解析概論/第8章/Stokesの定理

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[編集] 103.Stokes の定理

Gauss の定理において

\text{div}\,\boldsymbol u=0

とするならば,

\int_S\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma=0

になる.今閉曲面 S を閉曲線 C で二つの部分 S_1,S_2 に分けるならば

\int_{S_1}\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma=-\int_{S_2}\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma.

ここの面積分では,いずれも S の外側を正とするのだから,S_1 における正の回転は境界線 C の上に互に反対なる方向を誘導する.今もし S_1(または S_2)の正負の側を変えるならば

(1)

  \int_{S_1}\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma
 =\int_{S_2}\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma.

になるが,その場合には S_1,S_2 における正の回転は C の上に同意の回転の向きを定めるであろう. よって C の上に一定の向きを決めておいて,その向きが C を境界(端)とする任意の曲面 S_1 の上において誘導する回転の向きが正になるように,曲面の正の側を定めるならば,\text{div}\,\boldsymbol u=0 なるとき

\int_{S_1}\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma

(1) によって S_1 の境界線 C のみに関係する値を有する. さて任意のベクトル \boldsymbol v=(a,b,c) を取って


  \boldsymbol u=\text{rot}\,\boldsymbol v=(c_y-b_x,a_z-c_x,b_x-a_y)

と置くならば(378 頁 (6)

\text{div}\,\boldsymbol u=0.

故に \boldsymbol n=(\cos\alpha,\cos\beta,\cos\gamma) とすれば

(2)

  \int_S \boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma
 =\int_S ((c_y-b_x)\cos\alpha+(a_z-c_x)\cos\beta+(b_x-a_y)\cos\gamma)\,d\sigma

S の境界線 C のみに関係する値を有する.次に示すように,実際この面積分を曲線 C に関する線積分に変形することができる. 今 S は媒介変数 u,v によって表わされるとし,S およびその境界 Cuv 平面における区域 S' とその境界 C' とに対応するとする.さて積分 (2) において変数を u,v に変換すれば(368 頁

(3)

 \int_{S'}[(c_y-b_x)(y_uz_v-y_vz_u)+(a_z-c_x)(z_ux_v-z_vx_u)+(b_x-a_y)(x_uy_v-x_vy_u)]\,du\,dv

を得る.積分記号の下で,a に関する項を集めて

\begin{align}
   a_z(z_ux_v-z_vx_u)-a_y(x_uy_v-x_vy_u)
  &=(a_xx_u+a_yy_u+a_zz_u)x_v-(a_xx_v+a_yy_v+a_zz_v)x_v\\
  &=a_ux_v-a_vx_u.
\end{align}

これの積分

\int_{S'}(a_ux_v-a_vx_u)\,du\,dv

uv 平面における Gauss の定理によって(382 頁の(5) において \varphi,\psiax_u,ax_v を代用する),線積分

\int_{C'}(ax_u\,du+ax_v\,dv)

に等しい.変数 x,y,z に返れば,それは

\int_C a\frac{dx}{ds}ds=\int_C a\,dx

に等しい.すなわち


  \int_{S'}(a_ux_v-a_vx_u)\,du\,dv=\int_C a\,dx.

同様にして (3) における b,c に関する項から

\begin{align}
  \int_{S'}(b_uy_v-b_vy_u)\,du\,dv&=\int_C b\,dx,\\
  \int_{S'}(c_uz_v-c_vz_u)\,du\,dv&=\int_C c\,dx.
\end{align}

よって結局積分 (2) が線積分に変形されて


  \iint\limits_S(c_y-b_z)\,dydz+(a_z-c_x)\,dzdx+(b_x-a_y)\,dxdy
(4)

  =\int_C a\,dx+b\,dy+c\,dz.

これを Stokes の定理という. 上記等式において,面積分および線積分を取るべき向きに関しては前に述べた.再言すれば,曲面 S の一側を正と決めて回転の正の向きを定めるならば,それは境界線 C の上における正の向きを誘導する.このようにして C の接線 tS の法線 n との向きを対応させるときは,(4) が明確に次のように書かれる.


 \iint\limits_S [(c_y-b_x)\cos(x,n)+(a_z-c_x)\cos(y,n)+(b_x-a_y)\cos(z,n)]\,d\sigma
(5)

  =\int_C[a\cos(x,t)+b\cos(y,t)+c\cos(z,t)]\,ds,

dsC の微小弧,d\sigmaS の微小面積で,それらは絶対的である.上記接線および法線上の単位ベクトルをそれぞれ \boldsymbol t,\boldsymbol n とすれば,ベクトル法の記号を用いて,Stokes の定理を次のように簡明に書くことができる.

(S)

  \int_S\text{rot}\,\boldsymbol v\cdot\boldsymbol n\,d\sigma
  =\int_C \boldsymbol v\cdot\boldsymbol t\,ds.

Stokes の定理において,曲面 S の境界が二つ以上の閉曲線であってもよい.ただし,各境界線上の向きは,S における回転の向きによって誘導される向きであることを要する.例えば S の境界が二つの閉曲線 C_1,C_2 であるときに,C_1,C_2 を曲面 S の上で滑らかな曲線 L で結び付けて二つの境界を合併して一つの境界にするならば,その境界では,L の上を互に反対の向きに二回通過するから,線積分には L の影響はない.面積分にはもちろん L の影響はないから,Stokes の定理が成り立つのである.

同じように,S が一つの滑らかな面でなくて,いくつかの滑らかな面の接合であっても,Stokes の定理は成り立つ.例えば S が滑らかな曲線 L において接する S_1,S_2 から成るとき,S_1,S_2 の境界は C の二つの部分 C_1,C_2 と共通の L とであるが,S_1C_1+L および S_2C_2+L とにおいて

\int_{C_1}+\int_L=\int_{S_1},\quad \int_{C_2}+\int_L=\int_{S_2}

である.ここで二つの \textstyle\int_L は反対の向きに取った積分だから,加えて

\int_{C_1}+\int_{C_2}=\int_{S_1}+\int_{S_2} すなわち \int_{C_{}}=\int_{S_{}}

を得る.

[注意] 
Stokes の定理で Cxy 平面上の閉曲線,S をその内部とすれば,nz 軸に平行,t は垂直だから,a,b の代りに \varphi,\psi と置けば (5) から
\begin{align} \iint\limits_S(\psi_x-\varphi_y)\,d\sigma
 &= \int_C[\varphi\cos(x,t)+\psi\cos(y,t)]\,ds\\
 &= \int_C\varphi\,dx+\psi\,dy.
\end{align}
これは382 頁で述べた平面上の Gauss の定理で,それを上記の証明に用いたが,あの定理は,Stokes の定理の特別の場合とみるときに,左辺で -\varphi_y が負号を持っている意味が明瞭である.
[附記] 
Gauss の定理,Stokes の定理によって \text{div}\,\boldsymbol u,\text{rot}\,\boldsymbol u の応用上の意味が簡明に説明される.今圧縮されない一定の密度の流体が定常の運動をすると想像して,\boldsymbol u を点 (x,y,z) における速度とする.然らば Gauss の定理における面積分 \textstyle\int_S\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma は単位時間に閉曲面 S を通過する流出量(符号を入れていう)で,圧縮されない流体では,それは区域 K における湧出量(同上)に等しいはずである.この湧出量は Gauss の定理によって \textstyle\int_K\text{div}\,\boldsymbol u\,d\omega=(\text{div}\,\boldsymbol u)_0\int_K\,d\omega に等しいから,(\text{div}\,\boldsymbol u)_0 は単位体積に関する平均の湧出量である.もしも曲面 S が一点 P に収束するならば,平均値 (\text{div}\,\boldsymbol u)_0P における \text{div}\,\boldsymbol u に収束する.故に \text{div}\,\boldsymbol uP における湧出量である. また Stokes の定理における線積分 \textstyle\int_C\boldsymbol u\cdot\boldsymbol t\,ds は単位時間における曲線 C に沿っての循環(circulation)で,C が曲面 S の上の一点 P に収束するとき,P における法線上へ \text{rot}\,\boldsymbol u の正射影が,面積に対する循環の率である.それの最大なる値を有する向きがすなわち \text{rot}\,\boldsymbol u の向きで,その最大の値が \text{rot}\,\boldsymbol u の大きさである.最も簡単な場合として流体が z 軸の周りに角速度 \omega をもって回転するとすれば,r,\thetaxy 平面上の極座標とするとき
\begin{align}
  &\boldsymbol u=(-r\omega\sin\theta,r\omega\cos\theta,0)=(-\omega y,\omega x,0),\\
  &\text{rot}\,\boldsymbol u=(0,0,2\omega).
\end{align}
z 軸の代りに方向余弦が l,m,n なる軸を取れば
\begin{align}
  &\boldsymbol u=\omega(mz-ny,nx-lz,ly-mx),\\
  &\text{rot}\,\boldsymbol u=2\omega(l,m,n).
\end{align}
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