解析概論/第4章

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目次

[編集] 第 4 章 無限級数 一様収束

[編集] 42.無限級数

数列 a_1, a_2, \cdots, a_n, \cdots の最初の n 項の和を

s_n = a_1 + a_2 + \cdots + a_n

とする.もしも(有限なる)極限値

\lim_{n \to \infty} s_n = s

が存在するならば,無限級数

\sum_{n = 1}^{\infty} a_n = a_1 + a_2 + \cdots + a_n + \cdots

収束するといい,極限 s をこの無限級数の和と略称する.極限値が存在しないとき( \lim s_n = \pm \infty をも含めていう)には無限級数は発散するという.発散する級数は直接には計算の用に立たない.

Cauchy の判定法(§6)によれば収束の必要かつ十分なる条件は, n を十分に大きくして,任意の  m > n に関して

|s_n - s_m| = \left| a_{n + 1} + \cdots + a_m \right|

がどんな \varepsilon よりも小さくされることである.すなわち

R_{n, m} = s_m - s_n = a_{n + 1} + \cdots + a_m

と置けば,或る番号以上 \left| R_{n, m} \right| < \varepsilon

故に収束の場合には部分和 s_n に対応する剰余 R_n ,すなわち

R_n = s - s_n = \sum_{p = 1}^{\infty} a_{n + p}

も収束して \lim_{n \to \infty} R_n = 0

特に a_n = s_n - s_{n - 1}だから, \lim_{n \to \infty} a_n = 0 は収束の必要条件である.しかし,それは十分なる条件ではない.

例えば調和級数 \textstyle 1 + \frac{1}{2} + \frac{1}{3} + \cdots

R_{n, 2n} = \frac{1}{n + 1} + \cdots + \frac{1}{2n} > \frac{1}{2n} \times n = \frac{1}{2}

だから発散する.

正項級数( a_n \geq 0 )の場合には, s_n は単調増大だから,収束の条件は s_n の有界性である.

級数 \textstyle \sum_{n = 1}^{\infty} a_n, \sum_{n = 1}^{\infty} b_n がそれぞれ a, b に収束するならば \textstyle \sum_{n = 1}^{\infty} (a_n + b_n)a + b に収束する.すなわち \textstyle \sum_{\nu = 1}^{n} ( a_\nu + b_\nu ) = \sum_{\nu = 1}^{n} a_\nu + \sum_{\nu = 1}^{n} b_\nu \to a + b (定理5).

同じ条件の下で,c が定数ならば \textstyle \sum_{\nu = 1}^{\infty} ca_\nu = ca .これらは収束の定義によって明白である.

無限級数から有限個の項を取り除き,またはそれに有限個の項を挿入しても,収束性に影響ののないことも同様である.

級数 \textstyle \sum a_n が収束すれば,連続する若干項を括弧でくくって一項としても,やはり同じ和に収束する.それは収束する数列 \{ s_n \} の部分数列を取ることに帰するからである(定理 3).しかし逆はいけない.例えば (1 - 1) + (1 - 1) + \cdots = 0 であるが,括弧をはずしてしまえば, 1 - 1 + 1 - 1 + \cdots は収束しない.

[編集] 43.絶対収束・条件収束

無限級数 \textstyle\sum a_n の項の絶対値の級数 \textstyle\sum |a_n| が収束するときは,原級数も収束する.――実際


   |R_{n, m}| = |a_{n + 1} + \cdots + a_m|
   \leqq |a_{n + 1}| + \cdots + |a_m|

で,仮定によって,右辺は n \to \infty のとき,限りなく小さくなるから,左辺も同様である.この場合に,級数 \textstyle\sum a_n絶対収束をするという.

級数が収束して,しかも絶対収束をしないときは,それを条件収束という.

絶対収束の無限級数は,おおむね有限和と同様の性質を有するが,条件収束の場合は,一般に取扱いがやっかいである.

そもそも,無数の正数 \{a_n\} が与えられているとき,番号にかまわず, 有限個の項を取って作られる部分和をかりに t と総称するならば,それら t の上限をもって和 \textstyle s = \sum a_n を定義することは自然的であるが,正項級数の場合,この和は前節の定義における \lim s_n と一致する.――実際 s_n は部分和 t の中の一つであり,また任意の部分和 t の項は,十分大なる n に対する s_n の項の中に含まれるから,それは当然である.故に正項級数に関しては,和が項の順序に無関係であることは,有限和の加法の交換律と同様である.

もしも極限として \infty をも許すならば,正項級数は項の順序に無関係なる一定の和を有することになる.

正項級数\textstyle\sum a_n を無数の部分級数に分割するならば,収束の場合,部分級数も収束する.その和を \sigma_1, \sigma_2, \ldots とすれば, \sigma_1 + \sigma_2 + \cdots も収束して,その和は s に等しい.すなわち

(1)
s = \sum_{\nu = 1}^{\infty} \sigma_\nu

実際, \textstyle\sum \sigma_\nu の部分和は,前節に述べたように,原級数の部分級数だから, \textstyle\sum_{\nu = 1}^{p} \sigma_\nu \leqq s であるが, p は任意だから \textstyle\sum_{\nu = 1}^{\infty} \sigma_\nu は収束して,その和は s を越えない.一方任意の s_n の項は部分級数の間に分配されるから,十分大なる p を取れば, \textstyle s_n \leqq \sum_{\nu = 1}^{p} \sigma_\nu \leqq \sum_{\nu = 1}^{\infty} \sigma_\nun は任意だから,上限へ行って \textstyle s \leqq \sum_{\nu = 1}^{\infty} \sigma_\nu .故に (1) が成り立つのである.

s = \infty の場合も同様である.この場合,任意の M > 0 に対して,十分大きく n を取れば, s_n > M になるから,上記の \textstyle \sum_{\nu = 1}^{p} \sigma_\nu > M ,従って \textstyle\sum_{\nu = 1}^{\infty} \sigma_\nu = \infty である.すなわち (1)\infty = \infty の意味で成り立つ.

約言すれば,正項級数の和に関して,広い意味で,加法の結合律が成り立つのである.

さて, \textstyle\sum a_n において項の符号が一定でないときには,正項を p_1, p_2, \ldots ,負項を -q_1, -q_2, \ldots と書くとき, \textstyle p = \sum p_n, q = \sum q_n として

s = p - q

とするならば, p, q が双方共に \infty なる場合を除いて, s は一定である. p,q が共に有限( \ne \infty )なるときは, \textstyle\sum |a_n| = p + q で, \textstyle\sum a_n は本節の初めに掲げた定義に従って絶対収束であって, \textstyle\sum a_n の部分和は

s_n = \sum_{\nu = 1}^{l} p_\nu - \sum_{\nu = 1}^{m} q_\nu

のように書かれ, n \to \infty のとき, l \to \infty, m \to \infty だから,極限において,上記の通り s = p - q になる.

\textstyle\sum a_n において項の順序を変えても, p, q は変らないから, s も一定である.また \textstyle\sum a_n を部分級数に分割することは \textstyle \sum p_\nu, \sum q_\nu を分割することに帰するから,(1) も成り立つ.

p, q の中一方だけが \infty なるときには, s = + \infty または s = - \infty で,それはちょうど \lim s_n に等しい.項の順序を変えても,または級数を部分級数に分割しても,この関係は動かない.

以上は絶対収束の場合である.条件収束の場合には, pq も共に \infty で, s = p - q は無意味であるが, \textstyle s_n = \sum_{\nu = 1}^{l} p_\nu - \sum_{\nu = 1}^{m} q_\nu において,正項と負項との配置のためにかろうじて \lim s_n が確定するのである.従って項の順序が収束性に重大なる関係を有せねばならない.実際,条件収束の級数は,項の順序を適当に変更して,任意の和に収束せしめ,または収束性を失わしめることを,Dirichlet(1829)が指摘した.例えば, \textstyle\sum a_n の項の順序を次のように変更して,任意の正数 c に収束せしめることができる.すなわち,まず正項 p_1, p_2, \ldots を順次に加えて, p_\alpha に至って,和が初めて c よりも大きくなるとする.次に負項 -q_1, -q_2, \ldots を加えて, - q_\beta に至って,和が初めて c よりも小さくなるとする.次にはまた和が c よりも大きくなるまで正項 p_{\alpha + 1}, p_{\alpha + 2}, \ldots , p_{\alpha + \gamma} を加え,次に和が c よりも小さくなるまで,負項 -q_{\beta + 1}, \ldots , -q_{\beta + \delta} を加える. \textstyle\sum p_\nu\textstyle\sum q_\nu\infty だから,このような操作を限りなく継続することができるが,そのようにして生ずる級数

(2)
p_1 + p_2 + \cdots + p_\alpha - q_1 - q_2 - \cdots - q_\beta + p_{\alpha + 1} + \cdots + p_{\alpha + \gamma} - q_{\beta + 1} - \cdots - q_{\beta + \delta} + \cdots - \cdots

において \alpha, \beta, \gamma, \delta は少くとも 1 以上だから, \textstyle\sum a_n のすべての項が,いつかは一度用いられて,(2) は実際 \textstyle\sum a_n の項の順序の変更である.さてこの級数 (2)c に収束することは,その構成から明かであろう.実際,今二つの負項 -q_\lambda-q_{\lambda + 1} との間に正項 p_\mu, p_{\mu + 1}, \ldots, p_{\nu} が挟まれているとして,それらの項に対する部分和を考察する.そのとき -q_\lambda までの部分和は c より小さいが,それと c との差は q_\lambda を超えない.そこへ正項 p_{\mu}, p_{\mu + 1}, \ldots を加えて行けば,部分和は増大するが, p_\nu に達せぬうちは,部分和は c より小(大でない)で, c との差は q_\lambda を超えない. p_\nu に至って部分和は初めて c を超えるが, c との差は p_\nu を超えない.正項の間に挟まれた負項に対する部分和も同様で,部分和 s_nc との差は,符号の変わるところにある p_\nu, q_\lambda を超えない.然るに, \textstyle\sum a_n は収束するから,番号が限りなく大きくなるとき, p_\nuq_\lambda も限りなく小さくなる.故に (2)c に収束する.

同じようにして,部分和を任意の値 c_1, c_2 に集積せしめ,または絶対値において限りなく大きくすることもできるであろう[* 1]

収束する無限級数において, \lim s_n = s を和といっても,それは単に称呼であって, s は有限個の数の和ではないから,有限個の数の加法に関する法則が,そのまま無限級数の和にも通用することは,もちろん期待されない.然るに絶対収束の場合には,無限級数の和に関しても,交換律が成立することは上記の通りである.Riemann がいったように,“絶対に収束する級数にのみ有限数の和の法則が適用されて,それのみが項の総計とみなしうるのである.”収束性を度外において,無限級数を有限級数のように放漫に取扱って,しばしば不可解の矛盾に逢着したことは,18世紀数学の苦い経験であったのである.

絶対収束をする無限級数に関しては,有限級数と同じように,積が分配律によって求められる.今

A = \sum_{n = 1}^{\infty} a_n, B = \sum_{n = 1}^{\infty} b_n

を絶対収束とする.分配律の意味は

(3)
AB = a_1b_1 + a_1b_2 + a_2b_1 + a_1b_3 + a_2b_2 + a_3b_1 + \cdots

で,かつ右辺の級数が絶対収束をするのである.すなわち番号 m, n のすべての組合せを取って a_mb_n を任意の順序に並べるとき,級数 \textstyle\sum a_mb_n が収束して,その和は常に AB に等しいのである. 今その証明を述べる. \textstyle\sum a_mb_n の部分和に含まれる番号 m, n の最大のものをそれぞれ \mu, \nu とすれば,その部分和の項は有限級数の積 \textstyle\left( \sum_{p = 1}^{\mu} a_p \right) \left( \sum_{p = 1}^{\nu} b_q \right) を分配律によって展開するときにでてくる項の一部分であるから,この部分和に関して,

\sum|a_mb_n| \leqq \sum_{p = 1}^{\mu}|a_p| \sum_{q = 1}^{\nu}|b_q|

然るに仮定によって, \textstyle\sum a_n, \sum b_n は絶対収束をするから,部分和 \textstyle\sum|a_mb_n| は有界,従って無限級数 \textstyle\sum a_mb_n は絶対収束をする. 級数 \textstyle\sum a_mb_n が絶対収束だから,その和 S を求めるためには,項の順序を任意に取ってよく,またそれらの項を任意にくくってもよい.よって今 \textstyle\sum a_n, \sum b_n の第 n 項までの部分和を A_n, B_n として

S_n = A_1B_1 + (A_2B_2 - A_1B_1) + \cdots + (A_nB_n - A_{n - 1}B_{n - 1})

で示されるように, \textstyle\sum a_mb_n の項を排列する. すなわち

S = a_1b_1 + (a_1b_2 + a_2b_1 + a_2b_2) + (a_1b_3 + a_2b_3 + a_3b_1 + a_3b_2 + a_3b_3) + \cdots

然らば

S_n = A_nB_n

従って

S = \lim_{n \to \infty} S_n = \lim_{n \to \infty} A_nB_n = AB
[附記] 
上記の積 a_mb_n において m + n - 1 = k なるものをまとめて一項として,それを c_k として級数
C = \sum_{k = 1}^{\infty} c_k,\quad c_k = a_1b_k + a_2b_{k - 1} + \cdots + a_kb_1
を作る.然らば A, B が収束して,そのうち一方が絶対収束ならば, C も収束して AB = C (Mertens).この定理は本書で応用の機会がないから,説明を省略する. またもし A, B が収束しかつ C も収束するならば, AB = C§52参照).

数列または級数の収束は複素数にも適用される.複素数の四則および複素数 z = x + yi を平面( z 平面)上の点 (x, y) で表す方法は既知とする[* 2].今一,二の要項を述べるならば,点 (x, y) の極座標を (r, \theta) とすれば, z = x + yi = r(\cos \theta + i \sin \theta) で, rz絶対値といい,それを |z| と記るす.また \thetaz偏角といい,それを \arg z と書く.然らば

|zz'| = |z| \cdot |z'|, \quad \arg zz' \equiv \arg z + \arg z' \pmod{2\pi}

特に重要なのは不等式 |z + z'| \leqq |z| + |z'| ,あるいは一般に

(4)
|z_1 + z_2 + \cdots + z_n| \leqq |z_1| + |z_2| + \cdots + |z_n|

である.

複素数列 \{z_n\} において, z_n = x_n + y_n i とすれば,それは z 平面上の点列 (x_n, y_n) で表わされる.数列 \{z_n\} の極限が \lambda = a + bi であるとは,点列 P_n = (x_n, y_n) の極限が点 L = (a, b) であることを意味する.すなわち n \to \infty のとき x_n \to a,\ y_n \to b であるが,むしろ実数部と虚数部とに分けないで,距離 P_n L \to 0 と考えるがよい. P_n L = \sqrt{(x_n - a)^2 + (y_n - b)^2}|z_n - \lambda| に等しいから Cauchy の判定律は n > N, m > n のとき P_n P_m = |z_n - z_m| < \varepsilon で,すなわち実数の場合と同じである.

級数 \textstyle\sum z_n の収束は数列 s_n = \sum_{\nu = 1}^{n} z_\nu の収束にほかならないから,その意味は明白である.絶対収束は,むしろ複素数の範囲において,その意味が真に了解されるというべきであろう.すなわち正項級数 \textstyle\sum |z_n| が収束すれば,

|z_{n + 1} + \cdots + z_m| \leqq |z_{n + 1}| + \cdots + |z_m| < \varepsilon \quad (n > N)

だから, \textstyle\sum z_n が収束するのであるが,そのとき項の順序が和の値に影響しないことも,実級数の場合と同様である.実際, z_n = x_n + y_n i において |x_n| \leqq |z_n|, |y_n| \leqq |z_n| だから, \textstyle\sum |z_n| が収束すれば, \textstyle\sum_{n = 1}^{p} |x_n|, \sum_{n = 1}^{p} |y_n| は有界,従って収束する.すなわち \textstyle\sum x_n, \sum y_n は絶対収束をする.

そのほか絶対収束に関して本節で述べたことはすべて複素級数にも通用する.証明の根拠が不等式 (4) にあるからである.条件収束の問題は,それと違って,複素級数の場合,いっそうむずかしい.


  1. 条件収束とは,項の順序を乱さない条件の下において,一定の和に収束することを指すのである.条件収束をまた短く半収束(semiconvergent)ともいう.また反対に絶対収束を無条件収束ともいう.
  2. 附録 I,参照.

[編集] 44.収束の判定法(絶対収束)

実際に与えられた級数 \textstyle\sum a_n の収束性を判定する実用的の方法のうちで,最も普通に用いられるもの二,三を次に述べる.ただし,本節では絶対収束を考察するから,正項級数のみを取扱う.

(I)
k1 よりも小なる正の定数で,或る番号以上では常に \sqrt[n]{a_n} < k ならば, \textstyle\sum a_n は収束する.
[注意] 
有限個の項を取り除いても収束性に影響はないから‘或る番号以上’ということわりを取り去って証明をすれば十分である.以下同様.
[証]
仮定によって a_n < k^n, 0 < k < 1 .故に
s_n < k + k^2 + \cdots + k^n < \frac{k}{1 - k}
すなわち s_n は有界.従って \textstyle\sum a_n は収束する.
(II)
k1 よりも小なる正数で,或る番号以上常に
\frac{a_{n + 1}}{a_n} < k
ならば, \sum a_n は収束する.
[証]
仮定によって
a_n < a_1 k^{n - 1}
故に
s_n < a_1(1 + k + \cdots + k^{n - 1}) < \frac{a_1}{1 - k}.
すなわち s_n は有界,従って \textstyle\sum a_n は収束する.
[注意] 
§6 に述べた \varlimsup を使えば (I)(II)の判定法を次のように述べることができる. \textstyle\varlimsup_{n\to\infty} \sqrt[n]{a_n} = l と置けば, l < 1 なるとき \textstyle\sum a_n は収束, l > 1 なるとき発散, l = 1 なるときは疑問である.

実際 l < 1 のとき, l < k < 1 とすれば,\varlimsup の定義によって,或る番号以上 \sqrt[n]{a_n} < k であるから, \textstyle\sum a_n は収束する.また l > 1 ならば, \sqrt[n]{a_n} > 1 なる n が無数にあるから,収束の必要条件 a_n \to 0 が満たされない.

同様に \textstyle\varlimsup \frac{a_{n + 1}}{a_n} < 1 ならば収束, \textstyle\varliminf \frac{a_{n + 1}}{a_n} > 1 ならば発散,その他の場合は疑問.

上記 (I)(II) では \textstyle\sum a_n を幾何級数 \textstyle\sum k^n と比較して収束性を判定したのであるが,級数を無限区間の積分と比較して有効なる場合がある.次にその一例を掲げる.

(III)
\sum_{n = 1}^{\infty} \frac{1}{n^s} \quad (s > 0)
s > 1 ならば収束し, s \leq 1 ならば発散する.
[証]
x > 1 とすれば \tfrac{1}{x^s} は単調に減少するから
(1)
\int_{n}^{n + 1} \frac{dx}{x^s} < \frac{1}{n^s} < \int_{n - 1}^{n} \frac{dx}{x^s}
故に s > 1 ならば
\sum_{n = 2}^{m} \frac{1}{n^s} < \int_{1}^{m} \frac{dx}{x^s} < \int_{1}^{\infty} \frac{dx}{x^s} = \frac{1}{s - 1}
従って \textstyle\sum \frac{1}{n^s} は収束する.

故に s > 1 なる区間において \textstyle\sum_{n = 1}^{\infty} \frac{1}{n^s} の和は s の函数である.それを \zeta(s) と書く. \zeta (s)Riemannゼータ函数という.

次に s = 1 とすれば,
\sum_{n = 1}^{m} \frac{1}{n} > \int_{1}^{m + 1} \frac{dx}{x} = \log (m + 1)
故に \textstyle\sum_{n = 1}^{\infty} \frac{1}{n} は発散する(既述). s < 1 ならば, \textstyle\sum_{n = 1}^{\infty} \frac{1}{n^s} はなお強い理由で発散する.

同じように

\sum_{n = 2}^{m} \frac{1}{n \log n} > \int_{2}^{m + 1} \frac{dx}{x \log x} = \left. \log \log x \right| _{2}^{m + 1} \to \infty

故に \textstyle\sum_{n = 2}^{\infty} \frac{1}{n \log n} は発散する. 一般に

\sum \frac{1}{(n \log n)^s}, \sum \frac{1}{n \log n (\log \log n)^s}, \cdots

s > 1 ならば収束, s \leq 1 ならば発散する.

一般に, a \leq x なるとき f(x) が正で単調減少ならば, \textstyle\sum_{n = 1}^{\infty} f(a + n)\int_{a}^{\infty} f(x)dx と同時に収束または発散する.

Eulerの定数
上記 (1) において s = 1 とすれば
\int_{n}^{n + 1} \frac{dx}{x} < \frac{1}{n} \quad (n \geqq 1)
故に
1 + \frac{1}{2} + \cdots + \frac{1}{n} > \int_{1}^{n + 1} \frac{dx}{x} = \log (n + 1),
従って
1 + \frac{1}{2} + \cdots + \frac{1}{n} - \log n > \log \frac{n + 1}{n} > 0.
また
\frac{1}{n + 1} < \int_{n}^{n + 1} \frac{dx}{x} = \log (n + 1) - \log n.
故に \textstyle 1 + \frac{1}{2} \cdots \frac{1}{n} - \log nn が増すとき単調に減少する.それが正(すなわち下方に有界)だから,
\lim_{n \to \infty} \left( 1 + \frac{1}{2} + \cdots + \frac{1}{n} - \log n \right) = C
が存在する.この極限値 CEuler の定数という. C の値は 0.5772156 \cdots である[* 1]e\pi とは違って, C の数論的の性質は未知である.例えば C が無理数であるかどうかも知れていない.
[附記] 
上記の比較法は、なお若干拡張して利用することができる.まず次の例は最も簡単である.
(IV)
正項級数 \textstyle\sum u_n, \sum v_n において,十分大なる n に関して常に
0 < A < \frac{u_n}{v_n} < B
ならば(例えば \textstyle\lim_{n \to \infty} \frac{u_n}{v_n} > 0 のとき),二つの級数は共に収束または共に発散する.
[証]
\textstyle\sum_{n = 1}^{m} u_n < B \sum_{n = 1}^{m} v_n.故に \sum v_n が収束すれば \sum u_n も収束する.また \textstyle\sum_{n = 1}^{m} u_n > A \sum_{n = 1}^{m} v_n.故に \textstyle\sum v_n が発散すれば, \textstyle\sum u_n も発散する.
[例]
f(x)p 次の多項式として f(x) = ax^p + bx^{p - 1} + \cdots + l  (a \neq 0) とすれば
\sum \frac{1}{|f(x)|^s} は  \begin{cases} 
  s>\dfrac{1}{p}\\ s\leqq\dfrac{1}{p}
\end{cases}  なるとき収束.
 なるとき発散.
x \to \infty のとき \tfrac{f(x)}{x^p} \to a だから,この級数を既知の級数 \textstyle\sum \frac{1}{n^{ps}} と比較すればよい.
(V)
正項級数 \textstyle\sum u_n, \sum v_n において,十分大なる n に関して常に
(2)
\frac{u_n}{u_{n + 1}} \geqq \frac{v_n}{v_{n + 1}}
とする.然らば
(1º)
\textstyle\sum v_n が収束すれば, \textstyle\sum u_n も収束する.
(2º)
\textstyle\sum u_n が発散すれば, \textstyle\sum v_n も発散する.
[証]
例の通り,不等式 (2) はすべての n に関して成り立つと仮定してさしつかえない.然らば (2) から
\frac{u_1}{v_1} \geqq \frac{u_2}{v_2} \geqq \cdots \geqq \frac{u_n}{v_n} \geqq \cdots
故に \tfrac{u_1}{v_1} = A と置けば \textstyle u_n \leq Av_n, \sum_{n = 1}^{m} u_n \leq A \sum_{n = 1}^{m} v_n .故に \textstyle\sum v_n が収束すれば, \textstyle\sum u_n も収束する.(2º)(1º) の対偶である.

正項級数 \textstyle\sum u_n において \textstyle\lim_{n\to\infty} u_{n + 1} / u_n = l が存在する場合には,(II) によって l < 1 ならば級数は収束し, l > 1 ならば発散するが, l = 1 なる場合には,次の判定法がしばしば適用される.

(VI)
正項級数 \textstyle\sum u_n において
(3)
\frac{u_n}{u_{n + 1}} = 1 + \frac{k}{n} + O\frac{1}{n^{1 + \delta}} \quad (\delta > 0)
とする[* 2].然らば
(1º)
k > 1 なるとき, \textstyle\sum u_n は収束,
(2º)
k \leq 1 なるとき, \textstyle\sum u_n は発散.
[証]
(1º)
仮定によって k > 1.そこで, k > s > 1 なる s を取って \textstyle\sum u_n を収束する級数 \textstyle\sum 1/n^s と比較する.(V) を応用するために v_n = 1 / n^s と置けば,Taylor の公式によって
(4)
\frac{v_n}{v_{n + 1}} = \left( \frac{n + 1}{n} \right) ^s = \left( 1 + \frac{1}{n} \right) ^s = 1 + \frac{s}{n} + O\frac{1}{n^2}
さて (3)(4) から
\frac{u_n}{u_{n + 1}} - \frac{v_n}{v_{n + 1}} = \frac{k - s}{n} + O\frac{1}{n^{1 + \delta}} - O\frac{1}{n^2}.
k - s > 0 だから,n が十分大なるとき
\frac{u_n}{u_{n + 1}} > \frac{v_n}{v_{n + 1}}.
故に (V) によって \textstyle\sum u_n は収束する.
(2º)
k < 1 なるときは,\textstyle\sum u_n を発散する級数 \textstyle\sum v_n = \sum \frac{1}{n} と比較する.このとき \textstyle n(\frac{v_n}{v_{n + 1}} - 1) = n(\frac{n + 1}{n} - 1)=1,\, n(\frac{u_n}{u_{n + 1}} - 1) \to k だから,ついには \textstyle \frac{v_n}{v_{n + 1}} > \frac{u_n}{u_{n + 1}} になってしまう.故に \textstyle\sum u_n は発散する.

これは簡単であるが, k = 1 なるときには,通用しない.この場合には \textstyle\sum u_n を発散級数 \textstyle\sum v_n = \sum \frac{1}{n \log n} と比較する.然らば

\frac{v_n}{v_{n + 1}} = \frac{(n + 1) \log (n + 1)}{n \log n} = 1 + \frac{(n + 1) \log (n + 1) - n \log n}{n \log n}
さて微分法の平均値の定理を函数 x \log x と区間 [n, n + 1] とに適用すれば,
(n + 1) \log (n + 1) - n \log n > \log n + 1.
よって
\frac{v_n}{v_{n + 1}} > 1 + \frac{1}{n} + \frac{1}{n \log n}
\frac{v_n}{v_{n + 1}}- \frac{u_n}{u_{n + 1}} > \frac{1}{n \log n} - O\frac{1}{n^{1 + \delta}} = \frac{1}{n} \left( \frac{1}{\log n} - O\frac{1}{n^\delta} \right).
\textstyle \frac{\log n}{n^\delta} \to 0 だから,ついには
\frac{v_n}{v_{n + 1}}  > \frac{u_n}{u_{n + 1}}.
故に \textstyle\sum u_n は発散する.
[例]
\tfrac{u_n}{u_{n + 1}}n の有理函数として
\frac{u_n}{u_{n + 1}} = \frac{n^p + an^{p - 1} + a'n^{p - 2} + \cdots}{n^p + bn^{p - 1} + b'n^{p - 2} + \cdots}
のように表わされるときには,
\frac{u_n}{u_{n + 1}} = 1 + \frac{a - b}{n} + O\frac{1}{n^2}.
すなわちここでは k = a - b だから,収束の必要かつ十分なる条件は a - b > 1 である(Gauss).

Gauss は,つとに(1812),このように有力な判定法を持っていて,超幾何級数の収束性を考察したのである.

[注意] 
応用上,たいがい (VI) によって収束性は判定される.それでいけない場合には,問題はむずかしい.

  1. Gauss全集3,154頁に C の数字40桁が載っている. C = 0.57721\ 56649\ 01532\ 86060\ 65120\ 90082\ 40243\ 10421
  2. 記号 O, o は前出(§15).

[編集] 45.収束の判定法(条件収束)

絶対収束をしない級数の収束性を判定することは,一般にむずかしい.次のは最も簡単な場合である.

(VII)
交代級数alternationg series
項が交互に正負なる級数を交代級数という.交代級数 a_1-a_2+a_3-a_4+\cdots において,\textstyle a_n>a_{n+1},\lim_{n\to\infty}a_n=0 ならば,この級数は収束する.
[証]
\textstyle \sum (-1)^{n-1}a_n の部分和を s_n とすれば

 s_{2m}=(a_1-a_2)+(a_3-a_4)+\cdots+(a_{2m-1}-a_{2m}),

 s_{2m+1}=a_1-(a_2-a_3)-(a_4-a_5)-\cdots-(a_{2m}-a{2m+1})=s_{2m}+a_{2m+1}.
故に仮定 a_n>a_{n+1} によって

 s_1>s_3>\cdots>s_{2m+1}>\cdots\cdots>s_{2m}>\cdots>s_4>s_2.
また仮定 a_n\to 0 によって s_{2m+1}-s_{2m}=a_{2m+1}\to 0.故に \textstyle \lim_{n\to\infty}s_n は存在して,級数は収束する.
[注意] 
剰余 R_n=\pm(a_{n+1}-a_{n+2}+\cdots) に関しては |R_n|<a_{n+1}.故に和 s の近似値として部分和 s_n を取れば,誤差は絶対値において省略された最初の項(すなわち a_{n+1})よりも小である.
[例] 
上記級数の例として,著名な
 1-\frac13+\frac15-\frac17+\cdots=\frac\pi 4,
 1-\frac12+\frac13-\frac14+\cdots=\log 2
を挙げる(その和が \tfrac\pi 4 または \log 2 であることは後に述べる). この第二の級数に関して次の考察を試みる.今
\begin{align}
  a_n&=1+\frac13+\frac15+\cdots+\frac1{2n-1},\\
  b_n&=\frac12+\frac14+\frac16+\cdots+\frac1{2n}
\end{align}
と置けば,CEuler の定数として(§44
a_n+b_n=\log 2n+C+o,
2b_n=\log n+C+o,
ただし,o は一般的に n\to\infty のとき 0 に収束する微小数を表わすのである[* 1].よって
\begin{align}
  a_n&= & \log 2+\frac12\log n+\frac C2+o,\\
  b_n&= &        \frac12\log n+\frac C2+o.
\end{align}
さて p,q を任意の自然数とすれば
\begin{align}
  a_{pn}&= & \log 2+\frac12\log pn+\frac C2+o.\\
  b_{qn}&= &        \frac12\log qn+\frac C2+o.
\end{align}
故に

  a_{pn}-b_{qn}=\log 2+\frac12\log\frac pq+o.
左辺は 1+\tfrac13+\tfrac15+\cdots から p 項,-\tfrac12-\tfrac14-\tfrac16-\cdots から q 項ずつ交互に取って作られたる級数(それをかりに L(p,q) と記るす)の (p+q)n 項までの部分和で,それが n\to\infty のとき \log 2\tfrac12\log\tfrac pq なる極限値を有する.さて L(p+q) において (p+q)n 項から (p+q(n+1) 項までの間の若干項の和は絶対値において \tfrac{p+q}{2n} よりも小であるから,級数 L(p,q) は収束して,その和は \log 2+\frac12\log\frac pq に等しい.特に p=q=1 とすれば,上記の通り

  1-\frac12+\frac13-\frac14+-\cdots=\log 2,
また p=2,q=1 とすれば

  1+\frac13-\frac12+\frac15+\frac17-\frac14+\cdots=\frac32\log 2,
等々.
これは §43 に述べた条件収束の一例である.
(VIII)
Abel の級数変形法
級数 \textstyle \sum a_n(複素級数でもよい)の部分和を

  s_n=a_1+a_2+\cdots+a_n
と置いて,それは有界とする.すなわち
(1)
|s_n|\leqq \sigma\qquad(n=1,2,\ldots)
とする.また正なる単調減少の数列
(2)

  \varepsilon_1\geqq\varepsilon_2\geqq\cdots\geqq\varepsilon_n\geqq\cdots>0
を取って,級数
S=\sum a_n\varepsilon_n
を考察する.さて

  S_{n,m}=a_n\varepsilon_n+a_{n+1}\varepsilon_{n+1}+\cdots a_m\varepsilon_m
と置けば(m\geqq n\geqq 1,s_0=0),
\begin{align}
 S_{n,m}&=(s_n-s_{n-1})\varepsilon_n+(s_{n+1}-s_n)\varepsilon_{n+1}+
          \cdots+(s_m-s_{m-1})\varepsilon_m\\
 &=s_n(\varepsilon_n-\varepsilon_{n+1})+s_{n+1}(\varepsilon_{n+1}-\varepsilon_{n+2})+
   \cdots+s_{m-1}(\varepsilon_{m-1}-\varepsilon_{m})
   -s_{n-1}\varepsilon_n+s_m\varepsilon_m.
\end{align}
故に (1)(2)から

  |S_{n,m}|\leqq\sigma\{
    (\varepsilon_n-\varepsilon_{n+1})+(\varepsilon_{n+1}-\varepsilon_{n+2})+
     \cdots+(\varepsilon_{m-1}-\varepsilon_m)
     +\varepsilon_n+\varepsilon_m
  \},
すなわち
(3)
|S_{n,m}|\leqq 2\sigma\varepsilon_n.
特に n=1 から始めると,a_1=s_1 で,上記の -s_{n-1}\varepsilon_n なる項がなくなるから,S の部分和 S_m=A_{1,m} に関しては
(4)
|S_m|\leqq\sigma\varepsilon_1.
これが Abel の級数変形の公式である.さて,
(1º)
上記のように |s_n|\leqq\sigma として,かつ \varepsilon_n\to 0 とする.然らば (3) によって級数 \textstyle S=\sum a_n\varepsilon_n は収束し,従って (4) によって
|S|\leqq\sigma\varepsilon_1.
(2º)
今度は \textstyle s=\sum a_n が収束するとする.然らば(\varepsilon_n\to 0 でなくても)\textstyle S=\sum a_n\varepsilon_n は収束するが,今度も
|S|\leqq\sigma\varepsilon_1.
実際,数列 \varepsilon_n は単調減少だから,\varepsilon_n\to l\geqq 0.よって \varepsilon_n-l\varepsilon_n に代用して考えるならば,部分和に関して

  \sum a_n\varepsilon_n=\sum a_n(\varepsilon_n-l)+l\sum a_n
で,右辺の二つの級数は収束するから,\textstyle S=\sum_{n=1}^\infty a_n\varepsilon_n も収束する.従って (4) から |S|\leqq\sigma\varepsilon_1 を得る.

  1. §15 の用例によれば oo(1) と書くべきであるが,それは,ここでは無益の煩雑であろう.

[編集] 46.一様収束

或る区間に属する各点 x において,函数の一列


  f_1(x),f_2(x),\ldots,f_n(x),\ldots

が収束するときは,極限値はその区間における x の函数である.それを f(x) とする.この場合,\varepsilon>0 を任意に与えるとき,それに応じて或る自然数 N が存在して,n>N なるとき |f(x)-f_n(x)|<\varepsilon になる.しかし N の値は一般には x の値に従って変動するであろう.もしも N\varepsilon にのみ関係して,区間における x の位置に関係しない一定の値を有しうるならば,すなわち

n>N,\ a\leqq x\leqq b なるとき |f(x)-f_n(x)|<\varepsilon

ならば函数列 \{f_n(x)\}[a,b] において一様に(または平等に)f(x) に収束するという. 無限級数の項 a_n=a_n(x)x の函数である場合に,或る区間において \textstyle s_n(x)=\sum_{\nu=1}^n a_\nu(x) が一様に収束するとき,この級数を一様に収束するという.この場合 s_n(x)\to s(x) として


  s(x)-s_n(x)=\sum_{\nu=n+1}^\infty a_\nu(x)=R_n(x)

と置けば,任意の \varepsilon に対応して,x に関係しない一つの定数 N があって,n>N のとき常に |R_n(x)|<\varepsilon になる.換言すれば R_n(x) が一様に 0 に収束する.

級数の一様収束は,しばしば,次の定理によって確かめられる.

定理 39.
或る区間において常に |a_n(x)|\leqq c_n,(n=1,2,\ldots)c_n は正の定数で,\textstyle\sum_{n=1}^\infty c_n が収束すれば,級数 \textstyle\sum_{n=1}^\infty a_n(x) はその区間において一様に収束する(絶対収束).
[証]

  |R_{n,m}|=\left|\sum_{\nu=n+1}^m a_\nu(x)\right|
  \leqq\sum_{\nu=n+1}^m c_\nu\leqq \sum_{\nu=n+1}^\infty c_\nu=r_n,
r_n は級数 \textstyle\sum c_n に関する剰余である. 故に \textstyle\sum a_n(x) は収束する.そうして

 |R_n(x)|=\lim_{m\to\infty}|R_{n,m}|\leqq r_n.
故に,n>N のとき r_n<\varepsilon とすれば x に関係なく |R_n(x)|<\varepsilon
(証終)

一様収束の意味は,反面から一様でない収束の場合を考察すれば,よくわかるであろう.次に一、二の簡単な例を掲げる.

[例 1]
区域 0\leqq x\leqq 1 において f_n(x)=x^n とすれば,函数列 \{f_n(x)\} は収束する.極限は
f(x)=\begin{cases}0&(0\leqq x<1),\\1&(x=1).\end{cases}
この場合,収束は一様でない.x^n<\varepsilon であるためには n\log x<\log\varepsilon\log x<0 だから n>\tfrac{\log\varepsilon}{\log x} なることを要するから,x が 1 に近づくに従って N を限りなく大きく取ることを要する.曲線 y=x^nn\to\infty のとき直角に折れた折線 OAB に近づくけれども,OAB は一つの函数のグラフでありえないから,函数 x^n の極限はやむをえず x=1 において不連続になるのである.
[例 2]

  s(x)=\sum_{n=0}^\infty \frac{x^2}{(1+x^2)^n}.
この無限級数は任意の x に関して収束する.x=0 ならばもちろん s(x)=0 で,x\ne 0 ならば,公比が 1/(1+x^2)<1 なる幾何級数で,

  s(x)=\frac{x^2}{1-\frac{1}{1+x^2}}=1+x^2.
この場合,x=0 を含む区間において,収束が一様でない.実際

  R_n(x)=\sum_{\nu=n+1}^\infty\frac{x^2}{(1+x^2)^\nu}=\frac{1}{(1+x^2)^n}
で,これが \varepsilon よりも小なるためには,n>-\log\varepsilon/\log(1+x^2) なることを要するから,x0 に近づくに従って,N を限りなく大きく取らねばならない.この例でも,連続函数 s_n(x) の極限なる s(x) が不連続である.曲線 y=s_n(x)n\to\infty のとき,次の図のような二股の線に近づくが,s(x)x=0 において不連続になるのである.

ファイル:図

上記の例のように,連続函数の極限(または連続函数を項とする無限級数の和)が必らずしも連続でないことを Abel が初めて指摘した.Abel の書簡(1826)に次の一節がある. ファイル:図

x\pi よりも小なるときには

[*]

  \frac{x}{2}=\sin x-\frac{\sin 2x}2+\frac{\sin 3x}3-\cdots

であることは,確に証明される.そこで,x=\pi でも,この等式が成り立つように思われるだろう.然るにそのとき


  \frac{\pi}2=\sin\pi-\frac{\sin2\pi}2+\frac{\sin2\pi}3-\cdots=0.
 (不合理)

このような例はいくらでも挙げられる….”

上記 [*] の右辺の級数は x の任意の値に関して収束する.その和 s(x) のグラフは前頁の図のようである.その証明は後に述べるが,それは技術的に簡単でない.Abel が指摘した上記18世紀数学の迷信を簡便に見せるために,例 12 などを練習用として出したのである.

次の節に述べるように,連続函数の極限は収束が一様なる区間においては連続であるが,それは必要なる条件ではない.今その一例をここに掲げておく.

[例 3]
f_n(x) を次のグラフで示す連続函数とする(x\geqq 0).これは収束して極限は f(x)=0.(実際,x=0 では f_n(x)=0 で,もちろん f(x)=0,また x>0 ならば,十分大なる nn>\tfrac{2}{x})に関しては f_n(x)=0 だから,f(x)=0)しかし収束は 0 の近傍で一様でない. |f_n(x)-f(x)|<\varepsilon0 を含む区間では不可能である.これは一様収束でなくても,連続函数の極限が連続でありうることを示す一例である.もしsも上記の代りに,f_n(x)=n^2xe^{-nx} とすれば,同様の例が滑らかなグラフで作られるであろう.

ファイル:図

一様収束は二次元以上にも適用される.すなわち或る区域 K の各点 P において函数列 \{f_n(P)\} が収束するとき,その極限を f(P) とすれば,区域 K における P の位置に関係しない番号 N があって,例の通り n>N なるとき |f(P)-f_n(P)|<\varepsilon ならば,\{f_n(P)\}K において(P に関して)一様に収束するというのである.この後,本章で一様収束に関して述べることはすべて二次元以上にも通用する.

二次元の一例として複素変数 z=x+yi を挙げておこう.複素変数 z の函数 w=f(z) の意味は実変数の場合と同様で,z の各〻の値に w の確定の値が対応するのである.また f(z) が連続であるとは |z-z'| を十分小さくして |f(z)-f(z')| をどれほどでも小ならしめうることをいう.すなわち z'\to z のとき f(z')\to f(z).ただし f(z) の微分,積分に関しては後に述べるであろう(第 5 章).

[編集] 47.無限級数の微分積分

函数項の無限級数の微分積分は一様収束の仮定の下においては簡明で,従って実用的である.次の定理は最も基本的である.

定理 40.
A
ある区域において,a_n(x) が連続で,\textstyle\sum a_n(x) が一様に収束するならば,和 s(x) は連続である.
B
同じ条件の下において,\textstyle\sum a_n(x) を項別に積分することができる.そうしたときに生ずる級数も一様収束をするから,項別積分は幾回でも繰り返えされる.
C
\textstyle \sum a_n(x)=s(x) が収束し,a_n(x) が微分可能,a_n'(x) が連続で,\textstyle a_n'(x)=t(x) が一様に収束するならば
s'(x)=t(x)
すなわち \textstyle s(x)=\sum a_n(x) が項別に微分される:

  \frac{d}{dx}\sum a_n(x)=\sum\frac{d}{dx}a_n(x).
[証(A)]
\varepsilon に対応して n が十分大なるとき,区間において一様に |R_n(x)|<\varepsilon.さて
s(x)=s_n(x)+R_n(x)
で,s_n(x)n 個の連続函数の和だから連続である.よって,x,x+h が区間に属するとき,

  s(x+h)-s(x)=s_n(x+h)-s_n(x)+R_n(x+h)-R_n(x)
において,h を十分小さく取れば,
|s_n(x+h)-s_n(x)|<\varepsilon.
然るに一様収束の仮定によって x,h に関係なく

  |R_n(x+h)|<\varepsilon,\quad |R_n(x)|<\varepsilon,
故に
|R_n(x+h)-R_n(x)|<2\varepsilon,
従って
|s(x+h)-s(x)|<3\varepsilon.
すなわち s(x) は連続である.
[証(B)]
Aによって s(x) は連続,従って積分可能である.さて仮定によって,\varepsilon に対応して十分大なる n に関して,区間 [a,b] において[* 1]
|s(x)-s_n(x)|<\varepsilon.
従って

  \left|\int_a^b\{s(x)-s_n(x)\}dx\right|<\varepsilon(b-a).
有限項の和に関しては,もちろん項別積分が許されるから(§31,(2º)),

  \int_a^b s_n(x)dx=\sum_{\nu=1}^n\int_a^b a_\nu(x)dx.
故に
(1)

  \left|\int_a^b s(x)-\sum_{\nu=1}^n\int_a^b a_\nu(x)dx\right|<\varepsilon(b-a),
すなわち

  \int_a^b f(x)\,dx=\sum_{\nu=1}^\infty a_\nu(x)\,dx.
積分区間の上の限界を [a,b] 内の任意の点 x としても同様であるが,その際 (1) は右辺が \varepsilon(b-a) のままで成り立つから,

  \sum_{\nu=1}^\infty\int_a^x a_\nu(x)\,dx=\int_a^x s(x)\,dx
は一様収束である.よってさらに項別積分を行ってもよい.
上の証明からわかるように,a_n(x) が積分可能で,かつ s(x) も積分可能ならば,Bは成り立つ.同じ条件の下において \textstyle \sum a_n(x) の一様収束性の代りに部分和 s_n(x) の一様有界性(n に無関係なる M をもって |s_n(x)|<M)を仮定するだけでも十分である[Arzelà の定理].その証明はむずかしいから,ここでは述べない.
[証(C)]
仮定を再記すれば,
(1º)
\sum_{n=1}^\infty a_n(x)=s(x), (収束)
(2º)
\sum_{n=1}^\infty a_n'(x)=t(x), (一様収束)
(3º)
a_n'(x) は連続函数.
結論は s'(x)=t(x) である. さて (2º)(3º) からAによって t(x) は連続,またBによって

  \int_{x_0}^x t(x)\,dx=\sum_{n=1}^\infty a_n'(x)\,dx,
ただし a\leqq x_0<x\leqq b(3º) から

  \int_{x_0}^x a_n'(x)\,dx= a_n(x)-a_n(x_0).
故に
(2)

  \int_{x_0}^x t(x)\,dx=\sum_{n=1}^\infty (a_n(x)-a_n(x_0)).
さて (1º) から

  \sum_{n=1}^\infty a_n(x)=s(x),\quad \sum_{n=1}^\infty a_n(x_0)=s(x_0),
従って

  \sum_{n=1}^\infty (a_n(x)-a_n(x_0))=s(x)-s(x_0),
故に (2) から

  \int_{x_0}^x t(x)\,dx=s(x)-s(x_0).
t(x) が連続であるから(上述),微分して
t(x)=s'(x).
(証終)

上記証明において仮定 がすべて用いられている.仮定はずいぶん多い.しかし仮定 は,区域内の一点 x_0 において成り立てば十分である.そのとき (2) によって \textstyle s(x)=\sum a_n(x) が区域内で収束することがわかる.また に関しては a_n(x) の微分可能性だけを仮定すれば十分で,a_n'(x) の連続性を仮定しなくてもよいのである.これらは微細な論点だけれども,次にそれを証明する.まずAを次のように若干精密化する.

A′)
区間 a<x<b において u_n(x) は連続で,\textstyle \sum u_n(x) は一様に収束し,x\to a のとき u_n(x)\to u_n とすれば,\textstyle \sum u_n は収束して,x\to a のとき

  \sum u_n(x) \to \sum u_n.
[証]
x=a において u_n(x) の定義を(必要に応じて変更または拡張して)u_n(a)=u_n とすれば,仮定によって u_n(x)a\leqq x<b において連続になる.さて \textstyle \sum u_n(x) は一様収束だから a<x<b なるとき,

  \left|\sum_{\nu=n}^m u_\nu(x)\right|<\varepsilon.
よって x\to a の極限へ行けば

  \left|\sum_{\nu=n}^m u_\nu(a)\right|\leqq\varepsilon.
故に \textstyle \sum u_n(x)a\leqq x<b において一様収束,従ってAによって \textstyle \sum u_n(x)a\leqq x<b において連続,特に \textstyle \lim_{x\to a}\sum u_n(x)=\sum u_n(a)=\sum u_n.
C′)
区間 Ka\leqq x\leqq b,において,u_n(x) は微分可能で,
t(x)=\sum u_n'(x)
は一様収束とする.また区間内の一点 x_0 において \textstyle \sum u_n(x_0) は収束すると仮定する.然らば s(x)=\sum u_n(x) は区間 K において一様収束で,
s'(x)=t(x).
[証]
仮定によって,n を十分大きく取って,区間 K において

  \left|\sum_n^m u_\nu'(x)\right|<\varepsilon
 また 
  \left|\sum_n^m u_\nu(x_0)\right|<\varepsilon
とする.さて微分法の平均値定理を \textstyle \sum_n^m u_\nu(x) に適用して

  \sum_n^m u_\nu(x)-\sum_n^m u_\nu(x_0)=(x-x_0)\sum_n^m u_\nu'(x').
  \quad(x_0\lessgtr x' \lessgtr x)
故に

  \left|\sum_n^m u_\nu(x)-\sum_n^m u_\nu(x_0)\right|<(b-a)\varepsilon,
従って

  \left|\sum_n^m u_\nu(x)\right| 
  < \left|\sum_n^m u_\nu(x_0)\right|+(b-a)\varepsilon
  < (b-a+1)\varepsilon.
故に \textstyle \sum u_m(x)K において一様に収束する.その和を s(x) とする. さて x,x+h を区間内の二点,x' をその中間値とすれば

  \left|\sum_{\nu=n}^m \frac{u_\nu(x+h)-u_\nu(x)}{h}\right|
  =\left|\sum_{\nu=n}^m u_\nu'(x')\right|<\varepsilon.
故に

  v_n(h)=\frac{u_n(x+h)-u_n(x)}{h}
と置けば,\textstyle \sum v_n(h)0<h<c\,(c<b-x) において一様収束で,h\to 0 のとき v_n(h)\to u_n'(x).故にA′)によって(u_n(x)v_n(h) を代用する)

  s'(x)=\lim_{h\to 0}\frac{\sum_1^\infty u_n(x+h)-\sum_1^\infty u_n(x)}{h}
  = \sum u_n'(x).

無限級数の部分和 s_n(x) の代りに函数列 \{f_n(x)\} を取っていえば,定理 40 の核心が,むしろ明瞭であろう.すなわち

区間 a\leqq x\leqq b において

A
f_n(x) が連続で,それが一様に f(x) に収束すれば,f(x) は連続.
B
同じ仮定の下で,
\int_a^x f_n(x)\,dx\to \int_a^x f(x)\,dx.
両辺ともに連続で,収束は一様.
C
f_n(x)\to f(x) で,かつ f_n(x) が微分可能,f_n'(x)\to t(x) が一様収束ならば,
f'(x)=t(x).
[証]
定理 40と同様.s_nf_n を代用すればよい.
[注意] 
上記BCは,或る条件の下においては,
f(x)=\lim f_n(x)
\lim の記号の下で積分または微分して
\int_a^x\lim f_n(x)\,dx=\lim \int_a^x f_n(x)\,dx,
\frac{d}{dx}\lim f_n(x)=\lim \frac{d}{dx}f_n(x)
を得ることをいったのである.これは無条件では許されない.例えば,§46,[例 3]のグラフの函数 f_n(x) に関しては \textstyle \int_0^1 f_n(x)dx=1.それは突起する三角形の面積である.この場合 f(x)=0\textstyle \int_0^1 f(x)dx=0.また同所に掲げた Abel の例[*]において,‘乱暴に’微分すれば

 \frac12=\cos x-\cos 2x+\cos 3x-\cdots
 (不合理,右辺は発散).

  1. 一様収束区域内の任意の閉区間を [a,b] とする.

[編集] 48.連続的変数に関する一様収束 積分記号下での微分積分

函数列 \{f_n(x)\} においては f_n(x)xn とに関係し,n\to\infty に対する収束において,収束の速度が x に関係しないことを,x に関する一様収束というのであった.しかし自然数なる変数 n の代りに連続的なる媒介変数 \alpha が登場する場合にも,同様の立場から収束の一様性を考察することができる.

f(x,\alpha)x の或る区域 K における各 x に関して \alpha\to\alpha_0(または \alpha\to\infty)のときに,或る極限値に収束するとする.その極限値は x の函数であるから,それを g(x) と略記する.然らば例の通り \varepsilon\text{-}\delta 式でいえば

(1)

  |\alpha-\alpha_0|<\delta,\alpha\ne\alpha_0
 なるとき 
  |f(x,\alpha)-g(x)|<\varepsilon.

\varepsilon がまず任意に与えられて,それに応じて \delta が定められるのであるが,その \delta は一般には x にも関係するであろう.もしも K における x の位置に関係なく,ただ \varepsilon のみに関係する \delta があって,その \delta に関して (1) が成り立つならば,f(x,\alpha)\alpha\to\alpha_0 のとき,K における x に関して一様に収束するという. もしも \alpha_0 に収束する任意の点列 \{\alpha_n\},\alpha_n\ne\alpha,を取るならば,(1) において条件 |\alpha-\alpha_0|<\deltan>N で置き換えて

(2)

  n>N なるとき |f(x,\alpha_n)-g(x)|<\varepsilon

を得る.\deltax に無関係ならば,N も同様である[* 1].このように考えるならば,\alpha_0 に収束する連続的変数 \alpha を無限に増大する自然数 n に変えることができる.ただしその場合 (2) が収束するすべての数列 \{\alpha_n\},\alpha_n\ne\alpha_0,に関して成り立つことを要する(§9,22 頁参照).

\alpha\to\infty なる場合には,(1) においては |\alpha-\alpha_0|<\delta\alpha>R に換え,また (2) においては \{\alpha_n\}\alpha_n\to\infty なるすべての数列とすべきである.

\alpha\to\alpha_0 または \alpha\to\infty なるとき,一様収束の仮定の下において,前節とまったく同様に,定理(ABCが成り立つ.

それは上記のように函数列 f(x,\alpha_n) を考察すれば,定理 40 から導かれるが,あるいはまた定理 40 と全く同様の方法によって,直接に証明することも容易であろう.

(x,\alpha) が或る閉矩形 K(a\leqq x\leqq b,\alpha_1\leqq\alpha\leqq\alpha_2) に属するとき,f(x,\alpha) が二変数 x,\alpha の函数として連続ならば,\alpha_1\leqq\alpha\leqq\alpha_2 なる \alpha に関し

(3)

  F(\alpha)=\int_a^b f(x,\alpha)\,dx

\alpha の函数である.

定理 41.
この仮定の下において,
A
F(\alpha)\alpha_1\leqq\alpha\leqq\alpha_2 で連続.
B
\int_{\alpha_1}^{\alpha_2} F(\alpha)\,d\alpha=\int_a^b dx\int_{\alpha_1}^{\alpha_2} f(x,\alpha)\,d\alpha[* 2]
C
偏微分商 f_\alpha(x,\alpha) が区域内で連続ならば,

  F'(\alpha)=\int_a^b f_\alpha(x,\alpha)\,dx.
[注意] 
AB は二次元積分に関係して後にも述べるが(§93),さし当たってこの定理を引用する必要はあるから,ここで一様収束の思想圏内において証明をしておこう.
[証(A)]
積分区間 [a,b] を分点 x_i において n 等分して
(4)

  \sum_{i=1}^{n-1}f(x_i,\alpha)\cdot\frac{b-a}n=F_n(\alpha)
と置けば n\to\infty のとき,F_n(\alpha) は積分 F(\alpha) に収束する.しかも一様に収束する.なぜなら: 仮定によって f(x,\alpha) は連続だから,連続の一様性によって,n を十分大きく取って
|x-x'|<\frac{b-a}n
なるとき,区間 [\alpha_1,\alpha_2] のすべての \alpha に関して
|f(x,\alpha)-f(x',\alpha)|<\varepsilon
ならしめることができる.さて積分の平均値の定理を用いて

  F(\alpha)=\sum_{i=0}^{n-1}\int_{x_i}^{x_{i+1}}f(x,\alpha)\,dx
  = \sum_{i=0}^{n-1}f(\xi_i,\alpha)\frac{b-a}n,
  \quad x_i\leqq\xi_i\leqq x_{i+1},

 |F(\alpha)-F_n(\alpha)| 
 \leqq \sum_{i=0}^{n-1}|f(\xi_i,\alpha)-f(x_i,\alpha)|\,\frac{b-a}n
 < \varepsilon(b-a).

すなわち F_n(\alpha)\to F(\alpha)\alpha に関する一様収束である.さて (4) によって有限和 F_n(\alpha)\alpha に関して連続である.その連続性が一様収束のために極限なる F(\alpha) にまで伝わるのである(定理 40).それがすなわちAである.

[証(B)]
F_n(\alpha)\to F(\alpha) が一様収束だから,定理 40(Bによって
(5)

  \lim_{n\to\infty}\int_{\alpha_1}^{\alpha_2}F_n(\alpha)\,d\alpha
 =\int_{\alpha_1}^{\alpha_2} F(\alpha)\,d\alpha.
さて (4) から

  \int_{\alpha_1}^{\alpha_2} F_n(\alpha)\,d\alpha
 =\sum_{i=0}^{n-1}\frac{b-a}n\int_{\alpha_1}^{\alpha_2}f(x_i,\alpha)\,d\alpha.
今かりに

  \int_{\alpha_1}^{\alpha_2} f(x,\alpha)\,d\alpha=\varphi(x)
と書けば

  \int_{\alpha_1}^{\alpha_2} F_n(\alpha)\,d\alpha
 =\sum_{i=0}^{n-1}\frac{b-a}n\varphi(x_i),
すなわち

  \lim_{n\to\infty}\int_{\alpha_1}^{\alpha_2} F_n(\alpha)\,d\alpha
 =\lim_{n\to\infty}\sum_{i=0}^{n-1} \frac{b-a}n\varphi(x_i).
Aと同様にして \varphi(x)a\leqq x\leqq b で連続,従って右辺は(積分の定義

  \int_a^b \varphi(x),dx
 =\int_a^b dx\int_{\alpha_1}^{\alpha_2} f(x,\alpha)\,d\alpha
に等しい.故に (5) から

  \int_{\alpha_1}^{\alpha_2} F(\alpha)\,d\alpha
 =\int_a^b dx\int_{\alpha_1}^{\alpha_2} f(x,\alpha)\,d\alpha.
それがすなわちBである.
[証(C)]
仮定によって f_\alpha(x,\alpha) は連続だから,今
G(\alpha)=\int_a^b f_\alpha(x,\alpha)\,dx
と書けば,Bによって,

  \int_{\alpha_0}^\alpha G(\alpha)\,d\alpha
 =\int_a^b dx\int_{\alpha_0}^\alpha f_\alpha(x,\alpha)\,d\alpha,

  \int_{\alpha_0}^\alpha f_\alpha(x,\alpha)\,d\alpha=f(x,\alpha)-f(x,\alpha_0).
故に
\begin{align}
  \int_{\alpha_0}^\alpha G(\alpha)\,d\alpha
 &=\int_a^b f(x,\alpha)\,dx-\int_a^b f(x,\alpha_0)\,dx\\
 &=F(\alpha)-F(\alpha_0).
\end{align}
\alpha に関して微分すれば,G(\alpha) は連続であったから,
G(\alpha)=F'(\alpha),
すなわち
F'(\alpha)=\int_a^b f_\alpha(x,\alpha)\,dx.
(証終)

積分 F(\alpha) の限界が \alpha に関係する場合にも,上記の微分法が適用される.今


  \mathit\Phi(\alpha,u,v)=\int_u^v f(x,\alpha)\,dx

において,u,v\alpha の函数ならば

F(\alpha)=\mathit\Phi(\alpha,u,v).

前のように,f(x,\alpha),f_\alpha(x,\alpha)a\leqq x\leqq b,\alpha_1\leqq\alpha\leqq\alpha_2 において連続,また u,v\alpha に関して \alpha_1\leqq\alpha\leqq\alpha_2 において微分可能とすれば,a\leqq u\leqq b,a\leqq v\leqq b なるとき,

\frac{dF(\alpha)}{d\alpha}=
  \frac{\partial \mathit\Phi}{\partial \alpha}
 +\frac{\partial \mathit\Phi}{\partial u}\frac{du}{d\alpha}
 +\frac{\partial \mathit\Phi}{\partial v}\frac{dv}{d\alpha}.

さて


  \frac{\partial \mathit\Phi}{\partial u}=f(u,\alpha),\quad
  \frac{\partial \mathit\Phi}{\partial v}=f(v,\alpha),
 (定理 35).

故に


  \frac{dF(\alpha)}{d\alpha}
 = \int_u^v f_\alpha(x,\alpha)\,dx
  +f(u,\alpha)\frac{du}{d\alpha}-f(v,\alpha)\frac{dv}{d\alpha}.
[例 1]

  \int_0^1 x^\alpha\,dx=\frac{1}{\alpha+1}.\quad(\alpha>0)
この場合,定理 41 の仮定が成り立つから,積分記号の下で \alpha に関して微分して

  \int_0^1 x^\alpha\log x\,dx=\frac{-1}{(\alpha+1)^2}.
この積分に関しても同様に

  \int_0^1 x^\alpha(\log x)^2 dx=\frac{2}{(\alpha+1)^3}.
同じようにして,一般に

  \int_0^1 x^\alpha(\log x)^n dx=\frac{(-1)^n n!}{(\alpha+1)^{n+1}},
§35,[例 2]参照).
[例 2]
0\leqq x\leqq a において f(x) は連続として

  F_n(x)=\int_0^x \frac{(x-y)^n}{n!}f(y)\,dy
を考察する.n は自然数であるが,n=0 のときには
F_0(x)=\int_0^x f(y)\,dy
とする.(ここでは積分変数は y で,定理 41 の媒介変数 \alphax と書かれている.) 然らば(定理 41
\begin{align} F_n'(x)
 &= \int_0^x \frac{(x-y)^{n-1}}{(n-1)!}f(y)\,dy+\frac{(x-x)^n}{n!}f(x)\\
 &= F_{n-1}(x).
\end{align}
特に F_0(x) に関しては F_0'(x)=f(x). すなわち上記 F_n(x) は次の性質を有する函数である:
\left.\begin{align}
  &\frac{d^{n+1}}{dx^{n+1}}F_n(x)=f(x),\\
  F_n(0)&=F_n'(0)=\cdots=F_n^{(n)}(0)=0.
\end{align}\right\}
換言すれば,連続函数 f(x) に関して,微分方程式
\frac{d^nz}{dx^n}=f(x)
の一般解は

 z=G_{n-1}(x)+\int_0^x \frac{(x-y)^{n-1}}{(n-1)!}f(y)\,dy
である.ただし,G_{n-1}(x)x に関する n-1 次以下の任意の多項式である.
[例 3]
積分記号下における積分の一例として

  \int_0^1 \frac{x^b-x^a}{\log x}\,dx\qquad(b>a>0)
を計算する.函数 x^\alpha と区域 0\leqq x\leqq 1,a\leqq \alpha\leqq b とに定理 41(Bを適用して

  \int_0^1 dx\int_a^b x^\alpha\,d\alpha=\int_a^b d\alpha\int_0^1 x^\alpha\,dx,
従って

  \int_0^1\frac{x^b-x^a}{\log x}dx
 =\int_a^b\frac{d\alpha}{\alpha+1}=\log\frac{b+1}{a+1}.

積分記号の下での微分積分は,一様収束の仮定の下において,無限積分にも拡張される.

今区域 Kx\geqq c,\alpha_1\leqq\alpha\leqq\alpha_2,において,f(x,\alpha) は連続で

F(\alpha)=\int_c^\infty f(x,\alpha)\,dx

が一様に収束するとする.その意味は

F(\alpha,t)=\int_c^t f(x,\alpha)\,dx

が,t\to\infty のとき,\alpha に関して一様に F(\alpha) に収束することをいう.すなわち \varepsilon に対して \alpha に無関係なる R があって

t>R なるとき, |F(\alpha)-F(\alpha,t)|=
  \left|\int_t^\infty f(x,\alpha)\,dx\right|<\varepsilon.

この場合にも,上記と同様に,次の定理が成り立つ.

定理 42.
上記条件の下において
A
\textstyle F(\alpha)=\int_c^\infty f(x,\alpha)\,dx\alpha_1\leqq\alpha\leqq\alpha_2 において \alpha の連続函数である.
B
\int_{\alpha_1}^{\alpha_2} d\alpha\int_c^\infty f(x,\alpha)\,dx=\int_c^\infty dx\int_{\alpha_1}^{\alpha_2}f(x,\alpha)\,d\alpha.
C
もしも \textstyle\int_c^\infty f(x,\alpha)\,dx が収束し,f_\alpha(x,\alpha)K において連続で,かつ \textstyle\int_c^\infty f_\alpha(x,\alpha)\,dx が一様収束するならば

  \frac{d}{d\alpha}\int_c^\infty f(x,\alpha)\,dx
 =\int_c^\infty f_\alpha(x,\alpha)\,dx.
[証]
Aは既述の通りである(162/3 頁).Bに関しては
F(\alpha)=\lim_{t\to\infty}F(\alpha,t)
が一様に収束することから,\lim の下での積分が許されて
\begin{align}
  \int_{\alpha_1}^{\alpha_2}F(\alpha)\,d\alpha
 &= \lim_{t\to\infty}\int_{\alpha_1}^{\alpha_2}F(\alpha,t)\,d\alpha\\
 &= \lim_{t\to\infty}\int_{\alpha_1}^{\alpha_2}d\alpha\int_c^t f(x,\alpha)\,dx.
\end{align}
さて右辺では(定理 41(B),積分の順序を変換してよいから
\begin{align}
  \int_{\alpha_1}^{\alpha_2}F(\alpha)\,d\alpha
 &= \lim_{t\to\infty}\int_c^t dx\int_{\alpha_1}^{\alpha_2}f(x,\alpha)\,d\alpha\\
 &= \int_c^\infty dx\int_{\alpha_1}^{\alpha_2}f(x,\alpha)\,d\alpha.
\end{align}
CBのいい換えにすぎないが,今一度繰り返えしておこう.
G(\alpha)=\int_c^\infty f_\alpha(x,\alpha)\,dx
とおけば,この無限積分は仮定によって一様に収束する.故にBによって
\begin{align}
  \int_{\alpha_0}^\alpha G(\alpha)\,d\alpha
 &= \int_c^\infty dx\int_{\alpha_0}^\alpha f_\alpha(x,\alpha)\,d\alpha\\
 &= \int_c^\infty [f(x,\alpha)-f(x,\alpha_0]dx\\
 &= F(\alpha)-F(\alpha_0).
\end{align}
仮定によって積分 F(\alpha),F(\alpha_0) が収束するから,最後の行のように書かれるのである.さて \alpha に関して微分すれば F'(\alpha)=G(\alpha)
(証終)

有限区間の広義積分に関しても,一様収束を上記のように定義することができる.今 \alpha が区間 \alpha_1\leqq\alpha\leqq\alpha_2 にあるとき,f(x,\alpha) は積分区間の下の限界 x=a においてのみ不連続で,


  F(\alpha)=\int_a^b f(x,\alpha)\,dx=\lim_{x\to a}\int_x^b f(x,\alpha)\,dx

は収束するとする.もしも \alpha に無関係なる \delta に関して,

|x-a|<\delta なるとき \left|\int_a^x f(x,\alpha)\,dx\right|<\varepsilon

ならば,上記積分は(\alpha に関して)一様に収束するのである.この場合にも,定理 42 と同様の(A),(B),(C)が成り立つ.

[注意] 
広義積分に関しても,定理 39 と同様な一様収束の判定法が適用される.今無限区間 (a,\infty) に関していえば,区間内で常に |f(x,\alpha)|\leqq\varphi(x)\textstyle\int_a^\infty\varphi(x)\,dx が収束すれば,\textstyle\int_a^\infty f(x,\alpha)\,dx\alpha に関して一様に収束する.実際任意の \varepsilon>0 に対して,t を十分大きく取れば,\textstyle\int_t^\infty\varphi(x)\,dx<\varepsilon,従って \textstyle|\int_t^\infty f(x,\alpha)\,dx|<\varepsilont\alpha に関係しないから,これは一様収束である.有限区間に関しても同様である.
一例として,上記の考察を に適用してみよう. 積分区間を x=1 において両分して,まず

  g_1(s)=\int_1^\infty e^{-x}x^{s-1}\,dx
とする.これは区間 0\leqq s\leqq s_0 において一様収束をする.――e^{-x}x^{s-1}\leqq e^{-x}x^{s_0-1}\textstyle \int_1^\infty e^{-x}x^{s_0-1}\,dx は収束するからよい(上記注意).故に s\leqq s_0 のとき g_1(s)s に関して連続である.s_0>0 は任意だから,g_1(s)s>0 なるとき連続である. また

  g_2(s)=\int_0^1 e^{-x}x^{s-1}\,dx=\lim_{x\to 0}\int_x^1 e^{-x}x^{s-1}\,dx
は,0<s<1 ならば広義積分であるが,
0<s_0\leqq s
なる s に関して一様に収束する.――今度は 0<x<1 から e^{-x}x^{s-1}\leqq e^{-x}x^{s_0-1}\textstyle \int_0^1 e^{-x}x^{s_0-1}\,dx が収束するからよい.故に g_2(s)s_0\leqq s なる s に関して連続であるが,s_0>0 は任意だから,s>0 なるとき連続である. 故に
\mathit\Gamma(s)=g_1(s)+g_2(s)
s>0 なるとき連続である. 次に \textstyle \mathit\Gamma(s)=\int_0^\infty e^{-x}x^{s-1}\,dx を積分記号下で(s に関して)微分して,かりに
(6)

 \mathit\Gamma'(s)=\int_0^\infty e^{-x}x^{s-1}\log x\,dx
と書いてみる.もしも右辺の積分が一様収束するならば,これは合法である. まず限界 \infty に関しては,s<s_0 とすれば x が十分大きいとき

 \int_x^\infty e^{-x}x^{s-1}\log x\,dx
 < \int_x^\infty e^{-x}x^{s_0}\frac{\log x}x\,dx
 < \int_x^\infty e^{-x}x^{s_0}\,dx
だからよろしい. また限界 0 に関しては,0<s_0<s_1\leqq s とすれば,x が十分小なるとき

  \left|\int_0^x e^{-x}x^{s-1}\log x\,dx\right|
  \leqq \left|\int_0^x e^{-x}x^{s_0-1}(x^{s_1-s_0}\log x)\,dx\right|
  < \int_0^x e^{-x}x^{s_0-1}\,dx
だから,これもよろしい.故に (6) は正しい. 同様に

  \mathit\Gamma^{(n)}(s)=\int_0^\infty e^{-x}x^{s-1}(\log x)^n\,dx.
  \quad (n=1,2,\ldots)
[注意] 
積分の形から \mathit\Gamma(s)>0.また \mathit\Gamma''(s)>0 であるから,\mathit\Gamma(s) は凸函数である.
[例 4]
p>0, q は任意として(§35,[例 3]
(7)

  \int_0^\infty e^{-px}\cos qx\,dx=\frac{p}{p^2+q^2}.
これは q に関して一様に収束する(|e^{-px}\cos qx|\leqq e^{-px}前頁[注意]参照).よって q に関して 0 から q まで二回積分して

  \int_0^\infty e^{-px}\frac{1-\cos qx}{x^2}
 =\int_0^q \mathrm{Arc\,tan\,}\frac qp\,dq
 =q\mathrm{Arc\,tan\,}\frac qp-\frac p2\log(p^2+q^2)+p\log p.
ここで q=1 として
(8)

  \int_0^\infty e^{-px}\frac{1-\cos x}{x^2}\,dx
 =\mathrm{Arc\,tan\,}\frac 1p -\frac p2\log(p^2+1)+p\log p.
これは p>0 なる仮定の下において証明されたのである.しかし p=0 とすれば \textstyle \int_0^\infty \frac{1-\cos x}{x^2}\,dx は収束し(定理 36),また p\geqq 0 のとき e^{-px}\leqq 1 だから,(8) の左辺は p\geqq 0 において一様収束,従って連続である.よって p\to 0 のとき,(8) から

  \int_0^\infty \frac{1-\cos x}{x^2}\,dx=\frac\pi2.
これから部分積分によって
(9)

  \int_0^\infty \frac{\sin x}x\,dx=\frac\pi2.
を得る[* 3].また 1-\cos x=2\sin^2\tfrac x2 を用いて
(10)

  \int_0^\infty \left(\frac{\sin x}x\right)dx=\frac\pi2.
[注意] 
(9) において変数 x\alpha x に変えるならば,\alpha>0 のとき
\int_0^\infty \frac{\sin\alpha x}x\,dx=\frac\pi2,\quad(\alpha>0).
もしも \alpha の符号を変えるならば,積分の符号が変わる.すなわち \alpha<0 ならば
\int_0^\infty \frac{\sin\alpha x}x\,dx=-\frac\pi2,\quad(\alpha<0).
\alpha=0 ならば積分は,もちろん,0 である.故に

  \int_0^\infty \frac{\sin\alpha x}x\,dx=\frac\pi2\mathrm{sign\,}\alpha.
\alpha の函数として,これは \alpha=0 において不連続である.この積分は積分記号の下で無頓着に微分することが危険な実例を提供する.‘乱暴に’微分すれば,結果は次の通り:
\int_0^\infty \cos\alpha x\,dx=0, (不合理).
[例 5]
\textstyle\int_0^\infty e^{-x^2}\,dx=\frac\sqrt\pi2§35,[例 6])において x\sqrt\alpha x に変換して

  \int_0^\infty e^{-\alpha x^2}\,dx=\frac12\sqrt\frac\pi\alpha,\quad(\alpha>0).
\alpha に関して n 回微分すれば

  \int_0^\infty e^{-\alpha x^2}x^{2n}\,dx
 =\frac{1\cdot 3\cdots(2n-1)}{2^{n+1}}\frac{\sqrt\pi}{\alpha^{n+\frac12}},
 \quad (n=1,2,\ldots).
これらの無限積分が \alpha\geqq\alpha_0\,(\alpha>0) に関して一様に収束するから(\textstyle \int_0^\infty e^{-\alpha_0 x^2}x^{2n}\,dx が収束して e^{-\alpha x^2}\leqq e^{-\alpha_0 x^2} だから.167 頁,[注意]参照),このような微分法が許されるのである. \alpha=1 として

  \int_0^\infty e^{-x^2}x^{2n}\,dx=\frac{1\cdot3\cdots(2n-1)}{2^{n+1}}\sqrt\pi.
x の指数が奇数ならば,不定積分ができるが,また上記の方法で
\int_0^\infty e^{-\alpha x^2}x\,dx=\frac 1{2\alpha}
から,\alpha に関して微分してから,\alpha=1 として

  \int_0^\infty e^{-x^2}x^{2n+1}\,dx=\frac{n!}2.
[例 6]

  J(\alpha)=\int_0^\infty e^{-x^2}\cos\alpha x\,dx=\frac\sqrt\pi2 e^{-\frac{\alpha^2}4}.
この積分 J(\alpha) は(alpha に関して一様に)収束するが,積分記号下で,\alpha に関して微分して

  J'(\alpha)=-\int_0^\infty e^{-x^2}x\sin\alpha x\,dx.
|\sin\alpha x|\leqq 1 で,これも一様に収束するから,この微分が許される.さて

  J'(\alpha)
 =\left.\frac12 e^{-x^2}\sin\alpha x\right|_0^\infty 
  -\frac\alpha2\int_0^\infty e^{-x^2}\cos\alpha x\,dx.
故に
J'(\alpha)=-\frac\alpha2 J(\alpha).
すなわち

  \frac{d}{d\alpha}\log J(\alpha)=-\frac\alpha2,
 従って 
  \log J(\alpha)=-\frac{\alpha^2}4+C,
または
J(\alpha)=ce^{-\frac{\alpha^2}4}.
定数 c を求めるために,\alpha=0 と置けば

  c=J(0)=\int_0^\infty e^{-x^2}\,dx=\frac\sqrt\alpha2.
故に標記の結果を得る.
[注意] 
上記の積分において,積分記号の下で

  \cos\alpha x=1-\frac{(\alpha x)^2}{2!}+\frac{(\alpha x)^4}{4!}-\cdots
として,機械的に項別積分をすれば,[例 5]によって
\begin{align}
   J(\alpha)
 &=\sum_{n=0}^\infty 
   \int_0^\infty (-1)^ne^{-x^2}\frac{(\alpha x)^{2n}}{(2n)!}\,dx
  =\sum_{n=0}^\infty (-1)^n\frac{\alpha^{2n}}{(2n)!}
   \int_0^\infty e^{-x^2}x^{2n}\,dx\\
 &=\sum_{n=0}^\infty (-1)^n \frac{\alpha^{2n}}{(2n)!}
   \frac{1\cdot3\cdots(2n-1)}{2^{n+1}}\sqrt\pi\\
 &=\frac{\sqrt\pi}2 \sum_{n=0}^\infty 
   (-1)^n\frac{\alpha^{2n}}{2^n\cdot n!}\frac 1{2^n}
  =\frac{\sqrt\pi}2 \sum_{n=0}^\infty\frac{(\alpha^2/4)^n}{n!}
  =\frac\sqrt\pi2 e^{-\frac{\alpha^2}4}.
\end{align}

すなわち結果は正しいが,定理 40(Bにおいて,無限級数の項別積分は有限なる積分区間に関してのみ述べたのであるから,それをここへ引用することは許されない.今上記計算の合理化を試みる.

Taylor の公式によれば
(11)

  \cos\alpha x=1-\frac{(\alpha x)^2}{2!}+\cdots\pm\frac{(\alpha x)^{2n}}{(2n)!}+R_n,
  \quad |R_n|\leqq \frac{(\alpha x)^{2n+2}}{(2n+2)!}.
積分 J(\alpha) は可能であるから
(12)

  J(\alpha)
  =\frac\pi2\sum_{n=0}^m (-1)^n\frac{(\alpha^2/4)^n}{n!}
   +\int_0^\infty e^{-x^2}R_m(x)\,dx
と書く分にはさしつかえない.さて (11) から

  \left|\int_0^\infty e^{-x^2}R_m(x)\,dx\right|
  \leqq \int_0^\infty e^{-x^2}\frac{(\alpha x)^{2m+2}}{(2m+2)!}\,dx
  = \frac\pi2\frac{(\alpha^2/4)^{m+1}}{(m+1)!}.
m\to\infty のとき,右辺\to 0.故に (12) から,正当に

  J(\alpha)=\frac\pi2\sum_{n=0}^\infty (-1)^n\frac{(\alpha^2/4)^n}{n!}
  =\frac\pi2 e^{-\frac{\alpha^2}4}
が得られるのである.

  1. N は点列 \{\alpha_n\} の取り方には関係してよい.
  2. 右辺は \textstyle\int_a^b\{\int_{\alpha_1}^{\alpha_2}f(x,\alpha)d\alpha\}dx の略記.
  3. 古典的な積分 (9) の上記計算法は,はなはだ,技巧的である.複素変数を用いる見通しのよい計算法を後に述べるであろう(第5章).既に計算の基礎にした (7) が,複素数を用いるとき,簡明に求められるのであった(§35,115頁[注意]).

[編集] 49.二重数列

ここに掲げる

\begin{matrix}
  a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} & \cdots\\
  a_{21} & a_{22} & \cdots & a_{2n} & \cdots\\
  \cdots & \cdots & \cdots & \cdots & \cdots\\
  a_{m1} & a_{m2} & \cdots & a_{mn} & \cdots\\
  \cdots & \cdots & \cdots & \cdots & \cdots
\end{matrix}

のように,二つの番号 m,n を有する数列を二重数列という.その項 a_{m,n} は,つまり第一象限内の格子点 (x,y)=(m,n)m,n が自然数)において定義された函数 a_{m,n}=a(m,n) である. m および n が限りなく大きくなるとき,a_{m,n} が極限値 l を有するとは,任意に与えられた \varepsilon>0 に対応して,ある限界 N があって,m>N,n>N, なるとき常に |a_{m,n}-l|<\varepsilon であることをいう.それを次のように略記する:

(1)

  \lim_{m\to\infty\atop n\to\infty}a_{m,n}=l.

この記号で m\to\infty, n\to\infty と書くけれども,それは初めに m\to\infty に対する極限を求めて,次にその極限について n\to\infty に対する極限を求める意味でない.すなわち \textstyle \lim_{n\to\infty}(\lim_{m\to\infty}a_{m,n}) あるいは \textstyle \lim_{m\to\infty}(\lim_{n\to\infty}a_{m,n}) とは意味が違う.

[例 1] 
a_{m,n}=\tfrac{n}{m+n}.
\lim_{n\to\infty}a_{m,n}=1. 故に \lim_{m\to\infty}(\lim_{n\to\infty}a_{m,n})=1.
\lim_{m\to\infty}a_{m,n}=0. 故に \lim_{n\to\infty}(\lim_{m\to\infty}a_{m,n})=0.
この場合
\lim_{m\to\infty\atop n\to\infty}a_{m,n}
は存在しない.なぜならば,どんな N を取っても m>N,n>N なる範囲内で m=n になりえて,そのとき a_{m,n}=\tfrac12,また同じ範囲内で m=2n とすれば a_{m,n}=\tfrac13.故に上記定義にいうような一定の極限値 l はありえない.
[例 2] 
a_{m,n}=\tfrac{\sin m\alpha}n,(ただし \alpha\pi の倍数でないとする.) この場合には

  \lim_{m\to\infty\atop n\to\infty}a_{m,n}=0,\quad
  \lim_{m\to\infty}(\lim_{n\to\infty}a_{m,n})=0.
\textstyle \lim_{m\to\infty}a_{m,n} は存在しないから,\textstyle \lim_{n\to\infty}(\lim_{m\to\infty}a_{m,n}) は無意味である.
定理 43.
\textstyle \lim_{m\to\infty\atop n\to\infty}a_{m,n} = l が存在するとき,もしも \textstyle \lim_{m\to\infty}a_{m,n} = \mu_n がすべての n に関して存在するならば,\textstyle \lim_{n\to\infty}\mu_n = \lim_{n\to\infty}(\lim_{m\to\infty}a_{m,n}) = l. 同様に,もしも \textstyle \lim_{n\to\infty}a_{m,n}=\nu_m が存在するならば \textstyle \lim_{m\to\infty}\nu_m=\lim_{m\to\infty}(\lim_{n\to\infty}a_{m,n})=l
[証]
仮定によって,\varepsilonN が対応して
m>N,n>N ならば |a_{m,n}-l|<\varepsilon.
ここで n>N なる n を固定して,m\to\infty とする.さて仮定によって \textstyle\lim_{m\to\infty}a_{m,n}=\mu_n は存在するから,|\mu_n-l|\leqq \varepsilon.これは n>N なる n に関して常に成り立つ.\varepsilon は任意だから,それは \textstyle\lim_{n\to\infty}\mu_n=l を意味する.すなわち \textstyle \lim_{n\to\infty}(\lim_{m\to\infty}a_{m,n})=l
(証終)

定理 43 では,初めから二重数列の収束を仮定したのであるが,次の定理は二重数列の収束性の一つの判定法(十分条件)を与える.

定理 44.
もしも \textstyle\lim_{m\to\infty}a_{m,n}=\alpha_n が存在して,しかも a_{m,n}n に関して一様に \alpha_n に収束し,かつ \textstyle \lim_{n\to\infty}\alpha_n=l が存在するならば,\textstyle \lim_{m\to\infty\atop n\to\infty}a_{m,n} が存在して,それは l に等しい.従って,もしも \textstyle\lim_{n\to\infty}a_{m,n}=\beta_m が存在すれば \textstyle \lim_{m\to\infty}\beta_m も存在して,それは l に等しい(定理 43).
[注意] 
\textstyle\lim_{m\to\infty}a_{m,n}=\alpha_n が一様収束であることの意味は明らかであろう.すなわち任意の \varepsilon に対して,n に関係のない一定の M があって,m>M なるとき |a_{m,n}-\alpha_n|<\varepsilon
[証]

  |a_{m,n}-l|\leqq|a_{m,n}-\alpha_n|+|\alpha_n-l|.
さて m>M ならば,すべての n に関して |a_{m,n}-\alpha_n|<\varepsilon.また仮定によって,n>N ならば,|\alpha_n-l|<\varepsilon.故に m>M,n>N ならば,|a_{m,n}-l<2\varepsilon,任意の \varepsilon に対して,このような M,N が定められるから,

  m>\text{Max}(M,N), n>\text{Max}(M,N)
 ならば 
  |a_{m,n}-l| < 2\varepsilon,
すなわち

  \lim_{m\to\infty\atop n\to\infty}a_{m,n}=l.
[注意] 
連続的変数に関する二重極限には,すでにしばしば遭遇した.いつでも無条件では \textstyle\lim_{(x,y)\to(a,b)}f(x,y)=\lim_{x\to a}(\lim_{y\to b}f(x,y)) は成り立たない.\textstyle\lim_{x\to a}(\lim_{y\to b}f(x,y))=\lim_{y\to b}(\lim_{x\to a}f(x,y)) も同様.

例えば x のみ,および,y のみに関して連続なる f(x,y)x,y に関しては必らずしも連続でない(すなわち x\to a のとき,f(x,y)\to f(a,y),また y\to b のとき f(x,y)\to f(x,b) であっても,x\to a,y\to b のとき f(x,y)\to f(a,b) とはいわれない(§10)).

また第二階以上の偏微分において,微分の順序は無条件では変換されない(§23).

微分すること,積分すること,および無限級数の総和をすることは,いずれも極限を求めることで,それらの極限を二つ以上引き続いて求める場合に,或る条件の下において,その順序を変更してさしつかえないことを確かめるのが第4748節の論点であったのである.‘乱暴’な順序変更は危険である.

[編集] 50.二重級数

二重数列 a_{m,n} から二重級数が生ずる.形式的に単級数 \textstyle\sum a_n の場合をまねて


  s_{m,n}=\sum_{\mu=1}^m\sum_{\nu=1}^n a_{\mu,\nu}

と置いて,\textstyle\lim_{m\to\infty,n\to\infty}s_{m,n}=s が存在するとき,暫定的に二重級数は和 s に収束するともいうが,二重級数の総和法としては \textstyle\sum_{m=1}^\infty(\sum_{n=1}^\infty a_{m,n}),\sum_{n=1}^\infty(\sum_{m=1}^\infty a_{m,n}) なども考えに浮かぶであろう.これらはすべて形式的で,二重級数総和の特別なる方法に過ぎない.応用上重要なのは,収束性が項の順序に無関係なる場合,すなわち絶対収束の場合である.

第一象限の格子点 (m,n) 全体の集合を K と名づけるならば,K の各点に一つの番号をつけて,それを一つの無限点列にすることができる.すなわち K はいわゆる可算(countable, denumerable, abzählbar)集合である.

次の図は,このような番号づけの例を示すものである.
ファイル:図 ファイル:図
(平方式) (対角線式)

一般に,しだいに拡大する K の有限部分集合の一列


  K_1\subset K_2\subset\cdots\subset K_p\subset\cdots

があって,K の各点 (m,n) はついには或る K_p 従って q>p なる各 K_q に含まれるとする.このような状態を,K_p単調に K に収束するといえば印象的であろう.そのとき K_p に含まれる格子点の数を k_p として,まず K_1 に含まれる点に 1 から k_1 までの番号をつけ,次には K_2 に含まれ,K_1 に含まれない点に k_1+1 から k_2 までの番号をつけるというようにして,K の点が一列化される.上記第一の例では,\mathrm{Max}(m,n)\leqq p なる点が K_p を組成し,また第二の例では,m+n\leqq p+1 なる点が K_p を組成する.このような K の一列化は無数の仕方で可能である.――実際,一つの一列化ができる以上,それの順序の任意の変換によって他の一列化が生ずるから,それは当然である. さて K の一列化において (m,n) の番号が p であるとして

a_{m,n}=b_p

と書けば,二重級数 \textstyle\sum a_{m,n} が単級数 \textstyle\sum b_p になる. このようにして生ずる一つの級数 \textstyle\sum b_p が絶対収束をするとして,その和を s とするならば,\textstyle\sum b_p の項の順序を変えても和は変わらないから,\textstyle\sum a_{m,n} の任意の一列化において s は一定である.この場合に,二重級数 \textstyle\sum a_{m,n} は和 s に絶対収束するという.この意味において,絶対収束の判別条件は |a_{m,n}| の有限部分和が一様に有界であることで,それはつまり


  \sum_{\mu,\nu=1}^n|a_{\mu,\nu}|<M

n に無関係なる定数 M に関して成り立つことにほかならない. 絶対収束の場合,前に述べたように集合列 K_p を単調に K に収束するものとして,K_p に属する (m,n) に関する a_{m,n} の和を

s_p=\sum_{K_p}a_{m,n}

とするならば,

\lim_{p\to\infty}s_p=s.

上記のように,集合列 K_p に従って K を一列化して \textstyle\sum a_{m,n}\textstyle\sum b_p にするならば,s_p\textstyle\sum b_p の部分和であることを考えれば,これは明白であろう.\textstyle a_{m,n} を対角線式に


 s=a_{11}+(a_{12}+a_{21})+(a_{13}+a_{22}+a_{31})+\cdots

として総和するのは,これの一例である. それにも増して興味のあるのは,K を無数の無限集合に分割して \textstyle\sum a_{m,n} を総和する方法である.今そのような分割を(略記式に)

K=H_1+H_2+\cdots+H_p+\cdots

と書く: すなわち H_p は無数の格子点を含んでもよいが,各点 (m,n)H_p のうちのいずれかに,しかもただ一つにのみ属するのである. 絶対収束の場合,H_p に対応する部分級数はもちろん絶対に収束する.その和を

\sigma_p=\sum_{H_p}a_{m,n}

とする.この和は H_p に属する格子点 (m,n) の上にわたるのである.しからば

(1)

  \sum_{p=1}^\infty\sigma_p = \sigma_1+\sigma_2+\cdots =s.

例えば,行列 a_{m,n} の行による総和法 \textstyle\sum_{m=1}^\infty(\sum_{n=1}^\infty a_{m,n}) または列による総和法 \textstyle\sum_{n=1}^\infty(\sum_{m=1}^\infty a_{m,n})(1) の特別の場合である.これはすでに述べた通りである(§43).

上記の考察は三重以上の級数 \textstyle\sum a_{m,n,p,\ldots} にも通用する.また添字 m,n,p,\ldots は区間 (-\infty,\infty) の整数でもよい.一般的に n 次元空間 K に属する格子点 P=(x_1,x_2,\ldots,x_n)――すなわち x_i は任意の整数――に対応する級数 \textstyle\sum_P a_P の絶対収束に関して,同様の考察を行うことができる.議論の根拠は K の格子点の一列化 (P_1,P_2,\ldots) にある.

一列化の方法は前に述べた通りである.一例として


  \mathrm{Max}(|x_1|,|x_2|,\ldots,|x_n|)\leqq p

なる点 P=(x_1,x_2,\ldots,x_n) をもって部分集合 K_p を組み立ててもよい(立方式).または


  |x_1|+|x_2|+\cdots+|x_n|\leqq p

によってもよい(対角式).

[注意] 
一次元においては,両方に無限なる級数
(2)
\sum_{\nu=-\infty}^\infty a_\nu
が収束するというのは,(定義として)
\lim_{n\to\infty,m\to\infty}\sum_{\nu=m}^n a_\nu
の存在を意味する.すなわちそれは各別に収束する二つの単級数 \textstyle\sum_{\nu=0}^\infty a_\nu,\sum_{\nu=1}^\infty a_{-\nu} の和である.故に収束の場合には和は

  a_0+(a_1+a_{-1})+(a_2+a_{-2})+\cdots
に等しいが,逆は真でない.(例えば \cdots+1-1+a_0+1-1+\cdots は収束しない.)
[例 1]
Eisenstein の級数)
(3)
\sum\frac{1}{(x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2)^s}.
ここで x_i-\infty から +\infty までの整数で,(0,0,\ldots,0) なる組合せだけは除く.すなわち (x_1,x_2,\ldots,x_n)n 次元空間において,原点以外のすべての格子点の上にわたるのである.

この級数は s>\tfrac{n}2 なるとき収束し,s\leqq\tfrac{n}2 なるとき発散する.

[証]
k を自然数とすれば,各座標が |x_i|\leqq k なる格子点の総数は (2k+1)^n であるから,そのうち少くとも一つの座標が |x_i|=k なる格子点,換言すれば \mathrm{Max}(|x_1|,|x_2|,\ldots,|x_n|)=k なる格子点の数は
(4)
T(k)=(2k+1)^n-(2k-1)^n
である.故に今

  S_m=\sum_{|x_i|\leqq m}\frac{1}{(x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2)^s}
と置けば
(5)

  \sum_{k=1}^m\frac{T(k)}{(nk^2)^s}<S_m<\sum_{k=1}^m\frac{T(k)}{k^{2s}}.
さて T(k) は,(4) からみえるように,k に関する n-1 次の正係数の多項式である.すなわち
(6)

  T(k)=a_0k^{n-1}+a_1k^{n-2}+\cdots+a_{n-1},\quad (a_i\geqq 0).
故に (5) から

  S_m < a_0\sum_{k=1}^m\frac{1}{k^{2s-n+1}}
       +a_1\sum_{k=1}^m\frac{1}{k^{2s-n+2}}+\cdots
       +a_{n-1}\sum_{k=1}^m\frac{1}{k^{2s}}.
故に 2s-n+1>1 すなわち s>\tfrac{n}2 なるとき S_m は有界,従って (3) は収束する. s\leqq\tfrac{n}2 なるときは,(5)(6) から
S_m>\frac{a_0}{n^s}\sum_{k=1}^m\frac{1}{k}.
故に (3) は発散する.
上記定理は x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2 の代りに正値二次形式[* 1]

  Q(x_1,x_2,\ldots,x_n)=\sum_{p,q=1}^n a_{p,q}x_px_q\quad(a_{pq}=a_{qp})
をとる場合にも成り立つ.すなわち

 \sum_{1}{Q(x_1,x_2,\ldots,x_n)^s}
s>\tfrac{n}2 なるとき収束し,s\leqq\tfrac{n}2 なるとき発散する. この場合 Q の固有方程式[* 2]
\begin{vmatrix}
  a_{11}-\lambda & a_{12} & \cdots & a_{1n}\\
  a_{21} & a_{22}-\lambda & \cdots & a_{2n}\\
  \cdots & \cdots & \cdots & \cdots\\
  a_{n1} & a_{n2} & \cdots & a_{nn}-\lambda
\end{vmatrix}=0
の根(Q の固有値)はすべて正であるが,そのうち最小のものを \lambda_1,最大のものを \lambda_2 とすれば
\lambda_1\leqq\frac{Q(x_1,x_2,\ldots,x_n)}{x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2}\leqq\lambda_2.
故に \textstyle\sum Q^{-s}\textstyle\sum(x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2)^{-s} と同時に収束または発散するのである.

例えば ax^2+bxy+cy^2 が正値二次形式ならば(a>0,c>0,ac-b^2>0),格子点 (x,y)\ne(0,0 にわたる級数

\sum\frac{1}{(ax^2+bxy+cy^2)^s}  は  \begin{cases}s>1\\s\leqq 1\end{cases} のとき収束,
のとき発散.
[例 2]
絶対収束をしない級数の一例として,Kelvin が取扱った級数

  \sum\frac{(-1)^{m+n}mn}{(m+n)^2}\quad(m,n=1,2,3,\ldots)
を取ってみる.\textstyle 1=\mathit\Gamma(2)=\int_0^\infty e^{-x}x\,dx において,積分変数を mx に変換すれば,
\frac{1}{m^2}=\int_0^\infty e^{-mx}x\,dx.
故に上記級数の一般項は

  a_{m,n}=(-1)^{m+n}\int_0^\infty mne^{-(m+n)x}x\,dx.
従って
\begin{align}s_{m,n}
 &= \int_0^\infty\sum_{\mu,\nu}(-1)^{\mu+\nu}\mu\nu e^{-(\mu+\nu)x}x\,dx
    \qquad\left({\mu=1,2,\ldots,m\atop\nu=1,2,\ldots,n}\right)\\
 &= \int_0^\infty\Bigl(\sum_\mu(-1)^\mu\mu e^{-\mu x}\Big)
                 \Big(\sum_\nu(-1)^\nu\nu e^{-\nu x}\Bigr)x\,dx\\
 &= \int_0^\infty\varphi(m,x)\varphi(n,x)\frac{xe^{-2x}dx}{(1+e^{-x})^4},
\end{align}
ただし \varphi(m,x)\cdot\varphi(n,x) を展開すれば s_{m,n} は九つの積分の和になる.そのうち一つは
(7)
である.これを I と書く.他の八つは

  \pm(m+h)\int_0^\infty\frac{e^{-(m+r)x}x\,dx}{(1+e^{-x})^4},\quad
  \pm(n+k)\int_0^\infty\frac{e^{-(n+r)x}x\,dx}{(1+e^{-x})^4},

  \pm(m+h)(n+k)\int_0^\infty\frac{e^{-(x+n+r)x}x\,dx}{(1+e^{-x})^4}
の形で h,k0 または 1,また r2,3,4 である.さて

  \int_0^\infty\frac{e^{-\mu x}x\,dx}{(1+e^{-x})^4}
 <\int_0^\infty e^{-\mu x}x\,dx=\frac{1}{\mu^2}
だから,s_{m,n} における (7) 以外の八つの項は絶対値において

  \frac{m+h}{(m+r)^2},\ \frac{n+k}{(n+r)^2}
 または \frac{(m+h)(n+k)}{(m+n+r)^2}
よりも小である.従って

  \lim_{m\to\infty}(\lim_{n\to\infty}s_{m,n})
 =\lim_{n\to\infty}(\lim_{m\to\infty}s_{m,n})
 =\int_0^\infty\frac{e^{-2x}x\,dx}{(1+e^{-x})^4}=l.

すなわち行列 a_{m,n} の横列の和を総和しても,または縦列の和を総和しても,同一の極限値 l を得る.しかし級数は絶対収束しない.

例えば,\textstyle\lim_{m\to\infty}s_{m,m}=l+\frac{1}{16}s_{m,m} においては \varphi(m,x)^2 から

  (m+h)(m+k)\int_0^\infty\frac{e^{-(2m+r)x}x\,dx}{(1+e^{-x})^4}
のような積分がでてくる.この積分は変数を x/(2m+r) に変換すれば

 \frac{(m+h)(m+k)}{(2m+r)^2}
 \int_0^\infty\frac{e^{-x}x\,dx}{(1+e^{-\frac{x}{2m+r}})^4}
になり,m\to\infty のとき極限値は \textstyle
 \frac14\int_0^\infty\frac{e^{-x}x\,dx}{16}=\frac{1}{64}
になる(定理 42).s_{m,m} においてはこのような積分が符号 + を持って四つ出るから s_{m,m}\to l+\tfrac{1}{16}. 同様にして s_{m,m+1}\to l-\tfrac{1}{16} を得る.
[附記] 
本節の初めに述べた純規約的なる s_{m,n} の極限としての \textstyle\sum a_{m,n} によれば,任意の b_n(例えば b_n=n,または b_n=(-1)^n 等)をもって級数
\begin{alignat}{5}
       &b_1   & &+b_2    & &+\cdots & &+b_n    & &+\cdots\\
  {}-{}&b_1   & &-b_2    & &-\cdots & &-b_n    & &-\cdots\\
  {}+{}&a_{11}& &+a_{12} & &+\cdots & &+a_{1n} & &+\cdots\\
  {}+{}&a_{21}& &+a_{22} & &+\cdots & &+a_{2n} & &+\cdots
\end{alignat}
を作っても,収束性にも和にも影響しない.(b_n),(-b_n) のような二行(または二列)をどこへいくつ(有限個)入れても同様である.形式的定義の不実用性をみるべきである.

  1. 高木: 代数学講義改訂新版 304 頁参照.
  2. 310 頁.
  3. これは
    \textstyle
  1+x+x^2+\cdots+x^n=\frac{1-x^{n+1}}{1-x}
    から微分して得られる.すなわち
    \textstyle
  1+2x+3x^2+\cdots+nx^{n-1}=\frac{1-(n+1)x^n+nx^{n+1}}{(1-x)^2}.
    そこで x-e^{-x} を代用すれば \textstyle
  \sum_{\nu=1}^n(-1)^\nu\nu e^{-\nu x}=\frac{-e^{-x}\varphi(n,x)}{(1+e^{-x})^2}
を得る.
  4. 不定積分ができる.e^{-x}=t として計算するがよい.練習問題(3) (6) 参照.

[編集] 51.無限積

無限数列 a_n から無限積 \textstyle\prod_{n=1}^\infty a_n が生ずるが,乗法における 0 の特異性を考慮して,収束の定義を適当に緊縮することが大切である.まず因子の中に 0 があって,その 0 を除いたあとの無限積が収束しない場合は無用である.また因子が一つも 0 でなくて,しかも積の極限が 0 に等しい場合(例: a_n=\tfrac{1}{n})を一般論に取り入れることは,不便である.これらを除けば,収束の場合には \textstyle\lim_{n\to\infty}a_n=1 なることが必要である.よって初めから

a_n=1+u_n,\quad u_n\to 0

と仮定して,無限積

(1)

  p=(1+u_1)(1+u_2)\cdots(1+u_n)\cdots\quad(u_n\to 0)

を考察する.最も簡明なのは次の場合である.

定理 45.
無限積 (1)
(2)

  |u_1|+|u_2|+\cdots+|u_n|+\cdots
が収束するとき収束する(従って無限積 \textstyle\prod(1+|u_n|) も収束する).これを絶対収束という.

絶対収束の無限積は,多くの点において,有限積と同様に取扱うことができる.すなわち因子の順序は積に関係なく,また分配法則によって無限積を無限級数に展開することができる.また因子の中に 0 がなければ,積は 0 にならない.

[証]
p_n=(1+u_1)\cdots(1+u_n),
(3)

  v_1=p_1,\quad v_n=p_n-p_{n-1}=(1+u_1)\cdots(1+u_{n-1})u_n
と置く.然らば

  p_n=v_1+v_2+\cdots+v_n
で,p_n の収束は \textstyle \sum v_n の収束に帰する.さて,仮定によって,(2) は収束するから,

  \sigma=\sum_{\nu=1}^\infty |u_\nu|
と置けば

  |p_n|\leqq\prod_{\nu=1}^n(1+|u_\nu|)\leqq \prod_{\nu=1}^n e^{|u_\nu|}
  =e^{\sum_{\nu=1}^n|u_\nu|}\leqq e^\sigma.
故に (3) から

  |v_n|=|p_{n-1}u_n|\leqq e^\sigma|u_n|.
(2) は収束するから,\textstyle\sum|v_n|,従って \textstyle\sum v_n,従って p_n が収束する.

u_n|u_n| で置き換えて,v_n と同じような積 V_n を作れば \textstyle\sum V_n も収束する.その項 V_n(3) のような形の積だけれども,それをほぐして \textstyle\sum V_n|u_\alpha||u_\beta|\cdots|u_\lambda| のような項の級数にしても,それは収束する.(V_n は正項の和であるから,V_n をほぐしても収束に妨げないのである.)よって \textstyle\sum v_nu_\alpha u_\beta\cdots u_\lambda のような項の無限級数としても,それは絶対に収束して,その和はもちろん p に等しい.この無限級数はすなわち \textstyle\prod(1+u_n) を分配法則によって展開したものである.

このように \textstyle p=\prod(1+u_n) が分配法則によって絶対収束の級数に展開されるから,p において因子の順序を変えても,積には影響しない.

さて仮定によって,或る番号以上(n\geqq N)は |u_n|<\tfrac12, 1+u_n\ne 0 であるが,|u|<\tfrac12 とすれば,下に示すように
(4)
|1+u|\geqq e^{-2|u|}.
従って

  \left|\prod_{n=N}^m(1+u_n)\right|\geqq e^{-2\sum_{n=N}^m|u_n|}>0.
m\to\infty として極限へ行っても

  \left|\prod_{n=N}^\infty(1+u_n)\right|\geqq e^{-2\sum_{n=N}^\infty|u_n|}>0.
故に N 番までも,1+u_n\ne 0 ならば
p=\prod_{n=1}^\infty(1+u_n)\ne 0.
(証終)
不等式 (4) は証明の手段であるが,それは次のようにして得られる.-\log(1-x)0\leqq x <1 なるとき凸函数である.故に 0<c<1 とすれば (0,c) において

  -\log(1-x)<kx,\quad k=\frac{-\log(1-c)}{c}.
すなわち
1-x>e^{-kx}.
e=\frac12 とすれば, k=2\log 2<2.
故に
0<x<\frac12 なるとき 1-x>e^{-2x}.
よって
0\leqq|u|<\frac12 ならば, |1+u|\geqq 1-|u|\geqq e^{-2|u|}.
[注意] 
最後の不等式は u が複素数であっても成り立つから,定理 45 において u_n を複素数としてもよい.
[例 1] 
一例として Riemann\zeta 函数(§44
\zeta(s)=\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^s}\quad(s>1)
を無限積に直してみよう,今すべての素数 p を大きさの順序に p_1=2,p_2=3,\ldots と名づけて無限積
(5)

  \prod_{\nu=1}^\infty \frac{1}{1-p_\nu^{-s}}
  =\prod_{\nu=1}^\infty (1+p_\nu^{-s}+p_\nu^{-2s}+\cdots)
を考察する.ここでは

  u_\nu=\frac{1}{1-p_\nu^{-s}}-1=\frac{1}{p_\nu^s-1}<\frac{2}{p_\nu^s}
で,\textstyle\sum\frac{1}{p_\nu^s}\textstyle\sum\frac{1}{n^s} の一部分だから収束する.故に (5) の無限積は絶対に収束する.もしも (5) の右辺に機械的に分配法則を適用するならば \textstyle\sum(p_\alpha^2p_\beta^b\cdots p_\lambda^l)^{-s}(ただし \alpha\ne\beta\ne\cdots\ne\lambda,また a,b,\ldots,l=0,1,2,\ldots)を得るが,すべての自然数 n は一意的に素数巾の積に分解されるから,これは形の上では \textstyle\sum\frac{1}{n^s} に等しい.それが実際に相等しいことを示すために,(5) の左辺で最初の m この因子だけを取れば

  \prod_{\nu=1}^m\frac{1}{1-p_\nu^{-s}}
  =\prod_{\nu=1}^m(1+p_\nu^{-s}+p_\nu^{-2s}+\cdots)
  =\sum'\frac{1}{n^s}
で,\textstyle\sum' における np_m 以下の素数因子のみを含む自然数の全部である.それらの中には p_m までの自然数は全部含まれているから

  \prod_{\nu=1}^m\frac{1}{1-p_\nu^{-s}}
  =\sum_{n=1}^{p_m}\frac{1}{n^s}+\sum''\frac{1}{n^s}
と置けば,\textstyle\sum''\frac{1}{n^s}\textstyle\sum\frac{1}{n^s}(n>p_m) の部分級数であるから,m を十分大きく取れば,どれほどでも小さくされる.故に実際

  \zeta(s)=\prod_{\nu=1}^\infty \frac{1}{1-p_\nu^{-s}}.
[例 2] 
無限積 \textstyle\prod(1+u_n)\textstyle\sum u_n,\sum u_n^2 が収束すれば,収束する.

これは絶対収束をしない無限積の例を与える.

[証]
Taylor の公式によって

  \log(1+x)=x-\frac12x^2+ox^2.
故に
\log(1+x)=x-\vartheta x^2 すなわち 1+x=e^{x-\vartheta x^2}
と置けば,x\to 0 のとき \vartheta\to\tfrac12. そこで
1+u_n=e^{u_n-\vartheta_n u_n^2}
とすれば,\textstyle\sum u_n が収束するのだから,u_n\to 0,従って \vartheta_n は有界である.故に \textstyle -\sum\vartheta_n u_n^2 は(絶対)収束する.今 \textstyle s=\sum u_n,t=-\sum \vartheta_n u_n^2 とすれば

  \prod_1^m(1+u_n)=e^{\sum_1^m u_n}e^{-\sum_1^m \vartheta_n u_n^2}
から,極限 m\to\infty へ行って

   p=\prod_1^m(1+u_n)=e^s\cdot e^t.

\textstyle s=\sum u_n が絶対収束をしないならば,因子の順序を変更するとき,s 従って p が変じ,または収束性を失うこともある.

u_n は或る区域における変数の函数である場合には,無限積 \textstyle\prod(1+u_n) に関して一様収束の問題を考察することができる.簡単のために,ここでは応用上重要な次の場合について述べる.

定理 46.
閉区域 K において u_n は連続,\textstyle\sum|u_n| は一様収束とする.然らば無限積 \textstyle p=\prod(1+u_n)K において一様に収束し,従って連続である.
[証]
仮定によって \textstyle\sum|u_n|K において連続(定理 40,(A)だから,その最大値を \sigma とすれば,任意の n に関して,前のように
\begin{align}
  &|p_n|\leqq\prod{\nu=1}^n(1+|u_\nu|)\leqq\prod_{\nu=1}^n e^{|u_\nu}
  =e^{\sum_{\nu=1}^n|u_\nu|}\leqq e^\sigma.\\
  &|p_n-p_{n-1}|=|p_{n-1}u_n|\leqq e^\sigma|u_n|.
\end{align}
さて \textstyle|u_n| は一様に収束するから,変数に関係なく,
n>N なるとき \sum_{n>N}|u_n|<\varepsilon.
然らば

  \sum_{\nu>N}|p_\nu-p_{\nu-1}|< e^\sigma\varepsilon.
e^\sigma は確定の定数で,\varepsilon は任意だから

  p=p_1+(p_2-p_1)+\cdots+(p_n-p_{n-1})+\cdots
は一様に収束する.したがって連続である.

[編集] 52.巾級数

巾級数とは \textstyle\sum_{n=0}^\infty a_n(x-\alpha)^n の形の級数であるが,x-\alphax を代用して

(1)
\sum a_nx^n

に関して述べる.これを x の巾級数といい,一般的に P(x) と略記する.巾級数は解析学で最も重要な級数である.

巾級数の収束に関しては,次に掲げる Abel の定理(1826)が基本的である.

定理 47.
もしも巾級数 (1)x=x_0 なるとき収束するならば,|x|<|x_0| なる x のすべての値に関して絶対収束し,また領域 |x|<|x_0| に含まれる任意の閉領域において一様に収束する.
[証]
仮定によって \textstyle\sum a_nx_0^n は収束するから,\textstyle\lim_{n\to\infty}a_nx_0^n=0.故に M を任意の正数とするとき,十分大なる n に関して常に |a_nx_0^n|<M になる. 今 0<\theta<1 として |x|\leqq\theta|x_0| とすれば,
|a_nx^n|\leqq|a_nx_0^n|\theta^n<M\theta^n.
従って

  \sum_{\nu=n}^m|a_\nu x^\nu|<\frac{M\theta^n}{1-\theta}\to 0.
故に (1) は閉区域 |x|\leqq\theta|x_0| において,絶対にかつ一様に収束する.
(証終)
[注意 1] 
上記証明からみえるように,x=x_0 のとき (1) が収束しなくても,|a_nx_0^n|<M なるとき,すなわち a_nx_0^n が有界ならば,定理は成り立つ.

定理 47 は巾級数 P(x) の係数 a_n および変数 x が複素数である場合にも通用する.

x のすべての値に関して収束するべき級数もあり,また x=0 の外では発散する巾級数もあるが,それらを除けば,もしも巾級数が x の或る値に対して発散すれば,絶対値においてそれよりも大なる x に対して発散する(上記定理の対偶).故にこの巾級数を収束せしめる |x| の値に上限がある.それを r とすれば,巾級数は x が原点を中心とする半径 r の円内にある(|x|<r)とき収束し,x がその円の外にある(|x|>r)とき発散する.この円を巾級数の収束円といい,その半径 r収束半径という.巾級数が任意の x に対して収束すれば,r=\infty とし,x=0 以外では収束しないときには,r=0 とする.

定理 48.
巾級数 \textstyle\sum a_nx^n の収束半径 r は次の値を有する:
\frac1r=\varlimsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{|a_n|}.
Cauchy-Hadamard の定理]
[証]
\textstyle l=\varlimsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{|a_n|} と置けば
\varlimsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{|a_nx^n|}=l|x|.
故に l|x|<1 ならば \textstyle\sum|a_nx^n| は収束し,l|x|>1 ならば発散する(§44).故に収束半径を r とすれば,r=\tfrac{1}{l}.特に l=0 ならば,任意の x に関して \textstyle\sum a_nx^n は収束するから,r=\infty.また l=\infty ならば,x\ne 0 なるとき \textstyle\sum a_nx^n は発散するから,r=0
(証終)
[注意 2] 
\textstyle\lim_{n\to\infty}\frac{|a_{n+1}|}{|a_n|}=l が存在するときは,r=\tfrac{1}{l}l=0 ならば r=\inftyl=\infty ならば r=0§44).この判定法は応用上しばしば便利である.

巾級数 \textstyle f(x)=\sum_{n=0}^\infty a_nx^n を項別に微分すれば,

(2)
f'(x)=\sum_{n=1}^\infty na_nx^{n-1}

を得る.これは,巾級数 (1) 収束し,かつ,(2) の右辺の巾級数が一様収束する区域において正当である(定理 40).然るに級数 (2) は原級数 (1) と同一の収束半径を有する.実際,収束に関しては (2) の各項に x を掛けても影響はないから

\varlimsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{n|a_n|}

を考察すればよいのだが,\sqrt[n]n\to 1 だから,これは \varlimsup\sqrt[n]{|a_n|} に等しいこと明白であろう.

故に巾級数は,その収束円の内部において,何回でも項別に微分積分することができて,そのとき生ずる巾級数はすべて原級数と同一の収束半径を有する.

上記を要約して次の定理を得る.

定理 49.
巾級数 \textstyle\sum a_nx^n は収束円の内部において x の連続函数である.それを f(x) とすれば,f(x) は各階の微分可能で

  f^{(k)}(x)=\sum_{n=k}^\infty n(n-1)\cdots(n-k+1)a_nx^{n-k}=k!\,a_n+\cdots,
従って
a_k=\frac{f^{(k)}(0)}{k!}.
故に
f(x)=\sum a_nx^n
f(x)Taylor 展開である.

故に f(x) が巾級数に展開されるならば,その展開は唯一である.すなわち \textstyle f(x)=\sum a_nx^n=\sum b_nx^n ならば,a_n=b_n=\tfrac{f^{(n)}(0)}{n!}

これを巾級数の一意性の定理という.
[注意 1] 
定理 49 は次のように初等的に証明される.
(1º)
\textstyle\sum a_nx^n の収束円内の一点を x\,(x\ne 0) とし,同じく収束円内に |x_0|>|x| なる x_0 を取って |x_0|/|x|=k>1 とする.然らば,n\to\infty のとき,a_n\ne 0 なる項に関しては,

  \frac{|na_nx^{n-1}|}{|a_nx_0^n|}=\frac{n}{k^n}\frac{1}{|x|}\to 0.
すなわち左辺の比は有界である.さて \textstyle\sum|a_nx_0^n| は収束するから,\textstyle\sum|na_nx^{n-1}| も収束する((IV)).逆に,\textstyle\sum|na_nx^n| の収束する点において,\textstyle\sum|a_nx^n| の収束することは明らかである.
(2º)
定理 40 では CBから導いたが,巾級数に関しては,項別微分の可能性は直接に簡単に証明される.今 \textstyle f(x)=\sum a_nx^n の収束半径を r,収束円内の二点を x,x+h とする.すなわち |x|<\rho<r,|x+h|\leqq\rho<r とする.然らば
(3)
\begin{align}
  \frac{f(x+h)-f(x)}{h}&=\sum_{n=0}^\infty a_n\frac{(x+h)^n-x^n}{h}\\
  &=\sum_{n=1}^\infty a_n\{(x+h)^{n-1}+(x+h)^{n-2}+x+\cdots+x^{n-1}\}.
\end{align}
この一般項は絶対値において,n|a_n|\rho^{n-1} を越えない.然るに \rho<r だから \textstyle\sum n|a_n|\rho^{n-1} は収束する.故に (3)|h|\leqq\rho-|x| なる h に関して一様に収束する,従って h に関して連続である.故に h\to 0 の極限へ行って

  f'(x)=\lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}=\sum_{n=1}^\infty na_nx^{n-1}.
[注意 2] 
上記,収束する巾級数で表わされる函数を f(x) と置いたが,もしも反対にまず函数 f(x) が与えられて,それが或る点(簡明のため x=0 とする)において,各階微分可能として Maclaurin 級数

  a_0+a_1x+a_2x^2+\cdots,\quad a_n=\frac{f^{(n)}(0)}{n!},
を書いてみる.それが収束する場合に,この巾級数が表す函数は f(x) に等しいであろうか? それは保証されない! 一例として

  f(x)=e^{-\frac{1}{x^2}}\quad (x\ne 0),\quad f(0)=0
とする.然らば x\ne 0 のとき

  f'(x)=\frac{2}{x^3}e^{-\frac{1}{x^2}},
 一般に 
  f^{(n)}(x)=\frac{G_n(x)}{x^{3n}}e^{-\frac{1}{x^2}},
ただし,G_n(x)2(n-1) 次の多項式である.従って \textstyle\lim_{x\to 0}f^{(n)}(x)=0 であるが,実は f(x) の定義によって f^{(n)}(0)=0 である(定理 23).この場合 f(x) から生ずる巾級数 \textstyle\sum a_nx^n は常に 0 に等しい.それは f(x) すなわち e^{-\frac{1}{x^2}}x=0 以外では表わさない.Taylor の公式から,剰余項の考察なしに,Taylor 級数は出せないから,これはふしぎでない.

巾級数 P(z) は収束円の内部では z の連続函数であるが,収束円の周上における巾級数の動作に関しては一般的の断言をすることができない.それは収束円の周上の各点において発散することもあり,各点において収束することもあるが,また或る点では発散し,或る点では収束することもある.

例えば
(4)

  1+z+z^2+\cdots+z^n+\cdots
(5)

  1+\frac{z}{1}+\frac{z^2}{2}+\cdots+\frac{z^n}{n}+\cdots
(6)

  1+\frac{z}{1^2}+\frac{z^2}{2^2}+\cdots+\frac{z^n}{n^2}+\cdots
の収束半径はいずれも 1 であるが,収束円の周上(|z|=1)で,(4) は常に発散,(5)z=1 の他は収束(条件収束),(6) は常に収束(絶対収束)する.

さて収束の場合に関して,Abel が次の有名なる定理を証明した.

定理 50.
Abel の定理] 巾級数 \textstyle f(z)=\sum a_nz^n が収束円の周上の点 z=\zeta において収束すれば,z が半径に沿って \zeta に近づくとき,

  \lim_{z\to\zeta}f(z)=\sum_{n=0}^\infty a_n\zeta^n.
[注意] 
これは自明ではない.上記等式は詳しく書けば

  \lim_{z\to\zeta}\left(\lim_{n\to\infty}\sum_{\nu=0}^n a_\nu z^\nu\right)
 =\lim_{n\to\infty}\left(\lim_{z\to\zeta}\sum_{\nu=0}^n a_\nu z^\nu\right)
であるが,二つの \lim の順序を無頓着に変えてはならないことは,すでにしばしば述べたとおりである.定理 50 の意味は,右辺の極限値が確定ならば,左辺の極限値も確定で,かつ,それが右辺の極限値に等しいことをいうのである,その逆は真でない,すなわち左辺の極限値が確定でも,等式は必らずしも成り立たない. 例えば
\frac{1}{1+z}=1-z+z^2-\cdots\qquad(|z|<1)
において \textstyle\lim_{z\to1}\frac{1}{1+z}=\frac12 であるけれども,z=1 のとき右辺は収束しない.
[証]
z=\zeta x と置いて級数 \textstyle\sum a_nz^n=\sum a_n\zeta^n x^nx の巾級数にすれば,その収束半径は 1z=\zeta には x=1 が対応する.よって問題を単純化して,初めから
f(x)=\sum a_n x^n
の収束半径を 1 として
A=a_0+a_1+a_2+\cdots
が収束すると仮定して,\textstyle\lim_{x\to1}f(x)=A を証明しよう. Abel の級数変形法を引用する(§45,(VIII)).\textstyle\sum a_n が収束するから,\delta>0n が対応して

  \sigma_m=\sum_{\nu=n}^{n+m}a_\nu,\quad|\sigma_m|<\delta,\qquad(m=0,1,2,\ldots).
よって 0\leqq x\leqq 1 とすれば,x^n\geqq x^{n+1} から
\begin{align}
 \left|\sum_{\nu=n}^{n+m}a_\nu x^\nu\right|
 =|&\sigma_0(x^n-x^{n+1})+\cdots+\sigma_{m-1}(x^{n+m-1}-x^{n+m})+\sigma_mx^{n+m}|\\
 &\leqq \delta x^n\leqq \delta.
\end{align}
故に \textstyle f(x)=\sum_{n=0}^\infty a_n x^n0\leqq x\leqq 1 において一様収束,従って連続であるから,\textstyle\lim_{x\to1}f(x)=f(1)=\sum a_n=A
(証終)
[附記] 
級数 \textstyle A=\sum a_n,B=\sum b_n\,(n=0,1,\ldots) が収束するとき,\textstyle C=\sum c_n,c_n=\sum a_pb_q\,(p+q=n) とする.然らば巾級数 \textstyle A(x)=\sum a_n x^n,B(x)=\sum b_n x^n|x|<1 なるとき絶対収束をするから,\textstyle C(x)=\sum c_n x^n=A(x)B(x).さて Abel の定理によって,x\to1 のとき A(x)\to A,B(x)\to B でまた C が収束すれば,C(x)\to C.すなわち A,B,C が収束すれば,AB=Ca_n,b_n は複素数でもよい.

次に巾級数の二,三の例を掲げる.

[例 1]
最も簡単なのは幾何級数

 \frac{1}{1-x}=1+x+x^2+\cdots+x^n+\cdots
で,収束半径は
r=1.
0 から x\,(|x|<1) まで積分すれば
(7)

  -\log(1-x)=x+\frac{x^2}2+\frac{x^3}3+\cdots+\frac{x^n}n+\cdots.
x-x に変換すれば
(8)

  \log(1+x)=x-\frac{x^2}2+\frac{x^3}3-\cdots+(-1)^{n-1}\frac{x^n}n+\cdots,
(7)(8) とを加えて
(9)

  \frac12\log\frac{1+x}{1-x}=x+\frac{x^3}3+\frac{x^5}5+\cdots+\frac{x^{2n+1}}{2n+1}+\cdots.
この級数の収束半径も 1 である(182 頁,[注意 2]).また

  \frac{1}{1+x^2}=1-x^2+x^4-\cdots,\quad(|x|<1)
から積分して
(10)

  \mathrm{Arc\,tan}\,x=x-\frac{x^3}3+\frac{x^5}5-\cdots,\quad(|x|<1).
[注意] 
\pi の計算
級数 (10)x=1 のときに収束する.故に定理 50 によって
\frac\pi4=1-\frac13+\frac15-\frac17+\cdots. [Leibniz の級数]
この級数は収束緩慢で,\pi の計算には不適当である.さて \tan\alpha=\tfrac15 とすれば,4\alpha\tfrac\pi4 に近い(六十分法でいえば,\alpha は約11°19′).実際計算すれば,

  \tan2\alpha=\frac{5}{12},\quad\tan4\alpha=1+\frac{1}{119},\quad
  \tan\!\left(4\alpha-\frac\pi4\right)=\frac{\tan4\alpha-1}{\tan4\alpha+1}=\frac{1}{239},
従って

 \frac\pi4=4\mathrm{Arc\,tan\,}\frac15-\mathrm{Arc\,tan\,}\frac{1}{239},
  [Machin,1796].
故に
(11)

 \pi=16\left(\frac{1}{5}-\frac{1}{3\cdot5^3}+\frac{1}{5\cdot5^5}-\cdots\right)
     -4\left(\frac{1}{239}-\frac{1}{3\cdot239^3}+\cdots\right).

これは急速に収束する.今 (11) を用いて,\pi を小数第5位まで求めるつもりで,次の計算を試みる.

\begin{array}{r|ccrr}
 \dfrac{16}{5}=3.200\;000\quad & & [1] & & \\ \\
 \dfrac{16}{5^3}=0.128\;000\quad &\quad\div3=0.042\;000 & [2] & 0.042\;666\\[-5pt]
 & & & \begin{array}{r}0.000\;029\!\!\!\;\!\\[-2pt]0.016\;736\!\!\!\;\!\\\hline\end{array}\\[-5pt]
 \dfrac{16}{5^5}=0.005\;120\quad &\quad\div5=0.001\;024 & [3] & 0.059\;431 & [2]+[4]+[6]\\ \\
 \dfrac{16}{5^7}=0.000\;204\quad &\quad\div7=0.000\;029 & [4] & \begin{array}{r}
  3.201\;024\!\!\!\;\!\\[-1pt]-0.059\;431\!\!\!\;\!\\\hline\end{array} & \begin{align}
 &[1]+[3]\\[-4pt]-(&[2]+[4]+[6])\!\!\end{align}\\
 & & & 3.141\,593\\
 \dfrac{16}{5^9}=0.000\;008\quad &\quad\div9=0.000\;000 & [5] & & \\ \\
 \dfrac{4}{239}=0.016\;736\quad & & [6] & & \\ \\
 \dfrac{4}{239^2}=0.000\;000\quad & & [7]
\end{array}

上記 (11) の級数は二つとも交代級数であるから,或る濃い以下を省略するときに生ずる絶対誤差は省略されたる最初の項以内である(§45).上記の計算では [5],[7] からみえるように,誤差は末位の +2 以内である.また [1],[3] は正確で,[2],[4],[6] から末位の -3 以内の誤差が生ずる.故に \pi=3.141\,593 とすれば誤差は末位において +2 ないし -3 である.

William Shanks は,上記 Machin の式を用いて,\pi の値を小数 707 位まで計算した(1873)が,その後,D.F.FergusonShanks の計算は小数 527 桁を超える処で誤算があったことを発見した(1947).1949 年に,J. von Neumann が,電子計算機 ENIAC で,\pi および e の値を十分先まで計算して,数字分布の統計的尺度を知る可能性に興味があることを表明した.それが機縁となって,1950 年 6 月に ENIACe および \pi の値を小数 2000 位以上計算し,当時計算されていた \pi の小数808位までは,一致することを確認した.MTAC{{{2}}}[* 1])vol.4,1950,pp.14―15 に,ENIAC の計算した \pi の値の小数 2035 位まで,e の値の小数 2010 位までが載っている.その後電子計算機の急速な進歩に伴って,\pi のみならず,対数などの計算は,欲するならば検算を伴いつつ小数一万桁をも超えて計算できるようになった.\pi の初めの 30 桁は \pi=3.14159\,26535\,89793\,23846\,26433\,83279

対数の計算には (9) が用いられる.(9) において x=\tfrac{1}{2n+1}\,(n\geqq 1) とすれば
(12)

  \log(n+1)-\log n
  =2\left\{\frac{1}{2n+1}+\frac{1}{3(2n+1)^3}+\frac{1}{5(2n+1)^5}+\cdots\right\}.
この級数は急速に(特に n が大きいとき)収束する. n=1 としても(13 項を取れば)

  \log 2=\frac23\left(1+\frac{1}{3\cdot9}+\frac{1}{5\cdot9^2}+\cdots\right)
  =0.69314\,71805\,599
を得る.また (12) において n=4 とすれば

 \log 5=2\log 2+\frac29\left(1+\frac{1}{3\cdot81}+\frac{1}{5\cdot81^2}+\cdots\right).
今度は 6 項を取って

 \log 5=1.60943\,79124\,340
を得る.よって

 \log 10=\log 2+\log 5=2.30258\,0929\,939,

  M=\frac{1}{\log 10}=0.43429\,44819\,033
を得る.M は常用対数の率(modulus)である.すなわち
\log_{10}x=M\log x.
常用対数に関しては (12) から
(13)

  \log_{10}(n+1)-\log_{10}n=2M\left\{
    \frac{1}{2n+1}+\frac{1}{3(2n+1)^3}+\frac{1}{5(2n+1)^5}+\cdots
  \right\}.
1 から 10^5 までの整数の常用対数を求めるには,5 位の整数の対数を計算すればよい(例えば \log_{10}123=-2+\log_{10}12300).その場合,(13) において右辺の初項だけを取って

  \log_{10}(n+1)-\log_{10}n=\frac{2M}{2n+1}+\varepsilon_n
としても,誤差は(2M<1,n\geqq 10000 だから)

  \varepsilon_n<\frac{1}{3(2n+1)^3}\left\{1+\frac{1}{(2n+1)^2}+\cdots\right\}
  =\frac{1}{12n(n+1)(2n+1)}<\frac{1}{24n^3}<\frac{1}{2\cdot10^{13}}.

よって n=10000 から始めて,次々に \log_{10}n\tfrac{2M}{2n+1} を加えて \log_{10}(n+1) の近似値を求めて行けば,n=10^5 までに誤差はかさむけれども,最悪の場合 \tfrac{1}{2\cdot10^8} を超えないであろう(七桁対数表製作の理論).

対数を計算する他の方法は,整数の対数を素数の対数から導くことである.

今公式 (9) において x=\tfrac{1}{2p^2-1}\,(p>1) とすれば
\frac{1+x}{1-x}=\frac{p^2}{p^2-1}.
故に
(14)

  \log p=\frac12\log(p-1)+\frac12\log(p+1)+\frac{1}{2p^2-1}+\frac{1}{3(2p^2-1)^3}+\cdots.
p が整数で,p+1 が因数に分解されるならば,(14) から \log pp よりも小なる整数の \log と,急速に収束する級数との和として求めることができる.故に \log 2 を求めておけば,順次にすべての素数 p\log が得られ,従って,たし算によってすべての整数の \log(自然対数)が得られる[* 2]Adams\log 2,\log 3,\log 5,\log 7 を 262 桁まで計算した[* 3]
[例 2]
超幾何級数
\begin{align}
  F(\alpha,\beta,\gamma,x)
  =1&+\frac{\alpha\cdot\beta}{1\cdot\gamma}x
     +\frac{\alpha(\alpha+1)\cdot\beta(\beta+1)}{1\cdot2\cdot\gamma(\gamma+1)}x^2+\cdots\\
    &+\frac{\alpha(\alpha+1)\cdots(\alpha+n-1)\cdot\beta(\beta+1)\cdots(\beta+n-1)}
           {n!\,\gamma(\gamma+1)\cdots(\gamma+n-1)}x^n+\cdots.
\end{align}
\alpha,\beta は任意(実数または複素数)であるが,\gamma0 または負の整数であってはならない.また \alpha あるいは \beta が負の整数ならば有限級数になる.その他の場合,収束半径は 1 である.――第 n+1 項と第 n 項との係数の比

  \frac{(\alpha+n-1)(\beta+n-1)}{n(\gamma+n-1)}\to 1.
\alpha,\beta,\gamma に種々の値を与えるとき,超幾何級数の特別の場合として,多くのよく知られた級数が生ずる.例えば

  F(1,1,2;x)=1+\frac{x}2+\frac{x^2}3+\cdots+\frac{x^n}{n+1}+\cdots
  =\frac{-1}{x}\log(1-x).

  F(-\mu,\mu,\mu,x)=1-\frac{\mu}1x+\frac{\mu(\mu-1)}{2!}x^2-\cdots
    +(-1)^n\frac{\mu(\mu-1)\cdots(\mu-n+1)}{n!}x^n+-\cdots.
これは,いわゆる二項級数で,|x|<1 のとき (1-x)^\mu を表わす(後述,§65). 例えば \mu=\tfrac12 とすれば,xx^2 を代用して

  \frac{1}{\sqrt{1-x^2}}=1+\frac12x^2+\frac{1\cdot3}{2\cdot4}x^4+\cdots
   +\frac{1\cdot3\cdots(2n-1)}{2^n\cdot n!}x^{2n}+\cdots,
積分して
[例 3]
x のすべての値に対して収束する巾級数としては,指数級数
e^x=\sum\frac{x^n}{n!}\quad(r=\infty)
が最もよく知られている一例である.よって定理 48 から
\lim\sqrt[n]{n!}=\infty.
従って x=0 のほか発散する級数(r=0)の一例として
\sum n!\,x^n
を得る.

  1. この雑誌は 1960 年 14 巻から Mathematics of Computation と改題された.
  2. Wolfram の表には 1000 以下の素数の自然対数の 50 桁の表が掲げられている.この表はすでに少年 Gauss が愛用したものである.
  3. J.C.Adams,Proc.Roy,Soc.London,27(1878).
  4. この公式は実質上和算家に知られていた.ここで x=1/2 とすれば,\pi/6 が得られる.

[編集] 53.指数函数および三角函数

初等数学では,指数函数 a^x は任意指数 x に関する巾として定義せられ,その逆函数として対数函数 \log_a x が導かれる.特に e^x の底は \textstyle\lim_{n\to\infty}(1+\frac{1}{n})^n として定義された.これは指数函数の歴史的の発生で,その理論はかなり煩雑といわねばならない.

今もし伝統を離れて,ひとまず有理式のみを既知の函数と考えて,その積分函数として生ずる新函数を考察するならば,自然に対数函数が得られ,その逆函数として指数函数が得られるであろう.

今その理論の概要を述べるが,虚心で考えるならば,それはすこぶる簡単である.積分
(1)
y=\int_1^x\frac{dx}{x}
によって x の連続函数 y が区間 0<x<\infty において定義される.それは単調に(-\infty から +\infty まで)増大するから,逆函数 x=f(y)\quad(-\infty<y<\infty) が確定する.さて (1) から
\frac{dy}{dx}=\frac{1}{x}.
故に
f'(y)=\frac{dx}{dy}=x=f(y).
従って
f(y)=f'(y)=f''(y)=f'''(y)=\cdots.
(1) において x=1 とすれば y=0.従って
f(0)=f'(0)=f''(0)=\cdots=1.
よって,Maclaurin の展開
(2)
f(y)=1+\frac{y}{1!}+\frac{y^2}{2!}+\cdots
を得る[* 1].これは y のすべての値に関して収束する(§25). このようにして指数函数が導かれるが,変数の記号を換えて
f(x)=1+\frac{x}{1!}+\frac{x^2}{2!}+\cdots
と書く.指数函数の性質はこの巾級数から得られる.まず Taylor 展開[* 2]
f(x+y)=f(x)+\frac{y}{1!}f'(x)+\frac{y^2}{2!}f''(x)\cdots+\frac{y^n}{n!}f^{(n)}(x)+\cdots
において,すべての n に関して f^{(n)}=f だから
f(x+y)=f(x)\left(1+\frac{y}{1!}+\frac{y^2}{2!}+\cdots+\frac{y^n}{n!}+cdots\right).
故に
f(x+y)=f(x)\cdot f(y).
これを繰り返して
(3)
f(x_1+x_2+\cdots+x_n)=f(x_1)\cdot f(x_2)\cdots f(x_n).
x_1=x_2=\cdots=x_n=1,f(1)=e と置けば[* 3]
f(n)=e^n.
これは自然数 n を指数とする巾(乗法 e\cdot e\cdots e)であるが,任意の x に関しても同様の記号を用いて f(x)
e^x または \exp(x)
と書く.このようにして定義される函数を,底 e の任意指数 x に関する巾という.然らば (3) から
e^{x_1+x_2}=e^{x_1}e^{x_2}.
もしも c>0 として
g(x)=f(cx)=e^{cx}
と置くならば,(3) から
g(x_1+x_2)=g(x_1)g(x_2).
今度は
g(1)=e^c=a
と書いて,前のように
a^x=g(x)
によって巾 a^x を定義する. e^x の逆函数を \log x と書けば,c=\log a であるから
a^x=g(x)=f(cx)=e^{x\log a}.
このようにして任意指数の巾の意味が確定する.
三角函数は歴史的には幾何学の見地から定義されたのであるが,これも解析的に積分から導かれる.今度は
(4)
\theta=\int_0^x\frac{dx}{\sqrt{1-x^2}}
を取る.この積分は -1\leqq x\leqq 1 において単調に -\varpi から \varpi まで増大する.ただし
\varpi=\int_0^1\frac{dx}{\sqrt{1-x^2}}.
よって x\theta の函数として区間 -\varpi\leqq\theta\leqq\varpi において確定する.それを
x=\varphi(\theta)\qquad(-\varpi\leqq x\leqq\varpi)
と書く.然らば
\frac{d\theta}{dx}=\frac{1}{\sqrt{1-x^2}},
従って
\varphi'(\theta)=\frac{dx}{d\theta}=\sqrt{1-x^2}.
今便宜上
\sqrt{1-x^2}=\psi(\theta)
と書けば
\psi'(\theta)=\frac{d}{d\theta}\sqrt{1-x^2}=\frac{d}{dx}\sqrt{1-x^2}\cdot\frac{dx}{d\theta}=\frac{-x}{\sqrt{1-x^2}}\sqrt{1-x^2}=-x=-\varphi(\theta).
故に
\begin{align}
  &\varphi''(\theta)=\psi'(\theta)=-\varphi(\theta),\\
  &\psi''(\theta)=-\varphi'(\theta)=-\psi(\theta).
\end{align}
これから
(5)
\left.\begin{align}
  &\varphi^{(2n)}(\theta)=(-1)^n\varphi(\theta), &
  &\psi^{(2n)}(\theta)=(-1)^n\psi(\theta).\\
  &\varphi^{(2n+1)}(\theta)=(-1)^n\psi(\theta),&
  &\psi^{(2n+1)}(\theta)=(-1)^n\varphi(\theta).
\end{align}\right\}
(4) において x=0 とすれば,\theta=0,従って
\varphi(0)=0,\quad\psi(0)=1.
よって (5) を用いて Maclaurin の展開
(6)
\left.\begin{align}
  \varphi(\theta)&=\theta-\frac{\theta^3}{3!}+\frac{\theta^5}{5!}-\cdots,\\
  \psi(\theta)&=1-\frac{\theta^2}{2!}+\frac{\theta^4}{4!}-\cdots
\end{align}\right\}
を得る(§25).すなわち実際 \varphi(\theta)=\sin\theta,\psi(\theta)=\cos\theta であるが,その幾何学上の意味を上記の定義から導くことができる. 積分 (4) は半径 1 なる円 x^2+y^2=1 の弧長の計算(§40)から生ずるものである.すなわち x>0 とすれば,円弧 AP の長さは
\int_0^x\sqrt{1+y'^2}\,dx,
ただし
y=\sqrt{1-x^2},
従って
y'=\frac{-x}{\sqrt{1-x^2}},\quad 1+y'^2=\frac{1}{1-x^2}.
故に積分 (4)
\theta=\int_0^x\frac{dx}{\sqrt{1-x^2}}
AP の弧長である.従って
x=\varphi(\theta)=\frac{PN}{OP},\quad y=\psi(\theta)=\sqrt{1-x^2}=\frac{ON}{OP}.
x=1 のとき \theta=\varpi と置いたが,それは弧長 AB である.故に円周の長さを 2\pi と書くならば
\varpi=\frac\pi2.

これで 0\leqq\theta\leqq\tfrac{\pi}2 において \varphi(\theta),\psi(\theta)\sin\theta,\cos\theta と一致することが示された.\sin\theta,\cos\theta の加法定理および周期性は級数 (6) から解析的に(計算によって)導かれる.それは単なる計算であるが,その計算を見通しよく実行にするには,複素数を用いねばならない(次節参照).

[附記] 
上文 \varphi(\theta),\psi(\theta) は区間 [-\varpi,\varpi] に属する \theta に関してのみ定義されたけれども,Maclaurin の展開 (6) は,\theta のすべての値に関して収束する.よってこの展開 (6) によって \varphi(\theta),\psi(\theta) を定義することにすれば,まず Taylor 展開[* 4]
\begin{align}
  \varphi(\alpha+\theta)&=\varphi(\alpha)+\frac{\theta}{1!}\varphi'(\alpha)+\frac{\theta^2}{2!}\varphi''(\alpha)+\frac{\theta^3}{3!}\varphi'''(\alpha)+\cdots\\
  &=\varphi(\alpha)+\frac{\theta}{1!}\psi(\alpha)-\frac{\theta^2}{2!}\varphi(\alpha)-\frac{\theta^3}{3!}\psi(\alpha)+\cdots.
\end{align}
右辺の偶数番号の項と奇数番号の項とを別々にまとめて書けば,
\begin{align}\varphi(\alpha+\theta)
  &= \varphi(\alpha)\left(1-\frac{\theta^2}{2!}+\frac{\theta^4}{4!}-\cdots\right)
    +\psi(\alpha)\left(\theta-\frac{\theta^3}{3!}+\frac{\theta^5}{5!}-\cdots\right)\\
  &=\varphi(\alpha)\psi(\theta)+\psi(\alpha)\varphi(\theta).
\end{align}
\psi(\alpha+\theta) についても同様に,あるいは \alpha に関して微分して,
\psi(\alpha+\theta)=\psi(\alpha)\psi(\theta)-\varphi(\alpha)\varphi(\theta).
すなわち加法公式が得られる.この後の式で \theta=-\alpha と置けば,
1=\psi(\alpha)^2+\varphi(\alpha)^2
を得る.これは \varphi\psi との関係が定義の拡張の後にも成り立つことを示すのである. 三角函数の周期性も,上の式で \theta=\varpi=\tfrac{\pi}2 と置いて得られる.すなわち
\varphi\!\left(\alpha+\frac{\pi}2\right)=\psi(\alpha),\quad \psi\!\left(\alpha+\frac{\pi}2\right)-\varphi(\alpha).
よって
\varphi(\alpha+\pi)=\psi\!\left(\alpha+\frac{\pi}2\right)=-\varphi(\alpha),
\varphi(\alpha+2\pi)=-\varphi(\alpha+\pi)=\varphi(\alpha).
微分して
\psi(\alpha+2\pi)=\psi(\alpha).
このようにして,三角函数の諸性質が,幾何学の助けなしに得られるのである.
[注意] 
もしも有理函数の積分から三角函数を導くという立場を固執するならば,
\theta=\int_0^x\frac{dx}{1+x^2},\quad(-\infty<x<\infty)
(すなわち x=\tan\theta)から出発するのが適当であるが,その過程は上記のように単純でない.今かりに微積分法の発見以前に,三角函数が知られていなかったと想像するならば,円弧の計算の必要上,自然に積分 (4) に遭遇したであろう.青年 Gauss(1797)はレムニスケートの弧長に基づいて (4) の拡張として \textstyle\int\frac{dx}{\sqrt{1-x^4}} を考察して,楕円函数発見の糸口を得たのである.

  1. Taylor の公式の剰余項 \textstyle\frac{f^{(n)}(\xi)}{n!}y^n=\frac{f(\xi)}{n!}y^ny を固定すれば,n\to\infty のときに収束するから (2) が成り立つ.
  2. 前頁脚注と同様.
  3. すなわち e\textstyle\sum\frac{1}{n!} として定義するのである.複雑な \textstyle\lim_{n\to\infty}(1+\frac{1}{n})^n が不用である.
  4. 189 頁脚注と同様.

[編集] 54.指数函数と三角函数との関係 対数と逆三角函数

上文巾級数 \textstyle\sum a_nx^n の収束に関して述べたことは,係数 a_n および変数 x が複素数である場合にも通用することは前に述べた.特に指数級数
e^x=\sum\frac{x^n}{n!}=1+\frac{x}{1!}+\frac{x^2}{2!}+\cdots
は収束半径が \infty だから,x が任煮の複素数であるときにも絶対に収束する.よってその和として指数函数 e^x の定義を x が複素数なる場合にも延長することができる.

拡張された指数函数に関しても,加法定理

e^{x_1+x_2}=e^{x_1}e^{x_2}
が成り立つ.実際,任意の複素数 z_1,z_2 に関し、
e^{z_1}\cdot e^{z_2}
  =\sum_{m=0}^\infty\frac{z_1^m}{m!}\sum_{n=0}^\infty\frac{z_2^n}{n!}
  =\sum_{m,n=0}^\infty\frac{z_1^m z_2^n}{m!\,n!}.
m+n=k なる項をまとめて,
\begin{align} e^{z_1}\cdot e^{z_2} 
  &=\sum_{k=0}^\infty\frac{1}{k!}\sum_{n=0}^k{k\choose n}z_1^{k-n}z_2^n
  &=\sum_{k=0}^\infty\frac{z_1+z_2)^k}{k!}=e^{z_1+z_2}
\end{align}
を得る.これらの計算は,級数が絶対収束をするから合法である(§43§52).

特に複素数 z=x+yi に関して

e^{x+yi}=e^xe^{yi}.

さて

\begin{align}e^{yi}
  &= 1+\frac{yi}{1!}-\frac{y^2}{2!}-\frac{y^3i}{3!}+\cdots\\
  &=  \left(1-\frac{y^2}{2!}+\frac{y^4}{4!}-\cdots\right)
    +i\left(\frac{y}{1!}-\frac{y^3}{3!}+\frac{y^5}{5!}-\cdots\right).
\end{align}
故に
(1)
e^{yi}=\cos y+i\sin y.
すなわち
e^z=e^xe^{yi}=e^x(\cos y+i\sin y).
x は実数,従って e^x=0 だから,e^z の絶対値は e^x で,偏角は y である.\cos y\sin y とは同時に 0 にはならないから,e^zz の有限の値に対して,決して 0 に等しくない.

特に n を整数とすれば,(1) から

e^{2n\pi i}=1,
故に
e^{z+2n\pi i}=e^z.
すなわち e^z は周期函数で,2n\pi i がその周期である.

逆に \omegae^z の周期とすれば,e^{z+\omega}=e^z すなわち e^ze^\omega=e^ze^z\ne 0 だから e^\omega=1.よって \omega=x+yi と置けば e^\omega=e^x(\cos y+i\sin y)=1e^x>0 だから,それが e^\omega の絶対値である.すなわち e^x=1,従って x=0\cos y+i\sin y=1,すなわち y=2n\pi.故に \omega=2n\pi i.すなわち e^z の周期は 2\pi i の整数倍だけである.すなわち,2\pi i が基本周期である.

(1) において y-y に変えて

e^{-yi}=\cos y-i\sin y.
それを (1) と組合わせて
(2)

  \cos y=\frac{e^{yi}+e^{-yi}}2,\quad \sin y=\frac{e^{yi}-e^{-yi}}{2i}.

以上 y を実数としたけれども,(2) において y を任意の複素数として \cos,\sin を複素変数にまで拡張することができる.その場合 \cos,\sin の加法定理およびそれから派生する無数の恒等式はそのまま通用する.例えば

\begin{align}\cos(x+y)
  &=\frac{e^{i(x+y)}+e^{-i(x+y)}}{2}=\frac{e^{ix}e^{iy}+e^{-ix}e^{-iy}}{2}\\
  &=\frac{(e^{ix}+e^{-ix})(e^{iy}+e^{-iy})}{4}+\frac{(e^{ix}-e^{-ix})(e^{iy}-e^{-iy})}{4}\\
  &=\cos x\cos y-\sin x\sin y.
\end{align}
\sin(x+y) も同様である.

しかし複素変数まで行けば,三角函数は (2) のように単なる略記法としてのみ存在理由を有するのである.

応用数学で使われる双曲線函数は次のような指数函数の組合わせである.

  \cos\mathrm{hyp\,}x=\frac{e^x+e^{-x}}2,\quad
  \sin\mathrm{hyp\,}x=\frac{e^x-e^{-x}}2.
函数記号 \mathrm{sin\,hyp}, \mathrm{cos\,hyp}\sinh, \cosh; または \mathrm{sh}, \mathrm{ch}; またはドイツ式では \mathfrak{sin}, \mathfrak{cos} などとも略記する.

  \tan\mathrm{hyp\,}x=\tanh x=\frac{\sinh x}{\cosh x},\quad
  \cot\mathrm{hyp\,}x=\coth x=\frac{\cosh x}{\sinh x}
なども同様である.これらの函数は虚変数の三角函数として,次のように表わされる.
\cosh x=\cos(ix),\quad\sinh x=-i\sin(ix).
加法定理もこれから導かれる.すなわち
\begin{align}\cosh(x+y)=\cos(ix+iy)
  &= \cos ix\cos iy-\sin ix\sin iy\\
  &= \cosh x\cosh y+\sinh x\sinh y.
\end{align}
第二項の前の符号は i^2 のために + になる.同様に
\begin{align}\sinh(x+y)=-i\sin(ix+iy)
  &= -i\sin ix\cos iy-i\sin ix\sin iy\\
  &= \sinh x\cosh y+\sinh y\cosh x.
\end{align}

次に \cosh x\sinh x とのグラフを掲げる.\cosh x のグラフは懸垂線catenary)である.

\sinh,\cosh の逆函数は \log で表わされる.今

x=\sinh y=\frac{e^y-e^{-y}}2
と置けば,e^y に関して解いて
e^y=x\pm\sqrt{x^2+1}.
y を実数とすれば,e^y>0 だから,
(4)
y=\log(x+\sqrt{x^2+1}).
また
x=\cosh y=\frac{e^y+e^{-y}}2
と置けば
e^y=x\pm\sqrt{x^2-1},
(x+\sqrt{x^2-1})(x-\sqrt{x^2-1})=1 だから,
(5)
y=\pm\log(x+\sqrt{x^2-1}).
(4)(5)\sinh,\cosh の逆函数である.

\cosh,\sinh の逆函数を \mathrm{area\,\cos hyp},\mathrm{area\,\sin hyp},または略して \mathrm{ar\,cosh},\mathrm{ar\,sinh} などで表わす.変数を x と書けば

\begin{align}
  \mathrm{ar\,}\sinh x&=\log(x+\sqrt{x^2+1}),\\
  \mathrm{ar\,}\cosh x&=\pm\log(x+\sqrt{x^2-1}).
\end{align}

等辺双曲線 x^2-y^2=1 上の点 P の座標を (x,y),扇形(sectorOAP の面積を \sigma/2 とすれば,

簡単な積分の後
\sigma=\log(x+\sqrt{x^2-1})=\log(y+\sqrt{y^2+1})
を得る.すなわち

  x=OM=\cosh\sigma,\quad y=PM=\sinh\sigma,
\sigma=2\times 扇形 OAP=\mathrm{ar\,}\sinh y=\mathrm{ar\,}\cosh x.

これによって三角函数と双曲線函数との類似が明瞭である.三角函数の場合には円 x^2+y^2=1 において,扇形 OAP の面積が \theta/2 で,OM=\cos\theta,PM=\sin\theta

複素変数に関する指数函数の逆函数として \log の定義が複素数にまで拡張される. 今 z=r(\cos\theta+i\sin\theta),|z|=r,\arg z=\theta とおいて
\log z=u+vi
z=e^{u+vi}=r(\cos\theta+i\sin\theta
を意味するものとすれば,
e^{n+vi}=e^u(\cos v+i\sin v)
から
e^u=r,\quad v=\theta+2n\pi.\quad (n=0,\pm1,\pm2,\ldots).
r>0 だから,実数なる u=\log r は確定であるが,n は任意の整数としてもよいから,vは確定しない.故に
(6)

  \log z=u+vi=\log r+i(\theta+2n\pi)=\log|z|+i\arg z
で,虚数部は一意的には定まらなくて,2\pi i の整数倍だけ異なる無数の値を有する.それは e^z の周期性から考えて当然である.今 -\pi<\arg z\leqq \pi とすれば,\log z の虚数部は -i\pi+i\pi との間に限られる.引用上の便利のために,それを \log z主値といい,それをかりに \mathrm{Log\,} z と書く.特に z が実数ならば,z>0 なるとき \log z の主値は実数,また z<0 なるとき,主値の虚数部は \pi i である.例えば \mathrm{Log\,}(-1)=\pi i.同じように \mathrm{Log\,}i=\tfrac{\pi i}2,\mathrm{Log\,}(-i)=-\tfrac{\pi i}2,等々.

(6) からみえるように,\log z の多意性は虚数部における \arg z の多意性に基づく.故に今定点 z_0\,(z_0\ne 0) において \log z_0 の一つの値をきめて,z_0z_1 とを 0 を通らない曲線 C で結んで,z がその曲線上を連続的に動くとすれば,\arg z も連続的に変わるから z_1 における \log z_1 の値も確定する.例えば右の図で,\log 1=0(すなわち \arg 1=0)とするならば,z が曲線 C を通って z_1 に達するときには,\log z_1 は主値(0<\arg z_1<\pi)になるが,もしも曲線 C' を通るならば \log z_1=\mathrm{Log\,}z_1-2\pi i になる.

[注意] 
一般に \arg z\alpha<\arg z\leqq \alpha+2\pi のような区間に限れば \log z は確定する.それを \log z の一つの枝という.等式 \log z_1z_2=\log z_1+\log z_2 は三つの \log を任意の枝にしては成り立たない.そのとき両辺は 2\pi i の整数倍だけ違うことがある.すなわち

  \log z_1z_2\equiv\log z_1+\log z_2\quad(\bmod.\,2\pi i).
例えば z_1=z_2=-1, z_1z_2=1 のとき右辺の \log を主値とすれば \mathrm{Log}\,(-1)=\pi i だから \log 1=2\pi i を得る.それはまちがいではないが,\log は主値でない.
双曲線函数の場合と同様に,逆三角函数を \log で表わすことができる.すなわち

  x=\sin u=\frac{e^{iu}-e^{-iu}}{2i},\quad
  x=\cos u=\frac{e^{iu}+e^{-iu}}2
 または 
  x=\tan u=\frac{1}{i}\frac{e^{iu}-e^{-iu}}{e^{iu}+e^{-iu}}
をそれぞれ e^{iu} に関して解いて \log に移れば
\begin{align}
  \mathrm{arc\,}\sin x&=-i\log(ix\pm\sqrt{1-x^2}),\\
  \mathrm{arc\,}\cos x&=-i\log( x\pm\sqrt{1-x^2}),\\
  \mathrm{arc\,}\tan x&=\frac{-i}2\log\frac{1+ix}{1-ix}.
\end{align}
これは一般に通用するが,特に \mathrm{arc\,sin} を主値として
x=\sin\theta,\quad-\frac{\pi}2\leqq\theta\leqq\frac{\pi}2,\quad-1\leqq x\leqq 1
と置けば

  \cos\theta=\sqrt{1-x^2}\geqq 0,

  \log(\sqrt{1-x^2}+ix=\log(\cos\theta+i\sin\theta)=i\theta.
これは \log の主値である.故に

  \theta=\mathrm{Arc\,}\sin x=-i\mathrm{Log\,}(ix+\sqrt{1-x^2}).
もしも \sqrt{1-x^2} の負の値を取るならば
\cos(\pi-\theta)-\sqrt{1-x^2},\quad \sin(\pi-\theta)=x
だから
\mathrm{arc\,}\sin x=\pi-\mathrm{Arc\,}\sin x=-i\mathrm{Log\,}(ix-\sqrt{1-x^2}).
もしも \log の他の枝を取るならば \log=\mathrm{Log}+2n\pi i だから,\mathrm{arc\,sin}2n\pi だけ変わる.すなわち二重符号 \pm\sqrt{1-x^2}\sin\theta\sin(\pi-\theta) とに対応する \mathrm{arc\,sin} の二組の枝を与えるのである. 同様に
x=\cos\theta,\quad 0\leqq x\leqq\pi,\quad 1\leqq x\leqq -1
として,その \theta\mathrm{arc\,cos}\,x の主値とするならば,今度は
\sin\theta=\sqrt{1-x^2}\geqq 0
だから

  \log(x+i\sqrt{1-x^2})=\log(\cos\theta+i\sin\theta)=i\theta.
故に
\begin{align}
  &\mathrm{Arc\,}\cos x=-i\mathrm{Log\,}(x+i\sqrt{1-x^2}),\\
 -&\mathrm{Arc\,}\cos x=-i\mathrm{Log\,}(x-i\sqrt{1-x^2}).
\end{align}
\log の他の枝からは,それぞれ \mathrm{arc\,cos} の他の枝 2n\pi+\mathrm{Arc\,}\cos x および 2n\pi-\mathrm{Arc\,}\cos x が生ずる. \mathrm{arc\,tan} の場合は少しく様子が違うが,かえって簡明である.今
x=\tan\theta,\quad -\frac{\pi}2<\theta<\frac{\pi}2,\quad -\infty<x<\infty
と置けば

  1+ix=\frac{\cos\theta+i\sin\theta}{\cos\theta},\quad
  1-ix=\frac{\cos\theta-i\sin\theta}{\cos\theta},

  \frac{1+ix}{1-ix}=\frac{\cos\theta+i\sin\theta}{\cos\theta-i\sin\theta}
  =\cos2\theta+i\sin2\theta.

  \mathrm{Log\,}\frac{1+ix}{1-ix}=2\theta i.
故に

 \theta=\mathrm{Arc\,}\tan x=\frac{-i}2\mathrm{Log\,}\frac{1+ix}{1-ix}.
今度は係数 \tfrac{-i}2 のために \log の他の枝からは \theta+n\pi が生ずる.

変数を実数に限っても \mathrm{arc\,sin}, \mathrm{arc\,cos}, \mathrm{arc\,tan} の多意性が \log の多意性の下に統一される.

実変数に関する三角函数,双曲線函数は複素変数に関する指数函数の一断面にほかならないから,それらの逆函数がすべて対数函数に包括されるのである.この認識は大切である.

上記の関係は形式上はすでに十八世紀(Euler)において知られていたのであるが,その根本的の意味は十九世紀以後,複素変数が徹底的に考察された後に初めて明らかになって,そこから驚嘆すべき単純化が可能になったのである.初等函数といえども,複素変数にまで次元の拡張をしなくては完全に統制されないのである.その間の消息は第 5 章で述べるであろう.

[編集] 練習問題(4)

(1)
\textstyle\sum u_n を正項級数とする.\{a_n\} を任意の正数列とするとき,十分大なる n に関して常に

  a_n\frac{u_n}{u_{n+1}}-a_{n+1}>k\quad(k>0)
ならば,\textstyle\sum u_n は収束する; また,

  a_n\frac{u_n}{u_{n+1}}-a_{n+1}\leqq 0
で,かつ \textstyle\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{a_n} が発散すれば,\textstyle\sum u_n も発散する(Kummer).
(2)
次の巾級数の収束半径を求めよ.
[1º]

  \sum\frac{(n!)^2}{(2n)!}\,x^n.
[2º]

  \sum a^{n^2}x^n.
[解]
[1º] r=4. [2º] |a|\gtreqqless 1 によって結果が違う.
(3)

  a_0>a_1>\cdots>a_n>\cdots\to 0
ならば

  \sum_{n=0}^\infty a_n\cos nx,\quad\sum_{n=0}^\infty a_n\sin nx
は収束する.ただし,第一の級数に関して,x=2k\pi のときは疑問である.
[解]
Abel の変形法の応用.
(4)
a_n>0 で,a_n\to 0 とする.もしも \textstyle\sum a_n が発散すれば
\lim_{m\to\infty}\prod_{n=1}^m(1-a_n)=0.
(5)
|q|<1,\quad 
  Q_1=\prod_{n=1}^\infty(1+q^{2n}),\quad
  Q_2=\prod_{n=1}^\infty(1+q^{2n-1}),\quad
  Q_3=\prod_{n=1}^\infty(1-q^{2n-1})
とすれば
Q_1Q_2Q_3=1.
(6)
|q|<1 ならば

  \frac{q}{1-q}+\frac{q^3}{1-q^3}+\frac{q^5}{1-q^5}+\cdots
  =\frac{q}{1-q^2}+\frac{q^2}{1-q^4}+\cdots.
[解]
両辺共に絶対収束の或る二重級数の和に等しい.
(7)
原始函数が巾級数によって与えられる例.
[1º]

  \int\frac{\sin x}x=x-\frac{x^3}{3\cdot3!}+\frac{x^5}{5\cdot5!}-\cdots.
[2º]

  \int e^{-x^2}\,dx=x-\frac{x^3}{3\cdot1!}+\frac{x^5}{5\cdot2!}-\cdots.
[3º]

  \int\frac{e^x}x\,dx=\log x+\frac{x}{1\cdot1!}+\frac{x^2}{2\cdot2!}+\cdots.
(8)
積分記号の下での微分によって
\int_{-\infty}^\infty\frac{dx}{1+x^2}=\pi
から

  \int_{-\infty}^\infty\frac{dx}{(1+x^2)^{n+1}}
  =\pi\frac{1\cdot3\cdot5\cdot\cdots\cdot(2n-1)}{2\cdot4\cdot6\cdot\cdots\cdot2n}
が得られる.
[解]
変数 x\tfrac{x}\sqrt{a} に換えて,初めの積分を \textstyle\int_0^\infty\frac{dx}{a+x} の形に変形して後,a に関して微分するのである.最後に a=1 とする.変数を \tfrac{x}a に換えてもできる.
(9)

  \int_0^\infty\left(e^{-\frac{a^2}{x^2}}-e^{-\frac{b^2}{x^2}}\right)\,dx
  =(b-a)\sqrt\pi.\quad(a>0,b>0).
[解]
\textstyle
  2\alpha\int_0^\infty e^{-\alpha^2x^2}\,dx=\sqrt\pi
\alpha に関して [a,b] で微分して,変数 x\tfrac{1}x に換える.
(10)
[1º]

  \int_0^\infty e^{-(x^2+\frac{a^2}{x^2})}\,dx
  =\frac{\sqrt\pi}2 e^{-2a},\quad(a>0).
[2º]

  \int_0^\infty e^{-(x-\frac{a}x)^2}\,dx=\frac{\sqrt\pi}2,\quad (a>0).
[解]
[1º] は [2º] から出る.[2º] の積分を J(a) とすれば \tfrac{dJ}{da}=0 故に Ja に関して定数である.a=0 と置いて J を得る.
(11)

  \int_0^1\frac{\log x}{1-x}\,dx=-\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^2}=-\frac{\pi^2}6.
  \quad\int_0^1\frac{\log x}{1+x}\,dx=-\frac{\pi^2}{12}.
[解]
\textstyle
  \lim_{n\to\infty}\frac{x^n\log x}{1-x}\,dx=0
から上記の展開を得る(級数の値は§64 参照).第二の積分も同様.
(12)
a>0,b>0 とすれば

  \int_0^1\frac{x^{a-1}}{1+x^b}\,dx=\frac{1}{a}-\frac{1}{a+b}+\frac{1}{a+2b}-\cdots.
[注意] 
a,b が自然数なるとき,左辺を直接に計算すれば,右辺の級数の和が求められる.例えば

  a=1,b=1 とすれば 1-\frac12+\frac13-\cdots=\log 2,

  a=1,b=2 とすれば 1-\frac13+\frac15-\cdots=\frac\pi4.
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