解析概論/第5章/二次式の平方根に関する不定積分
[編集] 67.二次式の平方根に関する不定積分[* 1]
の二次式の平方根を

と書いて,
を有理式とすれば
は
に関して一意的ではないが,それを有理的に一意化(uniformization)することができる.――というのは,
も
も媒介変数
の有理函数で,その
が逆にまた
と
との有理函数として表されることを意味する.すなわち

で,また

しかも
は有理函数である.このように
と
とを一意的に表わす媒介変数
を一意化変数という.
然らば,(2) を
へ持ち込めば

それは
に関する有理函数の積分である.故に不定積分は (3) によって,
と
との有理函数および対数函数で表わされる.
上記の一意化は実変数の場合には§37,(II)に述べたように無数にできるが,同様の方法が複素変数に関しても適用される.次にその一例を述べる.
まず変数
の一次変換によって平方根を

にすることができる.複素数の範囲で考察すれば,それは常に可能である.然らば(§37のように)

と置くとき

従って



これが計算的に最も見透しのよい有理化の方法であろう.
さて
を有理式とすれば,一意化変数
を用いて

ただし
は有理式である.それを多項式と部分分数とに分割して

とする,
は
の極である.従って

は有理式である.故に (4) から

すなわち
の不定積分は
の有理式と
の一次式の対数との一次結合として表わされる.
以上は
の不定積分を行うときに期待されるべき結果の概括論である.
および
における係数が実数であるとき,変数も実数として,結果を実数のみで表わすには,三つの場合を区別することを要する.すなわち

として

ならば,
は常に負だから,実数の範囲内では問題にならない.さて,これらの場合において,実係数の一次変換によって
を次のような形に変形すえることができる.

(I) の場合には,(4) の変換で有理化ができるが,そのとき (7) における
の下で,
が複素数ならば,その
を実数に引直さねばならない.さて

右辺の
の下は
の二次式だが,それを

と書けば,
であったから,第二の
の下は

すなわち
のような
と
との実係数の一次式である.
が複素数ならば,(7) における係数
(留数)も複素数だが,共役複素数が対を成して出てきて,結局は
の一次式の
と
の一次有理式の
とで不定積分が得られるのである.(II),(III) でも,結果は同様であるが,いずれの場合にも,実際の計算は相当にめんどうである.
- ↑ 本書では多意なる解析函数の積分論を述べない.それには Riemann 面が必要で,解析概論としては,あまりに深入りであるろう.本節では実変数への応用を統一的に説明することを目標にするが,複素変数でも,函数が一意なる領域には通用する.