解析概論/第8章

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目次

[編集] 第 8 章 積分法(多変数)

[編集] 90.二次元以上の定積分

二つ以上の独立変数の函数に関しても定積分を §30 と同様の立場において考察することができる.以下述べることは各次元に適用されるが,簡明のために二次元について説明する.

xy 平面の閉矩形

[K]
a \leqq x \leqq b,\quad c \leqq y \leqq d

においてf(x,y)が有界であるとする.

区間[a,b], [c,d] を分点

\Delta
\begin{cases}
  a = x_0 < x_1 < \cdots < x_{m-1} < x_m = b,\\
  c = y_0 < y_1 < \cdots < y_{n-1} < y_n = d
\end{cases}

において m 分,n 分して,それらの分点を通る両軸への平行線によって矩形 [K]mn 個の小矩形に分割する.この矩形網 \Delta の一つの小矩形

[\omega_{i,j}]
x_{i-1}\leqq x\leqq x_i,\quad y_{j-1}\leqq y\leqq y_j

における f(x,y) の上限,下限を M_{ij}, m_{ij} として,すべての小矩形に関する和

\begin{align}
  S_\Delta &= \sum M_{ij}(x_i - x_{i - 1})(y_{j} - y_{j - 1}),\\[5pt]
  s_\Delta &= \sum m_{ij}(x_i - x_{i - 1})(y_{j} - y_{j - 1})
\end{align}\quad\left({i = 1,2,\ldots,m\atop j = 1,2,\ldots,n}\right)

を考察する.あるいは小矩形 [\omega_{ij}] の面積をも \omega_{ij} で表わせば


  S_{\Delta} = \sum M_{ij}\omega_{ij},\quad 
  s_{\Delta} = \sum m_{ij}\omega_{ij}

また小矩形 [\omega_{ij}] における f(x,y) の摂動量を

v_{ij} = M_{ij} - m_{ij}

と書けば

S_{\Delta} - s_{\Delta} = \sum v_{ij}\omega_{ij}

これらの記号は §30 と同様である.

さてすべての矩形網 \Delta に関して S_\Deltas_\Delta も有界である.よって前のように S_\Delta の下限をS,また s_\Delta の上限を s とする.こんどは矩形網 \Delta におけるすべての小矩形の最長辺\delta とする.然らば Darboux の定理:

\delta \to 0 のとき S_\Delta\to S,\quad s_\Delta\to s,\quad \sum_\Delta v_{ij}\omega_{ij}\to S-s

が成り立つことは §30 と同様にして証明される.

今各小矩形 [\omega_{ij}] について任意に点 P_{ij}=(\xi_i,\eta_j) を取って,和

\begin{align}
  \mathit\Sigma_\Delta 
  &= \sum f(P_ij)\omega_{ij} & (1\leqq i\leqq m,\ 1\leqq i\leqq n)\\
  &= \sum f(\xi_i,\eta_j)(x_i-x_{i-1})(y_j-y_{j-1})
\end{align}

を作るとき


  \lim_{\delta\to 0}\mathit\Sigma_\Delta=I

が存在するならば,I を矩形 [K] における f(x,y) の積分といい,それを次のように書く.

\begin{align}
  I &= \int_K f(P)d\omega\\
    &= \int_a^b\int_c^d f(x,y)\,dx\,dy.
\end{align}

最後の記法の意味は §93 で述べる.

積分可能の条件も §30 と同様である.すなわち

(1º)
K において f(x,y) が積分可能であるために必要かつ十分なる条件は
S=s すなわち \lim_{\delta\to 0}\sum v_{ij}\omega_{ij}=0.
(2º)
f(x,y)K において連続ならば,積分可能である.
(3º)
f(x,y) が連続でなくても,それが有界ならば,矩形網 \Delta において不連続点を含むすべての小矩形の面積の総和を \mathit\Omega_\Delta とするとき,\textstyle\lim_{\delta\to 0}\mathit\Omega_\Delta=0 ならば,f(x,y)[K] において積分可能である(十分条件).
約言すれば,すべての不連続点を総面積がどのようにも小さい矩形群に入れてしまえるならば,よいのである.

[編集] 91. 面積・体積の定義

前節では積分区域を矩形としたが,二次元では任意の区域における積分を考察しなければならない.そのためには,まず任意区域の面積の意味を明確にしておくことが必要である.

我々はまだ面積の定義を確定していなかったが,今ここで前節を引用して,それを簡単に片付けることができる.

K を有界なる任意の区域(あるいは点集合)として, 次のような函数 \varphi(P) を考察する: すなわち点 P=(x,y)K に属するときは \varphi(P)=1 で, また点 PK に属しないときは \varphi(P)=0 とする.この函数 \varphi(P) を点集合 K定義函数という.

さて K を包む矩形 K^*

[K^*]
a \leqq x \leqq b,\quad c \leqq y \leqq d

における \varphi(P) の積分を考察する.任意の矩形網 \Delta に関して \textstyle s_\Delta = \sum m_{ij}\omega_{ij} を作れば,\varphi(P) の定義によって m_{ij} は小矩形 \omega_{ij} の点が(周をも入れて)すべて K に属するときにだけ m_{ij}=1 で,その他は m_{ij}=0 であるから, s_\Delta はすなわち矩形網 \Delta において全く K に含まれる小矩形群の総面積である.それの上限 \textstyle s=\lim_{\delta\to 0}s_\Delta は確定である.それを区域 K内面積という.

また \textstyle S_\Delta=\sum M_{ij}\omega_{ij} においては, \varphi(P) の定義によって小矩形 \omega_{ij}K に属する点を(一つでも)含むときにだけ M_{ij}=1 で,その他は M_{ij}=0 である. 故に S_\Delta は矩形網 \Delta において K に属する点を含む小矩形群の総面積である. それの下限 \textstyle S=\lim_{\delta\to 0}S_\DeltaK外面積という.

K が有界ならば,K を包む矩形 [K^*] の選択に無関係に,K の内面積 s も外面積 S も確定である.(もちろん S \geqq s \geqq 0.)それらが一致する(S=s)とき,その共通の値をもって K の面積とする.これが面積の定義である. 要約すれば:

有界なる区域 K の面積とは,K を定義する函数 \varphi(P)K を包む矩形 K^* における積分の値である. \varphi(P) が積分可能でないならば,K の面積は確定しない.

さて,S_\Delta-s_\Delta は矩形網 \Delta の各小矩形における \varphi(P) の振動量の総和であるから,K の面積確定の条件は \varphi(P) に関して

(1)
\lim_{\delta\to 0}(S_\Delta-s_\Delta) = S-s = 0

である.

今,矩形網 \Delta において K の境界点を含む小矩形群(臨界矩形群)の総面積を \mathit\Omega_\Delta とすれば,\textstyle\lim_{\delta\to 0}\mathit\Omega_\DeltaK の境界 F の外面積である. それに関して

(2)
\lim_{\delta\to 0}\mathit\Omega_\Delta = S -s

が成立する.今 (2) を承認すれば,K の境界 F の外面積が 0 (従って F の内面積も 0,従って F の面積が 0)であるとき,K が面積確定である.(故に皮肉ながら,次のようにいうことができる: K が面積確定なるために必要かつ十分なる条件は K の境界の面積が 0 なることである!)

さて (2) は明白であろうが,念のため,それを証明する.K の内点のみを含む小矩形群の総面積を s_\Delta(K) と書き,K の内点または境界点を(一つでも)含む小矩形群の総面積を S_\Delta[K] と書けば

(3)
\mathit\Omega_\Delta = S_\Delta[K]-s_\Delta(K)

である.然るに,別々に

(4)
\lim_{\delta\to 0}S_\Delta[K]=S,
(5)
\lim_{\delta\to 0}s_\Delta(K)=s,

が成り立って,それから (2) が得られる.((4)(5)は,K の閉包の外面積は K の外面積に等しく,K の開核の内面積は K の内面積に等しいことを表わす.)

上記 (4)(5) と同様に証明せられるから,(5) を証明する.K の開核 (K)K に含まれるから s_\Delta(K)\leqq s_\Delta は明白である.故に,K の開核の内面積を s(K) と書けば,s(K)\leqq s .よって s\leqq s(K) を証明する.

KaisekiGairon-328-1.svg

面積 s_\Delta に関与する各小矩形の内部に,その各辺を \delta だけひっ込めた矩形を作り,それらの矩形の全体を \sigma とし,その面積も同じ文字 \sigma で表わす.このとき,任意の \varepsilon(>0) に対して,\delta を十分小さく取って,s_\Delta-\sigma<\varepsilon なるようにする.然らば \sigmaK の開核 (K) に含まれ,K の境界と \sigma との距離は \delta 以上であるから,小矩形の辺長の最大値が \delta よりも小なる \Delta の再分割 \Delta' を作れば,(K) に含まれる \Delta' の小矩形群が \sigma を含む.従って面積において \sigma\leqq s_\Delta(K),故に

s_\Delta - \varepsilon <\sigma \leqq s_{\Delta'}(K) \leqq s(K).

\varepsilon は任意だから s_\Delta\leqq s(K).よって s_\Delta の上限を取って s\leqq s(K) を得る.

s\geqq s(K) であったから s=s(K).それが (5)である.

面積の定義を会得するには,面積不確定なる区間(点集合)の実例を挙げるのが適切であろう.今例えば矩形 Q\, (0\leqq x \leqq 1, 0 \leqq y \leqq 2) を取れば, その面積は上記定義に従って 2 である.
KaisekiGairon-328-2.svg
もしも Q の上半 (0\leqq x \leqq 1, 1 \leqq y \leqq 2) に稠密に分布される点,例えば有理点(x, y が有理数なる点)をすべて Q から除いて,その残りを K とすれば,K の外面積は 2 であるが,内面積は 1 で,K の面積は不確定である.Q の上半が全部 K の境界で,境界がすでに面積 1 の区域を占有して,K の内面積と外面積との接近を妨げる. 面積不確定なる区域の実例として,上記 K などは,あまりに平凡であるが,しかし面積不確定なる区域の存在を無視することは,理論上許されない.緊要なのは,面積は天賦でなくて,我々が自ら定義して,自ら始末せねばならないことの認識である.

取扱いがたやすくて,従って応用上常に遭遇するものは,もちろん面積確定なる区域であるが,その中でも標準的な場合を次に述べる.

[例 1]
領域 K の境界が滑らかな曲線またはそれの有限個の結合であるときは,K は面積確定である.
KaisekiGairon-328-3.svg
[証]
x=\varphi(t),\quad y=\psi(t)\quad(0\leqq t\leqq 1)
を滑らかな曲線とする.すなわち \varphi'(t),\psi'(t) は連続(でかつ \varphi'(t)^2 + \psi'(t)^2\ne 0)とする.然らば微分法の平均値の定理によって
x_1-x =(t_1-t)\varphi'(\tau_1),\quad y_1-y=(t_1-t)\psi'(\tau_2),
\tau_1,\tau_2t,t_1 の中間値である.今閉区間 0\leqq t\leqq 1 における |\varphi'(t)|, |\psi'(t)| の最大値を M とすれば(t_1>t として)
|x_1-x|\leqq M(t_1-t),\quad |y_1-y|\leqq M(t_1-t).
故に区間 0\leqq t\leqq 1n 等分すれば,各小区間 [t,t+\tfrac{1}{n}] における t に対応する曲線上の点 (x,y) は辺長 \tfrac{2M}{n} なる正方形に含まれ,従って,曲線全部は総面積が
n\left(\frac{2M}{n}\right)^2 = \frac{4M^2}{n}
以下なる矩形群で覆われる.n を十分大きく取れば,この総面積はどれほどでも小さくなるから,面積確定の条件は満たされている.

上記証明で \varphi'(t),\psi'(t) の連続性は,ただ最大値 M の存在の論拠としてのみ用いた.故に \varphi'(t),\psi'(t) が有界であれば(連続でなくても)たくさんである.

なお一般に \varphi(t),\psi(t) が有界変動,従って K の境界が有限長の閉曲線であればよい.実際その曲線の長さを l として,それを等長なる n 部分に分って \tfrac{l}{n}=\delta とすれば,各小弧はその中点を中心とする辺長 \delta なる正方形内に含まれるから,曲線全体が面積 n\delta^2=\tfrac{l^2}{n} を超えない矩形群で覆われる.
[例 2]
次の図に示すように,x=a,x=b なる二つの縦線と y=\varphi(x),y=\psi(x) なる二つの連続曲線とで囲まれた区域 K は面積確定である.
KaisekiGairon-329-1.svg
詳しくいえば,区間 a\leqq x\leqq b において \varphi(x),\psi(x) は連続で,かつ \varphi(x)>\psi(x) とする (ただし x=a,または x=b においては \varphi(x)=\psi(x) でもよい).然らば a < x < b, \psi(x)< y < \varphi(x) なる点 (x, y)K の内点で全部である.
K の境界の四つの部分 AC,BD,AB,CD に関して各別に条件 (1)が成り立つことをみればよいが,まず AC,BD に関しては論はない.また AB に関しては,\varphi(x) の一様連続性によって,n を十分大きく取って区間 [a,b]n 等分すれば,各小区間における \varphi(x) の振動量は任意の \varepsilon よりも小さくなる.故に AB は総面積 \varepsilon\cdot\tfrac{b-a}{n}\cdot n = \varepsilon(b-a) よりも小なる矩形群で覆われる.\varepsilon は任意に小さく取れるから,それでよろしい.CD に関しても同様.

もちろん xy とを交換して,K が二つの横線 y=c,y=d と二つの連続曲線 x=\varphi(y),x=\psi(y) とで囲まれるとしても同様である.

[注意] 
上記 K の境界線(ACDBA)は一つの Jordan 閉曲線である.これは Jordan 閉曲線が平面を内外両部に分割することが明白なる一例である(33頁参照).

応用上我々の使用に適する区域は[例 1][例 2] の区域またはそれの有限個の接合である.

上記の例で,我々は有限の曲線が面積を有しないことを或る条件の下において確認したのである.それは無条件ではいけない.例えば 32 頁に述べた Peano 曲線などはもちろんいけないが,また Jordan 曲線といえども,外面積が 0 でない実例が作られている(附録II参照).

面積 I なる区域 K が曲線 L によって二つの区域 K_1,K_2 に分割されて,しかも分割線 L に関して条件 (1) が成り立つとする.然らば K_1,K_2 も面積確定であるが,それらの面積を I_1,I_2 とすれば,I=I_1+I_2 である.これも明白であろう. ── 実際,矩形網 \Delta において,K に関する s_\Delta を全く K_1,K_2 に含まれる矩形群 s_1,s_2 と分割線 L の点を含む s' との三種に分けるならば s_\Delta=s_1+s_2+s'.然らば面積の定義によって \delta\to 0 のとき s_\Delta\to I,s_1\to I_1,s_2\to I_2.また仮定によって s'\to 0. 故に I=I_1+I_2

一般に K に含まれる面積確定の区域を K_1,その面積を I_1 とすれば,I\geqq I_1

K_1,K_2 が面積確定ならば,K_1,K_2 の共通部分 DK_1 および K_2 に属する点の全部の集合)および K_1,K_2 の合併 SK_1 または K_2 に属する点の全部の集合)は面積確定である.集合と同じ文字で面積を表わすならば K_1+K_2=S+D.これも同様にして証明される.

面積に関してなお一つの重大なる論点が残っている.互に合同なる区域の面積が相等しいか,という問題がそれである.我々は座標軸に平行なる直線によって生ずる矩形網を基礎にして面積を定義したから,そのような問題が生ずるのである.あるいは区域を固定しておいて座標軸を変換する(直交変換)とき,面積が変わらないことを証明すればよい.

まず或る区域 K が,或る座標軸に関して面積確定とする.然らば,平面を座標軸に平行なる,辺長 \delta の正方格子に分けて,K の臨界正方形の総面積を \mathit\Omega とすれば,\delta\to 0 のとき, \mathit\Omega0 に収束する. 然るに,辺長 \delta なる正方形は,直径 \sqrt{2}\delta なる円に包まれ,その円は,辺が新座標軸に平行で,辺長 \sqrt{2}\delta なる正方形に内接する.故に,最初の臨界正方形群は,各辺の長さの最大値が \sqrt{2}\delta を超えない臨界矩形群(新座標軸に関する)で包まれ,それら臨界矩形群の総面積は 2\mathit\Omega を超えない.故に座標軸を変えた後にも臨界矩形群の総面積は 0 に収束する.故に旧座標に関して,K の面積 I が確定ならば,新座標に関しても K の面積は確定であるが,それを I' とするとき,I=I' であろうか? これが問題の残部である.

K が矩形である場合には,これは明白である.実際,矩形 K の旧座標に関する面積を s とし,K を新座標軸に平行な直線で適当に分割して,そこに生ずる図形を適当に平行移動すれば,新座標軸に平行な辺を有するいくつかの矩形が生ずる.それら矩形の面積を新座標に関して計算して合計した値を s' とすれば,s'=s となる(或る区域(点集合)の面積と,それの平行移動によって生ずる区域の面積とは,同じ座標軸に関して,相等しいことは明白であろう).一般の K に関しては,新座標に関する矩形網で K の内部に含まれる矩形群の新旧両座標に関する総面積を,それぞれ s',s で表わすならば,sK の内部に含まれる矩形群の面積だから,上記のように s'=s\leqq I.然るに I's' の上限だから I'\leqq I.旧と新との座標軸を交換して考えるならば I\leqq I'.故に I=I'

三次元における区域 K体積は,矩形の代りに直方体を基礎として,面積と同様に定義される.体積確定の条件も同様で,K の境界を総体積が任意に小なる小直方体群で包みるとき,K の体積は確定である.次の例は面積に関して前に掲げた 例 1例 2 に該当するものである.

[例 3]
領域 K が有限個の滑らかな曲面で界されるとき,K は体積確定である.曲面
x=\varphi(u,v),\quad y=\psi(u,v),\quad z=\chi(u,v),\ (0\leqq u\leqq 1,\quad 0\leqq v\leqq 1)
が滑らかであるとは,\varphi,\psi,\chi が連続的微分可能であることをいう.
体積確定の証明は [例 1]と同様に平均値の定理による.
KaisekiGairon-331-1.svg
[例 4]
kxy 平面上で面積確定なる区域, \varphi_1(x,y), \varphi_2(x,y)k を含む閉区域において連続で,かつ \varphi_1(x,y)\leqq\varphi_2(x,y) とする.然らば
(x,y)\in k,\qquad \varphi_1(x,y)\leqq z\leqq\varphi_2(x,y)
なる点 (x,y,z) の集合 K は体積確定である.
K の境界の中で,上下の両端 A_1,A_2 はそれぞれ曲面 z=\varphi_1(x,y),z=\varphi_2(x,y) に属する. それらが体積 0 なることは \varphi_1,\varphi_2 の連続性によって 例 2 のように証明される.また K の‘側面’ Lk の臨界矩形を底とし,或る一定の高さ h(例えば \varphi_2-\varphi_1 の上限)を有する直方体群に包まれる.仮定によって k は面積確定だから,これらの直方体群の総体積は 0 に収束する.

[編集] 92. 一般区域上の積分

一般区域上の積分に関しては,まず xy 平面上の積分区域 K を有界とし,それを面積確定のものに限定する.また函数 f(P) は少なくとも K において定義され,しかも K において有界とする.

さて矩形網 \Delta において K の点を含む小矩形 \omega_i において K の任意の点 P_i を取って,和

(1)
\mathit\Sigma_\Delta = \sum f(P_i)\,\omega_i

を作る.もしも

(2)
I=\lim_{\delta\to 0}\mathit\Sigma_\Delta

が存在するならば,それを区域 K 上の f(P) の積分とする.

(1) において K の境界点を含む小矩形 \omega_i (いわゆる臨界矩形)に関する部分は絶対値において M\mathit\Omega_\Delta を超えない.ここで M は区域 K における \left|f(P)\right| の上限で,\mathit\Omega_\Delta は臨界矩形の総面積である.仮定(K の面積確定)によって \delta\to 0 のとき \mathit\Omega_\Delta\to 0 だから,和 (1) において小矩形 \omega_i は全く K の内部にあるもののみを取ればよろしい.

K に属しない点に関して函数 f(P) を変更または拡張して

f^*(P)=\left\{\begin{array}{r}f(P),\\0,\end{array}\right. PK に属するとき)
PK に属しないとき)

とし, K を含む矩形(辺は座標軸に平行) K^* を取って, K^* における f^*(P) の積分を考察する.それは

(3)
\sum_i f^*(P_i)\,\omega_i

の極限であるが,ここでは,K 外にある小矩形 \omega_i に関しては f^*(P_i)=0 であり,また臨界矩形に関する部分は \mathit\Omega_\Delta\to 0 のため考慮を要しない.従って (3) においても,\omega_i を全く K の内部にある小矩形に限ってよいが,それらに関しては f^*(P_i)=f(P_i) としてよいから,Kf(P) の積分は K^*f^*(P) の積分に帰する. K の境界点は f^*(P) の不連続点になる(なりうる)が,それらは総面積が,どれほどでも小なる小矩形群で覆われてしまうのである. よって次の定理を得る(§90).

定理 77.
面積確定なる区域 K において f(P) は有界とする.然らば
(1º)
積分可能の必要かつ十分なる条件は \textstyle \lim_{\delta\to 0}\sum v_i\omega_i = 0 である.ここで,\omega_iK 内において f(P) の不連続点を含む小矩形で,v_i\omega_i における f(P) の振動量である.
(2º)
f(P)K の内点において連続ならば, f(P)K において積分可能である.
(3º)
f(P) のすべての不連続点が,任意に小なる総面積を有する小矩形群で覆われるならば f(P) は積分可能である(十分条件).

§31 に述べた積分に関する定理は, 二次元以上でも同様に証明されるから, 一々説明しないが,次のは特に基本的である(もちろん区域は面積確定, 函数は積分可能と仮定して述べる).

(1º)
(区域に関する加法性)
区域 KK_1,K_2 に分割されるならば
\int_K f(P)d\omega=\int_{K_1}f(P)d\omega + \int_{K_2}f(P)d\omega.
(2º)
(函数に関する一次性)
a,b が定数ならば
\int_K(af(P)+bg(P))d\omega = a\int_Kf(P)\,d\omega + b\int_Kg(P)\,d\omega.
(3º)
K 上で f(P) が積分可能ならば, |f(P)| も積分可能で,
\left|\int_K f(P)d\omega\right| \leqq \int_K\left|f(P)\right|d\omega.
(4º)
(平均値の定理)
\int_Kf(P)d\omega = \mu A,\qquad(m\leqq\mu\leqq M),
A は区域 K の面積で,m,MK における f(P) の上限,下限である.特に K が閉域で f(P)K において連続ならば \mu=f(P_0), P_0\in K
(5º)
これは一次元では考察を要しなかった問題である. 区域 K において, f(P) が積分可能で,
I=\int_Kf(P)\,d\omega
とする.今 K を小矩形の代りに小区域(面積確定!) \omega_i に分割して,その分割 \Delta に関して,上記のように,和
\mathit\Sigma_\Delta = \sum_if(P_i)\,\omega_i.
を作って,区域 \omega_i を限りなく縮小する(区域 \omega_i の径( 31頁\delta_i の最大値 \delta を限りなく小さくする)とき,和 \mathit\Sigma_\Delta は積分 I に収束する.すなわち
(4)
I=\lim_{\delta\to 0}\sum_if(P_i)\,\omega_i.
これは明白であろうが,念のために証明を略述する.まず小区域 \omega_i に平均値の定理を適用して
I=\sum_i\int_{\omega_i}f(P)\,d\omega = \sum_i\mu_i\,\omega_i,
従って
I-\mathit\Sigma_\Delta = \sum_i(\mu_i-f(P_i))\,\omega_i.
さて |\mu_i-f(P_i)|\leqq v_iv_i\omega_i における f(P) の振動量)だから
|I-\mathit\Sigma_\Delta| \leqq \sum_iv_i\,\omega_i.
故に
(5)
\lim_{\delta\to 0}\sum v_i\,\omega_i = 0
なることを示せばよい.

さて仮定によって f(P) は積分可能だから, 矩形網に関しては (5) は既知である.よって任意の \varepsilon_1(>0) を取って

(6)
\sum_\sigma v(\sigma)\sigma < \varepsilon_1
なる矩形網を取る.\sigma はその矩形網の一つの小矩形の面積で, v(\sigma) は小矩形 \sigma における f(P) の振動量である.前節でもしたように,各小矩形 \sigma 内に,\sigma の各辺を \delta だけ引き込めて矩形 \sigma' を作る(328頁図参照).ただし \delta を十分小さく取って,区域 K からすべての \sigma' を取り除いた残りの面積すなわち \textstyle\sum(\sigma-\sigma') を任意の \varepsilon_2 よりも小さくする.然らば小区域 \omega_i の中で \sigma' と共通点を有するものは,\sigma' の外へはみ出るとしても,\sigma には含まれる(\omega_i の径が \delta 以内であるから).従って一つの \sigma に含まれるそれらの小区域 \omega_i に関しては(v_i\leqq v(\sigma) だから),
\sum v_i\omega_i \leqq v(\sigma)\sigma.
すべての \sigma' に関して合計すれば,(6) から
(7)
\sum_{\sigma'}v_i\omega_i \leqq \sum_\sigma v(\sigma)\sigma < \varepsilon_1.
また (5) において,この和 \textstyle\sum_{\sigma'} に入らない残りの小区域 \omega_i は全く区域 \textstyle\sum(\sigma-\sigma') に含まれるから,それらに関する和は
(8)
\sum_{\sigma-\sigma'}v_i\omega_i \leqq v(K)\sum(\sigma-\sigma') \leqq v(K)\varepsilon_2,
ただし v(K) は全区域 K における f(P) の振動量である.

(7)(8) とから,すべての \omega_i にわたって,

\sum v_i\omega_i < \varepsilon_1 + v(K)\varepsilon_2.
\varepsilon_1,\varepsilon_2 は任意であったから,ここで右辺を任意の \varepsilon よりも小さくとることができる.そのとき
\sum v_i\omega_i < \varepsilon.
すなわち (5),従って (4) が確定する.
(6º)
一次元の積分
I=\int_a^bf(x)dx
は二次元における面積に帰する.今 [a,b] において f(x) は有界で,f(x)\geqq 0 として,二次元において
K
a\leqq x\leqq b,\quad 0\leqq y\leqq f(x)
なる区域を K とする.然らば I は区域 K の面積に等しい.§30 で積分 I に関していった Ss はすなわち §91 の意味での K の外面積,内面積で,積分 I が可能なる場合(S=s=I)はすなわち K の面積確定なる場合である.[a,b] において f(x) は有界であるが,その符号が一定でないときには,Cf(x) の下界として \bar{f}(x)=f(x)-C と置けば \bar{f}(0)\geqq 0 で, \textstyle I=\int_a^b\bar{f}(x)dx-C(a-b).あるいは §39 のように,f(x)=f^+(x)-f^-(x) としてもよい.同様に,二次元の積分は三次元の体積に帰する.
第3章では,一次元積分に関して積分区域を区間に限定したが, 二次元以上では,積分区域 K は連結されていることすらも仮定しなかった.しかし,実際は本節で述べたように,函数 f(P)f^*(P) に変更して,積分区域 KK^* に帰せしめたのである.同様の立場において,一次元でも区間の代りに任意の(有界)点集合 K に関する積分 \textstyle \int_K f(x)\,dx を考察することができる.それは K を含む区間 [a,b] に関する \textstyle \int_a^b f^*(x)\,dx である.特に \varphi(x) を集合 K の定義函数として \textstyle \int_a^b\varphi(x)\,dx をもって集合 K の‘長さ’を定義することができる.

一次元における長さ,二次元における面積,三次元における体積などは任意次元に拡張されるが,Jordan は各次元に関して,それを総称して集合の étendue と名づけた. 英訳すれば extent であろうが,ドイツ系では直訳しないで Inhalt という.折衷してかりにそれを容積というならば,集合 K の容積は,K の定義函数 \varphi(P)Riemann 積分である.Lebesgue は一層深刻な考察によって,容積の概念を拡張して,それを mesuremeasureMass,測度)と名づけた.‘測度’は語義広汎で,特殊の意味に独占されるべきでなかろうから, 各〻の立場を明確にして,Lebesgue 測度に対して上記 Jordan 式の容積,étendue,を Riemann 測度というのが,むしろ適切であろう.

[編集] 93. 一次元への単純化

任意次元の積分は,或る条件の下において, 一次元積分の反復(累次積分)に帰する.最も簡明な場合として次の定理から始める.

定理 78.
矩形 Ka\leqq x\leqq b, c\leqq y\leqq d)において f(x,y) が連続ならば
(1)
\int_K f(x,y)\,d\omega = \int_c^d dy\int_a^b f(x,y)\,dx.

定理の意味は次の通りである.f(x,y) の連続性によって左辺の二次元積分は可能である. 右辺において,しばらく y の値を固定するならば,f(x,y)x に関して連続だから,\textstyle\int_a^b f(x,y)\,dx は確定するが,その値は y の函数である.それをかりに

(2)
F(y) = \int_a^b f(x,y)\,dx

と書くならば,(1) の右辺は

(3)
\int_c^dF(y)dy

を意味する.すなわち \textstyle \int_c^d \{\int_a^b f(x,y)\,dx\}dy であるが, 明瞭のために dy を前に書いて括弧 \{ \} を略したのである.さて定理の意味は,上記第二回の一次元積分 (3) が可能で,かつそれが (1) の左辺の二次元積分に等しいというところにある.

あるいは f(x,y) の連続性を仮定しないで,定理 78よりも一般に,次の定理が証明される.

定理 79.
上記の矩形 K において有界なる f(x,y) が積分可能で,また c<y<d なるとき積分 \textstyle F(y)=\int_a^b f(x,y)\,dx が可能ならば,等式 (1) が成り立つ.
[証]
§90 の記号を襲用する.矩形網 \Delta において
x_{i-1}\leqq x\leqq x_i,\quad y_{j-1}\leqq\eta_j\leqq y_j
とすれば,平均値の定理によって
m_{ij}(x_i-x_{i-1}) 
  \leqq \int_{x_{i-1}}^{x_i}f(x,\eta_j)\,dx
  \leqq M_{ij}(x_i-x_{i-1}).
i に関して合計すれば
\sum_{i=1}^m m_{ij}(x_i-x_{i-1})
  \leqq\int_a^b f(x,\eta_j)\,dx
  \leqq\sum_{i=1}^m M_{ij}(x_i-x_{i-1}),
すなわち(上記の記号 (2) を用いて)
\sum_{i=1}^m m_{ij}(x_i-x_{i-1})
  \leqq F(\eta_j)\leqq\sum_{i=1}^m M_{ij}(x_i-x_{i-1}),
(y_j-y_{j-1}) を掛けて,j に関して合計すれば
\sum_{i,j}m_{ij}(x_i-x_{i-1})(y_j-y_{j-1})
  \leqq\sum_{j=1}^n F(\eta_j)(y_j-y_{j-1})
  \leqq\sum_{i,j}M_{ij}(x_i-x_{i-1})(y_j-y_{j-1}),
すなわち
s_\Delta\leqq\sum F(\eta_j)(y_j-y_{j-1})\leqq S_\Delta.
さて仮定によって f(x,y)K において積分可能である.その積分を I とすれば,\delta\to 0 のとき s_\Delta\to I, S_\Delta\to I.従って
\sum_{j=1}^n F(\eta_j)(y_j-y_{j-1})\to I,
すなわち
I = \int_c^d F(y)\,dy.
これが証明すべき (1) である.
(証終)
[注意 1] 
上記定理において,変数 x,y の順序を交換すれば
I = \int_a^b dx\int_c^d f(x,y)\,dy.
これは y に関する積分が a\leqq x\leqq b なるとき常に可能なる条件の下において成り立つのである.特に f(x,y)K において連続ならば
\int_a^b dx\int_c^d f(x,y)\,dy = \int_c^d dy\int_a^b f(x,y)\,dx.
これは §48 定理 41(Bにほかならない.
[注意 2] 
K§91,[例2]のような区域,すなわち
a\leqq x\leqq b,\quad\varphi_1(x)\leqq y\leqq\varphi_2(x)
で,f(x,y)K において連続ならば
(4)
I = \int_K f(x,y)\,d\omega = \int_a^b dx\int_{\varphi_1(x)}^{\varphi_2(x)}f(x,y)\,dy.
KaisekiGairon-336-1.svg
これは 定理 79から導かれる.§92 のように, K を含む矩形 K^* において,ff^* に改造して考えるならば,f^* は各縦線上において(多くとも)二つの不連続点を(K の境界線上において)有するにすぎないから,積分 \textstyle\int_c^d f^*(x,y)\,dy が可能で
I=\int_a^b dx\int_c^d f^*(x,y)\,dy
であるが,中の積分は \textstyle\int_{\varphi_1(x)}^{\varphi_2(x)}f(x,y)\,dy に等しい.特に f(x,y) を定数 1 とすれば, I はすなわち K の面積で
(5)
I=\int_a^b(\varphi_2(x)-\varphi_1(x))dx 
  =\int_a^b\varphi_2(x)\,dx - \int_a^b\varphi_1(x)\,dx
を得る.これが一次元積分によって面積を求める公式である.
[例 1]
双曲線 \tfrac{x^2}{a^2}-\tfrac{y^2}{b^2}=1 の任意の点を P=(x_0,y_0),頂点を A=(a,0) とするとき,動径 OAOP の間のセクトル(扇形) AOP の面積 S を計算すること.
[解]
a>0, b>0,また P は第一象限にあるとする.すなわち x_0\geqq 0, y_0\geqq 0.然らば弧 AP,動径 OP の方程式は,それぞれ
x=a\sqrt{1+\frac{y^2}{b^2}},\quad x=\frac{x_0}{y_0}y
だから,(5) において,xy とを交換して
S=\int_0^{y_0}a\sqrt{1+\frac{y^2}{b^2}}\,dy -\int_0^{y_0}\frac{x_0}{y_0}y\,dy.
右辺で,第一の積分は \tfrac{y}{b}=t とすれば
\begin{align} 
  ab\int_0^{\frac{y_0}{b}}\sqrt{1+t^2}\,dt 
  &= \frac{ab}{2}\left[t\sqrt{1+t^2}
    +\log(t+\sqrt{1+t^2})\right]_0^{\frac{y_0}{b}} \\ 
  &= \frac{ab}{2} \left\{\frac{y_0}{b}\sqrt{1+\frac{y_0^2}{b^2}}
    +\log\left(\frac{y_0}{b}+\sqrt{1+\frac{y_0^2}{b^2}}\right)\right\}
   =\frac{x_0y_0}{2}+\frac{ab}{2}\log\left(\frac{x_0}{a}+\frac{y_0}{b}\right). \end{align}
第二の積分は
\int_0^{y_0}\frac{x_0}{y_0}y\,dy = \frac{x_0y_0}{2}
だから,
S=\frac{ab}{2}\log\left(\frac{x_0}{a}+\frac{y_0}{b}\right),
これが求める面積である.
KaisekiGairon-337-1.svg
もしも媒介変数 \sigma をもって,双曲線を

  \frac{x}{a}=\frac{e^\sigma+e^{-\sigma}}{2},\quad
  \frac{y}{b}=\frac{e^\sigma-e^{-\sigma}}{2}
で表わすならば,
S=\frac{1}{2}ab\sigma_0
を得る(§54 参照).

上記と全く同様な考察が高次元にも適用される. 今三次元に関してその要領を述べる.

f(x,y,z) は直方体 K

[K]
a_1\leqq x\leqq a_2,\quad b_1\leqq y\leqq b_2,\quad c_1\leqq z\leqq c_2

において積分可能と仮定する.この区域内において x,y を固定するとき, z に関する積分

(6)
F(x,y)=\int_{c_1}^{c_2}f(x,y,z)\,dz

が可能であると仮定するならば

(7)
I=\iiint_K f(x,y,z)\,dx\,dy\,dz=\iint_CF(x,y)dx\,dy,

すなわち

I=\int_C dx\,dy\int_{c_1}^{c_2}f(x,y,z)\,dz.

ただし Cxy 平面上の矩形 a_1\leqq x\leqq a_2, b_1\leqq y\leqq b_2 である.このようにして一次元の積分 (6) を行った後,I は二次元積分 (7) に帰する. あるいは,これと双対的に,z だけを固定して x,y に関する積分

(8)
Q(z)=\iint f(x,y,z)\,dx\,dy

を可能とするならば,

(9)

  I=\int_{c_1}^{c_2}Q(z)\,dz 
   =\int_{c_1}^{c_2}\iint_C f(x,y,z)\,dx\,dy.

C は前の通り xy 平面上の矩形である.

いずれの方法にいても,二次元積分をさらに一次元積分に還元することができるならば, I は三回の一次元積分に帰する[* 1]

特に f(x,y,z)K において連続ならば,F(x,y)C において連続,また Q(z) は区間 [c_1,c_2] において連続で

I=\int_{a_1}^{a_2}dx\int_{b_1}^{b_2}dy\int_{c_1}^{c_2}f(x,y,z)\,dz.

一般区域 K における f(P) の積分は K を含む直方体 K^* における f^*(P) の積分として,それを低次元の累次積分にすることができる.特に最も簡明なのは次の二つの場合である.

(1º)
K§91,[例 4] の区域とする.そのとき積分 (6)
F(x,y)=\int_{\varphi_1(x,y)}^{\varphi_2(x,y)}f(x,y,z)\,dz
になるが,この積分を可能と仮定すれば

 I = \int_K f(P)\,d\omega 
   = \int_K dxdy\int_{\varphi_1}^{\varphi_2}f(x,y,z)\,dz.
特に f(P)=1 とすれば,K の体積 V が得られる.すなわち
(10)
V=\int_K\left(\varphi_2(x,y)-\varphi_1(x,y)\right)\,dx\,dy.
これは K を微小柱体に分割して,その体積を計算する方法である.
KaisekiGairon-338-1.svg
(2º)
Kz 軸上への正射影は線分 [c_1,c_2] で,z 軸に垂直なる截面 C(z),すなわち (x,y,z)\in K なる (x,y) の集合は,面積確定と仮定する.然らば積分 (8)
Q(z)=\iint_{C(z)}f(x,y,z)dxdy
になるが,この積分が可能ならば

  I=\int_K f(P)\,d\omega=\int_{c_1}^{c_2}Q(z)\,dz
   =\int_{c_1}^{c_2}dz\int_{C(z)}f(x,y,z)\,dx\,dy.
特に f(P)=1 とすれば,K の体積は
(11)
V=\int_{c_1}^{c_2}Q(z)dz,
ただし,ここでは Q(z) は截面 C(z) の面積である.これは立体 K を微小層片に分割して,その体積を計算する方法である.
[例 2]
底面積が A で高さが h なる筒(斜筒)の体積は V=Ah
底を xy 平面上の区域 k とすれば,截面はすべて k と合同だから,(11) において Q(z)=A として
V=\int_0^h A\,dz = A\int_0^h dx=Ah.

斜筒 K の体積が確定ならば,これでよいのだが,我々は筒の底 k が面積確定であることだけを仮定した.その仮定から筒の体積確定が導かれるであろうか? それが実は問題の契点である.さて底が矩形ならば筒は多面体(斜角筒)従って体積確定(§91,[例 3])だから,上記の公式が適用される.そこで xy 平面を矩形網 \Delta で覆うとき,底 k の臨界矩形の総面積を \Omega_\Delta とすれば,筒の側面は総体積 h\mathit\Omega_\Delta なる斜角筒群で包まれるが,仮定(k の面積確定)によって \mathit\Omega_\Delta\to 0 だから,これらの臨界斜角筒群は総体積が限りなく小さくされる.故にそれらは(従って K の側面も)総体積が任意に小なる直方体群に包まれる.すなわち K は体積確定である(§91).

[例 3]
底面積が A,高さが h なる錐体の体積は V=\tfrac{1}{3}AH.体積確定の理論は 例 2と同様.体積の計算は次の通り.ここでは Q(z)=A(\tfrac{z}{h})^2

 V=\int_0^h\frac{Az^2}{h^2}dz
  =\frac{A}{h^2}\int_0^hz^2dz
  =\frac{1}{3}Ah.

初等幾何学で体積の計算される立体においては,直截面積 Q(z)z の二次式である.その場合には一般に


  V=\int_{c_1}^{c_2}Q(z)dz
   =\frac{h}{6}\left\{Q(c_1)+Q(c_2)+4Q\left(\frac{c_1+c_2}{2}\right)\right\},

ただし h=c_2-c_1§38). 例えば楕円体

\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}+\frac{z^2}{c^2}\leqq 1

においては,截面は楕円

\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1-\frac{z^2}{c^2},

従って

Q(z)=\pi ab\left(1-\frac{z^2}{c^2}\right).

よって

c_2=c,\quad c_1=-c,\quad Q(c_1)=Q(c_2)=0,\quad Q\left(\frac{c_1+c_2}{2}\right)=\pi ab,
V=\frac{2c}{6}\cdot 4\pi ab=\frac{4}{3}\pi abc.

一般に,二つの平行平面と一つの線織面(ruled surface)とで囲まれる立体 K の体積も上記の範疇に属する.今平行平面を z=c_1,z=c_2 とし線織面の母線を

\begin{align} x &= az+p, \\ y &= bz+q \end{align}

とする.ただし a,b,p,q は一つの媒介変数 t の函数で, tt_0 から T まで変動するとき,母線が K の側面を画くとする.a,b,p,qt に関して連続的微分可能とすれば,側面は滑らかな曲面で,K は体積確定,また截面積 Q(z) は一般にはその周上の線積分として計算されるであろう(§41.すなわち

\begin{align} Q(z)
  &= \frac{1}{2}\int_{t_0}^T(xy'-x'y)\,dt \\
  &= \frac{1}{2}\int_{t_0}^T\left\{(az+p)(b'z+q')-(a'z+p')(bz+q)\right\}\,dt, \end{align}

ただし a',b',p',q't に関する導函数である.積分記号の下の函数,従って Q(z)z に関する二次式である.

t の函数 a',b',p',q' が区間 [t_0,T] において有限個の不連続点を有してもよい.K の側面が有限個の多角形から成り立つ場合は, その一例である(次の図を参照).

KaisekiGairon-340-1.svg

これらの場合において,K の体積 V は上記のように次の公式によって計算される(Kepler の公式):

V=\frac{h}{6}(B_1+B_2+4B_0).

ただし,B_1=Q(c_1),B_2=Q(c_2) は底面積,B_0=Q(\tfrac{c_1+c_2}{2}) は中央截面積で,h は高さである.

[例 4]
回転体の体積.xz 平面上,区間 a\leqq z\leqq b において与えられた曲線 AB の方程式を
x=\varphi(z)\geqq 0
とする.ABz 軸のまわりに回転して生ずる回転体においては,直截面 Q(z) は円
x^2+y^2=\varphi(z)^2
で,その面積は Q(z)=\pi\varphi(z)^2 である.故に
V=\pi\int_a^b\varphi(z)^2dz.

  1. (7) の中辺のように, 積分記号を三つ書く記法は一次元積分への単純化を予想するのである.

[編集] 94. 積分の意味の拡張(広義積分)

これまでは積分の区域 K は有界でかつ面積確定とし,また積分される函数 f(P)K において有界としたが,K において f(P) が有界でない場合または区域 K が有界でない場合にも,積分の意味を拡張することが応用上重要である.そのために次の仮定をする.

(1º)
K が有界なる場合には,K は面積確定とする.K が有界でない場合には,正方形,|x|<R,|y|<RR>0 は任意)に含まれる K の部分は面積確定とする.
(2º)
K 内に面積確定なる有界な閉区域を取って,しだいにそれを拡張して限りなく区域 K に近づかしめることができる.すなわち K に含まれる面積確定なる有界な閉区域の無限列 \{K_n\} があって,K 内の任意の有界な閉区域は十分大なる番号以上のすべての K_n に含まれるとする.
(3º)
K に含まれる任意の面積確定なる有界な閉区域において,f(P) は有界で,かつ積分可能とする.
簡明のため,上記仮定((2º) に述べた性質を有する区域列 \{K_n\}K に収束するという(記号: K_n\to K).特に K_1\subset K_2\subset\cdots\subset K_n\subset\cdots ならば,\{K_n\}単調に K に収束するという.
一般に区域列 \{K_n\}K に収束するとき,K_1, K_2, \ldots, K_n を合併した区域を H_n とすれば,\{H_n\} は単調に K に収束する.

さて,最初に,f(P)K において正とする: f(P)\geqq 0.そのとき積分

I(K_n) = \int_{K_n}f(P)\,d\omega

K に収束するすべての区域列 \{K_n\} に関して,n\to\infty のとき一定の極限値 I に収束するならば,その極限値 I をもって,K における f(P) の積分を定義とする: すなわち

I= \int_K f(P)\,d\omega

とする.このような意味での積分を正なる函数 f(P) の広義積分という.

上記の定義において,K に収束するすべての区域列 \{K_n\} に関して I(K_n) が収束すれば,その極限値は当然一定である.実際 \{K_n\},\{K_n'\} がともに K に収束するならば,区域列 K_1,K_1',K_2,K_2',\ldotsK に収束するから,それは明白である(§9,参照).また連続的変数 \lambda に関して閉区域 K_\lambda\lambda\to\infty のとき区域 K に収束すると考えてよい.すなわち K 内の任意の有界な閉区域 H が与えられたとき,\lambda>\lambda_0 なるすべての \lambda に関して K_\lambdaH を含むと仮定するのである.上記の定義に従って \textstyle\int_Kf(P)d\omega が収束するなら \textstyle\lim_{\lambda\to\infty}\int_{K_\lambda}f(P)\,d\omega=I である.

広義積分の上記定義が諒解を得たとするならば,広義積分の収束条件は簡明である.すなわち,K において正なる f(P)\geqq 0 に関し \textstyle\int_K f(P)\,d\omega が収束するために必要かつ十分なる条件は,K 内のすべての面積確定なる有界な閉区域 H に関して,\textstyle I(H)=\int_H f(P)\,d\omega が有界なることである.すなわち,或る定数 M が存在して,すべての H に関して常に I(H)\leqq M となるのである.

[証]
\{K_n\} を単調に K に収束する一つの区域列とする.然らば,f(P)\geqq 0 だから,数列 I(K_n) は単調に増大する.故に、 I(K_n)\leqq M ならば I(K_n) に収束する.

さて I(K_n)\to\gamma として,K に収束する任意の区域列を \{K_n'\} とする.然らば番号 \nu を固定するとき,或る番号以上の K_n に関して K_\nu'\subset K_n だから,f(P)\geqq 0 によって I(K_\nu')\leqq I(K_n)\leqq\gamma.すなわち I(K_n') は有界で,\gamma がその一つの上界である.さて任意に \varepsilon>0 を取れば,仮定 I(K_n)\to\gamma によって,\gamma-\varepsilon<I(K_p)\leqq\gamma なる番号 p があるが,仮定 K_n'\to K によって,或る番号以上は常に K_p\subset K_n',従って I(K_p)\leqq I(K_n'),すなわち \gamma-\varepsilon<I(K_n')\leqq\gamma\varepsilon は任意であったから I(K_n')\to\gamma

逆に,I(K_n) が収束するならば,仮定 K_n\to K によって,任意の H は或る番号以上の K_n に含まれるから,I(H) は有界である.故に上記の条件は収束のために必要かつ十分である[* 1]

次に,K において,f(P) の符号が一定でない場合には,|f(P)|K における広義積分が存在するという仮定の下に,f(P)K における広義積分を,すぐ下に述べるように定義する.そのために,まず,二つの函数 f^+(P),f^-(P)

f(P)\geqq 0 ならば f^+(P)=f(P),\quad f^-(P)=0,
f(P)< 0 ならば f^+(P)=0,\quad f^-(P)=-f(P)

によって定義する(§39).然らば,

f^+(P)\geqq 0,\quad f^-(P)\geqq 0,
f(P)=f^+(P)-f^-(P),\quad |f(P)|=f^+(P)+f^-(P),
f^+(P)=\frac{1}{2}(|f(P)|+f(P)),\quad f^-(P)=\frac{1}{2}(|f(P)|-f(P)).

よって,f^+(P)\leqq|f(P)|,f^-(P)\leqq|f(P)| だから,f^+(P) および f^-(P)K における広義積分が存在する.それを用いて

\int_K f(P)\,d\omega = \int_K f^+(P)\,d\omega - \int_K f^-(P)\,d\omega

によって,f(P)K における広義積分を定義する.

[附記] 
一般に (1º)(2º) を満たす区域 K において,広義積分 \textstyle\int_K f(P)\,d\omega が存在するとき,K に,その境界の一部(または全部)を合併した区域を H とし,H における f(P) の広義積分を,(境界上の点 P において f(P) が定義されていても,いなくても)
(1)
\int_H f(P)d\omega = \int_K f(P)\,d\omega
と規約することができる[* 2].実際,或る一つの H に対して,上記のような K が二つ以上ある場合には,それらの K に関して,(1) の右辺の積分は相等しいことが証明できる.その一般的な証明は本書では書ききれないが,応用上しばしば遭遇する具体的な計算においては,その証明は簡単である場合が多い.
[注意] 
二次元以上では広義積分は,絶対収束の場合にのみ定義された.絶対収束以外の場合には,K_n\to K のとき \textstyle I^+(K_n)=\int_{K_n} f^+(P)\,d\omega\to\infty または \textstyle I^-(K_n)=\int_{K_n} f^-(P)\,d\omega\to\infty である.もしも一方のみが \infty ならば,I(K_n)\to\pm\infty で,それを収束といわないにしても,I(K_n) の行動は確定であるが,もしも双方共に \infty ならば,K に収束する K_n の選定に従って,\lim I(K_n) は動揺するから,\textstyle\int_K f(P)\,d\omega に一定の値がない(345頁,[例 4]参照).それはあたかも条件収束の級数における項の順序の変更と同様である.(一次元では,積分区域 K は区間で,\{K_n\} を単調に増大して K に収束する区間列に限定して,広義積分を定義したが,二次元以上では \{K_n\} の選択の自由度が広大だから事情が違う.)[* 3]
[例 1]
xy 平面において r を原点 (0,0) と点 P=(x,y) との距離とし,積分区域 K を単位円(x^2+y^2\leqq 1)として
I(K)=\int_K\frac{d\omega}{r^\alpha} =\iint\limits_K \frac{dx\,dy}{(x^2+y^2)^{\frac{\alpha}{2}}}\quad (\alpha>0)
を考察する.
KaisekiGairon-343-1.svg
これは上記 f(P)=r^{-\alpha}\geqq 0 の場合であるが,原点だけが不連続点だから,\rho_n\to 0 として \rho_n\leqq r\leqq 1 なる円環を K_n とすれば,K_n\to K で,
I(K_n)=\iint\limits_{K_n}\frac{dx\,dy}{(x^2+y^2)^{\frac{\alpha}{2}}}.
あるいは極座標では[* 4]
I(K_n)
  =\int_{\rho_n}^1\int_0^{2\pi}\frac{r\,dr\,d\theta}{r^\alpha}
  =2\pi\int_{\rho_n}^1r^{1-\alpha}
  =\frac{2\pi}{2-\alpha}\left(1-\rho^{2-\alpha}\right).
ただし,この計算では \alpha\neq 2 とした.故に
(1)
0<\alpha<2 ならば \rho_n\to 0 のとき,\rho_n^{2-\alpha}\to 0.従って
I(K)=\frac{2\pi}{2-\alpha}.
(2)
\alpha=2 ならば
I(K_n)
  =2\pi\int_{\rho_n}^1\frac{dr}{r}
 =-2\pi\log\rho_n \to+\infty.
(3)
\alpha>2 ならば \tfrac{1}{r^\alpha}>\tfrac{1}{r^2} だから,なおもって I(K_n)\to+\infty

K が原点を含む任意の有界なる区域であるとしても,収束条件は同様である.

(また反対に,K が単位円の外部ならば \textstyle\int_K\frac{d\omega}{r^\alpha} の収束条件は \alpha>2 である.)

一般に,f(P) は原点だけで不連続で,原点の近傍で
|f(P)|<\frac{M}{r^\alpha} (0<\alpha<2, Mは定数)
ならば,\textstyle\int_K f(P)\,d\omega は収束するが,もしも
f(P)\geqq\frac{M}{r^2}\quad(M>0)
ならば,収束しない.

上記は一次元における 定理36の二次元への拡張であるが,\alpha の限界 2n に換えれば,n 次元にも通用する.

[例 2]
無限区域における積分の応用の一例として
I=\int_0^\infty e^{-x^2}\,dx
を考察する.この積分は既知であるが(§35,[例 6]),次のようにしても計算することができる. 今
I(R)=\int_0^R e^{-x^2}\,dx
とおく.然らば
I=\lim_{R\to\infty}I(R).
さて Kxy 平面の第一象限の全部とし,Q(R)
0\leqq x\leqq R,\quad 0\leqq y\leqq R
なる正方形とすれば,R\to\infty のとき,区域 Q(R) は単調に K に収束する(341頁). 然るに(定理 78

  \iint\limits_{Q(R)} e^{-x^2-y^2}\,dx\,dy
 = \int_0^Re^{-x^2}dx\cdot\int_0^R e^{-y^2}\,dy = I(R)^2.
故に
\iint\limits_K e^{-x^2-y^2}\,dx\,dy = I^2.
さて C(R) を円 x^2+y^2\leqq R^2 の第一象限とすれば,R\to\infty のとき C(R) は単調に K に収束する.故に
\lim_{R\to\infty}\iint\limits_{C(R)} e^{-x^2-y^2}\,dx\,dy = I^2.
極座標を用いるならば,
\begin{align} \iint\limits{C(R)} e^{-x^2-y^2}\,dx\,dy
  &=\int_0^R\int_0^{\frac{\pi}{2}}e^{-r^2}r\,dr\,d\theta
   =\frac{\pi}{2}\int_0^R e^{-r^2}\,r\,dr \\
 & =\frac{\pi}{4}(1-e^{-R^2}),
\end{align}
従って
I^2=\lim_{R\to\infty}\frac{\pi}{4}(1-e^{-R^2})=\frac{\pi}{4}.
I>0 だから
I=\frac{\sqrt\pi}{2}.
あるいは
2I=\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx = \sqrt\pi.

二次元では,或る線上の各点において,また三次元では或る線または面の上の各点において f(P) が不連続になることがある.今その一例を挙げる.

[例 3]
矩形
[K]
0\leqq x\leqq 1,\quad 0\leqq y\leqq 1
において対角線 x=yf(x,y) の不連続線であるとする.そのときもしも K において
|f(x,y)|<\frac{M}{|x-y|^\alpha},\quad 0<\alpha<1
なる定数 M があるならば,\textstyle\iint_K f(x,y)\,dx\,dy は収束する.
KaisekiGairon-345-1.svg
それをみるには,対角線 x=y の両側の三角形 A,B において(を参照)
\iint\frac{dx\,dy}{|x-y|^\alpha}
が収束することを確かめればよい.さて
\begin{align} \iint_A\frac{dx\,dy}{(x-y)^\alpha}
   &= \int_0^1 dy\int_y^1\frac{dx}{(x-y)^\alpha} \\
   &= \int_0^1 dy\cdot\left[\frac{(x-y)^{1-\alpha}}{1-\alpha}\right]_{x=y}^{x=1}
    = \frac{1}{1-\alpha}\int_0^1(1-y)^{1-\alpha}dy \\
   &= \frac{1}{(1-\alpha)(2-\alpha)}.
\end{align}
故に 1>\alpha>0 のとき積分は収束する.
[例 4]
積分の収束しない一例として
f(x,y)=\frac{y^2-x^2}{(x^2+y^2)^2}
と置いて,
(2)
\int_R f(x,y)\,d\omega
を区域
[K]
0\leqq x\leqq 1,\quad 0\leqq y\leqq 1
において考察する.

f(x,y) は次のようにして得られたものである:

(3)
\left.
  {\dfrac{\partial}{\partial x}\,\mathrm{Arc\,tan}\,\dfrac{y}{x} 
  =\dfrac{-y}{x^2+y^2},\quad
   \dfrac{\partial}{\partial y}\,\mathrm{Arc\,tan}\,\dfrac{y}{x}
  =\dfrac{x}{x^2+y^2}, \atop
   \dfrac{\partial^2}{\partial x\partial y}\,\mathrm{Arc\,tan}\,\dfrac{y}{x}
  =f(x,y).} \right\}
f(x,y)(0,0) において不連続で,の三角形 B において f>0,A において f<0 .故に(342 頁の記号を用いて)
\begin{align}
  \int_K f^+(P)\,d\omega
    =\int_B f(P)\,d\omega
   &= \int_0^1dy\int_0^yf(x,y)dx \\
   &= \int_0^1dy\left[\frac{x}{x^2+y^2}\right]_{x=0}^{x=y}
    = \int_0^1\frac{dy}{2y} = +\infty.
\end{align}
f^-(P) に関しても同様だから,積分 (2) は収束しない.
KaisekiGairon-346-1.svg
今,に示すように,三角形 A,B の原点における尖端を切り捨てて,残りの区域を K(\varepsilon,\varepsilon') として,その上での f(x,y) の積分を J(\varepsilon,\varepsilon') と書く.然らば,\varepsilon\to 0,\varepsilon'\to 0 のとき,K(\varepsilon,\varepsilon')K に収束するが,J(\varepsilon,\varepsilon') を計算すれば,(4) のようにして
J(\varepsilon,\varepsilon') 
  = -\int_\varepsilon^1\frac{dx}{2x} +\int_{\varepsilon'}^1\frac{dy}{2y}
  = \frac{1}{2}\log\frac{\varepsilon}{\varepsilon'}.
故に \varepsilon\to 0,\varepsilon'\to 0 のとき,\varepsilon/\varepsilon' の選定によって,J(\varepsilon,\varepsilon')-\infty+\infty との間の任意の値に収束させ,またはそれを発散させることができる. もしも f(x,y) をまず x に関して 0 から 1 まで積分し,次に y に関して 0 から 1 まで積分すれば,(3) を用いて
\int_0^1dy\int_0^1f(x,y)dx
  =\int_0^1dy\left[\frac{x}{x^2+y^2}\right]_{x=0}^{x=1}
  =\int_0^1\frac{dy}{1+y^2} =\frac{\pi}{4}
を得るが,積分の順序を変更すれば
\int_0^1dx\int_0^1f(x,y)dy
  =\int_0^1dx\left[\frac{-y}{x^2+y^2}\right]_{y=0}^{y=1}
  =-\int_0^1\frac{dx}{1+x^2} =-\frac{\pi}{4}.
これらは,次の の矩形 K(\varepsilon),K'(\varepsilon)K に収束させる場合に対応する.
KaisekiGairon-346-2.svg

  1. 実は一つの単調なる \{K_n\} に関して I(K_n) が有界ならばよい.任意の H に対して,十分大きく n を取れば,H\subset K_n だから,I(H) は有界.
  2. 下記 [例 1] においては,原点において,函数 r^{-\alpha} は定義されていない.その積分区域 K(1)H の意味で,原点が添け加えられた境界である.
  3. 一次元の広義積分または条件収束の級数は,実際計算上の手段として重要である.そこに,それらの存在理由がある.
  4. 積分変数を極座標に変換することの理論は後に述べるが(§96),ここでは,その計算法を既知と仮定した.

[編集] 95.多変数の定積分によって表わされる函数

二次元以上においても §48 のような考察ができる.最も簡単な一例として

(1)

  F(t)=\iint_K f(x,y,t)\,dxdy

において,x,y に関する積分区域 K(閉区域)が変数 t には無関係とする.もしも (x,y)K に属し,t が区間 t_1\leqq t\leqq t_2 に属するとき,f(x,y,t) が連続ならば,F(t) は区間 [t_1,t_2] において連続で,また \tfrac{\partial f}{\partial t}=f_t(x,y,t) が上記区域において連続ならば,F(t) を積分記号の下において微分することができる.すなわち

(2)

  \frac{d}{dt}F(t)=\iint_K f_t(x,y,t)\,dxdy,

これは定理 41と同様である.また F(t) の積分は,連続性の仮定の下において,f(x,y,t) の三次元積分,すなわち積分記号の下における積分に帰する.すなわち

(3)

  \int_{t_1}^{t_2}F(t)dt=\iint_K dxdy\int_{t_1}^{t_2}f(x,y,t)\,dt

これはすでに §93 で述べた.

広義積分に関しても §48 のような考察法が適用される.

今古典的な一例としてポテンシャル


  V(a,b,c)=\int_K\frac{\mu(x,y,z)d\omega}{r}

を取る.ここで K は体積確定なる xyz 空間の閉区域で,

r=\sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2+(z-c)^2}

P=(x,y,z)A=(a,b,c) との距離,また \mu(x,y,z)K において連続とする.すなわち,ここでは V を点 (a,b,c) の函数とみるのである. さて,もしも点 A が区域 K の外にあるならば,

\frac{\partial\left(\dfrac{1}{r}\right)}{\partial a}=\frac{x-a}{r^3}

から,(2) のように

(4)

  X=\frac{\partial V}{\partial a}=\int_K\frac{(x-a)\mu\,d\omega}{r^3}

を得る.もしも AK の内にあるならば,VX も広義積分で,それは収束して(§94,[例 1]参照),(4) はやはり成立する.しかし,ここでは不連続点 AP と同じく K の内で変動するのだから,(2) とは違って,(4) を得るためには特別の考察を要する. 今 A を包む小区域 K_1K から除いた残りの区域を K_2 として,K_1 内の点 A'=(a+h,b,c) から点 P への距離を r' と書いて

\begin{align}
  V_1&=\int_{K_1}\frac{\mu\,d\omega}{r}, & V_1'&=\int_{K_1}\frac{\mu\,d\omega}{r},\\
  V_2&=\int_{K_2}\frac{\mu\,d\omega}{r}, & V_2'&=\int_{K_2}\frac{\mu\,d\omega}{r}
\end{align}

と置けば,

(5)

  \frac{V(A')-V(A)}{h}=\frac{V_1'-V_1}{h}+\frac{V_2'-V_2}{h}.

さて


  \frac{V_1'-V_1}{h}
  = \int_{K_1}\frac{1}{h}\left(\frac{1}{r'}-\frac{1}{r}\right)\mu\,d\omega
  = \int_{K_1}\frac{r-r'}{h}\frac{\mu\,d\omega}{rr'}

において,|r-r'|\leqq|h| だから,K における \mu の最大値を m とすれば


  \left|\frac{V_1'-V_1}{h}\right|
  \leqq m\int_{K_1}\frac{d\omega}{rr'}
  < \frac{m}{2}\int_{K_1}\left(\frac{1}{r^2}+\frac{1}{r'^2}\right)d\omega.

そこで K_1 の径を \rho とすれば

\int_{K_1}\frac{d\omega}{r^2},\quad\int_{K_1}\frac{d\omega}{r'^2}

A または A' を中心,\rho を半径とする球に関する積分 \textstyle\int \frac{d\omega}{r^2}=4\pi\rho よりも小さいから


  \left|\frac{V_1'-V_1}{h}\right|<4\pi m\rho.

故に \varepsilon>0 に対応して \rho を十分小さく取れば,(5) から

(6)

  \left|\frac{V(A')-V(A)}{h}-\frac{V_2'-V_2}{h}\right|<\varepsilon.

また A,A' は区域 K_2 の外にあるから,K_2 に関しては (4) が適用されて

(7)

  \lim_{h\to 0}\frac{V_2'-V_2}{h}=\int_{K_2}\frac{(x-a)\mu\,d\omega}{r^3}.

一方,

(8)

  \lim_{\rho\to 0}\int_{K_2}\frac{(x-a)\mu\,d\omega}{r^3}
  =\int_K\frac{(x-a)\mu\,d\omega}{r^3},

これは右辺の広義積分の収束に他ならない[* 1](6)(7)(8) から


  \lim_{h\to 0}\frac{V(A')-V(A)}{h}=\int_K\frac{(x-a)\mu\,d\omega}{r^3}.

すなわち


  X=\frac{\partial V}{\partial a}=\int_K \frac{(x-a)\mu\,d\omega}{r^3},

同様に


  Y=\frac{\partial V}{\partial b}=\int_K \frac{(y-b)\mu\,d\omega}{r^3},

  Z=\frac{\partial V}{\partial c}=\int_K \frac{(z-c)\mu\,d\omega}{r^3}.
[注意] 
AK の外部にあるときには,再び微分して
(9)

  \frac{\partial^2V}{\partial a^2}
  = \int_K \left(\frac{3(x-a)^2}{r^5}-\frac{1}{r^3}\right)\mu\,d\omega,
 等
を得,それから Laplace の微分方程式

  \Delta V\equiv
     \frac{\partial^2 V}{\partial a^2}
    +\frac{\partial^2 V}{\partial b^2}
    +\frac{\partial^2 V}{\partial c^2}
   =0
が得られる.AK の内部にあるときには,(9) の積分は収束しない[* 2]

  1. 積分の収束性は前頁で既に述べたが,極座標を用いて d\omega=r^2\sin\vartheta\,dr d\vartheta d\varphi としても明らかである(357 頁参照).
  2. \partial^2 V/\partial a^2 等を求める方法は,§102,[例 3](384 頁)参照.

[編集] 96. 変数の変換

多変数の積分の計算においても,変数の変換が重要である.変数 x, y が変換式

(1)
x=\varphi(u,v),\quad y=\psi(u,v)

によって新変数 u, v に変換されるとき,xy 系の積分区域 K と,それに対応する uv 系の区域 K' との間に,一対一の対応が成り立つことが,基礎条件である. §84 で述べたように,(1)xy 平面上の点 P=(x,y)uv 平面上の点 Q=(u,v) との間の対応として

(1′)
P=A(Q)

と略記する.今この対応によって,uv 平面の領域 U' と、 xy 平面の領域 U とが,一対一に対応するとし,\varphi, \psiU' において連続的微分可能と仮定する.然らば,(1′)の逆写像は,U において連続的である(§84,(1º)).さて,積分区域 K は,領域 U に含まれる有界な閉区域とし,KK' とは (1′)によって対応するものとする.然らば,K'U' に含まれる有界な閉区域である. さて (1)における変数 u, v

(2)
u=f(\xi,\eta),\quad v=g(\xi,\eta)

によって,さらに変数 \xi, \eta に変換するとき,(2)(1)へ持ち込めば,x, y\xi, \eta の函数になる,すなわち

(3)
x=\varphi(f(\xi,\eta),g(\xi,\eta)),\quad y=\psi(f(\xi,\eta),g(\xi,\eta)).

この変換 (3)(1)(2) との結合という.今 \xi\eta 平面上の点 (\xi,\eta)Z と書いて,(2)

(2′)
Q=B(Z)

と略記するならば,(1′) によって,(3)

(3′)
P=A(B(Z))

と書かれる. さて,これらの変換に関する函数行列式の間に次の関係が成り立つ:

(4)

  \frac{D(x,y)}{D(u,v)}\cdot\frac{D(u,v)}{D(\xi,\eta)}=\frac{D(x,y)}{D(\xi,\eta)},

すなわち

\begin{vmatrix}
  \dfrac{\partial x}{\partial u} & \dfrac{\partial x}{\partial v} \\[10pt]
  \dfrac{\partial y}{\partial u} & \dfrac{\partial y}{\partial v}
\end{vmatrix}\begin{vmatrix}
  \dfrac{\partial u}{\partial \xi} & \dfrac{\partial u}{\partial \eta} \\[10pt]
  \dfrac{\partial v}{\partial \xi} & \dfrac{\partial v}{\partial \eta}
\end{vmatrix} = \begin{vmatrix}
  \dfrac{\partial x}{\partial \xi} & \dfrac{\partial x}{\partial \eta} \\[10pt]
  \dfrac{\partial y}{\partial \xi} & \dfrac{\partial y}{\partial \eta}
\end{vmatrix}.

これは計算をしてみれば,すぐに分かる:

\begin{align}
   \frac{\partial x}{\partial \xi} 
 &=\frac{\partial x}{\partial u}\frac{\partial u}{\partial \xi}
  +\frac{\partial x}{\partial v}\frac{\partial v}{\partial \xi}, &
   \frac{\partial x}{\partial \eta}
 &=\frac{\partial x}{\partial u}\frac{\partial u}{\partial \eta}
  +\frac{\partial x}{\partial v}\frac{\partial v}{\partial \eta},\\
   \frac{\partial y}{\partial \xi}
 &=\frac{\partial y}{\partial u}\frac{\partial u}{\partial \xi}
  +\frac{\partial y}{\partial v}\frac{\partial v}{\partial \xi}, &
   \frac{\partial y}{\partial \eta}
 &=\frac{\partial y}{\partial u}\frac{\partial u}{\partial \eta}
  +\frac{\partial y}{\partial v}\frac{\partial v}{\partial \eta}
\end{align}

だから,行列式の掛け算によって (4) を得る.三次元以上でも,全く同様である. もしも変換式 (1) において,点 Q_0=(u_0, v_0) における函数行列式

\frac{D(x,y)}{D(u,v)}\neq 0

ならば,Q_0 の近傍で,逆変換

Q=A_1(P)

が可能であるが,それを (2′) に代入して,(1′) と結合すれば,その結果は,P=P すなわち x=x, y=y になる.

\frac{D(x,y)}{D(x,y)} =\left| \begin{matrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{matrix} \right| =1

だから,この場合 (4) によって

(5)
\frac{D(x,y)}{D(u,v)}\cdot\frac{D(u,v)}{D(x,y)}=1.

前に述べた略記法

P=(x,y),\quad Q=(u,v),\quad Z=(\xi,\eta)

によって,かりに


  \frac{D(x,y)}{D(u,v)}=\frac{D(P)}{D(Q)},\quad
  \frac{D(u,v)}{D(\xi,\eta)}=\frac{D(Q)}{D(Z)},\quad
  \frac{D(x,y)}{D(\xi,\eta)}=\frac{D(P)}{D(Z)}

と書くならば,(4)(5) は簡明に

(4′)
\frac{D(P)}{D(Q)}\cdot\frac{D(Q)}{D(Z)}=\frac{D(P)}{D(Z)},
(5′)
\frac{D(P)}{D(Q)}\cdot\frac{D(Q)}{D(P)}=1

と書かれる.任意次元に関しても同様であるが,これらは一次元における合成函数または逆函数の微分商に関する公式

\frac{dy}{dx}\frac{dx}{dt}=\frac{dy}{dt},\quad \frac{dy}{dx}\frac{dx}{dy}=1

の拡張とみなすことができる. 然らば変換式 P=A(Q) における

\frac{D(P)}{D(Q)} すなわち \frac{D(x,y)}{D(u,v)}

の意味はどうであろうか? 最も簡単なる一例として,二次元における一次変換を取ってみる.すなわち (1) において \varphi, \psiu, v の一次式として

x=au+bv,\quad y=cu+dv

とする.これは,いわゆるアフィン(affine)変換である.この場合,函数行列式は

J=\frac{D(x,y)}{D(u,v)}=\begin{vmatrix} a & b \\ c & d \end{vmatrix}

であるが,もしも ad-bc\neq 0 ならば,xy 平面全体と uv 平面全体との間に一対一の対応が成り立って,しかも直線は直線に,平行線は平行線に対応するから,uv 平面の方眼には,xy 平面の平行格子が対応する.従って対応する面積 \mathit\Omega, \mathit\Omega' の比は一定である.故にその比を求めるためには,uv 平面の単位正方形(座標軸上に長さ 1 なる辺を有する正方形) \mathit\Omega' と,それに対応する xy 平面の平行四辺形 \mathit\Omega との面積の比を求めればよい.その比は,解析幾何学で周知の通り,|J|=|ad-bc| に等しい.故に任意の互に対応する xy 系の面積は \mathit\Omegauv 系の面積 \mathit\Omega' との間に次の関係がある:

\frac{\mathit\Omega}{\mathit\Omega'} = |J|.
KaisekiGairon-351-1.svg

三次元においても同様である.すなわち

\begin{align}
  x&=a_1u+b_1v+c_1w, \\ y&=a_2u+b_2v+c_2w, \\ z&=a_3u+b_3v+c_3w
\end{align}

において,函数行列式 J=\sum\pm a_1b_2c_3\neq 0 ならば,xyz 空間と uvw 空間とにおいて互に対応する体積 \mathit\Omega, \mathit\Omega' の間に,関係 \mathit\Omega/\mathit\Omega'=|J| が成り立つ. 一般の一対一の変換においても,互に対応する微小面積の間には同様の関係が成立する.すなわち変換 (1) によって xy 系の閉区域 Kuv 系の閉区域 K' とが一対一に対応すると仮定するならば,K' 内の一点 Q_0 を包む面積確定なる区域 \mathit\Omega'Q_0 に収束するとき,それに対応して xy 平面の点 P_0 を包む区域 \mathit\OmegaP_0 に収束するが,そのとき \mathit\Omega は面積確定[* 1]

(6)
\lim_{\rho\to 0}\frac{\mathit\Omega}{\mathit\Omega'} = |J|,

ここで J は点 Q_0 における函数行列式の値,\mathit\Omega, \mathit\Omega' は区域の面積で,\rho は区域 \mathit\Omega' の径である. 次に (6) の証明をする.今 P_0=(x_0,y_0)K' に属する点 Q_0=(u_0,v_0) に対応するとして

\begin{align}
  x&=x_0+\Delta x,& y&=y_0+\Delta y, \\ u&=u_0+\Delta u,& v&=v_0+\Delta v
\end{align}

と置く.もしも \Delta u, \Delta v0 から \rho まで変わるならば,Q=(u,v)Q_0 を一つの頂点とする面積 \rho^2 なる正方形 \mathit\Omega' を画くが,\varphi, \psi の連続的微分可能性の仮定の下において、そのとき

(7)
\left.\begin{align}
  \Delta x=\varphi(Q)-\varphi(Q_0)
 &=\varphi_u(Q_0)\Delta u+\varphi_v(Q_0)\Delta v+o\rho, \\
  \Delta y=\psi(Q)-\psi(Q_0)
 &=\psi_u(Q_0)\Delta u+\psi_v(Q_0)\Delta v+o\rho.
\end{align} \right\}

任意の \varepsilon に対応して \rho_0 を十分小さく取れば,\rho<\rho_0 なる \rho に対して |o\rho|<\varepsilon\rho.しかも \rho_0 は閉区域 K' における Q_0 の位置に無関係としてよい(\varphi, \psi の偏微分商の一様連続性). さて \Delta x, \Delta y の主要部だけを取って

(8)
\left.\begin{align}
  x^* &=x_0+\varphi_u(Q_0)\Delta u+\varphi_v(Q_0)\Delta v, \\
  y^* &=y_0+\psi_u(Q_0)\Delta u +\psi_v(Q_0)\Delta v
\end{align} \right\}

と置けば,Q が上記正方形 \mathit\Omega' を画くとき,(x^*,y^*) は平行四辺形 P_0P_1P_3P_2 を画く.それを H_0 と書く.

KaisekiGairon-352-1.svg

その頂点:

\begin{align} P_0 &= (x_0,y_0), \\ P_1 &= (x_0+\varphi_u(Q_0)\rho,y_0+\psi_u(Q_0)\rho), \\ P_2 &= (x_0+\varphi_v(Q_0)\rho,y_0+\psi_v(Q_0)\rho). \end{align}

従って H_0 の面積は (\varphi_u\psi_v-\varphi_v\psi_u)\rho^2 の絶対値に等しい.すなわち

(9)
H_0=|J|\rho^2,

ただし JQ_0 における函数行列式

\frac{D(x,y)}{D(u,v)}
  = \begin{vmatrix} \varphi_u & \varphi_v \\ \psi_u & \psi_v \end{vmatrix}

の値である. さて点 P=(x,y)(7) における剰余項 o\rho のために,H_0 とはやや異なる区域を画く.その区域を \mathit\Omega とすれば \mathit\Omega は面積確定である(§91,[例1]).\mathit\OmegaH_0 とは違うが,\rho を限りなく小さくすれば,H_0 がすでに \rho^2 程度の微小数だから[* 2]\mathit\OmegaH_0 との差は o\rho^2 程度の微小数になって

\rho\to 0 のとき 
  \mathit\Omega=|J|\rho^2+o\rho^2, すなわち 
  \frac{\mathit\Omega}{\rho^2}\to |J|

であるように推察される.実際,\mathit\Omega/\rho^2 は,K における Q_0 の位置に関係なく,一様に |J| に収束する.それを確かめるために,次のような微分的考察をする. \mathit\Omega' の周に属する点 Q=(u,v) に対応する点 P=(x,y)P^*=(x^*,y^*) とにおいて

|x-x^*|<\varepsilon\rho,\quad |y-y^*|<\varepsilon\rho

だから,P^* P<2\varepsilon\rho

KaisekiGairon-353-1.svg

故に平行四辺形 H_0 の平行なる二辺の間隔が共に 4\varepsilon\rho より大なるときには,H_0 の外部と内部とに,その辺から 2\varepsilon\rho の距離に平行線を引いて,二つの平行四辺形 H',H'' を作れば,H_0 および \mathit\OmegaH' に,またその周は H'H'' との間の帯状の区域に含まれる.故に面積においては

H''<\mathit\Omega<H',\quad H''<H_0<H',\quad |\mathit\Omega-H_0|<H'-H''.

H'-H'' はすなわち上記帯状区域の面積であるが,H_0 の周を p\rho とすれば,この面積が p\rho\cdot 4\varepsilon\rho に等しいことは見やすい. また H_0 の平行なる二辺,例えば P_0P_1P_2P_3 の間隔が 4\varepsilon\rho 以下である場合には,H_0 と中心を共有する矩形 H' を,二辺が P_0P_1 に平行で,その長さが \tfrac{p\rho}{2}+4\varepsilon\rho,他の二辺の長さが 8\varepsilon\rho なるように画けば,\mathit\OmegaH_0H' に含まれて,H' の面積は 4\varepsilon\rho^2(p+8\varepsilon) である.故に,いずれの場合にも

(10)
|\mathit\Omega-H_0|<4\varepsilon\rho^2(p+8\varepsilon)

である.さて

p=2(\sqrt{\varphi_u(Q_0)^2+\psi_u(Q_0)^2} +\sqrt{\varphi_v(Q_0)^2+\psi_v(Q_0)^2})

で,Q_0 が閉区域 K' に属すとき,一様に(Q_0 の位置および \varepsilon<1 に無関係に)

p+8\varepsilon<M

と置くことができる.故に,(10) によって K' において

|\mathit\Omega-H_0|<4\varepsilon M\rho^2,

H_0=|J|\rho^2 であったから

(11)
\left|\frac{\mathit\Omega}{\rho^2}-|J|\right|<4\varepsilon M.

故に K' において一様に(一様収束)

(12)
\lim_{p\to 0}\frac{\mathit\Omega}{\rho^2}=|J|.

さて,F'U' に含まれ,K' をその内部(F' の開核)に含む有界なる閉区域とする[* 3].また,\rho>0 を十分小とし,K' を辺長 \rho なる小方眼 \omega_i' で覆って,K' に触れる \omega_i' は全く F' に含まれるようにし,\omega_i' に対応する xy 平面の小区域を \omega_i とする.然らば,(11) において,K'F' を代用して,F' に含まれる各小区域 \omega_i' に関して,

(13)
|\omega_i-|J_i|\rho^2|<\varepsilon\rho^2

を得る.ただし,簡単のために,(11) における 4\varepsilon M\varepsilon と書き換えた.J_i は方眼 \omega_i' の左下の頂点における函数行列式の値である. 今,\mathit\Omega, \mathit\Omega'K, K' において互に対応する区域とし,\mathit\Omega' は面積確定であると仮定する.また,簡単のために,小区域 \omega_i の中で,\mathit\Omega に含まれるもの,および,\mathit\Omega に触れるものを,それぞれ,一般に,\omega_k および \omega_l と書く.しからば (13) により,

(14)

   \left|\sum_k\omega_k-\sum_k\left|J_k\right|\rho^2\right|
  <\varepsilon\sum_k\rho^2 <A\varepsilon,\quad
   \left|\sum_l\omega_l-\sum_l\left|J_l\right|\rho^2\right|
  <\varepsilon\sum_l\rho^2 <A\varepsilon.

ただし,AF' の内面積である.さて,仮定により \mathit\Omega' は面積確定だから,\rho\to 0 のとき

(15)

  \lim\sum_k|J_k|\rho^2 =\lim\sum_l|J_l|\rho^2
  =\iint_{\mathit\Omega'}|J|\,du\,dv.

従って,(14)(15) とにより,極限 \textstyle\lim_{\rho\to 0}\sum_k\omega_k, \lim_{\rho\to 0}\sum_l\omega_l が存在して

(16)
\lim\sum\omega_k=\lim\sum\omega_l=\iint_{\mathit\Omega'}|J|\,du\,dv.

一方,\mathit\Omega の内面積及び外面積を,それぞれ,s, S とすれば,

\sum\omega_k\leqq s\leqq S\leqq \sum\omega_l.

故に (16) により,\mathit\Omega は面積確定で,

(17)
\mathit\Omega = \iint_{\mathit\Omega'}|J|\,du\,dv.

一対一の対応においては J の符号は一定である(§84,(4º))から

(18)
\mathit\Omega = \pm\iint_{\mathit\Omega'}J\,du\,dv.

これが xy 系における区域 \mathit\Omega の面積を uv 系の積分に変換する公式である(\pmJ の符号だから,\mathit\Omega は正). さて (17) から


  \mathit\Omega=\iint_{\mathit\Omega'}|J|\,du\,dv
  =|J_0|\iint_{\mathit\Omega'}du\,dv =|J_0|\mathit\Omega',

J_0 は区域 \mathit\Omega' における J の平均値である.もしも \mathit\Omega' が一点 Q=(u,v) に収束するならば,\mathit\OmegaK において Q に対応する点 P=(x,y) に収束するが,そのとき J_0J(Q) に収束する.故に互に対応する微小面積に関しては予期の通り

(19)

  \lim_{\rho\to 0}\frac{\mathit\Omega}{\mathit\Omega'}
  =\left|\frac{D(x,y)}{D(u,v)}\right|.
\mathit\Omega' が正方形なるとき,これはすでに (12) において証明されている.我々は局所的なる (12) から全局的の公式 (17) を出したが,(17) を再び局所的に還元して,(12) を一般化した (19) を導いたのである.

上記では,\mathit\Omega' が面積確定であることから \mathit\Omega が面積確定であることを導いたが,逆に,\mathit\Omega の面積が確定であると仮定しよう.そのとき,\mathit\Omega' の面積は必ずしも確定であるとは限らない(その実例がある).しかし K' において常に J\neq 0 ならば,(1) の逆写像は K において連続的微分可能だから(定理74),上記と同様にして \mathit\Omega' も面積確定である.一般に,J=0 なる K' の点の集合を Z' とするとき,Z' の面積が確定である場合には,\mathit\Omega' の面積も確定である.それを証明する.Z' の内面積は 0 であり(§84,(3º)),その面積は確定だから Z' の面積は 0 である.故に,任意の \varepsilon>0 に対して,Z' を含む小矩形群 w' を適当に取れば,その総面積 w'<\varepsilon.ここで w' を開集合としてよい.今、 K' から w' に属する点を除いた閉集合を K_0' とし,\mathit\Omega'K_0' との共通部分を \mathit\Omega_0' とする.また,w', \mathit\Omega_0' に対応する区域を,それぞれ w, \mathit\Omega_0 とする.然らば、 w および \mathit\Omega は,共に面積確定だから,\mathit\Omega_0 もそうである.また K_0' においては,J\neq 0 である.故に,前に述べたように,\mathit\Omega_0' は面積確定である.\mathit\Omega'\mathit\Omega_0' と小矩形群 w' に含まれる或る集合からなり,w'<\varepsilon だから,\mathit\Omega' の境界の外面積は \varepsilon を超えない.\varepsilon は任意だから,\mathit\Omega' は面積確定である.

さて,積分区域 K は,U 内の面積確定なる閉区域で,K' も面積確定と仮定する.(この仮定は,例えば K' において常に J\neq 0,または J=0 なる K' の点の集合の面積が 0,であるときには満たされる)また,函数 f(x,y)K において,積分可能(狭義)とする.そのとき,積分

S=\int_K f(P)\,d\omega=\iint_K f(x,y)\,dx\,dy

において

x=\varphi(u,v),\quad y=\psi(u,v)

によって積分変数を xy 系から uv 系に変換すれば,xy 系の区域 K と,それに対応する uv 系の区域 K' とにおいて,相対応する微小面積の間には

d\omega = |J|d\omega'

なる関係が成り立つから,

(20)
S
  =\iint_K f(x,y)\,dx\,dy
  =\pm\iint_{K'}f(\varphi,\psi)\frac{D(\varphi,\psi)}{D(u,v)}\,du\,dv.

\pmK' において一定なる函数行列式 J の符号である.

これが二次元の定積分における変数変換の公式である.

この公式の妥当性はほとんど明白であろうが,一応その証明を述べておこう.

uv 平面において区域 K' を覆う矩形網に対応する曲線網で xy 平面の区域 K を覆って,K' における小矩形 \omega_i' には K における小区域 \omega_i が対応するとする.今 P_i'\omega_i' の任意の点,P_iP_i' に対応する \omega_i の点とする.JK' における一様連続性により,\rho を十分小さくとれば,(13)J_i(P_i')J_i に代用しても成り立つから,(13) にその代用をして,f(P_i) を掛けて加えれば,

(21)

  \left|
    \sum f(P_i)\omega_i-\sum f(\varphi(P_i'),\psi(P_i'))\left|J(P_i')\right|\rho^2
  \right| \leqq MA\varepsilon,

ここで MK における |f(P)| の上限である.A は定数,例えば前記 F' の内面積でよい.然るに

\lim_{\rho\to 0}\sum_i f(P_i)\omega_i = \iint_K f(x,y)\,dx\,dy.

故に,(21) により f(\varphi,\psi)|J|K' において積分可能で (20) が成り立つ.

上記の方法は三次元以上にもそのまま通用する.また広義積分の場合には,K に収束する閉区域 K_n にこの方法を適用してから K_n\to K なる極限へ行くのである.

応用上最も手近なのは,直角座標 (x,y) から極座標 (r,\theta) への変換である.この場合

x=r\cos\theta,\quad y=r\sin\theta,
J=\frac{D(x,y)}{D(r,\theta)}=\begin{vmatrix}
  \quad\ \cos\theta &\ \sin\theta \\ -r\sin\theta & r\cos\theta
\end{vmatrix}=r,

  \iint_K f(x,y)\,dx\,dy =\iint_{K'}f(r\cos\theta, r\sin\theta)r\,dr\,d\theta.
r\theta 系の積分区域 K'(r,\theta)xy 系の区域 K の点 (x,y) の極座標と考えて,xy 平面上において決定される.例えば次の において
(22)
S=\int_0^{2\pi}d\theta\int_0^{r(\theta)}frdr.
しかし,原点では r=0\theta は任意である.極座標においては r\geqq 0, 0\leqq \theta\leqq 2\pi とするが,r\theta 平面における,この区域の境界線上では,xy 平面との一対一の対応が成り立たない.領域の間に一対一の対応を成り立たせるためには
KaisekiGairon-356-1.svg
\rho\leqq r\quad(\rho>0),\qquad \varepsilon\leqq\theta\leqq\alpha\qquad (0<\varepsilon<\alpha<2\pi)
とすればよいが,上記 (22) の意味は
S=\lim_{\varepsilon,\rho\to 0,\alpha\to 2\pi} \int_\varepsilon^\alpha d\theta\int_\rho^{r(\theta)}f\,r\,dr.

三次元において,点 P=(x,y,z) の極座標 (r,\vartheta,\varphi)

x=r\sin\vartheta\cos\varphi,\quad y=r\sin\vartheta\sin\varphi,\quad z=r\cos\vartheta
r\geqq 0,\quad 0\leqq\vartheta\leqq\pi,\quad 0\leqq\varphi\leqq 2\pi

で定義する.

KaisekiGairon-356-2.svg

すなわち r動径 OP の長さ,\varthetaz 軸から計った極距離(余緯度),\varphixz 面から yz 面への向きに計った経度である. 極座標を r, \vartheta, \varphi の順に取れば,それは正系(右ネジ)すなわち x, y, z と同意である.函数行列式は

\frac{D(x,y,z)}{D(r,\vartheta,\varphi)}= \begin{vmatrix}
 \quad\ \sin\vartheta\cos\varphi &\ \sin\vartheta\sin\varphi &\quad\ \cos\vartheta \\
 \quad r\cos\vartheta\cos\varphi & r\cos\vartheta\sin\varphi & -r\sin\vartheta \\
 -r\sin\vartheta\sin\varphi & r\sin\vartheta\cos\varphi & 0
\end{vmatrix} = r^2\sin\vartheta \geqq 0.

行列式の第二行と第三行とから因数 r^2\sin\vartheta を出してしまえば,あとは直行行列式になって,その値は 1 である.幾何学的にいえば,原点を中心とする半径 r, r+dr なる二つの球面と,z 軸上に軸を有して頂角が \vartheta, \vartheta+d\vartheta なる二つの直円錐面と,経度 \varphi, \varphi+d\varphi なる二つの平面とで囲まれた微小なる曲六面体の体積の主要部が

J\,dr\,d\vartheta d\varphi=r^2\sin\vartheta\,dr\,d\vartheta\,d\varphi

に等しいのである.

KaisekiGairon-357-1.svg

よって xyz 系の区域 K の体積 V は極座標では

V=\iiint r^2\sin\vartheta\,dr\,d\vartheta\,d\varphi,

また K における函数 f(x,y,z) の積分は

S=\iiint f\,dx\,dy\,dz
  = \iiint fr^2\sin\vartheta\,dr\,d\vartheta\,d\varphi.

この場合にも,積分区域の限界は二次元の場合と同様にして定められる.

次に一般の変換の例を掲げる.

[例 1]
xy 平面の第一象限(0<x<\infty, 0<y<\infty)を積分区域 K として
S=\int_0^\infty\int_0^\infty e^{-x-y}x^{p-1}y^{q-1}\,dx\,dy
を考察する(ただし,p>0, q>0). これは広義積分であるが,その値は
(23)
S=\Gamma(p)\Gamma(q)
  =\int_0^\infty e^{-x}x^{p-1}dx\cdot\int_0^\infty e^{-y}y^{q-1}dy
に等しい(§33参照).さて一方
(24)
x+y=u,\quad x=uv
によって,Suv 系に変換してみよう.(24) から
x=uv,\quad y=u-uv.
KaisekiGairon-358-1.svg
または逆に
u=x+y,\quad v=\frac{x}{x+y}.
故に xy 平面の第一象限(0<x<\infty, 0<y<\infty)と uv 平面の領域 0<u<\infty, 0<v<1 との間に一対一の対応が成り立って
\frac{D(x,y)}{D(u,v)} =\begin{vmatrix} v & u \\ 1-v & -u \end{vmatrix}=-u.
よって
(25)
\begin{align}
 S&= \int_{u=0}^\infty\int_{v=0}^1 e^{-u}(uv)^{p-1}u^{q-1}(1-v)^{q-1}u\,du\,dv \\
  &= \int_0^\infty e^{-u}u^{p+q-1}\,du\cdot \int_0^1 v^{p-1}(1-v)^{q-1}\,dv \\
  &= \mathit\Gamma(p+q)\mathit\Beta(p,q).
\end{align}
(23)(25) とを比較して既知の公式(253頁
(26)

  \mathit\Beta(p,q)=\frac{\mathit\Gamma(p)\mathit\Gamma(q)}{\mathit\Gamma(p+q)}
を得る.
[注意] 
上記積分 S は広義積分である.計算の意味は xy 平面において
0<\varepsilon\leqq u\leqq R,\quad 0<\eta\leqq v\leqq 1-\eta'<1
に対応する四角形を \mathit\Omega とするとき(参照)
\iint_\mathit\Omega e^{-x-y}x^{p-1}y^{q-1}\,dx\,dy

  =\int_\varepsilon^R e^{-u}u^{p+q-1}du\cdot \int_\eta^{1-\eta'} v^{p-1}(1-v)^{q-1}dv
から \varepsilon\to 0, R\to 0; \eta\to 0, \eta'\to 0(従って \mathit\Omega\to K)なるときの極限値として S を得たのである.
[例 2]
Dirichlet 積分) 三次元空間において,座表面と平面 x+y+z=1 とで囲まれた四面体 K を積分区域として
S=\iiint_K x^{p-1}y^{q-1}z^{r-1}(1-x-y-z)^{s-1}\,dx\,dy\,dz
を求めること.ただし p>0, q>0, r>0, s>0
x+y+z=\xi,\quad y+z=\xi\eta,\quad z=\xi\eta\zeta
とすれば,
\xi=x+y+z,\quad \eta=\frac{y+z}{x+y+z},\quad \zeta=\frac{z}{y+z}.
または逆に
x=\xi(1-\eta),\quad y=\xi\eta(1-\zeta),\quad z=\xi\eta\zeta.
よって xyz 系の四面体 K\xi\eta\zeta 系の立方体 K'
K' :
0\leqq\xi\leqq 1,\quad 0\leqq\eta\leqq 1,\quad 0\leqq\zeta\leqq 1
とは,その内部において一対一に対応する.今函数行列式
\frac{D(x,y,z)}{D(\xi,\eta,\zeta)}
を計算するために,中介の変数として
u=\xi,\quad v=\xi\eta,\quad w=\xi\eta\zeta
を取れば
x=u-v,\quad y=v-w,\quad z=w,
従って
\begin{align}
   \frac{D(x,y,z)}{D(\xi,\eta,\zeta)} 
 &=\frac{D(x,y,z)}{D(u,v,w)}\cdot\frac{D(u,v,w)}{D(\xi,\eta,\zeta)}\\
 &=\begin{vmatrix} 1 & -1 & 0 \\ 0 & 1 & -1 \\ 0 & 0 & 1 \end{vmatrix}
   \begin{vmatrix} 1 & 0 & 0 \\ \eta & \xi & 0 \\ \eta\zeta & \xi\zeta & \xi\eta \end{vmatrix}
  = \xi^2\eta. \end{align}
よって
\begin{align}
 S&=\int_0^1\int_0^1\int_0^1 \xi^{p-1}
    (1-\eta)^{p-1} (\xi\eta)^{q-1}
    (1-\zeta)^{q-1} (\xi\eta\zeta)^{r-1}
    (1-\xi)^{s-1} \xi^2\eta\,d\xi\,d\eta\,d\zeta \\
  &=\int_0^1\xi^{p+q+r-1}(1-\xi)^{s-1}d\xi\cdot
    \int_0^1\eta^{q+r-1}(1-\eta)^{p-1}d\eta\cdot
    \int_0^1\zeta^{r-1}(1-\zeta)^{q-1}d\zeta \\
  &= \mathit\Beta(p+q+r,s)\cdot \mathit\Beta(q+r,p)\cdot \mathit\Beta(r,q).
\end{align}
故に (26) を用いて

  S=\frac{\mathit\Gamma(p+q+r)\mathit\Gamma(s)}{\mathit\Gamma(p+q+r+s)}
    \frac{\mathit\Gamma(q+r)\mathit\Gamma(p)}{\mathit\Gamma(p+q+r)}
    \frac{\mathit\Gamma(r)\mathit\Gamma(q)}{\mathit\Gamma(q+r)}
   =\frac{\mathit\Gamma(p)\mathit\Gamma(q)\mathit\Gamma(r)\mathit\Gamma(s)}
         {\mathit\Gamma(p+q+r+s)}.
p, q, r, s の中に 1 よりも小なるものがあれば,S は広義積分であるが,計算の理論は 例 1 と同様である(前頁,[注意]参照).
特に p=q=r=s=1 とすれば,四面体 K の体積として
\iiint_K dx\,dy\,dz=\frac{1}{\mathit\Gamma(4)}=\frac{1}{3!}=\frac{1}{6}.

上記 Dirichlet の積分は全く同様の方法によって任意次元に拡張される.

すなわち n 次元の区域 K

x_1\geqq 0,x_2\geqq 0,\ldots,x_n\geqq 0,\quad x_1+x_2+\cdots+x_n\leqq 1

において,p_1,p_2,\ldots,p_n>0,q>0 なる仮定の下で


 \int_K x_1^{p_1-1}x_2^{p_2-1}\cdots x_n^{p_n-1}
   (1-x_1-x_2-\cdots-x_n)^{q-1}dx_1\cdots dx_n

  =\frac{\mathit\Gamma(p_1)\mathit\Gamma(p_2)\cdots\mathit\Gamma(p_n)\mathit\Gamma(q)}
        {\mathit\Gamma(p_1+p_2+\cdots+p_n+q)}.

  1. \mathit\Omega' はその閉包が U' に含まれるものとする.
  2. 前にもしたように,区域とその面積を同じ記号で表わす.以下同様.
  3. そのような F' が取れることは,U' の境界と K' との距離が正であること(30頁)からわかる.

[編集] 97.曲面積

三次元では,曲線の長さのほかに,曲面の面積が問題になる.もしも曲線の例にならうならば,曲面積を内接多面体の表面積の極限値として定義したく思われるが,それはうまく行かない.そのような極限値は無条件では存在しないのである(365 頁参照).

xy 平面の区域 K において方程式

z=f(x,y)

によって曲面 S が与えられて,f(x,y)K において連続的微分可能とする.すなわち接平面が連続的に変動するとする.さて S を小区域 \sigma_i\,(i=1,2,\ldots,n) に分割して,\sigma_i の任意の点 P_i=(x_i,y_i,z_i) における接平面の上への \sigma_i の正射影を \tau_i とする.S\sigma_i への分割において,各 \sigma_ixy 平面への正射影が,面積確定ならば,後に示すように,\tau_i も面積確定である.S のこのような分割に関し,区域 \sigma_i の径が微小になるとき,平面積 \tau_i の総和 \textstyle\sum_{i=1}^n\tau_i が一定の極限値を有するならば,その極限値をもって曲面 S の面積の定義とする. この極限値の存在を確かめるために,次の考察をする.まず一般に S 上の小区域を \sigma とし,上のように \sigma の一点を P_0=(x_0,y_0,z_0)P_0 における接平面上への \sigma の正射影を \tau とする.また xy 平面上への \sigma および \tau の正射影をそれぞれ \omega および \tau' とする.然らば区域 \sigma の径 \rho が限りなく小さくなるとき

(1)
\lim_{\rho\to 0}\frac{\tau}{\omega}=\frac{1}{\cos\gamma_0},

ただし,\gamma_0 は接平面と xy 平面との間(すなわち法線と z 軸との間)の鋭角である.あるいは \tau の代りに \tau' を取れば \tau\cos\gamma_0=\tau' だから

(2)
\lim\frac{\tau'}{\omega}=1.

さしあたり,これを考察の目標とする.

KaisekiGairon-360-1.svg

P_0 における接平面の代りに,それに平行な任意の平面を取っても,正射影 \tau,\tau' の面積に変わりはないから,計算の便宜上,射影面を

(3)
Z=p_0X+q_0Y

とする.ただし,p,qf_x,f_y の略記で,

p_0=f_x(x_0,y_0),\quad q_0=f_y(x_0,y_0).

然らば \sigma の任意の点 P=(x,y,z)平面 (3) への正射影を Q(X,Y,Z) とするとき,

(4)
\left.\begin{align}
  &X=x-p_0t, & &t=C(z-p_0x-q_0y),\\
  &\begin{align}&Y=y-q_0t,\\&Z=z+t,\end{align} & &C=-\frac{1}{1+p_0^2+q_0^2}.
\end{align}\ \right\}

xy 平面上において,P,Q の正射影は P_1=(x,y),Q_1=(X,Y) で,P が区域 \sigma 内を動くとき,P_1,Q_1 はそれぞれ区域 \omega,\tau' を動くが,\sigma が十分小なるとき,P_1Q_1 との間には一対一対応が成り立って,その対応は (4) によって与えられる.すなわち

(5)
\begin{align}X&=x-p_0t,\\Y&=y-q_0t,\end{align}\quad t=C(z-p_0x-q_0t).

ただし z=f(x,y)\omega\tau' との面積の関係を求めるために,函数行列式を計算すれば,(5) から

\begin{align}
  \frac{\partial X}{\partial x} &= 1-p_0\frac{\partial t}{\partial x}, & 
  \frac{\partial X}{\partial y} =  -p_0\frac{\partial t}{\partial y}&,\\
  \frac{\partial Y}{\partial x} &=  -q_0\frac{\partial t}{\partial x}, &
  \frac{\partial Y}{\partial y} = 1-q_0\frac{\partial t}{\partial y},
\end{align}

従って

J(x,y)=\frac{D(X,Y)}{D(x,y)}
  =1-p_0\frac{\partial t}{\partial x}-q_0\frac{\partial t}{\partial y}.

さて


  \frac{\partial t}{\partial x}=C(f_x-p_0),\quad
  \frac{\partial t}{\partial y}=C(f_y-q_0),

故に

J(x_0,y_0)=1.

従って354 頁 (19) から

\lim_{\rho\to 0}\frac{\tau'}{\omega}=1.

または一層精密に,K において一様に

|\tau'-\omega|<\varepsilon\omega.

または \tau\cos\gamma_0=\tau' を用いて


  \left|\tau-\frac{\omega}{\cos\gamma_0}\right|
  < \frac{\varepsilon}{\cos\gamma_0}\omega.

さて初めに述べたように,曲面 S を小区域 \sigma_i に分けて,\sigma_i の任意の点 P_i における接平面上への \sigma_i の正射影を \tau_i,接平面と xy 平面との間の角(P_i における法線と z 軸との間の鋭角)を \gamma_i とすれば

\left|\tau_i-\frac{\omega_i}{\cos\gamma_i}\right|<\frac{\varepsilon}{\cos\gamma_i}\omega_i

であるが,仮定によって閉区域 K において f_x,f_y は連続,従って


  \frac{1}{\cos\gamma}=\sqrt{1+f_x(x,y)^2+f_y(x,y)^2}

も連続である.その最大値を M とすれば

\left|\tau_i-\frac{\omega_i}{\cos\gamma_i}\right|<\varepsilon M\omega_i,

故に


  \left|\sum_{i=1}^n\tau_i-\sum_{i=1}^n\frac{\omega_i}{\cos\gamma_i}\right|
  < \varepsilon M\Omega.

ここで \textstyle\Omega=\sum \omega_i は区域 K の面積である. さて \tfrac{1}{\cos\gamma}K において連続であるから,\sigma_i 従って \omega_i の径を限りなく小さくするとき


  \lim\sum_{i=1}^n\frac{\omega_i}{\cos\gamma_i}=\int_K\frac{d\omega}{\cos\gamma}.

故に極限値 \textstyle S=\lim\sum_{i=1}^n \tau_i も存在して

(6)
\begin{align}S=\int_K\frac{d\omega}{\cos\gamma}
 &= \int_K\sqrt{1+f_x^2+f_y^2}\,d\omega\\
 &= \int_K\sqrt{1+\left(\frac{\partial z}{\partial x}\right)^{\!2}
   +\left(\frac{\partial z}{\partial y}\right)^{\!2}}\,dx\,dy.
\end{align}

これが曲面 (1) の面積の公式である.

[注意] 
S が広義積分である場合にも,それが収束すれば,それを曲面積の値とする.
[例 1]
最も古典的な例として半径 a なる球の面積を考察する.この場合
x^2+y^2+z^2=a^2
から
x\,dx+y\,dy+z\,dz=0,
故に

  \frac{\partial z}{\partial x}=-\frac{x}{z},\quad
  \frac{\partial z}{\partial y}=-\frac{y}{z}
で,xy 平面の上側の半球の面積は
\frac{S}2
  =\iint_K\sqrt{1+\frac{x^2}{z^2}+\frac{y^2}{z^2}}\,dx\,dy
  =a\iint_K\frac{dx\,dy}{z},
積分区域 Kxy 平面上の円 x^2+y^2=a^2 の内部である.xy 平面上で極座標に変換すれば
\frac{S}{2}
  =a\int_0^{2\pi}\int_0^a\frac{r\,dr\,d\theta}{\sqrt{a^2-r^2}}
  =2\pi a\int_0^a\frac{r\,dr}{\sqrt{a^2-r^2}}=2\pi a^2,
故に
S=4\pi a^2.
[例 2]
Viviani の穹面] 球の一つの大円に半分の半径の二つの円を内接させて,それらを直截面とする二つの直円筒で球面をくり抜くとき,球面の残部は二つの落下傘状の面に分かたれる.それを Viviani の穹面という.
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球面の方程式を x^2+y^2+z^2=a^2 とし,xy 平面上で x 軸上の半径を直径とする円 C を円筒の直截面として,その円筒が xy 面の上側で球面からくり抜く部分の面積を \Omega とすれば

  \Omega=a\iint\limits_C\frac{dx\,dy}z=a\iint\limits_C\frac{dx\,dy}{\sqrt{a^2-x^2-y^2}}.
xy 平面上で極座標に移れば
\begin{align}
  \Omega
  &=2a\int_0^{\frac\pi2}d\theta\int_0^{a\cos\theta}\frac{r\,dr}{\sqrt{a^2-r^2}}\\
  &=2a^2\int_0^{\frac\pi2}(1-\sin\theta)d\theta=\pi a^2-2a^2.
\end{align}
Viviani の穹面は半球面から 2\Omega を引いた残りで,その面積は 4a^2 すなわち球の直径の平方に等しい.この結果は発見当時(1692)驚異であったという.
[例 3]
楕円体の表面を

  \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}+\frac{z^2}{c^2}=1\quad(a>b>c>0)
とすれば

  z=c\sqrt{1-\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}},

  p=\frac{\partial z}{\partial x}=-\frac{c^2x}{a^2z},\quad
  q=\frac{\partial z}{\partial y}=-\frac{c^2y}{b^2z}.
よって
\cos\gamma=u
と置けば
1+p^2+q^2=\frac{1}{u^2}
から

  c^2u^2\left(\frac{x^2}{a^4}+\frac{y^2}{b^4}\right)
  =(1-u^2)\left(1-\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}\right).
従って \cos\gamma が一定なる点の xy 平面上への正射影は楕円

  \frac{x^2}{a^2}\frac{1-\alpha^2u^2}{1-u^2}
  +\frac{y^2}{b^2}\frac{1-\beta^2u^2}{1-u^2}=1
である.ただし

  \alpha^2=\frac{a^2-c^2}{a^2},\quad\beta^2=\frac{b^2-c^2}{b^2}.
この楕円の面積は

  \pi ab\frac{1-u^2}{\sqrt{1-\alpha^2u^2}\sqrt{1-\beta^2u^2}}
である.今楕円体の表面を u=\cos\gamma が一定なる線(等傾斜の線)によって細分すれば uu+du とに対応する等傾斜線の間に挾まれる微小帯面の面積は
\pi ab\frac{dU}u
である.ただし
(7)
U=\frac{1-u^2}{\sqrt{1-\alpha^2u^2}\sqrt{1-\beta^2u^2}}.
そうして xy 平面の上側において \gamma\tfrac\pi2 から 0 まで,従って u1 から 0 まで変動するから,表面積を S とすれば
(8)

  \frac{S}{2\pi ab}=-\int_0^1\frac{dU}u=-\int_0^1\frac{dU}{du}\cdot\frac{du}u.
積分 (8) を次のように変形することができる.今
(9)
A=\sqrt{1-\alpha^2u^2},\quad B=\sqrt{1-\beta^2u^2}
と置けば,(7) から
U=\frac{1-u^2}{AB},
(10)
\begin{align}
  -\int\frac{dU}u&=-\frac{U}u-\int\frac{U}{u^2}du\\
  &=-\frac{U}u-\int\frac{du}{u^2AB}+\int\frac{du}{AB}.
\end{align}
さて (9) によって
(11)

  \frac d{du}\left(\frac{AB}u\right)
  =-\frac{\alpha^2B}A-\frac{\beta^2A}B-\frac{AB}{u^2}
\begin{align}
  \frac{AB}{u^2}=\frac{A^2B^2}{u^2AB}
  &= \frac{(1-\alpha^2u^2)(1-\beta^2u^2)}{u^2AB}\\
  &= \frac1{u^2AB}-\frac{\alpha^2}{AB}-\frac{\beta^2(1-\alpha^2u^2)}{AB}.
\end{align}
これを (11) に入れて

  \frac{\beta^2A}{B}=\frac{\beta^2A^2}{AB}=\frac{\beta^2(1-\alpha^2u^2)}{AB}
を用いれば

  \frac d{du}\left(\frac{AB}u\right)
 =-\frac{\alpha^2B}{A}-\frac1{u^2AB}+\frac{\alpha^2}{AB}.
これを用いて (10) の右辺の第一の積分を消去すれば
(12)

  -\int_0^1\frac{dU}u=\left.\frac{AB-U}u\right|_0^1
    +\alpha^2\int_0^1\frac{B}A du+(1-\alpha^2)\int_0^1\frac{du}{AB}.
u=0 のとき \tfrac{AB-U}u=\tfrac{A^2B^2-(1-u^2)}{uAB}=0 だから,(12) の右辺の第一項は
\sqrt{(1-\alpha^2)(1-\beta^2)}=\frac{c^2}{ab}
になるが,二つの積分において変数を変換して
\alpha u=\sin\varphi
と置けば
\frac{d\varphi}\alpha=\frac{du}A.
積分の限界は u=0 に対して \varphi=0,また u=1 に対して \varphi=\mathrm{Arc\,}\sin\alpha になるが,それを \varphi_0 と略記すれば,結局
(13)
\frac{S}{2\pi ab}=\frac{c^2}{ab}
 +\alpha\int_0^{\varphi_0}\sqrt{1-k^2\sin^2\varphi}\,d\varphi
 +\frac{1-\alpha^2}\alpha\int_0^{\varphi_0}\frac{d\varphi}{\sqrt{1-k^2\sin^2\varphi}}.
ただし

  k=\frac\beta\alpha=\sqrt\frac{1-\frac{c^2}{b^2}}{1-\frac{c^2}{a^2}},
  \quad\varphi_0=\mathrm{Arc\,}\sin\sqrt{1-\frac{c^2}{a^2}}.

このように,一般楕円体の表面積は楕円積分に帰する.ただし,回転楕円体の場合には初等函数で積分されるが,二つの場合が生ずる.

(1º)
扁平: a=b>c.
k=1,\quad\alpha=\frac\sqrt{a^2-c^2}{a}=\sin\varphi_0,
\begin{align}\frac{S}{2\pi a^2}
  &= \frac{c^2}{a^2}+\alpha\int_0^{\varphi_0}\cos\varphi\,d\varphi
    +\frac{1-\alpha^2}\alpha\int_0^{\varphi_0}\frac{d\varphi}{\cos\varphi}\\
  &= \frac{c^2}{a^2}+\alpha\sin\varphi_0
    +\frac{1-\alpha^2}{2\alpha}\log\frac{1+\sin\varphi_0}{1-\sin\varphi_0}.
\end{align}
故に

  \frac{S}{2\pi}=a^2+\frac{c^2}{2\alpha}\log\frac{1+\alpha}{1-\alpha}.
(2º)
扁長: a>b=c.
k=0,\quad\alpha=\frac\sqrt{a^2-b^2}{a}.
\frac{S}{2\pi ab}=\frac{b}a+\alpha\varphi_0+\frac{1-\alpha^2}\alpha \varphi_0=\frac{b}a+\frac{\varphi_0}\alpha.
故に

  \frac{S}{2\pi}=b^2+ab\frac{\mathrm{Arc\,}\sin\alpha}\alpha.
(1º)(2º) において \alpha は回転軸を通る截面の離心率である.
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[附記] 
曲面積を内接多面体の表面積の極限として定義することの困難なることを Schwarz が簡単な実例によって指摘した.今半径 r,高さ h なる直円筒において,高さを m 等分して,それらの分点を通る直截面に正 n 角形を内接せしめる.ただし,各截面において正 n 角形の各頂点 A は隣りの截面の正 n 角形の一辺 BC が張る弧の中点 A' と同一母線上にあるとする.今これらの内接多角形の頂点を結んで,2mn 個の二等辺三角形 ABC を面とする多面体を作るならば,各二等辺三角形の底辺 BC2r\sin\tfrac\pi{n} で,高さ AM

  \sqrt{\left(\frac{h}m\right)^2+r^2\left(1-\cos\frac\pi{n}\right)^2}
であるから,多面体の表面積は

  S_{m,n} = 2mn\cdot r\sin\frac\pi{n}
    \sqrt{\left(\frac{h}m\right)^2+4r^2\sin^4\frac\pi{2n}}.
今簡単のために r=h=1 とすれば,

  S_{m,n} = 2\left(n\sin\frac\pi{n}\right)
    \sqrt{1+4\left(\frac{m}{n^2}\right)^2\left(n\sin\frac\pi{2n}\right)^4}.
m,n を限りなく大きくするとき,これは一定の極限値を有しない.例えば m=n とすれば極限値は 2\pi であるが,もしも m=n^2 とするならば,2\pi\sqrt{1+\tfrac{\pi^4}4} になり,また m=n^3 とするならば極限は \infty である.

このような事情の生ずる理由は明白である.m,n を限りなく大きくすれば,上記内接多面体の表面上の各点から円筒面への距離は限りなく小さくなるが,多面体の各面と円筒面との間の角は必らずしも小さくならないで,0\tfrac\pi2 との間のいかなる値にも近づきうるのである.この角をも限りなく小ならしめるように m,n を取るならば,多面体の表面積の極限値が円筒面の面積として我々の期待する値(すなわち 2\pi)になるであろう[* 1]


  1. 曲線の場合には,接線が連続的に変動する限り,弦と曲線との間の角は自然に上記条件を満足させるのであった(135 頁,[注意]).

[編集] 98.曲線座標(体積,曲面積,弧長の変形)

三次元空間の或る区域において,xyz 系空間と uvw 系空間との点の間に一対一対応が成り立つときは,点 (x,y,z) はそれに対応する (u,v,w) によって確定するから,(u,v,w) を点 (x,y,z) の一種の座標(曲線座標)とみることができる.今 u,v,w のうち二つを固定して,u だけ,v だけ,または w だけを変動させるならば,それに対応して点 (x,y,z) はそれぞれ或る曲線を画く.それらを u 線,v 線,w 線と略称する.

例えば v=v_0,w=w_0 を固定して(変数の記号を函数記号に流用),

  x=x(u,v_0,w_0),\quad y=y(u,v_0,w_0),\quad z=z(u,v_0,w_0)
とすれば,xyz 空間において,u を媒介変数とする一つの曲線が定められる.それがいわゆる u 線(v_0,w_0 に対応する u 線)である.

然らば xyz 系空間の各点を一つずつの u 線,v 線,w 線が通って,xyz 空間はそれらの u 線,v 線,w 線の網で覆われる.

極座標 (r,\vartheta,\varphi) においては,点 P を通る r 線は半直線 OP\vartheta 線は P を通る子午線,\varphi 線は P を通る緯度線である.
同様に u,v,w のうちの一つ,例えば w=w_0 を固定して u,v のみを変動させるならば

  x=x(u,v,w_0),\quad y=y(u,v,w_0),\quad z=z(u,v,w_0)
u,v を媒介変数として xyz 系空間の一つの曲面を定める.それを uv 面(w_0 に対応する uv 面)という. さて,uvw 系の微小直方体に対応する xyz 系の微小体積を d\omega と略記すれば
(1)
\left.\begin{align}
  &d\omega=|J|\,du\,dv\,dw,\\ &J=\frac{D(x,y,z)}{D(u,v,w)}.
\end{align}\quad\right\}
その意味はすでに述べた(§96)通りである.(u,v,w)(x,y,z) の曲線座標とみれば,xyz 空間の微小体積(volume element)が (1) で表わされるのである.
故に d\omega はもちろん u,v,w の或る函数 \omega の微分という意味ではない.uvw 系における直方体の稜を \Delta u,\Delta v,\Delta w として,それに対応する xyz 系の区域の体積を \Delta \omega とすれば

  \Delta\omega=|J|\Delta u\Delta v\Delta w+o(\delta^3),
 ただし 
  \delta=\mathrm{Max}(\Delta u,\Delta v,\Delta w).
(1)\Delta\omega の主要部が |J|\Delta u\Delta v\Delta w であることを簡明に略記するのである.
同様に立場において,xyz 空間の曲線の弧長を s,その曲線上の点の座標 (x,y,z) の微分を dx,dy,dz とすれば
ds^2=dx^2+dy^2+dz^2
であるが,
\begin{align}
  dx&=\frac{\partial x}{\partial u}du+\frac{\partial x}{\partial v}dv+\frac{\partial x}{\partial w}dw,\\
  dy&=\frac{\partial y}{\partial u}du+\frac{\partial y}{\partial v}dv+\frac{\partial y}{\partial w}dw,\\
  dz&=\frac{\partial z}{\partial u}du+\frac{\partial z}{\partial v}dv+\frac{\partial z}{\partial w}dw
\end{align}
から
(2)
\begin{align}
  ds^2=&H_1\,du^2+H_2\,dv^2+H_3\,dw^2\\&+2F_1\,dv\,dw+2F_2\,du\,dw+2F_3\,du\,dv.
\end{align}
ただし
(3)
\left.\begin{align}
  H_1 &= \sum\left(\frac{\partial x}{\partial u}\right)^2, &
  H_2 &= \sum\left(\frac{\partial x}{\partial v}\right)^2, &
  H_3 &= \sum\left(\frac{\partial x}{\partial w}\right)^2, \\[5pt]
  F_1 &= \sum\frac{\partial x}{\partial v}\frac{\partial x}{\partial w}, &
  F_2 &= \sum\frac{\partial x}{\partial u}\frac{\partial x}{\partial w}, &
  F_3 &= \sum\frac{\partial x}{\partial u}\frac{\partial x}{\partial v},
\end{align}\ \right\}
ただし,\textstyle\sumx,y,z に関する三つの項の和を示すのである. さて上記 (1) の微小体積 d\omega を六つの H,F で表わすことができる.すなわち
(4)
 J^2=\begin{vmatrix}
  \dfrac{\partial x}{\partial u} & \dfrac{\partial x}{\partial v} & \dfrac{\partial x}{\partial w}\\[10pt]
  \dfrac{\partial y}{\partial u} & \dfrac{\partial y}{\partial v} & \dfrac{\partial y}{\partial w}\\[10pt]
  \dfrac{\partial z}{\partial u} & \dfrac{\partial z}{\partial v} & \dfrac{\partial z}{\partial w}
\end{vmatrix}^2=\begin{vmatrix}
  H_1 & F_3 & F_2\\ F_3 & H_2 & F_1\\ F_2 & F_1 & H_3
\end{vmatrix}^2=M
と置けば
(5)
d\omega=\sqrt{M}\,du\,dv\,dw.
曲面に関しては,簡単のために,w を固定して uv 面を考察する.然らばその曲面は u,v を媒介変数として
(6)

  x=\varphi_1(u,v),\quad y=\varphi_2(u,v),\quad z=\varphi_3(u,v)
で表わされる.今この曲面が局所的に
(7)
z=f(x,y)
で表わされるとするならば,曲面上の微小面積(surface element)を d\sigma として(§97
\begin{align}d\sigma
  &= \sqrt{1+\left(\frac{\partial z}{\partial x}\right)^2+\left(\frac{\partial z}{\partial y}\right)^2}\,dx\,dy\\[10pt]
  &= \sqrt{1+\left(\frac{\partial z}{\partial x}\right)^2+\left(\frac{\partial z}{\partial y}\right)^2}\,\left|\frac{D(x,y)}{D(u,v)}\right|\,du\,dv.
\end{align}
さて
\begin{align}
  z_u &= \frac{\partial z}{\partial x}x_u+\frac{\partial z}{\partial y}y_u,\\[5pt]
  z_v &= \frac{\partial z}{\partial x}x_v+\frac{\partial z}{\partial y}y_v
\end{align}
から
(8)

 \frac{\partial z}{\partial x}:\frac{\partial z}{\partial y}:-1 = \begin{vmatrix}
    y_u & z_u\\y_v & z_v
 \end{vmatrix}:\begin{vmatrix}
    z_u & x_u\\z_v & x_v
 \end{vmatrix}:\begin{vmatrix}
    x_u & y_u\\x_v & y_v
 \end{vmatrix},
従って
(9)
\begin{align}d\sigma
  &= \sqrt{(y_uz_v-y_vz_u)^2+(z_ux_v-z_vx_u)^2+(x_uy_v-x_vy_u)^2}\,du\,dv\\[10pt]
  &= \sqrt{\left(\frac{D(y,z)}{D(u,v)}\right)^2+\left(\frac{D(z,x)}{D(u,v)}\right)^2+\left(\frac{D(x,y)}{D(u,v)}\right)^2}\,du\,dv.\end{align}
これは x,y,z のいずれにも偏しない形であるから,曲面 (6)(7) のように表わされなくても,一般に通用する. (9) において,根号の下の三つの函数行列式は,(8) によって (u,v) に対応する点における曲面の法線の方向余弦 \cos\alpha,\cos\beta,\cos\gamma に比例する.故に

  \cos\alpha=\pm\frac{\frac{D(y,z)}{D(u,v)}}{\sqrt{\sum\left(\frac{D(x,z)}{D(u,v)}\right)^2}},\quad
  \cos\beta=\pm\frac{\frac{D(z,x)}{D(u,v)}}{\sqrt{\begin{matrix}\qquad\\[-5pt]\end{matrix}\prime\prime\begin{matrix}\\[-5pt]\qquad\end{matrix}}},\quad
  \cos\gamma=\pm\frac{\frac{D(x,y)}{D(u,v)}}{\sqrt{\textstyle\begin{matrix}\\[-5pt]\qquad\end{matrix}\prime\prime\begin{matrix}\qquad\\[-5pt]\end{matrix}}},
\pm は三つとも同一,また分母は (9) の右辺の平行根と同じものである.故に分子なる三つの函数行列式が同時に 0 になる点(曲面の特異点)を通らない限り,法線の方向は連続的に変動する. さて (6) において (u,v) を曲面上の点の座標とみれば,u,v の間の函数的関係によって曲面上の曲線が定められる.その弧長を s とすれば,ds(2) から(w に関する項を除いて)求められる.すなわち
(10)
ds^2=E\,du^2+2F\,du\,dv+G\,dv^2,
ただし,
(11)
\left.\begin{alignat}{3}
 E&= \left(\frac{\partial x}{\partial u}\right)^2 &
   &+\left(\frac{\partial y}{\partial u}\right)^2 &
   &+\left(\frac{\partial z}{\partial u}\right)^2,\\
 F&= \frac{\partial x}{\partial u}\frac{\partial x}{\partial v} &
   &+\frac{\partial y}{\partial u}\frac{\partial y}{\partial v} &
   &+\frac{\partial z}{\partial u}\frac{\partial z}{\partial v},\\
 G&= \left(\frac{\partial x}{\partial v}\right)^2 &
   &+\left(\frac{\partial y}{\partial v}\right)^2 &
   &+\left(\frac{\partial z}{\partial v}\right)^2,
\end{alignat}\right\}
すなわち前記 (3)H_1,F_3,H_2 である.(11) から
\begin{vmatrix}\\[-6pt]E & F\\\\F & G\\[8pt]\end{vmatrix}
 =\begin{vmatrix}
   \dfrac{\partial y}{\partial u} & \dfrac{\partial y}{\partial v}\\[10pt]
   \dfrac{\partial z}{\partial u} & \dfrac{\partial z}{\partial v}
 \end{vmatrix}^2+\begin{vmatrix}
   \dfrac{\partial z}{\partial u} & \dfrac{\partial z}{\partial v}\\[10pt]
   \dfrac{\partial x}{\partial u} & \dfrac{\partial x}{\partial v}
 \end{vmatrix}^2+\begin{vmatrix}
   \dfrac{\partial x}{\partial u} & \dfrac{\partial x}{\partial v}\\[10pt]
   \dfrac{\partial y}{\partial u} & \dfrac{\partial y}{\partial v}
 \end{vmatrix}^2
すなわち
EG-F^2
 = \left(\frac{D(y,z)}{D(u,v)}\right)^2
  +\left(\frac{D(z,x)}{D(u,v)}\right)^2
  +\left(\frac{D(x,y)}{D(u,v)}\right)^2,
従って (9) から
(12)
d\sigma=\sqrt{EG-F^2}\,du\,dv.
KaisekiGairon-369-1.svg
公式 (12) の幾何学上の意味を考察しよう.曲面 Su 線,v 線の網をもって ABCD のような微小曲線四辺形に分割すれば,uAB では v は一定で,uu から u+du まで変わるのだから,弧 AB の主要部は \sqrt{E}\,du である.同じように v 線の弧 AC の主要部は \sqrt{G}\,dv である.また A における uAB の接線の方向余弦は

  \frac{\frac{\partial x}{\partial u}}{\sqrt{E}},\quad
  \frac{\frac{\partial y}{\partial u}}{\sqrt{E}},\quad
  \frac{\frac{\partial z}{\partial u}}{\sqrt{E}},
vAC の接線では

  \frac{\frac{\partial x}{\partial v}}{\sqrt{G}},\quad
  \frac{\frac{\partial y}{\partial v}}{\sqrt{G}},\quad
  \frac{\frac{\partial z}{\partial v}}{\sqrt{G}}
であるから,これらの接線の間の角を \theta とすれば
\cos\theta=\frac{F}{\sqrt{EG}}, 従って \sin\theta=\frac{\sqrt{EG-F^2}}{\sqrt{EG}}.
故に

  \sqrt{EG-F^2}\,du\,dv=\sqrt{E}\,du\cdot\sqrt{G}\,dv\cdot\sin\theta
は高位の微小数を省略するとき,A における接平面上において二辺は微小弧 AB,AC に等しく,夾角は \theta に等しい平行四辺形の面積に等しい.これが (12) における微小面積 d\sigma の幾何学的の意味である.
[注意] 
上記 E,F,G(10) からみえるように,曲面上の弧長だけによって確定するのであるから,曲面の形のみに関係する量である,すなわち E,F,G は直角座標 (x,y,z) の選択に無関係なる一定の値を有するのである[* 1].それはまた計算によって容易に験証される.すなわち
\begin{align}
  x'=x_0'+l_1x+m_1y+n_1z,\\ y'=y_0'+l_2x+m_2y+n_2z,\\ z'=z_0'+l_3x+m_3y+n_3z
\end{align}
を直角座標 (x,y,z) から直角座標 (x',y',z') への変換式として
\begin{alignat}{3}
  E'&=\left(\frac{\partial x'}{\partial u}\right)^2&
    &+\left(\frac{\partial y'}{\partial u}\right)^2&
    &+\left(\frac{\partial z'}{\partial u}\right)^2,\\
  F'&=\frac{\partial x'}{\partial u}\frac{\partial x'}{\partial v}&
    &+\frac{\partial y'}{\partial u}\frac{\partial y'}{\partial v}&
    &+\frac{\partial z'}{\partial u}\frac{\partial z'}{\partial v},\\
  G'&=\left(\frac{\partial x'}{\partial v}\right)^2&
    &+\left(\frac{\partial y'}{\partial v}\right)^2&
    &+\left(\frac{\partial z'}{\partial v}\right)^2
\end{alignat}
と書けば

 E'=\left(
   l_1\frac{\partial x}{\partial u}
  +m_1\frac{\partial y}{\partial u}
  +n_1\frac{\partial z}{\partial u}
 \right)^2 + \left(
   l_2\frac{\partial x}{\partial u}
  +m_2\frac{\partial y}{\partial u}
  +n_2\frac{\partial z}{\partial u}
 \right)^2 + \left(
   l_3\frac{\partial x}{\partial u}
  +m_3\frac{\partial y}{\partial u}
  +n_3\frac{\partial z}{\partial u}
 \right)^2
 
 = \left(\frac{\partial x}{\partial u}\right)^2
  +\left(\frac{\partial y}{\partial u}\right)^2
  +\left(\frac{\partial z}{\partial u}\right)^2 = E.
ここで
\begin{align}
  &l_1^2+l_2^2+l_3^2=1,\quad m_1^2+m_2^2+m_3^2=1,\quad n_1^2+n_2^2+n_3^2=1,\\
  &l_1m_1+l_2m_2+l_3m_3=0,\quad l_1n_1+l_2n_2+l_3n_3=0,\quad m_1n_1+m_2n_2+m_3n_3=0
\end{align}
を用いた.同様に F'=F,G'=G を得る.

次に一,二の特別なる曲面に関して述べる.

(1º)
回転面
xz 平面上,z 軸の右側(x>0)にある曲線
(13)

  x=\varphi(u),\quad z=\psi(u),\quad a\leqq u\leqq b,
z 軸の周りに回転して生ずる回転面の方程式は,v を回転の角として

  x=\varphi(u)\cos v,\quad y=\varphi(u)\sin v,\quad z=\psi(u).
よって
\begin{align}
  E &= (\varphi'(u)\cos v)^2+(\varphi'(u)\sin v)^2+\psi'(u)^2
     =\varphi'(u)^2+\psi'(u)^2,\\
  G &= (-\varphi(u)\sin v)^2+(\varphi(u)\cos v)^2 = \varphi(u)^2,\\
  F &= 0,
\end{align}

  \sqrt{EG}=\varphi(u)\sqrt{\varphi'(u)^2+\psi(u)^2},
\begin{align}
  S&=\int_0^{2\pi}dv\int_a^b \varphi(u)\sqrt{\varphi'(u)^2+\psi(u)^2}\,du\\
   &=2\pi\int_a^b\varphi(u)\sqrt{\varphi'(u)^2+\psi(u)^2}\,du.
\end{align}
母線 (13)C と書いて,その弧長を s とすれば
ds=\sqrt{\varphi'(u)^2+\psi'(u)^2}\,du
だから
(14)
S=2\pi\int_C x\,ds.
2\pi x ds は母線の微小弧 ds の回転から生ずる微小円錐台の側面積である.
KaisekiGairon-371-1.svg
もしも曲線 C の重心を (x_0,z_0) とすれば,C の全長を l として

  x_0=\frac{1}l\int_C x\,ds,\quad z_0=\frac{1}l\int_C z\,ds.
故に (14)
S=2\pi x_0l
と書くことができる.すなわち回転面の面積は母線の長さと,母線の重心の画く円周の長さとの積に等しい.[Guldin の法則]
[注意] 
KaisekiGairon-371-2.svg
回転体の体積に関しても,類似の法則が成り立つ,今 xz 平面において母線の方程式を
x=f(z)\geqq 0
とすれば z=a,z=b の間に挟まれる回転体の体積 \textstyle V=\int_a^b\pi f(z)^2dz. さて子午線面での截口の面積を A,截口の重心を (\xi,\zeta) とすれば
\begin{align}
  \xi&=\frac1A\int_A x\,dx\,dz\\&=\frac1{2A}\int_a^b f(z)^2\,dz.
\end{align}
故に
V=2\pi\xi\cdot A,
すなわち回転体の体積 V は子午線面の面積と,それの重心が画く円周の長さとの積に等しい(体積に関する Guldin の法則).この法則は z 軸に交わらない閉曲線が z 軸を周って回転するとき生ずる回転体にも当てはまる.
[例 1]
xz 平面上において,z 軸と交わらない円が z 軸を周って回転するときに生ずる立体を輪環体(torus)という.
KaisekiGairon-371-3.svg
円の半径を r,中心と回転軸との距離を a とすれば,x_0=a,\xi=a だから
\begin{align}
  S &= 2\pi a\cdot 2\pi r = 4\pi^2 ar,\\
  V &= 2\pi a\cdot\pi r^2 = 2\pi^2 ar^2.
\end{align}
[例 2]
回転楕円体の表面積はすでに計算した(365 頁).またその体積はもちろん既知である.故に Guldin の法則によって,反対に長軸または短軸を限界とする楕円の半周または半面の重心の位置が決定される.
(2º)
螺旋面
母線
x=\varphi(u),\quad z=\psi(u),\quad a\leqq u\leqq b,
z 軸を軸として一定の角速度をもって回転すると同時に,z 軸に沿って一定の速度をもって平行移動をするときは,螺旋面が生ずる.v を回転の角(0\leqq v\leqq 2\pi)とすれば,その方程式は

  x=\varphi(u)\cos v,\quad y=\varphi(u)\sin v,\quad z=\psi(u)+cv,
c は定数である.よって
\begin{align}
  E &=\varphi'(u)^2+\psi'(u)^2,\\ G &=\varphi(u)^2+c^2,\\ F &=c\psi'(u),
\end{align}

  EG-F^2=\varphi(u)^2(\varphi'(u)^2+\psi'(u)^2)+c^2\varphi'(u)^2.
これは u のみに関係するから,

  S=v\int_a^b\{\varphi^2(\varphi'^2+\psi'^2)+c^2\varphi'^2\}^\frac12\,du,
ただし, v は母線の回転の角である.
例えば母線が軸に垂直なる長さ a の直線ならば,\varphi(u)=u, 0\leqq u\leqq a,\psi(u)=0 と置いて E=1,G=u^2+c^2,F=0.故に一周に対応する面積は
\begin{align} S &= 2\pi\int_0^a\sqrt{u^2+c^2}\,du
  = \pi\left|u\sqrt{u^2+c^2}+c^2\log(u+\sqrt{u^2+c^2})\right|_0^a\\
 &= \pi\left\{a\sqrt{a^2+c^2}+c^2\log\frac{a+\sqrt{a^2+c^2}}c\right\}.
\end{align}
ここで 2\pi c が螺旋の高さに等しい.
(3º)
線織面
直線
x=a_1u+b_1,\quad y=a_2u+b_2,\quad z=a_3u+b_3
において係数 a,bv の函数とするときは,v が変動するとき,直線が動いて線織面を生ずる.この場合には
\begin{align}
  E &= a_1^2+a_2^2+a_3^2,\\
  G &= (a_1'u+b_1')^2+(a_2'u+b_2')^2+(a_3'u+b_3')^2,\\
  F &= a_1(a_1'u+b_1')+a_2(a_2'u+b_2)+a_3(a_3'u+b_3').
\end{align}
'v に関する微分を示す.)よって
EG-F^2=Lu^2+Mu+N.
L,M,Nv のみの函数である.従って S の計算において u に関しては不定積分ができる.

  1. これによって,§97 で述べた曲面積の定義が合理化される.

[編集] 99.直交座標

前節に述べたように,u,v,w のうち二つを固定すれば,u 線,v 線,w 線の接線の方向余弦はそれぞれ行列
\begin{matrix}
  \dfrac{\partial x}{\partial u} & 
  \dfrac{\partial x}{\partial v} &
  \dfrac{\partial x}{\partial w}\\[10pt]
  \dfrac{\partial y}{\partial u} &
  \dfrac{\partial y}{\partial v} &
  \dfrac{\partial y}{\partial w}\\[10pt]
  \dfrac{\partial z}{\partial u} &
  \dfrac{\partial z}{\partial v} &
  \dfrac{\partial z}{\partial w}
\end{matrix}
の縦列に比例する(369 頁).応用上最も取り扱いに便利なのは,これらの曲線が互に直交する場合で,そのとき (u,v,w) を直交座標という.直交座標では,上記行列の列の間に直交条件

  \sum\frac{\partial x}{\partial u}\frac{\partial x}{\partial v}=0,\quad
  \sum\frac{\partial x}{\partial u}\frac{\partial x}{\partial w}=0,\quad
  \sum\frac{\partial x}{\partial v}\frac{\partial x}{\partial w}=0
が成り立つ.すなわち前節 (3) における
F_1=F_2=F_3=0.
故に直交座標に関しては 前節 (2)(5)(12) が次のように簡約される.
(1)

  ds=\sqrt{H_1\,du^2+H_2\,dv^2+H_3\,dw^2},
(2)

  d\omega=\sqrt{H_1H_2H_3}\,du\,dv\,dw,
(3)

  d\sigma=\sqrt{H_1H_2}\,du\,dv=\sqrt{EG}\,du\,dv.
極座標は最も普通に用いられる直交曲線座標である.すなわち u,v,wr,\vartheta,\varphi を代用して

  x=r\sin\vartheta\cos\varphi,\quad y=r\sin\vartheta\sin\varphi,\quad z=r\cos\vartheta
から
J=\begin{vmatrix}
 \ \sin\vartheta\cos\varphi &\quad r\cos\vartheta\cos\varphi & -r\sin\vartheta\sin\varphi\\
 \ \sin\vartheta\cos\varphi &\quad r\cos\vartheta\sin\varphi &\quad r\sin\vartheta\cos\varphi\,\\
 \cos\vartheta\qquad & -r\sin\vartheta\qquad & 0
\end{vmatrix}
H_1,H_2,H_3 は各縦列の元の平方の和である.すなわち
H_1=1,\quad H_2=r^2,\quad H_3=r^2\sin^2\vartheta.
故に (1)(2) から

  (J=\sqrt{H_1H_2H_3}=r^2\sin\vartheta)
(4)

  ds^2=dr^2+r^2d\vartheta^2+r^2\sin^2\vartheta\,d\varphi^2,
(5)

  d\omega=r^2\sin\vartheta\,dr\,d\vartheta\,d\varphi.
面積に関しては曲面が r=f(\vartheta,\varphi) の形で与えられているとすれば,(4) から

  ds^2=(r_\vartheta\,d\vartheta+r_\varphi\,d\varphi)^2+r^2d\vartheta^2+r^2\sin^2\vartheta\,d\varphi^2,
従って
(6)
\left.\begin{array}{c}
  E=r^2+r_\vartheta^2,\quad
  F=r_\vartheta r_\varphi,\quad
  G=r^2\sin^2\vartheta+r_\varphi^2,\\
  d\sigma=\sqrt{EG-F^2}\,d\vartheta\,d\varphi
  =r\sqrt{(r^2+r_\vartheta^2)\sin^2\vartheta+r_\varphi^2}\,d\vartheta\,d\varphi.
\end{array}\right\}
特に球面(r= 定数)上で余緯度 \vartheta,経度 \varphi を曲線座標とすれば,(6) から

  E=r^2,\quad G=r^2\sin^2\vartheta,\quad F=0,
(7)
\left.\begin{align}
  ds^2 &= r^2(d\vartheta^2+\sin^2\vartheta\,d\varphi^2),\\
  d\sigma &= r^2\sin\vartheta\,d\vartheta\,d\varphi.
\end{align}\ \right\}
(7) によって球面上の面積が次のようにして計算される.今北極 (0,0,r) から球面上の点 P への直線距離を \rho とすれば,P の極座標を (r,\vartheta,\varphi) とするとき

  \rho=2r\sin\frac{\vartheta}2,\quad
  \rho^2=2r^2(1-\cos\vartheta),\quad
  \rho\,d\rho=r^2\sin\vartheta\,d\vartheta,
故に (7) から

  d\sigma=\rho\,d\rho\,d\varphi.
今球面が閉曲線 C で二つの部分に分かたれるとき,その一つの部分を S とする.北極が S の内部にあるように座標軸を取って,C 上の点 P においては \rho=F(\varphi) とする(\rho,\varphi に関する C の方程式).然らば面積 S は(記号 [C]209 頁,脚注
(8)

  S=\int_{[C]}d\sigma=\int_0^{2\pi}d\varphi\int_0^\rho \rho\,d\rho
   =\frac12\int_0^{2\pi} \rho^2\,d\varphi.
例えば \rho を一定とすれば,球分の面積として S=\pi\rho^2 を得る.特に \rho=2r とすれば球の全面積として S=4\pi r を得る.

(8)\vartheta を含まないから,z 軸上原点を球の中心としなくてもよい.

[例]
球面 x^2+y^2+(x-R)^2=R^2 から,錐面 z^2=ax^2+by^2 (a>0,b>0) が截り取る面積 S を求めること. ここでは,\rho=2R\sin\vartheta で,錐面上では

  \cos^2\vartheta=(a\cos^2\varphi+b\sin\varphi)\sin^2\vartheta.
両辺に \sin^2\vartheta を加えて

  1=(a\cos^2\vartheta+b\sin^2\varphi+1)\sin^2\vartheta.
故に

  \rho^2=\frac{4R^2}{a\cos^2\vartheta+b\sin^2\varphi+1},
従って (8) によって(§37,[例 2]参照)
\begin{align}
  S &= 2R^2\int_0^{2\pi}\frac{d\varphi}{a\cos^2\vartheta+b\sin^2\varphi+1}\\
    &= 2R^2\int_0^{2\pi}\frac{d\varphi}{(a+1)\cos^2\vartheta+(b+1)\sin^2\varphi}
     = \frac{4\pi R^2}\sqrt{(a+1)(b+1)}.
\end{align}
楕円座標を直交座標の他の一例として取ってみる.今
a>b>c>0
とすれば同焦点の二次曲面
(9)

  \frac{x^2}{a-\lambda}+\frac{y^2}{b-\lambda}+\frac{z^2}{c-\lambda}=1
の中で,一点 (x,y,z) を通るものが三つある.すなわち与えられた (x,y,z) に関して (9) を満足せしめる \lambda の三つの実数値 \lambda_1,\lambda_2,\lambda_3 があって,それらは次のように配置される.

  \lambda_1<c<\lambda_2<b\lambda_3<a.
\lambda_1 には楕円面,\lambda_2 には一葉双曲面,\lambda_3 には二葉双曲面が対応して,それらは二つずつ直交する.故に一つの八分象限(octant),例えば x>0,y>0,z>0 における (x,y,z) と半直角柱

  -\infty<\lambda_1<c,\quad c<\lambda_2<b,\quad b<\lambda_3<a
における (\lambda_1,\lambda_2,\lambda_3) との間に一対一対応が成り立つ.(\lambda_1,\lambda_2,\lambda_3) を点 (x,y,z) の楕円座標というのである. \lambda を変数とするとき,(9) の根が \lambda_1,\lambda_2,\lambda_3 であることから,\lambda に関する次の恒等式を得る:
(10)

  \frac{x^2}{a-\lambda}+\frac{y^2}{b-\lambda}+\frac{z^2}{c-\lambda}
  =\frac{(\lambda-\lambda_1)(\lambda-\lambda_2)(\lambda-\lambda_3)}
        {(a-\lambda)(b-\lambda)(c-\lambda)}.
これから a-\lambda または b-\lambda,c-\lambda を掛けて後 \lambdaa,b,c を代入して
(11)
\left.\begin{align}
  x^2 &= \frac{(a-\lambda_1)(a-\lambda_2)(a-\lambda_3)}{(a-b)(a-c)},\\
  y^2 &= \frac{(b-\lambda_1)(b-\lambda_2)(b-\lambda_3)}{(b-a)(b-c)},\\
  z^2 &= \frac{(c-\lambda_1)(c-\lambda_2)(c-\lambda_3)}{(c-a)(c-b)}
\end{align}\ \right\}
を得る.これによって (x,y,z)(\lambda_1,\lambda_2,\lambda_3) で表わされる.これらを対数的に微分して
\left.\begin{align}
 -2dx &= \frac{x\lambda_1}{a-\lambda_1}
        +\frac{x\lambda_2}{a-\lambda_2}
        +\frac{x\lambda_3}{a-\lambda_3},\\
 -2dy &= \frac{y\lambda_1}{a-\lambda_1}
        +\frac{y\lambda_2}{a-\lambda_2}
        +\frac{y\lambda_3}{a-\lambda_3},\\
 -2dz &= \frac{z\lambda_1}{a-\lambda_1}
        +\frac{z\lambda_2}{a-\lambda_2}
        +\frac{z\lambda_3}{a-\lambda_3}.
\end{align}\ \right\}
これらを平方して加えて(直交条件を用いて)

  ds^2=H_1\,d\lambda_1^2+H_2\,\lambda_2^2+H_3\,\lambda_3^2
における係数 H_i が求められる.例えば

 4H_1=\frac{x^2}{(a-\lambda_1)^2}+\frac{y^2}{(b-\lambda_1)^2}+\frac{z^2}{(c-\lambda_1)^2}
であるが,それを手短かに計算するために (10) の右辺の分母を
\varphi(\lambda)=(a-\lambda)(b-\lambda)(c-\lambda)
と置いて,(10)\lambda に関して微分してから,\lambda\lambda_1 を代入すれば
同様に,
(12)
\left.\begin{align}
  H_1=\frac{(\lambda_1-\lambda_2)(\lambda_1-\lambda_3)}{4\varphi(\lambda_1)},\\
  H_2=\frac{(\lambda_2-\lambda_1)(\lambda_2-\lambda_3)}{4\varphi(\lambda_2)},\\
  H_3=\frac{(\lambda_3-\lambda_1)(\lambda_3-\lambda_2)}{4\varphi(\lambda_3)}.
\end{align}\ \right\}
従って
(13)

  \frac{D(x,y,z)}{D(\lambda_1,\lambda_2,\lambda_3)} = \sqrt{H_1H_2H_3}
  =\frac{(\lambda_3-\lambda_2)(\lambda_3-\lambda_1)(\lambda_2-\lambda_1)}
        {8\sqrt{-\varphi(\lambda_1)\varphi(\lambda_2)\varphi(\lambda_3)}}.
ここで \lambda_1<\lambda_2<\lambda_3 であった,また分母の根号の下で \varphi(\lambda_1)>0,\varphi(\lambda_3)>0,-\varphi(\lambda_2)>0 である.これを (2) へ入れて d\omega を得る.
面積に関しては,一例として楕円体の表面

  \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}+\frac{z^2}{c^2}=1\quad(x>0,y>0,z>0)
を取れば,\lambda_1=0,c<\lambda_2<b,b<\lambda_3<a.よって H_2,H_3 において \lambda_1=0 と置いて

  E=\frac{\lambda_2(\lambda_3-\lambda_2)}{-4\varphi(\lambda_2)},\quad
  G=\frac{\lambda_3(\lambda_3-\lambda_2)}{4\varphi(\lambda_3)},

  d\sigma=\sqrt{EG}\,d\lambda_2\,d\lambda_3
  =\frac{\sqrt{\lambda_2\lambda_3}(\lambda_3-\lambda_2)}
        {4\sqrt{-\varphi(\lambda_2)\varphi(\lambda_3)}}\,d\lambda_2\,d\lambda_3.
これを区域 c<\lambda_2<b,b<\lambda_3<a において積分すれば,上記楕円体の表面積の \tfrac18 を得るが,その積分はもちろん楕円積分である.

[編集] 100.面積分

三次元の或る区域において連続なる函数 f(P) と滑らかな曲線 S とが与えられたとき,S を曲線網によって微小面積 \sigma_i に分割し,\sigma_i の上の任意の点を P_i とすれば,\textstyle\sum_i f(P_i)\sigma_i の極限値が確定する.それを S に関する f(P) の面積分といい,
(1)
\int_S f(P)\,d\sigma
と書く. 線積分において積分路なる曲線に向きをつけたのと同様に,面積分においても,曲面 S の表面,裏面を区別して,面積分に符号をつけることが,応用上便利である.曲面 S のどの側を表,その側を裏とするかは任意であるが,一側を表(正の面),他の側を裏(負の面)と定めて,かりにそれを S^+,S^- と書くならば,定義として
\int_{S^+}f(P)\,d\sigma=-\int_{S^-}f(P)\,d\sigma.

さて S の各点 P における法線の向きは表面の側を正として,それに対応して,面上の回転の向きの正負を定める.すなわち座標軸が右系ならば,面上の回転の正の向きと法線の正の向きとが右ネジになるようにする.

さて S の各点 P における法線の正の向きと,x,y,z 軸の正の向きとの間の角を \alpha,\beta,\gamma とする.然らば P における S 上の微小面積 d\sigma(それは絶対的とする,すなわち常に正とする)を一つの座標面例えば xy 平面上への回転の向きも共に射影するならば,xy 面上の微小面積 d\sigma\cdot\cos\gamma には,\gamma\tfrac\pi2 よりも小なるか,大なるかに従って,正負の差別が生ずるが,その符号をも入れて微小面積を dxdy と書いて S に関する函数 w の面積分を
\iint\limits_S w\,dxdy
と書く.故にここでは dxdyd\sigma\cos\gamma を意味するものと了解すべきである.\textstyle\iint u\,dydz,\iint v\,dzdx も同様である.応用上,しばしば u,v,w を一つのベクトル (u,v,w) の成分とするが,そのとき上記の意味で

  \iint\limits_S u\,dydz+v\,dzdx+w\,dxdy
  =\int_S(u\cos\alpha+v\cos\beta+w\cos\gamma)\,d\sigma.

左辺は疎漏な記法ではあるが,印象的だから応用上便利である.

曲面の表面,裏面を区別するというのは,直観的(粗雑)ないい表わしであるが,我々に必要なのは曲面上の各点 P における法線の正の向きが点 P に伴って連続的に変動するとき,曲面全体に関して法線の正の向きと負の向きとが区別されればよいのである.すなわち P における法線上の向きが P に伴って連続的に変動して P が出発点に返るときに,下の向きと反対にならないことを要するのである.

これの意味は,表裏の区別ができない曲面(単側面)があることを指摘すれば明瞭になるであろう.その最も簡単なる一例は Möbius の帯である.

細長い矩形の紙片 ABDC を一度ねじって,辺 CD を裏向きに AB に合わせて(AD,および BC とが重なるように)貼りつけるならば,一つの曲面 S が生ずる.それが Möbius の帯である.

この曲面 S には表裏の区別がない.今矩形の紙片 ABDC の一面を赤,他の一面を白として,上記のように ABCD とをつぎ合わせるならば,曲面 S においては,つぎめの所で赤と白とが接するであろう.
曲面 S を媒介変数 u,v で表わして
x=x(u,v),\quad y=y(u,v),\quad z=z(u,v)
とし,uv 平面上 (u,v) が或る領域 K において変動するとき,K における (u,v)S の点 (x,y,z) とが一対一に対応すると仮定する. 今 S は特異点を有しないとする.すなわち K において

  \Delta=\left(\frac{D(y,z)}{D(u,v)}\right)^2+\left(\frac{D(z,x)}{D(u,v)}\right)^2+\left(\frac{D(x,y)}{D(u,v)}\right)^2\ne 0
とする.そのとき,S の法線の正の向きの方向余弦を

  \cos\alpha=\frac{D(y,z)}{D(u,v)}\Bigg/\sqrt\Delta,\quad
  \cos\beta =\frac{D(z,x)}{D(u,v)}\Bigg/\sqrt\Delta,\quad
  \cos\gamma=\frac{D(x,y)}{D(u,v)}\Bigg/\sqrt\Delta
とすれば,これらは K において一意だから,S は正負の両側面を有する.そうして S 上の微小面積は
d\sigma=\sqrt\Delta\,du,dv
だから,f(x,y,z)=F(u,v) と書けば面積分 (1) は次のようになる.

  \int_S f(P)\,d\sigma=\int_K F(u,v)\sqrt\Delta\,du\,dv.

[編集] 101.ベクトル法の記号

次に述べる Gauss の定理および Stokes の定理を簡明にいい表わすために,古典物理学で用いられるベクトル法の記号を説明する.

xyz 空間の或る区域内の各点 P=(x,y,z) にベクトル \boldsymbol u=(a,b,c) が配置されるとき,それをベクトルの場ということはすでに述べた(§87).すなわち \boldsymbol u の座標 a,b,cx,y,z の函数である.このベクトルの場から次の定義によって数量の場 \mathop{\text{div}\,}\boldsymbol u およびベクトルの場 \mathop{\text{rot}\,}\boldsymbol u が生ずる:

(1)

  \mathop{\text{div}\,}\boldsymbol u=
  \frac{\partial a}{\partial x}+\frac{\partial b}{\partial y}+\frac{\partial c}{\partial z},
(2)

  \mathop{\text{rot}\,}\boldsymbol u=\left(
    \frac{\partial c}{\partial y}-\frac{\partial b}{\partial z},\,
    \frac{\partial a}{\partial z}-\frac{\partial c}{\partial x},\,
    \frac{\partial b}{\partial x}-\frac{\partial a}{\partial y}
  \right).

前者を \boldsymbol u発散divergence),後者を \boldsymbol u回転rotation または curl)という.

f が数量の場であるとき,その勾配(§87

(3)
\mathop{\text{grad}\,}f=(f_x,f_y,f_z)

はベクトルの場である.これを上記 \boldsymbol u に代用すれば

(4)
\mathop{\text{rot}\,\text{grad}\,}f=0,
(5)
\mathop{\text{div}\,\text{grad}\,}f=\Delta f=
  \frac{\partial^2 f}{\partial x^2}+\frac{\partial^2 f}{\partial y^2}+\frac{\partial^2 f}{\partial z^2}

を得る.次の等式も上記の定義から直ちに出る.

(6)
\mathop{\text{div}\,\text{rot}\,}\boldsymbol u=0.

もしも演算記号 \nabla(ナブラ):

\nabla=\left(
  \frac{\partial}{\partial x},\,\frac{\partial}{\partial y},\,\frac{\partial}{\partial z}
 \right)

をベクトルのように扱うならば,

(7)
\left.\begin{align}
  &\mathop{\text{grad}\,}f=\nabla f,\\
  &\mathop{\text{div}\,}\boldsymbol u=\nabla\cdot\boldsymbol u,\\
  &\mathop{\text{rot}\,}\boldsymbol u=\nabla\times\boldsymbol u,\\
  &\Delta f=\nabla \cdot\nabla f.
\end{align}\quad\right\}
[注意] 
ベクトル \boldsymbol u=(a,b,c) が点 P=(x,y,z) の函数として与えられるとき,\boldsymbol u は座標軸の取り方に関係しないことを要する.故にいま直角座標を変換して
(8)
\begin{array}{l|l}
  \xi   = l_1x+m_1y+n_1z\quad &\quad x = l_1\xi\ \,+l_2\eta\ \,+l_3\zeta\ \,,\\ 
  \eta  = l_2x+m_2y+n_2z\quad &\quad y = m_1\xi+m_2\eta+m_3\zeta,\\ 
  \zeta = l_3x+m_3y+n_3z\quad &\quad z = n_1\xi\,\,+n_2\eta\,\,+n_3\zeta
\end{array}

とするとき,新座標 \xi,\eta,\zeta に関する \boldsymbol u の成分を \alpha,\beta,\gamma とすれば

(9)
\left.\begin{align}
  \alpha= l_1a+m_1b+n_1c,\\
  \beta = l_2a+m_2b+n_2c,\\
  \gamma= l_3a+m_3b+n_3c.
\end{align}\quad\right\}

特に二つのベクトル \boldsymbol u,\boldsymbol v が与えられたとき,そのベクトル積 \boldsymbol u\times\boldsymbol v は変換 (8) によって (9) のように変形される.また数量積 \boldsymbol u\cdot\boldsymbol v はもちろん不変である.それは数量積,ベクトル積の意味(§27)によって明白であるが,実際計算をしてみるならば,その通りであることが,わかるであろう.

さて点 P の函数として \boldsymbol u が与えられているとしても,(1)(2) のように算式で定義された \mathop{\text{div}\,}\boldsymbol u, \mathop{\text{rot}\,}\boldsymbol u が実際数量の場,ベクトルの場を与えることは,験証を要するであろう.その験証は次のようにすれば簡明である.まず (8) から記号的に

\begin{align}
  \frac{\partial}{\partial\xi}
  &= \frac{\partial x}{\partial\xi}\frac{\partial}{\partial x}+
     \frac{\partial y}{\partial\xi}\frac{\partial}{\partial y}+
     \frac{\partial z}{\partial\xi}\frac{\partial}{\partial z}\\
  &= l_1\frac{\partial}{\partial x}+
     m_1\frac{\partial}{\partial y}+
     n_1\frac{\partial}{\partial z},\\
  \frac{\partial}{\partial\eta}
  &= l_2\frac{\partial}{\partial x}+
     m_2\frac{\partial}{\partial y}+
     n_2\frac{\partial}{\partial z},\\
  \frac{\partial}{\partial\zeta}
  &= l_3\frac{\partial}{\partial x}+
     m_3\frac{\partial}{\partial y}+
     n_3\frac{\partial}{\partial z}.
\end{align}

すなわち \left(\tfrac{\partial}{\partial x},\tfrac{\partial}{\partial y},\tfrac{\partial}{\partial z}\right) は変換 (8) に関して計算上ベクトルと同様に取扱ってよい.よって (7) から数量積 \text{div}\,\boldsymbol u=\left(\tfrac{\partial}{\partial x},\tfrac{\partial}{\partial y},\tfrac{\partial}{\partial z}\right)\cdot(a,b,c) は不変で,またベクトル積 \text{rot}\,\boldsymbol u=\left(\tfrac{\partial}{\partial x},\tfrac{\partial}{\partial y},\tfrac{\partial}{\partial z}\right)\times(a,b,c)(9) のように変形されることがわかる.すなわち


  \frac{\partial\gamma}{\partial\eta}-\frac{\partial\beta}{\partial\zeta}
  = l_1\left(\frac{\partial c}{\partial y}-\frac{\partial b}{\partial z}\right)+
    m_1\left(\frac{\partial a}{\partial z}-\frac{\partial c}{\partial x}\right)+
    n_1\left(\frac{\partial b}{\partial x}-\frac{\partial a}{\partial y}\right),

あと二つは書くには及ぶまい.この計算によって \text{div}\,\boldsymbol u は数量の場,\text{rot}\,\boldsymbol u はベクトルの場であることが確定する.

[編集] 102. Gaussの定理

平面上で閉曲線 C の内部の面積が,C に関する線積分として表されるこをを前に述べた(§41,[例 2]).それは線積分の応用の最も簡単な一例であったのだが,それを拡張して三次元において,閉曲面 S に関する任意の面積分を S の内部の区域 K に関する三次元積分に変形することができる.結果を言えば次の通り:
a(x,y,z),\qquad b(x,y,z),\qquad c(x,y,z)
(x,y,z) の函数で,それらは K において連続的微分可能とすれば
(1)

  \iint\limits_S a\,dy\,dz+b\,dz\,dx+c\,dx\,dy = \iiint\limits_K (a_x+b_y+c_z)\,dx\,dy\,dz.
これが Gauss の定理である[* 1](1) は記憶しやすい形に書いたのであるが,今その意味を説明する.閉曲面 S の各点において,その外部への法線の方向余弦を \cos\alpha,\cos\beta,\cos\gamma とすれば
(1′)

  \int_K(a_x+b_y+c_z)\,d\omega
 =\int_S(a\cos\alpha+b\cos\beta+c\cos\gamma)\,d\sigma.
または一層簡単に,(a,b,c) をベクトル \boldsymbol{v} の座標と考えて,上記法線上の単位ベクトルを \boldsymbol{n} と書けば
(G)
\int_K\mathrm{div}\,\boldsymbol{v}\,d\omega = \int_S\boldsymbol{v}\cdot\boldsymbol{n}\,d\sigma.
[証]
(1) の形からみえるように,両辺において a,b,cに関する部分が各別に相等しいことを示せばよい.よって今
(2)

    \iint\limits_S c\,dx\,dy
  = \iiint\limits_K\frac{\partial c}{\partial z}\,dx\,dy\,dz
を証明する. まず簡単に閉曲面 Sz 軸に平行なる直線と二つよりも多くの交点を有しないと仮定して
\iiint\limits_K\frac{\partial c}{\partial z}\,dx\,dy\,dz
を考察する.曲面 Sxy 平面上への正射影を B とすれば,SB を底とする直筒面に包まれて,一つの閉曲線 L に沿って,その筒面に接するであろう.そうして SL によって上下の二部分 S_1,S_2 に分たれる.すなわち B の内部の点 (x,y) を通る z 軸への平行線が S に交わる点を P_1=(x,y,z_1),\,P_2=(x,y,z_2),\,z_1>z_2とすれば,P_1S_1 に,P_2S_2 に属する.さて z に関して積分すれば
(3)

  \iiint\limits_K\frac{\partial c}{\partial z}\,dx\,dy\,dz
 =\iint\limits_B\{c(x,y,z_1)-c(x,y,z_2)\}\,dx\,dy.
然るに,もしも K の外部を S の正の側として,面積分を取るならば
\begin{align}
  \iint\limits_B c(x,y,z_1)\,dx\,dy &= \iint\limits_{S_1}c(x,y,z)\,dx\,dy,\\
 -\iint\limits_B c(x,y,z_2)\,dx\,dy &= \iint\limits_{S_2}c(x,y,z)\,dx\,dy.
\end{align}
故に
(4)

  \iiint\limits_K\frac{\partial c}{\partial z}\,dx\,dy\,dz
 =\iint\limits_S c(x,y,z)\,dx\,dy
 =\iint\limits_S c\cdot\cos\gamma\,d\sigma.
\textstyle\iint_B は通常の意味の二次元積分であるが,\textstyle\iint_S において dx\,dy = \cos\gamma\,d\sigma とすれば,(3) をこのように形式上簡明に書き表すことができるのである.
(証終)
(2) は曲面 S の一部が B を底とする直筒面上にある場合にも成り立つ.たとえば L_1,L_2 を筒面の部分の境界とすれば,
\begin{align}
  \iiint\limits_K c_z\,dx\,dy\,dz
  &=\iint\limits_B c(x,y,z_1)\,dx\,dy - \iint\limits_B c(x,y,z_2)\,dx\,dy \\
  &=\iint\limits_S c(x,y,z)\,dx\,dy.
\end{align}
L_1L_2 との間にある部分に関しては \cos\gamma=0
\iint c\,dx\,dy = \iint c\cos\gamma\,d\sigma=0
だから,それでよいのである. 区域 K の境界面 Sz 軸への平行線と二つより多くの点で交わる場合にも,もしも K を前記のような区域に分割することができるならば,(1)はやはり成り立つ.例えば K を曲面 TK_1,K_2 に分割して,それらの境界面を S_1,S_2 とすれば,K_1,S_1K_2,S_2 とに関して,(1)は成り立つ.さて

  \iiint\limits_K=\iiint\limits_{K_1}+\iiint\limits_{K_2}
  =\iint\limits_{S_1}+\iint\limits_{S_2}=\iint\limits_S
S_1,S_2 に共通なる境界面 T に関しては,反対の側において二回面積分を取ることになるから,それらは相殺するのである.

K の境界が互いに離れた二つ以上の曲面であってもよい.K が図のように閉曲面 S_1 と,その内部に含まれる閉曲面 S_2 との間に挟まれる区域である場合が,その一例である.ただし,この場合,S_2 の内部は区域 K の外部だから,もしも閉曲面の外側を正の側として面積分をとるならば,K の境界 S に関する面積分は \textstyle\int_S=\int_{S_1}-\int_{S_2}になることに注意すべきである.

平面上においても Gauss の定理は成り立つ.それは上記と同様にして証明されるが,あるいはそれを (1) から導くために,c=0,\,\boldsymbol{v}=(a,b,0) と置いて閉区域 K を高さ 1 なる直筒,xy 平面上におけるその底を BB の周を閉曲線 C とする.然らば (1) から
\iint_B(a_x+b_y)\,dx\,dy=\int_C(a\cos\alpha+b\cos\beta)\,ds.
ここで \alpha,\betaC の外部へ引いた法線 nx 軸,y 軸の正の向きとの間の角で,dsC の微小弧である.もしも C の周を正の向き(内部を左に見る向き)に回るものとして,接線と x 軸の正の向きの間の角を \theta とすれば,
\begin{alignat}{3}
  dx &= ds\cos\theta=-&&ds\cos\beta, \\
  dy &= ds\,\sin\theta= &&ds\cos\alpha.
\end{alignat}
故に
\iint_B(a_x+b_y)\,dx\,dy = \int_Ca\,dy-b\,dx.
-b,a の代わりに二つの函数 \varphi,\psi を置けば
(5)

  \iint_B\left(
    \frac{\partial\psi}{\partial x}
   -\frac{\partial\varphi}{\partial y}
  \right)dx\,dy
  =\int_C\varphi\,dx+\psi\,dy.
これが平面における Gauss の定理である.
[例 1]
閉曲面 S(二つ以上でもよい)を境界とする区域 K の体積を V とすれば
\begin{align}V
  &=\iint\limits_S x\,dy\,dz=\iint\limits_S y\,dz\,dx=\iint\limits_S z\,dx\,dy\\
  &=\frac{1}{3}\int_S(x\cos\alpha+y\cos\beta+z\cos\gamma)\,d\sigma.
\end{align}
[証]
(1) において a=x, b=c=0 とすれば
\iiint\limits_K dx\,dy\,dz = \iint\limits_S x\,dy\,dz
  =\int\limits_S x\cos\alpha\,\,d\sigma.
その他も同様である. もしも座標の原点から S 上の点 P への動径を rP において K の外部への法線と r との間の角を (r,n) とするならば
x\cos\alpha+y\cos\beta+z\cos\gamma=r\cos(r,n),
従って
(6)
V=\frac{1}{3}\int_S r\cos(r,n)\,d\sigma.
K を一つの卵形として,原点 O がその内部にあるとするならば,\tfrac{1}{3}r\cos(r,n)\,d\sigma は,原点を頂点,境界面 S 上の微小面積 d\sigma を底とする微小錐体の体積であるから,(6) の幾何学的の意味は明瞭である.しかし \cos(r,n) の符号に注意すれば,任意の K に関して原点の位置に関係なく (6) は一般に成り立つのである.
[例 2]
原点 O から閉曲面 S の上の点 P への動径を rP において S の外側へ引いた単位法線を \boldsymbol{n} とすれば,OS の外にあるか,または内にあるかに従って
\int_S\frac{\cos(r,n)\,d\sigma}{r^2}=0,  または  =4\pi.
[証]
\boldsymbol{u}=\mathrm{grad}\,\frac{1}{r}
とすれば,\boldsymbol{u} の座標は

  \frac{\partial}{\partial x}\left(\frac{1}{r}\right)=\frac{-x}{r^3},\qquad
  \frac{\partial}{\partial y}\left(\frac{1}{r}\right)=\frac{-y}{r^3},\qquad
  \frac{\partial}{\partial z}\left(\frac{1}{r}\right)=\frac{-z}{r^3}.
OP の方向余弦を \lambda,\mu,\nu とすれば,これらはそれぞれ
\frac{-\lambda}{r^2},\quad\frac{-\mu}{r^2},\quad\frac{-\nu}{r^2}
に等しい.故に
\frac{\cos(r,n)}{r^2}=-\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{n}.
さて OS の外にあれば,S の内部 K において 1/r は連続であるから,によって

   \int_S\frac{\cos(r,n)\,d\sigma}{r^2}
 =-\int_S\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{n}\,d\sigma
 =-\int_K\mathrm{div}\,\boldsymbol{u}\,d\omega.
然るに \textstyle\mathrm{div}\,\boldsymbol{u}=\mathrm{div}\,\mathrm{grad}\,\frac{1}{r}=\Delta(\frac{1}{r})=0§21,[例 2]),故に
\int_S\frac{\cos(r,n)\,d\sigma}{r^2}=0.
次に OS の内にあれば,O を中心とする半径 \rho なる小球面を S_0 として,K から S_0 の内部を除いた残りを K^* とする.然らば OK^* の外にあるから,K^* に関しては上記の結果が成り立つ.従って

  \int_S\frac{\cos(r,n)\,d\sigma}{r^2}-\int_{S_0}\frac{\cos(r,n)\,d\sigma}{r^2}=0.
さて S_0 に関しては \cos(r,n)=1, r=\rho だから,第二の積分は

  \frac{1}{\rho^2}\int_{S_0}d\sigma=\frac{1}{\rho^2}\cdot4\pi\rho^2=4\pi.
故に
\int_S\frac{\cos(r,n)\,d\sigma}{r^2}=4\pi.
[注意] 
OS の上にあるときには,上記の球面 S_0S の内部にある部分 S_0' だけを取れば

  \int_S\frac{\cos(r,n)\,d\sigma}{r^2}=\frac{1}{\rho^2}\int_{S_0'}d\sigma.
これは \rho\to 0 のときにも成り立つが,極限において S_0' は半球面になるから,右辺は 2\pi に等しい.ただし,S は滑らかな曲面と仮定していうのである.
一般に点 O が曲面 S の上にないとし,PS の上を動くときOPO を中心とする半径 \rho の球面に交わる点を P' とすれば,P' は球面上の或る面積を掃過する.ただし,OP(の延長)が S の負の側から正の側に出るときには球面上の面積を正とし,反対の場合には負とする.このようにして計算された球面上の面積を S' とすれば,S' は半径 \rho の平方に比例するから,S'/\rho^2\rho に無関係である.これを O からみた曲面 S立体角という.今 O を原点とし,OP の長さを rOPP における S の法線の正の向きとの間の角を (r,n) とし,S の上の微小面積 d\sigma に対応する球面上の微小面積を d\sigma' とすれば
\frac{d\sigma'}{\rho^2}=\frac{\cos(r,n)\,d\sigma}{r^2}.
故に上記立体角は面積分
\int_S\frac{\cos(r,n)\,d\sigma}{r^2}
に等しい.

[例 2]では S が閉曲面であるとき,その外側を正の側として,立体角を計算したのである.

[例 3]
§95で述べた積分
V(a,b,c)=\int_K\frac{\mu(x,y,z)}{r}\,d\omega
に関して,
(7)

  \frac{\partial V}{\partial a}
 =\int_K\frac{x-a}{r^3}\mu\,d\omega
 =\int_K\frac{\partial\left(\frac{1}{r}\right)}{\partial a}\mu\,d\omega
を積分記号の下で,さらに a に関して微分して,\tfrac{\partial^2V}{\partial a^2} を求めることは,AK 内にあるときには,できなかった(348/9 頁).今本節で述べた方法によって,この問題の解決を試みる.
r=\sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2+(z-c)^2}
であったから,
(8)

   \frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial a}
  =\frac{\partial(-\frac{1}{r})}{\partial x}
  =\frac{x-a}{r^3},
従って (7) から
(9)

  \frac{\partial V}{\partial a}
  =\int_K\mu\frac{\partial(-\frac{1}{r})}{\partial x}\,dx\,dy\,dz.
よって x に関して部分積分を行えば,

   \frac{\partial V}{\partial a}
  =-\int_S\frac{\mu}{r}\,dy\,dz
   +\int_K\frac{1}{r}\cdot\frac{\partial\mu}{\partial x}\,dx\,dy\,dz.
ここで右辺の第一項は K の境界 S に関する積分である.従って (4) と同様に
\int_S\frac{\mu}{r}\,dydz=\int_S\frac{\mu}{r}\cos\alpha\,d\sigma
で,\alpha は曲面 S の外部への法線と x 軸との間の角,また d\sigmaS 上の微小面積である.よって
(10)

   \frac{\partial V}{\partial a}
  =-\int_S\frac{\mu}{r}\cos\alpha\,d\sigma
   +\int_K\frac{1}{r}\frac{\partial\mu}{\partial x}\,dx\,dy\,dz.
ここで右辺の第一の積分は境界面 S の上にわたるのだから,r\ne0.また第二の積分は \mu の代わりに \tfrac{\partial\mu}{\partial x} を取ったポテンシャルである.故に \tfrac{\partial V}{\partial a}a に関して積分記号下で微分してよい.そこで,再び (8) を用いて
(11)

   \frac{\partial^2V}{\partial a^2}
  = \int_S\mu\frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial x}\cos\alpha\,d\sigma
   -\int_K\frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial x}\cdot\frac{\partial\mu}{\partial x}\,d\omega.
これが求める公式である.これから,AK の内部にあるとき,\tfrac{\partial^2V}{\partial a^2}A に関して連続であることがわかる.AK の外部にあるとき連続性は既知である(もっとも (11)AK の外部であっても通用する). \tfrac{\partial^2V}{\partial b^2}, \tfrac{\partial^2V}{\partial c^2} に関しても同様である.
ついでに AK の内部にあるとして,有名なる Poisson の公式
\Delta V
  = \frac{\partial^2V}{\partial a^2}
   +\frac{\partial^2V}{\partial b^2}
   +\frac{\partial^2V}{\partial c^2}
  =-4\pi\mu(A)
を験証しよう. (11) から
\begin{align}\Delta V 
  =& \int_S\mu\left(
     \frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial x}\cos\alpha
    +\frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial y}\cos\beta
    +\frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial z}\cos\gamma
   \right)d\sigma \\
   &-\int_K\left(
     \frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial x}\cdot\frac{\partial\mu}{\partial x}
     +\frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial y}\cdot\frac{\partial\mu}{\partial y}
     +\frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial z}\cdot\frac{\partial\mu}{\partial z}
  \right)d\omega \\
  =&\int_S\mu\frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial n}\,d\sigma
   -\int_K\sum\frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial x}\cdot\frac{\partial\mu}{\partial x}\,d\omega.
\end{align}
ここで,\alpha, \beta, \gammaS の外部への法線と座標軸との間の角,\partial(\tfrac{1}{r})/\partial n はその法線上の微分商で,また \textstyle\sumx, y, z 上にわたるのである. さて,K 内で A を中心とする半径 \rho の小さな球を k として,それを K から除いた残りを K-k と書けば,AK-k の外にあるから,K-k に関しては (\Delta V)_{K-k}=0348/9 頁,[注意]),故に
(\Delta V)_K=(\Delta V)_k.
故に球 k の表面を S とすれば,
(12)

  (\Delta V)_K
  = \int_S\mu\frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial n}\,d\sigma
   -\int_k\sum\frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial x}\cdot\frac{\partial\mu}{\partial x}\,d\omega.
k の半径 \rho は任意であるが,K における \tfrac{\partial\mu}{\partial x}, \tfrac{\partial\mu}{\partial y}, \tfrac{\partial\mu}{\partial z} の絶対値の上限を m とすれば,

  \left|\frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial x}\right|
  =\left|\frac{a-x}{r^3}\right|\leqq\frac{1}{r^2}
から,

  \left|
    \int_k\sum\frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial x}
    \cdot\frac{\partial\mu}{\partial x}\,d\omega
  \right|
  < 3m\int_k\frac{d\omega}{r^2}=3m\cdot4\pi\rho.
故に \rho\to0 のとき (12) の右辺の第二の積分 \textstyle\int_k\to 0.また,その第一の積分は

  \int_S\mu\frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial n}\,d\sigma
  =\mu_0\int_S\frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial n}\,d\sigma.
\mu_0S\mu の平均値で,また 
  \textstyle -\int_S\partial(\frac{1}{r})/\partial n\cdot d\sigma
[例 2]の積分 \textstyle
   \int_S\frac{\cos(r,n)}{r^2}\,d\sigma
 =-\int_S\mathrm{grad}\,\frac{1}{r}\cdot\boldsymbol{n}\,d\sigma
 =4\pi
である.すなわち

  \lim_{\rho\to 0}\int_S\mu
     \frac{\partial(\frac{1}{r})}{\partial n}\,d\sigma
  =-4\pi\,\lim_{\rho\to 0}\mu_0=-4\pi\mu(A),
故に結局 (12) から,A\in Kのとき
\Delta V=-4\pi\mu(A).

  1. または Green の定理ともいう.

[編集] 103.Stokes の定理

Gauss の定理において
\text{div}\,\boldsymbol u=0
とするならば,
\int_S\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma=0
になる.今閉曲面 S を閉曲線 C で二つの部分 S_1,S_2 に分けるならば
\int_{S_1}\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma=-\int_{S_2}\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma.
ここの面積分では,いずれも S の外側を正とするのだから,S_1 における正の回転は境界線 C の上に互に反対なる方向を誘導する.今もし S_1(または S_2)の正負の側を変えるならば
(1)

  \int_{S_1}\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma
 =\int_{S_2}\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma.
になるが,その場合には S_1,S_2 における正の回転は C の上に同意の回転の向きを定めるであろう. よって C の上に一定の向きを決めておいて,その向きが C を境界(端)とする任意の曲面 S_1 の上において誘導する回転の向きが正になるように,曲面の正の側を定めるならば,\text{div}\,\boldsymbol u=0 なるとき
\int_{S_1}\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma
(1) によって S_1 の境界線 C のみに関係する値を有する. さて任意のベクトル \boldsymbol v=(a,b,c) を取って

  \boldsymbol u=\text{rot}\,\boldsymbol v=(c_y-b_x,a_z-c_x,b_x-a_y)
と置くならば(378 頁 (6)
\text{div}\,\boldsymbol u=0.
故に \boldsymbol n=(\cos\alpha,\cos\beta,\cos\gamma) とすれば
(2)

  \int_S \boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma
 =\int_S ((c_y-b_x)\cos\alpha+(a_z-c_x)\cos\beta+(b_x-a_y)\cos\gamma)\,d\sigma
S の境界線 C のみに関係する値を有する.次に示すように,実際この面積分を曲線 C に関する線積分に変形することができる. 今 S は媒介変数 u,v によって表わされるとし,S およびその境界 Cuv 平面における区域 S' とその境界 C' とに対応するとする.さて積分 (2) において変数を u,v に変換すれば(368 頁
(3)

 \int_{S'}[(c_y-b_x)(y_uz_v-y_vz_u)+(a_z-c_x)(z_ux_v-z_vx_u)+(b_x-a_y)(x_uy_v-x_vy_u)]\,du\,dv
を得る.積分記号の下で,a に関する項を集めて
\begin{align}
   a_z(z_ux_v-z_vx_u)-a_y(x_uy_v-x_vy_u)
  &=(a_xx_u+a_yy_u+a_zz_u)x_v-(a_xx_v+a_yy_v+a_zz_v)x_v\\
  &=a_ux_v-a_vx_u.
\end{align}
これの積分
\int_{S'}(a_ux_v-a_vx_u)\,du\,dv
uv 平面における Gauss の定理によって(382 頁の(5) において \varphi,\psiax_u,ax_v を代用する),線積分
\int_{C'}(ax_u\,du+ax_v\,dv)
に等しい.変数 x,y,z に返れば,それは
\int_C a\frac{dx}{ds}ds=\int_C a\,dx
に等しい.すなわち

  \int_{S'}(a_ux_v-a_vx_u)\,du\,dv=\int_C a\,dx.
同様にして (3) における b,c に関する項から
\begin{align}
  \int_{S'}(b_uy_v-b_vy_u)\,du\,dv&=\int_C b\,dx,\\
  \int_{S'}(c_uz_v-c_vz_u)\,du\,dv&=\int_C c\,dx.
\end{align}
よって結局積分 (2) が線積分に変形されて

  \iint\limits_S(c_y-b_z)\,dydz+(a_z-c_x)\,dzdx+(b_x-a_y)\,dxdy
(4)

  =\int_C a\,dx+b\,dy+c\,dz.
これを Stokes の定理という. 上記等式において,面積分および線積分を取るべき向きに関しては前に述べた.再言すれば,曲面 S の一側を正と決めて回転の正の向きを定めるならば,それは境界線 C の上における正の向きを誘導する.このようにして C の接線 tS の法線 n との向きを対応させるときは,(4) が明確に次のように書かれる.

 \iint\limits_S [(c_y-b_x)\cos(x,n)+(a_z-c_x)\cos(y,n)+(b_x-a_y)\cos(z,n)]\,d\sigma
(5)

  =\int_C[a\cos(x,t)+b\cos(y,t)+c\cos(z,t)]\,ds,
dsC の微小弧,d\sigmaS の微小面積で,それらは絶対的である.上記接線および法線上の単位ベクトルをそれぞれ \boldsymbol t,\boldsymbol n とすれば,ベクトル法の記号を用いて,Stokes の定理を次のように簡明に書くことができる.
(S)

  \int_S\text{rot}\,\boldsymbol v\cdot\boldsymbol n\,d\sigma
  =\int_C \boldsymbol v\cdot\boldsymbol t\,ds.

Stokes の定理において,曲面 S の境界が二つ以上の閉曲線であってもよい.ただし,各境界線上の向きは,S における回転の向きによって誘導される向きであることを要する.例えば S の境界が二つの閉曲線 C_1,C_2 であるときに,C_1,C_2 を曲面 S の上で滑らかな曲線 L で結び付けて二つの境界を合併して一つの境界にするならば,その境界では,L の上を互に反対の向きに二回通過するから,線積分には L の影響はない.面積分にはもちろん L の影響はないから,Stokes の定理が成り立つのである.

同じように,S が一つの滑らかな面でなくて,いくつかの滑らかな面の接合であっても,Stokes の定理は成り立つ.例えば S が滑らかな曲線 L において接する S_1,S_2 から成るとき,S_1,S_2 の境界は C の二つの部分 C_1,C_2 と共通の L とであるが,S_1C_1+L および S_2C_2+L とにおいて
\int_{C_1}+\int_L=\int_{S_1},\quad \int_{C_2}+\int_L=\int_{S_2}
である.ここで二つの \textstyle\int_L は反対の向きに取った積分だから,加えて
\int_{C_1}+\int_{C_2}=\int_{S_1}+\int_{S_2} すなわち \int_{C_{}}=\int_{S_{}}
を得る.
[注意] 
Stokes の定理で Cxy 平面上の閉曲線,S をその内部とすれば,nz 軸に平行,t は垂直だから,a,b の代りに \varphi,\psi と置けば (5) から
\begin{align} \iint\limits_S(\psi_x-\varphi_y)\,d\sigma
 &= \int_C[\varphi\cos(x,t)+\psi\cos(y,t)]\,ds\\
 &= \int_C\varphi\,dx+\psi\,dy.
\end{align}
これは382 頁で述べた平面上の Gauss の定理で,それを上記の証明に用いたが,あの定理は,Stokes の定理の特別の場合とみるときに,左辺で -\varphi_y が負号を持っている意味が明瞭である.
[附記] 
Gauss の定理,Stokes の定理によって \text{div}\,\boldsymbol u,\text{rot}\,\boldsymbol u の応用上の意味が簡明に説明される.今圧縮されない一定の密度の流体が定常の運動をすると想像して,\boldsymbol u を点 (x,y,z) における速度とする.然らば Gauss の定理における面積分 \textstyle\int_S\boldsymbol u\cdot\boldsymbol n\,d\sigma は単位時間に閉曲面 S を通過する流出量(符号を入れていう)で,圧縮されない流体では,それは区域 K における湧出量(同上)に等しいはずである.この湧出量は Gauss の定理によって \textstyle\int_K\text{div}\,\boldsymbol u\,d\omega=(\text{div}\,\boldsymbol u)_0\int_K\,d\omega に等しいから,(\text{div}\,\boldsymbol u)_0 は単位体積に関する平均の湧出量である.もしも曲面 S が一点 P に収束するならば,平均値 (\text{div}\,\boldsymbol u)_0P における \text{div}\,\boldsymbol u に収束する.故に \text{div}\,\boldsymbol uP における湧出量である. また Stokes の定理における線積分 \textstyle\int_C\boldsymbol u\cdot\boldsymbol t\,ds は単位時間における曲線 C に沿っての循環(circulation)で,C が曲面 S の上の一点 P に収束するとき,P における法線上へ \text{rot}\,\boldsymbol u の正射影が,面積に対する循環の率である.それの最大なる値を有する向きがすなわち \text{rot}\,\boldsymbol u の向きで,その最大の値が \text{rot}\,\boldsymbol u の大きさである.最も簡単な場合として流体が z 軸の周りに角速度 \omega をもって回転するとすれば,r,\thetaxy 平面上の極座標とするとき
\begin{align}
  &\boldsymbol u=(-r\omega\sin\theta,r\omega\cos\theta,0)=(-\omega y,\omega x,0),\\
  &\text{rot}\,\boldsymbol u=(0,0,2\omega).
\end{align}
z 軸の代りに方向余弦が l,m,n なる軸を取れば
\begin{align}
  &\boldsymbol u=\omega(mz-ny,nx-lz,ly-mx),\\
  &\text{rot}\,\boldsymbol u=2\omega(l,m,n).
\end{align}

[編集] 104.完全微分の条件

xy 平面の領域 K において連続的微分可能なる二つの函数 \varphi(x,y),\psi(x,y) が与えられるとき,微分式
(1)
\varphi(x,y)dx+\psi(x,y)dy
が或る函数 F(x,y) の全微分であるとする(§22).すなわち
dF=\varphi\,dx+\psi\,dy,
従って
F_x=\varphi_y,\quad F_y=\psi
とする.然らば仮定によって F_{xy}=\varphi_y, F_{yx}=\psi_x,従って(定理 27
(1)
\varphi_y=\psi_x.
(2)(1) が完全微分であるための必要条件であるが,もしも領域 K が単連結(212 頁)ならば,これが同時に十分条件で,すなわち次の定理が成り立つ.
定理 80.
xy 平面上の単連結の領域 K において \varphi_y,\psi_x が連続で,\varphi_y=\psi_x ならば
F_x=\varphi,\quad F_y=\psi
なる函数 F(x,y)K において存在する.
[証]
K の内で任意の閉曲線 C を取れば,単連結の仮定によって,C の内部 [C]K に属する.故に Gauss の定理によって

  \int_C\varphi\,dx+\psi\,dy=\iint\limits_{[C]}(\psi_x-\varphi_y)\,dxdy=0.
換言すれば,K の内で,ひとつの定点 (x_0,y_0) と任意の点 (x,y) とを結ぶ任意の曲線に関する線積分

  F(x,y)=\int_{(x_0,y_0)}^{(x,y)}\varphi\,dx+\psi\,dy
によって,K の内で (x,y) の一つの函数 F(x,y) が確定する.すなわち,この線積分は (x_0,y_0)(x,y) とを結ぶ積分の路に関係しないで,上端 (x,y) のみによって確定する値を有するのである.さてこの F(x,y) が定理で要求される函数である.実際上記のように

  F(x+h,y)-F(x,y)=\int_{(x,y)}^{(x+h,y)}\varphi\,dx+\psi\,dy
(x,y)(x+h,y) とを結ぶ線分上の線積分としてよいだが,この線分上では dy=0 だから

  F(x+h,y)-F(x,y)=\int_x^{x+h}\varphi(x,y)\,dx=h\varphi(x+\theta h,y),
  \quad (0<\theta<1).
故に \varphi の連続性によって

  \frac{\partial F}{\partial x}=\varphi(x,y)
を得る.同様に

  \frac{\partial F}{\partial y}=\psi(x,y).
[例 1]
\varphi=6x^2+4xy+2,\quad \psi=2x^2-3y^2+5.
\varphi_y=\psi_x=4x で完全微分の条件は全平面において成り立つ.よって (0,0) を起点として,軸に平行なる折線を積分路として(図を参照)
\begin{align} F(x,y)
  &=\int_0^x(6x^2+2)\,dx+\int_0^y(2x^2-3y^2+5)\,dy\\
  &=2x^3+2x+2x^2y-y^3+5y.
\end{align}
[例 2]
\varphi=\frac{-x}{x^2+y^2},\quad\frac{x}{x^2+y^2}.
原点 (0,0) を除けば
\varphi_y=\psi_x=\frac{y^2-x^2}{(x^2+y^2)^2}
で,完全微分の条件は満たされる.よって単連結の区域を得るために,x 軸の負の部分に鋏を入れて,それを K の境界とする.さて O を中心として半径 a の円を画いて,図に示すように A を起点として円弧 AB と線分 BP とをつないだ積分路を取って

  F(x,y)=\int_{AB}\frac{-y\,dx+x\,dy}{x^2+y^2}+\int_{BP}\frac{-y\,dx+x\,dy}{x^2+y^2}
と置けば,AB の上では

 \begin{vmatrix} x& y\\ dx& dy\end{vmatrix}
 = a\begin{vmatrix}
     \quad\cos\theta& \sin\theta\\ -\sin\theta& \cos\theta
 \end{vmatrix}\,d\theta = a^2\,d\theta
だから,AB の弧度を \alpha として
\int_{AB}=\int_0^\alpha\,d\theta=\alpha.
また BP の上では xdy-ydx=0 だから,第二の積分は 0 に等しい.故に
F(x,y)=\alpha,\quad(-\pi<\alpha<\pi).
すなわち
F(x,y)=\mathrm{Arc\,}\tan\frac{y}x+k\pi,
ただし
x\leqq 0 ならば k=0,
x<0,y>0 ならば k=1,
x<0,y<0 ならば k=-1.
このように k を決めれば,F(x,y)K において連続になるのである.x 軸の負の部分において,F(x,y) は不連続である.
三次元以上でも同様の定理が成り立つ.今 xyz 空間の領域 K において三つの函数 \varphi(x,y,z),\psi(x,y,z),\chi(x,y,z) が連続的微分可能であるとする.然らば
dF=\varphi\,dx+\psi\,dy+\chi\,dz
が完全微分ならば,
(3)
F_x=\varphi,\quad F_y=\psi,\quad F_z=\chi,
従って

  F_{xy}=\varphi_y=\psi_x,\quad F_{xz}=\varphi_z=\chi_x,\quad F_{yz}=\psi_z=\chi_y
なることを要する.

もしも K が単連結ならば,この条件は十分である.すなわち K において \varphi,\psi,\chi が連続的微分可能で,かつ

(4)
\chi_y=\psi_z,\quad\varphi_z=\chi_x,\quad \psi_x=\varphi_y
ならば
\varphi\,dx+\psi\,dy+\chi\,dz
は完全微分である.(すなわち (3) を満足させる函数 FK において存在する.)

約言すれば,\boldsymbol u=(\varphi,\psi,\chi) をベクトルとするとき

\text{rot}\,\boldsymbol u=0 ならば \boldsymbol u=\text{grad}\,F.

領域 K が単連結とは,ここでは K 内の任意の閉曲線が K 内で連続的に変動して K 内の一点に収束しうることをいう.たとえば球の内部,または球の内部からいくつかの小さな球をくり抜いた残りの領域などは単連結であるが,輪環体(torusの内部は単連結でない.

さて証明であるが,こんども K 内の任意の閉曲線 C に関して
(5)

  \int_C \varphi\,dx+\psi\,dy+\chi\,dz=0
を示せばよい.そこでStokes の定理を引用して,K 内で C を境界(端)とする曲面を S とするならば
(6)

  \int \varphi\,dx+\psi\,dy+\chi\,dz
 =\iint_S(\chi_y-\psi_z)\,dydz+(\varphi_z-\chi_x)\,dzdx+(\psi_x-\varphi_y)\,dxdy
から,(4) によって (5) を得る.
これは簡単であるが,我々は Stokes の定理を応用したから,閉曲線 C を通って滑らかな曲面 SK 内に作られることが保証されるときに限って,上記の証明は合法である.その保証のために,K を単連結の領域に限定したのである.単連結の仮定によって,閉曲線 CK 内で連続的に変動して一点 P に収束するとき,C が一つの滑らかな曲面 S を描いて,その S に関して Stokes の定理が適用されようというのであるが,念のために次のような考察を試みる.
連続性の仮定を利用すれば,(5) における積分路 C をねじれた閉折線 A_1,A_2,\ldots,A_n として十分である(§56,(5º)).また C が点 P に収束するとき,点 A_1,A_2,\ldots,A_nK 内で曲線を描くが,それらの曲線の上に分点を密に取って,それを結んで K 内に折線を作る.また隣り合った折線上の分点を結んで,折れ線 A_1,A_2,\ldots,A_n を辺端として,三角形の連鎖からなる‘折面’(多面体の表面の一部分のような面,polyhedral surface)を作り,それを S とする.すべての分点を十分密に取れば,これらの個々の三角形が全く K 内に止まるであろう.この面 S は有限個の滑らかな面(三角形)の接合だから,Stokes の定理が成り立つのである. K が直方体(稜は座標軸に平行)ならば,条件 (4) の下で函数 F390 頁[例 1]のようにして積分法によって求められる.すなわち K 内で P_0=(a_0,b_0,c_0) を定点,P=(a,b,c) を任意の点として,P_0P とを結ぶ積分路 C を初めに (a_0,b_0,c_0) から x 軸に平行に (a,b_0,c_0) まで,次に (a,b_0,c_0) から y 軸に平行に (a,b,c_0) まで,最後に (a,b,c_0) から z 軸に平行に (a,b,c) までの三つの積分をつないだ折線とすれば,k を任意の定数として
\begin{align} F(a,b,c)
 &= \int_C \varphi\,dx+\psi\,dy+\chi\,dz + k\\
 &= \int_{a_0}^a \varphi(x,b_0,c_0)\,dx
   +\int_{b_0}^b \psi(a,y,c_0)\,dy +\int_{c_0}^c \chi(a,b,z)\,dz + k.
\end{align}
実際,
\begin{align}
  F_a &= \varphi(a,b_0,c_0)
    +\int_{b_0}^b \psi_x(a,y,c_0)\,dy +\int_{c_0}^c \chi_x(a,b,z)\,dz\\
  &= \varphi(a,b_0,c_0)
    +\int_{b_0}^b \varphi_y(a,y,c_0)\,dy +\int_{c_0}^c \varphi_z(a,b,z)\,dz\\
  &= \varphi(a,b_0,c_0)
    +\varphi(a,b,c_0)-\varphi(a,b_0,c_0)+\varphi(a,b,c)-\varphi(a,b,c_0)\\
  &= \varphi(a,b,c).
\end{align}
同様に
F_b=\psi(a,b,c),\qquad F_c=\chi(a,b,c).

[編集] 練習問題(8)

(1)
半径 a なる二つの直円筒の軸が交わって角 \omega をなすとき,両方に共通なる体積を求めること.
[解]
\tfrac{16}3a^3/\sin\omega.
(2)
放物面 \textstyle
  z=\frac{x^2}{2a}+\frac{y^2}{2b}\ (a>0, b>0)
が球面 x^2+y^2+z^2=2Rz\ (r>0) から截り取る面積を求めること.

ただし,\mathrm{Max}(a,b)\leqq R とする.

[解]
4\pi R\sqrt{ab}. 374 頁,[例]参照
(3)
問題 (2) の放物面において,
[1º]
二つの等傾斜線(xy に対する)の間の面積,
[2º]
直楕円筒 \tfrac{x^2}{a^2}+\tfrac{y^2}{b^2}=1 の内部にある面積

を求めること.

[解]
\tfrac23\pi ab(\sec^3\gamma_1-\sec^3\gamma_2),\quad \tfrac23\pi ab(\sqrt8-1).
(4)
n 次元空間において

  |x_1|^\alpha+|x_2|^\alpha+\cdots+|x_n|^\alpha\leqq r^\alpha\quad (\alpha>0)
なる区域の体積は

  V=\frac{(2r)^2\mathit\Gamma(\frac{1}\alpha)^n}{n\mathit\Gamma(\frac{n}\alpha)}.

特に \alpha=2 とすれば,n 次元の球の体積として次の値を得る:


  V=\frac{(r\sqrt\pi)^2}{\mathit\Gamma(\frac{n}2+1)}=\begin{cases}
    r^n\dfrac{\pi^\frac{n}2 2^\frac{n}2}{2\cdot4\cdot6\cdot\cdot n},\\[10pt]
    r^n\dfrac{\pi^\frac{n-1}2 2^\frac{n+1}2}{1\cdot3\cdot5\cdot\cdot n}.
\end{cases} n は偶数)
n は奇数)
[解]
358 頁,[例 2]から導かれる.ついでに \alpha\to 0 のとき V\to 0,また \alpha\to\infty のとき V\to(2r)^n になることをみきわめるとよい.
(5)
曲面 S が媒介変数 u,v によって x=x(u,v),y=y(u,v),z=z(u,v) の形に表わされるとき,
 \boldsymbol r=(x,y,z), \boldsymbol r_u=(x_u,y_u,z_u), \boldsymbol r_v=(x_v,y_v,z_v)
とすれば,原点からみた S の立体角は

  \iint_K\frac{\boldsymbol r\cdot(\boldsymbol r_u\times\boldsymbol r_v)}{|\boldsymbol r|^3}\,du\,dv
である.ただし Ku,v 平面上 (u,v) の変動区域である.
(6)
適当なる一般的仮定の下において,面積分

  \int_S P\,dy\,dz+Q\,dz\,dx+R\,dx\,dy
S の境界線 C のみに関係するために必要かつ十分なる条件は

   \frac{\partial P}{\partial x}
  +\frac{\partial Q}{\partial y}
  +\frac{\partial R}{\partial z}=0.
[解]
C を通る任意の閉曲面に関して面積分が 0 になることに帰するから,条件が十分なることは Gauss の定理から出る.条件が必要なることは背理法による.
(7)
適当なる一般的仮定の下において,\text{div}\,\boldsymbol u=0 ならば \boldsymbol u=\text{rot}\,\boldsymbol v
[解]

  \boldsymbol u=(a,b,c);\;\boldsymbol v=(\varphi,\psi,\chi)
とおいて

  \frac{\partial\chi}{\partial y}-\frac{\partial\psi}{\partial z}=a,\quad
  \frac{\partial\varphi}{\partial z}-\frac{\partial\chi}{\partial x}=b,\quad
  \frac{\partial\psi}{\partial x}-\frac{\partial\varphi}{\partial y}=c
なる \varphi,\psi,\chi の存在を示すのである.\chi=0 として \varphi,\psi が積分によって求められる.(\boldsymbol v が一つの解ならば \boldsymbol v+\text{grad}\,f も解である.)

この定理の逆は既知(§101)である.

(8)
区域 K において定義せられた函数 f(P) に関し,広義積分
\int_K|f(P)|\,d\omega
が存在するとする(§94 の定義参照).然らば K に収束する任意の区域列(341 頁,定義参照)\{K_n\} に関し

  \lim_{n\to\infty}\int_{K_n}f(P)\,d\omega
  =\int_K f^+(P)\,d\omega -\int_K f^-(P)\,d\omega.
[解]
仮定によって \textstyle\int_K|f|\,d\omega は収束するから,任意の閉区域 H\subset K に関し \textstyle\int_H|f|\,d\omega は有界である(§94).従って f^+(P)\leqq |f(P)|,f^-(P)\leqq |f(P)| によって,\textstyle\int_H f^+\,d\omega,\int_H f^-\,d\omega は有界,故に \textstyle\int_K f^+\,d\omega,\int_K f^-\,d\omega は収束する.従って

  \int_{K_n}f\,d\omega=\int_{K_n} f^+\,d\omega-\int_{K_n} f^-\,d\omega
n\to\infty のとき収束して(収束する二つの数列の差!),標記の等式を得る.
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