解析概論/第6章

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目次

[編集] 第 6 章 Fourier 式展開

解析概論/第6章/Fourier級数

[編集] 71. 直交函数系

区間 [a,b]において f(x), g(x) が積分可能で,

\int_a^b f(x)g(x)dx = 0

なるとき,f(x), g(x) を互に直交orthogonal)という.

直交というのは幾何学との類似による.直角座標に関して,ベクトル (a_1, a_2, a_3),(b_1, b_2, b_3)a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3=0 なるとき互に直交する.上記直交の定義はそれの拡張である.

区間が指定されているとき,上記のような積分を (f,g) と略記する.すなわち

(f,g) = \int_a^b f(x)g(x)dx.

特に

さてf(x)を連続とすれば,(f,f)=0f(x)=0 なるときに限る.従って f(x) \neq 0 とすれば,(f,f) > 0.そのとき f(x) を定数 \sqrt{(f,f)} で割って

f_0(x) = \frac{f(x)}{\sqrt{(f,f)}}

と置けば

(f_0,f_0) = \frac{1}{(f,f)}\int_a^b f(x)^2 dx = 1.

このとき f_0(x)正規化(または標準化)されている(normalized)という. 区間 [a,b] において与えられた函数

\phi_1(x), \phi_2(x), \ldots, \phi_n(x), \ldots

が二つずつ互に直交で,かつ各 \phi_i(x) が正規化されているとき,その全体を正規直交函数系という.すなわち

(\phi_i, \phi_i)=1,\qquad(\phi_i, \phi_j)=0.\qquad(i \neq j)

例えば

1,\ \cos x,\ \sin x,\ \ldots,\ \cos nx,\ \sin nx,\ \ldots

は区間[-\pi,\pi]において直交系であるが,それは正規化されてはいない.正規系を得るためには

\frac{1}{\sqrt{2\pi}}, \ldots, \frac{\cos nx}{\sqrt{\pi}}, \frac{\sin nx}{\sqrt{\pi}}, \ldots

を取ればよい. 直交函数系の他の一例は,区間 [-1, +1] における Legendre の多項式

P_0(x), P_1(x), \cdots, P_n(x), \cdots

である.これも正規化されてはいない.正規系を得るためには \textstyle\sqrt{\frac{2n+1}{2}}P_n(x) を取ればよい(§36, (3º) 参照).

重要なのは直交性で,正規化は一般論において記述の簡約のためである.


  1. (f,f)Nf,また \sqrt{(f,f)}\|f\| と記略することもある(274頁,[附記]参照).

[編集] 72. 任意函数系の直交化

区間 [a,b] において与えられた函数系(簡単のために連続性を仮定する)

(1)
u_1(x), u_2(x), \ldots, u_n(x), \ldots

から,一次結合によって直交系が作られる. 今 (1) を一次独立とする.その意味は任意に n を取るとき,

(2)
a_1u_1(x) + a_2u_2(x) + \cdots + a_nu_n(x) = 0

なる関係式が,定数なる係数 a_i をもって区間 [a,b] において常に成り立つことは, a_1=a_2=\cdots=a_n=0 なる場合以外にはないことをいう.

従って特に [a,b] において常に u_n(x)=0 ではありえない.――もしも u_n(x)=0 ならば,a_1=a_2=\cdots=a_{n-1}=0, a_n=1 として (2) が成り立つ.

正規直交函数系 \varphi_n(x) は一次独立である.――もしも

\sum_{i=1}^n a_i\varphi_i(x) = 0
ならば,\varphi_i(x) を掛けて [a,b] において積分して a_i=0 を得る.

さて函数列 (1) から,次のような一次結合

(3)
\varphi_n(x) = c_{n,1}u_1(x) + c_{n,2}u_2(x) + \cdots + c_{n,n}u_n(x) \quad(n=1,2,\ldots)

によって正規直交列 \varphi_n(x) が作られる.問題の要点はまずすべての n に関して \varphi_n\varphi_1, \varphi_2, \ldots, \varphi_{n-1} と直交ならしめることにあるが,それには \varphi_nu_1, u_2, \ldots, u_{n-1} と直交ならしめればよい.今

(4)
(u_i, u_j)=a_{ij},
(5)
\mathit\Phi_n(x) = \begin{vmatrix}
a_{11}\quad & a_{12}\quad & \cdots & a_{1n}\quad \\
a_{21}\quad & a_{22}\quad & \cdots & a_{2n}\quad \\
\cdots & \cdots & \cdots & \cdots \\
a_{n-1,1} & a_{n-1,2} & \cdots & a_{n-1,n} \\
u_1(x) & u_2(x) & \cdots & u_n(x)
\end{vmatrix}

と置く.然らば, \mathit\Phi_n(x)u_1(x), u_2(x), \ldots, u_n(x) の一次結合で,(u_i, \mathit\Phi_n) は上記行列式の最終行を (u_i, u_1), \ldots, (u_i, u_n),すなわち a_{i1}, \cdots, a_{in} で置き換えたものであるから (u_i, \mathit\Phi_n)=0\;(i=1, 2, \ldots, n-1).すなわち \mathit\Phi_n\mathit\Phi_1, \ldots, \mathit\Phi_{n-1} と直交する.残るところは \mathit\Phi_n の正規化である.さて一般に a_{ij}=(u_i,u_j) の行列式を

(6)
A_0=1, \quad A_n=|a_{ij}| \quad (i,j=1,2,\cdots,n)

と書けば, (u_i, \mathit\Phi_n)=0\;(i=1,2,\cdots,n-1) を用いて, (5) から

(\mathit\Phi_n, \mathit\Phi_n) = \begin{vmatrix}
a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} \\
\cdots & \cdots & \cdots & \cdots \\
\cdots & \cdots & \cdots & \cdots \\
a_{n-1,1} & & \cdots & a_{n-1,n} \\
0 & 0 & \cdots & (u_n, \mathit\Phi_n)
\end{vmatrix} = (u_n, \mathit\Phi_n)A_{n-1}.

さてまた (5)(6) から

(u_n, \mathit\Phi_n) = \begin{vmatrix}
a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} \\
\cdots & \cdots & \cdots & \cdots \\
a_{n-1,1} & a_{n-1,2} & \cdots & a_{n-1,n} \\
(u_n,u_1) & (u_n,u_2) & \cdots & (u_n,u_n)
\end{vmatrix} = A_n.

従って

(\mathit\Phi_n,\mathit\Phi_n) = A_{n-1}A_n,

故に

\varphi_n = \frac{\mathit\Phi_n}{\sqrt{A_{n-1}A_n}}\quad(n=1,2,\ldots)

は正規直交列である.

上記において A_{n-1}A_n > 0 を仮定したが,実際それは正当である.まず A_1=(u_1,u_1)>0.よって帰納法を用いて A_1, \ldots, A_{n-1} > 0 とする.然らば \mathit\Phi_nu_1, u_2, \ldots, u_n の一次結合で, u_n の係数は A_{n-1} であるが, u_1, u_2, \ldots, u_n は一次独立だから \mathit\Phi_n \neq 0,従って (\mathit\Phi_n,\mathit\Phi_n)=A_{n-1}A_n>0,故に A_n>0

上記行列式 A_n=|(u_i,u_j)| は区間 [a,b] における函数列 u_1(x), \cdots, u_n(x)Gram の行列式というものである. A_n>0u_1, u_2, \ldots, u_n が一次独立であることの判定条件である[* 1]

u_1,u_2,\ldots,u_n が一次独立でないならば A_n=0 なることは見やすい.すなわち一般に A_n\geqq0

[附記] 
Gram の行列式は次のように表される:
A_n=\frac{1}{n!}\int_a^b \cdots \int_a^b \begin{vmatrix}
u_1(x_1) & u_2(x_1) & \cdots & u_n(x_1) \\
\cdots & \cdots & \cdots & \cdots \\
u_1(x_n) & u_2(x_n) & \cdots & u_n(x_n)
\end{vmatrix}^2 dx_1 \cdots dx_n.
それによれば A_n \geqq 0 は明白である.

  1. 高木: 代数学講義346/7頁参照.

[編集] 73. 直交函数列による Fourier 式展開

区間 [a,b] において正規直交函数列が与えられているとする:

(1)
\varphi_1(x), \varphi_2(x), \ldots, \varphi_n(x), \ldots.

もしも [a,b] において

(2)
f(x) = \sum_{n=1}^\infty c_n\varphi_n(x)

なる展開が可能で,級数の項別積分が許されるならば,§70 と同様に

(f,\varphi_n) = \sum_{\nu=1}^\infty c_\nu(\varphi_\nu,\varphi_n) = c_n

によって係数 c_n が確定する.逆に与えられた f(x) から

(3)
c_n = (f, \varphi_n)

と置いて,級数

\sum c_n\varphi_n(x)

f(x)から生ずる Fourier 式級数といい,c_n=(f,\varphi_n)f(x)Fourier 式係数という.さて f(x) から生ずる Fourier 式級数は,はたしてf(x)に収束するであろうか?

これは難問題であるが,その解決の糸口を得るために次の考察を試みる.

(1º)
まず任意の係数 \gamma_i をもって,有限級数 \textstyle\sum_{i=1}^n \gamma_i\varphi_i(x) を作って,
(4)
J=\int_a^b \left\{ f(x)-\sum_{i=1}^n \gamma_i \varphi_i(x) \right\}^2 dx
を計算する.§71 の略記法によれば,
J = (f,f)-2\sum_{i=1}^n \gamma_i (f,\varphi_i) + \sum_{i=1}^n \gamma_i^2(\varphi_i, \varphi_i) + \sum_{i\neq j} \gamma_i \gamma_j(\varphi_i, \varphi_j).
仮定によって (f,\varphi_i)=c_i, (\varphi_i, \varphi_i)=1, (\varphi_i, \varphi_j)=0\;(i\neq j) だから,
(5)
\begin{align}
J &= (f,f)-2\sum_{i=1}^n c_i\gamma_i + \sum_{i=1}^n \gamma_i^2 \\
  &= (f,f)-\sum_{i=1}^n c_i^2 + \sum_{i=1}^n (c_i-\gamma_i)^2.
\end{align}
故に J\gamma_i=c_i なるとき最小である.また g \geqq 0 だから,
(6)
(f,f) \geqq \sum_{i=1}^n c_i^2.
故に無限級数\textstyle\sum_{i=1}^\infty c_i^2は収束して,
(7)
\sum_{i=1}^\infty c_i^2 \leqq (f,f).
これを Bessel の不等式という. 特に
(8)
\lim_{n\to\infty}c_n = 0.
例えば
\begin{align}
\pi a_n &= \int_{-\pi}^\pi f(x) \cos nx\,dx \to 0,\\
\pi b_n &= \int_{-\pi}^\pi f(x) \sin nx\,dx \to 0.
\end{align}
(2º)
もしも任意の f(x) に関して
(9)
\sum_{i=1}^\infty c_i^2 = (f,f)
ならば,正規直交列 \varphi_n(x)完備(または完全)(completevollständig)であるといい,(9)完備条件(または Parseval の等式)という.

完備というのは,直交列 \varphi_n に他の函数を追加して,それを直交列にする余地がないことを意味する.実際 (f,\varphi_i)=c_i=0, (i=1,2,\ldots) ならば,(9) から (f,f)=0,従って f(x)=0 である.

精密にいえば,考察する函数を或る特定の種類 C に限定して,\varphi_n(x), f(x)C に属して (9) が成り立つとき,\varphi_n(x)C に関して完備条件を満たすというべきである.我々は今区間 [a,b] において連続なる函数のみを C に入れている.

(4) において \gamma_i=c_i とすれば,(5) によって\textstyle J=(f,f)-\sum_{i=1}^n c_i^2.故に上記 (9) は,詳しく書けば,
(10)
\lim_{n\to\infty} \int_a^b \left\{ f(x) - \sum_{i=1}^n c_i\varphi_i(x) \right\}^2 dx=0
である.しかし,連続函数の範囲内でも,(10) だけからは
f(x) = \lim_{n\to\infty} \sum_{i=1}^n c_i\varphi_i(x),
すなわち
(11)
f(x) = \sum_{i=1}^\infty c_i\varphi_i(x)
は出て来ないが,もしも f(x) から生ずる Fourier 式級数
\sum_{i=1}^\infty c_i\varphi_i(x)
が,[a,b] において一様に収束するならば,完備条件 (10) から (11) が得られる.──実際,一様収束の仮定の下において,項別積分が許されるから
\begin{align}
\left( \sum_{i=1}^\infty c_i\varphi_i, \varphi_n\right) &= \int_a^b \left( \sum_{i=1}^\infty c_i\varphi_i(x) \right)\varphi_n(x) dx = \sum_{i=1}^\infty \int_a^b c_i\varphi_i(x)\varphi_n(x) dx \\
&= \sum_{i=1}^\infty c_i(\varphi_i, \varphi_n) = c_n.
\end{align}
そこで \textstyle r(x)=f(x)-\sum_{i=1}^\infty c_i\varphi_i(x) と置けば,
(r, \varphi_n) = (f, \varphi_n) - \sum_{i=1}^\infty c_i(\varphi_i, \varphi_n) = c_n-c_n = 0.
故に完備条件 (9)r(x) に適用すれば (r,r)=0,すなわち
\int_a^b r(x)^2 dx = 0.
r(x) は連続だから r(x)=0.従って (11) を得る.
[附記] 
§§71-73 において展開した計算は,Euclid 幾何学との類似を念頭に置いて考えれば,わかりよい.一定区間 [a,b] において連続なる函数の集合 C を無限次元の空間とみて,C に属する個々の函数 f(x), g(x), \ldots を空間 C の点またはベクトルとする.そうして \|f\|=\sqrt{(f,f)} をベクトル f(x) の長さ,従ってまた,\|f-g\| を点 f(x), g(x) の距離とする.然らば正規直交函数列 \varphi_1(x), \varphi_2(x), \ldots は二つずつ互に直交する単位ベクトルであるが,\|\varphi\|=1, (f,\varphi)=c として f(x)=\{f(x)-c\varphi(x)\}+c\varphi(x) によってベクトル f を二つの成分 f-c\varphic\varphi とに分解すれば
(f-c\varphi, \varphi) = (f, \varphi) - c(\varphi,\varphi) = 0
だから,それらの成分は互に直交する.すなわち c\varphi(x)f(x)\varphi(x) 軸上への正射影というべきものである.

正規直交列 \varphi_1(x), \varphi_2(x), \ldots が完備条件 (9) を満たすことは,\varphi_i(x) が,あたかも函数空間 C の一つの座標系の各軸上の単位ベクトルであるかのようであって,(9) はすなわち空間 C における Pythagoras の定理である.三次元空間に関して §27 で述べた記号を用いて,座標軸上の単位ベクトルを \boldsymbol i, \boldsymbol j, \boldsymbol k,任意のベクトルを \boldsymbol v = a\boldsymbol i+b\boldsymbol j+c\boldsymbol k とすれば,|\boldsymbol v|^2=a^2+b^2+c^2 であるが,|\boldsymbol v|\|f\| に当り,‘スカラー積’ a=\boldsymbol{vi}c_1=(f,\varphi_1) に当る.もしも Fourier 式展開 \textstyle f(x)=\sum_{i=1}^\infty c_i\varphi_i(x) が可能ならば,それはすなわち上記の \boldsymbol v=a\boldsymbol i+b\boldsymbol j+c\boldsymbol k に相当するのだが,C の場合,この展開が無条件では行かないところにおいて,有限次元の幾何学との類似が中絶する.このおような函数空間の系統的な考察は,Hilbert 空間論の研究目標である.

上記一般的の考察を三角函数系

(12)
1,\ \cos x,\ \sin x,\ \ldots,\ \cos nx,\ \sin nx,\ \ldots

に適用するために,次の二つの問題を目標にする.

(I)
三角函数系 (12) はすべての連続函数f(x)に関して完備条件を満たす.
(II)
もしも f(x)2\pi を周期とする滑らかな函数ならば,f(x) から生ずる Fourier 級数は一様に収束する.

滑らか(glatt)とは f'(x) が連続なることをいう.

もしも (I)(II) が証明されるならば,上記一般的の考察によって,滑らかな周期函数 f(x)Fourier 級数に展開されることが確定するであろう. 解析概論/第6章/Fourier級数の相加平均総和法(Fejérの定理) 解析概論/第6章/滑らかな周期函数のFourier展開 解析概論/第6章/不連続函数の場合

[編集] 77. Fourier 級数の例

Fourier 級数の例二,三を次に掲げるが,その前に,まず一つの注意を述べておく.

f(x) が偶函数,すなわち f(-x)=f(x) ならば,[-\pi,\pi] において f(x)\cos のみの級数に展開される.この場合

a_n=\frac{2}{\pi}\int_0^\pi f(x)\cos nx\,dx, \qquad (b_n=0).

f(x) が奇函数,すなわち f(-x)=-f(x) ならば,[-\pi,\pi] において f(x)\sin のみの級数に展開される.この場合

b_n=\frac{2}{\pi}\int_0^\pi f(x)\sin nx\,dx, \qquad (a_n=0).

これは明白である.さて f(x) が区間 [0,\pi] においてのみ与えられたとき,それを f(-x)=f(x) または f(-x)=-f(x) によって区間 [-\pi,0] に延長するならば,[-\pi,\pi] における延長された f(x) の展開から,区間 [0,\pi] において f(x)\cos のみまたは \sin のみの級数が得られるであろう.もちろんここでは定理 66 の仮定の下においていう.

[例 1]
f(x)=x.これは奇函数だから
b_n=\frac{2}{\pi}\int_0^\pi x\sin nx\,dx = (-1)^{n-1}\frac{2}{n}
から,次の展開を得る:
\frac{x}{2} = \sin x - \frac{\sin 2x}{2} + \frac{\sin 3x}{3} - \cdots, \qquad (-\pi < x < \pi).
ただし,この展開は前節で用いたものである.

特に,x=\tfrac{\pi}{2} において f(x) は連続だから,

\frac{\pi}{4} = 1 - \frac{1}{3} + \frac{1}{5} - \cdots,
  [Leibniz の級数].

これは既出である(186頁).

[注意] 
f(x) = |x|.(偶函数)
a_0 = \frac{2}{\pi}\int_0^\pi x dx = \pi.
a_n = \frac{2}{\pi}\int_0^\pi x \cos nx\,dx = \frac{2}{\pi} \left[ \frac{x\cos nx}{n} + \frac{\cos nx}{n^2} \right]_0^\pi
=\begin{cases} 0,\\[5pt] \dfrac{-4}{n^2\pi},\end{cases} n は偶数,
n は奇数.
故に (-\pi \leqq x \leqq \pi)
|x| = \frac{\pi}{2}-\frac{4}{\pi}\left(\cos x+\frac{\cos 3x}{3^2}+\frac{\cos 5x}{5^2}+\cdots\right).
x=0 において |x| は連続だから,
\frac{\pi^2}{8} = 1 + \frac{1}{3^2} + \frac{1}{5^2} + \cdots,
 (§64 参照).
[注意] 
区間を [0,\pi) に限れば[例 1][例 2]から
\begin{align}
x &= 2\left(\sin x-\frac{\sin 2x}{2}+\frac{\sin 3x}{3}-\cdots\right) \\
  &= \frac{\pi}{2}-\frac{4}{\pi}\left(\cos x+\frac{\cos 3x}{3^2}+\frac{\cos 5x}{5^2}+\cdots\right).
\end{align}
ただし,x=\pi のとき \sin の級数は 0 になるが,\cos の級数は,なお \pi に等しい.実際 x=\pi とすれば,上記 \pi^2/8 の級数を得る.
[例 3]
f(x)=\cos\mu x\mu は整数でない実数).

  \int_0^\pi\cos\mu x\cos nx\,dx
  = \frac{1}{2}\left[\frac{\sin(\mu-n)x}{\mu-n}
   +\frac{\sin(\mu+n)x}{\mu+n}\right]_0^\pi
  = \frac{(-1)^n\mu\sin\mu x}{\mu^2-n^2},
故に
(1)
\cos\mu x
  =\frac{2\mu\sin\mu x}{\pi}\left(\frac{1}{2\mu^2}
   -\frac{\cos x}{\mu^2-1}+\frac{\cos 2x}{\mu^2-2^2}
   -\cdots\right).
特に x=\pi として,また \muz と書けば

  \pi \cot \pi z = \frac{1}{z} + \sum_{n=1}^\infty \frac{2z}{z^2 - n^2}.
 (236 頁 参照)
また x=0 として,\mu の代りに z と書けば
\frac{\pi z}{\sin \pi z} = 1 + 2z^2\sum_{n=1}^\infty \frac{(-1)^n}{z^2 - n^2}. (236頁,(21) 参照)
[例 4]
f(x) = \sin \mu x.\mu 同上)

   \int_0^\pi \sin\mu x\sin nx\,dx
   = \frac{1}{2}\left[\frac{\sin(\mu-n)x}{\mu-n}-\frac{\sin(\mu+n)x}{\mu+n}\right]_0^\pi
   = \frac{(-1)^n n\sin\mu x}{\mu^2-n^2},
(2)
\sin \mu x
   = -\frac{2\sin\mu x}{\pi}\left(\frac{\sin x}{\mu^2-1}
     -\frac{2\sin 2x}{\mu^2-2^2}+\frac{3\sin 3x}{\mu^2-3^2}-\cdots\right),
  \qquad (-\pi < x < \pi).
x=\tfrac{\pi}{2} として(\mu = 2z と書けば)

  \pi\sec\pi z=4\sum_{n=1}^\infty\frac{(-1)^n(2n-1)}{4z^2-(2n-1)^2}.
 (236 頁 参照)
[注意] 
項別微分をすれば (2)(1) から出る(定理 57).
[例 5]
f(x) = \frac{1}{1-2a\cos x + a^2} \qquad (|a| < 1)
[-\pi,\pi] において正則なる解析函数.従って滑らかで,かつまた周期的だから,Fourier 級数に展開される.しかしその展開は直接に求められる.すなわち
\begin{align}
 \frac{1-a^2}{1-2a\cos x+a^2}
 &= \frac{1}{1-a^{ix}}+\frac{ae^{-ix}}{1-ae^{-ix}} \\
 &= 1+\sum_{n=1}^\infty a^n e^{inx}+\sum_{n=1}^\infty a^n e^{-inx} \\
 &= 1+2\sum_{n=1}^\infty a^n\cos nx.
\end{align}
これは一様に収束するから,Fourier 級数である(§70).よって

  \int_0^\pi\frac{\cos nx\,dx}{1-2a\cos x+a^2}=\frac{\pi a^n}{1-a^2}.
 (226 頁,[例 5]参照)
[注意] 
複素変数 z の函数 f(z) が単位円周 C (z=e^{i\theta}) を含む領域で正則ならば f(z)Laurent 展開

  f(z)= \sum_{n=-\infty}^\infty c_n z^n,\quad
  c_n = \frac{1}{2\pi i}\int_C \frac{f(z)dz}{z^{n+1}}
において z=e^{i\theta} とすれば,(\theta を変数としての) f(e^{i\theta})Fourier 展開を得る.すなわち
f(e^{i\theta})=\frac{a_0}{2}+\sum(a_n\cos n\theta+b_n\sin n\theta),
a_0=2c_0,\quad a_n=(c_n+c_{-n}),\quad b_n=i(c_n-c_{-n}).
特に f(z)=\tfrac{z+a}{z-a}\ (-1< a< 1) とすれば,
\frac{z+a}{z-a}=1+2\left(\frac{a}{z}+\frac{a^2}{z^2}+\cdots\right).
ここで z=e^{\theta i} と置いて実部を比較すれば,上記[例 5]の展開を得るが,虚部から
\frac{\sin\theta}{1-2a\cos\theta+a^2}=\sin\theta+a\sin 2\theta+a^2\sin3\theta+\cdots.

[編集] 78. Weierstrass の定理

連続函数に関する次の定理は重要である.

定理 67.
閉区間 [a,b] において f(x) は連続とする.然らば任意に \varepsilon > 0 を取るとき,[a,b] において常に
|f(x) - P(x)| < \varepsilon
なる多項式 P(x) が存在する.[Weierstrass

約言すれば,閉区間において,連続なる函数に一様に近似する多項式が存在するのである.

この意味では,上記定理は任意次元に関して成り立つ.むずかしかったこの定理の証明は,一次元に関しては,§74 の Fejér の定理から,簡単に導かれる.

[証]
変数 x に一次変換を行えば, [a,b] は全く [-\pi,\pi] の内部にあるとみてよい.そうして [a,b] 以外では与えられた f(x)[-\pi,\pi] に連続的に延長して f(-\pi) = f(\pi) とすることができる.然らば Fejér の定理によって [a,b] において
n > n_0 なるとき |f(x)- S_n(x)| < \frac{\varepsilon}{2}.
S_n(x) は整函数であるから,それの Taylor 展開の第 m 項までの部分和を P_{m,n}(x) とすれば,巾級数の一様収束性を用いて
m > m_0 なるとき |S_n(x) - P_{m,n}(x)| < \frac{\varepsilon}{2}.
故に十分大なる n に関して,m を十分大きく取れば,多項式 P_{m,n}(x) = P(x)に関し,
|f(x) - P(x)| < \varepsilon.
(証終)

Fejér の定理から出発すれば,Weierstrass の定理の証明は上記の通り簡単であるが,次に掲げる直接の証明法[Serge Bernstein]は初等的である.

二項定理
(x+y)^n = \sum_{\nu = 0}^n \binom{n}{\nu} x^\nu y^{n-\nu}
から, x に関して一回,二回微分して,x, x^2 を掛ければ
nx(x+y)^{n-1} = \sum_{\nu=0}^n \nu \binom{n}{\nu} x^\nu y^{n-\nu},
n(n-1)x^2(x+y)^{n-2} = \sum_{\nu=0}^n \nu(\nu-1) \binom{n}{\nu} x^\nu y^{n-\nu}.
ここで y=1-x として
(1)
\varphi_\nu(x) = \binom{n}{\nu} x^\nu (1-x)^{n-\nu} \qquad (\nu = 0, 1, \cdots, n)
と置けば
(2)
\sum_{\nu=0}^n \varphi_\nu(x) = 1,
(3)
\sum_{\nu=0}^n \nu\varphi_\nu(x) = nx,
(4)
\sum_{\nu=0}^n \nu(\nu-1)\varphi_\nu(x) = n(n-1)x^2.
これらから
(5)
\begin{align}
\sum_{\nu=0}^n (\nu - nx)^2 \varphi_\nu(x)
 &= n^2x^2 \sum\varphi_\nu(x)-2nx\sum\nu\varphi_\nu(x)+\sum\nu^2\varphi_\nu(x) \\
 &= n^2x^2 \cdot 1 - 2nx \cdot nx + (nx + n(n-1)x^2) \\
 &= nx(1-x).
\end{align}
次の証明で,これを使うのである.
さて変数の一次変換によって区域を [0,1] にする.また与えられた連続函数に或る定数を掛けて
(6)
[0,1] において |f(x)| < 1
としてよい.

連続の一様性によって,\varepsilon > 0 に対応して \delta を定めて, [0,1] において

(7)
|x-x'|<\delta なるとき |f(x)-f(x')|<\varepsilon
とする.然らば n を十分大きく取れば
(8)
\left| f(x) - \sum_{\nu=0}^n f\left( \frac{\nu}{n} \right) \varphi_\nu(x) \right| < 2\varepsilon
になって,定理が証明されるのである.──まず (2) によって
(8) の左辺 = \left| \sum_{\nu=0}^n \left( f(x) - f\left( \frac{\nu}{n} \right) \right) \varphi_\nu(x) \right|.
この和を |\tfrac{\nu'}{n}-x| < \delta および |\tfrac{\nu''}{n}-x | \geqq \delta なる \nu', \nu'' に関する二つに分ける.

\nu' に関しては,(1) によって [0,1] において \varphi_\nu(x) \geqq 0 であることを用いて,(7) から, n に無関係に,

\left| \sum_{\nu'} \right| < \varepsilon \sum_{\nu'} \varphi_\nu(x) \leqq \varepsilon \sum_{\nu=0}^n \varphi_\nu(x) = \varepsilon.

また \nu'' に関しては,まず (6) から

\left| \sum_{\nu''} \right| < 2\sum_{\nu''} \varphi_\nu(x).
\tfrac{(\nu''-nx)^2}{\delta^2 n^2} \geqq 1 だから
\left| \sum_{\nu''} \right| < 2\sum_{\nu''} \frac{(\nu - nx)^2}{\delta^2 n^2} \varphi_\nu(x) \leqq \frac{2}{\delta^2 n^2} \sum_{\nu=0}^n (\nu - nx)^2 \varphi_\nu(x).
そこで (5) を用いて
\left| \sum_{\nu''} \right| < \frac{2x(1-x)}{\delta^2 n} \leqq \frac{1}{2\delta^2 n},
それを <\varepsilon にするには n > 1/2\delta^2\varepsilon とすればよい.すなわち (8) が成り立つ.
[附記] 
上記 Weierstrass の定理によれば,区間 [-1,1] において,Legendre の球函数 P_n(x) が,連続函数に関して §73 の完備条件を満すことが分る.――任意の多項式は \textstyle\sum \gamma_i P_i(x) の形に表わされるから,§73,(1º)によって,それは明白であろう(§74 の終りを参照).

直交函数系 P_n(x) によって,任意の函数 f(x) を区間 [-1,+1] でFourier式に展開することは,古典数学で応用上重要であった.

f(x) から生ずるFourier式級数 \textstyle\sum c_n P_n(x) における係数は
c_n = \frac{2n+1}{2} \int_{-1}^{+1} f(x)P_n(x) dx,
そうして
f(x) = \sum_{n=0}^\infty c_nP_n(x)
は右辺の級数が [-1,+1] において一様に収束する場合には確かに成り立つ(§73).

すなわち P_n(x) に関して §73 (I) の問題は解けたが,(II) の問題f(x) を滑らかとしても,三角函数の場合(§75)のように,簡単には解けない.事実は,f(x) が三角級数に展開されるのと同様の条件の下で,P_n(x) の級数に展開されるけれども,不幸にしてその証明が手軽にできないのである.

[編集] 79. 積分法の第二平均値定理

積分法の第二平均値定理は,本書ではこれまで応用の機会に出会わなかったから,それを述べなかったが,定理は重要だから,ここに附記する.

すでに §45 に述べた Abel の級数変形法で用いた初等的の不等式が,ここでも証明の根拠になる.すなわち

\varepsilon_0 \geqq \varepsilon_1 \geqq \cdots \geqq \varepsilon_{n-1} \geqq 0,
a_0, a_1, \ldots, a_{n-1}

から,和

\begin{align}
s_\nu &= a_0 + a_1 + \cdots + a_\nu, \qquad (\nu = 0, 1, \cdots, n-1) \\
S     &= \varepsilon_0 a_0 + \varepsilon_1 a_1 + \cdots + \varepsilon_{n-1}a_{n-1}
\end{align}

を作るとき,もしも

A \leqq s_\nu \leqq B \qquad (\nu = 0, 1, \ldots, n-1)

ならば

(1)
A \varepsilon_0 \leqq S \leqq B \varepsilon_0.

次の証明でこれを用いる.

定理 68. [積分法の第二平均値定理]
区間 [a,b] において f(x) は積分可能,また \varphi(x) は有限で単調とする.然らば
\int_a^b f(x) \varphi(x) dx = \varphi(a) \int_a^\xi f(x) dx + \varphi(b) \int_\xi^b f(x) dx, \quad a \leqq \xi \leqq b,
なる \xi が存在する.
[証]
仮定によって,[a,b] において f(x)\varphi(x) も積分可能だから,従って f(x)\varphi(x) も積分可能である(§31,(6º)).

f(x) が積分可能だから,§30 の記号によれば,区間 [a,b] の分割 \Delta において,細区間 \delta_i の最大幅を \delta とすれば

\int_a^b f(x)\,dx=\lim_{\delta\to 0}\sum_{i=0}^{n-1}f(x_i)\,\delta_i,
そうして \textstyle\int_a^b\textstyle\sum との間の誤差は,絶対値において,\textstyle\sum_{i=0}^{n-1} v_i \delta_i 以内に止まる.積分可能は,すなわち \delta \to 0 のとき \textstyle\sum v_i \delta_i \to 0 を意味する.

今任意に \varepsilon > 0 を取る.その \varepsilon に対応して \delta を十分小さく取って,分割 \Delta に関して \textstyle\sum v_i \delta_i < \varepsilon とする.

この誤差の限界は [a,b] に含まれる部分区間 [a,x_\nu] に関して通用する.すなわち v_i \geqq 0 に注意すれば
(2)
\left| \int_a^{x_\nu} f(x) dx - \sum_{i=0}^{\nu-1} f(x_i) \delta_i \right| \leqq \sum_{i=0}^{\nu-1} v_i \delta_i \leqq \sum_{i=0}^{n-1} v_i \delta_i < \varepsilon.

さて [a,b] において \textstyle\int_a^x f(x) dxx に関して連続である(定理 34).それの最小値,最大値をそれぞれ A, B とする.

然らば (2) から
(3)
A-\varepsilon \leqq \sum_{i=0}^{\nu-1} f(x_i) \delta_i \leqq B+\varepsilon.
さてまず \varphi(x) を単調減少(不増大),かつ \varphi(x) \geqq 0 と仮定して,上記不等式 (1)\varepsilon_ia_i とに \varphi(x_i)f(x_i) \delta_i とをあてる.然らば (3) から
(A-\varepsilon)\varphi(a) \leqq \sum_{i=0}^{n-1} f(x_i) \varphi(x_i) \delta_i \leqq (B+\varepsilon)\varphi(a).
故に \varepsilon をきめておいて,\delta \to 0 とすれば
(A-\varepsilon)\varphi(a) \leqq \int_a^b f(x) \varphi(x) dx \leqq (B+\varepsilon)\varphi(a),
\varepsilon は任意であったから,
A\varphi(a) \leqq \int_a^b f(x) \varphi(x) dx \leqq B\varphi(a),
すなわち
\int_a^b f(x) \varphi(x) dx = C\varphi(a), \qquad A \leqq C \leqq B.
CA, B の中間値である.A, B[a,b] において連続なる函数 \textstyle\int_a^x f(x) dx の最小,最大の値であったから, a \leqq \xi \leqq b なる或る値 \xi に関して(中間値の定理
\int_a^\xi f(x) dx = C.
従って
(4)
上記,\varphi(x) は単調減少で \varphi(x) \geqq 0 としたが,後の条件 \varphi(x) \geqq 0 を撤回して \varphi(x) を単に単調減少とすれば, \varphi(x) - \varphi(b) \geqq 0 だから, \varphi(x)\varphi(x) - \varphi(b) を代用して (4) から
\int_a^b f(x) (\varphi(x) - \varphi(b)) dx = (\varphi(a) - \varphi(b)) \int_a^\xi f(x) dx.
すなわち
\int_a^b f(x) \varphi(x) = \varphi(b) \int_a^b f(x) dx + (\varphi(a) - \varphi(b)) \int_a^\xi f(x) dx.
右辺の第一項で \textstyle\int_a^b = \int_a^\xi + \int_\xi^b だから
\int_a^b f(x) \varphi(x) dx = \varphi(a) \int_a^\xi f(x) dx + \varphi(b) \int_\xi^b f(x) dx, \qquad a \leqq \xi \leqq b.
\varphi(x)-\varphi(x) を代用すれば,この公式は \varphi(x) が有界で単調増大なるときにも成り立つ.
a または b において \varphi(x) が連続でないとき, \varphi(a), \varphi(b)\varphi(a+0), \varphi(b-0) に換えても定理は成り立つ.すなわち
\int_a^b f(x) \varphi(x) dx = \varphi(a+0) \int_a^\xi f(x) dx + \varphi(b-0) \int_\xi^b f(x) dx.

  1. 同様に,\varphi(x) \geqq 0 が単調増大ならば
    \int_a^b f(x) \varphi(x) dx = \varphi(b) \int_\xi^b f(x) dx.

[編集] 80. Fourier 級数に関する Dirichlet-Jordan の条件

これは本章の予定外であるけれども,上記第二平均値定理の応用の一例として附記するのである.

定理 69. [Dirichlet-Jordan
区間 [-\pi,\pi] において有界変動の函数 f(x)Fourier 式に三角級数に展開される.ただし,f(x) の不連続点においては,級数は
\frac{f(x+0) + f(x-0)}{2}
に収束する. 連続点では,これは f(x) に等しいから,Fourier 級数の部分和を s_n(x) とすれば
s_n(x) \to \frac{f(x+0) + f(x-0)}{2}.

まず次の予備定理から始める.

Dirichlet の積分]
区間 [0,a]f(x) が有界変動ならば
(1)

  \lim_{u\to\infty}\int_0^a f(x)\,\frac{\sin ux}{x}\,dx
  =\frac{\pi}{2} f(+0), \qquad (a > 0).
定理 38 によって f(x) を単調増大と仮定してよい.
さて

   \lim_{u \to \infty} \int_0^a\frac{\sin ux}{x}\,dx
  =\lim_{u \to \infty} \int_0^{ua}\frac{\sin x}{x}\,dx
  =\frac{\pi}{2}.
故に (1) は次のようになる.
\lim_{u \to \infty} \int^a(f(x) - f(+0)) \frac{\sin ux}{x}\,dx = 0.
f(x) - f(+0)f(x) を代用すれば, f(x)[0,a] において単調増大で,
(2)
f(x) \geqq 0, \quad f(+0) = 0.
故に,この仮定の下において
(3)
\lim_{u \to \infty} \int_0^a \frac{f(x)\sin ux\,dx}{x} = 0
を証明すればよい.

任意に \varepsilon > 0 を取って,仮定 (2) によって

0 < c < a, \quad 0 \leqq f(c) < \varepsilon
とする.然らば第二平均値の定理[* 1]を区間 [0,c] に適用して

  \int_0^c f(x)\,\frac{\sin ux}{x}\,dx
  =f(c)\int_\xi^c\frac{\sin ux}{x}\,dx
  =f(c)\int_{u\xi}^{uc}\frac{\sin x}{x}\,dx.
\textstyle\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,dx は収束するから \textstyle\int_0^x \frac{\sin x}{x}\,dxx の函数として [0,\infty) において有界である.従って上の等式の最後の積分は,絶対値において一定の限界以内にある.その限界を A とすれば
(4)
\left|\int_0^c f(x)\,\frac{\sin ux}{x}\,dx\right|< Af(c)< A\varepsilon.
さて,このように c をきめたところで
\int_c^a f(x)\,\frac{\sin ux}{x}\,dx
第二平均値の定理を適用すれば(仮定 (2) を用いて)
\int_c^a f(x)\,\frac{\sin ux}{x}\,dx=f(a)\int_{u\xi}^{ua}\frac{\sin x}{x}\,dx
を得るが,今度は \xi \geqq c だから u を十分大きく取れば
\int_{u\xi}^{ua}\frac{\sin x}{x}\,dx < \varepsilon,
従って今 [0,a] において |f(x) < M とすれば
(5)
\left|\int_c^a f(x)\,\frac{\sin ux}{x}\,dx\right| < M\varepsilon.
(4)(5) から
\left|\int_0^a f(x)\,\frac{\sin ux}{x}\,dx \right| < (A+M)\varepsilon
で,\varepsilon は任意であったから,(3) 従って (1) が証明されたのである.
さて定理 69 であるが,f(x) から生ずる Fourier 級数の部分和を s_n(x) とすれば,§74,(2) のように,
(6)
2\pi s_n(x) 
  = \int_0^\pi f(x+t)\,\frac{\sin(n-\frac{1}{2})t}{\sin\frac{1}{2}t}\,dt
   +\int_0^\pi f(x-t)\,\frac{\sin(n-\frac{1}{2})t}{\sin\frac{1}{2}t}\,dt.
これから \textstyle\lim_{n\to\infty}s_n(x) を求めるのであるが,右辺の積分記号の下で分母の \sin\tfrac{1}{2}t\tfrac{t}{2} で置き換えてよい.実際(u = n-\tfrac{1}{2} と略記して)
(7)

   \int_0^\pi f(x+t)\,\frac{\sin ut}{\sin\frac{1}{2}t}\,dt
  -\int_0^\pi f(x+t)\,\frac{\sin ut}{t/2}\,dt
  =\int_0^\pi f(x+t)\left(\frac{t}{\sin\frac{1}{2}t}-2\right)\frac{\sin ut}{t}\,dt 
  \to 0.
これは変数 t に関して (3) を応用したのであるが,\tfrac{t}{\sin(t/2)}-2t\to 0 のとき 0 になり,また 0\leqq t\leqq \pi において単調増大であるから,(3)f(x) のところへ f(x+t)(\tfrac{t}{\sin(t/2)}-2) を当てれば,極限は 0 になるのである.
さて (1) によって
(8)
\int_0^\pi f(x+t)\,\frac{\sin(n-\frac{1}{2})t}{t}\,dt\to\frac{\pi}{2} f(x+0),
故に (7) から
(9)

  \int_0^\pi f(x+t)\,\frac{\sin(n-\frac{1}{2})t}{\sin\frac{t}{2}}\,dt
  \to \pi f(x+0).
同様に
(10)

  \int_0^\pi f(x-t)\,\frac{\sin(n-\frac{1}{2})t}{\sin\frac{t}{2}}\,dt\to\pi f(x-0).
故に (6) において
s_n(x) \to \frac{f(x+0) + f(x-0)}{2}.
すなわち定理 69 が証明されたのである.
混雑を避けるために述べなかったけれども,上記証明を読み返してみると, f(x) が連続なる部分区間においては (7)(8)(9)(10) における収束が,x に関して一様であることがわかるであろう.然らば定理 66 は特別の場合として定理 69 に含まれる.しかし我々は §73 に述べた一般的の考察法を紹介することが解析概論としてはむしろ適切と考えたのである.

  1. 前頁脚注参照.

[編集] 81. Fourier の積分公式

前節で証明したことは,つまり区間 [-\pi,\pi] において有界変動の函数 f(x) に関して
\frac{\pi}{2}(f(x+0)+f(x-0))=\lim_{u\to\infty}\int_{-\pi}^\pi f(x+t)\,\frac{\sin ut}{t}\,dt
が成り立つことである.証明の根拠は Dirichlet の積分(289 頁,(1))であったから,今もし f(x)(-\infty,\infty) において(すなわち任意の閉区間において)有界変動とするならば,右辺の積分区間は a< 0< b なる任意の [a,b] でよい.そのとき \lima,b に無関係だから,もしも積分が可能ならば,区間を (-\infty,\infty) としてもよい.そのためには
(1)
\int_{-\infty}^\infty |f(x)|dx = k
が存在すれば十分である.すなわち,この条件の下において,
(2)

   \frac{\pi}{2} (f(x+0) + f(x-0))
  =\lim_{u\to\infty} \int_{-\infty}^\infty f(x+t)\,\frac{\sin ut}{t}\,dt.
さて
\frac{\sin ut}{t} = \int_0^u \cos ut\,du
だから,上記 \lim の下は
(3)
\int_{-\infty}^\infty dt \int_0^u f(x+t)\cos ut\,du
になる.もしも,ここで積分の順序を換えてよいならば,(2) の右辺は
\int_0^\infty du \int_{-\infty}^\infty f(x+t)\cos ut\,dt
になる.あるいは積分変数 tt-x にかえて,次の公式が得られる.
定理 70.
f(x)(-\infty,\infty) において有界変動で,かつ (1) が成り立つとすれば,
(4)

  \frac{f(x+0) + f(x-0)}{2}
 =\frac{1}{\pi} \int_0^\infty du \int_{-\infty}^\infty f(t)\cos u(t-x)\,dt.
これを Fourier の積分公式という.
[証]
まず f(x) は任意の閉区間で滑らか,または区分的に滑らかであるとする[* 1].然らば(定理 41
(5)

  \int_a^b dt\int_0^u f(x+t)\cos ut\,du
 =\int_0^u du\int_a^b f(x+t)\cos ut\,dt.
a \to -\infty, b \to \infty のとき左辺は積分 (3) に収束するから,
(6)
(3)=\lim_{a\to-\infty \atop b\to\infty}\int_0^u du\int_a^b f(x+t)\cos ut\,dt.
さて,条件 (1) によって \textstyle\int_{-\infty}^\infty f(x+t)\cos ut\,dt は収束するから,

    \int_a^b f(x+t) \cos ut\,dt
  = \int_{-\infty}^\infty f(x+t)\cos ut\,dt
   -\int_{-\infty}^a - \int_b^\infty .
これを (6) へ持ち込めば,
\begin{align}(3)
 = &\int_0^u du \int_{-\infty}^\infty f(x+t) \cos ut\,dt \\
   &-\lim_{a\to-\infty}\int_0^u du\int_{-\infty}^a f(x+t)\cos ut\,dt
    -\lim_{b\to \infty}\int_0^u du\int_b^\infty f(x+t)\cos ut\,dt.
\end{align}
この最後の二つの \lim0 に等しい.実際,条件 (1) によって任意の \varepsilon > 0 に対して |a|, b が十分大きいとき

  \left|\int_{-\infty}^a f(x+t)\cos ut\,dt\right| < \varepsilon, \quad
  \left|\int_b^\infty\right| < \varepsilon.
従って,\lim の下はどちらも絶対値において \varepsilon u よりも小さい.\varepsilon は任意であったから,\lim0 である.すなわち
(3) = \int_0^u du\int_{-\infty}^\infty f(x+t)\cos ut\,dt.
これを (2) の右辺の \lim の下へ入れれば,よかったのである.
[注意] 
上記証明では,既知の定理 41 から (5) を得るために,特に f(x) を滑らかと仮定したのであるが,実際は一般に f(x) が有界変動なるとき,(5) における積分順序の変更は許されて(§93 参照),(4) は成り立つ.それを見越して, を上記のように述べたのである.
積分公式 (4) の右辺は

   \frac{1}{\pi}\int_0^\infty du\int_{-\infty}^\infty f(t)\cos ut\cos ux\,dt
  +\frac{1}{\pi}\int_0^\infty du\int_{-\infty}^\infty f(t)\sin ut\sin ux\,dt
であるから,f(x) が偶函数または奇函数ならば,どちらか一項が 0 になって,公式 (4) の右辺が次のようになる.
偶函数:
\frac{2}{\pi}\int_0^\infty\cos ux\,du\int_0^\infty f(t)\cos ut\,dt.
奇函数:
\frac{2}{\pi}\int_0^\infty\sin ux\,dx\int_0^\infty f(t)\sin ut\,dt.
[例]
f(x) = \begin{cases}
  1,   & |x| < 1, \\
  1/2, & |x| = 1, \\
  0,   & |x| > 1
\end{cases}
とすれば,f(x) は偶函数だから
f(x)
  = \frac{2}{\pi}\int_0^\infty \cos ux\,du \int_0^1 \cos ut\,dt
  = \frac{2}{\pi}\int_0^\infty \frac{\sin u \cos ux}{u}\,du,
すなわち
\int_0^\infty \frac{\sin u \cos ux}{u} du = \begin{cases}
  \pi/2, & |x| < 1, \\
  \pi/4, & |x| = 1, \\
  0,     & |x| > 1.
\end{cases}
これを Dirichlet の不連続因子(Diskontinuitätsfaktor)という.

  1. そうすれば f(x) は有界変動である(§39).

[編集] 練習問題(6)

(1)
区間 [0,1] において Bernoulli の多項式Fourier 級数に展開すれば
\begin{align}
  &B_{2n}(x)=(-1)^{n+1}2(2n)!\sum_{\nu=1}^\infty\frac{\cos2\pi\nu x}{(2\pi\nu)^{2n}},\\
  &B_{2n+1}(x)=(-1)^{n+1}2(2n+1)!\sum_{\nu=1}^\infty\frac{\sin2\pi\nu x}{(2\pi\nu)^{2n+1}}.
\end{align}
[解]
これは既出である(263 頁,[注意])が,直接に計算するならば

  \frac{tx^{xt}}{e^t-1}=\sum_{n=0}^\infty\frac{B_n(x)}{n!}\,t^n (§64,(12) 参照.)
の左辺を \textstyle\sum_{n=-\infty}^\infty c_n e^{2n\pi xi} の形に展開してから,t^n の係数を比較するがよい.
(2)
f(x) は連続で,\textstyle\int_a^b x^n f(x)\,dx=0\ (n=0,1,2,\ldots) ならば,[a,b] において f(x)=0
(3)
f(x)=e^{-|x|}Fourier 積分公式を適用すれば
\int_0^\infty\frac{\cos\alpha x}{1+x^2}\,dx=\frac\pi2 e^{-|\alpha|}
を得る(264 頁,問題 (9) 参照).
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