解析概論/第4章
目次 |
[編集] 第 4 章 無限級数 一様収束
[編集] 42.無限級数
数列
の最初の
項の和を

とする.もしも(有限なる)極限値

が存在するならば,無限級数

は収束するといい,極限
をこの無限級数の和と略称する.極限値が存在しないとき(
をも含めていう)には無限級数は発散するという.発散する級数は直接には計算の用に立たない.
Cauchy の判定法(§6)によれば収束の必要かつ十分なる条件は,
を十分に大きくして,任意の
に関して

がどんな
よりも小さくされることである.すなわち

と置けば,或る番号以上
.
故に収束の場合には部分和
に対応する剰余
,すなわち

も収束して
.
特に
だから,
は収束の必要条件である.しかし,それは十分なる条件ではない.
例えば調和級数
は

だから発散する.
正項級数(
)の場合には,
は単調増大だから,収束の条件は
の有界性である.
級数
がそれぞれ
に収束するならば
は
に収束する.すなわち
(定理5).
同じ条件の下で,
が定数ならば
.これらは収束の定義によって明白である.
無限級数から有限個の項を取り除き,またはそれに有限個の項を挿入しても,収束性に影響ののないことも同様である.
級数
が収束すれば,連続する若干項を括弧でくくって一項としても,やはり同じ和に収束する.それは収束する数列
の部分数列を取ることに帰するからである(定理 3).しかし逆はいけない.例えば
であるが,括弧をはずしてしまえば,
は収束しない.
[編集] 43.絶対収束・条件収束
無限級数
の項の絶対値の級数
が収束するときは,原級数も収束する.――実際

で,仮定によって,右辺は
のとき,限りなく小さくなるから,左辺も同様である.この場合に,級数
は絶対収束をするという.
級数が収束して,しかも絶対収束をしないときは,それを条件収束という.
絶対収束の無限級数は,おおむね有限和と同様の性質を有するが,条件収束の場合は,一般に取扱いがやっかいである.
そもそも,無数の正数
が与えられているとき,番号にかまわず, 有限個の項を取って作られる部分和をかりに
と総称するならば,それら
の上限をもって和
を定義することは自然的であるが,正項級数の場合,この和は前節の定義における
と一致する.――実際
は部分和
の中の一つであり,また任意の部分和
の項は,十分大なる
に対する
の項の中に含まれるから,それは当然である.故に正項級数に関しては,和が項の順序に無関係であることは,有限和の加法の交換律と同様である.
もしも極限として
をも許すならば,正項級数は項の順序に無関係なる一定の和を有することになる.
正項級数
を無数の部分級数に分割するならば,収束の場合,部分級数も収束する.その和を
とすれば,
も収束して,その和は
に等しい.すなわち
.実際,
の部分和は,前節に述べたように,原級数の部分級数だから,
であるが,
は任意だから
は収束して,その和は
を越えない.一方任意の
の項は部分級数の間に分配されるから,十分大なる
を取れば,
.
は任意だから,上限へ行って
.故に (1) が成り立つのである.
の場合も同様である.この場合,任意の
に対して,十分大きく
を取れば,
になるから,上記の
,従って
である.すなわち (1) は
の意味で成り立つ.
約言すれば,正項級数の和に関して,広い意味で,加法の結合律が成り立つのである.
さて,
において項の符号が一定でないときには,正項を
,負項を
と書くとき,
として

とするならば,
が双方共に
なる場合を除いて,
は一定である.
が共に有限(
)なるときは,
で,
は本節の初めに掲げた定義に従って絶対収束であって,
の部分和は

のように書かれ,
のとき,
だから,極限において,上記の通り
になる.
において項の順序を変えても,
は変らないから,
も一定である.また
を部分級数に分割することは
を分割することに帰するから,(1) も成り立つ.
の中一方だけが
なるときには,
または
で,それはちょうど
に等しい.項の順序を変えても,または級数を部分級数に分割しても,この関係は動かない.
以上は絶対収束の場合である.条件収束の場合には,
も
も共に
で,
は無意味であるが,
において,正項と負項との配置のためにかろうじて
が確定するのである.従って項の順序が収束性に重大なる関係を有せねばならない.実際,条件収束の級数は,項の順序を適当に変更して,任意の和に収束せしめ,または収束性を失わしめることを,Dirichlet(1829)が指摘した.例えば,
の項の順序を次のように変更して,任意の正数
に収束せしめることができる.すなわち,まず正項
を順次に加えて,
に至って,和が初めて
よりも大きくなるとする.次に負項
を加えて,
に至って,和が初めて
よりも小さくなるとする.次にはまた和が
よりも大きくなるまで正項
を加え,次に和が
よりも小さくなるまで,負項
を加える.
も
も
だから,このような操作を限りなく継続することができるが,そのようにして生ずる級数

において
は少くとも
以上だから,
のすべての項が,いつかは一度用いられて,(2) は実際
の項の順序の変更である.さてこの級数 (2) が
に収束することは,その構成から明かであろう.実際,今二つの負項
と
との間に正項
が挟まれているとして,それらの項に対する部分和を考察する.そのとき
までの部分和は
より小さいが,それと
との差は
を超えない.そこへ正項
を加えて行けば,部分和は増大するが,
に達せぬうちは,部分和は
より小(大でない)で,
との差は
を超えない.
に至って部分和は初めて
を超えるが,
との差は
を超えない.正項の間に挟まれた負項に対する部分和も同様で,部分和
と
との差は,符号の変わるところにある
を超えない.然るに,
は収束するから,番号が限りなく大きくなるとき,
も
も限りなく小さくなる.故に (2) は
に収束する.
同じようにして,部分和を任意の値
に集積せしめ,または絶対値において限りなく大きくすることもできるであろう[* 1].
収束する無限級数において,
を和といっても,それは単に称呼であって,
は有限個の数の和ではないから,有限個の数の加法に関する法則が,そのまま無限級数の和にも通用することは,もちろん期待されない.然るに絶対収束の場合には,無限級数の和に関しても,交換律が成立することは上記の通りである.Riemann がいったように,“絶対に収束する級数にのみ有限数の和の法則が適用されて,それのみが項の総計とみなしうるのである.”収束性を度外において,無限級数を有限級数のように放漫に取扱って,しばしば不可解の矛盾に逢着したことは,18世紀数学の苦い経験であったのである.
絶対収束をする無限級数に関しては,有限級数と同じように,積が分配律によって求められる.今

を絶対収束とする.分配律の意味は

で,かつ右辺の級数が絶対収束をするのである.すなわち番号
のすべての組合せを取って
を任意の順序に並べるとき,級数
が収束して,その和は常に
に等しいのである. 今その証明を述べる.
の部分和に含まれる番号
の最大のものをそれぞれ
とすれば,その部分和の項は有限級数の積
を分配律によって展開するときにでてくる項の一部分であるから,この部分和に関して,
.然るに仮定によって,
は絶対収束をするから,部分和
は有界,従って無限級数
は絶対収束をする. 級数
が絶対収束だから,その和
を求めるためには,項の順序を任意に取ってよく,またそれらの項を任意にくくってもよい.よって今
の第
項までの部分和を
として

で示されるように,
の項を排列する. すなわち

然らば
,従って
.
において
なるものをまとめて一項として,それを
として級数

が収束して,そのうち一方が絶対収束ならば,
も収束して
(Mertens).この定理は本書で応用の機会がないから,説明を省略する. またもし
が収束しかつ
も収束するならば,
(§52参照).数列または級数の収束は複素数にも適用される.複素数の四則および複素数
を平面(
平面)上の点
で表す方法は既知とする[* 2].今一,二の要項を述べるならば,点
の極座標を
とすれば,
で,
を
の絶対値といい,それを
と記るす.また
を
の偏角といい,それを
と書く.然らば
.特に重要なのは不等式
,あるいは一般に

である.
複素数列
において,
とすれば,それは
平面上の点列
で表わされる.数列
の極限が
であるとは,点列
の極限が点
であることを意味する.すなわち
のとき
であるが,むしろ実数部と虚数部とに分けないで,距離
と考えるがよい.
は
に等しいから Cauchy の判定律は
のとき
で,すなわち実数の場合と同じである.
級数
の収束は数列
の収束にほかならないから,その意味は明白である.絶対収束は,むしろ複素数の範囲において,その意味が真に了解されるというべきであろう.すなわち正項級数
が収束すれば,

だから,
が収束するのであるが,そのとき項の順序が和の値に影響しないことも,実級数の場合と同様である.実際,
において
だから,
が収束すれば,
は有界,従って収束する.すなわち
は絶対収束をする.
そのほか絶対収束に関して本節で述べたことはすべて複素級数にも通用する.証明の根拠が不等式 (4) にあるからである.条件収束の問題は,それと違って,複素級数の場合,いっそうむずかしい.
[編集] 44.収束の判定法(絶対収束)
実際に与えられた級数
の収束性を判定する実用的の方法のうちで,最も普通に用いられるもの二,三を次に述べる.ただし,本節では絶対収束を考察するから,正項級数のみを取扱う.
は
よりも小なる正の定数で,或る番号以上では常に
ならば,
は収束する.
.故に
.
は有界.従って
は収束する.
は
よりも小なる正数で,或る番号以上常に

は収束する.
,
は有界,従って
は収束する.実際
のとき,
とすれば,
の定義によって,或る番号以上
であるから,
は収束する.また
ならば,
なる
が無数にあるから,収束の必要条件
が満たされない.
同様に
ならば収束,
ならば発散,その他の場合は疑問.
上記 (I),(II) では
を幾何級数
と比較して収束性を判定したのであるが,級数を無限区間の積分と比較して有効なる場合がある.次にその一例を掲げる.

ならば収束し,
ならば発散する.
とすれば
は単調に減少するから
.
ならば
.
は収束する.
故に
なる区間において
の和は
の函数である.それを
と書く.
を Riemann のゼータ函数という.
とすれば,
.
は発散する(既述).
ならば,
はなお強い理由で発散する.同じように
.故に
は発散する. 一般に

は
ならば収束,
ならば発散する.
一般に,
なるとき
が正で単調減少ならば,
は
と同時に収束または発散する.
とすれば
.


は
が増すとき単調に減少する.それが正(すなわち下方に有界)だから,

を Euler の定数という.
の値は
である[* 1].
や
とは違って,
の数論的の性質は未知である.例えば
が無理数であるかどうかも知れていない.
において,十分大なる
に関して常に

のとき),二つの級数は共に収束または共に発散する.
.故に
が収束すれば
も収束する.また
.故に
が発散すれば,
も発散する.
を
次の多項式として
とすれば
は |
![]() |
なるとき収束. |
| なるとき発散. |
のとき
だから,この級数を既知の級数
と比較すればよい.
において,十分大なる
に関して常に

が収束すれば,
も収束する.
が発散すれば,
も発散する.正項級数
において
が存在する場合には,(II) によって
ならば級数は収束し,
ならば発散するが,
なる場合には,次の判定法がしばしば適用される.
.そこで,
なる
を取って
を収束する級数
と比較する.(V) を応用するために
と置けば,Taylor の公式によって
.
だから,
が十分大なるとき

は収束する.
なるときは,
を発散する級数
と比較する.このとき
だから,ついには
になってしまう.故に
は発散する.
これは簡単であるが,
なるときには,通用しない.この場合には
を発散級数
と比較する.然らば
.
と区間
とに適用すれば,

,
だから,ついには

は発散する.
が
の有理函数として


だから,収束の必要かつ十分なる条件は
である(Gauss).Gauss は,つとに(1812),このように有力な判定法を持っていて,超幾何級数の収束性を考察したのである.
[編集] 45.収束の判定法(条件収束)
絶対収束をしない級数の収束性を判定することは,一般にむずかしい.次のは最も簡単な場合である.
において,
ならば,この級数は収束する.
の部分和を
とすれば


によって

によって
.故に
は存在して,級数は収束する.
に関しては
.故に和
の近似値として部分和
を取れば,誤差は絶対値において省略された最初の項(すなわち
)よりも小である.

または
であることは後に述べる). この第二の級数に関して次の考察を試みる.今

を Euler の定数として(§44)


は一般的に
のとき
に収束する微小数を表わすのである[* 1].よって

を任意の自然数とすれば


から
項,
から
項ずつ交互に取って作られたる級数(それをかりに
と記るす)の
項までの部分和で,それが
のとき
なる極限値を有する.さて
において
項から
項までの間の若干項の和は絶対値において
よりも小であるから,級数
は収束して,その和は
に等しい.特に
とすれば,上記の通り

とすれば
等々.
(複素級数でもよい)の部分和を





),



から始めると,
で,上記の
なる項がなくなるから,
の部分和
に関しては

が収束するとする.然らば(
でなくても)
は収束するが,今度も

は単調減少だから,
.よって
を
に代用して考えるならば,部分和に関して

も収束する.従って (4) から
を得る.- ↑ §15 の用例によれば
を
と書くべきであるが,それは,ここでは無益の煩雑であろう.
[編集] 46.一様収束
或る区間に属する各点
において,函数の一列

が収束するときは,極限値はその区間における
の函数である.それを
とする.この場合,
を任意に与えるとき,それに応じて或る自然数
が存在して,
なるとき
になる.しかし
の値は一般には
の値に従って変動するであろう.もしも
が
にのみ関係して,区間における
の位置に関係しない一定の値を有しうるならば,すなわち
なるとき 
ならば函数列
は
において一様に(または平等に)
に収束するという. 無限級数の項
が
の函数である場合に,或る区間において
が一様に収束するとき,この級数を一様に収束するという.この場合
として

と置けば,任意の
に対応して,
に関係しない一つの定数
があって,
のとき常に
になる.換言すれば
が一様に
に収束する.
級数の一様収束は,しばしば,次の定理によって確かめられる.
,
は正の定数で,
が収束すれば,級数
はその区間において一様に収束する(絶対収束).
は級数
に関する剰余である. 故に
は収束する.そうして

のとき
とすれば
に関係なく
.
一様収束の意味は,反面から一様でない収束の場合を考察すれば,よくわかるであろう.次に一、二の簡単な例を掲げる.
において
とすれば,函数列
は収束する.極限は

であるためには
,
だから
なることを要するから,
が 1 に近づくに従って
を限りなく大きく取ることを要する.曲線
は
のとき直角に折れた折線
に近づくけれども,
は一つの函数のグラフでありえないから,函数
の極限はやむをえず
において不連続になるのである.
に関して収束する.
ならばもちろん
で,
ならば,公比が
なる幾何級数で,

を含む区間において,収束が一様でない.実際

よりも小なるためには,
なることを要するから,
が
に近づくに従って,
を限りなく大きく取らねばならない.この例でも,連続函数
の極限なる
が不連続である.曲線
は
のとき,次の図のような二股の線に近づくが,
は
において不連続になるのである.
上記の例のように,連続函数の極限(または連続函数を項とする無限級数の和)が必らずしも連続でないことを Abel が初めて指摘した.Abel の書簡(1826)に次の一節がある. ファイル:図
“
が
よりも小なるときには

であることは,確に証明される.そこで,
でも,この等式が成り立つように思われるだろう.然るにそのとき
(不合理)このような例はいくらでも挙げられる….”
の任意の値に関して収束する.その和
のグラフは前頁の図のようである.その証明は後に述べるが,それは技術的に簡単でない.Abel が指摘した上記18世紀数学の迷信を簡便に見せるために,例 1,2 などを練習用として出したのである.
次の節に述べるように,連続函数の極限は収束が一様なる区間においては連続であるが,それは必要なる条件ではない.今その一例をここに掲げておく.
を次のグラフで示す連続函数とする(
).これは収束して極限は
.(実際,
では
で,もちろん
,また
ならば,十分大なる
(
)に関しては
だから,
)しかし収束は
の近傍で一様でない.
は
を含む区間では不可能である.これは一様収束でなくても,連続函数の極限が連続でありうることを示す一例である.もしsも上記の代りに,
とすれば,同様の例が滑らかなグラフで作られるであろう.
一様収束は二次元以上にも適用される.すなわち或る区域
の各点
において函数列
が収束するとき,その極限を
とすれば,区域
における
の位置に関係しない番号
があって,例の通り
なるとき
ならば,
は
において(
に関して)一様に収束するというのである.この後,本章で一様収束に関して述べることはすべて二次元以上にも通用する.
を挙げておこう.複素変数
の函数
の意味は実変数の場合と同様で,
の各〻の値に
の確定の値が対応するのである.また
が連続であるとは
を十分小さくして
をどれほどでも小ならしめうることをいう.すなわち
のとき
.ただし
の微分,積分に関しては後に述べるであろう(第 5 章).[編集] 47.無限級数の微分積分
函数項の無限級数の微分積分は一様収束の仮定の下においては簡明で,従って実用的である.次の定理は最も基本的である.
が連続で,
が一様に収束するならば,和
は連続である.
を項別に積分することができる.そうしたときに生ずる級数も一様収束をするから,項別積分は幾回でも繰り返えされる.
が収束し,
が微分可能,
が連続で,
が一様に収束するならば

が項別に微分される:

に対応して
が十分大なるとき,区間において一様に
.さて

は
個の連続函数の和だから連続である.よって,
が区間に属するとき,

を十分小さく取れば,

に関係なく



は連続である.
は連続,従って積分可能である.さて仮定によって,
に対応して十分大なる
に関して,区間
において[* 1]





内の任意の点
としても同様であるが,その際 (1) は右辺が
のままで成り立つから,

が積分可能で,かつ
も積分可能ならば,(B)は成り立つ.同じ条件の下において
の一様収束性の代りに部分和
の一様有界性(
に無関係なる
をもって
)を仮定するだけでも十分である[Arzelà の定理].その証明はむずかしいから,ここでは述べない.
(収束)
(一様収束)
は連続函数.
である. さて (2º),(3º) から(A)によって
は連続,また(B)によって

.(3º) から





が連続であるから(上述),微分して

上記証明において仮定 1º,2º,3º がすべて用いられている.仮定はずいぶん多い.しかし仮定 1º は,区域内の一点
において成り立てば十分である.そのとき (2) によって
が区域内で収束することがわかる.また 3º に関しては
の微分可能性だけを仮定すれば十分で,
の連続性を仮定しなくてもよいのである.これらは微細な論点だけれども,次にそれを証明する.まず(A)を次のように若干精密化する.
において
は連続で,
は一様に収束し,
のとき
とすれば,
は収束して,
のとき

において
の定義を(必要に応じて変更または拡張して)
とすれば,仮定によって
は
において連続になる.さて
は一様収束だから
なるとき,

の極限へ行けば

は
において一様収束,従って(A)によって
は
において連続,特に 
,
,において,
は微分可能で,

において
は収束すると仮定する.然らば
は区間
において一様収束で,

を十分大きく取って,区間
において
また 
に適用して



は
において一様に収束する.その和を
とする. さて
を区間内の二点,
をその中間値とすれば


は
において一様収束で,
のとき
.故に(A′)によって(
に
を代用する)

無限級数の部分和
の代りに函数列
を取っていえば,定理 40 の核心が,むしろ明瞭であろう.すなわち
区間
において
が連続で,それが一様に
に収束すれば,
は連続.
で,かつ
が微分可能,
が一様収束ならば,


の記号の下で積分または微分して


に関しては
.それは突起する三角形の面積である.この場合
.
.また同所に掲げた Abel の例[*]において,‘乱暴に’微分すれば
(不合理,右辺は発散).- ↑ 一様収束区域内の任意の閉区間を
とする.
[編集] 48.連続的変数に関する一様収束 積分記号下での微分積分
函数列
においては
は
と
とに関係し,
に対する収束において,収束の速度が
に関係しないことを,
に関する一様収束というのであった.しかし自然数なる変数
の代りに連続的なる媒介変数
が登場する場合にも,同様の立場から収束の一様性を考察することができる.
今
は
の或る区域
における各
に関して
(または
)のときに,或る極限値に収束するとする.その極限値は
の函数であるから,それを
と略記する.然らば例の通り
式でいえば
なるとき 
がまず任意に与えられて,それに応じて
が定められるのであるが,その
は一般には
にも関係するであろう.もしも
における
の位置に関係なく,ただ
のみに関係する
があって,その
に関して (1) が成り立つならば,
は
のとき,
における
に関して一様に収束するという. もしも
に収束する任意の点列
,を取るならば,(1) において条件
を
で置き換えて
なるとき 
を得る.
が
に無関係ならば,
も同様である[* 1].このように考えるならば,
に収束する連続的変数
を無限に増大する自然数
に変えることができる.ただしその場合 (2) が収束するすべての数列
,に関して成り立つことを要する(§9,22 頁参照).
なる場合には,(1) においては
を
に換え,また (2) においては
を
なるすべての数列とすべきである.
または
なるとき,一様収束の仮定の下において,前節とまったく同様に,定理(A),(B),(C)が成り立つ.
それは上記のように函数列
を考察すれば,定理 40 から導かれるが,あるいはまた定理 40 と全く同様の方法によって,直接に証明することも容易であろう.
点
が或る閉矩形
に属するとき,
が二変数
の函数として連続ならば,
なる
に関し

は
の函数である.
を分点
において
等分して

のとき,
は積分
に収束する.しかも一様に収束する.なぜなら: 仮定によって
は連続だから,連続の一様性によって,
を十分大きく取って

のすべての
に関して



すなわち
が
に関する一様収束である.さて (4) によって有限和
は
に関して連続である.その連続性が一様収束のために極限なる
にまで伝わるのである(定理 40).それがすなわち(A)である.
が一様収束だから,定理 40(B)によって





は
で連続,従って右辺は(積分の定義)


積分
の限界が
に関係する場合にも,上記の微分法が適用される.今

において,
が
の函数ならば

前のように,
は
において連続,また
は
に関して
において微分可能とすれば,
なるとき,

さて
(定理 35).故に

積分記号の下での微分積分は,一様収束の仮定の下において,無限積分にも拡張される.
今区域
,
,において,
は連続で

が一様に収束するとする.その意味は

が,
のとき,
に関して一様に
に収束することをいう.すなわち
に対して
に無関係なる
があって
なるとき, 
この場合にも,上記と同様に,次の定理が成り立つ.
は
において
の連続函数である.
が収束し,
は
において連続で,かつ
が一様収束するならば


の下での積分が許されて



![\begin{align}
\int_{\alpha_0}^\alpha G(\alpha)\,d\alpha
&= \int_c^\infty dx\int_{\alpha_0}^\alpha f_\alpha(x,\alpha)\,d\alpha\\
&= \int_c^\infty [f(x,\alpha)-f(x,\alpha_0]dx\\
&= F(\alpha)-F(\alpha_0).
\end{align}](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/7/9/5/7959677c301d775c016fed9fe95c2b00.png)
が収束するから,最後の行のように書かれるのである.さて
に関して微分すれば
.
有限区間の広義積分に関しても,一様収束を上記のように定義することができる.今
が区間
にあるとき,
は積分区間の下の限界
においてのみ不連続で,

は収束するとする.もしも
に無関係なる
に関して,
なるとき 
ならば,上記積分は(
に関して)一様に収束するのである.この場合にも,定理 42 と同様の(A),(B),(C)が成り立つ.
に関していえば,区間内で常に
で
が収束すれば,
は
に関して一様に収束する.実際任意の
に対して,
を十分大きく取れば,
,従って
,
は
に関係しないから,これは一様収束である.有限区間に関しても同様である.
において両分して,まず

において一様収束をする.――
で
は収束するからよい(上記注意).故に
のとき
は
に関して連続である.
は任意だから,
は
なるとき連続である. また

ならば広義積分であるが,

に関して一様に収束する.――今度は
から
で
が収束するからよい.故に
は
なる
に関して連続であるが,
は任意だから,
なるとき連続である. 故に

なるとき連続である. 次に
を積分記号下で(
に関して)微分して,かりに

に関しては,
とすれば
が十分大きいとき

に関しては,
とすれば,
が十分小なるとき


.また
であるから,
は凸函数である.
は任意として(§35,[例 3])

に関して一様に収束する(
,前頁[注意]参照).よって
に関して
から
まで二回積分して

として

なる仮定の下において証明されたのである.しかし
とすれば
は収束し(定理 36),また
のとき
だから,(8) の左辺は
において一様収束,従って連続である.よって
のとき,(8) から


を用いて

を
に変えるならば,
のとき

の符号を変えるならば,積分の符号が変わる.すなわち
ならば

ならば積分は,もちろん,
である.故に

の函数として,これは
において不連続である.この積分は積分記号の下で無頓着に微分することが危険な実例を提供する.‘乱暴に’微分すれば,結果は次の通り:
(不合理).
(§35,[例 6])において
を
に変換して

に関して
回微分すれば

に関して一様に収束するから(
が収束して
だから.167 頁,[注意]参照),このような微分法が許されるのである.
として

の指数が奇数ならば,不定積分ができるが,また上記の方法で

に関して微分してから,
として


は(
に関して一様に)収束するが,積分記号下で,
に関して微分して

で,これも一様に収束するから,この微分が許される.さて


従って 

を求めるために,
と置けば

[編集] 49.二重数列
ここに掲げる

のように,二つの番号
を有する数列を二重数列という.その項
は,つまり第一象限内の格子点
(
が自然数)において定義された函数
である.
および
が限りなく大きくなるとき,
が極限値
を有するとは,任意に与えられた
に対応して,ある限界
があって,
なるとき常に
であることをいう.それを次のように略記する:

この記号で
と書くけれども,それは初めに
に対する極限を求めて,次にその極限について
に対する極限を求める意味でない.すなわち
あるいは
とは意味が違う.
故に 
故に 

を取っても
なる範囲内で
になりえて,そのとき
,また同じ範囲内で
とすれば
.故に上記定義にいうような一定の極限値
はありえない.
,(ただし
は
の倍数でないとする.) この場合には

は存在しないから,
は無意味である.
が存在するとき,もしも
がすべての
に関して存在するならば,
. 同様に,もしも
が存在するならば
.
に
が対応して
ならば 
なる
を固定して,
とする.さて仮定によって
は存在するから,
.これは
なる
に関して常に成り立つ.
は任意だから,それは
を意味する.すなわち
.
定理 43 では,初めから二重数列の収束を仮定したのであるが,次の定理は二重数列の収束性の一つの判定法(十分条件)を与える.
が存在して,しかも
が
に関して一様に
に収束し,かつ
が存在するならば,
が存在して,それは
に等しい.従って,もしも
が存在すれば
も存在して,それは
に等しい(定理 43).
が一様収束であることの意味は明らかであろう.すなわち任意の
に対して,
に関係のない一定の
があって,
なるとき
.
ならば,すべての
に関して
.また仮定によって,
ならば,
.故に
ならば,
,任意の
に対して,このような
が定められるから,
ならば 

は成り立たない.
も同様.
例えば
のみ,および,
のみに関して連続なる
は
に関しては必らずしも連続でない(すなわち
のとき,
,また
のとき
であっても,
のとき
とはいわれない(§10)).
また第二階以上の偏微分において,微分の順序は無条件では変換されない(§23).
微分すること,積分すること,および無限級数の総和をすることは,いずれも極限を求めることで,それらの極限を二つ以上引き続いて求める場合に,或る条件の下において,その順序を変更してさしつかえないことを確かめるのが第47,48節の論点であったのである.‘乱暴’な順序変更は危険である.[編集] 50.二重級数
二重数列
から二重級数が生ずる.形式的に単級数
の場合をまねて

と置いて,
が存在するとき,暫定的に二重級数は和
に収束するともいうが,二重級数の総和法としては
なども考えに浮かぶであろう.これらはすべて形式的で,二重級数総和の特別なる方法に過ぎない.応用上重要なのは,収束性が項の順序に無関係なる場合,すなわち絶対収束の場合である.
第一象限の格子点
全体の集合を
と名づけるならば,
の各点に一つの番号をつけて,それを一つの無限点列にすることができる.すなわち
はいわゆる可算(countable, denumerable, abzählbar)集合である.
一般に,しだいに拡大する
の有限部分集合の一列

があって,
の各点
はついには或る
従って
なる各
に含まれるとする.このような状態を,
は単調に
に収束するといえば印象的であろう.そのとき
に含まれる格子点の数を
として,まず
に含まれる点に
から
までの番号をつけ,次には
に含まれ,
に含まれない点に
から
までの番号をつけるというようにして,
の点が一列化される.上記第一の例では,
なる点が
を組成し,また第二の例では,
なる点が
を組成する.このような
の一列化は無数の仕方で可能である.――実際,一つの一列化ができる以上,それの順序の任意の変換によって他の一列化が生ずるから,それは当然である. さて
の一列化において
の番号が
であるとして

と書けば,二重級数
が単級数
になる. このようにして生ずる一つの級数
が絶対収束をするとして,その和を
とするならば,
の項の順序を変えても和は変わらないから,
の任意の一列化において
は一定である.この場合に,二重級数
は和
に絶対収束するという.この意味において,絶対収束の判別条件は
の有限部分和が一様に有界であることで,それはつまり

が
に無関係なる定数
に関して成り立つことにほかならない. 絶対収束の場合,前に述べたように集合列
を単調に
に収束するものとして,
に属する
に関する
の和を

とするならば,

上記のように,集合列
に従って
を一列化して
を
にするならば,
は
の部分和であることを考えれば,これは明白であろう.
を対角線式に

として総和するのは,これの一例である. それにも増して興味のあるのは,
を無数の無限集合に分割して
を総和する方法である.今そのような分割を(略記式に)

と書く: すなわち
は無数の格子点を含んでもよいが,各点
は
のうちのいずれかに,しかもただ一つにのみ属するのである. 絶対収束の場合,
に対応する部分級数はもちろん絶対に収束する.その和を

とする.この和は
に属する格子点
の上にわたるのである.しからば

例えば,行列
の行による総和法
または列による総和法
は (1) の特別の場合である.これはすでに述べた通りである(§43).
上記の考察は三重以上の級数
にも通用する.また添字
は区間
の整数でもよい.一般的に
次元空間
に属する格子点
――すなわち
は任意の整数――に対応する級数
の絶対収束に関して,同様の考察を行うことができる.議論の根拠は
の格子点の一列化
にある.
一列化の方法は前に述べた通りである.一例として

なる点
をもって部分集合
を組み立ててもよい(立方式).または

によってもよい(対角式).


の和である.故に収束の場合には和は

は収束しない.)
は
から
までの整数で,
なる組合せだけは除く.すなわち
は
次元空間において,原点以外のすべての格子点の上にわたるのである.
この級数は
なるとき収束し,
なるとき発散する.
を自然数とすれば,各座標が
なる格子点の総数は
であるから,そのうち少くとも一つの座標が
なる格子点,換言すれば
なる格子点の数は



は,(4) からみえるように,
に関する
次の正係数の多項式である.すなわち


すなわち
なるとき
は有界,従って (3) は収束する.
なるときは,(5),(6) から

の代りに正値二次形式[* 1]


なるとき収束し,
なるとき発散する. この場合
の固有方程式[* 2]

の固有値)はすべて正であるが,そのうち最小のものを
,最大のものを
とすれば

は
と同時に収束または発散するのである.
例えば
が正値二次形式ならば(
),格子点
にわたる級数
![]() |
は | ![]() |
のとき収束, |
| のとき発散. |

において,積分変数を
に変換すれば,



を展開すれば
は九つの積分の和になる.そのうち一つは
と書く.他の八つは


は
または
,また
は
である.さて

における (7) 以外の八つの項は絶対値において
または 

すなわち行列
の横列の和を総和しても,または縦列の和を総和しても,同一の極限値
を得る.しかし級数は絶対収束しない.
.
においては
から

に変換すれば

のとき極限値は
になる(定理 42).
においてはこのような積分が符号
を持って四つ出るから
. 同様にして
を得る.
の極限としての
によれば,任意の
(例えば
,または
等)をもって級数

のような二行(または二列)をどこへいくつ(有限個)入れても同様である.形式的定義の不実用性をみるべきである.[編集] 51.無限積
無限数列
から無限積
が生ずるが,乗法における
の特異性を考慮して,収束の定義を適当に緊縮することが大切である.まず因子の中に
があって,その
を除いたあとの無限積が収束しない場合は無用である.また因子が一つも
でなくて,しかも積の極限が
に等しい場合(例:
)を一般論に取り入れることは,不便である.これらを除けば,収束の場合には
なることが必要である.よって初めから

と仮定して,無限積

を考察する.最も簡明なのは次の場合である.

も収束する).これを絶対収束という.
絶対収束の無限積は,多くの点において,有限積と同様に取扱うことができる.すなわち因子の順序は積に関係なく,また分配法則によって無限積を無限級数に展開することができる.また因子の中に
がなければ,積は
にならない.



の収束は
の収束に帰する.さて,仮定によって,(2) は収束するから,



,従って
,従って
が収束する.
今
を
で置き換えて,
と同じような積
を作れば
も収束する.その項
は (3) のような形の積だけれども,それをほぐして
を
のような項の級数にしても,それは収束する.(
は正項の和であるから,
をほぐしても収束に妨げないのである.)よって
を
のような項の無限級数としても,それは絶対に収束して,その和はもちろん
に等しい.この無限級数はすなわち
を分配法則によって展開したものである.
このように
が分配法則によって絶対収束の級数に展開されるから,
において因子の順序を変えても,積には影響しない.
)は
であるが,
とすれば,下に示すように


として極限へ行っても

番までも,
ならば

は
なるとき凸函数である.故に
とすれば
において


とすれば, 
なるとき 
ならば, 
函数(§44)

を大きさの順序に
と名づけて無限積


は
の一部分だから収束する.故に (5) の無限積は絶対に収束する.もしも (5) の右辺に機械的に分配法則を適用するならば
(ただし
,また
)を得るが,すべての自然数
は一意的に素数巾の積に分解されるから,これは形の上では
に等しい.それが実際に相等しいことを示すために,(5) の左辺で最初の
この因子だけを取れば

における
は
以下の素数因子のみを含む自然数の全部である.それらの中には
までの自然数は全部含まれているから

は
の部分級数であるから,
を十分大きく取れば,どれほどでも小さくされる.故に実際

は
が収束すれば,収束する.
これは絶対収束をしない無限積の例を与える.

すなわち 
のとき
. そこで

が収束するのだから,
,従って
は有界である.故に
は(絶対)収束する.今
とすれば

へ行って

が絶対収束をしないならば,因子の順序を変更するとき,
従って
が変じ,または収束性を失うこともある.
は或る区域における変数の函数である場合には,無限積
に関して一様収束の問題を考察することができる.簡単のために,ここでは応用上重要な次の場合について述べる.
において
は連続,
は一様収束とする.然らば無限積
は
において一様に収束し,従って連続である.
は
において連続(定理 40,(A))だから,その最大値を
とすれば,任意の
に関して,前のように

は一様に収束するから,変数に関係なく,
なるとき 

は確定の定数で,
は任意だから

[編集] 52.巾級数
巾級数とは
の形の級数であるが,
に
を代用して

に関して述べる.これを
の巾級数といい,一般的に
と略記する.巾級数は解析学で最も重要な級数である.
巾級数の収束に関しては,次に掲げる Abel の定理(1826)が基本的である.
は収束するから,
.故に
を任意の正数とするとき,十分大なる
に関して常に
になる. 今
として
とすれば,


において,絶対にかつ一様に収束する.
定理 47 は巾級数
の係数
および変数
が複素数である場合にも通用する.
のすべての値に関して収束するべき級数もあり,また
の外では発散する巾級数もあるが,それらを除けば,もしも巾級数が
の或る値に対して発散すれば,絶対値においてそれよりも大なる
に対して発散する(上記定理の対偶).故にこの巾級数を収束せしめる
の値に上限がある.それを
とすれば,巾級数は
が原点を中心とする半径
の円内にある(
)とき収束し,
がその円の外にある(
)とき発散する.この円を巾級数の収束円といい,その半径
を収束半径という.巾級数が任意の
に対して収束すれば,
とし,
以外では収束しないときには,
とする.
の収束半径
は次の値を有する:
![\frac1r=\varlimsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{|a_n|}.](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/9/a/1/9a13531e38ad6595379ebf2352744e3c.png)
と置けば
![\varlimsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{|a_nx^n|}=l|x|.](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/7/3/4/73484e45cdbbbaeaf6b70f66166d4acc.png)
ならば
は収束し,
ならば発散する(§44).故に収束半径を
とすれば,
.特に
ならば,任意の
に関して
は収束するから,
.また
ならば,
なるとき
は発散するから,
.
巾級数
を項別に微分すれば,

を得る.これは,巾級数 (1) 収束し,かつ,(2) の右辺の巾級数が一様収束する区域において正当である(定理 40).然るに級数 (2) は原級数 (1) と同一の収束半径を有する.実際,収束に関しては (2) の各項に
を掛けても影響はないから
![\varlimsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{n|a_n|}](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/2/f/3/2f32239c3f2dc010df99afee30c31f9d.png)
を考察すればよいのだが,
だから,これは
に等しいこと明白であろう.
故に巾級数は,その収束円の内部において,何回でも項別に微分積分することができて,そのとき生ずる巾級数はすべて原級数と同一の収束半径を有する.
上記を要約して次の定理を得る.
は収束円の内部において
の連続函数である.それを
とすれば,
は各階の微分可能で



の Taylor 展開である.
故に
が巾級数に展開されるならば,その展開は唯一である.すなわち
ならば,
.
の収束円内の一点を
とし,同じく収束円内に
なる
を取って
とする.然らば,
のとき,
なる項に関しては,

は収束するから,
も収束する((IV)).逆に,
の収束する点において,
の収束することは明らかである.
の収束半径を
,収束円内の二点を
とする.すなわち
とする.然らば

を越えない.然るに
だから
は収束する.故に (3) は
なる
に関して一様に収束する,従って
に関して連続である.故に
の極限へ行って

と置いたが,もしも反対にまず函数
が与えられて,それが或る点(簡明のため
とする)において,各階微分可能として Maclaurin 級数

に等しいであろうか? それは保証されない! 一例として

のとき
一般に 
は
次の多項式である.従って
であるが,実は
の定義によって
である(定理 23).この場合
から生ずる巾級数
は常に
に等しい.それは
すなわち
を
以外では表わさない.Taylor の公式から,剰余項の考察なしに,Taylor 級数は出せないから,これはふしぎでない.巾級数
は収束円の内部では
の連続函数であるが,収束円の周上における巾級数の動作に関しては一般的の断言をすることができない.それは収束円の周上の各点において発散することもあり,各点において収束することもあるが,また或る点では発散し,或る点では収束することもある.
さて収束の場合に関して,Abel が次の有名なる定理を証明した.
が収束円の周上の点
において収束すれば,
が半径に沿って
に近づくとき,


の順序を無頓着に変えてはならないことは,すでにしばしば述べたとおりである.定理 50 の意味は,右辺の極限値が確定ならば,左辺の極限値も確定で,かつ,それが右辺の極限値に等しいことをいうのである,その逆は真でない,すなわち左辺の極限値が確定でも,等式は必らずしも成り立たない. 例えば

であるけれども,
のとき右辺は収束しない.
と置いて級数
を
の巾級数にすれば,その収束半径は
で
には
が対応する.よって問題を単純化して,初めから

として

を証明しよう. Abel の級数変形法を引用する(§45,(VIII)).
が収束するから,
に
が対応して

とすれば,
から

は
において一様収束,従って連続であるから,
.
が収束するとき,
とする.然らば巾級数
は
なるとき絶対収束をするから,
.さて Abel の定理によって,
のとき
でまた
が収束すれば,
.すなわち
が収束すれば,
.
は複素数でもよい.次に巾級数の二,三の例を掲げる.


から
まで積分すれば

を
に変換すれば


である(182 頁,[注意 2]).また


の計算
のときに収束する.故に定理 50 によって
[Leibniz の級数]
の計算には不適当である.さて
とすれば,
は
に近い(六十分法でいえば,
は約11°19′).実際計算すれば,

[Machin,1796].
これは急速に収束する.今 (11) を用いて,
を小数第5位まで求めるつもりで,次の計算を試みる.
![]() |
上記 (11) の級数は二つとも交代級数であるから,或る濃い以下を省略するときに生ずる絶対誤差は省略されたる最初の項以内である(§45).上記の計算では [5],[7] からみえるように,誤差は末位の
以内である.また [1],[3] は正確で,[2],[4],[6] から末位の
以内の誤差が生ずる.故に
とすれば誤差は末位において
ないし
である.
William Shanks は,上記 Machin の式を用いて,
の値を小数 707 位まで計算した(1873)が,その後,D.F.Ferguson が Shanks の計算は小数 527 桁を超える処で誤算があったことを発見した(1947).1949 年に,J. von Neumann が,電子計算機 ENIAC で,
および
の値を十分先まで計算して,数字分布の統計的尺度を知る可能性に興味があることを表明した.それが機縁となって,1950 年 6 月に ENIAC は
および
の値を小数 2000 位以上計算し,当時計算されていた
の小数808位までは,一致することを確認した.MTAC({{{2}}}[* 1])vol.4,1950,pp.14―15 に,ENIAC の計算した
の値の小数 2035 位まで,
の値の小数 2010 位までが載っている.その後電子計算機の急速な進歩に伴って,
のみならず,対数などの計算は,欲するならば検算を伴いつつ小数一万桁をも超えて計算できるようになった.
の初めの 30 桁は
.
とすれば

が大きいとき)収束する.
としても(13 項を取れば)

とすれば




は常用対数の率(modulus)である.すなわち


から
までの整数の常用対数を求めるには,5 位の整数の対数を計算すればよい(例えば
).その場合,(13) において右辺の初項だけを取って

だから)

よって
から始めて,次々に
に
を加えて
の近似値を求めて行けば,
までに誤差はかさむけれども,最悪の場合
を超えないであろう(七桁対数表製作の理論).
対数を計算する他の方法は,整数の対数を素数の対数から導くことである.
今公式 (9) において
とすれば


が整数で,
が因数に分解されるならば,(14) から
を
よりも小なる整数の
と,急速に収束する級数との和として求めることができる.故に
を求めておけば,順次にすべての素数
の
が得られ,従って,たし算によってすべての整数の
(自然対数)が得られる[* 2]. Adams は
を 262 桁まで計算した[* 3].[編集] 53.指数函数および三角函数
は任意指数
に関する巾として定義せられ,その逆函数として対数函数
が導かれる.特に
の底は
として定義された.これは指数函数の歴史的の発生で,その理論はかなり煩雑といわねばならない.
今もし伝統を離れて,ひとまず有理式のみを既知の函数と考えて,その積分函数として生ずる新函数を考察するならば,自然に対数函数が得られ,その逆函数として指数函数が得られるであろう.
今その理論の概要を述べるが,虚心で考えるならば,それはすこぶる簡単である.積分
の連続函数
が区間
において定義される.それは単調に(
から
まで)増大するから,逆函数
が確定する.さて (1) から



とすれば
.従って


のすべての値に関して収束する(§25). このようにして指数函数が導かれるが,変数の記号を換えて


に関して
だから



と置けば[* 3]

を指数とする巾(乗法
)であるが,任意の
に関しても同様の記号を用いて
を
または 
の任意指数
に関する巾という.然らば (3) から

として




を定義する.
の逆函数を
と書けば,
であるから


において単調に
から
まで増大する.ただし

が
の函数として区間
において確定する.それを







とすれば,
,従って


であるが,その幾何学上の意味を上記の定義から導くことができる.
積分 (4) は半径
なる円
の弧長の計算(§40)から生ずるものである.すなわち
とすれば,円弧
の長さは




の弧長である.従って

のとき
と置いたが,それは弧長
である.故に円周の長さを
と書くならば

これで
において
が
と一致することが示された.
の加法定理および周期性は級数 (6) から解析的に(計算によって)導かれる.それは単なる計算であるが,その計算を見通しよく実行にするには,複素数を用いねばならない(次節参照).
は区間
に属する
に関してのみ定義されたけれども,Maclaurin の展開 (6) は,
のすべての値に関して収束する.よってこの展開 (6) によって
を定義することにすれば,まず Taylor 展開[* 4]


についても同様に,あるいは
に関して微分して,

と置けば,

と
との関係が定義の拡張の後にも成り立つことを示すのである. 三角函数の周期性も,上の式で
と置いて得られる.すなわち




[編集] 54.指数函数と三角函数との関係 対数と逆三角函数
の収束に関して述べたことは,係数
および変数
が複素数である場合にも通用することは前に述べた.特に指数級数

だから,
が任煮の複素数であるときにも絶対に収束する.よってその和として指数函数
の定義を
が複素数なる場合にも延長することができる.
拡張された指数函数に関しても,加法定理

に関し、

なる項をまとめて,

特に複素数
に関して

さて



は実数,従って
だから,
の絶対値は
で,偏角は
である.
と
とは同時に
にはならないから,
は
の有限の値に対して,決して
に等しくない.
特に
を整数とすれば,(1) から


は周期函数で,
がその周期である.
逆に
を
の周期とすれば,
すなわち
.
だから
.よって
と置けば
.
だから,それが
の絶対値である.すなわち
,従って
,
,すなわち
.故に
.すなわち
の周期は
の整数倍だけである.すなわち,
が基本周期である.
(1) において
を
に変えて


以上
を実数としたけれども,(2) において
を任意の複素数として
を複素変数にまで拡張することができる.その場合
の加法定理およびそれから派生する無数の恒等式はそのまま通用する.例えば

も同様である.
しかし複素変数まで行けば,三角函数は (2) のように単なる略記法としてのみ存在理由を有するのである.

を
; または
; またはドイツ式では
などとも略記する.



のために
になる.同様に

次に
と
とのグラフを掲げる.
のグラフは懸垂線(catenary)である.
の逆函数は
で表わされる.今

に関して解いて

を実数とすれば,
だから,



だから,

の逆函数である.
の逆函数を
,または略して
などで表わす.変数を
と書けば

等辺双曲線
上の点
の座標を
,扇形(sector)
の面積を
とすれば,


扇形 
これによって三角函数と双曲線函数との類似が明瞭である.三角函数の場合には円
において,扇形
の面積が
で,
.
の定義が複素数にまで拡張される. 今
とおいて




だから,実数なる
は確定であるが,
は任意の整数としてもよいから,
は確定しない.故に

の整数倍だけ異なる無数の値を有する.それは
の周期性から考えて当然である.今
とすれば,
の虚数部は
と
との間に限られる.引用上の便利のために,それを
の主値といい,それをかりに
と書く.特に
が実数ならば,
なるとき
の主値は実数,また
なるとき,主値の虚数部は
である.例えば
.同じように
,等々.
(6) からみえるように,
の多意性は虚数部における
の多意性に基づく.故に今定点
において
の一つの値をきめて,
と
とを
を通らない曲線
で結んで,
がその曲線上を連続的に動くとすれば,
も連続的に変わるから
における
の値も確定する.例えば右の図で,
(すなわち
)とするならば,
が曲線
を通って
に達するときには,
は主値(
)になるが,もしも曲線
を通るならば
になる.
を
のような区間に限れば
は確定する.それを
の一つの枝という.等式
は三つの
を任意の枝にしては成り立たない.そのとき両辺は
の整数倍だけ違うことがある.すなわち

のとき右辺の
を主値とすれば
だから
を得る.それはまちがいではないが,
は主値でない.
で表わすことができる.すなわち
または 
に関して解いて
に移れば

を主値として



の主値である.故に

の負の値を取るならば


の他の枝を取るならば
だから,
は
だけ変わる.すなわち二重符号
は
と
とに対応する
の二組の枝を与えるのである. 同様に

を
の主値とするならば,今度は



の他の枝からは,それぞれ
の他の枝
および
が生ずる.
の場合は少しく様子が違うが,かえって簡明である.今





のために
の他の枝からは
が生ずる.
変数を実数に限っても
の多意性が
の多意性の下に統一される.
実変数に関する三角函数,双曲線函数は複素変数に関する指数函数の一断面にほかならないから,それらの逆函数がすべて対数函数に包括されるのである.この認識は大切である.
[編集] 練習問題(4)
を正項級数とする.
を任意の正数列とするとき,十分大なる
に関して常に

は収束する; また,

が発散すれば,
も発散する(Kummer).

. [2º]
によって結果が違う.
で,
とする.もしも
が発散すれば


とすれば

ならば






を
に換えて,初めの積分を
の形に変形して後,
に関して微分するのである.最後に
とする.変数を
に換えてもできる.
を
に関して
で微分して,変数
を
に換える.

とすれば
故に
は
に関して定数である.
と置いて
を得る.
とすれば

が自然数なるとき,左辺を直接に計算すれば,右辺の級数の和が求められる.例えば
とすれば 
とすれば 
と置けば,
は 

と置けば
.故に 
なるとき,
.
は前出(
として,かつ
と書くべきであるが,それは,ここでは無益の煩雑であろう.
を代用すればよい.





は連続であったから,





において 
のときには


に関しては
. すなわち上記
は次の性質を有する函数である:



は 
と区域
とに

(




.故に 
の略記.





を代用すれば
を得る.
として計算するがよい.
が複素数であっても成り立つから,
なるとき収束するならば,
なる
が有界ならば,定理は成り立つ.
が存在するときは,


)で,![\begin{array}{r|ccrr}
\dfrac{16}{5}=3.200\;000\quad & & [1] & & \\ \\
\dfrac{16}{5^3}=0.128\;000\quad &\quad\div3=0.042\;000 & [2] & 0.042\;666\\[-5pt]
& & & \begin{array}{r}0.000\;029\!\!\!\;\!\\[-2pt]0.016\;736\!\!\!\;\!\\\hline\end{array}\\[-5pt]
\dfrac{16}{5^5}=0.005\;120\quad &\quad\div5=0.001\;024 & [3] & 0.059\;431 & [2]+[4]+[6]\\ \\
\dfrac{16}{5^7}=0.000\;204\quad &\quad\div7=0.000\;029 & [4] & \begin{array}{r}
3.201\;024\!\!\!\;\!\\[-1pt]-0.059\;431\!\!\!\;\!\\\hline\end{array} & \begin{align}
&[1]+[3]\\[-4pt]-(&[2]+[4]+[6])\!\!\end{align}\\
& & & 3.141\,593\\
\dfrac{16}{5^9}=0.000\;008\quad &\quad\div9=0.000\;000 & [5] & & \\ \\
\dfrac{4}{239}=0.016\;736\quad & & [6] & & \\ \\
\dfrac{4}{239^2}=0.000\;000\quad & & [7]
\end{array}](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/e/6/2/e62122c96a5fdc517c2f992239292e3c.png)

は任意(実数または複素数)であるが,
は
が負の整数ならば有限級数になる.その他の場合,収束半径は
項と第 
に種々の値を与えるとき,超幾何級数の特別の場合として,多くのよく知られた級数が生ずる.例えば


を表わす(
とすれば,
を代用して



![\lim\sqrt[n]{n!}=\infty.](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/0/c/f/0cf47231ec03b756c47e4deb933dcc62.png)

とすれば,
が得られる.
)から出発するのが適当であるが,その過程は上記のように単純でない.今かりに微積分法の発見以前に,三角函数が知られていなかったと想像するならば,円弧の計算の必要上,自然に
を考察して,楕円函数発見の糸口を得たのである.
は
として定義するのである.複雑な
ならば

のときは疑問である.

から上記の展開を得る(級数の値は