために,次々に
から取り去った区間は第
回には
個であったが,それらの区間において
の値を左から順に
とする.すべての
に関して,このように
の値を決めるならば,
は
において稠密に分布される
(余集合)において決定するが,それを
において連続なる
に拡張することができる.この
は
において単調に
から
まで増大し,零集合
以外の各点では
.
の点では一般に
であるが,
を組成する区間の端では,右または左への微分商が
になるであろう.




および点
とである.本節の集合算は,それに基づいて公理式に組立てられるであろう.![\begin{align}
x&\in E\{f(x)\geqq 0\}\\[5pt]
x&\in E\{f(x)< 0\}
\end{align}](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/2/3/2/2327ff16a4744b97ca5f15c06f394965.png)
![\begin{align}
f^+(x)&=f(x),\\[5pt]
f^+(x)&=0,
\end{align}](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/e/d/0/ed079c63d9c13758c5df6384871b85a9.png)
![\left.\begin{align}
f^-(x)&=0\\[5pt]
f^-(x)&=-f(x)
\end{align}\right\}](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/f/f/e/ffe7d27681ea2310227d711d02167154.png)
で,
が M 函数であることは明白だから(
)の意味に用いる.厳密に正(
)に限定する必要のある場合には,それをことわることにする.
の意.減少列も同様.
の余集合を
とすれば

.さて
だから
.故に

.
に関して
ならば,
なるとき,
だから,
. さて
だから,


だから,
. こんどは
から,

を仮定する.
ならば


だから,等号が成り立って,


とする.
と置いて
を得る.従って
とすれば,
.さて弱い意味の加法性から
従って 
なる
だから,上記のように
.すなわち
.
は任意だから
. また
は増大列の収束,同様に
は減少列の収束を示す記号.
を取り,

は単純和だから,
だから,
,従って(
でも)
.
とすれば
とする.
として,
と置く.然らば,
で,
.――なぜなら:
とすれば,或る
,従って
だから.故に

なるとき




として,

だから,

としたから,
で,
).
として上記
(
,すなわち
が階段的で,それぞれ有限個の相異なる値
を取るとする.

と置けば,
は単純和で,
において
.よって(

を
に符号に従って,
とする.然らば
から,
が単純和ならば,

とすれば(






ならば,


なるすべての
に関して
なるとき 

を適用する.
と
とを別々に考察すればよいから,
とすれば,
の場合には,
と置いて
,従って
.また
だから,定理は
を得る(
なる 



を用いて

は任意であるから,
ならば,
,よって
から,
が無意味(
が
とする.
における
が
は通例
と書くのだけれども,和はすべての自然数
.すでに
を附記するのが正当である.特にここでは
に関する項が別になるのだから,明瞭のために,この記法を取った.
に関して述べたのと同様である.
を単純和とすれば,

だから,


ならば,
を単純和として,
に関して,積分


は
空間
).それを除けば,絶対収束の場合,広義の
は
の意.以下同様.
は,
のとき
に関する
の
も同様.
の範囲にあるものに分けて算えればよい.
等も,その
など,明確な表現があるから,安心である!
だけが要求される場合,
の定義において
でよい.
とする.ただし
は
だから,これは全空間で成り立つ.
なるとき,
とする.然らば
を 


の増大列の極限とする(



は特異函数である.故に