解析概論/第4章/指数函数と三角函数との関係 対数と逆三角函数
[編集] 54.指数函数と三角函数との関係 対数と逆三角函数
の収束に関して述べたことは,係数
および変数
が複素数である場合にも通用することは前に述べた.特に指数級数

だから,
が任煮の複素数であるときにも絶対に収束する.よってその和として指数函数
の定義を
が複素数なる場合にも延長することができる.
拡張された指数函数に関しても,加法定理

に関し、

なる項をまとめて,

特に複素数
に関して

さて



は実数,従って
だから,
の絶対値は
で,偏角は
である.
と
とは同時に
にはならないから,
は
の有限の値に対して,決して
に等しくない.
特に
を整数とすれば,(1) から


は周期函数で,
がその周期である.
逆に
を
の周期とすれば,
すなわち
.
だから
.よって
と置けば
.
だから,それが
の絶対値である.すなわち
,従って
,
,すなわち
.故に
.すなわち
の周期は
の整数倍だけである.すなわち,
が基本周期である.
(1) において
を
に変えて


以上
を実数としたけれども,(2) において
を任意の複素数として
を複素変数にまで拡張することができる.その場合
の加法定理およびそれから派生する無数の恒等式はそのまま通用する.例えば

も同様である.
しかし複素変数まで行けば,三角函数は (2) のように単なる略記法としてのみ存在理由を有するのである.

を
; または
; またはドイツ式では
などとも略記する.



のために
になる.同様に

次に
と
とのグラフを掲げる.
のグラフは懸垂線(catenary)である.
の逆函数は
で表わされる.今

に関して解いて

を実数とすれば,
だから,



だから,

の逆函数である.
の逆函数を
,または略して
などで表わす.変数を
と書けば

等辺双曲線
上の点
の座標を
,扇形(sector)
の面積を
とすれば,


扇形 
これによって三角函数と双曲線函数との類似が明瞭である.三角函数の場合には円
において,扇形
の面積が
で,
.
の定義が複素数にまで拡張される. 今
とおいて




だから,実数なる
は確定であるが,
は任意の整数としてもよいから,
は確定しない.故に

の整数倍だけ異なる無数の値を有する.それは
の周期性から考えて当然である.今
とすれば,
の虚数部は
と
との間に限られる.引用上の便利のために,それを
の主値といい,それをかりに
と書く.特に
が実数ならば,
なるとき
の主値は実数,また
なるとき,主値の虚数部は
である.例えば
.同じように
,等々.
(6) からみえるように,
の多意性は虚数部における
の多意性に基づく.故に今定点
において
の一つの値をきめて,
と
とを
を通らない曲線
で結んで,
がその曲線上を連続的に動くとすれば,
も連続的に変わるから
における
の値も確定する.例えば右の図で,
(すなわち
)とするならば,
が曲線
を通って
に達するときには,
は主値(
)になるが,もしも曲線
を通るならば
になる.
を
のような区間に限れば
は確定する.それを
の一つの枝という.等式
は三つの
を任意の枝にしては成り立たない.そのとき両辺は
の整数倍だけ違うことがある.すなわち

のとき右辺の
を主値とすれば
だから
を得る.それはまちがいではないが,
は主値でない.
で表わすことができる.すなわち
または 
に関して解いて
に移れば

を主値として



の主値である.故に

の負の値を取るならば


の他の枝を取るならば
だから,
は
だけ変わる.すなわち二重符号
は
と
とに対応する
の二組の枝を与えるのである. 同様に

を
の主値とするならば,今度は



の他の枝からは,それぞれ
の他の枝
および
が生ずる.
の場合は少しく様子が違うが,かえって簡明である.今





のために
の他の枝からは
が生ずる.
変数を実数に限っても
の多意性が
の多意性の下に統一される.
実変数に関する三角函数,双曲線函数は複素変数に関する指数函数の一断面にほかならないから,それらの逆函数がすべて対数函数に包括されるのである.この認識は大切である.