解析概論/第7章/写像
[編集] 84.写像
前節 (1) のように
系
次元空間の或る領域
において連続的微分可能なる
個の函数

が与えられているとすれば,
の点
に
系空間の点
が対応する.約言すれば,点
が点
の‘函数’である.よって (1) を

と略記すればわかりよいであろう.このような対応関係を写像といい,
を
の像,逆に
を
の原像という.上記のように函数
が連続ならば,
が連続的に変動するとき,点
の像なる点
も連続的に変動するから,写像 (2) を連続的の写像という. 写像 (2) において,各点
の像
は確定であるが,逆に一点
が相異なる点
に対応することが可能である.すなわち
の原像は必らずしも一意でない.もしも
の原像
が一意に確定するならば,すなわち
と
とが一対一に対応する(1-1 対応をする)ならば,(2) の逆写像

が可能である.さて函数行列式
が
において
でない(
)ならば,
の近傍で (2) が一対一の写像である.それを見るために,簡単のため
として,写像

を考察する.上記のように,一般的に
と書いて,
平面から
平面への写像 (4) を

と略記する.さて
に
が対応して,かつ
とする.そのとき
平面で
を含む十分小さい領域
と,
平面で
を含む領域
とを取って,
の任意の点の原像は
内では一つより多くはないようにする.それは可能である. 実際,さもなければ,
平面において,
に収束する点列
を適当に取れば,
の相異なる原像
があって,
となる.然らば平均値の定理によって,線分
上の点
を適当に取れば,

然るに
であるから,
が共に
であることはない.故に

ここで,極限
へ行けば,
だから
.これは仮定に反する.
さて定理 74 によれば,
内で
を含む十分小なる領域
を取れば,
の点
の原像は
内では一意に確定するから,(5) の逆写像
が
において確定する.今
平面の領域
の点
の
内にある現像
の集合を
とすれば,
は
平面において
を含む領域である.――実際,
の任意の点
が
に対応するならば,
において
に十分近く任意の点
を取れば,写像
の連続性によって
の像
は
に属するから,
は集合
に属する.これは
の各点
が内点であることを意味するから,
は開集合である.
が連結されていることは,
の任意の二点
に対応する
を領域
で連結する曲線(Jordan 曲線,例えば折線)に,
において
を結ぶ曲線が対応することからわかる.故に
は連結された開集合すなわち領域である.
さて
内に
を含みその閉包が
に含まれる領域を任意に取って,それを
に代用すれば,上記と同様に,その
に対応する領域
の点と領域
の点とが一対一連続に対応するが,今度は
の閉包は,いずれも一対一連続に写像される領域内にある.このとき,
の境界点には
の境界点が一対一連続に対応することは写像
の連続性からの簡単なる帰結である.故に境界をも入れていえば
内の閉域
と
内の閉域
との間に一対一の連続的写像ができて,内点には内点が,境界点には境界点が対応する.特に
の境界が Jordan 閉曲線ならば,
の境界も同様である.
において常に
であっても,
の全局において写像が一対一であることは保証されない.例えば

である),然らば

ならば
であるが,
と
とには同じ
が対応するから,
が
と同時に
を含むときには一対一対応はない.一般に
において正則な解析函数
の実部と虚部とを
とすれば,Cauchy-Riemann の微分方程式(203 頁)によって

なるところでは,これは
でないけれども,
の逆函数は必らずしも一意でない.上記考察は局所的(local,im Kleine)であったけれども,それを応用して若干大局的(grobal,Grossen)の結論を導くことができる.
によって
平面の領域
と
平面の領域
との間に一対一対応が成り立つと仮定する.然らば逆写像
が確定するが,
が連続ならば
も連続である(下記[注意]および295 頁参照).この場合にも,
内の閉域と
内の閉域とは対応して,内点は内点に,境界点は境界点に対応することが,上記と同様にして証明される.
次元の領域が
次元の領域に対応する(Brouwer).それは明白のようでも,証明は意外にむずかしい.今 (1º) ではそれを仮定した.特に,
が領域ならば,
が領域であることの証明を省略したのである.
が
にならないとする.然らば有界なる閉域
を有限個の小閉域に分割して,各小区域において一対一対応を成立せしめることができる.――実際
内の任意の点
において
だから,
の近傍で局所的には一対一対応が成り立つ。今
を中心とする半径
の円内では一対一対応が成り立つとして,その半径の最大値を
とすれば,
は
に関して連続であることは定理 14 のようにして証明される: すなわち
.よって閉区域
における
の最小値を
とすれば
.然らば
を辺長が
より小なる方眼に分割するとき,各方眼において一対一対応が成り立つであろう.
において一対一対応が成り立つときには(上記[注意]参照).
内のいかなる小領域においても常に
なることはありえない(定理 75).しかし,例えば
内の孤立する点またはある線上において
なることは可能である.
とすれば,全平面において一対一対応が成り立つが,

軸上では
.
を取って
とすれば,全平面で一対一対応が成り立つが,

において
.
と
との間の全局的一対一対応の場合,
において
は
になりえても,
が連結されている限り,
が
内で反対の符号を取ることはできない(上記の例参照).それをみるために,函数行列式
の符号の幾何学的の意味を考察する.
内の一点
から出る曲線
と,それに対応して
の点
から出る曲線
との接線上において
従って 
は
および
における
の勾配である.
が変動して
が増大するとき,
に従って
は増大または減少する.
故に
および
において互いに対応する回転の向きは
に従って,同意または反対である.
において
が反対の符号の値を取るとするならば,中間値の定理によって
は
において
にもなるが,
なる点は
において,いかなる小領域をも満たし得ないのだから,任意の
に関して
なる点
が存在する.今
上の点
において
に垂直に
を引いて,
において,それらに対応する点
および曲線
が,次の図のように配置されるとする.ファイル:図然らば
が
の上を動くとき,仮定
によれば,
に対応する
は
の上を
から
への向きに動かねばならないが,一方
によれば
は反対に
から
への向きに動かねばならない.そこに矛盾があって
は不合理である.要約すれば一対一対応の場合
において互いに対応する回転の向きは,各所同意または各所反対で,従って常に
または常に
.
から
,従って
の符号は行列式
の符号と同じである.ここで
にそれぞれ