解析概論/第8章/完全微分の条件

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[編集] 104.完全微分の条件

xy 平面の領域 K において連続的微分可能なる二つの函数 \varphi(x,y),\psi(x,y) が与えられるとき,微分式

(1)
\varphi(x,y)dx+\psi(x,y)dy

が或る函数 F(x,y) の全微分であるとする(§22).すなわち

dF=\varphi\,dx+\psi\,dy,

従って

F_x=\varphi_y,\quad F_y=\psi

とする.然らば仮定によって F_{xy}=\varphi_y, F_{yx}=\psi_x,従って(定理 27

(1)
\varphi_y=\psi_x.

(2)(1) が完全微分であるための必要条件であるが,もしも領域 K が単連結(212 頁)ならば,これが同時に十分条件で,すなわち次の定理が成り立つ.

定理 80.
xy 平面上の単連結の領域 K において \varphi_y,\psi_x が連続で,\varphi_y=\psi_x ならば
F_x=\varphi,\quad F_y=\psi
なる函数 F(x,y)K において存在する.
[証]
K の内で任意の閉曲線 C を取れば,単連結の仮定によって,C の内部 [C]K に属する.故に Gauss の定理によって

  \int_C\varphi\,dx+\psi\,dy=\iint\limits_{[C]}(\psi_x-\varphi_y)\,dxdy=0.
換言すれば,K の内で,ひとつの定点 (x_0,y_0) と任意の点 (x,y) とを結ぶ任意の曲線に関する線積分

  F(x,y)=\int_{(x_0,y_0)}^{(x,y)}\varphi\,dx+\psi\,dy
によって,K の内で (x,y) の一つの函数 F(x,y) が確定する.すなわち,この線積分は (x_0,y_0)(x,y) とを結ぶ積分の路に関係しないで,上端 (x,y) のみによって確定する値を有するのである.さてこの F(x,y) が定理で要求される函数である.実際上記のように

  F(x+h,y)-F(x,y)=\int_{(x,y)}^{(x+h,y)}\varphi\,dx+\psi\,dy
(x,y)(x+h,y) とを結ぶ線分上の線積分としてよいだが,この線分上では dy=0 だから

  F(x+h,y)-F(x,y)=\int_x^{x+h}\varphi(x,y)\,dx=h\varphi(x+\theta h,y),
  \quad (0<\theta<1).
故に \varphi の連続性によって

  \frac{\partial F}{\partial x}=\varphi(x,y)
を得る.同様に

  \frac{\partial F}{\partial y}=\psi(x,y).
[例 1]
\varphi=6x^2+4xy+2,\quad \psi=2x^2-3y^2+5.
\varphi_y=\psi_x=4x で完全微分の条件は全平面において成り立つ.よって (0,0) を起点として,軸に平行なる折線を積分路として(図を参照)
\begin{align} F(x,y)
  &=\int_0^x(6x^2+2)\,dx+\int_0^y(2x^2-3y^2+5)\,dy\\
  &=2x^3+2x+2x^2y-y^3+5y.
\end{align}
[例 2]
\varphi=\frac{-x}{x^2+y^2},\quad\frac{x}{x^2+y^2}.
原点 (0,0) を除けば
\varphi_y=\psi_x=\frac{y^2-x^2}{(x^2+y^2)^2}
で,完全微分の条件は満たされる.よって単連結の区域を得るために,x 軸の負の部分に鋏を入れて,それを K の境界とする.さて O を中心として半径 a の円を画いて,図に示すように A を起点として円弧 AB と線分 BP とをつないだ積分路を取って

  F(x,y)=\int_{AB}\frac{-y\,dx+x\,dy}{x^2+y^2}+\int_{BP}\frac{-y\,dx+x\,dy}{x^2+y^2}
と置けば,AB の上では

 \begin{vmatrix} x& y\\ dx& dy\end{vmatrix}
 = a\begin{vmatrix}
     \quad\cos\theta& \sin\theta\\ -\sin\theta& \cos\theta
 \end{vmatrix}\,d\theta = a^2\,d\theta
だから,AB の弧度を \alpha として
\int_{AB}=\int_0^\alpha\,d\theta=\alpha.
また BP の上では xdy-ydx=0 だから,第二の積分は 0 に等しい.故に
F(x,y)=\alpha,\quad(-\pi<\alpha<\pi).
すなわち
F(x,y)=\mathrm{Arc\,}\tan\frac{y}x+k\pi,
ただし
x\leqq 0 ならば k=0,
x<0,y>0 ならば k=1,
x<0,y<0 ならば k=-1.
このように k を決めれば,F(x,y)K において連続になるのである.x 軸の負の部分において,F(x,y) は不連続である.
三次元以上でも同様の定理が成り立つ.今 xyz 空間の領域 K において三つの函数 \varphi(x,y,z),\psi(x,y,z),\chi(x,y,z) が連続的微分可能であるとする.然らば
dF=\varphi\,dx+\psi\,dy+\chi\,dz
が完全微分ならば,
(3)
F_x=\varphi,\quad F_y=\psi,\quad F_z=\chi,
従って

  F_{xy}=\varphi_y=\psi_x,\quad F_{xz}=\varphi_z=\chi_x,\quad F_{yz}=\psi_z=\chi_y
なることを要する.

もしも K が単連結ならば,この条件は十分である.すなわち K において \varphi,\psi,\chi が連続的微分可能で,かつ

(4)
\chi_y=\psi_z,\quad\varphi_z=\chi_x,\quad \psi_x=\varphi_y
ならば
\varphi\,dx+\psi\,dy+\chi\,dz
は完全微分である.(すなわち (3) を満足させる函数 FK において存在する.)

約言すれば,\boldsymbol u=(\varphi,\psi,\chi) をベクトルとするとき

\text{rot}\,\boldsymbol u=0 ならば \boldsymbol u=\text{grad}\,F.

領域 K が単連結とは,ここでは K 内の任意の閉曲線が K 内で連続的に変動して K 内の一点に収束しうることをいう.たとえば球の内部,または球の内部からいくつかの小さな球をくり抜いた残りの領域などは単連結であるが,輪環体(torusの内部は単連結でない.

さて証明であるが,こんども K 内の任意の閉曲線 C に関して
(5)

  \int_C \varphi\,dx+\psi\,dy+\chi\,dz=0
を示せばよい.そこでStokes の定理を引用して,K 内で C を境界(端)とする曲面を S とするならば
(6)

  \int \varphi\,dx+\psi\,dy+\chi\,dz
 =\iint_S(\chi_y-\psi_z)\,dydz+(\varphi_z-\chi_x)\,dzdx+(\psi_x-\varphi_y)\,dxdy
から,(4) によって (5) を得る.
これは簡単であるが,我々は Stokes の定理を応用したから,閉曲線 C を通って滑らかな曲面 SK 内に作られることが保証されるときに限って,上記の証明は合法である.その保証のために,K を単連結の領域に限定したのである.単連結の仮定によって,閉曲線 CK 内で連続的に変動して一点 P に収束するとき,C が一つの滑らかな曲面 S を描いて,その S に関して Stokes の定理が適用されようというのであるが,念のために次のような考察を試みる.

連続性の仮定を利用すれば,(5) における積分路 C をねじれた閉折線 A_1,A_2,\ldots,A_n として十分である(§56,(5º)).また C が点 P に収束するとき,点 A_1,A_2,\ldots,A_nK 内で曲線を描くが,それらの曲線の上に分点を密に取って,それを結んで K 内に折線を作る.また隣り合った折線上の分点を結んで,折れ線 A_1,A_2,\ldots,A_n を辺端として,三角形の連鎖からなる‘折面’(多面体の表面の一部分のような面,polyhedral surface)を作り,それを S とする.すべての分点を十分密に取れば,これらの個々の三角形が全く K 内に止まるであろう.この面 S は有限個の滑らかな面(三角形)の接合だから,Stokes の定理が成り立つのである.

K が直方体(稜は座標軸に平行)ならば,条件 (4) の下で函数 F390 頁[例 1]のようにして積分法によって求められる.すなわち K 内で P_0=(a_0,b_0,c_0) を定点,P=(a,b,c) を任意の点として,P_0P とを結ぶ積分路 C を初めに (a_0,b_0,c_0) から x 軸に平行に (a,b_0,c_0) まで,次に (a,b_0,c_0) から y 軸に平行に (a,b,c_0) まで,最後に (a,b,c_0) から z 軸に平行に (a,b,c) までの三つの積分をつないだ折線とすれば,k を任意の定数として

\begin{align} F(a,b,c)
 &= \int_C \varphi\,dx+\psi\,dy+\chi\,dz + k\\
 &= \int_{a_0}^a \varphi(x,b_0,c_0)\,dx
   +\int_{b_0}^b \psi(a,y,c_0)\,dy +\int_{c_0}^c \chi(a,b,z)\,dz + k.
\end{align}

実際,

\begin{align}
  F_a &= \varphi(a,b_0,c_0)
    +\int_{b_0}^b \psi_x(a,y,c_0)\,dy +\int_{c_0}^c \chi_x(a,b,z)\,dz\\
  &= \varphi(a,b_0,c_0)
    +\int_{b_0}^b \varphi_y(a,y,c_0)\,dy +\int_{c_0}^c \varphi_z(a,b,z)\,dz\\
  &= \varphi(a,b_0,c_0)
    +\varphi(a,b,c_0)-\varphi(a,b_0,c_0)+\varphi(a,b,c)-\varphi(a,b,c_0)\\
  &= \varphi(a,b,c).
\end{align}

同様に

F_b=\psi(a,b,c),\qquad F_c=\chi(a,b,c).
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