解析概論/第5章/有理函数の積分の理論
[編集] 66.有理函数の積分の理論
有理函数

において
は共通根を有しない多項式とする.然らば
の根
は
の極である.もしも
が
の
重の根ならば,

と置くとき,
で,
は
において正則で,
は
の
次の極である.
における
の主要部を

とすれば,それは
の
における Taylor 展開の最初の
項

を
で割って求められる.
の根の最大絶対値を
とすれば,
なるとき
は正則であるが,もしも分子
が分母
よりも低い次数を有するならば,
のとき
だから,
は
においても正則である(§60).この場合,
のすべての極に関する主要部
を
から引けば,

は
のすべての値に関して正則,また
においても正則だから,それは定数であるが,
のとき
だから,それは
に等しい.すなわち

またもし
が
と同次以上ならば,
を
で割った商を
,剰余を
とすれば

で,極
に関する主要部は
においても
においても同一だから(
は
において正則だから)

(この場合,
が一次以上ならば,
が
の極で,
における
の主要部は
から定数項だけをのぞいた残部である.)
における主要部
は (1) の通りだから,(2) または (3) によって
が部分分数に分解されるのである.
さて
の計算法だが,それは前に述べたように
の Taylor 展開の最初の
項から得られる.
特に
が分母の単根ならば,主要部

において,
は
における留数で(§62)

よって
が単根のみを有して,
が
よりも低次ならば,

和
は
のすべての根
にわたる.これが lagrange の補間式である.
有理函数の不定積分は有理函数
を (3) のように分解すればすぐにできる.まず多項式
の不定積分に論はない.さて

だから

故に次の定理を得る.
の不定積分は,有理函数と対数函数との和である.その対数的の部分は

は
の極
に関する和で,
は
における
の留数である.
が実係数を有する有理函数なる場合は,実変数
に関する不定積分を実数だけで表わすことはもちろんできる.その場合,
の分母の実根
からは実数なる
が生ずるが,互に共役なる
からは
のほかに
を含む項が生ずる.今

と置けば,
![\log(x-\alpha)=\log(x-a-bi)
=\frac12\log[(x-a)^2+b^2]-i\,\mathrm{arc\,tan}\,\frac{b}{x-a}.](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/3/9/0/3905dd818a1f9b2a18551219ac41c906.png)
故に
![a_1\log(x-\alpha)+\bar{a}_1\log(x-\bar\alpha)
=p\log[(x-a)^2+b^2]+2q\,\mathrm{arc\,tan}\,\frac{b}{x-a}.](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/2/5/f/25f1872d39fd3575e8adf51e19ff61af.png)
有理函数の不定積分における有理の部分は,有理的計算によって(根を用いないで)求められることを,Hermite が指摘した.
まず分母
が複根を有するときには

と置いて,
重の一次因子の全部をまとめて
と書く(
重因子がなければ
とする).然らば
は単根のみを有し,かつ
は二つずつ互に素なる多項式である.さて
と
との最大公約数を
と書けば

同じように

等々.故に

等々で,これから割り算によって
が得られる.すなわち
におけるこれらの因子は有理的の計算によって分離されるのである.
然らば
は互いに素だから

のような分解が有理的にできる.
今これら部分分数の一つを

と書いて,それの積分を単純化しよう.
仮定によって
と
とは共通因子を有しないから

なる多項式
が有理的に求められる.然らば

を用いて,第二の積分に部分積分を行えば,

を得る.すなわち分母において
の指数が
なる積分に帰する.この方法を続行すれば,結局


を得る: ただし
は多項式で,
は
よりも低次である(さもなければ,
を
で割って,その整商だけを分離すればよい).和は
の根
の上にわたる.
は
における留数である(
の根はすべて単根のはず).

.


の根を
に注意して 

および
である.よって実数で表わせば,
