解析概論/第7章

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目次

[編集] 第 7 章 微分法の続き(陰伏函数)

本章では,実変数に関する陰伏函数を基調として,微分法の解説を続ける.与えられた函数は全て連続で,かつ何回でも連続的微分可能と仮定する.あるいはむしろ,各変数に関して解析的(正則)と仮定する.特別に必要のない限り,一々ことわらないこともあろう.

[編集] 82.陰伏函数(陰函数)

二つの変数 x, y の間に関係式 F(x, y)=0が与えられているときは, xy とが各別に任意の値を取る事はできない.もしも x の函数 y=f(x)y に代入するとき,上記の関係が在る区間において常に成り立つならば, f(x)F(x, y)=0 によって陰伏的に定められるという.もしもこのような函数 f(x) が二つ以上あるならば,それらを陰伏函数のという.その場合,それらの枝を総括して yx多意函数(または多価函数)という.

簡単な一例として x^2+y^2=a^2 を取る.このとき y=\pm \sqrt{a^2-x^2}が区間 [-a, a] における陰伏函数 y の二つの枝である.符号 \pm によって二つの枝を区別するのは連続性の要求に基づく(もしも連続性を要求しないのならば, x の各々の値に対して任意に符号をきめても,さしつかえないはずである).

他の一例として, y^2=x^2(x+1) を取る.然らば y=\pm \sqrt{x^2(x+1)} であるが,今 x > 0 なるときは平方根の正の値,また x<0 なるときは平方根の負の値をとることにするならば,それは区間 [-1, \infty) において滑らかな一つの枝である.もしも符号を反対にすれば,他の滑らかな一つの枝を得る(図 (1)).

もしも y=\pm \sqrt{x^2(x+1)} において平方根を常に正,または常に負とするならば, yx=0 において連続ではあるが,微分可能性を失うであろう(図 (2)).

(1) (2)
滑らかな枝 連続ではあるが原点で微分可能でなくない枝

平方根は常に正の値を取るというようなことは安価な規約ではあるけれども,必らずしも幸福をもたらさない!

定理 71.
或る領域において F(x, y) および導函数 F_x, F_y は連続であるとする.領域内の一点 P_0=(x_0, y_0) において F(x_0, y_0)=0 で,かつ F_x(x_0, y_0)F_y(x_0, y_0) とのうち少なくとも一つは 0 でないとする.例えば y に関する偏微分商 F_y(x_0, y_0)\neq 0 とする.然らば方程式 F(x, y)=0 によって, y が次のように x の一つの陰伏函数 y=f(x) として一意に定められる.
P_0の近傍で定まる陰伏函数
1)
y=f(x)x_0 を含む或る区間 x_1\le x \le x_2 における x の連続函数で,その区間において常に F(x, f(x))=0
2)
y_0=f(x_0).
3)
\frac{dy}{dx}=-\frac{F_x(x, y)}{F_y(x, y)}.
[証]
仮定によって F_y(x_0, y_0)\neq 0 であるが,今 F_y(x_0, y_0)>0 とする.(反対の場合も同様である.あるいは F-F を代用すればよい.)

仮定によって F_y(x, y) は連続だから,(x_0, y_0) を含む在る領域 K において F_y(x, y)>0

その領域内において x=x_0 として,y のみを変動せしめるならば,仮定によって F_y(x_0, y)>0 だから F(x_0, y)y に関して単調に増大し,しかも y=y_0 のとき 0 になるから, K 内の或る点 A=(x_0, y_1), y_1 < y_0 において F(x_0, y_1)<0,また B=(x_0, y_2), y_2>y_0 において F(x_0, y_2)>0

仮定によって F(x, y) は連続で, A において負だから, A を通る横線上,A を含む或る区間内において常に負である.また B において正だから,B を含む或る区間内において常に正である.故に x_0 を含む或る区間 x_1\le x \le x_2 において
F(x, y_1)<0, F(x, y_2)>0.

よってこの区間 [x_1, x_2] において, x の値を固定して, yy_1 から y_2 まで変動させるならば,その際 F_y>0 だから, F(x, y)y に関して単調増大で,しかも F(x, y_1)<0, F(x, y_2)>0 だから y_1<y<y_2 なる区間において F(x, y)=0 になるような y の値がただ一つある.

このようにして,区間 x_1\le x \le x_2 における x の任意の値に対して,区間 y_1<y<y_2 における y の値が F(x, y)=0 なる条件によって確定される.すなわちその y の値は x の函数である.それを y=f(x) とする.

この函数が連続であることはほとんど明白であろうが,一般の証明法を述べておこう.今,上記区間において x に収束する任意の数列 \{x_n\}, x_n\pm x ,を取って,それに対応する y の値を \{y_n\} とする.然らば点列 \{x_n, y_n\} は有界だから集積点を有する.今 (x, \eta) を一つの集積点とすれば, \{x_n, y_n\} の部分列 \{x_{a_n}, y_{a_n}\}(x, \eta) に収束するものがある.然らば F(x_{a_n}, y_{a_n})=0 で, F は連続だから F(x, \eta)=0 .故に \etax に対応する y の値で,それは一定である.故に集積点は (x, y) ただ一つ,従ってそれは {x_n, y_n} の極限である(14 頁,[注意]).すなわち x_n\to x のとき y_n\to y 従って y は連続である.

これまでは少しも F_x(x, y) を用いなかったが,今仮定の様に F_x(x, y) が連続であるとすれば,平均値の定理によって領域 K において
(1)
F(x+\Delta x,y+\Delta y)-F(x,y)=\Delta xF_x(x+\theta\Delta x,y+\theta\Delta y)+\Delta yF_y(x+\theta\Delta x,y+\theta\Delta y),
ただし 0<\theta <1.特に (x,y) および (x+\Delta x,y+\Delta y)F(x,y)=0 を満足せしめるならば,左辺は 0 だから

  \frac{\Delta y}{\Delta x}
 =-\frac{F_x(x+\theta \Delta x, y+\theta \Delta y)}
        {F_y(x+\theta \Delta x, y+\theta \Delta y)},
仮定によって F_y\neq 0,またもちろん \Delta x \neq 0 だから,このように書かれるのである.F_x, F_y は連続だから,\Delta x\to 0 のとき
(2)
\frac{dy}{dx}=-\frac{F_x(x, y)}{F_y(x, y)}.
すなわち定理の全ての部分が証明された.――
[注意] 
(1) で左辺を 0 とおけば, F_x, F_y は連続だから,

  \Delta xF_x(x, y)+\Delta yF_y(x, y)+o(\rho)=0, 
  \quad \rho=\sqrt{(\Delta x)^2+(\Delta y)^2}
従って仮定 F_y\neq 0 により, y は微分可能で
F_x dx+F_y dy=0.
これからも (2) が得られる.

もしも F_x, F_y が微分可能ならば,独立変数 x に関して (2) の右辺を微分して \tfrac{d^2y}{dx^2} を得る.それを計算するには, (2)

F_x(x, y)+F_y(x, y)y'=0

なる形を書いて, x に関して微分して


  F_{xx}+F_{xy}y'+(F_{yx}+F_{yy}y')y'+F_{y}y''=0.

よって


  y''=-\frac{F_{xx}+2F_{xy}y'+F_{yy}{y'}^2}{F_y}.

ここへ (2) から y' の値を持ち込めば, y''F の第二階までの偏微分商で表される(第三階以上も同様である).

定理 71 は三次元以上にも拡張される.例えば三次元においては次の定理を得る.

定理 72.
(x_0, y_0, z_0) の近傍において F(x, y, z) が連続的微分可能で
F(x_0, y_0, z_0)=0
F_z(x_0, y_0, z_0)\neq 0
とすれば,xy 平面上,(x_0,y_0) の近傍において,次の条件に適する陰伏函数
z=f(x,y)
が確定する.すなわち
1)
F(x, y, f(x, y)),
2)
z_0=f(x_0, y_0),
3)
\frac{\partial z}{\partial x}=-\frac{F_x}{F_z}, \frac{\partial z}{\partial y}=-\frac{F_y}{F_z}.
すなわち F_x, F_y が存在すれば, zx, y の函数として微分可能で,全微分 dz
F_{x}dx+F_{y}dy+F_{z}dz=0
から求められる(前頁,[注意]).従って上記のように
(3)

    \frac{\partial z}{\partial x}
  =-\frac{F_x}{F_z}, \frac{\partial z}{\partial y}
  =-\frac{F_y}{F_z}.
もしも Fの高階微分が可能ならば,x, yに関して zの同階までの微分も可能で,それは (3) を微分して求められる.

上記の考察を一般化して次の定理を得る.

定理 73.
n+p 個の変数 x_1, x_2, \cdots , x_{n+p} の間の n 個の関係式
(4)
F_i(x_1, x_2, \cdots , x_{n+p})=0\quad  (i=1, 2, \cdots , n)
が点 P_0=({x_{1}}^0, {x_{2}}^0, \cdots , {x_{n+p}}^0) において満足せしめられ, F_i は点 P_0 の近傍で連続的微分可能とする.また P_0 において函数行列式
\frac{D(F_1, F_2, \cdots , F_n)}{D(x_{\alpha}, x_{\beta}, \cdots , x_{\lambda})}=\begin{vmatrix}
\dfrac{\partial F_1}{\partial x_{\alpha}}, & \dfrac{\partial F_1}{\partial x_{\beta}}, & \ldots , & \dfrac{\partial F_1}{\partial x_{\lambda}} \\[10pt]
\dfrac{\partial F_2}{\partial x_{\alpha}}, & \dfrac{\partial F_2}{\partial x_{\beta}}, & \ldots , & \dfrac{\partial F_2}{\partial x_{\lambda}} \\[10pt]
\cdots & \cdots & \cdots & \cdots \\[10pt]
\dfrac{\partial F_n}{\partial x_{\alpha}}, & \dfrac{\partial F_n}{\partial x_{\beta}}, & \ldots , & \dfrac{\partial F_n}{\partial x_{\lambda}}
\end{vmatrix}
\alpha, \beta, \cdots, \lambda1, 2, \cdots, n+p の中の n 個の互いに異なる番号)が,少なくとも一つは 0 に等しくないとする.――例えば x_1, x_2, \cdots, x_n に関する函数行列式が P_0 において
(5)
\frac{D(F_1, F_2, \cdots , F_n)}{D(x_{\alpha}, x_{\beta}, \cdots , x_{\lambda})}=\begin{vmatrix}
\dfrac{\partial F_1}{\partial x_{1}}, & \dfrac{\partial F_1}{\partial x_{2}}, & \ldots , & \dfrac{\partial F_1}{\partial x_{n}} \\[10pt]
\dfrac{\partial F_2}{\partial x_{1}}, & \dfrac{\partial F_2}{\partial x_{2}}, & \ldots , & \dfrac{\partial F_2}{\partial x_{n}} \\[10pt]
\cdots & \cdots & \cdots & \cdots \\[10pt]
\dfrac{\partial F_n}{\partial x_{1}}, & \dfrac{\partial F_n}{\partial x_{2}}, & \ldots , & \dfrac{\partial F_n}{\partial x_{n}}
\end{vmatrix} \neq 0
とする.然らば上記関係 (4) によって x_1, x_2, \cdots, x_n がその他の変数 x_{n+1}, \cdots, x_{n+p} の函数として,次のように確定される.今簡明のために記号を換えて x_{n+1}, x_{n+2}, \cdots, x_{x+p} の代わりに u, v, \cdots, w と書けば,点 (u^0, v^0, \cdots, w^0) の近傍で, p 個の変数 u, v, \cdots, wn 個の函数
x_i=\phi(u, v, \cdots, w)\ \ (i=1, 2, \cdots, n)
が確定して
1)
F_i({\phi}_1, {\phi}_2, \cdots, {\phi}_n, u, v, \cdots, w)=0,
2)
{x_i}^0={\phi}_i(u^0, v^0, \cdots, w^0),
3)
u, v, \cdots, w に関する全微分 dx_i は次の連立一次方程式から求められる,すなわち
\frac{\partial F_i}{\partial x_1}dx_1+\frac{\partial F_i}{\partial x_2}dx_2+\cdots+\frac{\partial F_i}{\partial x_n}dx_n + \left(
\frac{\partial F_i}{\partial u}du+\frac{\partial F_i}{\partial v}dv+\cdots+\frac{\partial F_i}{\partial w}dw
\right)=0 \quad (i=1, 2, \cdots, n)
[証]
まず簡明のために,二つの方程式
(6)
F(x, y, u)=0,
(7)
G(x, y, u)=0
において,独立変数 u の函数として x, y を考察する. (x_0, y_0, u_0) がこれらの方程式を満足せしめ,かつ (x_0, y_0, u_0) において
(8)
\frac{D(F, G)}{D(x, y)}=\begin{vmatrix}
\dfrac{\partial F}{\partial x}, & \dfrac{\partial F}{\partial y} \\[10pt]
\dfrac{\partial G}{\partial x}, & \dfrac{\partial G}{\partial y}
\end{vmatrix}\neq 0
とする.然らばこの点 (x_0, y_0, u_0) において \tfrac{\partial F}{\partial x}, \tfrac{\partial F}{\partial y} が共に 0 に等しくはないから,例えば \tfrac{\partial F}{\partial x}\neq0 とする:すなわち
F_x(x_0, y_0, u_0)\neq 0
とする.然らば定理 72 によって,点 (y_0, u_0) の近傍で (6) から
(9)
x=f(y, u)
なる函数が定まる.これを G に代入すれば, y, u の函数
G(f(y, u), y, u)=H(y, u)
が生ずる.さて
H_y=G_y\frac{\partial f}{\partial y}+G_y, \frac{\partial f}{\partial y}=-\frac{F_y}{F_x},
故に
H_y=-\frac{G_{x}F_{y}}{F_x}+G_y=\frac{1}{F_x}\begin{vmatrix}
\dfrac{\partial F}{\partial x}, & \dfrac{\partial F}{\partial y} \\[10pt]
\dfrac{\partial G}{\partial x}, & \dfrac{\partial G}{\partial y}
\end{vmatrix}
で,(8) によって,それは (x_0, y_0, u_0) において 0 に等しくない. よって u=u_0 を含む在る区間内において, H(y, u)=0 を満足せしめる函数 y=\phi(u) が定まる.それを (9) に持ち込んで x=\phi(u) とすれば x=\phi(u), y=\psi(u)(6), (7) を満足せしめる.もちろん
x_0=\phi(u_0), y_0=\psi(u_0)
\tfrac{dx}{du}, \tfrac{dy}{du} の存在証明も計算法も前記(296頁)と同様である.すなわち
(10)
F_{x}dx+F_{y}dy+F_{u}du=0.\ \ G_{x}dx+G_{y}dy+G_{u}du=0
から
dx:dy:du=\begin{vmatrix} F_y, & F_u \\ G_y, & G_u
\end{vmatrix}:\begin{vmatrix} F_u, & F_x \\ G_u, & G_x
\end{vmatrix}:\begin{vmatrix} F_x, & F_y \\ G_x, & G_y\end{vmatrix}.
F, G の高階微分が可能ならば,同じ階数まで x,yu に関する微分商を得る.例えば
\begin{align}\left(
   \frac{dx}{du}\frac{\partial}{\partial x}
  +\frac{dy}{du}\frac{\partial}{\partial y}
  +\frac{\partial}{\partial u}\right)^2 F 
 &+\frac{\partial F}{\partial x}\frac{d^{2}x}{du^2}
  +\frac{\partial F}{\partial y}\frac{d^{2}y}{du^2}=0,\\
\left(
   \frac{dx}{du}\frac{\partial}{\partial x}
  +\frac{dy}{du}\frac{\partial}{\partial y}
  +\frac{\partial}{\partial u}\right)^2 G
 &+\frac{\partial G}{\partial x}\frac{d^{2}x}{du^2}
  +\frac{\partial G}{\partial y}\frac{d^{2}y}{du^2}=0.
\end{align}
これを解いて \tfrac{d^{2}x}{du^2}, \tfrac{d^{2}y}{du^2} を得る.なお逐次微分して, \tfrac{d^{n}x}{du^n}, \tfrac{d^{n}y}{du^n} を求めるための連立二元一次方程式を得る.それを解けば分子は恐ろしく長い式になるが,分母はいつも F_{x}G_{y}-F_{y}G_{x} で,仮定によってそれが 0 に等しくない.それ故 x^{(n)}, y^{(n)} が得られるのである. 上記関係式 (6), (7)x, y 以外にいくつの変数を含むとしても,同様である.例えば変数 u, v の場合 (10)
F_{x}dx+F_{y}dy+(F_{u}du+F_{v}dv)=0, G_{x}dx+G_{y}dy+(G_{u}du+G_{v}dv)=0,
になる.dx,dy に関して,それを解けば
\begin{align}
  &\begin{vmatrix}F_x, &F_y\\G_x, &G_y\end{vmatrix}dx
  =\begin{vmatrix}F_y, &F_u\\G_y, &G_u\end{vmatrix}du
  +\begin{vmatrix}F_y, &F_v\\G_y, &G_v\end{vmatrix}dv,\\
  &\begin{vmatrix}F_x, &F_y\\G_x, &G_y\end{vmatrix}dy
  =\begin{vmatrix}F_u, &F_x\\G_u, &G_x\end{vmatrix}du
  +\begin{vmatrix}F_v, &F_x\\G_v, &G_x\end{vmatrix}dv
\end{align}
を得る.すなわち

   \frac{\partial x}{\partial u}
  =\frac{D(F, G)}{D(y, y)}\bigg/\Delta.\quad
   \frac{\partial x}{\partial v}
  =\frac{D(F, G)}{D(y, v)}\bigg/\Delta.

   \frac{\partial y}{\partial u}
  =\frac{D(F, G)}{D(x, y)}\bigg/\Delta .\quad
   \frac{\partial y}{\partial v}
  =\frac{D(F, G)}{D(x, v)}\bigg/\Delta.
分母は \Delta=\tfrac{D(F, G)}{G(x, y)}=\tfrac{D(G, F)}{D(y, x)} で,仮定によって \Delta \neq 0

一般の場合における定理 73 は,数学的帰納法によって証明される.その方法は,上記 n=1 の場合から n=2 の場合を導き出したのと同様である.

[編集] 83.逆函数

定理 74.
n 個の独立変数 x_1,x_2,\ldots,x_nn 個の函数
(1)

  u_i=f_i(x_1,x_2,\ldots,x_n)\quad (i=1,2,\ldots,n)
が点 P_0=(x_1^0,x_2^0,\ldots,x_n^0) の近傍で連続的微分可能であるとして,函数行列式を

 J(x_1,x_2,\ldots,x_n)
 =\frac{D(u_1,u_2,\ldots,u_n)}{D(x_1,x_2,\ldots,x_n)}
 =\begin{vmatrix}
   \dfrac{\partial u_1}{\partial x_1},&\ldots,&\dfrac{\partial u_1}{\partial x_n}\\[6pt]
   \ldots & \ldots & \ldots\\[6pt]
   \dfrac{\partial u_n}{\partial x_1},&\ldots,&\dfrac{\partial u_n}{\partial x_n}
 \end{vmatrix}
とする.今変数 x に関する点 P_0=(x_1^0,x_2^0,\ldots,x_n^0)u に関する点 Q_0=(u_1^0,u_2^0,\ldots,u_n^0) が対応し,かつ J(x_1^0,x_2^0,\ldots,x_n^0)\ne 0 とするならば,Q_0 を含む或る領域内において点 Q=(u_1,u_2,\ldots,u_n) の函数として,(1) を満足せしめる x_1,x_2,\ldots,x_n が一意的に存在して,それらは連続的微分可能である.
[証]
(1) を変数 x_1,x_2,\ldots,x_n;\;u_1,u_2,\ldots,u_n の間の n 個の関係式とみて,それによって u_1,u_2,\ldots,u_n の陰伏函数として x_1,x_2,\ldots,x_n を考察するならば,定理 73が適用される.すなわち

  F_i=f_i(x_1,x_2,\ldots,x_n)-u_i,\quad(i=1,2,\ldots,n)
と置けば

  \frac{D(F_1,F_2,\ldots,F_n)}{D(x_1,x_2,\ldots,x_n)}
  =\begin{vmatrix} 
   \dfrac{\partial f_1}{\partial x_1},
  &\dfrac{\partial f_1}{\partial x_2}, & \ldots,
  &\dfrac{\partial f_1}{\partial x_n}\\[10pt]
   \ldots & \ldots & \ldots & \ldots\\[10pt]
   \ldots & \ldots & \ldots & \ldots\\[10pt]
   \dfrac{\partial f_n}{\partial x_1},
  &\dfrac{\partial f_n}{\partial x_2}, & \ldots,
  &\dfrac{\partial f_n}{\partial x_n}
  \end{vmatrix}=J.
さて仮定によって,J(x_1^0,x_2^0,\ldots,x_n^0)\ne 0.故に関係式
F_i=0,\quad (i=1,2,\ldots,n),
すなわち (1) を満足せしめる (u_1,u_2,\ldots,u_n) の函数
x_i=\varphi_i(u_1,u_2,\ldots,u_n)\quad(i=1,2,\ldots,n)
Q_0=(u_1^0,u_2^0,\ldots,u_n^0) の近傍で確定する.これらの函数が微分可能であること,およびその全微分を求める方法は,前節で述べたとおりである.
(証終)
函数の間の関係
定理 74 を一般化して次の定理を得る.
定理 75.
n 個の変数 x_1,x_2,\ldots,x_nm 個の函数
(2)

  u_i=f_i(x_1,x_2,\ldots,x_n),\quad(i=1,2,\ldots,m)
が点 P_0=(x_1^0,x_2^0,\ldots,x_n^0) の近傍で連続的微分可能とする.また偏微分商の行列
(3)
\begin{matrix}
  \dfrac{\partial u_1}{\partial x_1},
 &\dfrac{\partial u_1}{\partial x_2},&\ldots,
 &\dfrac{\partial u_1}{\partial x_n}\\[10pt]
  \dfrac{\partial u_2}{\partial x_1},
 &\dfrac{\partial u_2}{\partial x_2},&\ldots,
 &\dfrac{\partial u_2}{\partial x_n}\\[10pt]
  \ldots &\ldots &\ldots &\ldots\\[10pt]
  \dfrac{\partial u_m}{\partial x_1},
 &\dfrac{\partial u_m}{\partial x_2},&\ldots,
 &\dfrac{\partial u_m}{\partial x_n}
\end{matrix}
において,一つの r 次(r<m,r\leqq n)の行列式は P_0 において 0 に等しくなく,例えば
(4)
であるが,それを含む r+1 次の全ての行列式は P_0 の近傍で常に等しい.すなわち
(5)
 
 \left(\frac{D(u_1,u_2,\ldots,u_r,u_\rho)}{D(x_1,x_2,\ldots,x_r,x_\sigma)}\right)_0
  = 0\quad\left({r<\rho\leqq m\atop r<\sigma \leqq n}\right)
とする.然らば,P_0 の近傍で u_1,u_2,\ldots,u_r は独立であるが,u_{r+1},\ldots,u_mu_1,u_2,\ldots,u_r だけの函数である.
すなわち x 系の点 P_0=(x_1^0,x_2^0,\ldots,x_n^0)u 系の点 Q_0=(u_1^0,u_2^0,\ldots,u_m^0) が対応するとき,P_0 の近傍で (u_1,u_2,\ldots,u_r)(u_1^0,u_2^0,\ldots,u_r^0) に十分近い任意の値をとりうるので,その意味において u_1,u_2,\ldots,u_r は独立というのであるが,そのとき u_{r+1},\ldots,u_m の取る値は自然に確定してしまうのである.換言すれば,P=(x_1,x_2,\ldots,x_n)P_0 の近傍で自由に変動するとき,それに対応して Q=(u_1,u_2,\ldots,u_m)Q_0 の近傍で変動するけれども,Qm 次元空間のどれほど小さい一つの領域をも満たしえないのである.それを略称して u_1,u_2,\ldots,u_m は独立でないという[* 2](早わかりに約言すれば,例えば m=3 で,r=2 ならば Q はある曲面上に限局され,r=1 ならば Q はある曲線上に限局される)
[注意] 
上記の仮定において,(4) は点 P_0 においてのみの仮定だけれども,それは不等式であるから,連続性のために P_0 の近傍で成り立つが,(5) は等式だから P_0 において成り立つだけでは不足で,P_0 の近傍で常に成立するとせねばならないのである.要するに,P_0 の近傍で r 次の一つの行列式は常に一定の符号を有し,それを含む r+1 次のすべての行列式は常に 0 に等しいことを仮定するのである.
[証]
この定理では x_1^0,\ldots,x_n^0,u_1^0,\ldots,u_m^0 に十分近い所でのみ各変数 x,u を考察するのだから,一々それをことわらない.仮定 (4) によって u_1,u_2,\ldots,u_r;x_{r+1},\ldots,x_n を独立変数とみるとき x_1,x_2,\ldots,x_r がそれらの陰伏函数として確定する(定理 73).故に u_1,u_2,\ldots,u_r および x_{r+1},\ldots,x_n に任意の値を与えて,それに対応する x_1,x_2,\ldots,x_r の値を定めるならば,それらの値は
(6)
u_i=f_i(x_1,x_2,\ldots,x_n)\quad(i=1,2,\ldots,r)
を満足せしめる.すなわち u_1,u_2,\ldots,u_r は任意の値を取りうるのだから互に独立である. このようにして定められる x_1,x_2,\ldots,x_r
(7)

  x_\rho=f_\rho(x_1,x_2,\ldots,x_r;x_{r+1},\ldots,x_n)\quad(\rho=r+1,\ldots,m)
に持ち込めば u_\rhou_1,\ldots,u_rx_{r+1},\ldots,x_n との函数になるが,それは仮定 (5) のために x_{r+1},\ldots,x_n に無関係で,従って u_\rhou_1,\ldots,u_r のみの函数になるのである.それを示すために u_\rhou_1,\ldots,u_r,x_{r+1},\ldots,x_n の函数とするとき \tfrac{\partial u_\rho}{\partial x_{r+1}}=0,\ldots,\tfrac{\partial u_\rho}{\partial x_n}=0 であることを確かめよう. さて r<\sigma\leqq m として,(7) から
(8)

  \frac{\partial u_\rho}{\partial x_\sigma}
 = \frac{\partial f_\rho}{\partial x_1}\frac{\partial x_1}{\partial x_\sigma}
  +\frac{\partial f_\rho}{\partial x_2}\frac{\partial x_2}{\partial x_\sigma}
  +\cdots
  +\frac{\partial f_\rho}{\partial x_r}\frac{\partial x_r}{\partial x_\sigma}
  +\frac{\partial f_\rho}{\partial x_\sigma}
右辺の \tfrac{\partial x_i}{\partial x_\sigma}x_1,x_2,\ldots,x_rx_{r+1},\ldots,x_n (および u_1,\ldots,u_r)の陰伏函数とみての微分商で,それらは (6) を微分して得られる次の等式
(9)
0=
  \frac{\partial f_i}{\partial x_1}\frac{\partial x_1}{\partial x_\sigma}+\cdots+
 +\frac{\partial f_i}{\partial x_r}\frac{\partial x_r}{\partial x_\sigma}
 +\frac{\partial f_i}{\partial x_\sigma},\quad(i=1,2,\ldots,r)
から求められる.さて (8)(9) とから \tfrac{\partial x_i}{\partial x_\sigma} をおい出せば,
\begin{vmatrix}
   \dfrac{\partial f_1}{\partial x_1},&\ldots,
 & \dfrac{\partial f_1}{\partial x_r},
 & \dfrac{\partial f_1}{\partial x_\sigma}\\[10pt]
 \ldots & \ldots & \ldots & \ldots\\[10pt]
   \dfrac{\partial f_r}{\partial x_1},&\ldots,
 & \dfrac{\partial f_r}{\partial x_r},
 & \dfrac{\partial f_r}{\partial x_\sigma}\\[10pt]
   \dfrac{\partial f_\rho}{\partial x_1},&\ldots,
 & \dfrac{\partial f_\rho}{\partial x_r},
 & \dfrac{\partial f_\rho}{\partial x_\sigma}
  -\dfrac{\partial u_\rho}{\partial x_\sigma}
\end{vmatrix}=0,
すなわち

  \frac{D(f_1,\ldots,f_r,f_\rho)}{D(x_1,\ldots,x_r,x_\sigma)}
 -\frac{\partial u_\rho}{\partial x_\sigma}
  \frac{D(f_1,\ldots,f_r)}{D(x_1,\ldots,x_r)}=0.
仮定によって第一の函数行列式は 0 に等しいが,第二のは 0 に等しくないから

  \frac{\partial u_\rho}{\partial x_\sigma}=0.\quad(\sigma=r+1,\ldots,m)
故に u_\rhou_1,u_2,\ldots,u_r のみの函数である.
[注意] 
定理 75 は局所的で,r すなわち行列 (3) の位(rank)は所によって違いうる.函数 u_i の数を上記のように m とすれば,r0 から m までの値を取る可能性がある.r=0P_0=(x_1^0,x_2^0,\ldots,x_n^0) の近傍で \tfrac{\partial u_\mu}{\partial x_\nu} がすべて 0,従って u_\mu がすべて定数であることを意味する.また r=mP_0 の近傍で,行列 (3) の或る m 次の行列式が 0 に等しくない場合(従って m\leqq n) で,このとき u_1,u_2,\ldots,u_mP_0 の近傍で独立である.

  1. P_0 における値を示すために,左辺のような記号を用いる.
  2. これは仮定 r<m からの帰結である.r=m ならば,定理 75定理 73 の特別の場合にすぎない.

[編集] 84.写像

前節 (1) のように xn 次元空間の或る領域 K において連続的微分可能なる n 個の函数

(1)
u_i=f_i(x_1,x_2,\ldots,x_n),\quad(i=1,2,\ldots,n)

が与えられているとすれば,K の点 P=(x_1,x_2,\ldots,x_n)u 系空間の点 Q=(u_1,u_2,\ldots,u_n) が対応する.約言すれば,点 Q が点 P の‘函数’である.よって (1)

(2)
Q=f(P)

と略記すればわかりよいであろう.このような対応関係を写像といい,QP,逆に PQ原像という.上記のように函数 f_i が連続ならば,P が連続的に変動するとき,点 P の像なる点 Q も連続的に変動するから,写像 (2) を連続的の写像という. 写像 (2) において,各点 P の像 Q は確定であるが,逆に一点 Q が相異なる点 P に対応することが可能である.すなわち Q の原像は必らずしも一意でない.もしも Q の原像 P が一意に確定するならば,すなわち PQ とが一対一に対応する(1-1 対応をする)ならば,(2) の逆写像

(3)
P=\varphi(Q)

が可能である.さて函数行列式 J(P)=\tfrac{D(u_1,u_2,\ldots,u_n)}{D(x_1,x_2,\ldots,x_n)}P_0 において 0 でない(J(P_0)\ne 0)ならば,P_0 の近傍で (2) が一対一の写像である.それを見るために,簡単のため n=2 として,写像

(4)
u=f(x,y),\quad v=g(x,y)

を考察する.上記のように,一般的に P=(x,y),Q=(u,v) と書いて,xy 平面から uv 平面への写像 (4)

(5)
Q=F(P)

と略記する.さて P_0=(x_0,y_0)Q_0=(u_0,v_0) が対応して,かつ J(P_0)\ne 0 とする.そのとき xy 平面で P_0 を含む十分小さい領域 K_0 と,uv 平面で Q_0 を含む領域 K_0' とを取って,K_0' の任意の点の原像は K_0 内では一つより多くはないようにする.それは可能である. 実際,さもなければ,uv 平面において,Q_0 に収束する点列 \{Q_i\} を適当に取れば,Q_i の相異なる原像 P_i(x_i,y_i),P_i'=(x_i',y_i'),(P_i\ne P_i') があって,P_i\to P_0,P_i'\to P_0 となる.然らば平均値の定理によって,線分 P_iP_i' 上の点 R_i,S_i を適当に取れば,

\begin{alignat}{3}
  0&=f(P_i)-f(P_i')&&=(x_i-x_i')f_x(R_i)&&+(y_i-y_i')f_y(R_i),\\
  0&=g(P_i)-g(P_i')&&=(x_i-x_i')g_x(S_i)&&+(y_i-y_i')g_y(S_i).
\end{alignat}

然るに P_i\ne P_i' であるから,x_i-x_i',y_i-y_i' が共に 0 であることはない.故に


  \begin{vmatrix}f_x(R_i)&f_y(R_i)\\g_x(S_i)&g_y(S_i)\end{vmatrix}=0
  \quad(i=1,2,\ldots).

ここで,極限 i\to\infty へ行けば,R_i\to P_0,S_i\to P_0 だから J(P_0)=0.これは仮定に反する.

ファイル:図

さて定理 74 によれば,K_0' 内で Q_0 を含む十分小なる領域 G' を取れば,G' の点 Q の原像は K_0 内では一意に確定するから,(5) の逆写像 P=\varphi(Q)G' において確定する.今 uv 平面の領域 G' の点 QK_0 内にある現像 P の集合を G とすれば,Gxy 平面において P_0 を含む領域である.――実際,G の任意の点 P_1Q_1 に対応するならば,K_0 において P_1 に十分近く任意の点 P を取れば,写像 F(P) の連続性によって P の像 QG' に属するから,P は集合 G に属する.これは G の各点 P_1 が内点であることを意味するから,G は開集合である.G が連結されていることは,G の任意の二点 P_1,P_2 に対応する Q_1,Q_2 を領域 G' で連結する曲線(Jordan 曲線,例えば折線)に,G において P_1,P_2 を結ぶ曲線が対応することからわかる.故に G は連結された開集合すなわち領域である.

さて G' 内に Q_0 を含みその閉包が G' に含まれる領域を任意に取って,それを G' に代用すれば,上記と同様に,その G' に対応する領域 G の点と領域 G' の点とが一対一連続に対応するが,今度は G,G' の閉包は,いずれも一対一連続に写像される領域内にある.このとき,G の境界点には G' の境界点が一対一連続に対応することは写像 F,\varphi の連続性からの簡単なる帰結である.故に境界をも入れていえば K_0 内の閉域 [G]K_0' 内の閉域 [G'] との間に一対一の連続的写像ができて,内点には内点が,境界点には境界点が対応する.特に [G] の境界が Jordan 閉曲線ならば,[G'] の境界も同様である.

上記考察は局所的であるから,K において常に J(P)\ne 0 であっても,K の全局において写像が一対一であることは保証されない.例えば
u=x^2-y^2,\quad v=2xy
とする(その出所は u+iv=(x+iy)^2 である),然らば
J=\frac{D(u,v)}{D(x,y)}=\begin{vmatrix}2x&-2y\\2y&2x\end{vmatrix}=4(x^2+y^2)
で,(x,y)\ne(0,9) ならば J\ne 0 であるが,(x,y)(-x,-y) とには同じ (u,v) が対応するから,K(x,y) と同時に (-x,-y) を含むときには一対一対応はない.一般に K において正則な解析函数 f(z)=f(x+yi)=u+iv の実部と虚部とを u(x,y),v(x,y) とすれば,Cauchy-Riemann の微分方程式(203 頁)によって
\frac{D(u,v)}{D(x,y)}=\begin{vmatrix}u_x&u_y\\v_x&x_y\end{vmatrix}=u_x^2+u_y^2=|f'(z)|^2
f'(z)\ne 0 なるところでは,これは 0 でないけれども,f(z) の逆函数は必らずしも一意でない.

上記考察は局所的(localim Kleine)であったけれども,それを応用して若干大局的(grobalGrossen)の結論を導くことができる.

(1º)
まず写像 Q=f(P) によって xy 平面の領域 Kuv 平面の領域 K' との間に一対一対応が成り立つと仮定する.然らば逆写像 P=\varphi(Q) が確定するが,f が連続ならば \varphi も連続である(下記[注意]および295 頁参照).この場合にも,K 内の閉域と K' 内の閉域とは対応して,内点は内点に,境界点は境界点に対応することが,上記と同様にして証明される.
[注意] 
一対一の連続的な写像では,n 次元の領域が n 次元の領域に対応する(Brouwer).それは明白のようでも,証明は意外にむずかしい.今 (1º) ではそれを仮定した.特に,K が領域ならば,K' が領域であることの証明を省略したのである.
(2º)
写像 (2) に関して函数行列式 J0 にならないとする.然らば有界なる閉域 K を有限個の小閉域に分割して,各小区域において一対一対応を成立せしめることができる.――実際 K 内の任意の点 P において J(P)\ne 0 だから,P の近傍で局所的には一対一対応が成り立つ。今 P を中心とする半径 \rho の円内では一対一対応が成り立つとして,その半径の最大値を \rho(P) とすれば,\rho(P)P に関して連続であることは定理 14 のようにして証明される: すなわち |\rho(P)-\rho(P')|\leqq PP'.よって閉区域 K における \rho(P) の最小値を \rho_0 とすれば \rho_0>0.然らば K を辺長が \sqrt{2}\rho_0 より小なる方眼に分割するとき,各方眼において一対一対応が成り立つであろう.
(3º)
写像 (2) によって K において一対一対応が成り立つときには(上記[注意]参照).K 内のいかなる小領域においても常に J(P)=0 なることはありえない(定理 75).しかし,例えば K 内の孤立する点またはある線上において J=0 なることは可能である.
[例 1]
u=x,v=y^3 とすれば,全平面において一対一対応が成り立つが,
J=\begin{vmatrix}1&0\\0&3y^2\end{vmatrix}=3y^2
で,x 軸上では J=0
[例 2]
原点からの半直線上に P=(x,y),Q=(u,v) を取って OQ=OP^2 とすれば,全平面で一対一対応が成り立つが,
u=\sqrt{x^2+y^2},\quad v=y\sqrt{x^2+y^2}\qquad J=2(x^2+y^2)
で,(x,y)=(0,0) において J=0
(4º)
KK' との間の全局的一対一対応の場合,K において J0 になりえても,K が連結されている限り,JK 内で反対の符号を取ることはできない(上記の例参照).それをみるために,函数行列式 J の符号の幾何学的の意味を考察する.K 内の一点 P から出る曲線 l と,それに対応して K' の点 Q から出る曲線 \lambda との接線上において
\left.\begin{align}
  du&=\varphi_x\,dx+\varphi_y\,dy\\ dv&=\psi_x\,dx+\psi_y\,dy
\end{align}\right\} 従って \frac{dv}{du}
  =\frac{\psi_x+\psi_y\dfrac{dy}{dx}}{\varphi_x+\varphi_y\dfrac{dy}{dx}}.
\tfrac{dy}{dx},\tfrac{dv}{du}P および Q における l,\lambda の勾配である.l が変動して \tfrac{dy}{dx} が増大するとき,J(P)=\varphi_x\psi_y-\varphi_y\psi_x\gtrless 0 に従って \tfrac{dv}{du} は増大または減少する.
これは一次変換の性質である.すなわち \eta=\tfrac{r+s\xi}{p+q\xi} から \tfrac{d\eta}{d\xi}=\tfrac{ps-qr}{(p+q\xi)^2},従って \tfrac{d\eta}{d\xi} の符号は行列式 ps-qr の符号と同じである.ここで \xi,\eta にそれぞれ \tfrac{dy}{dx},\tfrac{dv}{du} を当てはめるのである.

故に P および Q において互いに対応する回転の向きは J(P)\gtrless 0 に従って,同意または反対である.

さてかりに K において J が反対の符号の値を取るとするならば,中間値の定理によって JK において 0 にもなるが,J(P)=0 なる点は K において,いかなる小領域をも満たし得ないのだから,任意の \varepsilon に関して P_1P_2<\varepsilon,J(P_1)>0,J(P_2)<0 なる点 P_1,P_2 が存在する.今 P_1P_2 上の点 M において P_1P_2 に垂直に MN を引いて,K' において,それらに対応する点 Q_1,Q_2 および曲線 M'N' が,次の図のように配置されるとする.ファイル:図然らば PMN の上を動くとき,仮定 J(P_1)>0 によれば,P に対応する QM'N' の上を M' から N' への向きに動かねばならないが,一方 J(P_2)<0 によれば Q は反対に N' から M' への向きに動かねばならない.そこに矛盾があって J(P_1)>0,J(P_2)<0 は不合理である.要約すれば一対一対応の場合 K,K' において互いに対応する回転の向きは,各所同意または各所反対で,従って常に J(P)\geqq 0 または常に J(P)\leqq 0
上記の説明は直観的(粗雑)であるが,問題の要点は明瞭であろう.また適当なる補足によって三次元以上にも拡張されるであろう.

[編集] 85.解析函数への応用

陰伏函数の解析性を考察することはもちろん重要であるが,ここでは最も簡単な場合において,しかも §82 の定理との連絡を主眼として,若干の解説を試みる.
定理 76.
複素数平面(z 平面)の或る領域 K において
(1)
w=f(z)
は正則で,K 内の一点 z=z_0 において w=w_0 とする.もしも z_0 において f'(z_0)\ne 0 ならば,w=w_0 の近傍で正則なる逆函数 z=g(w) が確定する.
[証]
複素変数 z,w の実部と虚部とを分けて
z=x+yi,\quad w=u+vi
として,(1)
(2)
u=\varphi(x,y),\quad v=\psi(x,y)
と書く.然らば

  \varphi_x=\psi_y,\quad\varphi_y=-\psi_x,

  f'(z)=\varphi_x+i\psi_x=\psi_y-i\varphi_y

  \frac{D(u,v)}{D(x,y)}
 =\begin{vmatrix}\varphi_x &\psi_x\\ \varphi_y &\psi_y\end{vmatrix},
 = \varphi_x^2+\psi_x^2=|f'(z)|^2.
仮定によって f'(z_0)\ne 0 だから,(x_0,y_0) において
\frac{D(u,v)}{D(x,y)}\ne 0.
故に定理 74 の意味で,(2) の逆函数(逆写像)が (u_0,v_0) の近傍で確定する.すなわち複素変数 z=x+yiw=u+vi の函数 z=g(w) として与えられる.それが解析的(正則)であることをみるには,g(w) の微分可能性を示せばよいが,それは明白である.すなわち,
f'(z)=\lim_{z_1\to z}\frac{w_1-w}{z_1-z}\ne 0
z=z_0 の近傍では確定であるのだから,

  g'(w)=\lim_{w_1-w}{z_1-z}=\frac{1}{f'(z)}
も確定である.
(証終)

なお一般に F(w,z) を複素変数 z,w の函数として,その実部と虚部とを分けて


  F(w,z)=\mathit\Phi(u,v,x,y)+i\mathit\Psi(u,v,x,y)

とする.今 F(w_0,z_0)=0 として,F(w,z)zz_0 の近傍にあるとき w に関して正則,また ww_0 の近傍にあるとき z に関して正則とする.然らば

(3)
\left.\begin{align}
  \mathit\Phi_u &= \mathit\Psi_v, & \mathit\Phi_v &= -\mathit\Psi_u,\\
  \mathit\Phi_x &= \mathit\Psi_y, & \mathit\Phi_y &= -\mathit\Psi_x,\quad
\end{align}\right\}
(4)

  F_w=\frac{\partial F}{\partial w}=\mathit\Phi_u+i\mathit\Psi_u,\quad
  F_z=\frac{\partial F}{\partial z}=\mathit\Phi_x+i\mathit\Psi_x.

これが F_w,F_z の意味である. さて上記のように

F(w_0,z_0)=0

とするとき,もしも F_w(w_0,z_0)\ne 0 ならば,z_0 の近傍で,方程式 F(w,z)=0 によって,w=f(z)z の陰伏函数として定義されて,しかも wz=z_0 の近傍で正則な解析函数である.すなわち言葉の上では定理 71 と同じようだが,実数に引き直していえば,条件はまず F(w,z)=0 から

(5)
\left.\begin{align}
  \mathit\Phi(u,v,x,y)&=0,\\ \mathit\Psi(u,v,x,y)&=0
\end{align}\right\}

次に F_w(w_0,z_0)\ne 0 から,(u_0,v_0,x_0,y_0) において


  \frac{D(\mathit\Phi,\mathit\Psi)}{D(u,v)}
  =\begin{vmatrix}
     \mathit\Phi_u & \mathit\Psi_u\\ \mathit\Phi_v & \mathit\Psi_v 
   \end{vmatrix}
  =\mathit\Phi_u^2+\mathit\Psi_u^2=|F_w|^2\ne 0.

故に定理 73 によって (x_0,y_0) の近傍で (5) を満足せしめる x,y の函数として u,v が確定する. 従って wz の函数として確定するのであるが,それの解析性すなわち微分可能性を考察するために299 頁の計算を引用する.すなわち

\begin{align}
  \mathit\Phi_udu+\mathit\Phi_vdv+\mathit\Phi_xdx+\mathit\Phi_ydy=0,\\
  \mathit\Psi_udu+\mathit\Psi_vdv+\mathit\Psi_xdx+\mathit\Psi_ydy=0.
\end{align}

(3) を用いて書き直せば

(6)

  \mathit\Phi_udu+\mathit\Psi_udv+\mathit\Phi_xdx+\mathit\Psi_xdy=0,
(7)

  \mathit\Psi_udu+\mathit\Phi_udv+\mathit\Psi_xdx+\mathit\Phi_xdy=0.

(7)i を掛けて (6) に加えて


  (\mathit\Phi_u+i\mathit\Psi_u)(du+idv)+(\mathit\Phi_x+\mathit\Psi_y)(dx+idy)=0,

すなわち


  \frac{du+idv}{dx+idy}
 =-\frac{\mathit\Phi_x+i\mathit\Psi_x}{\mathit\Phi_u+i\mathit\Psi_u}.

従って

\frac{dw}{dz}=-\frac{F_z}{F_w}.

故に wz の函数として解析的(正則)である.

§82 の定理から導かれた上記の結果は局所的であるが,解析性を利用すれば,いくぶん精密な結論が得られる.

(1º)
定理 76 において簡単のために z-z_0,w-w_0z,w を代用すれば,f'(0)\ne 0 を用いて,z=0 の近傍で
(8)

  w=f(z)=a_1z+a_2z^2+\cdots,\quad(a_1\ne 0).
さて w=0 の近傍で逆函数が正則であることが知られているから,
(9)
z=b_1w+b_2w^2+\cdots
と置いてよい.これを (8) に代入すれば,定理 58 によって (8) の右辺が w の巾級数になるから,巾級数の一意性によって係数 b_1,b_2,\ldots が逐次に計算される(未定係数法).そのようにして得られる巾級数 (9)w=0 の近傍で収束することはもちろん既知であるが,少なくとも (9) が収束する限り,逆函数が一意的である(解析的延長の原則).
(2º)
上記逆函数が確定である z 平面の領域内において,原点を中心とする円を C とすれば,(9) における係数 bn が見やすい形に書き表される.今 z_1C 内の点とし,また w_1=f(z_1) として
(10)

  I=\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{zf'(z)dz}{f(z)-w_1}
と置けば,被積分函数は C 内で z=z_1 において一次の極を有するだけだから,Iz=z_1 における留数に等しく,従って

  I=\lim_{z\to z_1}\frac{z(z-z_1)f'(z)}{f(z)-w_1}=z_1.
さて (10) において

 \frac{zf'(z)}{f(z)-w_1}
 =\frac{zf'(z)}{f(z)}\left\{1+\frac{w_1}{f(z)}+\frac{w_1^2}{f(z)^2}+\cdots\right\}
の一様収束性[* 1]を用いて項別積分をすれば,I すなわち z_1w_1 の巾級数に展開される.すなわち (9) において
(11)

  b_n=\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{zf'(z)dz}{f(z)^{n+1}},
または

  \frac{d}{dz}\frac{z}{f(z)^n}=\frac{1}{f(z)^n}-\frac{nzf'(z)}{f(z)^{n+1}}
を用いて

  nb_n=\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{dz}{f(z)^n}.
右辺は z=0 における f(z)^{-n} の留数である.従って
(12)

  b_n=\frac{1}{n!}\left[
    \frac{d^{n-1}}{dz^{n-1}}\left(\frac{z}{f(z)}\right)^n
  \right]_{z=0}.
これが (9) における係数 b_n の値である[Lagrange の展開].
応用上しばしば遭遇するように,zw との関係が
(13)
z=a+w\varphi(z)
の形で与えられる場合に順応するために,書き換えるならば,

  z_0=a,\quad w_0=0,\quad \varphi(a)\ne 0
として(もちろん \varphi(z)z=a の近傍で正則とする)
(14)
\left.\begin{align}
  &z=a+b_1w+b_2w^2+\cdots\\
  &b_n=\frac{1}{n!}\frac{d^{n-1}}{da^{n-1}}\varphi(a)^n.
\end{align}\quad \right\}
[附記] 
展開 (9) の収束半径の一つの限界が,次のようにして得られる.今 z 平面において,原点を中心として原点以外 f(z) の零点を含まない円 C の周上で |f(z)| の最小値を m>0 とすれば,|w|<m なるとき,w=f(z)C 内にただ一つの根を有する[* 2].すなわち w 平面の円 \mathit\Gamma(|w|<m) の内では,逆函数 z=g(w) が確定だから,(9) の収束変形は少くとも m である. 一例として天文学で出てくる Kepler の方程式
z=a+w\sin z
を取る.a\ne n\pi ならば (14) によって
(15)

 z=a+w\sin a+\frac{w^2}{2!}\frac{d\sin a}{da}+\cdots
    +\frac{w^n}{n!}\frac{d^{n-1}(\sin a)^n}{da^{n-1}}+\cdots.
a は実数,0<a<\pi とすれば,
w=\frac{z-a}{\sin z}
z=a を中心として半径 ra および \pi-a を超えない円 C において正則であるが,その円周上で

 |w|=\left|\frac{z-a}{\sin z}\right|\geqq \frac{2r}{e^r+e^{-r}}.
さて \tfrac{2r}{e^r+e^{-r}} の最大値を求めるならば,それは
(16)
r>0,\quad e^{2r}=\frac{r+1}{r-1} なるときの \sqrt{r^2-1}
である.Stirltjes の計算によれば,その値は
r_0=1{.}1996\ldots,\quad \sqrt{r^2-1}=0{.}66274\ldots.
これから (15) の収束半径の限界が得られる.
(3º)
なお一般に z=0 において f'(z)=0 なるとき
w=f(z)=az^k(1+a_1z+\cdots).
k>1,\quad a\ne 0
とする.然らば
W^k=\frac{w}{a}
と置けば
W=z(1+a_1z+\cdots)^{\frac{1}{k}}
から,二項定理によって z=0 の近傍で
W=z(1+c_1z+\cdots).
従って (1º) によって W=0 の近傍で
z=W+b_1W^2+\cdots.
故に,この場合には逆函数 zw^{\frac{1}{k}} の巾級数として表わされる.すなわち zw の函数として w=0 の近傍で多意(k 意)である.

  1. C において zw とは一対一対応で,z=0w=0 に対応するから,C の周上では,f(z)\ne 0,従って |f(z)| の最小値 m>0.故に |w_1|<m とすれば,|\tfrac{w_1}{f(z)}|\leqq \tfrac{|w_1|}{m}<1.これから一様収束性が得られる.ただし,仮定 |w_1|<m は証明の手段で,(9) を拘束するのではない.
  2. Rouché の定理(267頁).

[編集] 86.曲線の方程式

x,y を平面上の直角座標とすれば,方程式

F(x,y)=0

は一般に一つの曲線を表わす.今 P_0=(x_0,y_0) において F(x_0,y_0)=0 とすれば,P_0 は曲線上の一点であるが,もしも F_y(x_0,y_0)\ne 0 ならば,定理 71 によって P_0 を通る曲線のただ一つの枝 y=f(x) がある.もしまた F_x(x_0,y_0)\ne 0 ならば,この枝線は x=g(y) なる形にも表わされる. 点 P_0 における y=f(x) への接線の方程式は

y-y_0=f'(x)(x-x_0)

であるが,

\frac{dy}{dx}=-\frac{F_x}{F_y}

だから,接線の方程式を

(x-x_0)F_x(x_0,y_0)+(y-y_0)F_y(x_0,y_0)=0

のように x,y に関して対称なる形に書くことができる.

曲線 F(x,y)=0 の一点において F_x\ne 0 または F_y\ne 0 ならば,その点を曲線上の正則点という.正則点においては曲線はただ一つの接線を有する.F_x=0 ならば接線は x 軸に平行,F_y=0 ならば,y 軸に平行である.もしも反対に F_x=0 かつ F_y=0 ならば,その点を特異点という.

定理 71 によって,曲線 F(x,y)=0 を正則点の近傍で,局部的に y=f(x) または x=g(y) のような形に表わすことができるが,ある場合にはそれを適当に応用して,曲線の全体の形を知ることができる.すなわち曲線を追跡することができる.次にその一例を掲げる.

[例 1]
(1)
F(x,y)=x^3+y^3-3axy=0,\quad (a\ne 0)

この曲線を Descartes の葉線(folium cartesii)という.

(1) において a>0 とする.(さもなければ,x 軸と y 軸との向きを反対にすればよい.)ここでは
F_x=3(x^2-ay),\quad F_y=3(y^2-ax).
故に放物線
(2)
y^2=ax
の外部では F_y>0,内部では F_y<0
まず第一象限内で,放物線 (2) の外部において枝線を求めよう.放物線 (2) の上で F(x,y) が取る値は xy^2/a を代入して求められる.すなわち
y^3\left(\frac{y^3}{a^3}-2\right)
で,第一象限では
0<y<a\sqrt[3]2
 従って 0<x<a\sqrt[3]4 なる間(OA との間)で F(x,y)<0.然るに各縦線上において y が十分大きくなれば F(x,y) がついには正になるのだから,放物線 (2) の上側に UNIQ480199f530405d14-math-0000035A-QINU から A に至る一つの枝線があるが,(1)x,y に関して対称であるから,この枝線は角 xOy の二等分線を軸として OB と対称である.

y 軸の左側では F_y>0 で,各縦線上で F(x,y)-\infty から +\infty まで単調に増大するから,一つの枝線があるが,x 軸上で F(x,y)<0,また放物線 F_x=x^2-ay=0 の上では F(x,y)=x^3(\tfrac{x^3}{a^3}-2)>0 だから,この枝線 OC は第二象限において x 軸と放物線 x^2=ay との間にある.また第四象限においてこれと対称なる枝線 OD がある.

以上で x の陰伏函数としての y のすべての枝が求められたのであるが,それらは原点 O を二重点とする連結された一つの曲線を形作る.

さて曲線上で

  \frac{dy}{dx}=-\frac{F_x}{F_y}=-\frac{x^2-ay}{y^2-ax}
だから,それの符号は点 (x,y) が放物線 x^2=ayy^2=ax との内にあるか外にあるかによって決定される.たとえば枝線 OBA では,OB との間では \tfrac{dy}{dx}>0.また BA との間では \tfrac{dy}{dx}<0.その他も同様である.よって曲線上で x,y の相伴って増減する有様は図に書いたようであることがわかる.(ただし,曲線の凸凹性を \tfrac{d^2y}{dx^2} の符号によって,計算で決定することは煩雑である.それを強行するにしても,曲線 (1) が三次曲線であることを利用せねばなるまい.)
特異点 O の近傍は特別の注意を要する.O の近傍における曲線の行跡を見るために,極座標に変換すれば (1)
r=\frac{3a\,\cos\theta\,\sin\theta}{\cos^3\theta+\sin^3\theta}
になるが,あるいは t=\tan\theta とすれば,
(3)
\left.\begin{array}{c}
  x=r\cos\theta=\dfrac{3at}{1+t^3},\quad y=r\sin\theta=\dfrac{3at^2}{1+t^3},\\[10pt]
  t=\dfrac{y}{x}.\end{array}\ \right\}
よって t-\infty から +\infty まで変動するとき,曲線 (1)t を媒介変数として (3) によって表わされる.しかも曲線上の点と t の値とは一対一に対応する.
このように,曲線上の点 (x,y) の座標が或る媒介変数の有理式として表わされるとき,その曲線を有理曲線という.例えば二次曲線または特異点を有する三次曲線は有理曲線である.
t における接線の方程式は
(X-x)\frac{dy}{dx}=(Y-y)\frac{dx}{dy}
であるが,(3) によって計算すれば,簡約の後
Xt(2-t^3)-Y(1-2t^3)=3at^2
になる.

特に t=0 に対応して接線は Y=0 になる.すなわち枝線 COAO において x 軸に接する.xy とを交換して考えれば,枝線 BODO において y 軸に接することがわかる.これは |t|\to\infty なる極限の場合とも考えられる.また t\to-1 のとき,接線の極限の位置として X+Y=-a を得る.それは漸近線asymptote)である.

実際,点 t から X+Y+a=0 への距離は
\frac{3at+3at^2+a(1+t^3)}{\sqrt2(1+t^3)}=\frac{a(1+t)^2}{\sqrt2(1-t+t^2)}
で,t\to -1 のとき限りなく小さくなる. ついでに \tfrac{d^2y}{dx^2}t の函数として計算してみよう.

  \frac{dx}{dt}=\frac{3a(1-2t^3)}{(1+t^3)^2},\quad
  \frac{dy}{dt}=\frac{3a(2t-t^4)}{(1+t^3)^2},\quad
  \frac{dy}{dx}=\frac{2t-t^4}{1-2t^3}
から,簡約の後

  \frac{d}{dt}\left(\frac{dy}{dx}\right)=\frac{2(1+t^3)^2}{(1-2t^3)^2},
従って

  \frac{d^2y}{dx^2}=\frac{d}{dx}\left(\frac{dy}{dx}\right)\cdot\frac{dt}{dx}
  =\frac{2(1+t^3)^4}{3a(1-2t^3)^3}.
故に \tfrac{d^2y}{dx}t<\tfrac{1}{\sqrt[3]2} のとき正,t>\tfrac{1}{\sqrt[3]2} のとき負である.よって凸凹に関して曲線の形が大体図のようであることがわかる.

一般に曲線 F(x,y)=0 の上の一点 (x_0,y_0) において F_x(x_0,y_0)=0,F_y(x_0,y_0)=0 なるとき,その点 (x_0,y_0) を特異点ということは前に述べた.このような特異点の近傍における曲線の行跡には種々の場合がある.これは曲線論の問題であるから,ここでは二、三の簡単なる標準的の例を掲げるに止める.

[例 2]
F(x,y)=y^2-x^2(x+a)=0.すなわち y=\pm x\sqrt{x+a},F_x=-3x^2-2ax,F_y=2y.故に (0,0) は特異点であるが,a の符号によって三つの場合が生ずる.
(1º)
a>0x=0 の近傍では x+a>0 で,x 軸に関して対称なる二つの滑らかな枝線が (0,0) を通る.この場合 (0,0) はいわゆる結節点node)である. [例 1]における特異点も結節点である.
(2º)
a<0 ならば,x=0 の近傍で x+a<0 だから,それに対応する y の実数値は存在しない.(0,0) は曲線上の孤立点isolated point)である.
ファイル:図 ファイル:図 ファイル:図
(1º) y^2=x^2(x+a),\,a>0 (2º) y^2=x^2(x-1) (3º) y^2=x^3
(3º)
a=0.すなわち y=\pm x^{\frac32}x>0 なるとき x 軸に関して対称なる二つの放物線の片割れのような枝線がある.この曲線を指数 \tfrac32 にちなんで半立法放物線(semi-cubical parabola)という.二つの枝線は (0,0) において共通の接線(y=0)を有する.このような特異点を尖点cusp)という.
[例 3]
y^3-x^4=0,すなわち y=\sqrt[3]4(0,0) は特異点だけれども,曲線は放物線状で,一見特異なところはないが,ただ接線 y=0 と一次以下の接触をするために,曲率半径が無限小である.(\textstyle y'=\frac43x^{\frac13},y''=\frac49x^{-\frac23}.原点では \rho=0.)
ファイル:図 ファイル:図
y=\sqrt[3]4 y=x^2\pm x^{\frac52}
[例 4]
y^2-2x^2y+x^4-x^5=0,すなわち \textstyle y=x^2\pm x^{\frac52}.原点において曲線の二つの枝が x 軸の同じ側においてそれに接する.このような特異点を嘴点という.
[例 5]
x^4+x^2y^2-6x^2y+y^2=0.
すなわち

  y=\frac{3x^2\pm x^2\sqrt{8-x^2}}{1+x^2}
または

  x^2=\frac12(6y-y^2\pm y\sqrt{(y-4)(y-8)})
原点で二つの枝線が x 軸に接する.

曲線 F(x,y) の特異点を函数 z=F(x,y) の極値との関係において考察してみよう.曲線 F(x,y)=0 は函数 z=F(x,y) を表わす曲面と xy 平面との交わりである.特異点の条件 F_x=0,F_y=0 は点 (x_0,y_0) において z=0 が極値であるための必要条件にほかならない.

さて,もしも (x_0,y_0) において F_{xx}F_{yy}-F_{xy}^2>0 ならば,(x_0,y_0) において z=F(x,y) は極値を取る(§26)が,その極値は,この場合 F(x_0,y_0)=0 であるから,面 z=F(x,y)(x_0,y_0) において xy 平面に接するけれども,(x_0,y_0) の近傍で xy 平面に交わらない.すなわち (x_0,y_0) は曲線 F(x,y)=0 の上では孤立点である.上記[例 2]の (2º) がその一例である.

それよりも興味のあるのは P_0=(x_0,y_0) において

F_{xx}F_{yy}-F_{xy}^2< 0

なる場合である.そのとき z=F(x,y)(x_0,y_0) において極値を取らない,すなわち (x_0,y_0) の近傍で F(x,y) は正にもなり,また負にもなる.すなわち

(4)

  (F_{xx})_0\cos^2\theta+2(F_{xy})_0\cos\theta\sin\theta+(F_{yy})_0\sin^2\theta=0

によって定められる \tan\theta の二つの値によって限られる二組の対頂角の内部において,F(x,y)P_0 の近傍で正または負の値を取るのであった.

この場合,曲線 F(x,y)=0 の二つの滑らかな枝線が P_0 において交叉する.P_0 における接線 y-y_0=(x-x_0)\tan\theta において,\tan\theta(4) から求められる.(311 頁[例 1]では \tan\theta=0 および \infty.また313 頁[例 2],(1º) では \tan\theta=\pm\sqrt{a}.)

[編集] 87.曲面の方程式

x,y,z を三次元空間における直角座標とすれば,方程式

(1)
F(x,y,z)=0

は一般に一つの曲面を表わす.曲面上の点 P_0=(x_0,y_0,z_0) において F_z\ne 0 ならば,P_0 の近傍において (1)

z=f(x,y)

なる形に表わされる(定理 72). この部分において,曲面上の点 (x,y,z) における接平面の方程式は


  Z-z=(X-z)\frac{\partial f}{\partial x}+(Y-y)\frac{\partial f}{\partial y}

で,\tfrac{\partial f}{\partial x}=-\tfrac{F_x}{F_z}, \tfrac{\partial f}{\partial y}=-\tfrac{F_y}{F_z} だから,この方程式が

(2)
(X-x)F_x+(Y-y)F_y+(Z-z)F_z=0

になって,それは x,y,z に関して対称なる形である.曲面上の点 (x,y,z) において F_x,F_y,F_z の中の一つが 0 にならないならば,それに対応して x,y,z の中の一つが他の二つの函数として表わされるから,接平面の方程式 (2)F_x^2+F_y^2+F_z^2\ne 0 なるとき常に有効である.その条件の下において,法線の方向余弦は

(3)

  \cos\alpha=\frac{F_x}{\sqrt{F_x^2+F_y^2+F_z^2}},\quad
  \cos\beta=\frac{F_y}{\sqrt{F_x^2+F_y^2+F_z^2}},\quad
  \cos\gamma=\frac{F_z}{\sqrt{F_x^2+F_y^2+F_z^2}}

である.ただし,この方向は F>0 なる向きを示すのである.すなわち

\begin{align}
  &F(x+\rho\cos\alpha,y+\rho\cos\beta,z+\rho\cos\gamma)\\
  &\qquad =F(x,y,z)+\rho(F_x\cos\alpha+F_y\cos\beta+F_z\cos\gamma)+o(\rho)\\
  &\qquad =\rho\sqrt{F_x^2+F_y^2+F_z^2}+o(\rho)
\end{align}

だから,\rho\gtrless 0 に従って左辺が \gtrless 0

曲面 F=0 の上の一点で F_x,F_y,F_z が同時に 0 になるならば,その点は曲面の特異点で,そこでは一般に確定の接平面が存在しない.

数量の場と等位面
函数 u=F(P) が与えられたとき,空間の各点 P=(x,y,z) に数値 u が配置されているとみて,その空間の一区域をスカラー場scalar field)または数量の場という.もしもその区域において F_x^2+F_y^2+F_z^2\ne 0 ならば,F(P_0)=c_0 とするとき P_0 を通る一つの面 F(x,y,z)=c_0 がある.それをその数量の場における等位面niveau surface)という.上記仮定によって c_0F(P) の極大または極小値でない(§26)から,c_0 に近い或る範囲内の c の値に対応する等位面 F(P)=c の一つの系列が生じて,それらが空間の一区域を満たすであろう.曲面 F=0c=0 に対応する等位面にほかならない. さてこの区域内の各点 P を起点として
F_x(P),\quad F_y(P),\quad F_z(P)
を成分とするベクトルをその点における数量の場の勾配gradient)といい,それを
\text{grad}\,F
で表わす.

このように,空間の各点 P に或るベクトルが配置されているとき,それをベクトルの場vector field)という.

上記のベクトル \text{grad}\,F は,(3) からみえるように,P において等位面に垂直で,その大きさは

  |\text{grad}\,F|=\sqrt{F_x^2+F_y^2+F_z^2}
である.今点 P において方向余弦が \cos\lambda,\cos\mu,\cos\nu なる向きに F を微分すれば,その微分商は(§22

  \lim_{PP'\to 0}\frac{F(P')-F(P)}{PP'}=F_x\cos\lambda+F_y\cos\mu+F_z\cos\nu
である. またはベクトル PP' の成分を dx,dy,dz とし,その長さを ds とすれば,\cos\lambda=\tfrac{dx}{ds},\cos\mu=\tfrac{dy}{ds},\cos\nu=\tfrac{dz}{ds} だから,上記 PP' の向きへの微分商は

  \frac{dF}{ds}
  = \frac{\partial F}{\partial x}\frac{dx}{ds}
   +\frac{\partial F}{\partial y}\frac{dy}{ds}
   +\frac{\partial F}{\partial z}\frac{dz}{ds}
である.すなわち

  \frac{dF}{ds}=\sqrt{F_x^2+F_y^2+F_z^2}\,(
    \cos\alpha\cos\lambda+\cos\beta\cos\mu+\cos\gamma\cos\nu
  ) = |\text{grad}\,F|\cos\theta,
ただし,\theta\text{grad}\,F\overline{PP}' との間の角である.故に,P におけるベクトル \text{grad}\,F の方向は,F(P) の増加率の最大なる向きで,\text{grad}\,F の大きさは,その最大増加率に等しい. \tfrac{dF}{ds}PP' の上への \text{grad}\,F の正射影,すなわち PP' に関するベクトル \text{grad}\,F の成分である.
二つの曲線の交わり
P_0=(x_0,y_0,z_0) が二つの曲面
(4)
F(x,y,z)=0,\quad G(x,y,z)=0
に共通で,その点において行列式
(5)

  \frac{D(F,G)}{D(y,z)},\quad\frac{D(F,G)}{D(z,x)},\quad\frac{D(F,G)}{F(x,y)}
のうち少くとも一つが 0 でないとする.例えば P_0 において,

 \left[\frac{D(F,G)}{D(y,z)}\right]_0\ne 0
とする.然らば P_0 の近傍で,(4) から
(6)
y=\varphi(x),\quad z=\psi(x)
を得る(定理 73).\varphi,\psi は微分可能で,x=x_0 のとき y_0,z_0 になる.すなわち P_0 の近傍では,(4) の二つの曲面の交わりは曲線 (6) である,換言すれば,P0 の近傍で,曲線 (6) が二つの方程式 (4) で表わされる. P_0 における曲線 (6) の接線の方程式は

  \frac{x-x_0}{1}=\frac{y-y_0}{\varphi'(x_0)}=\frac{z-z_0}{\psi'(x_0)}
であるが,\varphi'(x_0),\psi'(x_0)
\left.\begin{align}
  F_x+F_y\varphi'(x)+F_z\psi'(x)=0,\\
  G_x+G_y\varphi'(x)+G_z\psi'(x)=0
\end{align}\right\}
から求められるから,接線の方程式は次のように書かれる.

  \dfrac{x-x_0}{\left[\dfrac{D(F,G)}{D(y,z)}\right]_0}
 =\dfrac{y-y_0}{\left[\dfrac{D(F,G)}{D(z,x)}\right]_0}
 =\dfrac{z-z_0}{\left[\dfrac{D(F,G)}{D(x,y)}\right]_0}.
これは P_0 における二つの曲面 (4) の接平面
\begin{align}
  &(F_x)_0(x-x_0)+(F_y)_0(y-y_0)+(F_z)_0(z-z_0)=0.\\ 
  &(G_x)_0(x-x_0)+(G_y)_0(y-y_0)+(G_z)_0(z-z_0)=0
\end{align}
の交わりである.

もしも P_0 において (5) の三つの行列式が同時に 0 になるならば,P_0 において二つの直線は互に接して,P_0 は一般に曲線上の特異点である.

媒介変数によって曲面を表わすこと
一つの媒介変数によって曲線を定義する(§12)のと同様に,二つの媒介変数によって曲面を表わすことが,本来は合理的である.すなわち媒介変数 u,v の函数
(7)

  x=f(u,v),\quad y=g(u,v),\quad z=h(u,v)
を点の直角座標とすれば,u,vuv 平面上の或る区域内において変動するとき,点 (x,y,z) が一つの曲面を画くとするのである.z=f(x,y)x=u,y=v なる特別の場合にほかならない.実際 (7) の三つの方程式のうちの二つによって u,vx,y,z の陰伏函数として与えられるから,それを他の一つの方程式に持ち込めば x,y,z のうちの一つが他の二つの函数として表わされるであろう.詳しくいえば行列式
(8)

  \frac{D(f,g)}{D(u,v)},\quad\frac{D(f,h)}{D(u,v)},\quad\frac{D(g,h)}{D(u,v)}
のうちの一つ,例えば \tfrac{D(f,g)}{D(u,v)}(u_0,v_0) において 0 に等しくないとすれば,(u_0,v_0)(x_0,y_0,z_0) が対応するとするとき,(7) の初めの二つの方程式から,(x_0,y_0) の近傍において
u=\varphi(x,y),\quad v\psi(x,y)
を得る.従って (7) の最後の方程式から
(9)
z=h(\varphi,\psi)=F(x,y)
を得る.(7) から得られる (x,y,z) は,(x_0,y_0,z_0) の近傍では,(9) によって与えられるものと全体において同一である.
[注意] 
uv 平面上の或る閉域において (u,v)(7)(x,y,z) との間の対応が一対一であるとき,曲面 (7)Jordan 曲面という.上記のように,(8) の行列式の中一つが (u_0,v_0)0 にならないならば,(u_0,v_0) の近傍では (u,v)(x,y,z) との間に一対一の対応が成り立つのである.

[編集] 88.包絡線

xy 平面において媒介変数 \alpha を含む方程式

(1)
f(x,y,\alpha)=0

によって曲線の一つの族(family)が表わされる.\alpha の値を固定すれば,(1) は一つの曲線を表わすが,\alpha の値を連続的に変えるならば,その曲線は形および位置において連続的に変わるであろう.さて一つの曲線 E(1) の各曲線に接して,しかもその接点の軌跡であるとき,E曲線族 (1)包絡線という.

例えば,一つの曲線 C のすべての法線の包絡線は C の縮閉線である(§27).また曲線 C のすべての接線の包絡線はすなわち曲線 C 自身である.

曲線族 (1) が包絡線 E を有するとすれば,(1)E との接点を (x,y) とするとき,x,y\alpha の函数である.それを

(2)
x=\varphi(\alpha),\quad y=\psi(\alpha)

とすれば,これが \alpha を媒介変数としての E の方程式である.(2)(x,y) において (1) に接するから

f_x\varphi'(\alpha)+f_y\psi'(\alpha)=0.

然るに \varphi(\alpha),\psi(\alpha)(1) の上の点だから

f(\varphi(\alpha),\psi(\alpha),\alpha)=0,

\alpha に関して微分して

f_x\varphi'(\alpha)+f_y\psi'(\alpha)+f_\alpha=0,

従って

f_\alpha=0.

故に包絡線の各点 (2) は,曲線

(3)
f(x,y,\alpha)=0,\quad f_\alpha(x,y,\alpha)=0

の交わりである. 逆に,(3) の二つの方程式から,定理 73 の条件の下において,

(4)
x=\mathit\Phi(\alpha),\quad y=\mathit\Psi(\alpha)

なる \alpha の函数が生ずる.或いは \alpha をおい出して

(5)
R(x,y)=0.

さて


  f(\mathit\Phi(\alpha),\mathit\Psi(\alpha),\alpha)=0,\quad
  f_\alpha(\mathit\Phi(\alpha),\mathit\Psi(\alpha),\alpha)=0

から

f_x\mathit\Phi'(\alpha)+f_y\mathit\Psi'(\alpha)+f_\alpha=0,

従って

f_x\mathit\Phi'(\alpha)+f_y\mathit\Psi'(\alpha)=0.

故に f_x=f_y=0 でないならば,曲線 (5)(1) に接する.すなわち \mathit\Phi(\alpha),\mathit\Psi(\alpha) は包絡線上の点である.故に (5)曲線族 (1) の特異点の軌跡と (1) の包絡線とから成り立つものである.方程式の用語を転用して (5)(1)判別式という.

[例 1]
x^4-y^2+(x-\alpha)^2=0.この場合には f_\alpha=0x-\alpha=0.よって (5)y^4-x^2=0.これは三つの直線 y=0,y=\pm1 を表わす.y=0 は特異点(x=\alpha,y=0)の軌跡で,y=\pm1 が包絡線である.
x^4-y^2+(x-\alpha)^2=0とその三つの包絡線 定長lなる直線とその包絡線なるasteroid
[例 2]
定長 l なる直線の両端が直交軸上を動くとき,その方程式は
x\cos\alpha+y\sin\alpha=l\sin\alpha\cos\alpha.
\alpha に関して微分すれば
-x\sin\alpha+y\cos\alpha=l\cos2\alpha.
ここでは (4)
x=l\sin^3\alpha,\quad t=l\cos^3\alpha.
故に包絡線として
x^{\frac23}+y^{\frac23}=l^{\frac23}
を得る(アステロイド,asteroid83 頁).

(1) の一つの曲線 f(x,y,\alpha)=0 と,それに近接する f(x,y,\alpha+\Delta\alpha)=0 とが交わって,\Delta\alpha が限りなく小さくなるとき,その交点が極限において f(x,y,\alpha) の上の点 (x_1,y_1) に近づくとすれば,(x_1,y_1) は判別式 R(x,y)=0 上の点である.実際


  f(x,y,\alpha+\Delta\alpha)-f(x,y,\alpha)
  =\Delta\alpha\cdot f_\alpha(x,y,\alpha+\theta\Delta\alpha)

から

f_\alpha(x,y,\alpha+\theta\Delta\alpha)=0,

従って \Delta\alpha\to 0 のとき,

f_\alpha(x,y,\alpha)=0.
ただし,(1) における接近する曲線が交わらないでも,包絡線の生ずる場合はある.例えば三次放物線の族
y=(x-\alpha)^3
は交点を有しないけれども,y=0 が包絡線である. 同様にして,一つまたは二つの媒介変数を有する曲面族の包絡面を考察することができる.包絡は幾何学または微分方程式論において重要であるが,ここではその基本的概念を述べるに止める.

[編集] 89.陰伏函数の極値

陰伏函数の極値の最も簡単な一例として,次の問題を考察する:

[問題]
変数 x,y
(1)
\varphi(x,y)=0
なる関係式で縛られているとき,f(x,y) の極値の必要条件を求めること.

今点 P_0=(x_0,y_0) において f(x_0,y_0)=c_0 が極値であると仮定する.もしも P_0曲線 (1) の特異点でないならば,P_0 において \varphi_x または \varphi_y0 でない.例えば \varphi_y(P_0)\ne 0 とすれば,P_0 の近傍で,(1)

y=\mathit\Phi(x)

のような形で表わされる.それを f(x,y) へ持ち込んで

(2)
f(x,y)=f(x,\mathit\Phi(x))=F(x)

とすれば,問題F(x) の極値を求めることに帰する.その必要条件として

\frac{dF}{dx}=0

を得るが,与えられた函数 f,\varphi をもってそれを書き表わすことができる.すなわち (2) から

(3)
\frac{df}{dx}=f_x+f_y\frac{dy}{dx}=0.

然るに (1) から

(4)
\varphi_x+\varphi_y\frac{dy}{dx}=0.

従って (3)(4) から

(5)
\frac{f_x}{\varphi_x}=\frac{f_y}{\varphi_y}

を得る.(x_0,y_0)(1)(5) とを満足せしめねばならない.これが極値の必要条件である.

f(x,y) の等位線の族 f(x,y)=cxy 平面の一部分が覆われているとして,点 P が曲線 \varphi(x,y)=0 の上を動くと考える.然らば P の一つの位置における f(P) の値はすなわち P を通る等位線 f(x,y)=c の位を示す数 c である.さて,もしも \varphi=0 の上の点 P_0 において f(x,y) が極値を取るならば,(5) によって,\varphi=0P_0 において等位線 f(x,y)=c_0 に接する.(ただし P_0\varphi=0 の特異点ではないと仮定してある.特異点においては \varphi_x=\varphi_y=0 だから,(5) は当然成り立つ).そうしてその等位線 f(x,y)=c_0 の位を示す数 c_0 がすなわち f(x,y) の極値である.

しかし,(5) は極値の必要条件に過ぎないから,f=c_0\varphi=0 とが接しても,c_0f の極値であると断言することはできない.

[例]
定点 A=(a,b) から曲線 \varphi(x,y) への距離の極大極小を求めること. 距離の代りに,その平方を取って
f(x,y)=(x-a)^2+(y-b)^2
とすれば,極値の必要条件として
\frac{\varphi_x}{x-a}=\frac{\varphi_y}{y-b}
を得る.曲線上の点 P がこの方程式を満足せしめるならば,P は曲線上の特異点(\varphi_x=\varphi_y=0)であるか,または AP が曲線への法線である.よって極大または極小距離の候補者として,A からの法線と,A と特異点とを結ぶ線分を取るべきである. しかし,実際極値を決定するには,めんどうな計算を要する(例えば点 (0,1) から曲線 y^2=x^3 への最短距離を求めてみるとよい).

一般に n 個の変数 x_1,x_2\ldots,x_n の函数

f(x_1,x_2,\ldots,x_n)

(6)
\varphi^{(i)}(x_1,x_2,\ldots,x_n)=0
(i=1,2,\ldots,p;\;p<n)

なる条件の下で,点 P^0=(x_1^0,x_2^0,\ldots,x_n^0) において極値を取るとする. もしも P^0 の近傍で,\varphi^{(1)},\varphi^{(2)},\ldots,\varphi^{(p)} が互に独立で,例えば

(7)
\frac{D(\varphi^{(1)},\varphi^{(2)},\ldots,\varphi^{(p)})}{D(x_1,x_2\ldots,x_p}\ne 0

ならば,x_1,x_2,\ldots,x_p はその他の x_\rho\,(\rho=p+1,\ldots,n) の函数になり,従って fx_\rho のみの函数になる.よって

f(x_1,x_2,\ldots,x_n)=F(x_{p+1},\ldots,x_n)

と書くならば,極値の必要条件は

(8)
\frac{\partial F}{\partial x_\rho}=0\qquad(\rho=p+1,\ldots,n)

であるが,これらを f および \varphi^{(i)} の偏微分商 f_\nu=\tfrac{\partial f}{\partial x_\nu},\varphi_\nu=\tfrac{\partial \varphi^{(i)}}{\partial x_\nu} を用いて書き表わすことができる.まず (8) から

(9)
f_\rho+\sum_{\nu=1}^p f_\nu\frac{\partial x_\nu}{\partial x_\rho}=0,\quad(p<\rho\leqq n).

さて \tfrac{\partial x_\nu}{\partial x_\rho}(6) から求められる(定理 73).すなわち

(10)
\varphi^{(i)}_\rho+\sum_{\nu=1}^p \varphi^{(i)}_\nu\frac{\partial x_\nu}{\partial x_\rho}=0.

(9)(10) から \tfrac{\partial x_\nu}{\partial x_\rho} を消去すれば,

(11)
\frac{D(f,\varphi^{(1)},\varphi^{(2)},\ldots,\varphi^{(p)})}{D(x_1,x_2,\ldots,x_p,x_\rho)}=0,
(\rho=p+1,\ldots,n).

すなわち P^0=(x_1^0,x_2^0,\ldots,x_n^0) は条件 (7) の下において,(6)(11) と合わせて n 個の方程式を満足せしめねばならない.これが極値の必要条件である.

上記の考察においては陰伏函数の理論を応用したが,それよりも直截的に,かつすべての変数に関して対称的に,次のように考えることができる.

前のように P^0 を極値点とするならば,P^0 において

d\varphi^{(1)}=0,d\varphi^{(2)},\ldots,d\varphi^{(p)}=0

なるとき,

df=0

でなければならない。すなわち(x_i に関する微分を添字 i で示して)

(12)
f_1dx_1+f_2dx_2+\cdots+f_ndx_n=0

(13)
\varphi^{(i)}_1dx_1+\varphi^{(i)}_2dx_2+\cdots+\varphi^{(i)}_ndx_n=0\qquad (i=1,2,\ldots,p)

からの帰結である.従って一次方程式の理論によって (12)(13) の一次結合である.故に

(14)
f_\nu=\lambda_1\varphi^{(1)}_\nu+\lambda_2\varphi^{(2)}_\nu+\cdots+\lambda_p\varphi^{(p)}_\nu,\quad(\nu=1,2,\ldots,n)

なる乗数 \lambda_1,\lambda_2,\ldots,\lambda_p が存在する.すなわち x_1^0,x_2^0,\ldots,x_n^0\lambda_1,\lambda_2,\ldots,\lambda_p とが (6)(14) と合わせて n+p 個の方程式を満足せしめねばならない.ここでは乗数 (\lambda_i)(x_\nu^0) を求めるための補助の未知数である(Lagrange の乗数法).すなわち (14) から \lambda_i を消去すれば仮定 (7) の下において (11) を得る.

本節の初めに述べた場合には,n=2,p=1 で,(14)
f_x=\lambda\varphi_x,\quad f_y=\lambda\varphi_y
である.すなわち \lambda(5) の両辺における相等しい比の値である.

[編集] 練習問題(7)

(1)
定理 72(296 頁)の場合において \textstyle
  \frac{\partial^2 z}{\partial x^2},
  \frac{\partial^2 z}{\partial x\partial y},
  \frac{\partial^2 z}{\partial y^2}
を求めること.
[解]
\begin{align}
 &\frac{\partial^2 z}{\partial x^2}
 =-\frac{F_{xx}}{F_z}+\frac{2F_xF_{xz}}{F_z^2}-\frac{F_x^2F_{zz}}{F_z^3},\\
 &\frac{\partial^2 z}{\partial x\partial y}
 =-\frac{F_{xy}}{F_z}+\frac{F_xF_{yz}+F_yF_{xz}}{F_z^2}-\frac{F_xF_yF_{zz}}{F_z^3},\\
 &\frac{\partial^2 z}{\partial y^2}
 =-\frac{F_{yy}}{F_z}+\frac{2F_yF_{yz}}{F_z^2}-\frac{F_y^2F_{zz}}{F_z^3}.
\end{align}
(2)
x,y;u,v の間に二つの関係式が与えられて,x,yu,v の函数として,また u,vx,y の函数として定められるときは
\begin{align}
  &\frac{\partial u}{\partial x}\frac{\partial x}{\partial u}
  +\frac{\partial v}{\partial x}\frac{\partial x}{\partial v}=1,&
  &\frac{\partial u}{\partial x}\frac{\partial y}{\partial u}
  +\frac{\partial v}{\partial x}\frac{\partial y}{\partial v}=0,\\
  &\frac{\partial u}{\partial y}\frac{\partial x}{\partial u}
  +\frac{\partial v}{\partial y}\frac{\partial x}{\partial v}=0,&
  &\frac{\partial u}{\partial y}\frac{\partial y}{\partial u}
  +\frac{\partial v}{\partial y}\frac{\partial y}{\partial v}=1.
\end{align}
[解]
\textstyle
  du=\frac{\partial u}{\partial x}dx+\frac{\partial u}{\partial y}dy,
  dv=\frac{\partial v}{\partial x}dx+\frac{\partial v}{\partial y}dy
dx,dy に関して解けば

  dx=\frac{\partial x}{\partial u}du+\frac{\partial x}{\partial v}dv,\quad
  dy=\frac{\partial y}{\partial u}du+\frac{\partial y}{\partial v}dv
が得られるはずだから.
(3)

  \varphi(x_1,x_2,\ldots,x_n;\;u_1,u_2,\ldots,u_m)
x_1,x_2,\ldots,x_n に関しては同次二次式なるとき

  \frac{\partial\varphi}{\partial x_i}=p_i,\quad(i=1,2,\ldots,n)
として,x_1,x_2,\ldots,x_n の代りに p_1,p_2,\ldots,p_n を独立変数として

  \varphi(x,u)=\psi(p,u)
とすれば

  \frac{\partial\psi}{\partial p_i}=x_i,\quad
  \frac{\partial\psi}{\partial u_i}=-\frac{\partial\varphi}{\partial u_i}.
(4)
zx,y の函数なるとき

  \frac{\partial z}{\partial x}=p,\ \frac{\partial z}{\partial y}=q;\;
  \frac{\partial^2 z}{\partial x^2}=r,\ 
  \frac{\partial^2 z}{\partial x\,\partial y}=s,\ 
  \frac{\partial^2 z}{\partial y^2}=t
と書く.今独立変数として p,q を取り
Z=px+qy-z
p,q の函数とみて \textstyle
  \frac{\partial^2 Z}{\partial p^2}=R,
  \frac{\partial^2 Z}{\partial p\partial q}=S,
  \frac{\partial^2 Z}{\partial q^2}=T
と書くならば
dZ=x\,dp+y\,dq,
(すなわち \textstyle
  \frac{\partial Z}{\partial p}=x,\frac{\partial Z}{\partial q}=y
).また
Legendre の変換)

  \frac{R}t=\frac{S}{-s}=\frac{T}r=\frac{1}h,\quad(h=rt-s^2).
(5)
Vx,y,z の函数として

  \Delta_1
  =\left(\frac{\partial V}{\partial x}\right)^2
  +\left(\frac{\partial V}{\partial y}\right)^2
  +\left(\frac{\partial V}{\partial z}\right)^2,\quad
  \Delta_2
  =\frac{\partial^2 V}{\partial x^2}
  +\frac{\partial^2 V}{\partial y^2}
  +\frac{\partial^2 V}{\partial z^2}
と置く.今直角座標を (x,y,z) から (X,Y,Z) に変換すれば

  \Delta_1
  =\left(\frac{\partial V}{\partial X}\right)^2
  +\left(\frac{\partial V}{\partial Y}\right)^2
  +\left(\frac{\partial V}{\partial Z}\right)^2,\quad
  \Delta_2
  =\frac{\partial^2 V}{\partial X^2}
  +\frac{\partial^2 V}{\partial Y^2}
  +\frac{\partial^2 V}{\partial Z^2}.
(6)
領域 K において連続的微分可能なる函数 f(x,y) が,x+ay のみの函数なるために必要かつ十分なる条件は f_y=af_x である(a は定数).
[解]
u=f(x,y),v=x+ay と置けば,条件は \tfrac{D(u,v)}{D(x,y)}=0 である.この場合定理 75r=1
(7)
楕円体の中心の通る截面の主軸を極値として求めること.
[解]
楕円体と截面とを(直交座標)

  \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}+\frac{z^2}{c^2}=1,

  lx+my+nz=0,\quad(l^2+m^2+n^2=1)
として,r^2=x^2+y^2+z^2 の極値を求めるのである. 極値は

  \frac{a^2l^2}{r^2-a^2}+\frac{b^2m^2}{r^2-b^2}+\frac{c^2n^2}{r^2-c^2}=0
の根である.
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