解析概論/第7章/陰伏函数の極値

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[編集] 89.陰伏函数の極値

陰伏函数の極値の最も簡単な一例として,次の問題を考察する:

[問題]
変数 x,y
(1)
\varphi(x,y)=0
なる関係式で縛られているとき,f(x,y) の極値の必要条件を求めること.

今点 P_0=(x_0,y_0) において f(x_0,y_0)=c_0 が極値であると仮定する.もしも P_0曲線 (1) の特異点でないならば,P_0 において \varphi_x または \varphi_y0 でない.例えば \varphi_y(P_0)\ne 0 とすれば,P_0 の近傍で,(1)

y=\mathit\Phi(x)

のような形で表わされる.それを f(x,y) へ持ち込んで

(2)
f(x,y)=f(x,\mathit\Phi(x))=F(x)

とすれば,問題F(x) の極値を求めることに帰する.その必要条件として

\frac{dF}{dx}=0

を得るが,与えられた函数 f,\varphi をもってそれを書き表わすことができる.すなわち (2) から

(3)
\frac{df}{dx}=f_x+f_y\frac{dy}{dx}=0.

然るに (1) から

(4)
\varphi_x+\varphi_y\frac{dy}{dx}=0.

従って (3)(4) から

(5)
\frac{f_x}{\varphi_x}=\frac{f_y}{\varphi_y}

を得る.(x_0,y_0)(1)(5) とを満足せしめねばならない.これが極値の必要条件である.

f(x,y) の等位線の族 f(x,y)=cxy 平面の一部分が覆われているとして,点 P が曲線 \varphi(x,y)=0 の上を動くと考える.然らば P の一つの位置における f(P) の値はすなわち P を通る等位線 f(x,y)=c の位を示す数 c である.さて,もしも \varphi=0 の上の点 P_0 において f(x,y) が極値を取るならば,(5) によって,\varphi=0P_0 において等位線 f(x,y)=c_0 に接する.(ただし P_0\varphi=0 の特異点ではないと仮定してある.特異点においては \varphi_x=\varphi_y=0 だから,(5) は当然成り立つ).そうしてその等位線 f(x,y)=c_0 の位を示す数 c_0 がすなわち f(x,y) の極値である.

しかし,(5) は極値の必要条件に過ぎないから,f=c_0\varphi=0 とが接しても,c_0f の極値であると断言することはできない.

[例]
定点 A=(a,b) から曲線 \varphi(x,y) への距離の極大極小を求めること. 距離の代りに,その平方を取って
f(x,y)=(x-a)^2+(y-b)^2
とすれば,極値の必要条件として
\frac{\varphi_x}{x-a}=\frac{\varphi_y}{y-b}
を得る.曲線上の点 P がこの方程式を満足せしめるならば,P は曲線上の特異点(\varphi_x=\varphi_y=0)であるか,または AP が曲線への法線である.よって極大または極小距離の候補者として,A からの法線と,A と特異点とを結ぶ線分を取るべきである. しかし,実際極値を決定するには,めんどうな計算を要する(例えば点 (0,1) から曲線 y^2=x^3 への最短距離を求めてみるとよい).

一般に n 個の変数 x_1,x_2\ldots,x_n の函数

f(x_1,x_2,\ldots,x_n)

(6)
\varphi^{(i)}(x_1,x_2,\ldots,x_n)=0
(i=1,2,\ldots,p;\;p<n)

なる条件の下で,点 P^0=(x_1^0,x_2^0,\ldots,x_n^0) において極値を取るとする. もしも P^0 の近傍で,\varphi^{(1)},\varphi^{(2)},\ldots,\varphi^{(p)} が互に独立で,例えば

(7)
\frac{D(\varphi^{(1)},\varphi^{(2)},\ldots,\varphi^{(p)})}{D(x_1,x_2\ldots,x_p}\ne 0

ならば,x_1,x_2,\ldots,x_p はその他の x_\rho\,(\rho=p+1,\ldots,n) の函数になり,従って fx_\rho のみの函数になる.よって

f(x_1,x_2,\ldots,x_n)=F(x_{p+1},\ldots,x_n)

と書くならば,極値の必要条件は

(8)
\frac{\partial F}{\partial x_\rho}=0\qquad(\rho=p+1,\ldots,n)

であるが,これらを f および \varphi^{(i)} の偏微分商 f_\nu=\tfrac{\partial f}{\partial x_\nu},\varphi_\nu=\tfrac{\partial \varphi^{(i)}}{\partial x_\nu} を用いて書き表わすことができる.まず (8) から

(9)
f_\rho+\sum_{\nu=1}^p f_\nu\frac{\partial x_\nu}{\partial x_\rho}=0,\quad(p<\rho\leqq n).

さて \tfrac{\partial x_\nu}{\partial x_\rho}(6) から求められる(定理 73).すなわち

(10)
\varphi^{(i)}_\rho+\sum_{\nu=1}^p \varphi^{(i)}_\nu\frac{\partial x_\nu}{\partial x_\rho}=0.

(9)(10) から \tfrac{\partial x_\nu}{\partial x_\rho} を消去すれば,

(11)
\frac{D(f,\varphi^{(1)},\varphi^{(2)},\ldots,\varphi^{(p)})}{D(x_1,x_2,\ldots,x_p,x_\rho)}=0,
(\rho=p+1,\ldots,n).

すなわち P^0=(x_1^0,x_2^0,\ldots,x_n^0) は条件 (7) の下において,(6)(11) と合わせて n 個の方程式を満足せしめねばならない.これが極値の必要条件である.

上記の考察においては陰伏函数の理論を応用したが,それよりも直截的に,かつすべての変数に関して対称的に,次のように考えることができる.

前のように P^0 を極値点とするならば,P^0 において

d\varphi^{(1)}=0,d\varphi^{(2)},\ldots,d\varphi^{(p)}=0

なるとき,

df=0

でなければならない。すなわち(x_i に関する微分を添字 i で示して)

(12)
f_1dx_1+f_2dx_2+\cdots+f_ndx_n=0

(13)
\varphi^{(i)}_1dx_1+\varphi^{(i)}_2dx_2+\cdots+\varphi^{(i)}_ndx_n=0\qquad (i=1,2,\ldots,p)

からの帰結である.従って一次方程式の理論によって (12)(13) の一次結合である.故に

(14)
f_\nu=\lambda_1\varphi^{(1)}_\nu+\lambda_2\varphi^{(2)}_\nu+\cdots+\lambda_p\varphi^{(p)}_\nu,\quad(\nu=1,2,\ldots,n)

なる乗数 \lambda_1,\lambda_2,\ldots,\lambda_p が存在する.すなわち x_1^0,x_2^0,\ldots,x_n^0\lambda_1,\lambda_2,\ldots,\lambda_p とが (6)(14) と合わせて n+p 個の方程式を満足せしめねばならない.ここでは乗数 (\lambda_i)(x_\nu^0) を求めるための補助の未知数である(Lagrange の乗数法).すなわち (14) から \lambda_i を消去すれば仮定 (7) の下において (11) を得る.

本節の初めに述べた場合には,n=2,p=1 で,(14)
f_x=\lambda\varphi_x,\quad f_y=\lambda\varphi_y
である.すなわち \lambda(5) の両辺における相等しい比の値である.
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