解析概論/第4章/巾級数

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[編集] 52.巾級数

巾級数とは \textstyle\sum_{n=0}^\infty a_n(x-\alpha)^n の形の級数であるが,x-\alphax を代用して

(1)
\sum a_nx^n

に関して述べる.これを x の巾級数といい,一般的に P(x) と略記する.巾級数は解析学で最も重要な級数である.

巾級数の収束に関しては,次に掲げる Abel の定理(1826)が基本的である.

定理 47.
もしも巾級数 (1)x=x_0 なるとき収束するならば,|x|<|x_0| なる x のすべての値に関して絶対収束し,また領域 |x|<|x_0| に含まれる任意の閉領域において一様に収束する.
[証]
仮定によって \textstyle\sum a_nx_0^n は収束するから,\textstyle\lim_{n\to\infty}a_nx_0^n=0.故に M を任意の正数とするとき,十分大なる n に関して常に |a_nx_0^n|<M になる. 今 0<\theta<1 として |x|\leqq\theta|x_0| とすれば,
|a_nx^n|\leqq|a_nx_0^n|\theta^n<M\theta^n.
従って

  \sum_{\nu=n}^m|a_\nu x^\nu|<\frac{M\theta^n}{1-\theta}\to 0.
故に (1) は閉区域 |x|\leqq\theta|x_0| において,絶対にかつ一様に収束する.
(証終)
[注意 1] 
上記証明からみえるように,x=x_0 のとき (1) が収束しなくても,|a_nx_0^n|<M なるとき,すなわち a_nx_0^n が有界ならば,定理は成り立つ.

定理 47 は巾級数 P(x) の係数 a_n および変数 x が複素数である場合にも通用する.

x のすべての値に関して収束するべき級数もあり,また x=0 の外では発散する巾級数もあるが,それらを除けば,もしも巾級数が x の或る値に対して発散すれば,絶対値においてそれよりも大なる x に対して発散する(上記定理の対偶).故にこの巾級数を収束せしめる |x| の値に上限がある.それを r とすれば,巾級数は x が原点を中心とする半径 r の円内にある(|x|<r)とき収束し,x がその円の外にある(|x|>r)とき発散する.この円を巾級数の収束円といい,その半径 r収束半径という.巾級数が任意の x に対して収束すれば,r=\infty とし,x=0 以外では収束しないときには,r=0 とする.

定理 48.
巾級数 \textstyle\sum a_nx^n の収束半径 r は次の値を有する:
\frac1r=\varlimsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{|a_n|}.
Cauchy-Hadamard の定理]
[証]
\textstyle l=\varlimsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{|a_n|} と置けば
\varlimsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{|a_nx^n|}=l|x|.
故に l|x|<1 ならば \textstyle\sum|a_nx^n| は収束し,l|x|>1 ならば発散する(§44).故に収束半径を r とすれば,r=\tfrac{1}{l}.特に l=0 ならば,任意の x に関して \textstyle\sum a_nx^n は収束するから,r=\infty.また l=\infty ならば,x\ne 0 なるとき \textstyle\sum a_nx^n は発散するから,r=0
(証終)
[注意 2] 
\textstyle\lim_{n\to\infty}\frac{|a_{n+1}|}{|a_n|}=l が存在するときは,r=\tfrac{1}{l}l=0 ならば r=\inftyl=\infty ならば r=0§44).この判定法は応用上しばしば便利である.

巾級数 \textstyle f(x)=\sum_{n=0}^\infty a_nx^n を項別に微分すれば,

(2)
f'(x)=\sum_{n=1}^\infty na_nx^{n-1}

を得る.これは,巾級数 (1) 収束し,かつ,(2) の右辺の巾級数が一様収束する区域において正当である(定理 40).然るに級数 (2) は原級数 (1) と同一の収束半径を有する.実際,収束に関しては (2) の各項に x を掛けても影響はないから

\varlimsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{n|a_n|}

を考察すればよいのだが,\sqrt[n]n\to 1 だから,これは \varlimsup\sqrt[n]{|a_n|} に等しいこと明白であろう.

故に巾級数は,その収束円の内部において,何回でも項別に微分積分することができて,そのとき生ずる巾級数はすべて原級数と同一の収束半径を有する.

上記を要約して次の定理を得る.

定理 49.
巾級数 \textstyle\sum a_nx^n は収束円の内部において x の連続函数である.それを f(x) とすれば,f(x) は各階の微分可能で

  f^{(k)}(x)=\sum_{n=k}^\infty n(n-1)\cdots(n-k+1)a_nx^{n-k}=k!\,a_n+\cdots,
従って
a_k=\frac{f^{(k)}(0)}{k!}.
故に
f(x)=\sum a_nx^n
f(x)Taylor 展開である.

故に f(x) が巾級数に展開されるならば,その展開は唯一である.すなわち \textstyle f(x)=\sum a_nx^n=\sum b_nx^n ならば,a_n=b_n=\tfrac{f^{(n)}(0)}{n!}

これを巾級数の一意性の定理という.
[注意 1] 
定理 49 は次のように初等的に証明される.
(1º)
\textstyle\sum a_nx^n の収束円内の一点を x\,(x\ne 0) とし,同じく収束円内に |x_0|>|x| なる x_0 を取って |x_0|/|x|=k>1 とする.然らば,n\to\infty のとき,a_n\ne 0 なる項に関しては,

  \frac{|na_nx^{n-1}|}{|a_nx_0^n|}=\frac{n}{k^n}\frac{1}{|x|}\to 0.
すなわち左辺の比は有界である.さて \textstyle\sum|a_nx_0^n| は収束するから,\textstyle\sum|na_nx^{n-1}| も収束する((IV)).逆に,\textstyle\sum|na_nx^n| の収束する点において,\textstyle\sum|a_nx^n| の収束することは明らかである.
(2º)
定理 40 では CBから導いたが,巾級数に関しては,項別微分の可能性は直接に簡単に証明される.今 \textstyle f(x)=\sum a_nx^n の収束半径を r,収束円内の二点を x,x+h とする.すなわち |x|<\rho<r,|x+h|\leqq\rho<r とする.然らば
(3)
\begin{align}
  \frac{f(x+h)-f(x)}{h}&=\sum_{n=0}^\infty a_n\frac{(x+h)^n-x^n}{h}\\
  &=\sum_{n=1}^\infty a_n\{(x+h)^{n-1}+(x+h)^{n-2}+x+\cdots+x^{n-1}\}.
\end{align}
この一般項は絶対値において,n|a_n|\rho^{n-1} を越えない.然るに \rho<r だから \textstyle\sum n|a_n|\rho^{n-1} は収束する.故に (3)|h|\leqq\rho-|x| なる h に関して一様に収束する,従って h に関して連続である.故に h\to 0 の極限へ行って

  f'(x)=\lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}=\sum_{n=1}^\infty na_nx^{n-1}.
[注意 2] 
上記,収束する巾級数で表わされる函数を f(x) と置いたが,もしも反対にまず函数 f(x) が与えられて,それが或る点(簡明のため x=0 とする)において,各階微分可能として Maclaurin 級数

  a_0+a_1x+a_2x^2+\cdots,\quad a_n=\frac{f^{(n)}(0)}{n!},
を書いてみる.それが収束する場合に,この巾級数が表す函数は f(x) に等しいであろうか? それは保証されない! 一例として

  f(x)=e^{-\frac{1}{x^2}}\quad (x\ne 0),\quad f(0)=0
とする.然らば x\ne 0 のとき

  f'(x)=\frac{2}{x^3}e^{-\frac{1}{x^2}},
 一般に 
  f^{(n)}(x)=\frac{G_n(x)}{x^{3n}}e^{-\frac{1}{x^2}},
ただし,G_n(x)2(n-1) 次の多項式である.従って \textstyle\lim_{x\to 0}f^{(n)}(x)=0 であるが,実は f(x) の定義によって f^{(n)}(0)=0 である(定理 23).この場合 f(x) から生ずる巾級数 \textstyle\sum a_nx^n は常に 0 に等しい.それは f(x) すなわち e^{-\frac{1}{x^2}}x=0 以外では表わさない.Taylor の公式から,剰余項の考察なしに,Taylor 級数は出せないから,これはふしぎでない.

巾級数 P(z) は収束円の内部では z の連続函数であるが,収束円の周上における巾級数の動作に関しては一般的の断言をすることができない.それは収束円の周上の各点において発散することもあり,各点において収束することもあるが,また或る点では発散し,或る点では収束することもある.

例えば
(4)

  1+z+z^2+\cdots+z^n+\cdots
(5)

  1+\frac{z}{1}+\frac{z^2}{2}+\cdots+\frac{z^n}{n}+\cdots
(6)

  1+\frac{z}{1^2}+\frac{z^2}{2^2}+\cdots+\frac{z^n}{n^2}+\cdots
の収束半径はいずれも 1 であるが,収束円の周上(|z|=1)で,(4) は常に発散,(5)z=1 の他は収束(条件収束),(6) は常に収束(絶対収束)する.

さて収束の場合に関して,Abel が次の有名なる定理を証明した.

定理 50.
Abel の定理] 巾級数 \textstyle f(z)=\sum a_nz^n が収束円の周上の点 z=\zeta において収束すれば,z が半径に沿って \zeta に近づくとき,

  \lim_{z\to\zeta}f(z)=\sum_{n=0}^\infty a_n\zeta^n.
[注意] 
これは自明ではない.上記等式は詳しく書けば

  \lim_{z\to\zeta}\left(\lim_{n\to\infty}\sum_{\nu=0}^n a_\nu z^\nu\right)
 =\lim_{n\to\infty}\left(\lim_{z\to\zeta}\sum_{\nu=0}^n a_\nu z^\nu\right)
であるが,二つの \lim の順序を無頓着に変えてはならないことは,すでにしばしば述べたとおりである.定理 50 の意味は,右辺の極限値が確定ならば,左辺の極限値も確定で,かつ,それが右辺の極限値に等しいことをいうのである,その逆は真でない,すなわち左辺の極限値が確定でも,等式は必らずしも成り立たない. 例えば
\frac{1}{1+z}=1-z+z^2-\cdots\qquad(|z|<1)
において \textstyle\lim_{z\to1}\frac{1}{1+z}=\frac12 であるけれども,z=1 のとき右辺は収束しない.
[証]
z=\zeta x と置いて級数 \textstyle\sum a_nz^n=\sum a_n\zeta^n x^nx の巾級数にすれば,その収束半径は 1z=\zeta には x=1 が対応する.よって問題を単純化して,初めから
f(x)=\sum a_n x^n
の収束半径を 1 として
A=a_0+a_1+a_2+\cdots
が収束すると仮定して,\textstyle\lim_{x\to1}f(x)=A を証明しよう. Abel の級数変形法を引用する(§45,(VIII)).\textstyle\sum a_n が収束するから,\delta>0n が対応して

  \sigma_m=\sum_{\nu=n}^{n+m}a_\nu,\quad|\sigma_m|<\delta,\qquad(m=0,1,2,\ldots).
よって 0\leqq x\leqq 1 とすれば,x^n\geqq x^{n+1} から
\begin{align}
 \left|\sum_{\nu=n}^{n+m}a_\nu x^\nu\right|
 =|&\sigma_0(x^n-x^{n+1})+\cdots+\sigma_{m-1}(x^{n+m-1}-x^{n+m})+\sigma_mx^{n+m}|\\
 &\leqq \delta x^n\leqq \delta.
\end{align}
故に \textstyle f(x)=\sum_{n=0}^\infty a_n x^n0\leqq x\leqq 1 において一様収束,従って連続であるから,\textstyle\lim_{x\to1}f(x)=f(1)=\sum a_n=A
(証終)
[附記] 
級数 \textstyle A=\sum a_n,B=\sum b_n\,(n=0,1,\ldots) が収束するとき,\textstyle C=\sum c_n,c_n=\sum a_pb_q\,(p+q=n) とする.然らば巾級数 \textstyle A(x)=\sum a_n x^n,B(x)=\sum b_n x^n|x|<1 なるとき絶対収束をするから,\textstyle C(x)=\sum c_n x^n=A(x)B(x).さて Abel の定理によって,x\to1 のとき A(x)\to A,B(x)\to B でまた C が収束すれば,C(x)\to C.すなわち A,B,C が収束すれば,AB=Ca_n,b_n は複素数でもよい.

次に巾級数の二,三の例を掲げる.

[例 1]
最も簡単なのは幾何級数

 \frac{1}{1-x}=1+x+x^2+\cdots+x^n+\cdots
で,収束半径は
r=1.
0 から x\,(|x|<1) まで積分すれば
(7)

  -\log(1-x)=x+\frac{x^2}2+\frac{x^3}3+\cdots+\frac{x^n}n+\cdots.
x-x に変換すれば
(8)

  \log(1+x)=x-\frac{x^2}2+\frac{x^3}3-\cdots+(-1)^{n-1}\frac{x^n}n+\cdots,
(7)(8) とを加えて
(9)

  \frac12\log\frac{1+x}{1-x}=x+\frac{x^3}3+\frac{x^5}5+\cdots+\frac{x^{2n+1}}{2n+1}+\cdots.
この級数の収束半径も 1 である(182 頁,[注意 2]).また

  \frac{1}{1+x^2}=1-x^2+x^4-\cdots,\quad(|x|<1)
から積分して
(10)

  \mathrm{Arc\,tan}\,x=x-\frac{x^3}3+\frac{x^5}5-\cdots,\quad(|x|<1).
[注意] 
\pi の計算
級数 (10)x=1 のときに収束する.故に定理 50 によって
\frac\pi4=1-\frac13+\frac15-\frac17+\cdots. [Leibniz の級数]
この級数は収束緩慢で,\pi の計算には不適当である.さて \tan\alpha=\tfrac15 とすれば,4\alpha\tfrac\pi4 に近い(六十分法でいえば,\alpha は約11°19′).実際計算すれば,

  \tan2\alpha=\frac{5}{12},\quad\tan4\alpha=1+\frac{1}{119},\quad
  \tan\!\left(4\alpha-\frac\pi4\right)=\frac{\tan4\alpha-1}{\tan4\alpha+1}=\frac{1}{239},
従って

 \frac\pi4=4\mathrm{Arc\,tan\,}\frac15-\mathrm{Arc\,tan\,}\frac{1}{239},
  [Machin,1796].
故に
(11)

 \pi=16\left(\frac{1}{5}-\frac{1}{3\cdot5^3}+\frac{1}{5\cdot5^5}-\cdots\right)
     -4\left(\frac{1}{239}-\frac{1}{3\cdot239^3}+\cdots\right).

これは急速に収束する.今 (11) を用いて,\pi を小数第5位まで求めるつもりで,次の計算を試みる.

\begin{array}{r|ccrr}
 \dfrac{16}{5}=3.200\;000\quad & & [1] & & \\ \\
 \dfrac{16}{5^3}=0.128\;000\quad &\quad\div3=0.042\;000 & [2] & 0.042\;666\\[-5pt]
 & & & \begin{array}{r}0.000\;029\!\!\!\;\!\\[-2pt]0.016\;736\!\!\!\;\!\\\hline\end{array}\\[-5pt]
 \dfrac{16}{5^5}=0.005\;120\quad &\quad\div5=0.001\;024 & [3] & 0.059\;431 & [2]+[4]+[6]\\ \\
 \dfrac{16}{5^7}=0.000\;204\quad &\quad\div7=0.000\;029 & [4] & \begin{array}{r}
  3.201\;024\!\!\!\;\!\\[-1pt]-0.059\;431\!\!\!\;\!\\\hline\end{array} & \begin{align}
 &[1]+[3]\\[-4pt]-(&[2]+[4]+[6])\!\!\end{align}\\
 & & & 3.141\,593\\
 \dfrac{16}{5^9}=0.000\;008\quad &\quad\div9=0.000\;000 & [5] & & \\ \\
 \dfrac{4}{239}=0.016\;736\quad & & [6] & & \\ \\
 \dfrac{4}{239^2}=0.000\;000\quad & & [7]
\end{array}

上記 (11) の級数は二つとも交代級数であるから,或る濃い以下を省略するときに生ずる絶対誤差は省略されたる最初の項以内である(§45).上記の計算では [5],[7] からみえるように,誤差は末位の +2 以内である.また [1],[3] は正確で,[2],[4],[6] から末位の -3 以内の誤差が生ずる.故に \pi=3.141\,593 とすれば誤差は末位において +2 ないし -3 である.

William Shanks は,上記 Machin の式を用いて,\pi の値を小数 707 位まで計算した(1873)が,その後,D.F.FergusonShanks の計算は小数 527 桁を超える処で誤算があったことを発見した(1947).1949 年に,J. von Neumann が,電子計算機 ENIAC で,\pi および e の値を十分先まで計算して,数字分布の統計的尺度を知る可能性に興味があることを表明した.それが機縁となって,1950 年 6 月に ENIACe および \pi の値を小数 2000 位以上計算し,当時計算されていた \pi の小数808位までは,一致することを確認した.MTAC{{{2}}}[* 1])vol.4,1950,pp.14―15 に,ENIAC の計算した \pi の値の小数 2035 位まで,e の値の小数 2010 位までが載っている.その後電子計算機の急速な進歩に伴って,\pi のみならず,対数などの計算は,欲するならば検算を伴いつつ小数一万桁をも超えて計算できるようになった.\pi の初めの 30 桁は \pi=3.14159\,26535\,89793\,23846\,26433\,83279

対数の計算には (9) が用いられる.(9) において x=\tfrac{1}{2n+1}\,(n\geqq 1) とすれば
(12)

  \log(n+1)-\log n
  =2\left\{\frac{1}{2n+1}+\frac{1}{3(2n+1)^3}+\frac{1}{5(2n+1)^5}+\cdots\right\}.
この級数は急速に(特に n が大きいとき)収束する. n=1 としても(13 項を取れば)

  \log 2=\frac23\left(1+\frac{1}{3\cdot9}+\frac{1}{5\cdot9^2}+\cdots\right)
  =0.69314\,71805\,599
を得る.また (12) において n=4 とすれば

 \log 5=2\log 2+\frac29\left(1+\frac{1}{3\cdot81}+\frac{1}{5\cdot81^2}+\cdots\right).
今度は 6 項を取って

 \log 5=1.60943\,79124\,340
を得る.よって

 \log 10=\log 2+\log 5=2.30258\,0929\,939,

  M=\frac{1}{\log 10}=0.43429\,44819\,033
を得る.M は常用対数の率(modulus)である.すなわち
\log_{10}x=M\log x.
常用対数に関しては (12) から
(13)

  \log_{10}(n+1)-\log_{10}n=2M\left\{
    \frac{1}{2n+1}+\frac{1}{3(2n+1)^3}+\frac{1}{5(2n+1)^5}+\cdots
  \right\}.
1 から 10^5 までの整数の常用対数を求めるには,5 位の整数の対数を計算すればよい(例えば \log_{10}123=-2+\log_{10}12300).その場合,(13) において右辺の初項だけを取って

  \log_{10}(n+1)-\log_{10}n=\frac{2M}{2n+1}+\varepsilon_n
としても,誤差は(2M<1,n\geqq 10000 だから)

  \varepsilon_n<\frac{1}{3(2n+1)^3}\left\{1+\frac{1}{(2n+1)^2}+\cdots\right\}
  =\frac{1}{12n(n+1)(2n+1)}<\frac{1}{24n^3}<\frac{1}{2\cdot10^{13}}.

よって n=10000 から始めて,次々に \log_{10}n\tfrac{2M}{2n+1} を加えて \log_{10}(n+1) の近似値を求めて行けば,n=10^5 までに誤差はかさむけれども,最悪の場合 \tfrac{1}{2\cdot10^8} を超えないであろう(七桁対数表製作の理論).

対数を計算する他の方法は,整数の対数を素数の対数から導くことである.

今公式 (9) において x=\tfrac{1}{2p^2-1}\,(p>1) とすれば
\frac{1+x}{1-x}=\frac{p^2}{p^2-1}.
故に
(14)

  \log p=\frac12\log(p-1)+\frac12\log(p+1)+\frac{1}{2p^2-1}+\frac{1}{3(2p^2-1)^3}+\cdots.
p が整数で,p+1 が因数に分解されるならば,(14) から \log pp よりも小なる整数の \log と,急速に収束する級数との和として求めることができる.故に \log 2 を求めておけば,順次にすべての素数 p\log が得られ,従って,たし算によってすべての整数の \log(自然対数)が得られる[* 2]Adams\log 2,\log 3,\log 5,\log 7 を 262 桁まで計算した[* 3]
[例 2]
超幾何級数
\begin{align}
  F(\alpha,\beta,\gamma,x)
  =1&+\frac{\alpha\cdot\beta}{1\cdot\gamma}x
     +\frac{\alpha(\alpha+1)\cdot\beta(\beta+1)}{1\cdot2\cdot\gamma(\gamma+1)}x^2+\cdots\\
    &+\frac{\alpha(\alpha+1)\cdots(\alpha+n-1)\cdot\beta(\beta+1)\cdots(\beta+n-1)}
           {n!\,\gamma(\gamma+1)\cdots(\gamma+n-1)}x^n+\cdots.
\end{align}
\alpha,\beta は任意(実数または複素数)であるが,\gamma0 または負の整数であってはならない.また \alpha あるいは \beta が負の整数ならば有限級数になる.その他の場合,収束半径は 1 である.――第 n+1 項と第 n 項との係数の比

  \frac{(\alpha+n-1)(\beta+n-1)}{n(\gamma+n-1)}\to 1.
\alpha,\beta,\gamma に種々の値を与えるとき,超幾何級数の特別の場合として,多くのよく知られた級数が生ずる.例えば

  F(1,1,2;x)=1+\frac{x}2+\frac{x^2}3+\cdots+\frac{x^n}{n+1}+\cdots
  =\frac{-1}{x}\log(1-x).

  F(-\mu,\mu,\mu,x)=1-\frac{\mu}1x+\frac{\mu(\mu-1)}{2!}x^2-\cdots
    +(-1)^n\frac{\mu(\mu-1)\cdots(\mu-n+1)}{n!}x^n+-\cdots.
これは,いわゆる二項級数で,|x|<1 のとき (1-x)^\mu を表わす(後述,§65). 例えば \mu=\tfrac12 とすれば,xx^2 を代用して

  \frac{1}{\sqrt{1-x^2}}=1+\frac12x^2+\frac{1\cdot3}{2\cdot4}x^4+\cdots
   +\frac{1\cdot3\cdots(2n-1)}{2^n\cdot n!}x^{2n}+\cdots,
積分して
[例 3]
x のすべての値に対して収束する巾級数としては,指数級数
e^x=\sum\frac{x^n}{n!}\quad(r=\infty)
が最もよく知られている一例である.よって定理 48 から
\lim\sqrt[n]{n!}=\infty.
従って x=0 のほか発散する級数(r=0)の一例として
\sum n!\,x^n
を得る.

  1. この雑誌は 1960 年 14 巻から Mathematics of Computation と改題された.
  2. Wolfram の表には 1000 以下の素数の自然対数の 50 桁の表が掲げられている.この表はすでに少年 Gauss が愛用したものである.
  3. J.C.Adams,Proc.Roy,Soc.London,27(1878).
  4. この公式は実質上和算家に知られていた.ここで x=1/2 とすれば,\pi/6 が得られる.
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