解析概論/第8章/積分の意味の拡張(広義積分)

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[編集] 94. 積分の意味の拡張(広義積分)

これまでは積分の区域 K は有界でかつ面積確定とし,また積分される函数 f(P)K において有界としたが,K において f(P) が有界でない場合または区域 K が有界でない場合にも,積分の意味を拡張することが応用上重要である.そのために次の仮定をする.

(1º)
K が有界なる場合には,K は面積確定とする.K が有界でない場合には,正方形,|x|<R,|y|<RR>0 は任意)に含まれる K の部分は面積確定とする.
(2º)
K 内に面積確定なる有界な閉区域を取って,しだいにそれを拡張して限りなく区域 K に近づかしめることができる.すなわち K に含まれる面積確定なる有界な閉区域の無限列 \{K_n\} があって,K 内の任意の有界な閉区域は十分大なる番号以上のすべての K_n に含まれるとする.
(3º)
K に含まれる任意の面積確定なる有界な閉区域において,f(P) は有界で,かつ積分可能とする.
簡明のため,上記仮定((2º) に述べた性質を有する区域列 \{K_n\}K に収束するという(記号: K_n\to K).特に K_1\subset K_2\subset\cdots\subset K_n\subset\cdots ならば,\{K_n\}単調に K に収束するという.
一般に区域列 \{K_n\}K に収束するとき,K_1, K_2, \ldots, K_n を合併した区域を H_n とすれば,\{H_n\} は単調に K に収束する.

さて,最初に,f(P)K において正とする: f(P)\geqq 0.そのとき積分

I(K_n) = \int_{K_n}f(P)\,d\omega

K に収束するすべての区域列 \{K_n\} に関して,n\to\infty のとき一定の極限値 I に収束するならば,その極限値 I をもって,K における f(P) の積分を定義とする: すなわち

I= \int_K f(P)\,d\omega

とする.このような意味での積分を正なる函数 f(P) の広義積分という.

上記の定義において,K に収束するすべての区域列 \{K_n\} に関して I(K_n) が収束すれば,その極限値は当然一定である.実際 \{K_n\},\{K_n'\} がともに K に収束するならば,区域列 K_1,K_1',K_2,K_2',\ldotsK に収束するから,それは明白である(§9,参照).また連続的変数 \lambda に関して閉区域 K_\lambda\lambda\to\infty のとき区域 K に収束すると考えてよい.すなわち K 内の任意の有界な閉区域 H が与えられたとき,\lambda>\lambda_0 なるすべての \lambda に関して K_\lambdaH を含むと仮定するのである.上記の定義に従って \textstyle\int_Kf(P)d\omega が収束するなら \textstyle\lim_{\lambda\to\infty}\int_{K_\lambda}f(P)\,d\omega=I である.

広義積分の上記定義が諒解を得たとするならば,広義積分の収束条件は簡明である.すなわち,K において正なる f(P)\geqq 0 に関し \textstyle\int_K f(P)\,d\omega が収束するために必要かつ十分なる条件は,K 内のすべての面積確定なる有界な閉区域 H に関して,\textstyle I(H)=\int_H f(P)\,d\omega が有界なることである.すなわち,或る定数 M が存在して,すべての H に関して常に I(H)\leqq M となるのである.

[証]
\{K_n\} を単調に K に収束する一つの区域列とする.然らば,f(P)\geqq 0 だから,数列 I(K_n) は単調に増大する.故に、 I(K_n)\leqq M ならば I(K_n) に収束する.

さて I(K_n)\to\gamma として,K に収束する任意の区域列を \{K_n'\} とする.然らば番号 \nu を固定するとき,或る番号以上の K_n に関して K_\nu'\subset K_n だから,f(P)\geqq 0 によって I(K_\nu')\leqq I(K_n)\leqq\gamma.すなわち I(K_n') は有界で,\gamma がその一つの上界である.さて任意に \varepsilon>0 を取れば,仮定 I(K_n)\to\gamma によって,\gamma-\varepsilon<I(K_p)\leqq\gamma なる番号 p があるが,仮定 K_n'\to K によって,或る番号以上は常に K_p\subset K_n',従って I(K_p)\leqq I(K_n'),すなわち \gamma-\varepsilon<I(K_n')\leqq\gamma\varepsilon は任意であったから I(K_n')\to\gamma

逆に,I(K_n) が収束するならば,仮定 K_n\to K によって,任意の H は或る番号以上の K_n に含まれるから,I(H) は有界である.故に上記の条件は収束のために必要かつ十分である[* 1]

次に,K において,f(P) の符号が一定でない場合には,|f(P)|K における広義積分が存在するという仮定の下に,f(P)K における広義積分を,すぐ下に述べるように定義する.そのために,まず,二つの函数 f^+(P),f^-(P)

f(P)\geqq 0 ならば f^+(P)=f(P),\quad f^-(P)=0,
f(P)< 0 ならば f^+(P)=0,\quad f^-(P)=-f(P)

によって定義する(§39).然らば,

f^+(P)\geqq 0,\quad f^-(P)\geqq 0,
f(P)=f^+(P)-f^-(P),\quad |f(P)|=f^+(P)+f^-(P),
f^+(P)=\frac{1}{2}(|f(P)|+f(P)),\quad f^-(P)=\frac{1}{2}(|f(P)|-f(P)).

よって,f^+(P)\leqq|f(P)|,f^-(P)\leqq|f(P)| だから,f^+(P) および f^-(P)K における広義積分が存在する.それを用いて

\int_K f(P)\,d\omega = \int_K f^+(P)\,d\omega - \int_K f^-(P)\,d\omega

によって,f(P)K における広義積分を定義する.

[附記] 
一般に (1º)(2º) を満たす区域 K において,広義積分 \textstyle\int_K f(P)\,d\omega が存在するとき,K に,その境界の一部(または全部)を合併した区域を H とし,H における f(P) の広義積分を,(境界上の点 P において f(P) が定義されていても,いなくても)
(1)
\int_H f(P)d\omega = \int_K f(P)\,d\omega
と規約することができる[* 2].実際,或る一つの H に対して,上記のような K が二つ以上ある場合には,それらの K に関して,(1) の右辺の積分は相等しいことが証明できる.その一般的な証明は本書では書ききれないが,応用上しばしば遭遇する具体的な計算においては,その証明は簡単である場合が多い.
[注意] 
二次元以上では広義積分は,絶対収束の場合にのみ定義された.絶対収束以外の場合には,K_n\to K のとき \textstyle I^+(K_n)=\int_{K_n} f^+(P)\,d\omega\to\infty または \textstyle I^-(K_n)=\int_{K_n} f^-(P)\,d\omega\to\infty である.もしも一方のみが \infty ならば,I(K_n)\to\pm\infty で,それを収束といわないにしても,I(K_n) の行動は確定であるが,もしも双方共に \infty ならば,K に収束する K_n の選定に従って,\lim I(K_n) は動揺するから,\textstyle\int_K f(P)\,d\omega に一定の値がない(345頁,[例 4]参照).それはあたかも条件収束の級数における項の順序の変更と同様である.(一次元では,積分区域 K は区間で,\{K_n\} を単調に増大して K に収束する区間列に限定して,広義積分を定義したが,二次元以上では \{K_n\} の選択の自由度が広大だから事情が違う.)[* 3]
[例 1]
xy 平面において r を原点 (0,0) と点 P=(x,y) との距離とし,積分区域 K を単位円(x^2+y^2\leqq 1)として
I(K)=\int_K\frac{d\omega}{r^\alpha} =\iint\limits_K \frac{dx\,dy}{(x^2+y^2)^{\frac{\alpha}{2}}}\quad (\alpha>0)
を考察する.
KaisekiGairon-343-1.svg
これは上記 f(P)=r^{-\alpha}\geqq 0 の場合であるが,原点だけが不連続点だから,\rho_n\to 0 として \rho_n\leqq r\leqq 1 なる円環を K_n とすれば,K_n\to K で,
I(K_n)=\iint\limits_{K_n}\frac{dx\,dy}{(x^2+y^2)^{\frac{\alpha}{2}}}.
あるいは極座標では[* 4]
I(K_n)
  =\int_{\rho_n}^1\int_0^{2\pi}\frac{r\,dr\,d\theta}{r^\alpha}
  =2\pi\int_{\rho_n}^1r^{1-\alpha}
  =\frac{2\pi}{2-\alpha}\left(1-\rho^{2-\alpha}\right).
ただし,この計算では \alpha\neq 2 とした.故に
(1)
0<\alpha<2 ならば \rho_n\to 0 のとき,\rho_n^{2-\alpha}\to 0.従って
I(K)=\frac{2\pi}{2-\alpha}.
(2)
\alpha=2 ならば
I(K_n)
  =2\pi\int_{\rho_n}^1\frac{dr}{r}
 =-2\pi\log\rho_n \to+\infty.
(3)
\alpha>2 ならば \tfrac{1}{r^\alpha}>\tfrac{1}{r^2} だから,なおもって I(K_n)\to+\infty

K が原点を含む任意の有界なる区域であるとしても,収束条件は同様である.

(また反対に,K が単位円の外部ならば \textstyle\int_K\frac{d\omega}{r^\alpha} の収束条件は \alpha>2 である.)

一般に,f(P) は原点だけで不連続で,原点の近傍で
|f(P)|<\frac{M}{r^\alpha} (0<\alpha<2, Mは定数)
ならば,\textstyle\int_K f(P)\,d\omega は収束するが,もしも
f(P)\geqq\frac{M}{r^2}\quad(M>0)
ならば,収束しない.

上記は一次元における 定理36の二次元への拡張であるが,\alpha の限界 2n に換えれば,n 次元にも通用する.

[例 2]
無限区域における積分の応用の一例として
I=\int_0^\infty e^{-x^2}\,dx
を考察する.この積分は既知であるが(§35,[例 6]),次のようにしても計算することができる. 今
I(R)=\int_0^R e^{-x^2}\,dx
とおく.然らば
I=\lim_{R\to\infty}I(R).
さて Kxy 平面の第一象限の全部とし,Q(R)
0\leqq x\leqq R,\quad 0\leqq y\leqq R
なる正方形とすれば,R\to\infty のとき,区域 Q(R) は単調に K に収束する(341頁). 然るに(定理 78

  \iint\limits_{Q(R)} e^{-x^2-y^2}\,dx\,dy
 = \int_0^Re^{-x^2}dx\cdot\int_0^R e^{-y^2}\,dy = I(R)^2.
故に
\iint\limits_K e^{-x^2-y^2}\,dx\,dy = I^2.
さて C(R) を円 x^2+y^2\leqq R^2 の第一象限とすれば,R\to\infty のとき C(R) は単調に K に収束する.故に
\lim_{R\to\infty}\iint\limits_{C(R)} e^{-x^2-y^2}\,dx\,dy = I^2.
極座標を用いるならば,
\begin{align} \iint\limits{C(R)} e^{-x^2-y^2}\,dx\,dy
  &=\int_0^R\int_0^{\frac{\pi}{2}}e^{-r^2}r\,dr\,d\theta
   =\frac{\pi}{2}\int_0^R e^{-r^2}\,r\,dr \\
 & =\frac{\pi}{4}(1-e^{-R^2}),
\end{align}
従って
I^2=\lim_{R\to\infty}\frac{\pi}{4}(1-e^{-R^2})=\frac{\pi}{4}.
I>0 だから
I=\frac{\sqrt\pi}{2}.
あるいは
2I=\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx = \sqrt\pi.

二次元では,或る線上の各点において,また三次元では或る線または面の上の各点において f(P) が不連続になることがある.今その一例を挙げる.

[例 3]
矩形
[K]
0\leqq x\leqq 1,\quad 0\leqq y\leqq 1
において対角線 x=yf(x,y) の不連続線であるとする.そのときもしも K において
|f(x,y)|<\frac{M}{|x-y|^\alpha},\quad 0<\alpha<1
なる定数 M があるならば,\textstyle\iint_K f(x,y)\,dx\,dy は収束する.
KaisekiGairon-345-1.svg
それをみるには,対角線 x=y の両側の三角形 A,B において(を参照)
\iint\frac{dx\,dy}{|x-y|^\alpha}
が収束することを確かめればよい.さて
\begin{align} \iint_A\frac{dx\,dy}{(x-y)^\alpha}
   &= \int_0^1 dy\int_y^1\frac{dx}{(x-y)^\alpha} \\
   &= \int_0^1 dy\cdot\left[\frac{(x-y)^{1-\alpha}}{1-\alpha}\right]_{x=y}^{x=1}
    = \frac{1}{1-\alpha}\int_0^1(1-y)^{1-\alpha}dy \\
   &= \frac{1}{(1-\alpha)(2-\alpha)}.
\end{align}
故に 1>\alpha>0 のとき積分は収束する.
[例 4]
積分の収束しない一例として
f(x,y)=\frac{y^2-x^2}{(x^2+y^2)^2}
と置いて,
(2)
\int_R f(x,y)\,d\omega
を区域
[K]
0\leqq x\leqq 1,\quad 0\leqq y\leqq 1
において考察する.

f(x,y) は次のようにして得られたものである:

(3)
\left.
  {\dfrac{\partial}{\partial x}\,\mathrm{Arc\,tan}\,\dfrac{y}{x} 
  =\dfrac{-y}{x^2+y^2},\quad
   \dfrac{\partial}{\partial y}\,\mathrm{Arc\,tan}\,\dfrac{y}{x}
  =\dfrac{x}{x^2+y^2}, \atop
   \dfrac{\partial^2}{\partial x\partial y}\,\mathrm{Arc\,tan}\,\dfrac{y}{x}
  =f(x,y).} \right\}
f(x,y)(0,0) において不連続で,の三角形 B において f>0,A において f<0 .故に(342 頁の記号を用いて)
\begin{align}
  \int_K f^+(P)\,d\omega
    =\int_B f(P)\,d\omega
   &= \int_0^1dy\int_0^yf(x,y)dx \\
   &= \int_0^1dy\left[\frac{x}{x^2+y^2}\right]_{x=0}^{x=y}
    = \int_0^1\frac{dy}{2y} = +\infty.
\end{align}
f^-(P) に関しても同様だから,積分 (2) は収束しない.
KaisekiGairon-346-1.svg
今,に示すように,三角形 A,B の原点における尖端を切り捨てて,残りの区域を K(\varepsilon,\varepsilon') として,その上での f(x,y) の積分を J(\varepsilon,\varepsilon') と書く.然らば,\varepsilon\to 0,\varepsilon'\to 0 のとき,K(\varepsilon,\varepsilon')K に収束するが,J(\varepsilon,\varepsilon') を計算すれば,(4) のようにして
J(\varepsilon,\varepsilon') 
  = -\int_\varepsilon^1\frac{dx}{2x} +\int_{\varepsilon'}^1\frac{dy}{2y}
  = \frac{1}{2}\log\frac{\varepsilon}{\varepsilon'}.
故に \varepsilon\to 0,\varepsilon'\to 0 のとき,\varepsilon/\varepsilon' の選定によって,J(\varepsilon,\varepsilon')-\infty+\infty との間の任意の値に収束させ,またはそれを発散させることができる. もしも f(x,y) をまず x に関して 0 から 1 まで積分し,次に y に関して 0 から 1 まで積分すれば,(3) を用いて
\int_0^1dy\int_0^1f(x,y)dx
  =\int_0^1dy\left[\frac{x}{x^2+y^2}\right]_{x=0}^{x=1}
  =\int_0^1\frac{dy}{1+y^2} =\frac{\pi}{4}
を得るが,積分の順序を変更すれば
\int_0^1dx\int_0^1f(x,y)dy
  =\int_0^1dx\left[\frac{-y}{x^2+y^2}\right]_{y=0}^{y=1}
  =-\int_0^1\frac{dx}{1+x^2} =-\frac{\pi}{4}.
これらは,次の の矩形 K(\varepsilon),K'(\varepsilon)K に収束させる場合に対応する.
KaisekiGairon-346-2.svg

  1. 実は一つの単調なる \{K_n\} に関して I(K_n) が有界ならばよい.任意の H に対して,十分大きく n を取れば,H\subset K_n だから,I(H) は有界.
  2. 下記 [例 1] においては,原点において,函数 r^{-\alpha} は定義されていない.その積分区域 K(1)H の意味で,原点が添け加えられた境界である.
  3. 一次元の広義積分または条件収束の級数は,実際計算上の手段として重要である.そこに,それらの存在理由がある.
  4. 積分変数を極座標に変換することの理論は後に述べるが(§96),ここでは,その計算法を既知と仮定した.
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