解析概論/第5章/二次式の平方根に関する不定積分

提供:Wikisource
移動: 案内, 検索

[編集] 67.二次式の平方根に関する不定積分[* 1]

z の二次式の平方根を

(1)
w=\sqrt{ax^2+bx+c}=\sqrt{R}

と書いて,F を有理式とすれば F(z,w)z に関して一意的ではないが,それを有理的に一意化uniformization)することができる.――というのは,zw も媒介変数 t の有理函数で,その t が逆にまた zw との有理函数として表されることを意味する.すなわち

(2)
z=\varphi(t),\quad w=\psi(t)

で,また

(3)
t=\theta(z,w);

しかも \varphi,\psi,\theta は有理函数である.このように zw とを一意的に表わす媒介変数 t一意化変数という.

然らば,(2)F(z,w) へ持ち込めば

\int F(z,w)dz=\int F(\varphi,\psi)\varphi'(t)dt.

それは t に関する有理函数の積分である.故に不定積分は (3) によって,zw との有理函数および対数函数で表わされる.

上記の一意化は実変数の場合には§37,(II)に述べたように無数にできるが,同様の方法が複素変数に関しても適用される.次にその一例を述べる.

まず変数 z の一次変換によって平方根を

\sqrt{R}=\sqrt{z^2-1}

にすることができる.複素数の範囲で考察すれば,それは常に可能である.然らば(§37のように)

(4)
z+\sqrt{R}=t

と置くとき

z-\sqrt{R}=\frac{1}{t}.

従って


  z=\frac{1}{2}\left(t+\frac{1}{t}\right),\quad
  \sqrt{R}=\frac{1}{2}\left(t-\frac{1}{t}\right),
dz=\frac{1}{2}\left(1-\frac{1}{t^2}\right)dt,
(5)
\frac{dz}{\sqrt{R}}=\frac{dt}{t}

これが計算的に最も見透しのよい有理化の方法であろう.

さて F(z,w) を有理式とすれば,一意化変数 t を用いて

\int F(z,\sqrt{R})dz=\int \mathit{\Phi}(t).

ただし \mathit{\Phi}(t) は有理式である.それを多項式と部分分数とに分割して

\mathit{\Phi}(t)=P(t)+\sum_{\lambda,n}\frac{c_n}{(t-\lambda)^n}

とする,\lambda\mathit{\Phi}(t) の極である.従って

(6)

 \int \mathit{\Phi}(t)dt=\mathit{\Psi}(t)+\sum_{\lambda}c_1\log(t-\lambda),

\mathit{\Psi}(t) は有理式である.故に (4) から

(7)
\int F(z,\sqrt{R})dz=
 \mathit{\Psi}(z+\sqrt{R})+\sum_{\lambda}c_1\log(z+\sqrt{R}-\lambda)

すなわち F(z,\sqrt{R}) の不定積分は z,\sqrt{R} の有理式と z,\sqrt{R}一次式の対数との一次結合として表わされる.

以上は F(z,\sqrt{R}) の不定積分を行うときに期待されるべき結果の概括論である.

F および R における係数が実数であるとき,変数も実数として,結果を実数のみで表わすには,三つの場合を区別することを要する.すなわち

R=ax^2+bx+c,\quad D=b^2-4ac

として


   \text{(I) }a>0,D>0,\quad 
  \text{(II) }a>0,D<0,\quad 
 \text{(III) }a<0,D<0.

a<0,D<0 ならば,R は常に負だから,実数の範囲内では問題にならない.さて,これらの場合において,実係数の一次変換によって \sqrt{R} を次のような形に変形すえることができる.


    \text{(I) }\sqrt{x^2-1},\quad 
   \text{(II) }\sqrt{x^2+1},\quad
  \text{(III) }\sqrt{1-x^2}.

(I) の場合には,(4) の変換で有理化ができるが,そのとき (7) における \log の下で,\lambda=p+qi が複素数ならば,その \log を実数に引直さねばならない.さて


  \log(t-\lambda)=\log(t-p-qi)
 =\frac{1}{2}\log((t-p)^2+q^2)-i\,\mathrm{arc\,tan\,}\frac{q}{t-p}.

右辺の \log の下は t の二次式だが,それを

\log(t)+\log\!\left(t+\frac{p^2+q^2}{t}-2p\right)

と書けば,\tfrac{1}{t}=x-\sqrt{R} であったから,第二の \log の下は

x+\sqrt{R}+(p^2+q^2)(x-\sqrt{R})-2p

すなわち hx+k\sqrt{R}+l のような x\sqrt{R} との実係数の一次式である.\lambda が複素数ならば,(7) における係数 c_1(留数)も複素数だが,共役複素数が対を成して出てきて,結局は x,\sqrt{R} の一次式の \logx,\sqrt{R} の一次有理式の \mathrm{arc\,tan} とで不定積分が得られるのである.(II),(III) でも,結果は同様であるが,いずれの場合にも,実際の計算は相当にめんどうである.

上記,一般的の理論では,結果の見通しをつけて,手数を厭わなければ,計算が必らずできることを述べたのである.もっとも,計算ができるといっても,部分分数への分解には,方程式の根を求めなければならないから,実際は(極めて特別の場合のほか)近似計算に終わるのである.

  1. 本書では多意なる解析函数の積分論を述べない.それには Riemann 面が必要で,解析概論としては,あまりに深入りであるろう.本節では実変数への応用を統一的に説明することを目標にするが,複素変数でも,函数が一意なる領域には通用する.
個人用ツール
名前空間

変種
操作
案内
印刷/エクスポート
ツールボックス