解析概論/第5章

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目次

[編集] 第 5 章 解析函数,とくに初等函数

変数を複素数にまで拡張することは,19世紀以後の解析学の特徴で,それによって古来専ら取扱われていたいわゆる初等函数の本性が初めて明らかになって,微分積分学に魂が入ったのである.複素数なしでは,初等函数でも統制されない.解析函数とは Weierstrass の命名であるが,それは複素変数の函数が解析学における中心的の位置を占有することを宣言したのであろう.

解析函数の理論を,かつては函数論とも略称したが,それの一般的の部分が,現代的の初等解析において,欠くべからざる最も重要なる部分であることは現今,数学的常識である.

今本書の一章として解析函数について述べるのは,いわゆる‘函数論’からの任意の切り抜きではなくて,初等函数の統制に必要と認められる一般的原則だけを迅速に通観することを目標とするのである.

解析学の創業時代に,18世紀には Euler,19世紀には Cauchy の権威の下に構成されたいわゆる‘代数解析’なるものは,微分積分が常識になってしまった今日においては,原形のままでは存在理由を有しないであろう.現代において,それに代って解析入門の役をするものは,一般的の解析函数論でなければなるまい.

複素数はもちろん実数を含む.本章では,むしろ複素変数の立場から,実変数を統制することを目標とする.

[編集] 55.解析函数

§8に述べたのは函数のDirichlet式定義である. それをそのまま複素数にまで拡張するならば, 或る区域に属する各々の複素数z = x + yiに, それぞれ確定の複素数w = u + viを対応せしめる或る法則が与えられるとき, wzの函数ということになるであろう. しかし,それだけでは,二つの実変数x,yの二つの実函数u,vが組合わせられるに過ぎなくて, 特に複素数を用いるには及ばない. 複素変数を考察するに当って,我々は,函数の連続性はもちろんであるが, なおそれの微分可能性を要求する.

微分可能の意味は形式上実数の場合と全く同様である. すなわちf(z)zにおいて微分可能であるとは


\lim_{h \to 0}\frac{f(z + h) - f(z)}{h} = f'(z)

が確定であることをいう. 換言すれば

(1)

f(z + h) = f(z) + hf'(z) + o(h)

で,f'(x)zのみに関係してhには関係しない定数, またo(h)zにもhにも関係するが, h \to 0のとき,hよりも高度に微小なる数である. すなわちo(h) = \varepsilon hと置けばh \to 0のとき\varepsilon \to 0, それはすなわち|h| \to 0のとき|\varepsilon| \to 0を意味する.

上記微分可能の定義は,形式上実数の場合と同様であるけれども, 複素数の範囲においては,h \to 0というのは, hの絶対値|h|が限りなく小さくなることであって, 偏角\arg hは任意である, すなわちhがどの方面から, どのような過程を経て0に近づくとしても, それには無関係に


\frac{f(z + h) - f(z)}{h}

が一定の極限f'(z)に近づくのである.

複素数平面上の或る領域Kの各点において微分可能な函数をKにおいて正則な解析函数という. あるいは略して単に正則ともいう.

形容詞‘解析’(analytic)は,むしろ全局的の意味において用いられる. 局所的には簡便に正則(regular)という. フランス系では整型(holomorphe)ともいう.

この後,函数が或る点において正則というのは, その点の近傍(その点を含む或る領域)において正則(微分可能)なることを意味する.

微分法に関する定理15および合成函数の微分に関して§15に述べたことは, 複素変数に関しても,もちろん,通用する. 微分可能なる函数は,もちろん,連続で,また閉区域において連続は一様である,等々.

微分可能な函数の最も簡単なものは

f(z) = z^{n} (nは自然数)

である. 実際,実変数の場合と同様に

h \to 0 のとき  \frac{(z + h)^{n} - z^{n}}{h}
= nz^{n - 1} + \frac{n(n - 1)}{2}hz^{n - 2} + \cdots + h^{n - 1} \to nz^{n - 1}

すなわち

f'(z) = nz^{n - 1}

このようにz^{n}が微分可能だから, 有理函数は微分可能である. ただし,分母が0になる点zは除いていう(定理15).

なお重要な場合は,巾級数


P(z) = \sum_{n = 0}^{\infty} a_{n}z^{n}

で表わされる函数で,それは微分可能である. 前章(定理49,[注意1])に述べた証明法は複素数にも通用する. 故に巾級数は収束円内で正則で,かつその逐次の導函数がすべて同一円内で正則である.

上記の意味で,f(z) = u + viz = x + yiに関して微分可能であることを, 実数の関係に引き直してみるために, f'(z) = p + qiとし,またh = \Delta z = \Delta x + i\Delta yと置けば, (1)から

\Delta u + i\Delta v = (p + qi)(\Delta x + i\Delta y) + o(|h|),\quad
 (|h| = \sqrt{\Delta x^{2} + \Delta y^{2}}).

故に実部と虚部とを分けて

\Delta u = p\Delta x - q\Delta y + o(|h|),\quad 
      \Delta v = q\Delta x + p\Delta y + o(|h|).

すなわち,uvは実変数xyの函数として§22の意味で微分可能で

u_{x} = v_{y} = p,\quad -u_{y} = v_{x} = q,

従って

f'(z) = u_{x} + iv_{x} = -i(u_{y} + iv_{y}).

すなわちf(z)が正則ならば,その実部uおよび虚部vの間に

(2)
u_{x} = v_{y},\quad u_{y} = -v_{x}

なる関係が成り立つ. これは微分可能の必要条件である. (2)Cauchy--Riemannの微分方程式という.

逆にuvの実函数として,§22に述べた意味で微分可能で, かつ(2)が成り立つならば,h = \Delta x + i\Delta yとして

\Delta u = u_{x}\Delta x + u_{y}\Delta y + o(|h|)
\Delta v = v_{x}\Delta x + v_{y}\Delta y + o(|h|)

従って(2)を用いて

\Delta u + i\Delta v = (u_{x} + iv_{x})(\Delta x + i\Delta y) + o(|h|)

故に

\frac{\Delta u + i\Delta v}{\Delta x + i\Delta y} \to u_{x} + iv_{x}

すなわちu + viは複素変数z = x + yiに関して微分可能である.

これは明白である. さて,後にわかるように,f(z)が正則ならば, 導函数f'(z)も正則である. 従って何階までも導函数が正則だからuvは何階までも連続的微分可能である.

今しばらくそれを仮定すれば,(2)からu_{xx} = v_{yx}u_{yy} = -v_{xy}. 従って(定理27)

\frac{\partial^{2}u}{\partial x^{2}} + \frac{\partial^{2}u}{\partial y^{2}} = 0,  \frac{\partial^{2}v}{\partial x^{2}} + \frac{\partial^{2}v}{\partial y^{2}} = 0

すなわちuvLaplaceの微分方程式\frac{\partial^{2}w}{\partial x^{2}} + \frac{\partial^{2}w}{\partial y^{2}}を満足せしめねばならない. 故に解析函数f(z)の実部および虚部 u(x,y)v(x,y)は実変数xyの函数としては 非常に特別なる函数(いわゆる調和函数)である.

[例1] 

z = x + yiと共役な\bar{z} = x - yiは, §8の意味ではzの函数であるけれども,それは解析的でない. この場合,u = xv = -yで,(2)が成り立たない.

|z|\Re(z) = xzの実部),\Im(z) = yzの虚部)などもzの函数であるが, それらも解析的でない. 一般に,或る領域で常に実数値を有するf(z)は(それが定数である場合を除けば)解析的でない.---v = 0ならば, (2)からu_{x} = 0u_{y} = 0を得る.

[例2] 

或る領域でf(z)が正則でf'(z)が常に0ならば, f(z)は定数である.---f'(z) = u_{x} + iv_{x}だから, u_{z} = 0v_{x} = 0を得る.

[例3] 

或る領域でf(z)が正則で,かつ|f(z)| = cが定数ならば, f(x)がそれ自身が定数である.---c = 0ならばもちろんf(z) = 0. よってc > 0とする. 然らば領域内で,u^{2} + v^{2} = c^{2}. 従ってuu_{x} + vv_{x} = 0uu_{y} + vv_{y} = 0. それからvまたはuを逐い出せば, (2)からu({u_{x}}^{2} + {v_{x}}^{2}) = 0v({u_{x}}^{2} + {v_{x}}^{2}) = 0. すなわちu|f'(z)|^{2} = 0v|f'(z)|^{2} = 0. 領域内でu = v = 0でないのだから,f'(z) = 0. 故にf(z)は定数である[例2].

[附記] 

z = x + yiw = f(z) = u + viとすれば,(2)から


\frac{D(u,v)}{D(x,y)}
= \left|
 \begin{array}{cc}
u_{x} & v_{x} \\
u_{y} & v_{y}
\end{array}
 \right|
= {u_{x}}^{2} + {v_{x}}^{2} = |f'(z)|^{2}

これはf'(z) = 0なるときのほかは常に正である. 故にf'(z) \neq 0なる点zの近傍では, f(z)の逆函数が一意的に可能である(§83,§84参照). すなわち局所的にzw = f(z)との間に1対1対応が成り立つ.

この対応を写像と見れば,f'(z) = p + qi = \kappa = ke^{i\alpha} \neq 0とするとき

du = pdx - qdy
dv = qdx + pdy

複素数で書けば,簡明に

dw = \kappa dz = dz \times k \times e^{i\alpha}

すなわち微分(微小微分)に関しては,z系からw系に移るには, k倍に拡大して,角\alphaだけ正の向きに回転すればよい. 約言すれば,この写像は極限において相似になる.

微分可能といえば,一語簡単であるが,含蓄は多大である. だから有理函数や巾級数やに関しても, その‘解析性’を伏せておいては,真相がわかるものではあるまい!

[編集] 56.積分

本節では領域 K において f(z) の連続性のみを仮定する.K 内で点 z_0 を点 z に結ぶ曲線 C が与えられているとする[* 1]

C の上で z_0z との間に順次に分点 z_1,z_2,\ldots,z_{n-1} を取って i 番目の弧 z_{i-1}z_i(それを C_i と名づける)の上の任意の点を \zeta_i として,例の通り

(1)
\mathit\Sigma_\Delta=\sum_{i=1}^n f(\zeta_i)(z_i-z_{i-1})

を考察する.弧 C_i の長さを \sigma_i として,\sigma_i の最大値を \sigma とするならば,\sigma\to 0 のとき \mathit\Sigma_\Delta は曲線 C の分割法 \Delta および \zeta_i のとり方に無関係なる一定の極限を有する.それを曲線 C に関する f(z) の積分

(2)
I=\int_C f(z)\,dz

という.z=x+yi,f(z)=u(x,y)+iv(x,y) とすれば,I は線積分

(3)

  I=\int_C(u\,dx-v\,dy)+i\int_C(u\,dy+v\,dx)

にほかならない(§41).

積分 I に関しては実変数に関して述べたのと同様の定理がもちろん成り立つが,それらを一々説明する必要はあるまい.今我々の目的のために重要なのは次の事項である.

(1º)
曲線 C の上で常に |f(z)|\leqq M ならば

  \left|\int_C f(z)\,dz\right|\leqq ML,
LC の長さを表わすのである.
[証]
この場合 (1) において,\textstyle|\mathit\Sigma_\Delta|\leqq M\sum_{i=1}^n|z_i-z_{i-1}|,また \textstyle\sum_{i=1}^n|z_i-z_{i-1}|\leqq L.従って |\mathit\Sigma_\Delta|\leqq ML.故に極限へ行っても

  \lim_{\delta\to 0}\left|\sum f(\zeta_i)(z_i-z_{i-1})\right|\leqq ML.
すなわち
|I|\leqq ML.
(2º)
上記よりは,いっそう精密に,sC 上の弧長とすれば,

  \left|\int_C f(z)\,dz\right|\leqq \int_C|f(z)|\,ds.
[証]
(1) から
\begin{align}
   \left|\sum_{i=1}^n f(z_i)(z_i-z_{i-1})\right|
 &=\sum_{i=1}^n|f(z_i)||z_i-z_{i-1}|\\
 &=\sum_{i=1}^n|f(z_i)|(s_i-s_{i-1}),
\end{align}
|z_i-z_{i-1}| は部分弧 C_i の弦の長さで,s_i-s_{i-1}C_i の弧長である.さて極限へ行けば上記の関係を得る.
(3º)
K において連続なる f(z),g(z) に関して,K において,あるいは単に C の上で,|f(z)-g(z)|<\varepsilon ならば

  \left|\int_C f(z)\,dz-\int_C g(z)\,dz\right|<\varepsilon L.
[証]
\textstyle\int_C f(z)\,dz-\int_C g(z)\,dz=\int_C\{f(z)-g(z)\}\,dz.これは明白であろう.然らば f(z)-g(z) に関して,(1º) において M<\varepsilon としてよい.
(4º)
C の上で f_n(z) が一様に f(z) に収束すれば

  \int_C f(z)\,dz=\lim_{n\to\infty}\int_C f_n(z)\,dz.
[証]
n を十分大きく取れば,C 上で常に |f(z)-f_n(z)|<\varepsilon.故に (3º) によって

  \left|\int_C f(z)\,dz-\int_C f_n(z)\,dz\right|<\varepsilon L.
[注意] 
C 上で \textstyle\sum_{n=0}^\infty f_n(z) が一様に f(z) に収束すれば,項別積分が許される.部分和 \textstyle\sum_{\nu=0}^n f_\nu(z)(4º)f_n(z) に代用するのである.
(5º)
C の上の分点 z_i を順次に結ぶ折線 (z_0z_1z_2\ldots z_{n-1}z)\mathit\Gamma と名づける.然らば分点を十分密に取れば,\textstyle\int_{\mathit\Gamma}f(z)\,dz はどれほどでも \textstyle\int_C f(z)\,dz に近似する. \varepsilon\text{-}\delta 式でいえば,部分弧 C_i の長さの最大値を \sigma として,\sigma<\delta のとき

  \left|\int_C f(z)\,dz-\int_{\mathit\Gamma}f(z)\,dz\right|<\varepsilon.
もちろん,折線 \mathit\Gamma が領域 K の外へ出てはならないが,\sigma を十分小さく取れば,\mathit\GammaK 内に止まるであろう[* 2]
[証]
連続の一様性(定理 14)を証明の根拠にする.K 内で C(および \mathit\Gamma)を包む閉域を K_0 とするとき,与えられた \varepsilon に対応して,十分小さく \delta を取って,K_0 において常に,|z-z'|<\delta なるとき |f(z)-f(z')|<\varepsilon ならしめることができる.曲線 C の上に分点を十分密に取って,部分弧の長さをすべて \delta よりも小にする.すなわち前記の \sigma<\delta.然らば部分弧 C_i に対応する弦を \mathit\Gamma_i とするとき |z_i-z_{i-1}|\mathit\Gamma_i の長さで,それも,もちろん,\delta よりも小である.

さて C_i の上の任意の点 z に関して |z-z_i|<\delta.故に C_i の上では |f(z)-f(z_i)|<\varepsilon.故に (3º) によって


  \left|\int_{C_i}f(z)\,dz-\int_{C_i}f(z_i)\,dz\right|<\varepsilon\sigma_i,
\sigma_i は弧 C_i の長さである.さて積分の定義によって

  \int_{C_i}f(z_i)\,dz=f(z_i)\int_{C_i}\,dz=f(z_i)(z_i-z_{i-1}),
従って

  \left|\int_{C_1}f(z)\,dz-f(z_i)(z_i-z_{i-1})\right|<\varepsilon\sigma_i
故に

  \int_C f(z)\,dz=\sum_{i=1}^n\int_{C_i}f(z)\,dz
を用いて,
(4)
\begin{align}
  \left|\int_C f(z)\,dz-\sum_{i=1}^n f(z_i)(z_i-z_{i-1})\right|
  &\leqq \sum_{i=1}^n\left|\int_{C_i}f(z)\,dz-f(z_i)(z_i-z_{i-1})\right|\\
  &< \varepsilon\sum_{i=1}^n\sigma_i=\varepsilon L,
\end{align}
LC の長さである.

C の代りに折線 \mathit\Gamma を取っても同様に

(5)

  \left|\int_\mathit\Gamma f(z)\,dz-\sum_{i=1}^n f(z_i)(z_i-z_{i-1})\right|
  <\varepsilon L',
L'\mathit\Gamma の長さである.従って L'\leqq L

(4)(5) とから


  \left|\int_C-\int_\mathit\Gamma\right|<2\varepsilon L.
L は定数,\varepsilon は任意だから証終る.
(6º)
z_0z とを結ぶ曲線 C に関する積分 \textstyle\int_C f(z)\,dz が確定の値を有するといっても,その値は曲線 C の取りようによって変動するであろう.もしも \textstyle\int_C f(z)\,dzz_0z とのみに関係して,K 内でそれらを結ぶ曲線 C には無関係なる一定の値を有するならば,\textstyle\int_C f(z)\,dz\textstyle\int_{z_0}^z f(z)\,dz と記してさしつかえない.その場合,z_0 を固定すれば \int_{z_0}^z f(z)\,dzz の函数である.それを
F(z)=\int_{z_0}^z f(z)\,dz
と置けば,F(z) は微分可能で,
F'(z)=f(z).
もちろん f(z) は連続と仮定している.
[証]
\textstyle F(z_1+h)=\int_{z_0}^{z_1+h}f(z)\,dz において積分路は z_1 を通るとしてよいから,

  F(z_1+h)-F(z_1)=\int_{z_1}^{z_1+h}f(z)\,dz.
|h|<\delta なるとき,|f(z_1+h)-f(z_1)|<\varepsilon とすれば
(6)

  \left|\int_{z_1}^{z_1+h}\{f(z)-f(z_1)\}\,dz\right|<\varepsilon|h|.
これは \textstyle\int_{z_1}^{z_1+h}z_1z_1+h とを結ぶ線分としてもよいからである.もちろん |h| を十分小さく取って,その線分が考察中の領域 K の内部にあるとしていうのである.さて
(7)
\begin{align}
   \int_{z_1}^{z_1+h}\{f(z)-f(z_1)\}\,dz
 &=\int_{z_1}^{z_1+h} f(z)\,dz -f(z_1)\int_{z_1}^{z_1+h}dz\\
 &=\int_{z_1}^{z_1+h} f(z)\,dz -hf(z_1)
\end{align}
だから,(6)(7) とから

  \left|\int_{z_1}^{z_1+h}f(z)\,dz-hf(z_1)\right|<\varepsilon|h|,
すなわち

  |F(z_1+h)-F(z_1)-hf(z_1)|<\varepsilon|h|.
故に

  \left|\frac{F(z_1+h)-F(z_1)}h -f(z_1)\right|<\varepsilon.

\varepsilon は任意だから


  \lim_{h\to 0}\frac{F(z_1+h)-F(z_1)}h = f(z_1),
すなわち
F'(z_1)=f(z_1).
[例]
f(z)=a+bzz の一次式とする.然らば \textstyle\int_{z_0}^z f(z)\,dzz_0z を結ぶ路 C に無関係な確定の値を有する.
\int_C(a+bz)\,dz=a\int_C dz+b\int_C z\,dz
だから,\textstyle\int dz および \textstyle\int z\,dz に関して証明をすればよい.さて
\int_C dz=\lim\sum(z_i-z_{i-1})=z-z_0.
また各小弧の両端における z の値を取って
\begin{align}
  \int_C z\,dz &=\lim\sum z_{i-1}(z_i-z_{i-1})=\lim\sum z_i(z_i-z_{i-1})\\
  &= \frac12\lim\sum(z_i+z_{i-1})(z_i-z_{i-1})=\frac12\lim\sum(z_i^2-z_{i-1}^2)\\
  &= \frac12(z^2-z_0^2).
\end{align}
故に \textstyle\int_C dz\textstyle\int_C z\,dz も積分路 C には無関係である.

これらの場合,f(z)=1, F(z)=z-z_0.または f(z)=z,F(z)=\tfrac12(z^2-z_0^2) で,どちらも F'(z)=f(z)

[注意] 
z_0 から z に行く曲線 C_1,C_2 があるとき,z_0 から C_1 に沿って z に行き,z から C_2 に沿って反対に z_0 に返ることができる.これを一つの通路 C とするならば \textstyle\int_{C_1}-\int_{C_2}=\int_C.故に \textstyle\int_{C_1}=\int_{C_2}\textstyle\int_C=0 に同じである.ただし \textstyle\int_C においては z_0,z に起点,終点というような特別の意味はない.
C が一つの閉曲線であるとき,その上に点 A,B を取れば CAMB,BNA の二つの部分に分かたれる.今 A,B を曲線 L で結べば

  \int_C = \int_{AMB}+\int_{BNA} = \int_{AMB}+\int_{BLA}+\int_{ALB}+\int_{BNA} = \int_{AMBLA}+\int_{ALBNA}.
このようにして \textstyle\int_C を二つの閉曲線に関する積分の和に分けることができる.この後しばしばこの方法を適用する.

  1. 本章では一々ことわらないで,C は滑らかな曲線またはそれの有限個の接合とする.
  2. 曲線 C とそれを含む領域 K の境界とは,共通点を有しない二つの閉集合だから,その間の距離 \rho>0.故に \sigma<\rho とすればよい(§12).

[編集] 57.Cauchy の積分定理

Cauchy の積分定理は解析学において最も重要な定理の一つである.最も簡単な場合として,まずそれを次の形にいい表わそう.

定理 51.
解析函数 f(z) は領域 K において正則で,単純な閉曲線 C も,その内部も,すべて K に属するとする[* 1].然らば
(1)
\int_C f(z)\,dz=0.
[証]
証明をする前にまず問題を単純化する.

前節 (5º) によれば,C の代りに,それに内接する閉折線 \mathit\Gamma に関して証明すれば十分である: \textstyle|\int_C-\int_\mathit\Gamma| はそれほどでも小ならしめることができるから \textstyle\int_\mathit\Gamma=0 ならば \textstyle\int_C=0 でなければならない.

ただし \mathit\Gamma は領域 K 内になければならないが,接点を十分密に取れば,その条件は満たされる.また閉折線 \mathit\Gamma には重複点が生ずることもあろうが,折線ならば,重複点の数は有限だから,\textstyle\int_\mathit\Gamma は単純な閉折線に関する有限個の積分の和に分解される.故に C を(単純なる)多角形の周として証明をすればよい.

多角形は三角形に分割されるから,前頁[注意]によって,C が三角形の周であるとして証明をすれば十分である.

よって C を三角形 \Delta として \textstyle\int_\Delta f(z)\,dz を証明する.ただし,\Delta の内部および \Delta の周上の各点において f(z) は正則.

\textstyle|\int_\Delta f(z)\,dz|=M と置いて,M=0 を証明する.それには若干技巧を要するが,今 Pringsheim の考案を紹介する: 区間縮小法を巧みに活用するのである.

\Delta の各辺の中点を結んで,それを四つの合同なる三角形 \Delta_1,\Delta_1',\Delta_1'',\Delta_1''' に分ける.然らば \textstyle\int_\Delta=\int_{\Delta_1}+\int_{\Delta_1'}+\int_{\Delta_1''}+\int_{\Delta_1'''}.右辺の四つの積分のうちで絶対値の最大なるもの(の一つ)を \textstyle\int_{\Delta_1} とすれば
M=\left|\int_\Delta\right|\leqq 4\left|\int_{\Delta_1}\right|, すなわち \left|\int_{\Delta_1}\right|\geqq\frac{M}4.
同じように \Delta_1 を四等分して \textstyle|\int_{\Delta_2}|\geqq\frac{M}{4^2} なる三角形 \Delta_2 を得る.このような操作を限りなく継続すれば
\left|\int_{\Delta_n}\right|\geqq\frac{M}{4^n}
なる三角形 \Delta_n を得るが,\Delta\supset\Delta_1\supset\Delta_2\supset\cdots だから,\Delta_n は一点 z_0 に収束する(定理 10).z_0 は三角形 \Delta に属し,従って K の内点である. さて,仮定によって z_0 において f(z) は微分可能であるから,
f(z)=f(z_0)+f'(z_0)(z-z_0)+o(z-z_0),
すなわち任意の \varepsilon>0 に対して
|z-z_0|<\delta なるとき |f(z)-\{f(z_0)+f'(z_0)(z-z_0)\}|<\varepsilon|z-z_0|
であるように \delta が取られる.然るに n を十分大きく取れば \Delta_n は全く |z-z_0|<\delta なる円の中に入る.故に(§56,(2º)

  \left|\int_{\Delta_n}[f(z)-\{f(z_0)+f'(z_0)(z-z_0)\}]\,dz\right|
  < \varepsilon\int_{\Delta_n}|z-z_0|\,ds.
左辺の積分記号の下で括弧 \{\} の中は z の一次式だから,それに関する \textstyle\int_{\Delta_n}0 である(207 頁,[例]).また右辺では,z\Delta_n の周上にあって,z_0\Delta_n の内部または周上にあるから,|z-z_0|<L_n.ただし L_n\Delta_n の周の長さである,すなわち L/2^n に等しい.故に右辺は

  \varepsilon\int_{\Delta_n}|z-z_0|\,ds < \varepsilon L_n\int_{\Delta_n}ds
  = \varepsilon L_n^2 = \varepsilon\frac{L^2}{4^n}.
故に

  \left|\int_{\Delta_n} f(z)\,dz\right| < \varepsilon\frac{L^2}{4^n}.
然るに上記のように,

  \left|\int_{\Delta_n} f(z)\,dz\right| \geqq \frac{M}{4^n}.
故に
M<\varepsilon L^2.
\varepsilon は任意であったから M=0
(証終)

上記の証明では,点 z_0 において f(z) が正則であることが絶対に必要であった.故に定理の仮定において,C の内部が f(z) の正則なる領域 K に属することを特記したのである.もしも C の内部の一点においてでも f(z) が正則でないならば,証明は拘束力を失うから,定理は必らずしも成立しない.

[例]
f(z)=\tfrac{1}{(z-a)^n}a は定数,n は自然数とする.z=a 以外では f(z) は正則である.今 Ca を中心とする半径 r の円周とすれば,C の上では(すなわち zC 上にあるとき)
z-a=r(\cos\theta+i\sin\theta),\quad dz=r(-\sin\theta+i\cos\theta)d\theta,
従って
\frac{dz}{z-a}=id\theta.
(1º)
n=1 ならば
\int_C\frac{dz}{z-a}=i\int_0^{2\pi}d\theta=2\pi i.
それは 0 でない.C の内部の点 z=a において f(z)=\tfrac{1}{z-a} が正則でないからである.
(2º)
n>1 ならば
\begin{align}
  \int_C\frac{dz}{(z-a)^n} &= \int_C\frac{1}{(z-a)^{n-1}}\frac{dz}{z-a}
  = i\int_0^{2\pi}\frac{d\theta}{r^{n-1}(\cos(n-1)\theta+i\sin(n-1)\theta)} \\
  &= \frac{i}{r^{n-1}}\int_0^{2\pi}(\cos(n-1)\theta-i\sin(n-1)\theta)d\theta=0
\end{align}
f(z)=\tfrac{1}{(z-a)^n}z=a において正則でないにもかかわらず,(偶然にも)\textstyle\int_C=0 である.それは定理に抵触するのではない.

閉曲線の内部に f(z) の正則でない点(特異点)がある場合にも,Cauthy の定理を拡張することができる.

閉曲線 C の内部に閉曲線 C' があって,CC' との間に挟まれる環状の閉域 K_0(境界線 C,C' をも入れていう)において,f(z) が正則ならば,
(2)
\int_C f(z)\,dz=\int_{C'} f(z)\,dz.
ただし,積分路 C,C' は同意の向き(例えば共に正の向き)を取るのである.
[証]
K_0 内で CC' とを二つの互に交わらない曲線 L_1, L_2 で結べば,K_0 が二つの区域 K_1,K_2 に分かたれるであろう. K_1,K_2 に関しては定理 51 が適用されるから,K_1,K_2 の周を正の向きに取った積分は 0 に等しい.すなわち図において
K_1
\int_{PQR}+\int_{Rr}+\int_{rqp}+\int_{pP}=0,
K_2
\int_{RSP}+\int_{Pp}+\int_{psr}+\int_{rR}=0,
加えて

  \left(\int_{PQR}+\int_{RSP}\right)+\left(\int_{pqr}+\int_{rpq}\right)
  +\left(\int_{Rr}+\int_{rR}\right)+\left(\int_{Pp}+\int{pP}\right)=0.
第一の括弧内は \textstyle\int_C,第二の括弧内は \textstyle-\int_{C'},第三,第四の括弧内は 0 に等しいから,結局
\int_C f(z)\,dz=\int_{C'} f(z)\,dz.

同じように考えて,次の定理を得る.

定理 52.
閉曲線 C の内部に,互に交わらない閉曲線 C_1,C_2,\ldots,C_n があって,それらに挟まれた閉域(C の内部で,C_i の外部にある部分,および C,C_i)が f(z) の正則なる領域に属するならば,

  \int_C f(z)\,dz=\int_{C_1}f(z)\,dz+\int_{C_2} f(z)\,dz+\cdots+\int_{C_n}f(z)\,dz,
ただし積分はすべて正の向きに取るのである.
Cauchy の定理から,正則な函数に関して不定積分の定理を得る.今一つの閉曲線の内部の領域 K において正則とする.然らば Cauchy の定理によって K 内において \textstyle\int_a^z f(z)\,dz は積分路に無関係である(§56 参照).故に \textstyle F(z)=\int_a^z f(z)\,dz と置けば,F'(z)=f(z).従って F(z)K において正則であるが,もしも逆に \mathit\Phi'(z)=f(z) ならば,\tfrac{d}{dx}(F(z)-\mathit\Phi(z))=0. 従って,F(z)-\mathit\Phi(z)=C は定数である(§55,[例 2]).

すなわち \mathit\Phi(z)=f(z) ならば,\textstyle\int_a^z f(z)\,dz=\mathit\Phi(z)+C.そこで z=a とすれば,\mathit\Phi(a)=-C.従って,上記仮定の下では,f(z) の原始函数 \mathit\Phi(z) は確かに存在して

(3)

  \int_a^z f(z)\,dz=\mathit\Phi(z)-\mathit\Phi(a).
すなわち領域 K において微分積分法の基本公式 (3) が成り立つのであるが,ここでは領域 K に条件がつく.上文では K は一つの閉曲線の内部としたが,一般に K単連結simply connectedeinfach zusammehnhängend)であればよい.領域 K はもちろん連結されているが(§12),それが単連結であることは,K 内に引かれるすべての閉曲線 C の内部の各点が K に属することをいう.例えば,(1) 円の内部(2) 矩形の内部,または一般に一つの閉曲線の内部などは単連結である.これらは有界なる領域であるが,有界でなくても,例えば,(3) 半平面,あるいは一つの角の内部(4) 一つの半直線で截られた平面(5) 平行帯(二つの平行線の中間)なども単連結である.単連結でない領域を複連結multiply connectedmehrfach zusammehnhängend)の領域という.例えば,(6) 一つの円の内部から一つ以上の互に交わらない円を除いた環状の領域は複連結である.円の代わりに閉曲線を取っても同様である.(7) 円の内部からただ一つの点を除いても複連結になる.また,(8) 円の外部は複連結である.これは全平面からひとつの円を除いたのであるが,(9) 全平面からただ一つの点を除いても,すでに複連結である.

この後,複連結の領域を横截線(cross cutQuerschnittcoupure)で截って,それを単連結の領域に化することがある.例えば (6) では各内円の周上の一点を外円の周上の一点に結ぶ互いに交わらない線分を引いて,それらの線分を境界に編入すれば,単連結の領域が生ずる.(7) では円内の除外点から円周の一点へ横截線を引けばよい.(8) では円周上の一点から円外への一つの半直線を引く,(9) では除外点から一つの半直線を引く,等々.

連結の理論を展開することは我々の目的でないが,陳述の便宜上単連結なる名称を説明したのである.

さて公式 (3)であるが,K が複連結ならば,K 内の閉曲線で,その内部に K の外点,または K の境界点を含むものに関しては積分定理 \textstyle\int_C f(z)\,dz=0 は必らずしも成立しないから,それから導かれた公式 (3) も成立が保証されない.

ただし zK の一点とすれば,z は内点だから,z の近傍,例えば z を中心とする或る円 K_0 の内部は K に属し,K_0 は単連結だから,K_0 においては (3) は成り立つ.すなわち局所的には (3) は成り立つが,ただ K の全局にわたって一つの原始函数 \mathit\Phi(z) の存在が保証されないのである.それは複連結に起因する制限であるから,単連結の場合においては不安はない.

要約すれば: 単連結の領域 K において f(z) が正則ならば,K 内の閉曲線 C に関して積分定理 \textstyle\int_C f(z)\,dz=0 が成り立ち,従って K の全局において原始函数 F(z) は存在する.そのとき,K において F'(z)=f(z) で,F(z) は微分可能だから,F(z)K において正則である.

  1. 単純とは重複点を有しないことをいう.すなわち CJordan の閉曲線(§12)である.ただし 204 頁脚注参照.本節では一々ことわらないで単に閉曲線と略称することもある.閉曲線 C と同時に C に包まれる区域が考察される.今 C の内部の領域を (C) と書き,それに C 上の点をつけ加えた閉域を [C] と書くならば,定理の仮定は [C]\subset K である.

[編集] 58.Cauchy の積分公式 解析函数の Taylor 展開

Cauchy の積分定理から解析函数の著しい性質が容易に導かれる.

定理 53.
閉曲線 C の内部および周上で f(z) が正則で,aC の内部の任意の点ならば
(1)

  f(a)=\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{f(z)}{z-a}\,dz.
これをCauchy の積分公式という.
[証]
被積分函数 f(z)/(z-a)C の内部の点 a において不連続であるが,a を中心として半径 \rho の円周 \mathit\GammaC の内部に画くならば(定理 52),

  I=\int_C\frac{f(z)}{z-a}\,dz=\int_\mathit\Gamma\frac{f(z)}{z-a}\,dz.
故に右辺の積分 \textstyle\int_\mathit\Gamma\rho に関係のない一定の値(すなわち I)を有する.今 \rho を十分小さく取って \mathit\Gamma の上で
|f(z)-f(a)|<\varepsilon
とする.さて

 I=\int_\mathit\Gamma\frac{f(z)}{z-a}\,dz
  =f(a)\int_\mathit\Gamma\frac{dz}{z-a}+\int_\mathit\Gamma\frac{f(z)-f(a)}{z-a}\,dz,
右辺の第一の積分は 2\pi if(a) に等しい(§57,[例]).第二の積分に関しては

  \left|\int_\mathit\Gamma\frac{f(z)-f(a)}{z-a}\,dz\right|
  < \frac{\varepsilon}{\rho}\int_\mathit\Gamma\,ds
  = \frac{\varepsilon}{\rho}\,2\pi\rho=2\pi\varepsilon,
\varepsilon は任意だから
I=2\pi if(a).
(証終)
定理 54.
解析函数は,それが正則なる領域内の任意の点において Taylor 級数に展開される.
[証]
f(z) は領域 K において正則とする.aK 内の任意の点,a を中心として a に最も近い K の境界点を通る円を K_0,その半径を r_0 とし,K_0 内の任意の点を \zeta|\zeta-a|=\rho, \rho<r<r_0 なる半径 r をもって a を中心として画いた円を c とする. さて zc の上にあるとき,
\begin{align}\frac{1}{z-\zeta}
  &=\frac{1}{(z-a)-(\zeta-a)}=\frac{1}{z-a}\cdot\cfrac{1}{1-\cfrac{\zeta-a}{z-a}}\\
  &=\frac{1}{z-a}+\frac{\zeta-a}{(z-a)^2}+\frac{(\zeta-a)^2}{(z-a)^3}+\cdots
\end{align}
において |\tfrac{\zeta-a}{z-a}|=\tfrac{\rho}{r}<1 だから,この幾何級数は収束するが,

  \frac{f(z)}{z-\zeta}
 =\frac{f(z)}{z-a}+\frac{(\zeta-a)f(z)}{(z-a)^2}+\frac{(\zeta-a)^2f(z)}{(z-a)^3}+\cdots
c 上の z に関して一様に収束する.――実際 c の上で |f(z)|<M とすれば

  \left|\sum_{\nu=n}^\infty\frac{(\zeta-a)^\nu f(z)}{(z-a)^{\nu+1}}\right|
  \leqq \frac{M}r\sum_{\nu=n}^\infty\left(\frac{\rho}r\right)^nu
  = \frac{M}{r-\rho}\left(\frac\rho{r}\right)^n.
故に項別積分(§56,(4º))をして 2\pi i で割れば

  \frac{1}{2\pi i}\int_c\frac{f(z)}{z-\zeta}\,dz
  = \sum_{n=0}^\infty\frac{(\zeta-a)^n}{2\pi i}\int_c\frac{f(z)dz}{(z-a)^{n+1}}.
左辺は f(\zeta) に等しい(定理 53)から
(2)
f(\zeta)=\sum_{n=0}^\infty A_n(\zeta-a)^n,
ただし
(3)

  A_n=\frac{1}{2\pi i}\int_c\frac{f(z)dz}{(z-a)^{n+1}}.

(2) において aK 内の任意の点で,\zetaa を中心とする円 c 内の任意の点であった.今 a を固定して \zeta を変数とみれば,(2) はすなわち f(\zeta)a における Taylor 展開である(定理 49).

このように,f(z)a の近傍で巾級数に展開されるから,何回までも微分可能で,導函数 f^{(n)}(z)a において正則であるが,a は領域 K の任意の点であったから次の定理が成り立つ.

定理 55.
領域 K において f(z) が正則ならば,K において各階の導函数 f^{(n)}(z) が存在して,それらは K において正則である.

換言すれば,領域 K において §55 の意味で f(z) が一回微分可能ならば,各階の微分が可能である[Goursat,1900].

第 2 章で述べたような実函数では,このように簡明な事態は思いも及ばぬことである.

さて (2)n 回微分して \zeta=a と置けば

f^{(n)}(a)=n!A_n,

故に (3) によって


  f^{(n)}(a)=\frac{n!}{2\pi i}\int_c\frac{f(z)dz}{(z-a)^{n+1}}.

ここで ca を中心とする任意に小なる半径の円周であったが,一般に K 内に引かれた a を包む閉曲線を C とすれば[* 1]定理 52


  \int_c\frac{f(z)dz}{(z-a)^{n+1}}=\int_C\frac{f(z)dz}{(z-a)^{n+1}},

従って

(4)

  f^{(n)}(a)=\frac{n!}{2\pi i}\int_C\frac{f(z)dz}{(z-a)^{n+1}}.

これは導函数 f^{(n)}(z) への Cauchy の積分公式の拡張である.

定理 56. [Morera の定理]
領域 K において f(z) は連続で \textstyle\int_{z_0}^z f(z)\,dz が積分路に依存しない値を有するならば,f(z)K において正則なる解析函数である.
[証]
この仮定の元において,\textstyle F(z)=\int_{z_0}^z f(z)\,dz と置けば,F'(z)=f(z) なることはすでにいった(§56,(6º)).すなわち F(z)K において正則であるが,定理 55 によって F'(z) すなわち f(z)K において正則である.

§47 に述べた一様収束に関する定理は,解析函数の場合には,はなはだ簡明である.

定理 57.
領域 K において正則なる函数列 \{f_n(z)\}K において一様に収束するとき,その極限を f(z) とすれば,
A
f(z)K において正則である.
B
K における任意の曲線 C に関して

  \int_C f(z)\,dz=\lim_{n\to\infty}\int_C f_n(z)\,dz.
C

  f'(z)=\lim_{n\to\infty}f_n'(z).
[証]
B§56(4º) ですでに述べた.

K_0K 内の任意の単連結の領域とし,CK_0 内の任意の閉曲線とする.然らば Cauchy によって \textstyle\int_C f_n(z)\,dz=0.従って極限へ行っても,\textstyle\int_C f(z)\,dz=0.故に Morera によって f(z)K_0 において正則である.K_0 は任意であったからAが証明されたのである.

Cが無条件で成り立つことが最も著しい.K 内において a を任意の点とし,Ca を含む閉曲線,例えば a を中心とする円周とする.然らば f_n(z)/(z-a)^2C 上において一様に収束する.故に

  \int_C\frac{f(z)}{(z-a)^2}\,dz=\lim_{n\to\infty}\int_C\frac{f_n(z)}{(z-a)^2}\,dz.
故に (4) によって
f'(a)=\lim_{n\to\infty}f_n'(a).
aK 内の任意の点だからCが成り立つ.
(証終)

(z-a)^2 の代りに (z-a)^k を取っても同様だから,逐次の導函数に関してもCが成り立つ.特に k=1 とすればAを得る.

[注意] 
n の代りに連続的補助変数 t を取っても同様である.すなわち f(z,t)z\in K なるとき正則で,t\to t_0 のとき一様に f(z) に収束すれば,f(z) に収束すれば,f(z)K において正則でBCn\to\infty の代りに t\to t_0 としても成り立つ. 実変数の場合にも,(実用上,ほとんど常に,そうであるように)解析函数の実数値に関しては,鈍重な定理 40(Cの代りに定理 57(Cを用いるがよい.偉大なる簡約!
定理 58. [Weierstrass の二重級数定理]
|z-z_0|<r なるとき

  f_n(z)=\sum_{k=0}^\infty a_k^{(n)}(z-z_0)^k\quad (n=1,2,\ldots)
は正則で,また
F(z)=\sum_{n=0}^\infty f_n(z)
|z-z_0|\leqq\rho\rho\rho<r なる任意の正数)なるとき,一様に収束するとする.然らば

  a_k^{(0)}+a_k^{(1)}+\cdots+a_k^{(n)}+\cdots=\sum_{n=0}^\infty a_k^{(n)}=A_k
は収束して,|z-z_0|<r なるとき

  F(z)=\sum_{k=0}^\infty A_k(z-z_0)^k.

要約すれば,巾級数 f_n(z) を項別に加えてもさしつかえないのであるが,それには \textstyle\sum f_n(z) の一様収束を(十分)条件とする.

[証]
定理 57(Aによって F(z)|z-z_0|<r において正則で,またCによって \textstyle F(z)=\sum f_n(z) を項別に微分してよい.故に

 F^{(k)}(z_0)=\sum_{n=0}^\infty f_n^{(k)}(z_0)=k!\sum_{n=0}^\infty a_k^{(n)}=k!\,A_k.
(証終)
実変数の函数においては,微分がとかくめんどうで,積分は一般に簡単であった.これは標語的だけれども,我々がしばしば経験したところである.例えば連続性は導函数に遺伝しない(§18)が,積分函数は自然に連続性を獲得する(§32).それが一般的実函数の世界である.解析函数の世界では,正則性は微分しても積分しても動揺しない.そこに解析函数の実用性がある.18世紀には,その根拠を認識しないで,解析函数を実数の断面において考察していたのであった. 我々は微分可能性によって解析函数を定義した.微分可能性は,約言すれば,zz_0 に近づく経路に関係なく \tfrac{f(z)-f(z_0)}{z-z_0} の極限が一定であることを意味する.今同様に z_0z とを結ぶ通路に関係なく \textstyle\int_{z_0}^z f(z)\,dz が一定であることを(この場限り)かりに積分可能ということにしてみよう.然らば Cauchy の定理(定理 51)は,複素変数の函数 f(z) が微分可能ならば,積分可能であることを示し,また Morera の定理(定理 56)は,f(z) が積分可能ならば,微分可能なることを示すものである.この意味において,複素数の世界では,微分可能も積分可能も同意語である.驚嘆すべき朗らかさ! Cauchy およびそれに先立って Gauss が虚数積分に触れてから約百年を経て,我々はこの玲瓏なる境地に達しえたのである.

[編集] 59.解析函数の孤立特異点

a の近傍で,a だけは別として,f(z) は正則とする.その領域内に,a を中心とする同心円 C_1,C_2 を画けば,f(z)C_1,C_2 の間に挾まれる円環および C_1,C_2 の周上の各店で正則である.今この円環内に点 \zeta を取って

\frac{f(z)}{z-\zeta}

を考察する.然らば定理 52 によって

(1)

  \int_\mathit\Gamma\frac{f(z)}{z-\zeta}\,dz
  = \int_{C_1}\frac{f(z)}{z-\zeta}\,dz-\int_{C_2}\frac{f(z)}{z-\zeta}\,dz.

ただし \mathit\Gamma\zeta を中心とする円環内の円で,積分は三つともに各円周上を正の向きに取るのである.さて左辺の積分に関しては(定理 53


  \frac{1}{2\pi i}\int_\mathit\Gamma\frac{f(z)}{z-\zeta}\,dz=f(\zeta).

まら右辺で C_1 に関する積分は \zeta-a の巾級数に展開される(214 頁参照).すなわち


  \frac{1}{2\pi i}\int_{C_1}\frac{f(z)}{z-\zeta}\,dz=\sum_{n=0}^\infty a_n(\zeta-a)^n,
(2)

  a_n=\frac{1}{2\pi i}\int_{C_1}\frac{f(z)}{(z-a)^{n+1}}\,dz

で,これは \zeta が円 C_1 の内部にあるときには確かに存在する. 右辺の C_2 に関する積分では,\zetaC_2 の外部にあるから,少し違う.この場合 C_2 の上の z に関しては

\left|\frac{z-a}{\zeta-a}\right|<1

で,幾何級数


  \frac{1}{z-\zeta}=\frac{1}{(z-a)-(\zeta-a)}
  =\frac{-1}{\zeta-a}\biggl(
    1+\frac{z-a}{\zeta-a}+\biggl(\frac{z-a}{\zeta-a}\biggr)^2+\cdots
  \biggr)

C_2 の上で z に関して一様に収束するから,(214 頁と同様に)


  -\int_{C_2}\frac{f(z)}{z-\zeta}\,dz
 = \frac{1}{z-a}\int_{C_2}f(z)\,dz+\frac{1}{(z-\zeta)^2}\int_{C_2}f(z)(z-a)\,dz

  +\frac{1}{(z-\zeta)^3}\int_{C_2}f(z)(z-a)^2\,dz+\cdots,

すなわち


  -\frac{1}{2\pi i}\int_{C_2}\frac{f(z)}{z-\zeta}
  =\sum_{n=1}^\infty a_{-n}(\zeta-a)^{-n},
(3)

  a_{-n}=\frac{1}{2\pi i}\int_{C_2}f(z)(z-a)^{n-1}\,dz

で,この \tfrac{1}{\zeta-a} の巾級数は \zetaC_2 の外にあるとき,確かに収束する. よって (1) から,円環内の \zeta に関して

(4)
f(\zeta)=\sum_{n=-\infty}^\infty a_n(\zeta-a)^n.

ここで係数 a_nn の正負に従って (2) または (3) で与えられる.しかし C_1 の内部にあって,全く C_2 を含む任意の閉曲線を C とすれば,(2) でも (3) でも積分路を C に換えてもよい(定理 52).すなわち (2)(3) の代りに


  a_n=\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{f(z)\,dz}{(z-a)^{n+1}},
  \quad (n=0,\pm 1,\pm 2,\ldots).

(4) において \zetaz と書き換えて

(6)
f(z)=\sum_{n=-\infty}^\infty a_n(z-a)^n,

z は円環内の任意の点である.右辺の級数で正巾項の部分

(7)
a_0+a_1(z-a)+a_2(z-a)^2+\cdots

は通常の巾級数で,それは C_1 の内部では収束する.また負巾項の部分

(8)

  \frac{a_{-1}}{z-a}+\frac{a_{-2}}{(z-a)^2}+\cdots+\frac{a_{-n}}{(z-a)^n}+\cdots

\tfrac{1}{z-a} の巾級数で,それは C_2 の外部では確かに収束する.よって (6) が円環内において収束するのである.

展開 (6) を点 a に関する f(z)Laurent 展開という.

(6) の両辺に (z-a)^k を掛けて,a を中心とする円環内の円周 C 上で積分すれば

(9)
\begin{align}
  \int_C f(z)(z-a)^k\,dz &= \sum_{n=-\infty}^\infty a_n\int_C(z-a)^{n+k}\,dz\\
  &= 2\pi ia_{-k-1},\quad (k=0,\pm1,\pm2,\ldots).
\end{align}

右辺における積分は n+k=-1 なるとき 2\pi i に等しく,その他は 0 に等しい(§57,[例]参照).故に Laurent 展開の各係数は一意的に確定する.

[附記] 
上記証明からわかるように,f(z) が円周 C_1,C_2 の間に挾まれる円環内で正則ならば,円環内の任意の点 z に関し (6) は成り立つ. さて本節の初めに述べたように,或る領域 K 内で,点 a を除けば f(z) は正則であるとする.然らば (5) における積分路 CK 内にあって a を含む任意の閉曲線でよい.また展開 (6) の正巾項の部分は a を中心として K の境界に触れる最大な円の内部で収束する.それは a においても正則である.さてこの場合,内円 C_2 はどれほど小さくも取れるから,負巾項の部分

  \frac{a_{-1}}{z-a}+\frac{a_{-2}}{(z-a)^2}+\cdots+\frac{a_{-n}}{(z-a)^n}+\cdots
z=a 以外,すべての z に対して収束するが,それが z=a における特異性を誘起する原因なのだから,それを特異点 z=a に関する f(z)主要部と名づける.

さて,ここで次のように三つの場合を区別する.

(1º)
主要部なし:
すなわち
f(z)=a_0+a_1(z-a)+a_2(z-a)^2+\cdots,\quad (z\ne a).

z=a は初めから除いてあったのであるけれども,もしも f(a)=a_0 ならば,f(z)z=a においても正則である.もしも f(z)z=a だけで不正則であるならば f(a)\ne a_0 であるが,しかし f(z)z=a における値だけを a_0 になおすならば,z=a における f(z) の不正則を除き去ることができる.このような不正則点を Riemann除きうる特異点と名づけた.

このような特異点はなんらの重大性をも有しない.今 f(z) が正則なる領域内の一点 a において,故意に f(a) の値を変更するならば,そこに特異点が生ずる.それが除きうる特異点である.
(2º)
主要部は有限級数,
すなわち
f(z)=\frac{a_{-k}}{(z-a)^k}+\cdots+\frac{a_{-1}}{z-a}+P(z-a),\quad(a_{-k}\ne 0).
この場合,af(z)k 次のという.ここで (z-a)^kf(z)a において正則で,0 と異なる値 a_{-k} を有する.故に z\to a のとき f(z)\to\infty.それは,z がどのようにして a に近迫するとしても |f(z)|\to\infty なることを意味する.
[注意] 
f(z)z=a において正則で f(a)=0 とする.f(z) が常に 0 に等しい場合を除けば,その Taylor 展開は

  f(z)=(z-a)^k\{a_k+a_{k+1}(z-a)+\cdots\},\quad(a_k\ne 0,k\geqq 1).
このとき af(z)k 次の零点という.仮定 a_k\ne 0 によって,z=a の近傍では右辺 \{\} の中の巾級数は 0 にならないから,f(z)a 以外では零にならない.すなわち f(z) の零点は a において孤立する.この場合 a_k+a_{k+1}(z-a)+\cdots の逆数は a の近傍で正則であるから,\tfrac{1}{f(z)}a において k 次の極を有する.
(3º)
主要部は無限級数,
すなわち
f(z)=\sum_{n=-\infty}^\infty a_n(z-a)^n
において a_{-n}\ne 0\,(n>0) なる負巾項が無数にあるとする.この場合,z=a の近傍における f(z) の行動は,はなはだ複雑である.よって Weierstrassaf(z)真性特異点(それに対して (2º) で述べた極を仮性特異点)と名づけた.
a が真性特異点ならば,z\to a のとき f(z) は一定の極限を有しない.また f(z)\to\infty でもない.しかし a に収束する数列 \{z_n\} を適当に取れば f(z_n)\to\infty にもなり,また任意の c に対して f(z_n)\to c にもなる(Weierstrass の定理).

次にその証明を述べる.

(A)
f(z_n)\to\infty なる数列 \{z_n\} が存在すること. 間接証明をするために,或る正数 r_0,M_0 に対して
(10)
0<|z-a|<r_0 なるとき |f(z)|<M_0
と仮定してみる.然らば (9) によって

  a_{-n}=\frac{1}{2\pi i}\int_C f(z)(z-a)^{n-1}\,dz.
この場合 C の半径はどんなに小さくてもよいから,それを \rho<r_0 とすれば,(10) から

  |a_{-n}|<\frac{M_0\rho^{n-1}}{2\pi}\int_C\,ds=M_0\rho^n.
\rho はどのようにも小さく取れるから a_{-n}=0 \,(n=1,2,3,\ldots).それは仮定に反する.
(B)
f(z_n)\to c なる数列 \{z_k\} が存在すること. 任意の正数 r,\varepsilon に対して,0<|z-a|<r,かつ |f(z)-c|<\varepsilon なる z が存在すればよいのだが,間接証明をするために,或る r_0,\varepsilon_0 に対して
(11)
0<|z-a|<r_0 なるとき |f(z)-c|\geqq \varepsilon_0
と仮定してみる.然らば 0<|z-a|<r_0 なる z に対して
\varphi(z)=\frac{1}{f(z)-c}
と置くとき,
(12)
0<|z-a|<r_0 ならば |\varphi(z)|\leqq \frac{1}{\varepsilon_0}.
さて z=a の近傍で a を除けば (11) によって \varphi(z) は正則である.然るに (12) によれば,a\varphi(z) の極ではなく.また (A) によって \varphi(z) の真性特異点でもない.故に z=a おいて \varphi(z) は正則,あるいは a\varphi(z) に関しては除きうる特異点である.すなわち \textstyle\lim_{z\to a}\varphi(z)=\lambda は確定である.もしも \lambda\ne 0 ならば,\lambda=\tfrac{1}{f(a)-c} 従って f(a)=c+\tfrac{1}{\lambda} とすれば,f(z)a において正則である.またもし \lambda=0 ならば f(z)-c=\tfrac{1}{\varphi(z)} において,z=a\varphi(z) の零点,従って f(z)-c の極である(前頁[注意]).いずれにしても,それは仮定に反する(Laurent 展開の一意性).
上記を綜合すれば,逆に次のようにいわれる[* 2]

f(z)z=a の附近で a 以外では正則とする.そのとき

(1º)
もしも f(z)z=a において連続なら z=a においても正則である(Riemann の定理).
(2º)
もしも z\to a のとき f(z)\to\infty ならば a は極である.
(3º)
もしも \textstyle\lim_{z\to a}f(z) は不確定ならば,a は真性特異点である(Weierstrass の定理の逆).
上記 Weierstrass の定理は通常次のようにいい表される.
解析函数 f(z) は孤立した真性特異点 z=a のどれほど近いところででも,任意の値 c に限りなく近づく.
実際は a の近傍において f(z)=c は一般に無数の根を有する.ただし c のただ一つの値だけが例外であることもある(Picard).
[例 1]

  e^{\frac{1}z}=1+\frac{1}z+\frac{1}{2z^2}+\cdots+\frac{1}{n!\,z^n}+\cdots.

故に z=0 は真性特異点である.実数軸上,z が正の方面から 0 に近づけば,e^{\frac{1}z}\to\infty.また負の方面から 0 に近づけば e^{\frac{1}z}\to 0 で,極限が不確定である.

c\ne 0 として \log c=\alpha とすれば,e^{\frac{1}z}=c の解は z=\tfrac{1}{\alpha+2n\pi i} で,それらは n\to\infty のとき 0 に集積する.この場合 c=0 が上記 Picard の例外値である.
[例 2]
\sin\tfrac{1}z に関しても同様に z=0 が真性特異点である.この場合には例外値はない.c-1+1 との間の実数であるとき,\sin\tfrac{1}z の根の配置はしばしば引用した.

  1. もちろん C の内部はすべて K に属するとするのである.[C]\subset K
  2. 転換法.すなわち上記 (1º)(2º)(3º) の逆がすべて成り立つのである.

[編集] 60.z=\infty における解析函数

領域 |z|>R において f(z) は正則とする.然らば z=0 に関する Laurent 展開(前節 (6))は,原点を中心とする円環において内円 C_2 の半径を R よりも大きく,また外円 C_1 を任意に大きく取って成立する(218 頁,[附記]参照).すなわち

(1)
f(z)=\sum_{n=-\infty}^{\infty}a_nz_n,\quad (|z|>R)
(2)

 a_n=\frac{1}{2\pi i}\int_C \frac{f(z)dz}{z^{n+1}},\quad
 (n=0,\pm1,\pm2,\ldots)

ただし,C は原点を中心として半径が R よりも大なる任意の円周,または内円 C_2 を内部に含む任意の閉曲線である.

この場合には Laurent 展開 (1) の負巾項の部分

(3)

  \frac{a_{-1}}{z}+\frac{a_{-2}}{z^2}+\cdots+\frac{a_{-n}}{z^n}+\cdots

C_2 の外部では収束するが,それは z\to\infty のとき 0 に収束する.さて正巾項の部分

(4)
a_1z+a_2z^2+\cdots+a_nz^n+\cdots

は(C_1 の内部,しかし C_1 は任意に大きくしてよいから)すべての z に対して収束する.z\to\infty のとき f(z) の行動は主としてこの部分によって支配されるのだから,それを z=\infty における f(z)主要部という.(1)前節の (6) と形式上同様であるが,正巾項と負巾項との役目は転換されている.そこに注意して,前節と同様に次の三つの場合を区別する.

(1º)
主要部なし,すなわち

 f(z)=a_0+\frac{a_{-1}}{z}+\frac{a_{-2}}{z^2}+\cdots=P\!\left(\frac{1}{z}\right).
z\to\infty のとき f (z) \rightarrow a _0.この場合,f(z) は‘z=\infty において正則である’と略言する.
(2º)
主要部は有限級数,すなわち

 f(z)=a_kz^k+\cdots+a_1z+P\!\left(\frac{1}{z}\right),\quad (a_k\ne 0)
z\to\infty のとき f(z)\to\infty\tfrac{f(z)}{z^k}z=\infty において正則である.この場合‘z=\inftyf(z)k 次の極である’という.
(3º)
主要部は無限級数,すなわち

 f(z)=\sum_{n=-\infty}^{\infty}a_nz^n
において,a_n\ne 0\,(n=1,2,3,\ldots) なる係数が無数にある.この場合には‘z=\inftyf(z) の真性特異点である’という.z\in\infty のとき f(z) は一定の極限(\infty をも入れていう)を有しない.しかし z_n\to\infty なる数列 \{z_n\} を適当に取れば f(z_n)\to\infty にも,また f(z_n)\to c にもなる(c は任意の定数).

[編集] 61.整函数

z 平面の各点において正則なる解析函数を総称して整函数という.

z 平面の各点といっても,z=\infty は含まない.z=\infty は標語として使用するのである.z=\infty をも含めていうときには特にそれをことわらねばならない.

f(z) が整函数ならば,z=0 における Talor 展開 \textstyle f(z)=\sum_{n=0}^{\infty} がすべての z に関して収束する.この場合にも,前節と同様に三つの場合を区別することができる.

(1º)
f(z)=a_0(定数).
(2º)
f(z)=a_0+a_1z+\cdots+a_nz^n,\,(a_n\ne 0,\,n\geqq 1). この場合には \textstyle \lim_{z\to\infty}f(z)=\infty.
(3º)
\textstyle f(z)=\sum_{n=0}^{\infty}a_nz^n は無限級数,収束半径は \infty.今度は \textstyle \lim_{z\to\infty}f(z) は不確定.

上記 (1º)(2º) では f(z) は多項式である.(3º) の場合には f(z)超越整函数という.e^z(または \sin z,\,\cos z)がその一例である.超越整函数においては,z=\infty は真性特異点で,前節で述べた Weierstrass の定理が適用される.

定理 51.
整函数 f(z) が有界(すべての z に関して f(z)< M)ならば,f(z) は定数である[Liouville の定理].
[証]
この場合 f(z) は上記 (2º)(3º) ではありえない.
[注意] 
Liouville の定理は,次のようにいうことができる.すなわち,\infty をも込めて,f(z)z 平面の各点で正則ならば,f(z) は定数である.
定理 60.
一次以上の多項式 f(z) は根を有する(代数学の基本定理).
[証]
かりに f(z) が根を有しないとするならば,1/f(z) は整函数でなければならない.然るに (2º) によって z\to\infty のとき f(z)\to\infty,従って 1/f(z)\to 0.故に 1/f(z) は定数(定理 59).それは不合理である.
根の存在が確定する以上,n 次の多項式が n 個の一次因数に分解されること,および分解の一意性は周知であろう.

[編集] 62.定積分の計算(実変数)

定積分の計算に Cauchy の定理を応用することができる.実際 Cauchy(1825)が初めて虚数積分を考察したのは,当時知られていた多変数の定積分を統一的の方法によって計算することを目的としたのであった.そこから解析函数の理論が生まれて,それが近世数学史上の一つの転回点になったのである.次に一,二の例を掲げる.

[例 1]

  \int_0^\infty\frac{\sin x}x.
被積分函数は \tfrac{e^{ix}-e^{-ix}}{2ix} に等しいが,まず \tfrac{e^{iz}}z を考察する.これは z=0 を除けば常に正則であるから,次の図のように z 平面の上半において原点を中心とする半径 R,\varepsilon の半円周 C,c および実軸上の線分 AB,A'B' から成り立つ閉曲線 ABCB'A'cA に関する積分
\int\frac{e^{iz}}z\,dz=0.
すなわち
(1)

  \int_{AB}+\int_{BCB'}\,+\int_{B'A'}+\int_{A'cA}=0.
さて

  \int_{AB}=\int_\varepsilon^R\frac{e^{ix}}x\,dx,\quad
  \int_{B'A'}=\int_{-R}^{-\varepsilon}\frac{e^{ix}}x\,dx
  = -\int_\varepsilon^R\frac{e^{-ix}}x\,dx,
故に

  \int_{AB}+\int_{B'A'}=2i\int_\varepsilon^R\frac{\sin x}x\,dx.
さて \varepsilon\to 0,R\to\infty のとき
(2)
 \int_{A'cA}\to -\pi i,
(3)
\int_{BCB'}\to 0
であることを示そう.然らば (1) から

  \int_0^\infty\frac{\sin x}x\,dx=\frac{\pi}2
を得る.
(2) の証.
\frac{e^{iz}}z=\frac{1}z+P(z)
で,P(z)z の巾級数,それは全平面において収束するから,正則従って連続である.故に半円周 C 上において |P(z)|<M とすれば

  \left|\int_c P(z)\,dz\right|< M\pi\varepsilon\to 0,
また

  \int_c\frac{dz}z=i\int_\pi^0 d\theta=-\pi i.
(3) の証.
半円周 C の上では z=R(\cos\theta+i\sin\theta) で,

  \int_{BCB'}\frac{e^{iz}}z\,dz
  =i\int_0^\pi e^{-R\sin\theta+iR\cos\theta}d\theta.
故に

  \left|\int_{BCB'}\right|
  \leqq \int_0^\pi e^{-R\sin\theta}d\theta
  = 2\int_0^{\frac\pi2} e^{-R\sin\theta}d\theta.
さて閉区間 [0,\tfrac{\pi}2] において \tfrac{\sin\theta}\theta は連続でかつ常に正,したがってその最小値 m>0,すなわち \sin\theta\geqq m\theta.(実際は m=\tfrac{2}\pi) 故に

  \int_0^{\frac\pi2}e^{-R\sin\theta}d\theta
  \leqq \int_0^{\frac\pi2}e^{-R\,m\theta}d\theta
  \leqq \int_0^\infty e^{R\,m\theta}d\theta = \frac{1}{Rm}\to 0.
[例 2]

  \int_0^\infty\cos(x^2)dx=\int_0^\infty\sin(x^2)dx=\frac12\sqrt\frac\pi2
 [Fresnel の積分].
\cos x^2-i\sin x^2=e^{-ix^2}\textstyle
  \int_0^\infty e^{-x^2}\,dx=\frac{\sqrt\pi}2
§35,[例 6])を用いて,[例 1] と同様の方法を試みる。e^{-z^2}z 平面の全部で正則だから,次の図に示す円の扇形の周 OABO に関するそれの積分は 0 に等しい.すなわち
(4)

  \int_0^R e^{-x^2}dx+\int_C e^{-z^2}dx-\int_{OB}e^{-z^2}dz=0.
さて OB の上では z=re^{i\frac\pi4}=r\tfrac{1+i}\sqrt2,\,0\leqq r\leqq R,従って e^{-z^2}=e^{ir^2},\,dz=\tfrac{1+i}\sqrt2\,dr.故に
(5)

  \int_{OB}e^{-z^2}dz=\frac{1+i}\sqrt2\int_0^R(\cos r^2-i\sin r^2)dr.
また C の上では z=R(\cos\theta+i\sin\theta),\,0\leqq\theta\leqq\tfrac\pi4;\;\tfrac{dz}z=i\,d\theta.故に
\begin{align}
  \left|\int_C e^{-z^2}dz\right|
  \leqq \int_0^\frac\pi4 e^{-R^2\cos2\theta}R\,d\theta
  &= \frac{R}2\int_0^\frac\pi2 e^{-R^2\cos\varphi}d\varphi
   = \frac{R}2\int_0^\frac\pi2 e^{-R^2\sin\varphi}d\varphi\\
  &= \frac{R}2\cdot\frac{1}{R^2m} = \frac{1}{2Rm},
\end{align}
ただし,m[例 1]と同様.故に R\to\infty のとき \textstyle\int_C\to 0.故に (4)(5) から

  \frac{1+i}\sqrt2\int_0^\infty(\cos r^2-i\sin r^2)dr=\frac{\sqrt\pi}2.
\tfrac{1-i}\sqrt2 を掛けて

  \int_0^\infty(\cos(r^2)-i\sin(r^2))dr=\frac{1-i}2\sqrt\frac\pi2.
故に

  \int_0^\infty\cos(r^2)dr=\int_0^\infty\sin(r^2)dr=\frac12\sqrt\frac\pi2.
[例 3]
\int_0^\pi\log(1-2r\cos\theta+r^2)d\theta.
|z|\leqq r<1 とすれば

  \frac{\log(1-z)}z=-1-\frac{z}2-\frac{z^2}3-\cdots
は正則であるから,C の円周 |z|=r とすれば
(6)

  \int_C\log(1-z)\frac{dz}z=i\int_0^{2\pi}\log(1-z)\,d\theta=0.
さて C の上では

  |1-z|=(1-r\cos\theta)^2+(r\sin\theta)^2=1-2r\cos\theta+r^2.
故に (6) から \log の実部だけを取って

  \frac12\int_0^{2\pi}\log(1-2r\cos\theta+r^2)d\theta=0,\quad
  \int_0^\pi\log(1-2r\cos\theta+r^2)d\theta=0,\quad (r<1).
r>1 ならば、r'=\tfrac1r<1
\begin{align}
  0 &= \int_0^\pi\log(1-2r'\cos\theta+r'^2)\,d\theta
     = \int_0^\pi\log\left(1-\frac2r\cos\theta+\frac1{r^2}\right)d\theta
  &= \int_0^\pi[\log(1-2r\cos\theta+r^2)-\log r^2]\,d\theta.
\end{align}
故に

  \int_0^\pi\log(1-2r\cos\theta+r^2)\,d\theta=2\pi\log r,\quad (r>1).
[注意] 
r=1 ならば積分は r に関する連続性によって 0 になる.このとき積分は

  \int_0^\frac\pi2\log2(1-\cos\theta)\,d\theta
  =\int_0^\pi\log\left(4\sin^2\frac\theta2\right)d\theta
  =4\int_0^\frac\pi2 \log(2\sin\theta)\,d\theta.
これが 0 に等しいから \textstyle\int_0^\frac\pi2 \log\sin\theta\,d\theta=-\frac\pi2\log 2 を得る(§34,[例 3]の統制である).
留数
領域 K において z=a だけが f(z) の特異点であるとき.Laurent 展開
f(z)=\sum_{n=-\infty}^\infty a_n(z-a)^n
z=a を中心とする K 内の小円周 c の上で一様収束するから,c に関して項別に積分して

  \int_c f(z)\,dz=\sum_{n=-\infty}^\infty a_n\int_c(z-a)^n\,dz.
右辺で n=-1 のほかは \textstyle\int_c(z-a)^n\,dz=0.また \textstyle\int_c\frac{dz}{z-a}=2\pi i.故に
 \int_c f(z)\,dz=2\pi ia_{-1}.
a_{-1}z=a における f(z)留数という.
特に z=an 次の極ならば,(z-a)^n f(z)z=a において正則で

  (z-a)^n f(z)=a_{-n}+a_{-(n-1)}(z-a)+\cdots+a_{-1}(z-a)^{n-1}+\cdots.
故に留数は

  a_{-1}=\frac{1}{(n-1)!}\lim_{z\to a}\frac{d^{n-1}}{dz^{n-1}}(z-a)^n f(z).
特に n=1 ならば

  a_{-1}=\lim_{z\to a}(z-a)f(z).
定理 61.
K 内の閉曲線 C の内部で,f(z) が,有限個の孤立する特異点以外で,正則ならば

  \int_C f(z)\,dz=2\pi i\sum a_{-1},
ただし右辺の \textstyle\sumC 内の f(z) の特異点における留数の和である.
[証]
特異点を小円周 c,c',\ldots で包んで,積分定理を適用すれば(定理 52

  \int_C f(z)\,dz=\sum\int_c f(z)\,dz=2\pi i\sum a_{-1}.
[例 4]

  \int_{-\infty}^\infty\frac{dx}{(1+x^2)^{n+1}}
  =\frac{\pi}{2^{2n}}\,\frac{(2n)!}{(n!)^2}
  =\pi\,\frac{1\cdot3\cdot5\cdots(2n-1)}{2\cdot4\cdot6\cdots2n}.
\textstyle f(z)=\tfrac{1}{(1+z^2)^{n+1}} は図の半円内においてただ一つの特異点 z=i を有する.それは n+1 次の極で,留数は
\begin{align}
  \frac{1}{n!}\left(\frac{d^n}{dz^n}\,\frac{(z-i)^{n+1}}{(1+z^2)^{n+1}}\right)_{z=i}
 &=\frac{1}{n!}\left(\frac{d^n}{dz^n}(z+i)^{-(n+1)}\right)_{z=i}\\
 &= \frac{(-1)^n(n+1)(n+2)\cdots2n}{n!}(2i)^{-(2n+1)}
  = \frac{(2n)!}{2^{2n}(n!)^2}\,\frac{1}{2i}.
\end{align}
故に

  \int_{ABCA}\frac{dz}{(1+z^2)^{n+1}}=\frac{\pi(2n)!}{2^{2n}(n!)^2}.
左辺の積分は

  \int_{-R}^R\frac{dx}{(1+x^2)^{n+1}}+\int_C\frac{dz}{(1+z^2)^{n+1}}.
さて R\to\infty のとき,C の上では |1+z^2|\geqq R^2-1 だから

  \left|\int_C\right|\leqq\frac{1}{(R^2-1)^{n+1}}\cdot\pi R\to 0.
よって標記の結果を得る.
[例 5]

  \int_0^\pi\frac{\cos n\theta\,d\theta}{1-2a\cos\theta+a^2}
  = \frac{\pi a^n}{1-a^2},\quad(-1<a<1,\,n=0,1,2,\ldots).
積分記号の中で,分母は (e^{i\theta}-a)(e^{-i\theta}-a) に等しいことに注意して,単位円 C に関する積分

  \frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{dz}{(tz-1)(z-a)(az-1)}
を考察する.|t|<1 とすれば単位円内で z=a のみが極であるから,これは留数
\frac{1}{(at-1)(a^2-1)}
に等しい.z=e^{i\theta} と置いて積分変数を \theta に換えれば

  \frac{1}{2\pi i}\int_0^{2\pi}\frac{ie^{i\theta}\,d\theta}
  {(te^{i\theta}-1)(e^{i\theta}-a)(ae^{\theta}-1)}
  =\frac{1}{2\pi}\int_0^{2\pi}\frac{d\theta}{(1-te^{i\theta})(1-2a\cos\theta+a^2)}.
故に t の昇巾に展開して

  \int_0^{2\pi}\frac{\sum t^ne^{in\theta}\,d\theta}{1-2a\cos\theta+a^2}
  =\frac{2\pi\sum a^nt^n}{1-a^2}.
t^n の係数を比較して

  \int_0^{2\pi}\frac{e^{in\theta}\,d\theta}{1-2a\cos\theta+a^2}
  = \frac{2\pi a^n}{1-a^2}.
実部を比較して標記の結果を得る.
a>1 なるときは,0<\tfrac1a<1.故に

  \int_0^\pi\frac{\cos n\theta\,d\theta}{1-\frac2a\cos\theta+\frac{1}{a^2}}
  =\frac{\pi}{a^n\left(1-\frac{1}{a^2}\right)}.
分母に a^2 を掛けて

  \int_0^\pi\frac{\cos n\theta\,d\theta}{1-2a\cos\theta+a^2}
  =\frac{\pi}{a^n(a^2-1)}.

[編集] 63.解析的延長[* 1]

定理 62.
領域 K において f(z),g(z) は正則で,K 内の小領域 K_0 においては f(z)=g(z) とする.然らば K において常に f(z)=g(z)
[証]
f(z)-g(z)=\varphi(z) と置けば,仮定によって,\varphi(z)K において正則で,K_0 においては \varphi(z)=0 である.故に今 K 内の一点 z_1 において \varphi(z)\ne 0 とするならば,そこから矛盾が生ずることを示せばよい. K_0 内の一点を z_0 とし,K 内で z_0z_1 とを曲線 L で結ぶ.明白のために L を折線としてもよい.さて L の起点 z_0 の近傍では \varphi(z)=0 で,終点 z_1 では \varphi(z_1)\ne 0,従って \varphi(z) の連続性によって z_1 の近傍では \varphi(z)\ne 0.今 zL の上を z_0 から z_1 の方へ進むとき,z_0 から z までは \varphi(z)=0 であるような点 z の上端を z' とする[* 2].然らば z'\ne z_1 で,z'z_0z_1 との中間にあるが,\varphi(z) の連続性によって \varphi(z')=0 である.z' より手前ではもちろん \varphi(z)=0.そうして L の上で z' の任意の近傍に,\varphi(z)\ne 0 なる z が,z' よりも先にある.(さもなければ,z' はもっと先にあるはずであるから.)すなわち z' において正則なる \varphi(z)z' の近傍で常に 0 でなくて,しかも \varphi(z) の零点 z' が孤立しない.それが矛盾である(219 頁,[注意]).
(証終)
[注意] 
定理 62 において,f(z)g(z) とが K 内の小領域 K_0 において一致すると仮定したが, K 内の一つの線の上で,あるいはなお一般に,K 内の一点 a に集積する集合 M の点だけで,f(z)g(z) とが一致することを仮定すれば十分である.そのとき,\varphi(z)a の近傍で無数の零点を有するから,a を中心とする或る円内で常に \varphi(z)=0.その円を K_0 とすればよい.
今領域 K_0 で正則なる函数 f(z) が与えられているとする.そのとき K_0 においては f(z) と一致して K_0 を含む領域 K において正則なる函数があるとするならば,定理 62 によって,それはただ一つに限る.このようにして K_0 を含む領域 K において確定する正則なる函数を領域 K への f(z)解析的延長という.

このような延長が可能ならば,それは一意的に可能なのだから,それを f(z) の定義の K_0 から K への拡張とみて,やはり f(z) で表わすことにする.今 K_0 を含む領域 K_1,K_2f(z) が延長されるとする.そのとき K_1K_2 との共通部分 D一つの領域[* 3]を成すならば,f(z)K_1K_1 とを合併した領域 K へ一意的に延長される.――実際 K_1,K_2 への延長をひとまず f_1(z),f_2(z) とすれば,共通部分 D においては定理 62 によって f_1(z)=f_2(z) であるが,今 K において,K_1 に属して K_2 に属しないところ K_1-D では f(z)=f_1(z) とし,また K_2 に属して K_1 に属しないところ K_2-D では f(z)=f_2(z) とし,また K_1 にも K_2 にも属するところ D では f(z)=f_1(z)=f_2(z) とすれば,f(z)K において正則である.それは K_0 における f(z)K への一意的なる延長である.

例えば巾級数 \textstyle\sum a_nz^n の収束円を C とすれば,それは C 内で正則なる函数 f(z) を表わす.この函数の解析的延長を試みるために aC 内の一点とすれば,f(z)a において巾級数 P(z-a) に展開され,それは少くとも a を中心として C に内接する円内では収束するが,その収束円 C_a はそれよりも大きいこともあろう.その場合には f(z)CC_a とを合併した領域 K_1 に延長される.さらに K_1 内に点 b を取って b における f(z)Taylor 展開 P(z-b) を作るとき,もしもそれの収束円 C_bK_1 外へも出るならば,f(z)K_1C_b とを合併した領域 K_2 へ延長される.f(z) の延長が可能なるときには,このような方法を繰返えして(理論的には)その延長が求められる.しかし一つの巾級数によって表わされる函数 f(z) をその級数の収束円を全く内部に含む領域 K に延長することはできない(それができれば収束円はもっと大きいはずであるから).この意味において巾級数 \textstyle f(z)=\sum a_n(z-\alpha)^2 の収束円の周上には f(z) の特異点がある.

局所的に与えられた f(z) のすべての可能なる解析的延長を総括して,それによって一つの函数が定められるとみて,Weierstrass がそれを単性解析函数monogene analytische Funktion)と名づけた.このような拡張は任意の規約による形式的の拡張とは全く違う.すなわち拡張された広範囲の各部局において,函数が種々の様式によって表わされることがあっても,それらの間に本質的の関係があって,一部局における函数の一つの砕片から,全局における函数が自然に確定するのである.それを強調するために単性といったのであろうが,しかし解析函数はすべて単性だから,形容詞‘単性’は実は不要である.

解析函数の上記の性質を,Dirichlet 式の実変数の函数(§8)と比較するならば,そこに根本的の差別が見出される.或る区域において定義された実変数の函数は微分可能性を要求しても自由に区域外へ拡張される[* 4]から,原区域における函数を律する法則は拡張された区域外に及ばない.これに反して,或る一点の近傍において与えられた解析函数は,それの解析的延長が可能なる全領域において一定であるから,拡張の及ぶ限り一定の法則によって支配されるというべきである. 18世紀には函数は天賦であるかのように考えられていたいのであろう.従って各函数はそれぞれ天賦の法則に支配されるものと信ぜられた.それをEuler 式の連続性という.それは数量的の連続以上,いわば法則上の連続である.18世紀の数学で無意識的に夢想されたていた法則上の連続性が解析函数によって,最初の一例として,実現されたのである.

我々は局所的に正則性(微分可能性)をもって解析函数を定義した.その場合に函数の一意性は当然の仮定であったが,もし上記のような解析的延長を遂行するならば,全局においては函数の一意性が失われることが可能である.例えば f(z)a の近傍から b の近傍にまで(曲線 L および L' に沿って)領域 K および K' に延長されるとき,K,K' の共通部分に連結性がない場合,b において相異なる函数値が生ずることが可能である.その一例は 0 を含む領域における \log x である(後述).

このような意味での解析函数の多意性は本質的である.

実変数の場合に y^2=x によって y=+\sqrt{x}y=-\sqrt{x} なる二つの函数が定められるといい,あるいはまた 2=x^4 によって二意なる函数 y=\pm x^2 が定義されるというのは純規約的である.我々の立場においては,y^2=xx 平面上においてただ一つの二意的なる解析函数 y=\sqrt{x} を定義するが,y^2=x^4 は別々の一意的解析函数(x^2 および -x^2)を定義するのである.

前に述べる機会を得なかった一つの定理を,解析的延長に連繋して,ここにつけ加える.

定理 63.
f(z) が正則(一意的)なる領域内の任意の閉域 [K] において,|f(z)| はその最大値を [K] の境界上において取る.またもし [K] において f(z)\ne 0 ならば |f(z)| はその最小値を境界上において取る.
[証]
[K] における |f(z)| の最大値(定理 13)を M とする.もしも [K] の内点 a において |f(a)|=M ならば,a を中心として [K] 内に画かれる任意の円を C とするとき,Cauchy の積分公式によって

  |f(a)|=\frac{1}{2\pi}\left|\int_C\frac{f(z)}{z-a}\,dz\right|
  \leqq \frac{M}{2\pi}\int_0^{2\pi}d\theta=M.

|f(a)|=M ならば,ここで等号が成立しなければならないから,C の周上において常に |f(z)|=MC は任意だから a の近傍で常に |f(z)|=M,従って f(z)=c(常数)(§55,[例 3])故に解析的延長の原則によって K において f(z)=c.要約すれば,f(z) が定数である場合のほかは,[K] の内部においては |f(z)|<M で,|f(z)|=M なる点は境界上にある.

もしも [K] において f(z)\ne 0 ならば,\tfrac{1}{f(z)}[K] において正則だから,|f(z)| は境界上において最小値を取る.

定理の終の部分を応用して代数学の基本定理が証明される: f(z)=a+bz+\cdots を一次以上の多項式として,かりに f(z) が根を有しないとすれば,f(0)=a\ne 0.さて |z|=R を十分大きく取れば |f(z)|>|a||f(z)| は閉域 |z|\leqq R の境界線 |z|=R のうえで最小値をとるから,これは不合理である.

  1. 解析接続ともいう.
  2. これは切断法である.z_0 から計った L の弧長を s として,L 上の点 zs の函数とみて,0\leqq s\leqq\sigma に対応する z に関して,常に \varphi(z)=0 であるような \sigma に上限がある.その上限を s' とすれば,z' はすなわち s' に対応する L 上の点である.
  3. 互に隔離された部分に分かれない(連結されている)のである.従って K_0 内の点 z_0D 内の点 z_1 とが D 内の曲線 L で結ばれる.
  4. 例えば,滑らかな曲線を滑らかに延長することは自由である.

[編集] 64.指数函数 三角函数

§54 で実数に関する展開

e^z =\sum \frac{z^n}{n!}

において z を複素数にして,e^z の定義を拡張したが,このような拡張は全く規約的 (conventional) で,拘束力が薄弱である.然るに前節に述べた解析的延長の原則によれば,e^z を拡張して解析函数を得るには,上記が唯一無二の方法であることが確定したのである(227頁,[注意]).\sin z, \cos z 等に関しても同様である.

本節では,このような立場から指数函数,三角函数を再考する.(いわゆる代数解析の現代化!)

この拡張の実質上の意味を示すために次の考察をつけ加える.§54 で,拡張された e^z=\exp(z) に関しても加法定理 \exp(z_1+z_2)=\exp(z_1)\cdot\exp(z_2) が成り立つことを計算によって証明したが,解析的延長の原則によれば,それは当然で,計算を用いないでも明白である.今まず z_2 を一つの実数とする.然らば左辺の\exp(z_1+z_2) もまた右辺の \exp(z_1)\cdot\exp(z_2)z_1 に関しては正則で,それらが実軸上の z_1 に関しては一致することが既知だから,任意の z_1 に関しても一致する.さて今度は z_1 を任意の複素数として,上記の両辺を z_2 の函数とみて,同様に解析的延長の方法を適用すれば,任意の複素数 z_1, z_2 に関して指数函数の加法定理の成り立つことがわかる.約言すれば函数 \exp(z) は解析的延長に際して,その解析的性質を保有する.これは重要な論点である.

(1º)
\tan z,\cot z,\sec z,\mathrm{cosec}\,z の展開

\cot z=\frac{\cos z}{\sin z}
=i \frac{e^{iz}+e^{-iz}}{e^{iz}-e^{-iz}}=i \frac{e^{2iz}+1}{e^{2iz}-1}
において,便宜上 z\tfrac{z}{2} に換えて
\cot \frac{z}{2}=i \frac{e^{iz}+1}{e^{iz}-1}.
分母は,z=0 の時 0 になる.それは \cot\tfrac{z}{2} の一次の極である.さて
(1)

\frac{z}{2}\cot \frac{z}{2}
=\frac{iz}{2}\cdot\frac{e^{iz}+1}{e^{iz}-1}
=\frac{iz}{e^{iz}-1}+\frac{iz}{2}.
によって izz に換えて,まず \tfrac{z}{e^z-1} を考察する.この函数は z=0 の近傍で正則で,0 に最も近い特異点は z=\pm 2\pi i であるから,|z|<2\pi において Taylor 級数に展開される.それを次のように書く.
(2)

\frac{z}{e^z-1}=\sum_{n=0}^{\infty}b_n\frac{z^n}{n!},\quad(|z|<2\pi)
係数 b_n

\sum_{n=0}^{\infty}\frac{z^n}{(n+1)!}\sum_{n=0}^{\infty}\frac{b_n z^n}{n!}=1
から求められる.すなわち,b_0=1,また z^n の係数を比較して

\frac{b_n}{n!}+\frac{b_{n-1}}{(n-1)!\,2!}+\cdots+\frac{b_1}{1!\,n!}+\frac{b_0}{(n+1)!}=0,
(n+1)! を掛けて

\binom{n+1}{1}b_n+\binom{n+1}{2}b_{n-1}+\cdots+\binom{n+1}{n}b_{1}+\binom{n+1}{n+1}b_{0}=0.
または n+1 のところを n と書けば
\sum_{k=0}^{n-1}\binom{n}{k}b_k =0.
これを記号的に
(3)
(b+1)^n-b^n=0
と書けばわかりよい: すなわち展開の後,b の係数を下におろして添え字にするのである.例えば
n=2: 2b_1+1=0, b_1=-\frac{1}{2},
n=3: 3b_2+3b_1+1=0, b_2=\frac{1}{6},
n=4: 4b_3+6b_2+4b_1+1=0, b_3=0, 等々.
すなわち

 \frac{z}{e^z-1}=1-\frac{z}{2}+\sum_{n=2}^{\infty}\frac{b_n z^n}{n!}
であるが,

\frac{z}{e^z-1}+\frac{z}{2}
=\frac{z}{2}\cdot\frac{e^z+1}{e^z-1}
=\frac{-z}{2}\cdot\frac{e^{-z}+1}{e^{-z}-1}
は偶函数だから,b_1 以外,奇数番号の b_3, b_5,\cdots0 である.また後にわかるように(237頁),
b_{2n}=(-1)^{n-1}B_n
とすれば,B_n は正である. B_nBernoulli の数という[* 1].よって
(4)

\frac{z}{e^z-1}
=1-\frac{z}{2}-\sum_{n=1}^{\infty}\frac{(-1)^n B_n z^{2n}}{(2n)!}
で,B_n は循環式
(5)

\binom{2n+1}{2}B_1-\binom{2n+1}{4}B_2+\cdots+(-1)^{n-1}\binom{2n+1}{2n}B_n
=n-\frac{1}{2}
から求められる.これは b_1=-\frac{1}{2} を用いて上記の
(b+1)^{2n+1}-b^{2n+1}=0
を書き換えたものである. この公式から n=1, 2, \cdots と置いて,

\begin{align}
&B_1=\frac{1}{6},&&B_2=\frac{1}{30},&&B_3=\frac{1}{42},
	&&B_4=\frac{1}{30},&&B_5=\frac{5}{66},&&B_6=\frac{691}{2730},\\
&B_7=\frac{7}{6},&&B_8=\frac{3617}{510},&&B_9=\frac{43867}{798},
	&&B_{10}=\frac{174611}{330},&&\cdots
\end{align}
[附記] 
B_n は有理数で,分母は p-12n の約数であるような素数 p の積である.
さて \cot z の展開であるが,(1)(4) から
(6)
\begin{align}
z \cot z & =1-\sum_{n=1}^{\infty}\frac{2^{2n}B_nz^{2n}}{(2n)!}&& (|z| < \pi)\\
& =1-\frac{z^2}{3}-\frac{z^4}{45}-\cdots.
\end{align}
また \tan z = \cot z - 2 \cot 2z から
(7)
\begin{align}
\tan z &= \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^{2n}(2^{2n}-1)B_n z^{2n-1}}{(2n)!} & & \left(|z| < \frac{z}{2}\right)\\
& =z+\frac{1}{3}z^3+\frac{2}{15}z^5+\cdots.
\end{align}
また \mathrm{cosec}\,z=\cot \tfrac{z}{2}-\cot z から,(6)によって
(8)
\begin{align}
\frac{z}{\sin z}&=1+2\sum_{n=1}^{\infty}\frac{(2^{2n-1}-1)B_n z^{2n}}{(2n)!} & &(|z| < \pi)\\
&=1+\frac{1}{6}z^2+\frac{7}{360}z^4+\cdots.
\end{align}
\sec z の展開は \sec z =\tan z\cdot\mathrm{cosec}\, z からも得られるが,直接に
(9)

\sec z =\sum_{n=0}^{\infty}\frac{E_n z^{2n}}{(2n)!}\qquad \left(|z| < \frac{\pi}{2}\right)
と置いて

\cos z\cdot\sec z 
=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n z^{2n}}{(2n)!}
 \sum_{n=0}^{\infty}\frac{E_n z^{2n}}{(2n)!}
=1
から
(10)

 E_0=1,\quad E_n-\binom{2n}{2}E_{n-1}+\binom{2n}{4}E_{n-2}-\cdots +(-1)^n E_0=0.
これから次々に

E_0=1,\ E_1=1,\ E_2=5,\ E_3=61,\ E_4=1385,\ E_5=50521,\ E_6=2702765,\cdots
を得る. E_nEuler の数または正割係数という.
[附記] 
E_n は正の奇数であるが,奇数番号の E_n は末位が 1 で,偶数番号の E_n は( E_0 を除いて)末位が 5 である.
(2º)
自然数の巾和 Bernoulli の多項式
(11)
S_n(k)=1^n+2^n+\cdots +k^n
は Bernoulli の数によって表わされる.今その方法を述べる.
(12)

\varphi(x,z)=\frac{z e^{xz}}{e^z-1}=\sum_{n=0}^\infty \frac{B_n(x)}{n!}z^n
と置けば,(2) の記号を用いて

\sum_{n=0}^\infty \frac{b_n z^n}{n!} \sum_{n=0}^\infty \frac{x^n z^n}{n!}
=\sum_{n=0}^\infty \frac{B_n(x)}{n!} z^n
から
(13)
B_n(x)=b_0 x^n +\binom{n}{1}b_1 x^{n-1} +\binom{n}{2}b_2 x^{n-2}+\cdots+b_n.
よって
B_0(x)=1,B_1(x)=x-\frac{1}{2},
その他は

B_n(x)
=x^n - \frac{n}{2}x^{n-1}+\binom{n}{2}B_1 x^{n-2}-\binom{n}{4}B_2 x^{n-4}+\cdots,
最終項は
\Bigg\{ n が偶数ならば -(-1)^{\frac{n}{2}}B_{\frac{n}{2}}
n が奇数ならば -(-1)^{\frac{n-1}{2}} n B_{\frac{n-1}{2}} x

B_n(x)Bernoulli の多項式 という.

さて,(12) から
\varphi(x+1,z)=\varphi(x,z)+z e^{xz}.
故に z^n の係数を比較して
(14)
B_n(x+1)-B_n(x)=n x^{n-1}.
nn+1 に換えて
B_{n+1}(x+1)-B_{n+1}(x)=(n+1) x^{n}.
x=0, 1, 2, \cdots, k-1 として,加えて

\begin{align} S_n(k)k
  &=\frac{1}{n+1}\{B_{n+1}(k)-B_{n+1}(0)\}+k^n\\
  &= \frac{k^{n+1}}{n+1}+\frac{k^n}{2}
    +\binom{n}{1}\frac{B_1}{2}k^{n-1}-\binom{n}{3}\frac{B_2}{4}k^{n-3}+\cdots
\end{align}
+\Bigg\{ -(-1)^{\frac{n}{2}+1}B_{\frac{n}{2}} k n は偶数)
-(-1)^{\frac{n+1}{2}} \frac{n}{2} B_{\frac{n-1}{2}} k^2 n は奇数)
[附記] 
このように,Bernoulli の多項式は級数の総和法に用いられる.今 \textstyle f(x)=\sum_{\nu=0}^n a_\nu x^\nu を与えられた多項式とするとき
F(x)=\sum_{\nu=0}^n \frac{a_\nu}{\nu+1}B_{\nu+1}(x)
と置けば,(14) によって
F(x+1)-F(x)=f(x).
故に
f(1)+f(2)+\cdots+f(n)=F(n+1)-F(n).
上記 S_n はこれの特別の場合である. (13) から微分方程式
(15)
B_n^\prime(x)=nB_{n-1}(x)
を得る.また (12) から\varphi(1-x,z)=\varphi(x,-z),従って
(16)
B_n(1-x)=(-1)^n B_n(x).
(14)(15)(16) は Bernoulli 多項式の基本的性質である.
(3º)
\cot z を部分分数に分割すること
(17)
\cot z
=\frac{1}{z}+\sum_{n=1}^{\infty}\left( \frac{1}{z-n\pi}+\frac{1}{z+n\pi}\right)
=\frac{1}{z}+2z \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{z^2-n^2 \pi^2}.
[証]
\cot zz=n\pi\, (n=0,\pm 1,\pm 2,\cdots) において一次の極を有して,その留数は

(-1)^n \cos  n\pi \cdot \lim_{z \to n\pi} \frac{z-n\pi}{\sin (z-n\pi)} = 1.
x=\pm R, y=\pm R\,(R=n\pi+\tfrac{\pi}{2}) で囲まれた正方形の周 C に関して積分すれば
(18)

\frac{1}{2\pi i}\int_C \frac{\cot z}{z-\zeta}dz
=\cot \zeta + \sum_{k=-n}^n \frac{1}{k\pi - \zeta}.
ただし, \zeta \ne k\pi, |\zeta| < R とする(定理 61).
さて正方形の縦辺上では
z=\pm R+yi,\quad
\cot z = \cot\left(\pm n\pi \pm \frac{\pi}{2}+yi\right)=-\tan yi,
|\cot z|=\left|\frac{e^y-e^{-y}}{e^y+e^{-y}}\right|< 1.
KaisekiGaironP235.svg
また横辺上では z=x\pm Ri

|\cot z|
=\left|\frac{e^{ix}e^{-R}+e^{-ix}e^R}{e^{ix}e^{-R}-e^{-ix}e^R}\right|
\leq \frac{e^R+e^{-R}}{e^R-e^{-R}}.
故に R を十分大きくとれば |\cot z|<2R\to\infty のとき,(18) の左辺で \textstyle\int_C \to 0.それを示すために積分を変形して

\int_C \frac{\cot z}{z-\zeta}dz
=\int_C \frac{\cot z}{z}dz+\zeta\int_C \frac{\cot z}{z(z-\zeta)}dz
とする.\tfrac{\cot z}{z} は偶函数だから,右辺の第一の積分は 0 に等しい.また R\to\infty のとき
(19)

\left|\int_C \frac{\cot z}{z(z-\zeta)}dz \right| < \frac{2}{R(R-|\zeta|)} \int_C ds
= \frac{16}{R-|\zeta|}\to 0
すなわち (18) の左辺で \textstyle\int_C \to 0.故に (18) から, \zetaz と書き換えて

\begin{align}
\cot z	&= \lim_{n \to \infty} \sum_{k=-n}^n \frac{1}{z-k\pi}\\
&=\frac{1}{z} + \sum_{n=1}^\infty \left[ \frac{1}{z-n\pi}+\frac{1}{z+n\pi}\right]\\
&=\frac{1}{z} + 2z \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{z^2-n^2\pi^2}.
\end{align}
すなわち (17) が証明されたのである. この級数は,その形から見えるように,z=n\pi (n=\pm 1,\pm 2,\cdots) を含まない閉区域において一様に収束する.よって
\frac{d}{dz}\log \frac{\sin z}{z}=\cot z -\frac{1}{z}
を用いて,実軸上 0 から z\,(0 \leqq z < \pi) まで項別に積分して

\log \frac{\sin z}{z}
= \sum_{n=1}^\infty \left\{
	\log \left(1-\frac{z}{n\pi}\right)+\log\left(1+\frac{z}{n\pi}\right)
\right\},
従って
(20)
\sin z = z \prod_{n=1}^{\infty}\left(1 - \frac{z^2}{n^2\pi^2}\right).

これは 0\leqq z < \pi が実数なるときに証明されたのであるが,\sin z は超越整函数であり,また右辺の無限積は z 平面上任意の閉区域で一様に収束する(定理 46)から,右辺も整函数である(定理 57).故に解析的延長の原則によって (20) は任意の z に関して成り立つ.

[注意] 
#eq:64.17(17)\textstyle\sum\frac{1}{z-n\pi}\textstyle\sum\frac{1}{z+n\pi}と,また (20)\textstyle\prod(1-\frac{z}{n\pi})\textstyle\prod(1+\frac{z}{n\pi}) とは,別々には収束しない.
(4º)
\frac{1}{\sin z}, \frac{1}{\cos z} を部分分数に分割すること

\cot z と同様の方法によって 1/\sin z を部分分数に分割することができる.極は \cot z と同じく z=n\pi であるが,留数は (-1)^n になる.結果は次の通り:

(21)

\frac{1}{\sin z}
=\lim_{\nu \to \infty}\sum_{n=-\nu}^{\nu}\frac{(-1)^n}{z-n\pi}
=\frac{1}{z}+2z \sum_{n=1}^\infty \frac{(-1)^n}{z^2-n^2\pi^2}.
同じ方法によって(または (21)(17) において zz+\tfrac{\pi}{2} に換えて)次の公式を得る:
(22)
\begin{align}
\frac{1}{\cos z}&=\sum_{n=0}^\infty (-1)^n\left(
  \frac{1}{z+\left(n+\frac{1}{2}\right)\pi}
 -\frac{1}{z-\left(n+\frac{1}{2}\right)\pi}
\right)\\
 &=2\pi \sum_{n=0}^\infty
  \frac{(-1)^n \left(n+\frac{1}{2}\right)}{\left(n+\frac{1}{2}\right)^2 \pi^2 - z^2},
\end{align}
(23)
\begin{align}
\tan z & =-\sum_{n=0}^\infty\left(
  \frac{1}{z-\left(n+\frac{1}{2}\right)\pi}
 +\frac{1}{z+\left(n+\frac{1}{2}\right)\pi}
\right)\\
 &=2z \sum_{n=0}^\infty\frac{1}{\left(n+\frac{1}{2}\right)^2 \pi^2 - z^2}.
\end{align}
(5º)
級数 \sum n^{-2k}, \sum (-1)^n n^{-2k}
(17) から
z \cot z = 1+ 2z^2 \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{z^2-n^2\pi^2}.
さて |z| < \pi とすれば

\frac{z^2}{n^2\pi^2-z^2}
=\left( \frac{z}{n\pi} \right)^2
	+\left( \frac{z}{n\pi} \right)^4+\cdots
	\left( \frac{z}{n\pi} \right)^{2k}+\cdots.
故に(定理 58
(24)

  z \cot z=1-2\sum_{k=1}^\infty s_{2k}\left( \frac{z}{\pi}\right)^{2k},
ただし
(25)

s_{2k}=\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^{2k}},
これを級数 (6) と比較して
(26)
s_{2k}=\frac{2^{2k-1}B_k}{(2k)!} \pi^{2k}
を得る.例えば k=1, 2 とすれば

\begin{align}
s_2&=1+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{3^2}+\cdots = \frac{\pi^2}{6},\\
s_4&=1+\frac{1}{2^4}+\frac{1}{3^4}+\cdots = \frac{\pi^4}{90}.
\end{align}
[注意] 
(26) によって B_n>0 がわかる(231/2 頁参照).また B_n \to \infty
同じように (21) から

\frac{z}{\sin z}=1+2\sum_{k=1}^\infty s_{2k}'\left(\frac{z}{\pi}\right)^{2k},
ただし
(27)
 s_{2k}' =1-\frac{1}{2^{2k}}+\frac{1}{3^{2k}}-\cdots
s_{2k}' の値は s_{2k} の値から容易に得られる.すなわち

s_{2k}-s_{2k}'
=2\left( \frac{1}{2^{2k}}+\frac{1}{4^{2k}}+\cdots \right)
=\frac{1}{2^{2k-1}}s_{2k},
従って

s_{2k}'=\left( 1-\frac{1}{2^{2k-1}} \right) s_{2k},
故に (26) から
(28)
s_{2k}'= \frac{2^{2k-1}-1}{(2k)!} B_k \pi^{2k}.
同様に (22) から
(29)

\frac{1}{\cos z} =\sigma_1 \frac{2^2}{\pi}+\sigma_3 \frac{2^4}{\pi^3}z^2+\sigma_6 \frac{2^6}{\pi^5}z^4+\cdots,
ただし,
(30)

\sigma_k = 1-\frac{1}{3^k}+\frac{1}{5^k}-\cdots,
これを (9) ,すなわち

\frac{1}{\cos z}=E_0 + \frac{E_1}{2!}z^2 + \frac{E_2}{4!}z^4 + \cdots
と比較して
(31)

\sigma_{2k+1}=\frac{E_k}{2^{2k+2}(2k!)} \pi^{2k+1}.
最初の二,三は

\begin{align}
&1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\cdots = \frac{\pi}{4},\\
&1-\frac{1}{3^3}+\frac{1}{5^3}-\cdots = \frac{\pi^3}{32},\\
&1-\frac{1}{3^5}+\frac{1}{5^5}-\cdots = \frac{5\pi^5}{3\cdot 2^9}.
\end{align}

  1. 本文の係数 b_n をそのまま B_n と書いて,それを Bernoulli の数ということもある.Bernoulli の数は B_{110} まで計算されている

    (D. H. Lehmer, Duke Math. J. vol. 2, 1936).B_{110} の分母は 7590,分子は 250 桁の整数である.

[編集] 65.対数 \log z 一般の巾 z^a

指数函数の逆函数として \log z を複素変数にまで拡張することは §54 で述べた.それは実函数 \log x の解析的延長であるが,それを簡明に示すべき算式が幸に存在する.それは定積分
(1)
\log z=\int_1^z\frac{dz}z
である[* 1]z が正の実数なるとき (1) は古典的である.然るに右辺の積分において \tfrac{1}{z}z=0 以外では正則だから,この積分は 1 を含んで 0 を含まない単連結の領域 K において正則である.そのようにして K 内で定義される \textstyle\int_1^z\frac{dz}z は実数に関する \log zK 内への唯一に可能なる解析的延長である.

ファイル:図

例えば z 平面を実数軸の負の部分に沿って截断して,それを境界とする領域を K とするならば,(1) によって K 内に延長される \log z は主値である.実際,K 内で 1z=re^{\theta i}\,(-\pi<\theta\leqq\pi) とを結ぶ任意の曲線 C に関する積分 (1) は実数軸上を 1 から r へ,それから 0 を中心とする円周上を z まで行く積分路に関する積分に等しい(定理 51).すなわち

  \int_C\frac{dz}z=\int_1^r\frac{dx}x+i\int_0^\theta d\theta=\log r+i\theta.
もちろん上記のような截断線を超えて (1) を延長とすることも可能である.例えば次の図のように,\theta>\pi なる扇形内でも

  \log z=\int_C\frac{dz}z=\int_1^r\frac{dx}x+i\int_0^\theta d\theta=\log r+i\theta
であるが,\theta>\pi だからこれは \log z の主値ではない.主値の虚部は -i(2\pi-\theta) だから,\log z=\mathrm{Log}\,z+2\pi i

もしもこの扇形において \theta がたえず増大してついに 2\pi を超えるならば,\log z の虚数部 \theta>2\pi であるが,動径(0z)が回転を続けて \theta(2n-1)\pi を超えるならば,\log z\mathrm{Log}\,z+2n\pi i になる.動径が負の向きに回転するとしても同様で,上記截断線を n 回越せば \log z\mathrm{Log}\,z-2n\pi i になる.このようにして,積分 (1) によって log z の多意性が活動的に説明される.

一般に z=0 を含まない単連結の領域 K 内の一点 z_0 における \log z_0 の値をきめておけば,K 内において \log z が正則なる解析函数として一意的に確定する.それを(K における)\log z の一つのという.もしも Kz=0 を含むならば,K 内で z が正または負の向きに点 0 を一周して出発点に帰るごとに \log z の値は \pm2\pi i だけ変わる.\log zz=0 の近傍で一意的でない.z=0\log z分岐点である.

\mathrm{Log}(1+z) の展開
幾何級数

  \frac{1}{1+z} = 1-z+z^2-\cdots = \sum_{n=0}^\infty(-1)^n z^n
|z|<1 なる円内で収束する.この円内で 0 から z まで項別に積分すれば

  \int_0^z\frac{dz}{1+z}=\frac{z}1-\frac{z^2}2+\frac{z^3}3-\cdots.
右辺は |z|<1 において収束するが,左辺は \textstyle\int_1^{1+z}\frac{d\zeta}\zeta に等しく,その積分変数 \zeta=1+z\zeta=1 を中心とする半径 1 の円内にあるから,左辺は \log(1+z) の主値である.すなわち
(2)

  \mathrm{Log}(1+z)=\frac{z}1-\frac{z^2}2+\frac{z^3}3-\cdots,
  \quad(|z|<1).
実数に引直していえば,これは次のような意味を有する.z=re^{i\theta},\,0\leqq r<1,\,-\pi\leqq\theta\leqq\pi とすれば

  \frac12\log(1+2r\cos\theta+r^2)
  = r\cos\theta-\frac{r^2\cos2\theta}2+\frac{r^3\cos3\theta}3-\cdots,

  \varphi=r\sin\theta-\frac{r^2\cos2\theta}2+\frac{r^3\cos3\theta}3-\cdots,
ただし \varphi は右の図に示す角(の弧度)である.
収束円の周上において上記展開を考察すれば興味ある結果を得る.級数 (2) は収束円の周上 z=-1 を除けば収束する.実際 \zeta=e^{\theta i},|\theta|<\pi として

  \frac{1}{1+z}=1-z+z^2-\cdots\pm z^{n-1}\mp\frac{z^n}{1+z}
0 から \zeta まで直線に沿って積分すれば

  \mathrm{Log}(1+z)=\zeta-\frac{\zeta^2}2+\frac{\zeta^3}3-\cdots
    \pm\frac{\zeta^n}n \mp\int_0^\zeta\frac{z^n}{1+z}\,dz.
積分路上において z=re^{\theta i},\,0\leqq r\leqq1,\,|1+z|\geqq|\sin\theta|,特に |\theta|\leqq\tfrac\pi2 ならば |1+z|\geqq 1 だから
(3)
\begin{align}
  \left|\int_0^\zeta\frac{z^n}{1+z}\,dz\right|
  &\leqq \int_0^1\frac{r^n}{|\sin\theta|}\,d\theta
  =\frac{1}{(n+1)|\sin\theta|}, & &\left(\frac\pi2<|\theta|<\pi\right)\\
  &\leqq \int_0^1 r^n\,dr=\frac{1}{n+1}. & &\left(|\theta|\leqq\frac\pi2\right)
\end{align}
故に
(4)

  \mathrm{Log}(1+\zeta)=\zeta-\frac{\zeta^2}2+\frac{\zeta^3}3-\cdots.
両辺の虚数部を比較すれば,この場合,上図において r=1,従って \varphi=\tfrac\theta2 だから,
(5)

  \frac\theta2=\sin\theta-\frac{\sin2\theta}2+\frac{\sin3\theta}3-\cdots,
(-\pi<\theta<\pi).
もしも |\theta|\leqq\alpha<\pi とすれば,(3) からみえるように,この級数は \theta に関して一様に収束する(156 頁[*]参照).

(5)-\pi<\theta<\pi なる仮定のもとにおいて証明されたのであるが,\theta=\pm\pi ならば級数の和はもちろん 0 に等しい.\sin の周期性によって (5) の右辺の級数のグラフは次のようになる(実線).

\theta\pi-\theta を代入すれば
(6)

  \frac{\pi-\theta}2=\sin\theta+\frac{\sin2\theta}2+\frac{\sin3\theta}3+\cdots.
これは 0>\theta<2\pi なるときに限って成り立つ.右辺の級数のグラフは上の図の破線で示される. (5)(6) から和の半分を取れば
(7)

  \frac\pi4=\sin\theta+\frac{\sin3\theta}3+\frac{\sin5\theta}5+\cdots.
これは 0<\theta<\pi において成り立つ.級数のグラフは次の通りである.
ついでに (4) の両辺の実数部を比較しよう.\mathrm{Log}(1+\zeta) の実数部は
\begin{align}
  \log|1+\zeta|
  &= \log\{(1+\cos\theta)^2+\sin^2\theta\}^\frac12
   = \log(2+2\cos\theta)^\frac12\\
  &= \log\left(2\cos\frac\theta2\right)=\log 2+\log\cos\frac\theta2.
\end{align}
故に (4) から
(8)

  \log\cos\frac\theta2
 =-\log 2+\cos\theta-\frac{\cos2\theta}2+\frac{\cos3\theta}3-\cdots,
(-\pi<\theta<\pi).
すなわち z=-1 なるとき,z-\tfrac{z^2}2+\tfrac{z^3}3-\cdots が収束しないのは,実数部の責任であったのである.
f(\theta)=\cos\theta-\frac{\cos2\theta}2+\frac{\cos3\theta}3-\cdots のグラフ
一般の巾 z^az\ne 0a は任意の複素数)
これは
(9)
z^a=e^{a\log z}
によって定義される.それは(一般には)多意なる解析函数であるが,もしも \log z を主値とすれば,一意的なる一つの枝が定まる.それを z^a主値という.

指数 a が実数ならば,それは正なる実変数 x の巾函数 x^a の解析的延長である.

主値に限らないならば,\log z=\mathrm{Log}\,z+2n\pi i だから
\begin{align}
  z^a &= e^{a\,\mathrm{Log\,z}}\cdot e^{2na\pi i}\\
  &= e^{a\,\mathrm{Log}\,z}\cdot(e^{2a\pi i})^n.
\end{align}
ここで因子 (e^{2a\pi i})^nz^a の多意性を示す.z0 を正の向きに一周して出発点に帰れば,z^a には因子 e^{2a\pi i} が掛かる.z=0z^a の分岐点である.ただし,a が整数ならば,この因子は 1 に等しいから,z^a はもちろん一意的である.
一例として,i^i=e^{i\log i} の主値は i^i=e^{i\frac{\pi i}2}=e^{-\frac\pi2}.一般の値は
i^i=e^{-\frac\pi2}(e^{2i\pi i})^n=e^{\frac\pi2(1+4n)}.
z\ne 0 の近傍で,z^a の各〻の枝は正則である.その微分商は

  \frac{dz^a}{dz}=\frac{d}{dz}e^{a\log z}=e^{a\log z}\cdot\frac{a}z=az^{a-1}.
ただし,右辺の z^{a-1}=e^{(a-1)\log z} で,肩の \log zz^a=e^{a\log z} におけると同一である.例えば z^a が主値ならば,z^{a-1} も主値. 高階微分商
\frac{d^nz^a}{dz^n}=a(a-1)\cdots(a-n+1)z^{a-n}
も同様である.
二項定理
指数 m が任意の(実数または)複素数なるとき,(1+z)^m|z|<1 なる円内で正則である(そこでは 1+z\ne 0 だから).故に (1+z)^m|z|<1 において収束する Taylor 展開を有する. さて (1+z)^m の主値は z=0 のとき 1 である.今それの展開 \textstyle\sum a_nz^n の係数を求めるために,(1+z)^m を逐次微分して z=0 と置けば

  a_n=\frac{m(m-1)\cdots(m-n+1)}{n!}=\binom{m}{n},\quad a_0=1=\binom{m}0
を得る.故に (1+z)^m の主値は
(10)

  (1+z)^m=\sum_{n=0}^\infty\binom{m}{n}z^n.
これが一般の二項定理である.m が自然数でないならば,右辺は無限級数である.それは |z|<1 なるとき収束するが,z=-1 において (1+z)^m は正則でないから,収束半径は 1 である.
[例]
\begin{align}
  \frac{1}{1+x} &= 1-x+x^2-x^3+\cdots,\\
  \frac{1}{(1+x)^2}&= 1-2x+3x^2-4x^3+\cdots,\\
  \sqrt{1+x} &= 1+\frac{x}2-\frac12\,\frac{x^2}4
   +\frac{1\cdot3}{2\cdot4}\,\frac{x^3}6
   -\frac{1\cdot3\cdot5}{2\cdot4\cdot6}\,\frac{x^4}8+\cdots,\\
  \frac{1}\sqrt{1+x} &= 1-\frac12\,x+\frac{1\cdot3}{2\cdot4}\,x^2
   +\frac{1\cdot3\cdot5}{2\cdot4\cdot6}\,x^3
   +\frac{1\cdot3\cdot5\cdot7}{2\cdot4\cdot6\cdot8}\,x^4+\cdots.
\end{align}
[附記] 
多意函数に関しても,その一意的なる枝には,Cauchy の積分公式が適用される.今その一例として次の積分を計算する.
[例]

  \int_0^\infty\frac{x^{a-1}}{1+x}\,dx=\frac{\pi}{\sin a\pi},\quad(0<a<1).
z^{a-1}=e^{(a-1)\log z}z=0 において分岐点を有するが,図に示すように実軸上の線分 AB と円 C,c とで囲まれた閉域では一意的で,\tfrac{z^{a-1}}{1+z}z=-1 において一次の極を有する.その境界に沿って積分すれば

  \frac{1}{2\pi i}\int\frac{z^{a-1}}{1+z}\,dx=e^{(a-1)\pi i}=-e^{a\pi i}.
右辺は z=-1 における z^{a-1}/1+z の留数である.(すなわち (-1)^{a-1} の主値.) さて OA=\varepsilon,OB=R とすれば,左辺の積分は

  \int_{AB}+\int_C+\int_{BA}+\int_c
で,R\to\infty,\varepsilon\to 0 のとき

  \left|\int_C\right|
  < \frac{R^{a-1}}{R-1}\cdot2\pi R\to 0,\quad
  \left|\int_c\right|
  < \frac{\varepsilon^{a-1}}{1-\varepsilon}\,2\pi\varepsilon\to 0
また \textstyle\int_{BA} においては x^{a-1}=e^{(a-1)(\log x+2\pi i)}. 故に

  \int_{AB}+\int_{BA}
 =\int_\varepsilon^R\frac{x^{a-1}}{1+x}\,dx\cdot(1-e^{(a-1)2\pi i}).
よって結局

  \int_0^\infty\frac{x^{a-1}}{1+x}
  =\frac{-2\pi ie^{a\pi i}}{1-e^{2a\pi i}}=\frac{\pi}{\sin a\pi}.
(上記計算の理論は211 頁と同様であるが,ABBA とに関する積分が相殺しない.)
上記積分は \mathit\Beta(a,1-a) に等しい(§33,[例 3]).

  1. 積分 (1) によって \log z を複素数にまで延長することは,すでに Gauss(1811)が指摘した.

[編集] 66.有理函数の積分の理論

有理函数
f(z)=\frac{\varphi(z)}{\psi(z)}
において \varphi,\psi は共通根を有しない多項式とする.然らば \psi(z) の根 \alphaf(z) の極である.もしも \alpha\psi(z)k 重の根ならば,
\psi(z)=(z-\alpha)^k\psi_0(z)
と置くとき,\psi_0(\alpha)\ne 0 で,(z-\alpha)^k f(z)\alpha において正則で,\alphaf(z)k 次の極である.\alpha における f(z) の主要部を
(1)

  P(\alpha,z)=\frac{a_k}{(z-\alpha)^k}+\cdots+\frac{a_1}{z-\alpha}
とすれば,それは (z-\alpha)^k f(z)\alpha における Taylor 展開の最初の k
a_k+a_{k-1}(z-\alpha)+\cdots+a_1(z-\alpha)^{k-1}
(z-\alpha)^k で割って求められる.

\psi(z) の根の最大絶対値を R とすれば,|z|>R なるとき f(z) は正則であるが,もしも分子 \varphi(z) が分母 \psi(z) よりも低い次数を有するならば,z\to\infty のとき f(z)\to 0 だから,f(z)z=\infty においても正則である(§60).この場合,f(z) のすべての極に関する主要部 P(\alpha,z)f(z) から引けば,


  f(z)-\sum\limits_\alpha P(\alpha,z)
z のすべての値に関して正則,また z=\infty においても正則だから,それは定数であるが,z\to\infty のとき f(z)\to 0,P(\alpha,z)\to 0 だから,それは 0 に等しい.すなわち
(2)

  f(z)=\sum\limits_\alpha P(\alpha,z).
またもし \varphi(z)\psi(z) と同次以上ならば,\varphi(z)\psi(z) で割った商を Q(z),剰余を \varphi_0(z) とすれば

  f(z)=Q(z)+\frac{\varphi_0(z)}{\psi(z)}
で,極 \alpha に関する主要部は f(z) においても \varphi_0/\psi においても同一だから(Q(z)\alpha において正則だから)
(3)

  f(z)=Q(z)+\sum\limits_\alpha P(\alpha,z).
(この場合,Q(z) が一次以上ならば,z=\inftyf(z) の極で,z=\infty における f(z) の主要部は Q(z) から定数項だけをのぞいた残部である.)

\alpha における主要部 P(\alpha,z)(1) の通りだから,(2) または (3) によって f(z) が部分分数に分解されるのである.

さて P(\alpha,z) の計算法だが,それは前に述べたように (z-\alpha)^k f(z)=\tfrac{\varphi(z)}{\psi_0(z)}Taylor 展開の最初の k 項から得られる.

特に z=\alpha が分母の単根ならば,主要部
\frac{a}{z-\alpha}
において,az=\alpha における留数で(§62

  a=\lim_{z\to a}\frac{(z-\alpha)\varphi(z)}{\psi(z)}
   =\frac{\varphi(\alpha)}{\psi'(\alpha)}.
よって \psi(z) が単根のみを有して,\varphi(z)\psi(z) よりも低次ならば,
(4)

  \frac{\varphi(z)}{\psi(z)}
  =\sum_\alpha\frac{\varphi(z)}{\psi'(z)}\cdot\frac{1}{z-\alpha}.
\textstyle\sum_\alpha\psi(z) のすべての根 \alpha にわたる.これが lagrange補間式である.

有理函数の不定積分は有理函数 f(z)(3) のように分解すればすぐにできる.まず多項式 Q(z) の不定積分に論はない.さて

P(\alpha,z)=\frac{a_k}{(z-\alpha)^k}+\cdots+\frac{a_1}{z-\alpha}
だから
\int P(\alpha,z)
  =-\frac{a_k}{k-1}\frac{1}{(z-\alpha)^{k-1}}-\cdots
   -\frac{a_2}{z-\alpha} + a_1\log(z-\alpha).
故に次の定理を得る.
定理 64.
有理函数 f(z) の不定積分は,有理函数と対数函数との和である.その対数的の部分は

  \sum\limits_\alpha a_1\log(z-\alpha).
ここで \textstyle\sum_\alphaf(z) の極 \alpha に関する和で,a_1\alpha における f(z) の留数である.
f(x) が実係数を有する有理函数なる場合は,実変数 x に関する不定積分を実数だけで表わすことはもちろんできる.その場合,f(x) の分母の実根 \alpha からは実数なる a_1\log(x-\alpha) が生ずるが,互に共役なる \alpha,\bar\alpha からは \log のほかに \mathrm{arc\,tan} を含む項が生ずる.今

  \alpha=a+bi,\quad \bar\alpha=a-bi;\quad a_1=p+qi,\quad \bar{a}_1=p-qi
と置けば,

  \log(x-\alpha)=\log(x-a-bi)
  =\frac12\log[(x-a)^2+b^2]-i\,\mathrm{arc\,tan}\,\frac{b}{x-a}.
故に
(5)

  a_1\log(x-\alpha)+\bar{a}_1\log(x-\bar\alpha)
  =p\log[(x-a)^2+b^2]+2q\,\mathrm{arc\,tan}\,\frac{b}{x-a}.

有理函数の不定積分における有理の部分は,有理的計算によって(根を用いないで)求められることを,Hermite が指摘した.

まず分母 \psi が複根を有するときには

  \psi=X_1X_2^2X_3^3\cdots X_m^m
と置いて,k 重の一次因子の全部をまとめて X_k^k と書く(k 重因子がなければ X_k=1 とする).然らば X_k は単根のみを有し,かつ X_1,X_2,\ldots は二つずつ互に素なる多項式である.さて \psi\psi' との最大公約数を \psi_1=(\psi,\psi') と書けば

  \psi_1=X_2X_3^2\cdots X_m^{m-1},
同じように

  \psi_2=(\psi_1,\psi_1')=X_3X_4\cdots X_m^{m-2},
等々.故に

  \psi/\psi_1=X_1X_2X_3\cdots X_m,\quad
  \psi_1/\psi_2=X_2X_3\cdots X_m, \quad
  \psi_2/\psi_3=X_3\cdots X_m,
等々で,これから割り算によって X_1,X_2,X_3\ldots,X_m が得られる.すなわち \psi におけるこれらの因子は有理的の計算によって分離されるのである.

然らば X_1,X_2,\ldots,X_m は互いに素だから


  \frac{\varphi}{\psi} =\frac{\mathit\Phi_1}{X_1}
 +\frac{\mathit\Phi_2}{X_2^2}+\cdots +\frac{\mathit\Phi_m}{X_m^m}
のような分解が有理的にできる.

今これら部分分数の一つを

\frac{\mathit\Phi}{X^n}
と書いて,それの積分を単純化しよう.

仮定によって XX' とは共通因子を有しないから

PX+QX'=1
なる多項式 P,Q が有理的に求められる.然らば

  \int\frac{\mathit\Phi\,dz}{X^n} =\int\frac{(PX+QX')\mathit\Phi}{X^n}\,dz
 =\int\frac{P\mathit\Phi}{X^{n-1}}\,dz+\int\frac{X'}{X^n}Q\mathit\Phi\,dz.
\tfrac{X'}{X^n}=-\tfrac{d}{dz}\tfrac{1}{(n-1)X^{n-1}} を用いて,第二の積分に部分積分を行えば,

  \int\frac{\mathit\Phi\,dz}{X^n}
  = \frac{-Q\mathit\Phi}{(n-1)X^{n-1}}
   +\int\frac{(n-1)P\mathit\Phi+(Q\mathit\Phi)'}{(n-1)X^{n-1}}\,dz
を得る.すなわち分母において X の指数が n-1 なる積分に帰する.この方法を続行すれば,結局

  \int\frac{\mathit\Phi\,dz}{X^n}=\frac{F}{X^{n-1}}+\cdots+\int\frac{G\,dz}{X},
(6)

  \int\frac{G\,dz}{X}=\sum_\alpha a_1\log(z-\alpha),\quad
  a_1=\frac{G(\alpha)}{X'(\alpha)}
を得る: ただし F,G は多項式で,GX よりも低次である(さもなければ,GX で割って,その整商だけを分離すればよい).和は X の根 \alpha の上にわたる.a_1\alpha における留数である(X の根はすべて単根のはず).
[例]
\frac{dz}{(z^4+1)^3}.
X=z^4+1,X'=4z^3,4X-zX'=4
\begin{align}
  \int\frac{dz}{X^3}
 &=\int\frac{dz}{X^2}-\frac14\int\frac{zX'}{X^3}\,dz
  =\frac18\,\frac{z}{X^2}+\frac78\int{dz}{X^2},\\
  \int\frac{dz}{X^2}
 &=\int\frac{dz}X-\frac14\int\frac{zX'}{X^2}\,dz
  =\frac{z}{4X}+\frac34\int\frac{dz}X.
\end{align}
故に
(7)

  \int\frac{dz}{(z^4+1)^3}
 =\frac18\,\frac{z}{(z^4+1)^2}+\frac7{32}\,\frac{z}{(z^4+1)}
  +\frac{21}{32}\int\frac{dz}{z^4+1}.
さてz^4+1=0 の根を \alpha とすれば,\alpha^4=^1 に注意して (4) から

  \frac{1}{z^4+1}=\sum_\alpha\frac{1}{4\alpha^3}\,\frac{1}{z-\alpha}
  =-\frac14\sum_\alpha\frac{\alpha}{z-\alpha}.

  \int\frac{dz}{z^4+1}=-\frac14\sum \alpha\log(z-\alpha).
根は \alpha=\tfrac{1+i}\sqrt2,\,\bar\alpha=\tfrac{1-i}\sqrt2 および -\alpha,-\bar\alpha である.よって実数で表わせば,(5) によって
\begin{align}
  \alpha\log(z-\alpha)+\bar\alpha\log(z-\bar\alpha)
 &=\frac{1}\sqrt2\log\left\{\left(z-\frac{1}\sqrt2\right)^2+\frac12\right\}
    +\sqrt2\,\mathrm{arc\,tan\,}\frac{1}{\sqrt2\,z-1},\\
  -\alpha\log(z+\alpha)-\bar\alpha\log(z+\bar\alpha)
 &=-\frac{1}\sqrt2\log\left\{\left(z+\frac{1}\sqrt2\right)^2+\frac12\right\}
    +\sqrt2\,\mathrm{arc\,tan\,}\frac{1}{\sqrt2\,z+1}.
\end{align}
加えて簡約すれば

  \int\frac{dz}{z^4+1}
 =\frac{1}{4\sqrt2}\log\frac{z^2+\sqrt2\,z+1}{z^2-\sqrt2\,z+1}
  -\frac{1}{2\sqrt2}\,\mathrm{arc\,tan}\,\frac{\sqrt2\,z}{z^2-1},
これを (7) の右辺に入れるのである.

[編集] 67.二次式の平方根に関する不定積分[* 1]

z の二次式の平方根を

(1)
w=\sqrt{ax^2+bx+c}=\sqrt{R}

と書いて,F を有理式とすれば F(z,w)z に関して一意的ではないが,それを有理的に一意化uniformization)することができる.――というのは,zw も媒介変数 t の有理函数で,その t が逆にまた zw との有理函数として表されることを意味する.すなわち

(2)
z=\varphi(t),\quad w=\psi(t)

で,また

(3)
t=\theta(z,w);

しかも \varphi,\psi,\theta は有理函数である.このように zw とを一意的に表わす媒介変数 t一意化変数という.

然らば,(2)F(z,w) へ持ち込めば

\int F(z,w)dz=\int F(\varphi,\psi)\varphi'(t)dt.

それは t に関する有理函数の積分である.故に不定積分は (3) によって,zw との有理函数および対数函数で表わされる.

上記の一意化は実変数の場合には§37,(II)に述べたように無数にできるが,同様の方法が複素変数に関しても適用される.次にその一例を述べる.

まず変数 z の一次変換によって平方根を

\sqrt{R}=\sqrt{z^2-1}

にすることができる.複素数の範囲で考察すれば,それは常に可能である.然らば(§37のように)

(4)
z+\sqrt{R}=t

と置くとき

z-\sqrt{R}=\frac{1}{t}.

従って


  z=\frac{1}{2}\left(t+\frac{1}{t}\right),\quad
  \sqrt{R}=\frac{1}{2}\left(t-\frac{1}{t}\right),
dz=\frac{1}{2}\left(1-\frac{1}{t^2}\right)dt,
(5)
\frac{dz}{\sqrt{R}}=\frac{dt}{t}

これが計算的に最も見透しのよい有理化の方法であろう.

さて F(z,w) を有理式とすれば,一意化変数 t を用いて

\int F(z,\sqrt{R})dz=\int \mathit{\Phi}(t).

ただし \mathit{\Phi}(t) は有理式である.それを多項式と部分分数とに分割して

\mathit{\Phi}(t)=P(t)+\sum_{\lambda,n}\frac{c_n}{(t-\lambda)^n}

とする,\lambda\mathit{\Phi}(t) の極である.従って

(6)

 \int \mathit{\Phi}(t)dt=\mathit{\Psi}(t)+\sum_{\lambda}c_1\log(t-\lambda),

\mathit{\Psi}(t) は有理式である.故に (4) から

(7)
\int F(z,\sqrt{R})dz=
 \mathit{\Psi}(z+\sqrt{R})+\sum_{\lambda}c_1\log(z+\sqrt{R}-\lambda)

すなわち F(z,\sqrt{R}) の不定積分は z,\sqrt{R} の有理式と z,\sqrt{R}一次式の対数との一次結合として表わされる.

以上は F(z,\sqrt{R}) の不定積分を行うときに期待されるべき結果の概括論である.

F および R における係数が実数であるとき,変数も実数として,結果を実数のみで表わすには,三つの場合を区別することを要する.すなわち

R=ax^2+bx+c,\quad D=b^2-4ac

として


   \text{(I) }a>0,D>0,\quad 
  \text{(II) }a>0,D<0,\quad 
 \text{(III) }a<0,D<0.

a<0,D<0 ならば,R は常に負だから,実数の範囲内では問題にならない.さて,これらの場合において,実係数の一次変換によって \sqrt{R} を次のような形に変形すえることができる.


    \text{(I) }\sqrt{x^2-1},\quad 
   \text{(II) }\sqrt{x^2+1},\quad
  \text{(III) }\sqrt{1-x^2}.

(I) の場合には,(4) の変換で有理化ができるが,そのとき (7) における \log の下で,\lambda=p+qi が複素数ならば,その \log を実数に引直さねばならない.さて


  \log(t-\lambda)=\log(t-p-qi)
 =\frac{1}{2}\log((t-p)^2+q^2)-i\,\mathrm{arc\,tan\,}\frac{q}{t-p}.

右辺の \log の下は t の二次式だが,それを

\log(t)+\log\!\left(t+\frac{p^2+q^2}{t}-2p\right)

と書けば,\tfrac{1}{t}=x-\sqrt{R} であったから,第二の \log の下は

x+\sqrt{R}+(p^2+q^2)(x-\sqrt{R})-2p

すなわち hx+k\sqrt{R}+l のような x\sqrt{R} との実係数の一次式である.\lambda が複素数ならば,(7) における係数 c_1(留数)も複素数だが,共役複素数が対を成して出てきて,結局は x,\sqrt{R} の一次式の \logx,\sqrt{R} の一次有理式の \mathrm{arc\,tan} とで不定積分が得られるのである.(II),(III) でも,結果は同様であるが,いずれの場合にも,実際の計算は相当にめんどうである.

上記,一般的の理論では,結果の見通しをつけて,手数を厭わなければ,計算が必らずできることを述べたのである.もっとも,計算ができるといっても,部分分数への分解には,方程式の根を求めなければならないから,実際は(極めて特別の場合のほか)近似計算に終わるのである.

  1. 本書では多意なる解析函数の積分論を述べない.それには Riemann 面が必要で,解析概論としては,あまりに深入りであるろう.本節では実変数への応用を統一的に説明することを目標にするが,複素変数でも,函数が一意なる領域には通用する.

[編集] 68.ガンマ函数

\mathit\Gamma(s) をこれまでしばしば引合いに出したが,本節で \mathit\Gamma(s) を主題にして総括をする.

s>0 なる区間内の任意の閉区間において,
(E)

  \mathit\Gamma(s)\int_0^\infty e^{-x}x^{s-1}\,dx
は一様に収束し,従って実変数 s に関して連続函数である(§48,167/8 頁). \mathit\Gamma(s) に関して次の関係式は既知である(§35,[例 4]).
(1)

  \mathit\Gamma(s+1)=s\mathit\Gamma(s).\quad(s>0)
(1º)
s を複素数として,慣例に従って s=\sigma+ti と書いて,\sigma>0 なる領域(s 平面上虚数軸の右側)において,上記の積分 (E) を考察する.積分の路は実数軸の正の部分で,x^{s-1}=e^{(s-1)\log z} において,\log x は主値を表わすものとする. 然らば |x^{s-1}|=x^{\sigma-1} だから,積分 (E) は変数 s\sigma>0 なる領域内の任意の有界なる閉域にあるとき,x\to 0 のときにも,x\to\infty のときにも,一様に収束する.従って \mathit\Gamma(s) は領域 \sigma>0 において連続である.
(2º)
\mathit\Gamma(s)\sigma>0 において連続であるのみでなく,s の函数として正則である.上記一様収束のおかげで,s が半平面 \sigma>0 において閉曲線 C を画くとき,\textstyle\int_C\mathit\Gamma\,ds が積分記号下において積分される,すなわち

  \int_C\mathit\Gamma(s)\,ds=\int_0^\infty e^{-x}\,dx\int_C x^{s-1}\,ds.
さて x^{s-1}s の(超越)整函数だから,Cauchy の積分定理によって \textstyle\int_C x^{s-1}\,ds=0,従って \textstyle\int_C\mathit\Gamma(s)\,ds=0.故にMorera の定理によって,\mathit\Gamma(s)\sigma>0 において正則である.
(3º)
s>0 なるとき,(1) によって \mathit\Gamma(s+1)=s\mathit\Gamma(s).然るに \mathit\Gamma(s),従って \mathit\Gamma(s+1)s\mathit\Gamma(s) も,\sigma>0 のとき正則であることが確定して,それらが実数軸上において一致するから領域 \sigma>0 においても一致する.すなわち \sigma>0 なるとき,常に[* 1]
(2)

  \mathit\Gamma(s+1)=s\mathit\Gamma(s).\quad (\sigma>0)
(4º)
この関係を用いて,\mathit\Gamma(s)\sigma>-1 なる領域にまで解析的に延長することができる.すなわち \sigma>-1 なるとき
(3)

  \mathit\Gamma(s)=\frac{\mathit\Gamma(s+1)}s
と置くのである.\sigma>-1 ならば s+1 の実数部は正だから,右辺は s=0 だけを除けば正則で,\sigma>0 ならば,もとの \mathit\Gamma(s) と一致する.このようにして \sigma>-1 にまで拡張された \mathit\Gamma(s)s 以外では正則であるが,s\to 0 のとき \mathit\Gamma(s+1)\to\mathit\Gamma(1)=1 だから,s=0 は一次の極で,主要部は \tfrac{1}s である.

よって (1)\sigma>-1 においても成り立つ.それは (3º) におけると同様である.

等式 (1)\sigma>-1 において成り立つから,それによって上記と同様に (3) によって \mathit\Gamma(s)\sigma>-2 なる領域にまで解析的に延長することができる.そのとき \mathit\Gamma(s)s=0 のほかに s=-1 においても一次の極を有する.主要部は \tfrac{1}{s+1} である.

この方法を繰り返せば,\mathit\Gamma(s)s 平面の全部に延長することができる.それは s=0,-1,-2,\ldots において一次の極を有するほかは,常に正則なる解析函数である.
(5º)
このように \mathit\gamma(s)s 平面全部において解析函数として定義することができたけれども,Euler の積分 (E)\sigma>0 なる領域においてのみ収束するから,\sigma\leqq 0 において \mathit\Gamma(s) を表わす能力がない.然るに s が実数なるときには,\mathit\Gamma(s) は次の Gauss の公式 によって表わされる:
(G)

  \mathit\Gamma(s)=\lim_{n\to\infty}\frac{n!\,n^s}{s(s+1)\cdots(s+n)}.
もちろん s=0,-1,-2,\ldots は除く.

これは s が複素数でも成り立つのだが,現代的に書き直せば


  \frac{s(s+1)\cdots(s+n)}{n!\,n^s}
  =e^{(1+\frac12+\cdots+\frac1n-\log n)s}s
   \left(1+\frac{s}1\right)e^{-s}
   \left(1+\frac{s}2\right)e^{-\frac{s}2}\cdots
   \left(1+\frac{s}n\right)e^{-\frac{s}n}
で,すなわち (G) は次の Weierstrass の公式に変形される:
(W)

  \frac{1}{\mathit\Gamma(s)}
  = e^{Cs}\prod_{n=1}^\infty\left(1+\frac{s}n\right)e^{\frac{s}n}.
ここで \textstyle C=\lim_{n\to\infty}(1+\frac12+\cdots+\frac1n -\log n)Euler の定数(150 頁)である.

(W)(G) を書き直しただけで,また右辺の無限積は収束すると仮定したのである.さて (W) を証明しよう.

(6º)
まず (W) の右辺の無限積を
P(s)=\prod_{n=1}^\infty\left(1+\frac{s}{n}\right)e^{-\frac{s}n}.
と略記して,それが s 平面上の任意の有界なる閉域において絶対にかつ一様に収束することを証明する.それができれば,P(s)s 平面上において正則,すなわち整函数であることがわかる(定理 57).

そのために


  \left(1+\frac{s}n\right)e^{-\frac{s}n}=1+u_n
と置いて,|s|\leqq R なるとき,n を十分に大きく取れば,或る定数 k に関して
(4)

  |u_n| < k^2\frac{|s|^2}{n^2}
なることを示そう.そうすれば
|u_n|<\frac{kR^2}{n^2}
で,\textstyle\sum\frac{1}{n^2} 従って \textstyle\sum|u_n| は収束するから,目的は達せられる(定理 46).まず
n>R
とすれば \tfrac{|s|}n<1 であるが,今 \tfrac{s}n=z と書いて
(7)
 |z|\leqq 1 なるとき |(1+z)e^{-z}-1|<7|z|^2
になることを示そう.すなわち (4) における k7 でよい.――実際,今

  \frac{(1+z)e^{-z}-1}{z^2}
を考察するに,z=0 は分子においても二次の零点だから,これは整函数である.故に閉域 |z|\leqq 1 におけるそれの絶対値は境界線 |z|=1 の上で最大値をとる(定理 63).その最大値を k にしてもよいのだが,|z|=1 のとき

  \left|\frac{(1+z)e^{-z}-1}{z^2}\right|
  = |(1+z)e^{-z}-1|\leqq |1+z||e^{-z}|+1
  < 2e+1 < 7.
故に k=7 とすれば十分である(7 に特別の意味はない).

さて,公式 (W) の右辺が整函数であることが確定したから,(W) を証明するには,それが実数軸の一部分において正しいことを示せばよい.そうすれば解析的延長の原則によって,それは全複素数平面において成り立つことがわかる.

(7º)
そこで実変数に返って,s>0 として (G) を証明する.証明の方法はいろいろあるが,次に掲げるのは簡明である[* 2]

まず \log\mathit\Gamma(s) は凸函数(§20)である.すなわち

(6)

  \frac{d^2}{ds^2}\log\mathit\Gamma(s)
 =\frac{\mathit{\Gamma\Gamma}''-\mathit\Gamma'^2}{\mathit\Gamma^2}\geqq 0.
実際
\begin{align}
  \mathit\Gamma(s)  &=\int_0^\infty e^{-x}x^{s-1}\,dx,\\
  \mathit\Gamma'(s) &=\int_0^\infty e^{-x}x^{s-1}\log x\,dx,\\
  \mathit\Gamma''(s)&=\int_0^\infty e^{-x}x^{s-1}(\log x)^2\,dx,
\end{align}
から(168 頁),任意の u に関して
\begin{align}
    u^2\mathit\Gamma+2u\mathit\Gamma'+\mathit\Gamma''
  &=\int_0^\infty e^{-x}x^{s-1}(u^2+2u\log x+(\log x)^2)\,dx\\
  &=\int_0^\infty e^{-x}x^{s-1}(u+\log x)^2\,dx\geqq 0
\end{align}
故に左辺に書いた u の二次式の判別式 \mathit\Gamma'^2-\mathit{\Gamma\Gamma''} は正でない.従って (6) の通り.

そこで n>1 を自然数とし,また 0<s<1 として,§20(1′′)y=\log\mathit\Gamma(s) として,x_1<x<x_2 にまず n<n+s<n+1 を代用し,次にまた n-1<n<n+s を代用すれば


  \log\mathit\Gamma(n)-\log\mathit\Gamma(n-1)
  \leqq \frac{\log\mathit\Gamma(n+s)-\log\mathit\Gamma(n)}s
  \leqq \log\mathit\Gamma(n+1)-\log\mathit\Gamma(n)
を得る.(1) を用いて書き直せば

  \log(n-1)\leqq\frac{\log\mathit\Gamma(n+s)-\log\mathit\Gamma(n)}s\leqq\log n,
従って

  (n-1)^s\mathit\Gamma(n)\leqq\mathit\Gamma(n+s)\leqq n^s\mathit\Gamma(n).
(1) から

  \mathit\Gamma(n+s)=(s+n-1)(s+n-2)\cdots(s+1)s\mathit\Gamma(s)
を得るから,
\begin{align}
  \frac{(n-1)^s\mathit\Gamma(n)}{s(s+1)\cdots(s+n-1)}
  \leqq \mathit\Gamma(s) &\leqq
  \frac{n^s\mathit\Gamma(n)}{s(s+1)\cdots(s+n-1)}\\
  &= \frac{n^s\mathit\Gamma(n+1)}{s(s+1)\cdots(s+n)}\,\frac{s+n}n.
\end{align}
n>1 は任意だから左辺で nn+1 に換えて

  \frac{n^s\mathit\Gamma(n+1)}{s(s+1)\cdots(s+n)}
  \leqq \mathit\Gamma(s)\leqq
  \frac{n^s\mathit\Gamma(n+1)}{s(s+1)\cdots(s+n)}\,\frac{s+n}n,
すなわち

  \mathit\Gamma(s)\,\frac{n}{s+n}\leqq
  \frac{n^s\mathit\Gamma(n+1)}{s(s+1)\cdots(s+n)}
  \leqq \mathit\Gamma(s).
\mathit\Gamma(n+1)=n! を入れて,n\to\infty とすれば Gauss の公式 (G) を得る.(W) はそれの変形であることは前に述べた.

よってすべての複素数 s に関して (W) が成り立つ.

[注意] 
上記の証明では,s>0 のとき,\log\mathit\Gamma(s) が凸函数であることと,函数方程式 (1) とが根拠であった.今 \mathit\Gamma(s) の代りに f(s) を取って,s>0 なるとき f(s)>0 で,\log f(s) は凸函数,また函数方程式 f(s+1)=sf(s) が成り立つとするならば,f(s) に関しても上記 (G) の証明は通用するが,ただ最後に \mathit\Gamma(n)=n! とするところへ f(n+1)=n!\cdot f(1) がくる.従って f(s) に関する上記仮定から f(s)=a\mathit\Gamma(s) を得る.a=f(1) は定数である.後にこれを応用するであろう.
(8º)
公式 (W)s-s に換えて,\mathit\Gamma(1-s)=-s\mathit\Gamma(-s) を用いるならば,

  \frac{1}{\mathit\Gamma(s)\mathit\Gamma(1-s)}
  =s\prod_{n=1}^\infty\left(1-\frac{s^2}{n^2}\right)
を得る.よって §64,(20) から
(7)

  \mathit\Gamma(s)\mathit\Gamma(1-s)=\frac{\pi}{\sin\pi s}.
(7) において s=\tfrac12 とすれば
(8)

  \mathit\Gamma\!\left(\frac12\right)=\sqrt\pi.
(E) において積分変数 xx^2 に換えるならば,(8) から既知の積分 {{解析概論/equation|\int_0^\infty e^{-x^2}dx=\frac{\sqrt\pi}2 を得る.また (8) において \mathit\Gamma(\tfrac12)(G) で表わせば Wallis の公式(§35,[例 5])を得る.すなわち
(9)

  \sqrt\pi=\lim_{n\to\infty}\frac{n!\sqrt n}{\frac12\cdot\frac32\cdots\frac{2n+1}2}
  =\lim_{n\to\infty}\frac{2^{2n+1}(n!)^2}{(2n)!}\frac{\sqrt n}{2n+1}
  =\lim_{n\to\infty}\frac{2^{2n}(n!)^2}{(2n)!\sqrt{n}}
(9º)
\mathit\Gamma 函数に関しては,なお重要な公式

  \mathit\Beta(p,q)=\frac{\mathit\Gamma(p)\mathit\Gamma(q)}{\mathit\Gamma(p+q)}
を挙げねばならない.これは後(§96)にも述べるが,すでにここで既知の材料から導くことができる.\mathit\Beta(p,q) の意味は(§33,[例 3]
(11)

  \mathit\Beta(p,q)=\int_0^1 x^{p-1}(1-x^{q-1})\,dx\quad(p>0,q>0)
であった.今
(12)

  f(p)=\mathit\Beta(p,q)\mathit\Gamma(p+q)
と置いて,まず
(13)
f(p+1)=pf(p)
を証明する.(11) から

  \mathit\Beta(p+1,q)=\frac{p}{p+q}\,\mathit\Beta(p,q).
これは二項微分の積分の簡約式(140 頁)による.または直接に部分積分によっても出る.また

  \mathit\Gamma(p+q+1)=(p+q)\mathit\Gamma(p+q)
だから (13) を得る.

さて p>0 のとき \log f(p)=\log\mathit\Beta(p,q)+\log\mathit\Gamma(p+q) が凸函数であることは 251 頁と同様にして確かめられる.よって(前頁,[注意]


  f(p)= a\mathit\Gamma(p),\quad a=f(1).
さて (12) から

  f(1)=\mathit\Beta(1,q)\mathit\Gamma(q+1).

  \mathit\Beta(1,q)=\int_0^1(1-x)^{q-1}\,dx=\frac{1}q
だから,
a=\mathit\Gamma(p).
すなわち
f(p)=\mathit\Gamma(p)\mathit\Gamma(q).
故に (12) から問題の公式 (10) を得る.
(10º)
公式 (W) の両辺を s で割って s\mathit\Gamma(s)=\mathit\Gamma(1+s) を用いて \log を取れば,s>0 として
(14)

  \log\mathit\Gamma(1+s)
 = -Cs+\sum_{n=1}^\infty\left(\frac{s}n-\log\left(1+\frac{s}n\right)\right).
右辺の \log を巾級数に展開して(|s|<1
(15)

  \log\mathit\Gamma(1+s)
 = -Cs+\frac{S_2}{2}s^2-\frac{S_3}{3}s^3+\cdots+\frac{(-1)^n S_n}{n}s^n+\cdots,
ただし,

  S_n=\sum_{\nu=1}^\infty \frac{1}{\nu^n},
 (§64s_n).
また (14)(15) から右辺を項別に微分して
(16)

  \frac{\mathit\Gamma'(s)}{\mathit\Gamma(s)}
  =-\frac{1}s-C+\sum_{n=1}^\infty\left(\frac{1}n-\frac{1}{n+s}\right)
(17)

  =-\frac{1}s-C+S_2s-S_3s^2+\cdots,\quad(|s|<1).
上記 (14)(W) から得られるが,右辺の級数は,

  0<s-\log(1+s)<\frac{s^2}2,\quad (s>0),
からわかるように,s>0 なる任意の有限区間内で一様に収束する.故に \mathit\Gamma(s) の解析性を用いて,定理 57(Cによって (16) が得られる.同様に定理 58 によって (15)(17) が得られるが,虚数軸の右側で \mathit\Gamma(s) は正則で,s=0 は極だから,(15)(17) の右辺の級数の収束半径は 1 である.s が複素数ならば (14)(15)\log の適当な枝を取らねば成り立たないであろうが,(16)s\ne 0,-1,-2,\ldots のとき,また (17)|s|<1 ならば成り立つ.

(15) によって区間 1\leqq s<2 において \mathit\Gamma(s) が計算されるはずであるが,次に掲げる S_n の表からみえるように,(15) の収束は不良だから計算に適しない(計算法は後述,263頁).

級数 S_n=1+\tfrac{1}{2^n}+\tfrac{1}{3^n}+\cdots は,n が偶数なるとき,Bernoulli の数と関係して三角函数の展開に現れたのであったが,奇数番号の S_n\mathit\Gamma 函数に関する展開において出てきた.n=70 まで,S_n の値が小数 32 位まで計算されてある[* 3].次にその初めの部分を簡約して掲げる.容易にわかるように
S_{n+1}-1<\frac12(S_n-1)
S_n-1 は相当緩慢に 0 に収束する.n\geqq 16 に関しては小数 8 位までは S_{n+1}-1\fallingdotseq\tfrac12(S_n-1)
\begin{array}{c|c||c|c||c|c}\hline
  & & & & &\\[-9pt]
\ n\ & S_n-1 &\ n\ & S_n -1 &\ n\ & S_n-1 \\[2pt]\hline
  & & & & &\\[-9pt]
2 & \quad 0.64493\,407\quad &\ 7 & 0.00834\,928 & 12 & 0.00024\,609\\
3 & 0.20205\,690 &\ 8 & \quad 0.00407\,736\quad & 13 & 0.00012\,271\\
4 & 0.08232\,323 &\ 9 & 0.00200\,839 & 14 & \quad 0.00006\,125\quad\\
5 & 0.03692\,776 & 10 & 0.00099\,458 & 15 & 0.00003\,059\\
6 & 0.01734\,306 & 11 & 0.00049\,419 & 16 & 0.00001\,528\\[3pt]
\end{array}

次の頁に \mathit\Gamma(s) のグラフと,1\leqq s\leqq 2 における \mathit\Gamma(s) の表を掲げる.

\log\mathit\Gamma(s) の欄に掲げたのはもちろん常用対数である.

s>0 のとき \mathit\Gamma(s) が凸函数であることは前に述べた(251 頁).さて \mathit\Gamma(1)=\mathit\Gamma(2)=1 だから,\mathit\Gamma(s)12 との間で極小になる.極値点 s_0 および極小値 \mathit\Gamma(s_0) は計算されている.すなわち
s_0=1.4616\ldots,\quad\mathit\Gamma(s)=0.8856\ldots.
詳しくは述べないが,s_0 および \mathit\Gamma(s) の概略の値は次頁の表から比較挿入法によって計算される.
\begin{array}{c|c|c|c||c|c|c|c}\hline
  & & & & & & &\\[-10pt]
 s&\ \log\mathit\Gamma(s)\ & \mathit\Gamma(s)&\ \mathit{\Gamma'(s)/\Gamma(s)}\ &
 s&\ \log\mathit\Gamma(s)\ & \mathit\Gamma(s)&\ \mathit{\Gamma'(s)/\Gamma(s)}\ \\[2pt]\hline
  & & & & & & &\\[-10pt]
\ 1.00\ & 0.00000 & 1.00000 & -0.5772 & 1.50 & \bar1.94754 & 0.8862 & 0.0365\\
 1.05 & \bar1.98834 &\ 0.9735\ & -0.4978 & 1.55 & \bar1.94884 & 0.8889 & 0.0822\\
 1.10 & \bar1.97834 & 0.9514 & -0.4238 &\ 1.60\ & \bar1.95110 & 0.8935 & 0.1260\\
 1.15 & \bar1.96990 & 0.9330 & -0.3543 & 1.65 & \bar1.95430 &\ 0.9001\ & 0.1681\\
 1.20 & \bar1.96292 & 0.9182 & -0.2890 & 1.70 & \bar1.95839 & 0.9086 & 0.2085\\
 1.25 & \bar1.95732 & 0.9064 & -0.2275 & 1.75 & \bar1.96335 & 0.9191 & 0.2475\\
 1.30 & \bar1.95302 & 0.8975 & -0.1692 & 1.80 & \bar1.96913 & 0.9314 & 0.2850\\
 1.35 & \bar1.94995 & 0.8912 & -0.1139 & 1.85 & \bar1.97571 & 0.9456 & 0.3212\\
 1.40 & \bar1.94805 & 0.8873 & -0.0614 & 1.90 & \bar1.98307 & 0.9618 & 0.3562\\
 1.45 & \bar1.94727 & 0.8857 & -0.0113 & 1.95 & \bar1.99117 & 0.9799 & 0.3900\\
 1.50 & \bar1.94754 & 0.8862 & +0.0365 & 2.00 & \bar1.00000 & 1.0000 & 0.4228\\[3pt] 
\end{array}
(11º)
終りに一,二の定積分を計算する.
[例 1]
s>0,q>0.
(18)

  \int_0^\infty e^{px}x^{s-1}{\cos{}\atop\sin{}}qx\,dx
  =\frac{\mathit\Gamma(s)}{(p^2+q^2)^{s/2}}{\cos{}\atop\sin{}}s\varphi,

  \left(\varphi=\mathrm{Arc\,}\tan\frac{q}p,\quad
  -\frac{\pi}2<\varphi<\frac{\pi}2.\right)
この古典的積分(Euler)の計算においても,複素積分が有効に応用される. 上記 (18) の両辺で \cos,\sin は対応するのであるが,\sin-i をかけて加えて一括すれば
(19)

  \int_0^\infty e^{-(p+qi)x}x^{s-1}\,dx
  =\frac{\mathit\Gamma(s)}{(p^2+q^2)^{s/2}}\,e^{-s\varphi i}.

  \alpha=p+qi=re^{\varphi i},\quad r=\sqrt{p^2+q^2},\quad \tan\varphi=\frac{q}p
とすれば,条件 p>0 によって \alpha の実部 \Re(\alpha)>0 だから,-\tfrac{\pi}2<\varphi<\tfrac{\pi}2.よって \alpha^s の主値を取れば
\alpha^{-s}=r^{-s}e^{-s\varphi i}.
故に (19) は次のように書かれる.
(20)

  \int_0^\infty e^{-\alpha x}x^{s-1}\,dx=\frac{\mathit\Gamma(s)}{\alpha^s}.
これを証明すればよいのである.\alpha=r>0 が実数ならば,これは
(21)

  \mathit\Gamma(s)=\int_0^\infty e^{-x}x^{s-1}\,dx
から,積分変数 xrx に変換して得られる.すなわち
(22)

  \int_0^\infty e^{-rx}x^{s-1}\,dx=\frac{\mathit\Gamma(s)}{r^s}.
\alpha が複素数の場合にも,(21) において変数 x\alpha x に変換すれば (22) が得られようけれども,積分が広義積分だから,極限の考察が煩わしいであろう.さて Cauchy の積分定理を応用すれば,その考察が見通しよくできるのである. 次の図に示す積分路に関して

  \int_{ABB'A'A} e^{-rz}z^{s-1}\,dx=0,
ただし
\begin{align}
  OA &= OA'=\varepsilon,\\
  OB &= OB'=R.
\end{align}
すなわち
(23)

  \int_{AB} - \int_{A'B'} + \int_C - \int_c =0.
ここで,例の通り \varepsilon\to 0,R\to\infty のときの極限を考察するのである. まず,

  \left|\int_C\right|
  \leqq \int_0^\varphi e^{rR\cos\theta}R^s\,d\theta
  < e^{rR\cos\varphi}R^s\varphi.
r>0,|\varphi|<\tfrac{\pi}2,\cos\varphi>0 だから

  \lim_{R\to\infty}\int_C=0.
同様に

  \lim_{\varepsilon\to 0}\left|\int_c\right|
  < e^{-r\varepsilon\cos\varphi}\varepsilon^s\varphi\to 0.
さて (22) によって

  \int_{AB}=\int_\varepsilon^R e^{-rx}x^{s-1}\,dx\to \frac{\mathit\Gamma(s)}{r^s}.
故に (23) から

  \lim_{\varepsilon\to 0,R\to\infty}\int_{A'B'}
  =\int_0^\infty e^{re^{\varphi i}x}\,dx=\frac{\mathit\Gamma(s)}{r^s},
すなわち

  e^{s\varphi i}\int_0^\infty e^{-\alpha x}x^{s-1}\,dx
  =\frac{\mathit\Gamma(s)}{r^s},
すなわち

  \int_0^\infty e^{-\alpha x}x^{s-1}\,dx=\frac{\mathit\Gamma(s)}{\alpha^s}.
これが (20) で,従って (18) が証明されたのである.
[例 2]
1>s>0 とすれば

  \int_0^\infty x^{s-1}\cos x\,dx=\mathit\Gamma(s)\cos\frac{s\pi}2,\quad
  \int_0^\infty x^{s-1}\sin x\,dx=\mathit\Gamma(s)\sin\frac{s\pi}2.
あるいは一括して(i^s=\exp\tfrac{s\pi i}2 を用いて)
(24)

  \int_0^\infty e^{-xi}x^{s-1}\,dx=\frac{\mathit\Gamma(s)}{i^s}.

上記 (20) において \alpha=i と置けば,この等式のようになるが,[例 1]では \Re(\alpha)>0 として計算したのであるから,\alpha=i の場合には通用しない.しかし[例 1]の仮定 s>0 を緊縮して,上記のように 1>s>0 とすれば,[例 1]と同様の方法によって (24) が得られるのである.

[例 1]の積分路において \varphi=\frac{\pi}2 とすれば(次の図),例の通り

  \int_{ABB'A'A} e^{-z}z^{s-1}\,dx=0,
すなわち
(23)

  \int_{AB} - \int_{A'B'} + \int_C - \int_c =0.
今度も \varepsilon\to 0,R\to\infty のとき \textstyle\int_C\to 0,\int_c\to 0 を確かめればよい.さて

  \left|\int_C\right|\leqq R^s\int_0^\frac\pi2 e^{-R\sin\theta}\,d\theta
  < R^s\int_0^\frac\pi2 e^{-Rm\theta}\,d\theta 
  < \frac{1}{R^{1-s}m}\to 0.
m§62,[例 1]の通りである.ここで仮定 1>s を用いた.次に

  \left|\int_c\right|\leqq
  \varepsilon^s\int_0^\frac\pi2 e^{-\varepsilon\sin\theta}\,d\theta
  < \varepsilon^s\frac\pi2 \to 0.
ここで仮定 s>0 を用いた. さて \varepsilon\to 0,R\to\infty のとき

  \lim\int_{AB}=\mathit\Gamma(s)
だから (24),従って標記の等式を得る.
[注意] 
広義積分 \textstyle\int_0^\infty x^{s-1}\sin x\,dx1>s>-1 なるとき収束する.[例 2]では

  \int_0^\infty x^{s-1}\sin x\,dx=\mathit\Gamma(s)\sin\frac{s\pi}2
1>s>0 として証明されたけれども,この等式は 1>s>-1 としても成り立つ.それをみるには (1º)(2º) に述べたのと同様の考察をするがよい.s=\sigma+it と書けば,この広義積分は 1>s_1\geqq\sigma\geqq s_0>-1 のとき x\to 0 でも,x\to\infty でも s に関して一様に収束するから,-1<\sigma<1 で正則なる s の解析函数である.よって解析的延長の原則によって上記等式は 1>\sigma>-1 なるとき成り立つ.(右辺は s=0 のとき正則.)

  1. これが解析的延長に際して,函数の解析的性質が保持される一例である.§63 参照.
  2. Artin, Einführung in die Theorie der Gammafunktion(Hamburg, 1931) による.この小冊子の初等的で巧妙なる方法を,本節および次節で所々に引用する.
  3. Stieltjes, Acta Mathematica, 10(1887).

[編集] 69.Stirling の公式

自然数 n の大なる値に対する n! を概略評価するために \log n\textstyle\int_{n-\frac12}^{n+\frac12}\log x\,dx を代用すれば,次のグラフの示すように

\log2+\log3+\cdots+\log(n-1)+\frac12\log n+\delta_n
  = \int_1^n \log x\,dx = n\log n - n+1,
すなわち

  \log(n-1)!=\left(n-\frac12\right)\log n -n+1 -\delta_n,
従って

  \mathit\Gamma(n)=(n-1)!=n^{n-\frac12} e^{-n} e^{1-\delta_n}.

誤差 \delta_n=\alpha_1-\beta_2+\alpha_2-\beta_3+\cdots-\beta_n は次の図から見えるように,項が単調に減少する交代級数で,n\to\infty のとき,それは収束する.

実際 \log x のグラフは上方に凸だから,接線の下側,弦の上側にある.従って \beta_i>\alpha_i,\alpha_i>\beta_{i+1}.また n\to\infty のとき \alpha_n\to 0,\beta_n\to 0 は明白.
よって n\to\infty のとき \delta_n\to\delta,そこで \delta=\delta_n\mu(n),e^{1-\delta}=a と置けば
(1)

  \mathit\Gamma(n)=a^{n-\frac12}e^{-n}e^{\mu(n)},
(2)

  \lim_{n\to\infty}\mu(n)=0.
定数 aWallis の公式(253 頁,(9)

  \sqrt\pi=\lim_{n\to\infty}\frac{(n!)^2 2^{2n}}{(2n)!\sqrt n}
から簡単に求められる.すなわち (1) から代入して,(2) を用いれば

  \sqrt\pi
  =\lim_{n\to\infty}
   \frac{n^2a^2n^{2n-1}e^{-2n}2^{2n}}{2na(2n)^{2n-\frac12}e^{-2n}\sqrt n}
  =\frac{a}\sqrt2
故に
\sqrt{2\pi}.
よって (1) から,n を掛けて

  n!\sim\sqrt{2\pi}\,n^{n+\frac12}e^{-n}.
これが Stirling の公式である[* 1]
Stirling の公式は簡単に得られたが,(1) は任意の実数に関して成り立つ.すなわち
\mathit\Gamma(s)=\sqrt{2\pi}s^{s-\frac12}e^{-s}e^{\mu(s)}, (s>0)  \left.\begin{align}\\[10pt]\\
  \lim_{s\to\infty}\mu(s)=0.
\end{align}\right\} (3) 
ただし
\mu(s)=\frac\theta{12s},\quad(0<\theta<1), 従って
今これを験証する.(3) が成り立つとするならば,\mathit\Gamma(s+1)=s\mathit\Gamma(s) に代入して

  \mu(s)-\mu(s+1)\left(s+\frac12\right)\log\left(1+\frac1s\right)-1.
右辺を \lambda(s) と書いて,ss+1,s+2,\ldots を代入して加え
(4)

  \mu(s)-\mu(s+n+1)=\sum_{\nu=0}^n\lambda(s+\nu).
さて,公式(186 頁 (9) において x=1/(2s+1) とする)

  \frac12\log\left(1+\frac{1}s\right)
  =\frac{1}{2s+1}+\frac{1}{3(2s+1)^3}+\frac{1}{5(2s+1)^5}+\cdots
から,両辺に 2s+1 を掛けて 1 を引けば,
(5)

  \lambda(s)=\left(s+\frac12\right)\log\left(1+\frac1s\right)-1
  =\frac{1}{3(2s+1)^2}+\frac{1}{5(2s+1)^4}+\cdots,
従って

  0<\lambda(s)<\frac{1}{3(2s+1)^2}\left(1+\frac{1}{(2s+1)^2}+\cdots\right)
(6)

  =\frac{1}{12s(s+1)}=\frac{1}{12s}-\frac{1}{12(s+1)}.
故に n\to\infty のとき,(4) の右辺の級数は収束する.従って \mu(s)\to 0 とする以上
(7)

  \mu(s)=\sum_{n=0}^\infty \lambda(s+n).
従って (6) から
\mu(s)=\frac{\theta}{12s},\quad(0<\theta<1)
でなければならない.しかし,(7) によって \mu(s) を定めたところで,はたして (3) が成り立つであろうか.それが験証を要する論点である.そこで,かりに (7)\mu(s) を用いて
f(s)=s^{s-\frac12}e^{-s}e^{\mu(s)}
と置くならば,前にした計算から
f(s+1)=sf(s)
を得る.一方

  \log f(s)=\left(s-\frac12\right)\log s-s+\mu(s)
から

  \frac{d^2}{ds^2}\log f(s)=\frac{1}s+\frac{1}{2s^2}+\mu''(s).
(5)(7) から \mu''(s)>0.すなわち \log f(s) は凸函数である.故に(252 頁,[注意])或る定数因子 a をもって
\mathit\Gamma(s)=af(s),
すなわち

  \mathit\Gamma(s)=as^{s-\frac12}e^{-s}e^{\mu(s)}.
定数 a=\sqrt{2\pi} はすでに s=n が自然数であるときに計算されている.すなわち (3) が確定した.
[附記] 
Stirling の公式

  \mathit\Gamma(s)=\sqrt{2\pi}s^{s-\frac12}e^{-s}e^{\mu(s)}
において
(8)

  \mu(s)=\sum_{n=0}^\infty\left\{
    \left(s+n+\frac12\right)\log\left(1+\frac{1}{s+n}\right)+1
  \right\}
であったが,\mu(s) を計算するために,次の公式が用いられる:
(9)
\mu(s)
  =\frac{B_1}{1\cdot2}\,\frac{1}s-\frac{B_2}{3\cdot4}\,\frac{1}{s^2}
   +\cdots+\frac{(-1)^{n-1}B_n}{(2n-1)2n}\,\frac{\theta}{s^{2n-1}}.
  \quad(0<\theta<1)
B_nBernoulli の数である.また最後の剰余項においてのみ,1 より小なる係数 \theta が乗ぜられるのである.これを継続して無限級数にすれば,収束しないが[* 2]s に対応して n を適当に定めて,剰余項を小さくすれば,計算に利用することができる.

次に (9) の証明を述べる.


  \lambda(s)=\left(s+\frac12\right)\log\left(1+\frac1s\right)-1
  = \int_0^1\frac{\frac12-x}{x+s}\,dx
を用いて,(8) から

  \mu(s)=\sum_{n=0}^\infty\int_0^1\frac{\frac12-x}{x+n+s}\,dx.
そこで
\begin{cases}
  \varphi(x)=\frac12-x & (0<x<1)\\
  \varphi(0)=0\\
  \varphi(x+1)=\varphi(x) & (x\leqq 0,1\leqq x)
\end{cases}
と置いて,\varphi(x) を周期 1 なる函数として定義すれば
(10)

  \mu(s)=\sum_{n=0}^\infty\frac{\varphi(x)\,dx}{x+n+s}
  =\sum_{n=0}^\infty\int_n^{n+1}\frac{\varphi(x)\,dx}{x+s}
  =\int_0^\infty\frac{\varphi(x)\,dx}{x+s}.
\varphi(x) は三角級数に展開される(240 頁).すなわち

  \varphi(x)=2\sum_{\nu=1}^\infty\frac{\sin2\nu\pi x}{2\nu\pi}.
(11)
\left.\begin{align}
  &\varphi_{2n}(x)
  =(-1)^{n-1}\,2\sum_{\nu=1}^\infty\frac{\cos2\nu\pi x}{(2\nu\pi)^{2n}},\\
  &\varphi_{2n+1}(x)
  =(-1)^{n+1}\,2\sum_{\nu=1}^\infty\frac{\sin2\nu\pi x}{(2\nu\pi)^{2n+1}}
\end{align}\right\}
と置けば
(12)

  \varphi_1(x)=-\varphi(x).
n>1 ならば,\varphi_n(x) に一様に収束して
(13)

  \varphi_{n+1}'(x)=\varphi_n(x).
また n=1 ならば,\varphi_1(x) の不連続点(x=0,\pm1,\pm2,\ldots)を含まない閉区間において (13) が成り立つ.また (11) から
(14)
\left.\begin{align}
  &\varphi_{2n+1}(0)=0,\\
  &\varphi_{2n}(0)
  =\frac{(-1)^{n-1}2}{(2\pi)^{2n}}\sum_{\nu=1}^\infty\frac{1}{\nu^{2n}}
  =\frac{(-1)^{n-1}B_n}{(2n)!}.
\end{align}\right\}
さて (13) を用いて,部分積分を繰り返し行えば

  \int\frac{\varphi_1(x)dx}{x+s}
  = \frac{\varphi_2(x)}{x+s}+\frac{\varphi_3(x)}{(x+s)^2}
   +\frac{2\varphi_4(x)}{(x+s)^3}+\cdots
   +(2n-2)!\int\frac{\varphi_{2n-1}(x)dx}{(x+s)^{2n-1}}.
(12) を用いて
\begin{align}
  \mu(s) &= \int_0^\infty\frac{\varphi(x)dx}{x+s}
  =-\int_0^\infty\frac{\varphi_1(x)dx}{x+s}\\
  &=\frac{\varphi_2(0)}s+\frac{\varphi_3(0)}{s^2}+\frac{\varphi_4(0)}{s^3}
    +\cdots-(2n-2)!\int_0^\infty\frac{\varphi_{2n-1}(x)dx}{(x+s)^{2n-1}}.
\end{align}
(14) から代入すれば,剰余項以外は (9) と合う.すなわち
(15)
\mu(s)
  =\frac{B_1}{1\cdot2}\,\frac{1}{s}-\frac{B_2}{3\cdot4}\,\frac{1}{s^3}
   +\cdots+\frac{(-1)^{n-2}B_{n-1}}{(2n-3)(2n-2)}\,\frac{1}{2^{2n-3}}
   +R_{2n-2},
ただし

  R_{2n-2}=-(2n-2)!\int_0^\infty\frac{\varphi_{2n-1}(x)dx}{(x+s)^{2n-1}}.
剰余項を (9) の形にするために,R_{2n-2} の右辺の積分に再び部分積分を行えば,
\begin{align}
  \int_0^\infty\frac{\varphi_{2n-1}(x)dx}{(x+s)^{2n-1}}
  &=\frac{-\varphi_{2n}(0)}{s^{2n-1}}
   +(2n-1)\int_0^\infty\frac{\varphi_{2n}(x)dx}{(x+s)^{2n}}\\
  &=(2n-1)\int_0^\infty\frac{\varphi_{2n}(x)-\varphi_{2n}(0)}{(x+s)^{2n}}\,dx.
\end{align}
(11) によって,この積分の符号は (-1)^n である.すなわち R_{2n-2} の符号は (-1)^{n+1} に等しい.さて (15) において nn+1 を代用すれば
(16)

  R_{2n-2}=\frac{(-1)^{n-1}B_n}{(2n-1)\cdot2n}\,\frac{1}{s^{2n-1}}+R_{2n}.
上に述べたように,R_{2n-2}R_{2n} とは反対の符号を有するから
(17)

  R_{2n-2}=\frac{(-1)^{n-1}B_n}{(2n-1)\cdot2n}\,\frac{\theta}{s^{2n-1}},
  \quad 0<\theta<1.
これを (15) へ代入すれば (9) を得る.
(16) から (17) を導くところが味噌である.a=b+c において,ac とが反対の符号を有するならば,0<\tfrac{a}{b}<1
手近な一例として,B_4=\tfrac{1}{30} が小さいことに着眼して,(9) において試みに n=4 とすれば

  \mu(s)=\frac{1}{12s}-\frac{1}{360s^3}+\frac{1}{1260s^5}-\frac{\theta}{1680s^7}.
故に s\geqq 4 とすれば(4^7=16384),剰余項の絶対値は \tfrac12\cdot10^{-7} よりも小さい.よって,この式の最初の三項を取って,区間 4\leqq s< 5 における \mu(s),従って (3) から \log\mathit\Gamma(s) が,小数 6 位まで計算される.それから \mathit\Gamma(s) の函数方程式によって,区間 1\leqq s<2 における \mathit\Gamma(s) が同じ精密度をもって計算される.
[注意] 
(11)Bernoulli の多項式(§64)の Fourier 級数(第6章参照)への展開を与える.すなわち

  B_n(x)=n!\,\varphi_n(x),\quad(0<x<1).
n=1 のときは B_1(x)=x-\tfrac12=\varphi_1(x) であった(233 頁).その他は 234 頁 (15) を用いて上記 (13) から帰納法で得られる.

  1. 記号 \sim は既述(117 頁).
  2. 一般項の係数 B_n/(2n-1)2n は限りなく増大する.236 頁(26)参照.

[編集] 練習問題(5)

(1+x)^\frac1xMaclaurin の級数に展開される.その収束半径は 1 である.最初の二,三の項は

  (1+x)^\frac1x=e\left(1-\frac{x}2+\frac{11}{24}x^2-\frac{7}{16}+\cdots\right).
[解]
f(x)=(1+x)^\frac1x=e^{\frac1x\log(1+x)}|x|<1 において正則であるが,x=-1 は分岐点であるから,Maclaurin 級数の収束半径は 1 である.展開は
\begin{align}\frac{f(x)}e
  &=e^{\frac{1}{x}\log(1+x)-1} = e^{-\frac{x}{2}+\frac{x^2}{3}-\cdots}\\
  &=1-x\left(\frac{1}{2}-\frac{x}{3}+\frac{x^2}{4}-\cdots\right)
   +\frac{x^2}{2!}\left(\frac{1}{2}-\frac{x}{3}+\cdots\right)^2
   -\frac{x^3}{3!}\left(\frac{1}{2}-\frac{x}{3}+\cdots\right)^3+\cdots
\end{align}
から求められる(定理 58).

このような問題は別段重要性を有しない.ただ解析性の応用の一例として挙げたのである.§25 の方法では,計算が冗長になる.

(2)
(不定形) x=a が解析函数 f(x),g(x) の零点ならば,

   \lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}=\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)}
  =\lim_{x\to a}\frac{f''(x)}{g''(x)}=\cdots
  =\lim_{x\to a}\frac{f^{(n)}(x)}{g^{(n)}(x)},
ただし \lim として \infty をも許容する.また,n は,f^{(n)}(a)=g^{(n)}(a)=0 でない最初の番号.例えば
[1º]

  \lim_{x\to 0}\frac{\tan x-x}{x-\sin x}=2.
[2º]

  \lim_{x\to 0}\frac{\log(1+x+x^2)+\log(1-x+x^2)}{x\sin x}=1.
[解]
[1º] では \tfrac{f'(x)}{g'(x)} を変形してから \lim へ行く. [2º] ではむしろ分母分子の Taylor 展開を用いるがよい.
(3)
[1º]

  \lim_{x\to 0}(1+ax)^\frac{1}{x}=e^a.
[2º]

  \lim_{x\to 0}\left(\frac{\tan x}{x}\right)^\frac{1}{x^2}=e^\frac{1}{3}.
[3º]

  \lim_{x\to+\infty}\left(\frac{2}\pi\mathrm{Arc\,tan}\,x\right)^x=e^{-\frac{2}\pi}
(4)

  \int_0^\infty\frac{\cos ax-\cos bx}{x^2}\,dx=\frac{\pi}2(b-a).
  \quad (a>0, b>0)
[解]
簡単のために e^{iaz}/z^2 に関して計算すれば

  \int_\varepsilon^\infty\frac{\cos ax}{x^2}\,dx
  =\frac{1}\varepsilon-\frac{a\pi}2+O\varepsilon.
を得る.その後 ab を代入して引くとよい.
(5)

  \int_0^\infty e^{-x^2}\cos 2ax\,dx=\frac{\sqrt\pi}2 e^{-a^2}.
[解]
これは既知である(§48,[例 6])が虚数積分を使って e^{-z^2}x=0,x=R,y=0,y=a で囲まれた矩形の周に沿って積分すれば簡単に求められる.
(6)

  \int_0^\infty\frac{dx}{ax^3+bx^2+c}=\frac\pi{2\sqrt c\sqrt{b+2\sqrt{ac}}}.
  \quad (a>0, b>0, c>0)
[解]
at^2+bt+c=0 が実根を有しないか,または二つの相異なる負根または相等しい負根を有するかに従って三つの場合が生ずるが,結果は上記の通り.
(7)

  \int_0^\infty\frac{dx}{(1+x^4)^{n+1}}
  =\frac\pi{2\sqrt 2}\,\frac{3\cdot7\cdots(4n-1)}{n!\,4^n}.
[解]
n=0 のときは半円の代りに図のような第一象限の積分路を用いて \textstyle\int_0^\infty\frac{dx}{1+x^4}=\frac\pi{2\sqrt 2}.それを

  \int_0^\infty\frac{dx}{a+x^4}\quad (a>0)
の形にして a に関して微分するがよい.
(8)

  \int_0^\infty\frac{x^{m-1}\,dx}{1+x^n}=\frac\pi{n\sin\frac{m\pi}n}.
ただし,m,n は正の整数で m<n
[解]
\alpha=e^{\frac{\pi i}n} は被積分函数の極点である.図のように角が \tfrac{2\pi}n なる扇形の周に沿って積分するとよい.
[注意] 
これから極限へ行って(242 頁,[例]

  \int_0^\infty\frac{x^{a-1}}{1+x}\,dx=\frac{\pi}{\sin a\pi}.\quad(0<a<1)
(9)

  \int_0^\infty \frac{\cos ax\,dx}{1+x^2}=\frac{1}{2}\pi e^{-a}.\quad(a>0)
 (Laplace
(10)
n\geqq 3 が奇数なるとき,Bernoulli の多項式 B_n(x) は区間 [0,1] において,x=0,\tfrac12,1 においてのみ 0 になる.n\geqq 2 が偶数のとき,B_n(x)[0,1] において,ちょうど二つの根 x_0,1-x_0 を有する.また,n>0 のとき,B_{2n+1}(x)(1,\tfrac12) において B_{2n}(0) と同じ符号,(\tfrac12,1) において反対の符号を有する.
[解]
n\geqq 3 を奇数とする.B_n(0)=0B_n(x) の式(233 頁)から,B_n(1)=B_n(\tfrac12)234 頁 (16) からわかる.さて,もしも B_n(x)[0,1] においてその他に根を有するならば,234 頁 (15) によって,B_{n-1}(x)[0,1] の内部において少くとも三つ,従って B_{n-2}(x) は少くとも二つ,すなわち x=\tfrac12 以外の根を有しなければならない.従って B_{n-4},B_{n-6},\ldots も同様であるが,B_3(x) は三次だから,これは不可能である.問題の後段は上記からわかる(234 頁 (16) 参照).
(11)

  \mathit\Gamma\Bigl(\frac{s}{n}\Bigr)
  \mathit\Gamma\Bigl(\frac{s+1}{n}\Bigr)\cdots
  \mathit\Gamma\Bigl(\frac{s+n-1}{n}\Bigr)
  =\frac{(2\pi)^\frac{n-1}{2}}{n^{s-\frac12}}\,\mathit\Gamma(s).
 (Gauss
[解]

  f(s)=n^s\mathit\Gamma\Bigl(\frac{s}{n}\Bigr)
  \mathit\Gamma\Bigl(\frac{s+1}{n}\Bigr)\cdots
  \mathit\Gamma\Bigl(\frac{s+n-1}{n}\Bigr)
と置いて f(s+1)=sf(s) から(252 頁,[注意]f(s)=a\mathit\gamma(s)s=1 として定数 a が求められる.252 頁 (7) を用いるのである.
(12)

  \int_0^1\frac{x^{m-1}\,dx}\sqrt{1-x^n}
  =\frac\sqrt{\pi}n
    \mathit\Gamma\Bigl(\frac{m}n\Bigr)\Big/
    \mathit\Gamma\Bigl(\frac{m}n+\frac12\Bigr).
 (m,n は正の整数)
特に(練習問題(3)(10) 参照)
\begin{align}
  &\int\frac{dx}\sqrt{1-x^4}=\frac{\mathit\Gamma(\frac14)^2}\sqrt{32\pi}, &
  &\int\frac{x\,dx}\sqrt{1-x^4}=\frac\pi4,\\
  &\int\frac{x^2\,dx}\sqrt{1-x^4}=\frac{\pi\sqrt{2\pi}}{\mathit\Gamma(\frac14)^2}, &
  &\int\frac{x^3\,dx}\sqrt{1-x^4}=\frac12.
\end{align}
[解]
\mathit\Beta(\tfrac{m}n,\tfrac12) に変換 x=t^n を行うとよい.
(13)
\left\{\begin{align}
  &\mathit\Gamma'(1)+C=0.\\
  &\frac{\mathit\Gamma'(n)}{\mathit\Gamma(n)}+C=1+\frac12+\cdots+\frac{1}{n-1}.
  \quad (n=2,3,\ldots)
\end{align}\right. (1)
(2)
CEuler の定数である.
[解]
(1)254 頁 (16) から得られる.(2) も同様.しかし \mathit\Gamma の函数方程式を用いて (1) からも得られる.
(14)
\mu(s)§69 の通りとすれば
\left\{\begin{align}
  &\frac{\mathit\Gamma'(s)}{\mathit\Gamma(s)}
    =\log s-\frac{1}{2s}+\mu'(s),\\
  &\mu'(s)
    =-\frac{B_1}{2s^2}+\frac{B_2}{4s^4}
     -\cdots+\theta\frac{(-1)^mB_m}{2ms^{2m}}.
  \quad (0<\theta<1)
\end{align}\right.
[解]
第二の等式は 262 頁 (15) から(剰余項は積分記号下で微分して)あそこと同様の方法で得られる.
[注意] 
C の計算
問題 (13) において \mathit\Gamma'(s)/\mathit\Gamma(s)問題 (14) によって計算すれば,C が計算される.今 n=10 とすれば,B_2=\tfrac{1}{30} だから,\mu'(s) の最初の一項だけを取って,

  C=1+\frac12+\cdots\frac19-\log 10+\frac1{20}+\frac1{1200}=0.577216
としても,小数第 6 位まで正しい結果が得られる.
(15)
実数軸上の区間 [a,b] において \varphi(x) が連続ならば,\zeta を線分 ab 外の任意の複素数とするとき

  f(\zeta)=\int_a^b\frac{\varphi(x)}{x-\zeta}\,dx
は正則なる解析函数である(\zeta に関する微分可能性!)線分 ab の代りに任意の曲線 C を取ってもよい.特に C が閉曲線ならば

  f(\zeta)=\int_C\frac{\varphi(z)\,dz}{z-\zeta}
C 内および C 外において正則なる解析函数である.
[注意] 
それらは一般に別々の解析函数である.\varphi(z)C 上で連続であるだけで,解析函数であるのではないから,これはCauchy の積分公式とは違う.
(16)
原点 0 を中心とする半径 R の円周 C に関するCauchy の積分公式

  f(a)=\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{f(z)\,dz}{z-a}
を実数に引き直すために,f(z)=u+vi と置いて,極座標を用いる.すなわち C 上では z=Re^{\theta i},また C 内の a=re^{\varphi i}\,(r<R) とすれば
(1)

  u(r,\varphi)=\frac{1}{2\pi}\int_0^{2\pi}
     \frac{R^2-r^2}{R^2-2Rr\cos(\theta-\varphi)+r^2}
   \,d\theta,
(2)

  v(r,\varphi)=v_0+\frac{1}{\pi}\int_0^{2\pi}
      \frac{Rr\sin(\varphi-\theta)}{R^2-2Rr\cos(\theta-\varphi)+r^2}
  \,d\theta.
ただし v_0 は原点における v の値である(Poisson).
[解]
a'C 外の点とすれば,積分定理によって
\int_C\frac{f(z)\,dz}{z-a'}=0.
故に
(3)

  f(a)=\frac{1}{2\pi i}\int_C f(z)\left(\frac{1}{z-a}\pm\frac{1}{z-a'}\right)\,dz.
これを用いて計算が短縮される.さて問題を簡約して,C を単位円(R=1),また a を実数,0\leqq a<1 とすることができる.そのとき a'=\tfrac{1}a として (3)\pm- とすれば (1) を得る.(1) を手際よく出すには

  f(a)-f(0)
  =\frac{1}{2\pi i}\int_C f(z)\left(
      \frac{1}{z-a}+\frac{1}{z-\frac{1}{a}}-\frac{1}{z}
  \right)\,dz
を用いるがよい.
(17)
(1)

 \frac{1}\sqrt{1-2xz+z^2}=\sum_{n=0}^\infty P_n(x)z^n,
係数 P_n(x)Legendre の球函数(§36)である.収束半径は |x|\leqq 1 ならば 1 で,|x|>1 ならば 1 よりも小さい.ただし平方根は z=0 なるとき 1 なる枝を取るのである,また x は実数である.
[解]
収束半径は 1-2xz+z^2=0 の根によって決まる.z に関して微分して (1) と比較すれば 121 頁公式 (7) が得られるから,P_n(x)Legendre の球函数であることがわかる.
(18)

  P_n(x)=\frac{1}{n!\,2^n}\,\frac{d^n(x^2-1)^n}{dx^n}119 頁 (1))から Cauchy の積分公式(215 頁 (4))によって

  P_n(x)=\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{(z^2-1)^n\,dz}{2^n(z-x)^{n+1}}.
C は点 x を含む閉曲線である.今 -1<x<1 として,x を中心とする半径 \sqrt{1-x^2} の円を C とすれば

  P_n(x)=\frac{1}\pi\int_0^\pi(x+i\sqrt{1-x^2}\cos\varphi)^n\,d\varphi.
 (Legendre
[解]
C の周上で 
  z=x+\sqrt{1-x^2}e^{\theta i},\frac{z^2-1}{z-x}=z+x-\frac{1-x^2}{z-x} なることを用いる.
(19)

  P_n(x)=\pm\frac{1}\pi\int_0^\pi\frac{d\varphi}{(x+i\sqrt{1-x^2}\cos\varphi)^{n+1}},
  \quad 0<|x|<1,
 根号は x の正負に従う. (Laplace
[解]
z 平面上 1-2xz+z^2=0 の二つの根 \alpha,\beta を結ぶ線分 \overline{\alpha\beta}z 平面から除けば

  \frac{1}{z^{n+1}\sqrt{1-2xz+z^2}}
z=0 における極のほか,全平面で(z=\infty でも)正則であるから,\overline{\alpha\beta} を包む閉曲線を C とすれば

  -\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{dz}{z^{n+1}\sqrt{1-2xz+z^2}}
z=0 における留数に等しい.それは問題 (17) の (1) によって P_n(x) に等しい.一方 C は極限において \alpha\beta 間を往復する二重線分としてよい.そのとき \textstyle\int_C から標記の積分を得る.\overline{\alpha\beta} 上では z=x+i\sqrt{1-x^2}\cos\varphi.(0\leqq \varphi\leqq\pi
(20)
z=af(z)k 次の零点ならば z=a\tfrac{f'(z)}{f(z)} の一次の極で,留数は k に等しい.z=af(z)k 次の極でも,z=a\tfrac{f'(z)}{f(z)} の一次の極であるが,留数は -k に等しい.
(21)
領域 K において f(z) は一意的で,極よりほかの特異点(真性特異点)をもたないとき,f(z)K において有理型meromorphic)であるという.そのとき K 内の閉域において f(z) の極の数は有限である.f(z) が一定の値 c を取る点も同様である.
[解]
問題の条件の下において,f(z) の極も,f(z)-c の零点も,孤立するのである.219 頁,[注意]と同様.
(22)
単連結な領域 K において f(z) は有理型で,CK 内で f(z) の零点および極を通らない閉曲線とする.然らば C の内部に含まれる f(z) の零点および極の数(次数を計算に入れて)を n および p とすれば

  n-p=\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{f'(z)}{f(z)}\,dz
に等しい.すなわち zC 上を正の向きに一周するとき,\log f(z)(任意の枝)の増加は 2(n-p)\pi i に等しい.
[解]
問題 (20) の応用.
(23)
f(z),\varphi(z)K において正則,C は前の問題と同様として,なお C 上で常に |\varphi(z)|<|f(z)| とするならば,C の内部において
f(z)+\varphi(z)=0
f(z)=0 と同数の根を有する.[Rouché の定理]
[解]
前の問題の応用である.zC を一周するときの

  \log(f(z)+\varphi(z))=\log f(z)+\log\left(1+\frac{\varphi(z)}{f(z)}\right)
の増加をみればよい.C 上で |\tfrac{\varphi(z)}{f(z)}|<1 であることによる.

  1. 問題 (1)-(19) は実数への応用である
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