解析概論/第8章/変数の変換
[編集] 96. 変数の変換
多変数の積分の計算においても,変数の変換が重要である.変数
が変換式

によって新変数
に変換されるとき,
系の積分区域
と,それに対応する
系の区域
との間に,一対一の対応が成り立つことが,基礎条件である. §84 で述べたように,(1) を
平面上の点
と
平面上の点
との間の対応として

と略記する.今この対応によって,
平面の領域
と、
平面の領域
とが,一対一に対応するとし,
は
において連続的微分可能と仮定する.然らば,(1′)の逆写像は,
において連続的である(§84,(1º)).さて,積分区域
は,領域
に含まれる有界な閉区域とし,
と
とは (1′)によって対応するものとする.然らば,
は
に含まれる有界な閉区域である. さて (1)における変数
を

によって,さらに変数
に変換するとき,(2)を (1)へ持ち込めば,
が
の函数になる,すなわち

この変換 (3) を (1) と (2) との結合という.今
平面上の点
を
と書いて,(2)を


と書かれる. さて,これらの変換に関する函数行列式の間に次の関係が成り立つ:

すなわち
![\begin{vmatrix}
\dfrac{\partial x}{\partial u} & \dfrac{\partial x}{\partial v} \\[10pt]
\dfrac{\partial y}{\partial u} & \dfrac{\partial y}{\partial v}
\end{vmatrix}\begin{vmatrix}
\dfrac{\partial u}{\partial \xi} & \dfrac{\partial u}{\partial \eta} \\[10pt]
\dfrac{\partial v}{\partial \xi} & \dfrac{\partial v}{\partial \eta}
\end{vmatrix} = \begin{vmatrix}
\dfrac{\partial x}{\partial \xi} & \dfrac{\partial x}{\partial \eta} \\[10pt]
\dfrac{\partial y}{\partial \xi} & \dfrac{\partial y}{\partial \eta}
\end{vmatrix}.](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/f/7/1/f71cea26a32a1536421740da2b4f6914.png)
これは計算をしてみれば,すぐに分かる:

だから,行列式の掛け算によって (4) を得る.三次元以上でも,全く同様である. もしも変換式 (1) において,点
における函数行列式

ならば,
の近傍で,逆変換

が可能であるが,それを (2′) に代入して,(1′) と結合すれば,その結果は,
すなわち
になる.

だから,この場合 (4) によって

前に述べた略記法

によって,かりに



と書かれる.任意次元に関しても同様であるが,これらは一次元における合成函数または逆函数の微分商に関する公式

の拡張とみなすことができる. 然らば変換式
における
すなわち 
の意味はどうであろうか? 最も簡単なる一例として,二次元における一次変換を取ってみる.すなわち (1) において
を
の一次式として

とする.これは,いわゆるアフィン(affine)変換である.この場合,函数行列式は

であるが,もしも
ならば,
平面全体と
平面全体との間に一対一の対応が成り立って,しかも直線は直線に,平行線は平行線に対応するから,
平面の方眼には,
平面の平行格子が対応する.従って対応する面積
の比は一定である.故にその比を求めるためには,
平面の単位正方形(座標軸上に長さ
なる辺を有する正方形)
と,それに対応する
平面の平行四辺形
との面積の比を求めればよい.その比は,解析幾何学で周知の通り,
に等しい.故に任意の互に対応する
系の面積は
と
系の面積
との間に次の関係がある:

三次元においても同様である.すなわち

において,函数行列式
ならば,
空間と
空間とにおいて互に対応する体積
の間に,関係
が成り立つ. 一般の一対一の変換においても,互に対応する微小面積の間には同様の関係が成立する.すなわち変換 (1) によって
系の閉区域
と
系の閉区域
とが一対一に対応すると仮定するならば,
内の一点
を包む面積確定なる区域
が
に収束するとき,それに対応して
平面の点
を包む区域
が
に収束するが,そのとき
は面積確定[* 1]で

ここで
は点
における函数行列式の値,
は区域の面積で,
は区域
の径である. 次に (6) の証明をする.今
は
に属する点
に対応するとして

と置く.もしも
が
から
まで変わるならば,
は
を一つの頂点とする面積
なる正方形
を画くが,
の連続的微分可能性の仮定の下において、そのとき

任意の
に対応して
を十分小さく取れば,
なる
に対して
.しかも
は閉区域
における
の位置に無関係としてよい(
の偏微分商の一様連続性). さて
の主要部だけを取って

と置けば,
が上記正方形
を画くとき,
は平行四辺形
を画く.それを
と書く.
その頂点:

従って
の面積は
の絶対値に等しい.すなわち

ただし
は
における函数行列式

の値である. さて点
は (7) における剰余項
のために,
とはやや異なる区域を画く.その区域を
とすれば
は面積確定である(§91,[例1]).
は
とは違うが,
を限りなく小さくすれば,
がすでに
程度の微小数だから[* 2],
と
との差は
程度の微小数になって
のとき
すなわち 
であるように推察される.実際,
は,
における
の位置に関係なく,一様に
に収束する.それを確かめるために,次のような微分的考察をする.
の周に属する点
に対応する点
と
とにおいて

だから,
.
故に平行四辺形
の平行なる二辺の間隔が共に
より大なるときには,
の外部と内部とに,その辺から
の距離に平行線を引いて,二つの平行四辺形
を作れば,
および
は
に,またその周は
と
との間の帯状の区域に含まれる.故に面積においては

はすなわち上記帯状区域の面積であるが,
の周を
とすれば,この面積が
に等しいことは見やすい. また
の平行なる二辺,例えば
と
の間隔が
以下である場合には,
と中心を共有する矩形
を,二辺が
に平行で,その長さが
,他の二辺の長さが
なるように画けば,
も
も
に含まれて,
の面積は
である.故に,いずれの場合にも

である.さて

で,
が閉区域
に属すとき,一様に(
の位置および
に無関係に)

と置くことができる.故に,(10) によって
において

であったから

故に
において一様に(一様収束)

さて,
を
に含まれ,
をその内部(
の開核)に含む有界なる閉区域とする[* 3].また,
を十分小とし,
を辺長
なる小方眼
で覆って,
に触れる
は全く
に含まれるようにし,
に対応する
平面の小区域を
とする.然らば,(11) において,
に
を代用して,
に含まれる各小区域
に関して,

を得る.ただし,簡単のために,(11) における
を
と書き換えた.
は方眼
の左下の頂点における函数行列式の値である. 今,
を
において互に対応する区域とし,
は面積確定であると仮定する.また,簡単のために,小区域
の中で,
に含まれるもの,および,
に触れるものを,それぞれ,一般に,
および
と書く.しからば (13) により,

ただし,
は
の内面積である.さて,仮定により
は面積確定だから,
のとき


一方,
の内面積及び外面積を,それぞれ,
とすれば,

故に (16) により,
は面積確定で,

一対一の対応においては
の符号は一定である(§84,(4º))から

これが
系における区域
の面積を
系の積分に変換する公式である(
は
の符号だから,
は正). さて (17) から

は区域
における
の平均値である.もしも
が一点
に収束するならば,
は
において
に対応する点
に収束するが,そのとき
は
に収束する.故に互に対応する微小面積に関しては予期の通り

が正方形なるとき,これはすでに (12) において証明されている.我々は局所的なる (12) から全局的の公式 (17) を出したが,(17) を再び局所的に還元して,(12) を一般化した (19) を導いたのである.
上記では,
が面積確定であることから
が面積確定であることを導いたが,逆に,
の面積が確定であると仮定しよう.そのとき,
の面積は必ずしも確定であるとは限らない(その実例がある).しかし
において常に
ならば,(1) の逆写像は
において連続的微分可能だから(定理74),上記と同様にして
も面積確定である.一般に,
なる
の点の集合を
とするとき,
の面積が確定である場合には,
の面積も確定である.それを証明する.
の内面積は
であり(§84,(3º)),その面積は確定だから
の面積は
である.故に,任意の
に対して,
を含む小矩形群
を適当に取れば,その総面積
.ここで
を開集合としてよい.今、
から
に属する点を除いた閉集合を
とし,
と
との共通部分を
とする.また,
に対応する区域を,それぞれ
とする.然らば、
および
は,共に面積確定だから,
もそうである.また
においては,
である.故に,前に述べたように,
は面積確定である.
は
と小矩形群
に含まれる或る集合からなり,
だから,
の境界の外面積は
を超えない.
は任意だから,
は面積確定である.
さて,積分区域
は,
内の面積確定なる閉区域で,
も面積確定と仮定する.(この仮定は,例えば
において常に
,または
なる
の点の集合の面積が
,であるときには満たされる)また,函数
は
において,積分可能(狭義)とする.そのとき,積分

において

によって積分変数を
系から
系に変換すれば,
系の区域
と,それに対応する
系の区域
とにおいて,相対応する微小面積の間には

なる関係が成り立つから,

は
において一定なる函数行列式
の符号である.
これが二次元の定積分における変数変換の公式である.
この公式の妥当性はほとんど明白であろうが,一応その証明を述べておこう.
平面において区域
を覆う矩形網に対応する曲線網で
平面の区域
を覆って,
における小矩形
には
における小区域
が対応するとする.今
を
の任意の点,
を
に対応する
の点とする.
の
における一様連続性により,
を十分小さくとれば,(13) は
を
に代用しても成り立つから,(13) にその代用をして,
を掛けて加えれば,

ここで
は
における
の上限である.
は定数,例えば前記
の内面積でよい.然るに

故に,(21) により
は
において積分可能で (20) が成り立つ.
上記の方法は三次元以上にもそのまま通用する.また広義積分の場合には,
に収束する閉区域
にこの方法を適用してから
なる極限へ行くのである.
応用上最も手近なのは,直角座標
から極座標
への変換である.この場合



系の積分区域
は
を
系の区域
の点
の極座標と考えて,
平面上において決定される.例えば次の 図において

で
は任意である.極座標においては
とするが,
平面における,この区域の境界線上では,
平面との一対一の対応が成り立たない.領域の間に一対一の対応を成り立たせるためには


三次元において,点
の極座標
を


で定義する.
すなわち
は動径
の長さ,
は
軸から計った極距離(余緯度),
は
面から
面への向きに計った経度である. 極座標を
の順に取れば,それは正系(右ネジ)すなわち
と同意である.函数行列式は

行列式の第二行と第三行とから因数
を出してしまえば,あとは直行行列式になって,その値は
である.幾何学的にいえば,原点を中心とする半径
なる二つの球面と,
軸上に軸を有して頂角が
なる二つの直円錐面と,経度
なる二つの平面とで囲まれた微小なる曲六面体の体積の主要部が

に等しいのである.
よって
系の区域
の体積
は極座標では

また
における函数
の積分は

この場合にも,積分区域の限界は二次元の場合と同様にして定められる.
次に一般の変換の例を掲げる.
平面の第一象限(
)を積分区域
として

). これは広義積分であるが,その値は


を
系に変換してみよう.(24) から


平面の第一象限(
)と
平面の領域
との間に一対一の対応が成り立って



とで囲まれた四面体
を積分区域として

.



系の四面体
と
系の立方体
:
:






の中に
よりも小なるものがあれば,
は広義積分であるが,計算の理論は 例 1 と同様である(前頁,[注意]参照).
とすれば,四面体
の体積として

上記 Dirichlet の積分は全く同様の方法によって任意次元に拡張される.
すなわち
次元の区域
:

において,
なる仮定の下で


が存在して


(従って
)なるときの極限値として