解析概論/第7章/解析函数への応用
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[編集] 85.解析函数への応用
陰伏函数の解析性を考察することはもちろん重要であるが,ここでは最も簡単な場合において,しかも §82 の定理との連絡を主眼として,若干の解説を試みる.
定理 76.
複素数平面(
平面)の或る領域
において
(1)

内の一点
において
とする.もしも
において
ならば,
の近傍で正則なる逆函数
が確定する.[証]
複素変数
の実部と虚部とを分けて

(2)




だから,
において

の近傍で確定する.すなわち複素変数
が
の函数
として与えられる.それが解析的(正則)であることをみるには,
の微分可能性を示せばよいが,それは明白である.すなわち,

の近傍では確定であるのだから,

(証終)
なお一般に
を複素変数
の函数として,その実部と虚部とを分けて

とする.今
として,
は
が
の近傍にあるとき
に関して正則,また
が
の近傍にあるとき
に関して正則とする.然らば
(3)

(4)

これが
の意味である. さて上記のように

とするとき,もしも
ならば,
の近傍で,方程式
によって,
が
の陰伏函数として定義されて,しかも
は
の近傍で正則な解析函数である.すなわち言葉の上では定理 71 と同じようだが,実数に引き直していえば,条件はまず
から
(5)

次に
から,
において

故に定理 73 によって
の近傍で (5) を満足せしめる
の函数として
が確定する. 従って
が
の函数として確定するのであるが,それの解析性すなわち微分可能性を考察するために299 頁の計算を引用する.すなわち

(3) を用いて書き直せば
(6)

(7)


すなわち

従って

故に
は
の函数として解析的(正則)である.
§82 の定理から導かれた上記の結果は局所的であるが,解析性を利用すれば,いくぶん精密な結論が得られる.
(1º)
定理 76 において簡単のために
に
を代用すれば,
を用いて,
の近傍で
(8)

の近傍で逆函数が正則であることが知られているから,
(9)

の巾級数になるから,巾級数の一意性によって係数
が逐次に計算される(未定係数法).そのようにして得られる巾級数 (9) は
の近傍で収束することはもちろん既知であるが,少なくとも (9) が収束する限り,逆函数が一意的である(解析的延長の原則).(2º)
上記逆函数が確定である
平面の領域内において,原点を中心とする円を
とすれば,(9) における係数
が見やすい形に書き表される.今
を
内の点とし,また
として
(10)

内で
において一次の極を有するだけだから,
は
における留数に等しく,従って


すなわち
が
の巾級数に展開される.すなわち (9) において
(11)



における
の留数である.従って
(12)
![b_n=\frac{1}{n!}\left[
\frac{d^{n-1}}{dz^{n-1}}\left(\frac{z}{f(z)}\right)^n
\right]_{z=0}.](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/6/6/4/664d97a6c1bc876c0347093b2e56e3ec.png)
の値である[Lagrange の展開].応用上しばしば遭遇するように,
と
との関係が
の形で与えられる場合に順応するために,書き換えるならば,
として(もちろん
は
の近傍で正則とする)
平面において,原点を中心として原点以外
の零点を含まない円
の周上で
の最小値を
とすれば,
なるとき,
は
内にただ一つの根を有する[* 2].すなわち
平面の円
の内では,逆函数
が確定だから,(9) の収束変形は少くとも
である. 一例として天文学で出てくる Kepler の方程式
を取る.
ならば (14) によって
今
は実数,
とすれば,
は
を中心として半径
は
および
を超えない円
において正則であるが,その円周上で
さて
の最大値を求めるならば,それは
なるときの
である.Stirltjes の計算によれば,その値は
これから (15) の収束半径の限界が得られる.
と
との関係が
(13)


は
の近傍で正則とする)
(14)

[附記]
展開 (9) の収束半径の一つの限界が,次のようにして得られる.今
平面において,原点を中心として原点以外
の零点を含まない円
の周上で
の最小値を
とすれば,
なるとき,
は
内にただ一つの根を有する[* 2].すなわち
平面の円
の内では,逆函数
が確定だから,(9) の収束変形は少くとも
である. 一例として天文学で出てくる Kepler の方程式

ならば (14) によって
(15)

は実数,
とすれば,

を中心として半径
は
および
を超えない円
において正則であるが,その円周上で

の最大値を求めるならば,それは
(16)
なるときの 

(3º)
なお一般に
において
なるとき




の近傍で

の近傍で

は
の巾級数として表わされる.すなわち
は
の函数として
の近傍で多意(
意)である.
を掛けて
,従って
とすれば,
.これから一様収束性が得られる.ただし,仮定