解析概論/第8章/面積・体積の定義

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[編集] 91. 面積・体積の定義

前節では積分区域を矩形としたが,二次元では任意の区域における積分を考察しなければならない.そのためには,まず任意区域の面積の意味を明確にしておくことが必要である.

我々はまだ面積の定義を確定していなかったが,今ここで前節を引用して,それを簡単に片付けることができる.

K を有界なる任意の区域(あるいは点集合)として, 次のような函数 \varphi(P) を考察する: すなわち点 P=(x,y)K に属するときは \varphi(P)=1 で, また点 PK に属しないときは \varphi(P)=0 とする.この函数 \varphi(P) を点集合 K定義函数という.

さて K を包む矩形 K^*

[K^*]
a \leqq x \leqq b,\quad c \leqq y \leqq d

における \varphi(P) の積分を考察する.任意の矩形網 \Delta に関して \textstyle s_\Delta = \sum m_{ij}\omega_{ij} を作れば,\varphi(P) の定義によって m_{ij} は小矩形 \omega_{ij} の点が(周をも入れて)すべて K に属するときにだけ m_{ij}=1 で,その他は m_{ij}=0 であるから, s_\Delta はすなわち矩形網 \Delta において全く K に含まれる小矩形群の総面積である.それの上限 \textstyle s=\lim_{\delta\to 0}s_\Delta は確定である.それを区域 K内面積という.

また \textstyle S_\Delta=\sum M_{ij}\omega_{ij} においては, \varphi(P) の定義によって小矩形 \omega_{ij}K に属する点を(一つでも)含むときにだけ M_{ij}=1 で,その他は M_{ij}=0 である. 故に S_\Delta は矩形網 \Delta において K に属する点を含む小矩形群の総面積である. それの下限 \textstyle S=\lim_{\delta\to 0}S_\DeltaK外面積という.

K が有界ならば,K を包む矩形 [K^*] の選択に無関係に,K の内面積 s も外面積 S も確定である.(もちろん S \geqq s \geqq 0.)それらが一致する(S=s)とき,その共通の値をもって K の面積とする.これが面積の定義である. 要約すれば:

有界なる区域 K の面積とは,K を定義する函数 \varphi(P)K を包む矩形 K^* における積分の値である. \varphi(P) が積分可能でないならば,K の面積は確定しない.

さて,S_\Delta-s_\Delta は矩形網 \Delta の各小矩形における \varphi(P) の振動量の総和であるから,K の面積確定の条件は \varphi(P) に関して

(1)
\lim_{\delta\to 0}(S_\Delta-s_\Delta) = S-s = 0

である.

今,矩形網 \Delta において K の境界点を含む小矩形群(臨界矩形群)の総面積を \mathit\Omega_\Delta とすれば,\textstyle\lim_{\delta\to 0}\mathit\Omega_\DeltaK の境界 F の外面積である. それに関して

(2)
\lim_{\delta\to 0}\mathit\Omega_\Delta = S -s

が成立する.今 (2) を承認すれば,K の境界 F の外面積が 0 (従って F の内面積も 0,従って F の面積が 0)であるとき,K が面積確定である.(故に皮肉ながら,次のようにいうことができる: K が面積確定なるために必要かつ十分なる条件は K の境界の面積が 0 なることである!)

さて (2) は明白であろうが,念のため,それを証明する.K の内点のみを含む小矩形群の総面積を s_\Delta(K) と書き,K の内点または境界点を(一つでも)含む小矩形群の総面積を S_\Delta[K] と書けば

(3)
\mathit\Omega_\Delta = S_\Delta[K]-s_\Delta(K)

である.然るに,別々に

(4)
\lim_{\delta\to 0}S_\Delta[K]=S,
(5)
\lim_{\delta\to 0}s_\Delta(K)=s,

が成り立って,それから (2) が得られる.((4)(5)は,K の閉包の外面積は K の外面積に等しく,K の開核の内面積は K の内面積に等しいことを表わす.)

上記 (4)(5) と同様に証明せられるから,(5) を証明する.K の開核 (K)K に含まれるから s_\Delta(K)\leqq s_\Delta は明白である.故に,K の開核の内面積を s(K) と書けば,s(K)\leqq s .よって s\leqq s(K) を証明する.

KaisekiGairon-328-1.svg

面積 s_\Delta に関与する各小矩形の内部に,その各辺を \delta だけひっ込めた矩形を作り,それらの矩形の全体を \sigma とし,その面積も同じ文字 \sigma で表わす.このとき,任意の \varepsilon(>0) に対して,\delta を十分小さく取って,s_\Delta-\sigma<\varepsilon なるようにする.然らば \sigmaK の開核 (K) に含まれ,K の境界と \sigma との距離は \delta 以上であるから,小矩形の辺長の最大値が \delta よりも小なる \Delta の再分割 \Delta' を作れば,(K) に含まれる \Delta' の小矩形群が \sigma を含む.従って面積において \sigma\leqq s_\Delta(K),故に

s_\Delta - \varepsilon <\sigma \leqq s_{\Delta'}(K) \leqq s(K).

\varepsilon は任意だから s_\Delta\leqq s(K).よって s_\Delta の上限を取って s\leqq s(K) を得る.

s\geqq s(K) であったから s=s(K).それが (5)である.

面積の定義を会得するには,面積不確定なる区間(点集合)の実例を挙げるのが適切であろう.今例えば矩形 Q\, (0\leqq x \leqq 1, 0 \leqq y \leqq 2) を取れば, その面積は上記定義に従って 2 である.
KaisekiGairon-328-2.svg
もしも Q の上半 (0\leqq x \leqq 1, 1 \leqq y \leqq 2) に稠密に分布される点,例えば有理点(x, y が有理数なる点)をすべて Q から除いて,その残りを K とすれば,K の外面積は 2 であるが,内面積は 1 で,K の面積は不確定である.Q の上半が全部 K の境界で,境界がすでに面積 1 の区域を占有して,K の内面積と外面積との接近を妨げる. 面積不確定なる区域の実例として,上記 K などは,あまりに平凡であるが,しかし面積不確定なる区域の存在を無視することは,理論上許されない.緊要なのは,面積は天賦でなくて,我々が自ら定義して,自ら始末せねばならないことの認識である.

取扱いがたやすくて,従って応用上常に遭遇するものは,もちろん面積確定なる区域であるが,その中でも標準的な場合を次に述べる.

[例 1]
領域 K の境界が滑らかな曲線またはそれの有限個の結合であるときは,K は面積確定である.
KaisekiGairon-328-3.svg
[証]
x=\varphi(t),\quad y=\psi(t)\quad(0\leqq t\leqq 1)
を滑らかな曲線とする.すなわち \varphi'(t),\psi'(t) は連続(でかつ \varphi'(t)^2 + \psi'(t)^2\ne 0)とする.然らば微分法の平均値の定理によって
x_1-x =(t_1-t)\varphi'(\tau_1),\quad y_1-y=(t_1-t)\psi'(\tau_2),
\tau_1,\tau_2t,t_1 の中間値である.今閉区間 0\leqq t\leqq 1 における |\varphi'(t)|, |\psi'(t)| の最大値を M とすれば(t_1>t として)
|x_1-x|\leqq M(t_1-t),\quad |y_1-y|\leqq M(t_1-t).
故に区間 0\leqq t\leqq 1n 等分すれば,各小区間 [t,t+\tfrac{1}{n}] における t に対応する曲線上の点 (x,y) は辺長 \tfrac{2M}{n} なる正方形に含まれ,従って,曲線全部は総面積が
n\left(\frac{2M}{n}\right)^2 = \frac{4M^2}{n}
以下なる矩形群で覆われる.n を十分大きく取れば,この総面積はどれほどでも小さくなるから,面積確定の条件は満たされている.

上記証明で \varphi'(t),\psi'(t) の連続性は,ただ最大値 M の存在の論拠としてのみ用いた.故に \varphi'(t),\psi'(t) が有界であれば(連続でなくても)たくさんである.

なお一般に \varphi(t),\psi(t) が有界変動,従って K の境界が有限長の閉曲線であればよい.実際その曲線の長さを l として,それを等長なる n 部分に分って \tfrac{l}{n}=\delta とすれば,各小弧はその中点を中心とする辺長 \delta なる正方形内に含まれるから,曲線全体が面積 n\delta^2=\tfrac{l^2}{n} を超えない矩形群で覆われる.
[例 2]
次の図に示すように,x=a,x=b なる二つの縦線と y=\varphi(x),y=\psi(x) なる二つの連続曲線とで囲まれた区域 K は面積確定である.
KaisekiGairon-329-1.svg
詳しくいえば,区間 a\leqq x\leqq b において \varphi(x),\psi(x) は連続で,かつ \varphi(x)>\psi(x) とする (ただし x=a,または x=b においては \varphi(x)=\psi(x) でもよい).然らば a < x < b, \psi(x)< y < \varphi(x) なる点 (x, y)K の内点で全部である.
K の境界の四つの部分 AC,BD,AB,CD に関して各別に条件 (1)が成り立つことをみればよいが,まず AC,BD に関しては論はない.また AB に関しては,\varphi(x) の一様連続性によって,n を十分大きく取って区間 [a,b]n 等分すれば,各小区間における \varphi(x) の振動量は任意の \varepsilon よりも小さくなる.故に AB は総面積 \varepsilon\cdot\tfrac{b-a}{n}\cdot n = \varepsilon(b-a) よりも小なる矩形群で覆われる.\varepsilon は任意に小さく取れるから,それでよろしい.CD に関しても同様.

もちろん xy とを交換して,K が二つの横線 y=c,y=d と二つの連続曲線 x=\varphi(y),x=\psi(y) とで囲まれるとしても同様である.

[注意] 
上記 K の境界線(ACDBA)は一つの Jordan 閉曲線である.これは Jordan 閉曲線が平面を内外両部に分割することが明白なる一例である(33頁参照).

応用上我々の使用に適する区域は[例 1][例 2] の区域またはそれの有限個の接合である.

上記の例で,我々は有限の曲線が面積を有しないことを或る条件の下において確認したのである.それは無条件ではいけない.例えば 32 頁に述べた Peano 曲線などはもちろんいけないが,また Jordan 曲線といえども,外面積が 0 でない実例が作られている(附録II参照).

面積 I なる区域 K が曲線 L によって二つの区域 K_1,K_2 に分割されて,しかも分割線 L に関して条件 (1) が成り立つとする.然らば K_1,K_2 も面積確定であるが,それらの面積を I_1,I_2 とすれば,I=I_1+I_2 である.これも明白であろう. ── 実際,矩形網 \Delta において,K に関する s_\Delta を全く K_1,K_2 に含まれる矩形群 s_1,s_2 と分割線 L の点を含む s' との三種に分けるならば s_\Delta=s_1+s_2+s'.然らば面積の定義によって \delta\to 0 のとき s_\Delta\to I,s_1\to I_1,s_2\to I_2.また仮定によって s'\to 0. 故に I=I_1+I_2

一般に K に含まれる面積確定の区域を K_1,その面積を I_1 とすれば,I\geqq I_1

K_1,K_2 が面積確定ならば,K_1,K_2 の共通部分 DK_1 および K_2 に属する点の全部の集合)および K_1,K_2 の合併 SK_1 または K_2 に属する点の全部の集合)は面積確定である.集合と同じ文字で面積を表わすならば K_1+K_2=S+D.これも同様にして証明される.

面積に関してなお一つの重大なる論点が残っている.互に合同なる区域の面積が相等しいか,という問題がそれである.我々は座標軸に平行なる直線によって生ずる矩形網を基礎にして面積を定義したから,そのような問題が生ずるのである.あるいは区域を固定しておいて座標軸を変換する(直交変換)とき,面積が変わらないことを証明すればよい.

まず或る区域 K が,或る座標軸に関して面積確定とする.然らば,平面を座標軸に平行なる,辺長 \delta の正方格子に分けて,K の臨界正方形の総面積を \mathit\Omega とすれば,\delta\to 0 のとき, \mathit\Omega0 に収束する. 然るに,辺長 \delta なる正方形は,直径 \sqrt{2}\delta なる円に包まれ,その円は,辺が新座標軸に平行で,辺長 \sqrt{2}\delta なる正方形に内接する.故に,最初の臨界正方形群は,各辺の長さの最大値が \sqrt{2}\delta を超えない臨界矩形群(新座標軸に関する)で包まれ,それら臨界矩形群の総面積は 2\mathit\Omega を超えない.故に座標軸を変えた後にも臨界矩形群の総面積は 0 に収束する.故に旧座標に関して,K の面積 I が確定ならば,新座標に関しても K の面積は確定であるが,それを I' とするとき,I=I' であろうか? これが問題の残部である.

K が矩形である場合には,これは明白である.実際,矩形 K の旧座標に関する面積を s とし,K を新座標軸に平行な直線で適当に分割して,そこに生ずる図形を適当に平行移動すれば,新座標軸に平行な辺を有するいくつかの矩形が生ずる.それら矩形の面積を新座標に関して計算して合計した値を s' とすれば,s'=s となる(或る区域(点集合)の面積と,それの平行移動によって生ずる区域の面積とは,同じ座標軸に関して,相等しいことは明白であろう).一般の K に関しては,新座標に関する矩形網で K の内部に含まれる矩形群の新旧両座標に関する総面積を,それぞれ s',s で表わすならば,sK の内部に含まれる矩形群の面積だから,上記のように s'=s\leqq I.然るに I's' の上限だから I'\leqq I.旧と新との座標軸を交換して考えるならば I\leqq I'.故に I=I'

三次元における区域 K体積は,矩形の代りに直方体を基礎として,面積と同様に定義される.体積確定の条件も同様で,K の境界を総体積が任意に小なる小直方体群で包みるとき,K の体積は確定である.次の例は面積に関して前に掲げた 例 1例 2 に該当するものである.

[例 3]
領域 K が有限個の滑らかな曲面で界されるとき,K は体積確定である.曲面
x=\varphi(u,v),\quad y=\psi(u,v),\quad z=\chi(u,v),\ (0\leqq u\leqq 1,\quad 0\leqq v\leqq 1)
が滑らかであるとは,\varphi,\psi,\chi が連続的微分可能であることをいう.
体積確定の証明は [例 1]と同様に平均値の定理による.
KaisekiGairon-331-1.svg
[例 4]
kxy 平面上で面積確定なる区域, \varphi_1(x,y), \varphi_2(x,y)k を含む閉区域において連続で,かつ \varphi_1(x,y)\leqq\varphi_2(x,y) とする.然らば
(x,y)\in k,\qquad \varphi_1(x,y)\leqq z\leqq\varphi_2(x,y)
なる点 (x,y,z) の集合 K は体積確定である.
K の境界の中で,上下の両端 A_1,A_2 はそれぞれ曲面 z=\varphi_1(x,y),z=\varphi_2(x,y) に属する. それらが体積 0 なることは \varphi_1,\varphi_2 の連続性によって 例 2 のように証明される.また K の‘側面’ Lk の臨界矩形を底とし,或る一定の高さ h(例えば \varphi_2-\varphi_1 の上限)を有する直方体群に包まれる.仮定によって k は面積確定だから,これらの直方体群の総体積は 0 に収束する.
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