解析概論/第3章/積分函数 原始函数

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[編集] 32.積分函数 原始函数

f(x) が積分可能なる区間において,a を一つの定点,x を任意の点として

F(x)=\int_a^x f(x)\,dx

と書けば,F(x) はその区間における x の函数である.その意味において F(x)積分函数という.

ただし,ここで ax の大小を問わない(前節 (1) 参照).また F(a) すなわち \textstyle\int_a^a f(x)0 に等しい.

積分函数に対して f(x)被積分函数といい,また積分記号内に記した x積分変数という.

故に F(x) における変数 x と記号 \textstyle\int の中に記した x とは意味が違う.積分変数はどのような文字で表わしてもよいことは前に述べた通りで,例えば
F(x)=\int_a^x f(t)\,dt
と書いても同じことであるが,\textstyle\int の上の限界は必らず x で,それが函数 F(x) における独立変数である.
定理 34.
区間 [a,b]f(x) が積分可能ならば,その区間内で積分函数
\int_a^x f(x)\,dx
x の連続函数である.
[証]
念のために積分変数を t と書いて,
F(x)=\int_a^x f(t)\,dt
とする.然らば証明すべきことは: h\to 0 のとき F(x + h)-F(x)\to 0.さて
F(x + h)-F(x)=\int_a^{x+h}f(t)\,dt-\int_a^x f(t)\,dt=\int_x^{x+h}f(t)\,dt.
よって [a,b] における |f(x)| の一つの上界を M とすれば,
\left|\int_x^{x+h}f(t)\,dt\right|\leq\left|\int_x^{x+h}|f(t)|dt\right|\leq M|h|.
故に h\to 0 のとき F(x+h)-F(x)\to 0

積分の下の限界を変数としても同様である.

(証終)

f(x) が与えられたとき,F'(x)=f(x) なる F(x)f(x) の原始函数ということは既に述べた.また連続函数 f(x) の積分函数 \textstyle\int_a^x f(x)\,dx が,f(x) の一つの原始函数であることは,既に確定しているが(93 頁,および,95 頁積分可能の条件参照),これは基本的だから,定理として掲出する.

定理 35.
f(x) が積分区間内の一点において連続ならば,その点において積分函数 F(x) は微分可能で
F'(x)=f(x).
[証]
まずh>0として,前のように
F(x + h) - F(x)=\int_x^{x + h}f(t)\,dt.
従って
m\leq\frac{F(x + h)-F(x)}{h} - f(x)\leq M.
 (§31,(7º)),
M,m は,[x,x+h] における f(x) の値の上限,下限である.従って
\left|\frac{F(x + h)-F(x)}{h}-f(x)\right|\leq M - m.
さて f(x) の連続性によって,\varepsilon > 0 に対して \delta を十分小さく取って,h< \delta のとき M-f(x)< \varepsilon, f(x)-m< \varepsilon,従って M-m< 2\varepsilon ならしめることができる.

h<0 としても同様であるから F'(x)=f(x)

[注意 1] 
x において f(x) が右へ,あるいは左へ,連続ならば D^+ F(x)=f(x) あるいは D^- F(x)=f(x)
[注意 2] 
同じ条件の下において,積分 \textstyle\int_x^b f(x)\,dx を下の限界に関して積分すれば -f(x) を得る.それは\textstyle\int_x^a = -\int_a^x だから,当然である.
逆に f(x) が連続で,その一つの原始函数 F(x) が知られるときは,それを用いて f(x) の積分が計算される.すなわちその場合,かりに
F_1(x)=\int_a^x f(x)\,dx
と書けば,F'_1(x)=f(x), F'(x)-F'_1(x)=0.故に F(x)-F_1(x)=C は定数である.すなわち
\int_a^x f(x) dx=F(x) + C.
ここで x = aとすれば,0 = F(a) + C,故に C = -F(a),従って,x = b とすれば
(1)
\int_a^b f(x) dx = F(b) - F(a).

これを微分積分法の基本公式という.

積分 \textstyle\int_a^x f(x)\,dx の上の限界を変数とし,下の限界を任意の定数とすれば,その定数をどうきめても,差は x に無関係である.すなわち f(x) が積分可能なる区間に属する任意の定数 a,a' に関して \textstyle\int_{a'}^x = \int_a^x - \int_a ^{a'} で,\textstyle\int_a^{a'}x に関係しない.このように積分の下の限界なる定数を指定しない場合に,積分を限界なしに \textstyle\int f(x)\,dx と書いて,それを不定積分という.f(x) が連続函数ならば,不定積分は原始函数と同意語である.

基本公式 (1) は,要約すれば連続函数に関する限り,微分と積分とが互に逆な算法であることを意味する.もしも連続性を仮定しないならば,この関係は成立しない.すなわち F'(x)=f(x) でも f(x) は必らずしも連続でなく,従って必らずしも積分可能でないが,また積分可能でも積分函数は F(x) と合致するとはいわれない.\textstyle\int_a^x f(x)\,dx は必らず連続であるけれども,それは必らずしも微分可能でなく,微分可能でも微分商は f(x) と合致するとは限らない.連続函数以外では,微分積分法はむずかしい!

次に公式 (1) の応用に関する注意を述べる.

[例 1]
(2)
\frac{d}{dx} \left( \frac{1}{x} \right) = -\frac{1}{x^2},
	\quad\int_a^b \frac{dx}{x^2} = \frac{1}{a} - \frac{1}{b}.
もしもここで無分別に a = -1, b = 1 とするならば,
\int_{-1}^{1} \frac{dx}{x^2} = -2
 (不合理)
がでてくる.左辺は正であるべきはずだから,これはまちがいである

ここでは F(x)=\tfrac{1}{x}, f(x)=-\tfrac{1}{x^2} であるが x=0 において F'(x)=f(x) は不合理であり,また x=0 において f(x) は連続でない.0 を含む区間では \tfrac{1}{x^2} は積分可能でない.(2)a,b が同符号のときに限って成り立つ.

上記はつまらないまちがいの例であるが,初等函数の範囲内では,逆三角函数を不謹慎に使用してまちがいの生ずる場合がある.

[例 2]
(3)

  \frac{d}{dx}\mathrm{arc\,tan}\,\frac{1}{2}\left(1-\frac{1}{x}\right)
  =\frac{2}{4x^2+(x-1)^2}.
これから[* 1]
\int_{-1}^{1} \frac{2dx}{4x^2 + (x - 1)^2}
	=\mathrm{arc\,tan}\,\frac{1}{2}\left(1-\frac{1}{x}\right)\bigg|_{-1}^{1}
	= 0-\frac{\pi}{4} = -\frac{\pi}{4}
 (不合理)
とすれば,これもまちがいである.この場合,被積分函数は区間 [-1,1] において連続であるから積分可能であるが,積分の値は正でなければならない.まちがいの原因は右辺の計算にある.上記では \mathrm{arc\,tan} を主値の意味に取ったが,それならば x=0 において \mathrm{arc\,tan}\,\tfrac{1}{2}(1-\tfrac{1}{x}) は不連続だから,x=0 において (3) は成り立たない.(3) を得るには \mathrm{arc\,tan}\,\tfrac{1}{2}(1-\tfrac{1}{x})x=0 において連続になるように \mathrm{arc\,tan} の値を取らねばならない.例えば次のグラフで点線で示したようにすればよい(主値は実線で画いた不連続線).もしも上の方の連続線を取るならば,

\mathrm{arc\,tan}\,\tfrac{1}{2}(1-\tfrac{1}{x})x=1 のとき \pix=-1 のとき \tfrac{\pi}{4} で,

\int_{-1}^1 \frac{2dx}{4x^2 + (x-1)^2}=\pi - \frac{\pi}{4}=\frac{3}{4} \pi.
もしまた下の方の連続線を取るならば,

\mathrm{arc\,tan}\,\tfrac{1}{2}(1-\tfrac{1}{x})x=1 のとき 0x=-1 のとき \tfrac{3}{4}\pi

\int_{-1}^1 \frac{2dx}{4x^2 + (x-1)^2}=0-\frac{3}{4}\pi=\frac{3}{4} \pi
y=\frac{1}{2}(1-\frac{1}{x}) y=\arctan\frac{1}{2}(1-\frac{1}{x})
\scriptstyle y=\frac{1}{2}(1-\frac{1}{x}) \scriptstyle y=\mathrm{arc\,tan}\,\frac{1}{2}(1-\frac{1}{x})

  1. F(x)|_a^b または [F(x)]_a^bF(b)-F(a) の略記.
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