解析概論/第8章/面積分
[編集] 100.面積分
三次元の或る区域において連続なる函数
と滑らかな曲線
とが与えられたとき,
を曲線網によって微小面積
に分割し,
の上の任意の点を
とすれば,
の極限値が確定する.それを
に関する
の面積分といい,

と書く.
線積分において積分路なる曲線に向きをつけたのと同様に,面積分においても,曲面
の表面,裏面を区別して,面積分に符号をつけることが,応用上便利である.曲面
のどの側を表,その側を裏とするかは任意であるが,一側を表(正の面),他の側を裏(負の面)と定めて,かりにそれを
と書くならば,定義として

さて
の各点
における法線の向きは表面の側を正として,それに対応して,面上の回転の向きの正負を定める.すなわち座標軸が右系ならば,面上の回転の正の向きと法線の正の向きとが右ネジになるようにする.
さて
の各点
における法線の正の向きと,
軸の正の向きとの間の角を
とする.然らば
における
上の微小面積
(それは絶対的とする,すなわち常に正とする)を一つの座標面例えば
平面上への回転の向きも共に射影するならば,
面上の微小面積
には,
が
よりも小なるか,大なるかに従って,正負の差別が生ずるが,その符号をも入れて微小面積を
と書いて
に関する函数
の面積分を

と書く.故にここでは
は
を意味するものと了解すべきである.
も同様である.応用上,しばしば
を一つのベクトル
の成分とするが,そのとき上記の意味で

左辺は疎漏な記法ではあるが,印象的だから応用上便利である.
における法線の正の向きが点
に伴って連続的に変動するとき,曲面全体に関して法線の正の向きと負の向きとが区別されればよいのである.すなわち
における法線上の向きが
に伴って連続的に変動して
が出発点に返るときに,下の向きと反対にならないことを要するのである.
これの意味は,表裏の区別ができない曲面(単側面)があることを指摘すれば明瞭になるであろう.その最も簡単なる一例は Möbius の帯である.
細長い矩形の紙片
を一度ねじって,辺
を裏向きに
に合わせて(
と
,および
と
とが重なるように)貼りつけるならば,一つの曲面
が生ずる.それが Möbius の帯である.
には表裏の区別がない.今矩形の紙片
の一面を赤,他の一面を白として,上記のように
と
とをつぎ合わせるならば,曲面
においては,つぎめの所で赤と白とが接するであろう.曲面
を媒介変数
で表わして

とし,
平面上
が或る領域
において変動するとき,
における
と
の点
とが一対一に対応すると仮定する. 今
は特異点を有しないとする.すなわち
において

とする.そのとき,
の法線の正の向きの方向余弦を

とすれば,これらは
において一意だから,
は正負の両側面を有する.そうして
上の微小面積は

だから,
と書けば面積分 (1) は次のようになる.
