解析概論/第8章/一般区域上の積分

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[編集] 92. 一般区域上の積分

一般区域上の積分に関しては,まず xy 平面上の積分区域 K を有界とし,それを面積確定のものに限定する.また函数 f(P) は少なくとも K において定義され,しかも K において有界とする.

さて矩形網 \Delta において K の点を含む小矩形 \omega_i において K の任意の点 P_i を取って,和

(1)
\mathit\Sigma_\Delta = \sum f(P_i)\,\omega_i

を作る.もしも

(2)
I=\lim_{\delta\to 0}\mathit\Sigma_\Delta

が存在するならば,それを区域 K 上の f(P) の積分とする.

(1) において K の境界点を含む小矩形 \omega_i (いわゆる臨界矩形)に関する部分は絶対値において M\mathit\Omega_\Delta を超えない.ここで M は区域 K における \left|f(P)\right| の上限で,\mathit\Omega_\Delta は臨界矩形の総面積である.仮定(K の面積確定)によって \delta\to 0 のとき \mathit\Omega_\Delta\to 0 だから,和 (1) において小矩形 \omega_i は全く K の内部にあるもののみを取ればよろしい.

K に属しない点に関して函数 f(P) を変更または拡張して

f^*(P)=\left\{\begin{array}{r}f(P),\\0,\end{array}\right. PK に属するとき)
PK に属しないとき)

とし, K を含む矩形(辺は座標軸に平行) K^* を取って, K^* における f^*(P) の積分を考察する.それは

(3)
\sum_i f^*(P_i)\,\omega_i

の極限であるが,ここでは,K 外にある小矩形 \omega_i に関しては f^*(P_i)=0 であり,また臨界矩形に関する部分は \mathit\Omega_\Delta\to 0 のため考慮を要しない.従って (3) においても,\omega_i を全く K の内部にある小矩形に限ってよいが,それらに関しては f^*(P_i)=f(P_i) としてよいから,Kf(P) の積分は K^*f^*(P) の積分に帰する. K の境界点は f^*(P) の不連続点になる(なりうる)が,それらは総面積が,どれほどでも小なる小矩形群で覆われてしまうのである. よって次の定理を得る(§90).

定理 77.
面積確定なる区域 K において f(P) は有界とする.然らば
(1º)
積分可能の必要かつ十分なる条件は \textstyle \lim_{\delta\to 0}\sum v_i\omega_i = 0 である.ここで,\omega_iK 内において f(P) の不連続点を含む小矩形で,v_i\omega_i における f(P) の振動量である.
(2º)
f(P)K の内点において連続ならば, f(P)K において積分可能である.
(3º)
f(P) のすべての不連続点が,任意に小なる総面積を有する小矩形群で覆われるならば f(P) は積分可能である(十分条件).

§31 に述べた積分に関する定理は, 二次元以上でも同様に証明されるから, 一々説明しないが,次のは特に基本的である(もちろん区域は面積確定, 函数は積分可能と仮定して述べる).

(1º)
(区域に関する加法性)
区域 KK_1,K_2 に分割されるならば
\int_K f(P)d\omega=\int_{K_1}f(P)d\omega + \int_{K_2}f(P)d\omega.
(2º)
(函数に関する一次性)
a,b が定数ならば
\int_K(af(P)+bg(P))d\omega = a\int_Kf(P)\,d\omega + b\int_Kg(P)\,d\omega.
(3º)
K 上で f(P) が積分可能ならば, |f(P)| も積分可能で,
\left|\int_K f(P)d\omega\right| \leqq \int_K\left|f(P)\right|d\omega.
(4º)
(平均値の定理)
\int_Kf(P)d\omega = \mu A,\qquad(m\leqq\mu\leqq M),
A は区域 K の面積で,m,MK における f(P) の上限,下限である.特に K が閉域で f(P)K において連続ならば \mu=f(P_0), P_0\in K
(5º)
これは一次元では考察を要しなかった問題である. 区域 K において, f(P) が積分可能で,
I=\int_Kf(P)\,d\omega
とする.今 K を小矩形の代りに小区域(面積確定!) \omega_i に分割して,その分割 \Delta に関して,上記のように,和
\mathit\Sigma_\Delta = \sum_if(P_i)\,\omega_i.
を作って,区域 \omega_i を限りなく縮小する(区域 \omega_i の径( 31頁\delta_i の最大値 \delta を限りなく小さくする)とき,和 \mathit\Sigma_\Delta は積分 I に収束する.すなわち
(4)
I=\lim_{\delta\to 0}\sum_if(P_i)\,\omega_i.
これは明白であろうが,念のために証明を略述する.まず小区域 \omega_i に平均値の定理を適用して
I=\sum_i\int_{\omega_i}f(P)\,d\omega = \sum_i\mu_i\,\omega_i,
従って
I-\mathit\Sigma_\Delta = \sum_i(\mu_i-f(P_i))\,\omega_i.
さて |\mu_i-f(P_i)|\leqq v_iv_i\omega_i における f(P) の振動量)だから
|I-\mathit\Sigma_\Delta| \leqq \sum_iv_i\,\omega_i.
故に
(5)
\lim_{\delta\to 0}\sum v_i\,\omega_i = 0
なることを示せばよい.

さて仮定によって f(P) は積分可能だから, 矩形網に関しては (5) は既知である.よって任意の \varepsilon_1(>0) を取って

(6)
\sum_\sigma v(\sigma)\sigma < \varepsilon_1
なる矩形網を取る.\sigma はその矩形網の一つの小矩形の面積で, v(\sigma) は小矩形 \sigma における f(P) の振動量である.前節でもしたように,各小矩形 \sigma 内に,\sigma の各辺を \delta だけ引き込めて矩形 \sigma' を作る(328頁図参照).ただし \delta を十分小さく取って,区域 K からすべての \sigma' を取り除いた残りの面積すなわち \textstyle\sum(\sigma-\sigma') を任意の \varepsilon_2 よりも小さくする.然らば小区域 \omega_i の中で \sigma' と共通点を有するものは,\sigma' の外へはみ出るとしても,\sigma には含まれる(\omega_i の径が \delta 以内であるから).従って一つの \sigma に含まれるそれらの小区域 \omega_i に関しては(v_i\leqq v(\sigma) だから),
\sum v_i\omega_i \leqq v(\sigma)\sigma.
すべての \sigma' に関して合計すれば,(6) から
(7)
\sum_{\sigma'}v_i\omega_i \leqq \sum_\sigma v(\sigma)\sigma < \varepsilon_1.
また (5) において,この和 \textstyle\sum_{\sigma'} に入らない残りの小区域 \omega_i は全く区域 \textstyle\sum(\sigma-\sigma') に含まれるから,それらに関する和は
(8)
\sum_{\sigma-\sigma'}v_i\omega_i \leqq v(K)\sum(\sigma-\sigma') \leqq v(K)\varepsilon_2,
ただし v(K) は全区域 K における f(P) の振動量である.

(7)(8) とから,すべての \omega_i にわたって,

\sum v_i\omega_i < \varepsilon_1 + v(K)\varepsilon_2.
\varepsilon_1,\varepsilon_2 は任意であったから,ここで右辺を任意の \varepsilon よりも小さくとることができる.そのとき
\sum v_i\omega_i < \varepsilon.
すなわち (5),従って (4) が確定する.
(6º)
一次元の積分
I=\int_a^bf(x)dx
は二次元における面積に帰する.今 [a,b] において f(x) は有界で,f(x)\geqq 0 として,二次元において
K
a\leqq x\leqq b,\quad 0\leqq y\leqq f(x)
なる区域を K とする.然らば I は区域 K の面積に等しい.§30 で積分 I に関していった Ss はすなわち §91 の意味での K の外面積,内面積で,積分 I が可能なる場合(S=s=I)はすなわち K の面積確定なる場合である.[a,b] において f(x) は有界であるが,その符号が一定でないときには,Cf(x) の下界として \bar{f}(x)=f(x)-C と置けば \bar{f}(0)\geqq 0 で, \textstyle I=\int_a^b\bar{f}(x)dx-C(a-b).あるいは §39 のように,f(x)=f^+(x)-f^-(x) としてもよい.同様に,二次元の積分は三次元の体積に帰する.
第3章では,一次元積分に関して積分区域を区間に限定したが, 二次元以上では,積分区域 K は連結されていることすらも仮定しなかった.しかし,実際は本節で述べたように,函数 f(P)f^*(P) に変更して,積分区域 KK^* に帰せしめたのである.同様の立場において,一次元でも区間の代りに任意の(有界)点集合 K に関する積分 \textstyle \int_K f(x)\,dx を考察することができる.それは K を含む区間 [a,b] に関する \textstyle \int_a^b f^*(x)\,dx である.特に \varphi(x) を集合 K の定義函数として \textstyle \int_a^b\varphi(x)\,dx をもって集合 K の‘長さ’を定義することができる.

一次元における長さ,二次元における面積,三次元における体積などは任意次元に拡張されるが,Jordan は各次元に関して,それを総称して集合の étendue と名づけた. 英訳すれば extent であろうが,ドイツ系では直訳しないで Inhalt という.折衷してかりにそれを容積というならば,集合 K の容積は,K の定義函数 \varphi(P)Riemann 積分である.Lebesgue は一層深刻な考察によって,容積の概念を拡張して,それを mesuremeasureMass,測度)と名づけた.‘測度’は語義広汎で,特殊の意味に独占されるべきでなかろうから, 各〻の立場を明確にして,Lebesgue 測度に対して上記 Jordan 式の容積,étendue,を Riemann 測度というのが,むしろ適切であろう.

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