解析概論/第5章/積分

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[編集] 56.積分

本節では領域 K において f(z) の連続性のみを仮定する.K 内で点 z_0 を点 z に結ぶ曲線 C が与えられているとする[* 1]

C の上で z_0z との間に順次に分点 z_1,z_2,\ldots,z_{n-1} を取って i 番目の弧 z_{i-1}z_i(それを C_i と名づける)の上の任意の点を \zeta_i として,例の通り

(1)
\mathit\Sigma_\Delta=\sum_{i=1}^n f(\zeta_i)(z_i-z_{i-1})

を考察する.弧 C_i の長さを \sigma_i として,\sigma_i の最大値を \sigma とするならば,\sigma\to 0 のとき \mathit\Sigma_\Delta は曲線 C の分割法 \Delta および \zeta_i のとり方に無関係なる一定の極限を有する.それを曲線 C に関する f(z) の積分

(2)
I=\int_C f(z)\,dz

という.z=x+yi,f(z)=u(x,y)+iv(x,y) とすれば,I は線積分

(3)

  I=\int_C(u\,dx-v\,dy)+i\int_C(u\,dy+v\,dx)

にほかならない(§41).

積分 I に関しては実変数に関して述べたのと同様の定理がもちろん成り立つが,それらを一々説明する必要はあるまい.今我々の目的のために重要なのは次の事項である.

(1º)
曲線 C の上で常に |f(z)|\leqq M ならば

  \left|\int_C f(z)\,dz\right|\leqq ML,
LC の長さを表わすのである.
[証]
この場合 (1) において,\textstyle|\mathit\Sigma_\Delta|\leqq M\sum_{i=1}^n|z_i-z_{i-1}|,また \textstyle\sum_{i=1}^n|z_i-z_{i-1}|\leqq L.従って |\mathit\Sigma_\Delta|\leqq ML.故に極限へ行っても

  \lim_{\delta\to 0}\left|\sum f(\zeta_i)(z_i-z_{i-1})\right|\leqq ML.
すなわち
|I|\leqq ML.
(2º)
上記よりは,いっそう精密に,sC 上の弧長とすれば,

  \left|\int_C f(z)\,dz\right|\leqq \int_C|f(z)|\,ds.
[証]
(1) から
\begin{align}
   \left|\sum_{i=1}^n f(z_i)(z_i-z_{i-1})\right|
 &=\sum_{i=1}^n|f(z_i)||z_i-z_{i-1}|\\
 &=\sum_{i=1}^n|f(z_i)|(s_i-s_{i-1}),
\end{align}
|z_i-z_{i-1}| は部分弧 C_i の弦の長さで,s_i-s_{i-1}C_i の弧長である.さて極限へ行けば上記の関係を得る.
(3º)
K において連続なる f(z),g(z) に関して,K において,あるいは単に C の上で,|f(z)-g(z)|<\varepsilon ならば

  \left|\int_C f(z)\,dz-\int_C g(z)\,dz\right|<\varepsilon L.
[証]
\textstyle\int_C f(z)\,dz-\int_C g(z)\,dz=\int_C\{f(z)-g(z)\}\,dz.これは明白であろう.然らば f(z)-g(z) に関して,(1º) において M<\varepsilon としてよい.
(4º)
C の上で f_n(z) が一様に f(z) に収束すれば

  \int_C f(z)\,dz=\lim_{n\to\infty}\int_C f_n(z)\,dz.
[証]
n を十分大きく取れば,C 上で常に |f(z)-f_n(z)|<\varepsilon.故に (3º) によって

  \left|\int_C f(z)\,dz-\int_C f_n(z)\,dz\right|<\varepsilon L.
[注意] 
C 上で \textstyle\sum_{n=0}^\infty f_n(z) が一様に f(z) に収束すれば,項別積分が許される.部分和 \textstyle\sum_{\nu=0}^n f_\nu(z)(4º)f_n(z) に代用するのである.
(5º)
C の上の分点 z_i を順次に結ぶ折線 (z_0z_1z_2\ldots z_{n-1}z)\mathit\Gamma と名づける.然らば分点を十分密に取れば,\textstyle\int_{\mathit\Gamma}f(z)\,dz はどれほどでも \textstyle\int_C f(z)\,dz に近似する. \varepsilon\text{-}\delta 式でいえば,部分弧 C_i の長さの最大値を \sigma として,\sigma<\delta のとき

  \left|\int_C f(z)\,dz-\int_{\mathit\Gamma}f(z)\,dz\right|<\varepsilon.
もちろん,折線 \mathit\Gamma が領域 K の外へ出てはならないが,\sigma を十分小さく取れば,\mathit\GammaK 内に止まるであろう[* 2]
[証]
連続の一様性(定理 14)を証明の根拠にする.K 内で C(および \mathit\Gamma)を包む閉域を K_0 とするとき,与えられた \varepsilon に対応して,十分小さく \delta を取って,K_0 において常に,|z-z'|<\delta なるとき |f(z)-f(z')|<\varepsilon ならしめることができる.曲線 C の上に分点を十分密に取って,部分弧の長さをすべて \delta よりも小にする.すなわち前記の \sigma<\delta.然らば部分弧 C_i に対応する弦を \mathit\Gamma_i とするとき |z_i-z_{i-1}|\mathit\Gamma_i の長さで,それも,もちろん,\delta よりも小である.

さて C_i の上の任意の点 z に関して |z-z_i|<\delta.故に C_i の上では |f(z)-f(z_i)|<\varepsilon.故に (3º) によって


  \left|\int_{C_i}f(z)\,dz-\int_{C_i}f(z_i)\,dz\right|<\varepsilon\sigma_i,
\sigma_i は弧 C_i の長さである.さて積分の定義によって

  \int_{C_i}f(z_i)\,dz=f(z_i)\int_{C_i}\,dz=f(z_i)(z_i-z_{i-1}),
従って

  \left|\int_{C_1}f(z)\,dz-f(z_i)(z_i-z_{i-1})\right|<\varepsilon\sigma_i
故に

  \int_C f(z)\,dz=\sum_{i=1}^n\int_{C_i}f(z)\,dz
を用いて,
(4)
\begin{align}
  \left|\int_C f(z)\,dz-\sum_{i=1}^n f(z_i)(z_i-z_{i-1})\right|
  &\leqq \sum_{i=1}^n\left|\int_{C_i}f(z)\,dz-f(z_i)(z_i-z_{i-1})\right|\\
  &< \varepsilon\sum_{i=1}^n\sigma_i=\varepsilon L,
\end{align}
LC の長さである.

C の代りに折線 \mathit\Gamma を取っても同様に

(5)

  \left|\int_\mathit\Gamma f(z)\,dz-\sum_{i=1}^n f(z_i)(z_i-z_{i-1})\right|
  <\varepsilon L',
L'\mathit\Gamma の長さである.従って L'\leqq L

(4)(5) とから


  \left|\int_C-\int_\mathit\Gamma\right|<2\varepsilon L.
L は定数,\varepsilon は任意だから証終る.
(6º)
z_0z とを結ぶ曲線 C に関する積分 \textstyle\int_C f(z)\,dz が確定の値を有するといっても,その値は曲線 C の取りようによって変動するであろう.もしも \textstyle\int_C f(z)\,dzz_0z とのみに関係して,K 内でそれらを結ぶ曲線 C には無関係なる一定の値を有するならば,\textstyle\int_C f(z)\,dz\textstyle\int_{z_0}^z f(z)\,dz と記してさしつかえない.その場合,z_0 を固定すれば \int_{z_0}^z f(z)\,dzz の函数である.それを
F(z)=\int_{z_0}^z f(z)\,dz
と置けば,F(z) は微分可能で,
F'(z)=f(z).
もちろん f(z) は連続と仮定している.
[証]
\textstyle F(z_1+h)=\int_{z_0}^{z_1+h}f(z)\,dz において積分路は z_1 を通るとしてよいから,

  F(z_1+h)-F(z_1)=\int_{z_1}^{z_1+h}f(z)\,dz.
|h|<\delta なるとき,|f(z_1+h)-f(z_1)|<\varepsilon とすれば
(6)

  \left|\int_{z_1}^{z_1+h}\{f(z)-f(z_1)\}\,dz\right|<\varepsilon|h|.
これは \textstyle\int_{z_1}^{z_1+h}z_1z_1+h とを結ぶ線分としてもよいからである.もちろん |h| を十分小さく取って,その線分が考察中の領域 K の内部にあるとしていうのである.さて
(7)
\begin{align}
   \int_{z_1}^{z_1+h}\{f(z)-f(z_1)\}\,dz
 &=\int_{z_1}^{z_1+h} f(z)\,dz -f(z_1)\int_{z_1}^{z_1+h}dz\\
 &=\int_{z_1}^{z_1+h} f(z)\,dz -hf(z_1)
\end{align}
だから,(6)(7) とから

  \left|\int_{z_1}^{z_1+h}f(z)\,dz-hf(z_1)\right|<\varepsilon|h|,
すなわち

  |F(z_1+h)-F(z_1)-hf(z_1)|<\varepsilon|h|.
故に

  \left|\frac{F(z_1+h)-F(z_1)}h -f(z_1)\right|<\varepsilon.

\varepsilon は任意だから


  \lim_{h\to 0}\frac{F(z_1+h)-F(z_1)}h = f(z_1),
すなわち
F'(z_1)=f(z_1).
[例]
f(z)=a+bzz の一次式とする.然らば \textstyle\int_{z_0}^z f(z)\,dzz_0z を結ぶ路 C に無関係な確定の値を有する.
\int_C(a+bz)\,dz=a\int_C dz+b\int_C z\,dz
だから,\textstyle\int dz および \textstyle\int z\,dz に関して証明をすればよい.さて
\int_C dz=\lim\sum(z_i-z_{i-1})=z-z_0.
また各小弧の両端における z の値を取って
\begin{align}
  \int_C z\,dz &=\lim\sum z_{i-1}(z_i-z_{i-1})=\lim\sum z_i(z_i-z_{i-1})\\
  &= \frac12\lim\sum(z_i+z_{i-1})(z_i-z_{i-1})=\frac12\lim\sum(z_i^2-z_{i-1}^2)\\
  &= \frac12(z^2-z_0^2).
\end{align}
故に \textstyle\int_C dz\textstyle\int_C z\,dz も積分路 C には無関係である.

これらの場合,f(z)=1, F(z)=z-z_0.または f(z)=z,F(z)=\tfrac12(z^2-z_0^2) で,どちらも F'(z)=f(z)

[注意] 
z_0 から z に行く曲線 C_1,C_2 があるとき,z_0 から C_1 に沿って z に行き,z から C_2 に沿って反対に z_0 に返ることができる.これを一つの通路 C とするならば \textstyle\int_{C_1}-\int_{C_2}=\int_C.故に \textstyle\int_{C_1}=\int_{C_2}\textstyle\int_C=0 に同じである.ただし \textstyle\int_C においては z_0,z に起点,終点というような特別の意味はない.
C が一つの閉曲線であるとき,その上に点 A,B を取れば CAMB,BNA の二つの部分に分かたれる.今 A,B を曲線 L で結べば

  \int_C = \int_{AMB}+\int_{BNA} = \int_{AMB}+\int_{BLA}+\int_{ALB}+\int_{BNA} = \int_{AMBLA}+\int_{ALBNA}.
このようにして \textstyle\int_C を二つの閉曲線に関する積分の和に分けることができる.この後しばしばこの方法を適用する.

  1. 本章では一々ことわらないで,C は滑らかな曲線またはそれの有限個の接合とする.
  2. 曲線 C とそれを含む領域 K の境界とは,共通点を有しない二つの閉集合だから,その間の距離 \rho>0.故に \sigma<\rho とすればよい(§12).
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