解析概論/第3章/Legendreの球函数

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[編集] 36.Legendre の球函数

部分積分法の応用として,次の問題を考察する.n-1 次以下のすべての多項式 Q(x) に関して
\int_a^b Q(x)P_n(x)\,dx=0
になるような n 次の多項式 P_n(x) を求めること.

かりに,このような多項式が実際存在するとして,それは定数因子だけの違いを無視すれば,ただ一つに限る.――実際 \varphi(x),\psi(x) が問題に適合するとすれば,\varphi(x)-c\psi(x)n-1 次以下になるように定数因子 c を取って Q(x)=\varphi(x)-c\psi(x) と書けば,仮定によって


  \int_a^b Q(x)\varphi(x)\,dx=0,\quad \int_a^b Q(x)\psi(x)\,dx=0,

従って

\int_a^b(\varphi(x)-c\psi(x))Q(x)\,dx=0,
 すなわち \int_a^b (Q(x))^2=0.

Q(x) は連続だから,区間 [a,b] において常に Q(x)=0§31,(4º)).Q(x) は多項式だから,恒等式 Q(x)=0 を得る.すなわち \varphi(x)=c\psi(x) が成り立つ.

さて問題の条件に適する多項式 P_n(x) が実際存在することは,次のようにして証明される.

多項式の原始函数は次数の一つ高い多項式だから,n 次の多項式 P_n(x)2n 次の或る多項式 F(x) の第 n 階の導函数である.すなわち F^{(n)}(x)=P_n(x) と置いてよい.然らば問題の条件は(118 頁 (9)

  \int_a^b QF^{(n)}\,dx
  =\left[QF^{(n-1)}-Q'F^{(n-2)}+\cdots\pm Q^{(n-1)}F\right]_a^b
で,それは
\begin{align}
  &F(a)=F'(a)=\cdots=F^{(n-1)}(a)=0,\\&F(b)=F'(b)=\cdots=F^{(n-1)}(b)=0
\end{align}
ならば満たされる.然るに 2n 次の多項式
F(x)=(x-a)^n(x-b)^n
はこの条件に適する.故に C を任意の定数として

  P_n(x)=C\frac{d^n}{dx^n}(x-a)^n(x-b)^n
が求める多項式である.
区間が [-1,+1] なるとき,
(1)

  P_n(x)=\frac{1}{2^n\cdot n!}\frac{d^n}{dx^n}(x^2-1)^n
Legendre の球函数である.(x^2-1)^n を展開して計算を実行すれば[* 1]
P_n(x)
  =\sum_{k=0}^{[\frac n2]}\frac{(-1)^k}{2^k}
   \frac{1\cdot 3\cdot 5\cdots(2n-2k-1)}{k!\,(n-2k)!} x^{n-2k}.
例えば
\begin{align}
  &P_0(x)=1,\quad P_1(x)=x,\quad
   P_2(x)=\frac12(3x^2-1),\quad P_3(x)\frac12(5x^3-3x),\\ 
  &P_4(x)=\frac18(35x^4-30x^2+3),\quad P_5(x)=\frac18(63x^5-70x^3+15x).
\end{align}

以下 P_n の二,三の性質を述べる.

(1º)
P_nn が奇数ならば奇函数,n が偶数ならば偶函数である.
[証]
(1) によって明白.
(2º)
(3)
P_n(1)=1.\quad P_n(-1)=(-1)^n.
[証]
(1) によって
\begin{align}
  P_n(x) &=\frac{1}{2^n\,n!}\,\frac{d^n}{dx^n}(x-1)^n(x+1)^n\\
  &=\frac{1}{2^nn!}\left\{\frac{d^n(x-1)^n}{dx^n}(x+1)^n
     +n\,\frac{d^{n-1}(x-1)^n}{dx^{n-1}}\,\frac{d(x+1)^n}{dx}
     +\cdots+(x-1)^n\,\frac{d^n(x+1)^n}{dx^n}\right\}.
\end{align}
右辺の最初と最後との二項のほかは (x-1)(x+1) で割れるから,

  P_n(x)=\frac{1}{2^n}(x+1)^n+\frac{1}{2^n}(x-1)^n+(x-1)(x+1)G(x),
G(x) は多項式である.ここで x=1 または x=-1 と置けば (3) を得る.
(3º)
(4)

  \int_{-1}^1 P_n(x)^2\,dx=\frac{2}{2n+1},
(5)

  \int_{-1}^1 P_m(x)P_n(x)\,dx=0,\quad (m\ne n).
[証]
m\ne n のときは P_n(x) の定義によって明白.

さて


  P_nP_{n+1}\Big|_{-1}^1=\int_{-1}^1 P_nP_{n+1}'\,dx+\int_{-1}^1 P_n'P_{n+1}\,dx.
左辺は (2º) によって 2 に等しい.また右辺の第二の積分は P_n'n+1 次よりも低いから 0 に等しい.故に
(6)
2=\int_{-1}^1 P_nP_{n+1}'\,dx.
さて (1) から P_n(x) における x^n の係数は \tfrac{2n(2n-1)\cdots(n+1)}{2^n\cdot n!}.故に P_{n+2}'(x) における x^n の係数は

  \frac{(2n+2)(2n+1)\cdots(n+2)}{2^{n+1}(n+1)!}\cdot(n+1).
故に
P_{n+1}'(x)=(2n+1)P_n(x)+Q(x)
と置けば,Q(x)n-1 次以下の多項式である.よって両辺に P_n(x) を掛けてから積分すれば

  \int_{-1}^1 P_nP_{n+1}'\,dx=(2n+1)\int_{-1}^1 P_n^2\,dx.
故に (6) から

  2=2(n+1)\int_{-1}^1 P_n^2\,dx,
すなわち (4) を得る.
(4º)
循環公式
(7)

  (n+1)P_{n+1}(x)-(2n+1)xP_n(x)+nP_{n-1}(x)=0.\quad(n\geqq 1)
[証]
P_n,P_{n+1} の最高次の項の係数(上出)を比較すれば
P_{n+1}-\frac{2n+1}{n+1}xP_n
は,(1º) によって n-1 次以下の多項式であることがわかる.故に

  (n+1)P_{n+1}-(2n+1)xP_n=\alpha P_{n-1}+Q
と置いて,係数 \alpha を適当に定めるならば,Qn-2 次以下の多項式である.そこで Q を両辺に掛けて積分すれば \textstyle\int_{-1}^1 Q^2\,dx=0,従って Q=0 を得る.係数 \alpha を定めるためには x=1 と置けばよい.そのとき,(2º) によって
n+1-(2n+1)=\alpha すなわち \alpha=-n.
すなわち (7) の通り.

P_n'(x) に関して次の公式がある.

(8)

  (1-x^2)P_n'(x)+nxP_n(x)-nP_{n-1}(x)=0.

その証明は (7) と同様の方法でできる.

(5º)
P_n(x) の根はすべて実数で,-1+1 との間にある.それらは単根で,P_{n-1}(x)=0 の根によって隔離される.すなわち P_n(x) の隣り合せの二つの根の間に P_{n-1}(x) の根が一つずつ配置される.
P_n(x)\,(x\geqq 1)-1+1 との間に n この根を有することは,(1) から Rolle の定理によってわかる.P_n(x)P_{n-1}(x) との根の配置は (2º) および (7) からわかる.また (8) を使ってもできる.すなわち,(8) によれば,P_n(x) の根 x_1 に対しては P_n'(x_1)P_{n-1}(x_1) とは同符号であるが,P_n(x) の隣接する二つの根を x_1,x_2 とすれば,P_n'(x_1)P_n'(x_2) とは反対の符号を有するから,P_{n-1}(x_1)P_{n-1}(x_2) とも反対の符号を有する.従って [x_1,x_2] 内に P_{n-1}(x) の根が少くとも一つはあるが,実根の数を考慮すれば,ちょうど一つあることがわかる.
(6º)
微分方程式および母函数.u=(x^2-1)^n と置けば
(x^2-1)u'=2nxu.
これを n+1 回微分すれば

  (x^2-1)u^{(n+2)}+2(n+1)xu^{(n+1)}+n(n+1)u^{(n)}=2nxu^{(n+1)}+2n(n+1)u^{(n)},
すなわち
(x^2-1)u^{(n+2)}+2xu^{(n)}-n(n+1)u^{(n)}=0.
u^{(n)}=CP_n(x) だから,P_n(x) は微分方程式
(x^2-1)y''+2xy'-n(n+1)y=0
の解である.
[附記] 
ポテンシャル論において
\frac{1}\sqrt{1-2r\cos\theta+r^2}
r の巾級数に展開する必要が生ずる.今 x=\cos\theta と置けば,この展開の係数として球函数 P_n(x) が生ずる.すなわち

  \frac{1}\sqrt{1-2r\cos\theta+r^2}=\sum_{n=0}^\infty P_n(\cos\theta)r^n.
これが函数 P_n(x) の歴史的の出所である.よって (1-2rx+r^2)^\frac12P_n(x)母函数という.上記 (4º) の公式 (7)(8) はこの展開からも導かれる.(フランス系では P_n(x)X_n と書く.)

  1. [n/2]n/2 を超えない最大の整数を表わす記号.
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