解析概論/第3章/積分の定義の拡張(広義積分)

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[編集] 33.積分の定義の拡張(広義積分[* 1]

これまでは有限区間において,有界なる函数に関して積分を考察したが,被積分函数または積分区間が有界でない場合にまで,積分の定義を拡張する必要がある.今ここでは簡明のために,被積分函数が有限区間内の有限個の点(かりにそれを特異点という)の近傍においてのみ有界でない場合[* 2]を考察する.

積分の定義の拡張において,我々は積分函数の連続性と区間に関する加法性とを指導原理とする.それは妥当であろう.

まず区間 [a,b] の下の限界 a だけが特異点で,それを除けば [a+\varepsilon, b] において f(x) は有価かつ積分可能とする.もしも

\lim_{\varepsilon\to 0} \int_{a + \varepsilon}^{b} f(x)\,dx

が存在するならば,それを \int_a^b f(x)\,dx の定義とする.すなわち

(1)
\int_a^b f(x)\,dx=\lim_{\varepsilon\to 0} \int_{a + \varepsilon}^{b} f(x)\,dx.

ここで \varepsilon\to 0 はもちろん \varepsilon +0 の意味である.以下同様.b が特異点ならば同様に

(2)
\int_a^b f(x)\,dx=\lim_{\varepsilon'\to 0} \int_{a}^{b - \varepsilon'} f(x)\,dx

ab も特異点ならば

(3)
\int_a^b f(x)\,dx=\lim_{\varepsilon\to 0,\varepsilon'\to 0} \int_{a + \varepsilon}^{b - \varepsilon'} f(x)\,dx

とする. もしまた [a,b] 内にただ一つの特異点 c があるときには

\int_a^b f(x)\,dx=\int_a^c f(x)\,dx+\int_c^b f(x)\,dx

とする.右辺の二つの積分は (1) および (2) の意味である.すなわち

(4)

  \int_a^b f(x)\,dx
  =\lim_{\varepsilon\to 0} \int_a^{c-\varepsilon} f(x)\,dx+\lim_{\varepsilon'\to 0}
\int_{c+\varepsilon'}^b f(x)\,dx

で,右辺の積分 \textstyle\int_a^{c-\varepsilon} および \textstyle\int_{c+\varepsilon'} は可能で,かつそれらの \lim が存在するときに,上記の式によって \textstyle\int_a^b を定義するのである. 区間内に二個以上の特異点 c_1< c_2<\cdots< c_k がある時も同様に

(5)
\int_a^b f(x)\,dx=\int_a^{c_1} + \int_{c_1}^{c_2} + \cdots + \int_{c_k}^{b}

とする.右辺の積分はもちろん (1)(2)(3) の意味である. このような意味で a< b なる任意の b に関して [a,b] における積分が可能であるとき,もしも \textstyle\lim_{b\to\infty} \int_a^b f(x)\,dx が確定ならば,それを \textstyle\int_a^{\infty} f(x)\,dx の定義とする.すなわち

(6)
\int_a^{\infty} f(x)\,dx=\lim_{b\to\infty} \int_a^b f(x)\,dx,

同様に

(7)
\int_{-\infty}^b f(x)\,dx=\lim_{a\to -\infty} \int_a^b f(x)\,dx.

また

(8)

  \int_{-\infty}^{+\infty} f(x)\,dx
  =\lim_{a\to -\infty, b\to +\infty} \int_a^b f(x)\,dx.

上記の意味で,有限または無限区間において f(x) の広義積分が可能ならば,その区間に含まれる区間 [\alpha,\beta] においても \textstyle\int_a^b f(x)\,dx は可能である.広義積分に関しても§31,(1) の規約を適用する.然らば \alpha,\beta,\gamma を区間内の点とすれば


  \int_{\alpha}^{\beta} f(x)\,dx
 =\int_{\alpha}^{\gamma} f(x)\,dx+\int_{\gamma}^{\beta} f(x)\,dx

は定義によって明白である.これは \alpha,\beta\pm\infty でも成り立つ. また積分の限界 x を変数とすれば,積分函数

F(x) = \int_a^x f(x)\,dx

[a,b] において連続である.x が特異点でないならば,それはの通りであるが,x=c が特異点ならば,\varepsilon > 0 として,区間 [c,d],d > c+\varepsilon,には c 以外の特異点がないとすれば


   \int_a^c f(x)\,dx
  =\lim_{\varepsilon\to 0} \int_a^{c - \varepsilon} f(x)\,dx,\quad
   \int_a^{c+\varepsilon} = \int_a^c + \int_c^{c+\varepsilon}
  =\int_a^c + \left( \int_c^d - \int_{c + \varepsilon}^d \right)

だから,\varepsilon\to 0 のとき

F(c - \varepsilon)\to F(c),\quad F(c + \varepsilon)\to F(c).

実際,これらの性質を目標として広義積分が定義されたのであった.

[例 1]
0 < x < 1 なるとき
\int_0^x \frac{dx}{\sqrt{1 - x^2}} = \mathrm{Arc\,sin}\,x,
\mathrm{Arc\,sin} は主値である.さて x\to 1 のとき \mathrm{Arc\,sin}\,x\to\tfrac{\pi}{2}
故に
\int_0^1 \frac{dx}{\sqrt{1 - x^2}}=\frac{\pi}{2}.
同様に

   \int_{-1}^1 \frac{dx}{\sqrt{1 - x^2}}
  =\lim_{\varepsilon\to 0, \varepsilon'\to 0}
   \int_{-1 + \varepsilon}^{1 - \varepsilon'}\frac{dx}{\sqrt{1 - x^2}}
  =\pi.
[例 2]
x > 0 のとき
\int_0^x \frac{dx}{1+x^2}=\mathrm{Arc\,tan}\,x.
故に

  \int_0^{\infty} \frac{dx}{1 + x^2}
  =\lim_{x\to\infty} \mathrm{Arc\,tan}\,x
  =\frac{\pi}{2}.
同様に

  \int_{-\infty}^0 \frac{dx}{1 + x^2}=\frac{\pi}{2},\quad
  \int_{-\infty}^{\infty} \frac{dx}{1 + x^2}=\pi.
[注意] 
上記 (4) のように,広義の積分が \lim の和として定義されるとき,それらの \lim はもちろん各別に存在することを要する.すなわち (4) の右辺において変数 \varepsilon,\varepsilon' は互に独立である.例えば [-1,+1] 内で,x=0 において \tfrac{1}{x} は不連続で

  \int_{-1}^{-\varepsilon} \frac{dx}{x}=\log \varepsilon,\quad
  \int_{\varepsilon'}^1 \frac{dx}{x}=-\log \varepsilon'.
ここで \varepsilon = \varepsilon' とすれば

  \int_{-1}^{-\varepsilon} \frac{dx}{x}+\int_{\varepsilon'}^1 \frac{dx}{x}=0
になるけれども
\int_{-1}^1 \frac{dx}{x}
0 を意味しない.それは \textstyle
   \lim_{\varepsilon\to 0}\log\varepsilon-\lim_{\varepsilon'\to 0} \varepsilon'
  =\lim_{\varepsilon\to 0,\varepsilon'\to 0} \log \frac{\varepsilon}{\varepsilon'}
であるべきだが,この極限は存在しない.故に \textstyle\int_{-1}^1 \frac{dx}{x} は無意味である.それは収束しない(発散する).

上記 (4) において \textstyle\int_a^b は収束しなくても,もしも右辺の独立変数 \varepsilon, \varepsilon' の間に特別の関係をつけるならば,上の例のように極限値が存在することもある.特に \varepsilon = \varepsilon' とするときの極限値を Cauchy\textstyle\int_a^b主値valeur principale)と名づけた.Cauchy は虚数積分の考察(解析函数論の前身)において,そのような極限値に遭遇したのであった.現今でも,文献において,積分の主値なる語が上記の意味で,おりおり,用いられる.

広義積分の収束に関して Cauchy の判定法が,もちろん,適用される.例えば
F(x)=\int_a^x f(x)\,dx
と書くとき,
\int_a^{\infty} f(x)\,dx=\lim_{x\to\infty} F(x)
が存在するための条件は,任意の \varepsilon > 0 に大して十分大なる p,q \quad(p < q) を取れば
|F(q) - F(p)|<\varepsilon,
すなわち
\left| \int_p^q f(x)\,dx \right|<\varepsilon.
同様に x = a が特異点であるとき広義積分 \int_a^b が収束するための条件は,a に十分近く p,q を取るとき (a < p < q)
\left| \int_p^q f(x)\,dx \right|<\varepsilon.
広義積分では \textstyle\int_a^b f(x)\,dx が収束しても \textstyle\int_a^b |f(x)|\,dx は必らずしも収束しないが,もしも \textstyle\int_a^b |f(x)|\,dx も収束すれば,
\left| \int_a^b f(x)\,dx \right|\leq\int_a^b |f(x)|dx.
この場合に \textstyle\int_a^b f(x)\,dx絶対収束をするという.

区間積分が有界でない場合も同様である.

[例]
[* 3] \textstyle\int_0^{\infty}\frac{\sin x}{x}\,dx は収束する.

  \int_p^q \frac{\sin x}{x}dx
  =\frac{-\cos x}{x} \bigg|_p^q-\int_p^q \frac{\cos x}{x^2}dx.
故に

  \left| \int_p^q \frac{\sin x}{x} dx \right|
  \leq\frac{1}{p}+\frac{1}{q}+\int_p^q \frac{dx}{x^2}
  =\frac{1}{p}+\frac{1}{q}+\frac{1}{p}-\frac{1}{q}
  =\frac{2}{p} \to 0.
しかし \textstyle\int_0^{\infty} \frac{|\sin x|}{x} dx は収束しない.実際

  \int_{n \pi}^{(n + 1) \pi} \frac{|\sin x|}{x} dx
  =\int_0^{\pi} \frac{\sin x}{n \pi + x}dx
  >\frac{1}{(n + 1) \pi} \int_0^{\pi} \sin x dx
  =\frac{2}{(n + 1) \pi}
  >\frac{2}{\pi} \int_{n + 1}^{n + 2} \frac{dx}{x}
故に

  \int_0^{n \pi} \frac{\sin x}{x} dx
  >\frac{2}{\pi} \int_1^{n + 1} \frac{dx}{x}
  =\frac{2}{\pi} \log (n + 1)\to\infty.

次の定理はしばしば応用される.

定理 36.
(1º)
区間 (a,b] において f(x) は連続で,x\to a のとき f(x) は限りなく大なる値をも取るが,しかし 0 < \alpha < 1 なる或る指数 \alpha に関して (x - a)^{\alpha}|f(x)| が有界ならば \textstyle\int_a^b f(x)\,dx は収束する(絶対収束).
(2º)
区間 [a,\infty) において f(x) は連続で,しかも \alpha > 1 なる或る指数に関して x^{\alpha}|f(x)| が有界ならば \textstyle\int_a^{\infty} f(x)\,dx は収束する(同上).
[注意] 
応用上しばしば遭遇するのは
\lim_{x\to a} (x - a)^{\alpha} f(x) = l あるいは \lim_{x\to\infty} x^{\alpha} f(x) = l
なる極限値(有限)が存在する場合である.そのとき (x - a)^{\alpha} |f(x) あるいは x^{\alpha} |f(x)| は有界だから,定理はあてはまる.
[証]
(1º)
仮定によって a の近傍で (x > a)
(x - a)^{\alpha} |f(x)| < M
なる定数 M があるが,問題の積分の収束性は a の近傍だけに関するのだから,すでに (a,b] において上の方程式が成り立つとみて証明をすればよい.然らば

  \int_{a + \varepsilon}^b |f(x)|dx
  < M \int_{a + \varepsilon}^b \frac{dx}{(x - a)^{\alpha}}
  = M \frac{(x - a)^{1 - \alpha}}{1 - \alpha} \bigg|_{a + \varepsilon}^b
  =\frac{M}{1 - \alpha} \{ (b - a)^{1 - \alpha} - \varepsilon^{1 - \alpha} \}.
仮定によって 1-\alpha > 0 だから

  \int_{a + \varepsilon}^b |f(x)|dx
  < \frac{M(b-a)^{1-\alpha}}{1-\alpha}.
\varepsilon が減少すれば積分区間が増大し,被積分函数 |f(x)|\geqq 0 だから,左辺の積分は単調に増大するが,それが有界だから,\varepsilon\to 0 のときに収束する.故に \textstyle\int_a^b f(x)\,dx は絶対収束をする.
(2º)
假定によって,十分大なる x に関して
x^{\alpha} |f(x) < M.
故に

  \int_a^x |f(x)|dx
  <M \int_a^x \frac{dx}{x^{\alpha}}
  =\frac{-M}{\alpha - a} \frac{1}{x^{\alpha - 1}} \bigg|_a^x
  <\frac{M}{\alpha - a} \frac{1}{a^{\alpha - 1}}.
ここで仮定 \alpha > 1 を用いた.さて左辺の積分は x と共に単調に増大するが,それが有界だから収束する.

Cauchy の収束条件よりも簡単に,有界なる単調函数の収束性を用いて証明ができたのである.

[注意] 
もしも,a に十分近い x > a で,函数 f(x) が一定の符号を有して,かつ,或る指数 \alpha > 1 に関して (x - a)^{\alpha} |f(x)| > m > 0 なる一定の m があるならば,\textstyle\int_a^b f(x)\,dx は収束しない(  \pm\infty に発散する).\textstyle\lim_{x\to a} (x - a)^{\alpha} f(x) = l \neq 0a \geqq 1 なる場合が,その一例である. 前のように仮定が (a,b] において成り立つとして証明すればよい.ついでに 0 < \varepsilon < b - a < 1 とし,かつ f(x) \geqq 0 とすれば

  \int_{a + \varepsilon}^b f(x)\,dx
  > m \int_{a + \varepsilon} \frac{dx}{(x - a)^{\alpha}}
  \geqq m \int_{a + \varepsilon} \frac{dx}{x - a}
  = m \log \frac{b - a}{\varepsilon}\to\infty.

同じように,十分大なる x に関して f(x) が一定の符号を有して,かつ,或る指数 \alpha \leqq a に関して x^{\alpha} |f(x)| > m > 0 ならば,例えば \textstyle\lim_{x\to\infty} x^{\alpha} f(x) = l \neq 0 ならば,\textstyle\int_a^{\infty} f(x)\,dx\pm\infty に発散する.

上記の上限値が l = 0 なるときには,一般的な断言はできない.

[例 1]
f(x) = P(x)/Q(x) は有理函数で,P,Q は共通因子を有しない多項式とする.然らば,Q(x) の根 x_0 を含む(または一端とする)区間において \textstyle\int_a^b f(x)\,dx は収束しない.
x_0Qk 重根 (k \geqq 1) とすれば
\lim_{x\to x_0} (x - x_0 )^k f(x) = l \neq 0.
上の注意参照.

もしも P,Qm 次,n 次とすれば,m < n -1 すなわち m\leqq n-2 なるときに限って \textstyle\int_a^{\infty} f(x)\,dx は収束する.ただし,[a,\infty) において Q \neq 0 とすることはもちろんである.\textstyle\int_{-\infty}^a f(x)\,dx も同様.

[例 2]
f(x) = P(x)/ \sqrt{R(x)}P,R は前のように,共通因子を有しない多項式で,R は複根を有しないとする.この場合 \textstyle\int_a^b f(x)\,dx R\geqq 0 なる任意の有限区間 [a,b] において収束する.
定理 36の指数 \alpha がここでは \tfrac{1}{2} である

Pm 次,Rn 次ならば,m< \tfrac{n}{2} -1 が無限区間に関する収束条件である.(もちろん R \geqq 0 を仮定する.)

[例 3]
p > 0, q > 0 とすれば
\mathit\Beta(p,q)=\int_0^1 x^{p-1} (1 - x)^{q-1} dx
は絶対収束をする(定理36 (1º)).故に \mathit\Beta(p,q) は区域 p > 0,q > 0 において,p,q の函数である.これを Eulerベータ函数という.
[例 4]
s > 0 ならば
\mathit\Gamma(s)=\int_0^{\infty}e^{-x}x^{s-1}\,dx\quad(s > 0)
は絶対に収束する.s < 1 ならば被積分函数 f(x) = e^{-x} x^{s-1}x\to 0 のとき無限大になるが,s > 0 ならば x^{1-s} f(x) = e^{-x}\to 1.また x が十分大なるとき e^{-x} x^{s-1} < \tfrac{1}{x^2} (すなわち x^{s+1} < e^x)だから,積分の上の限界 \infty に関しても収束する.故に \Gamma(s) は区間 s > 0 において定義される s の函数で,それを Eulerガンマ函数という.

本来の意味での積分に関する諸定理は,そのままでは広義積分に適用されないから,一々検討を要する.例えば §31 で述べた積分の性質のうちで (1º)(2º)(3º)(4º) は広義積分にも当てはまるが,(5º) は違う.すなわち収束する広義積分は必らずしも絶対収束をしない(106 頁[例],参照).

広義積分には (6º) も適用されない.例えば


  \int_{-1}^1 \frac{dx}{\sqrt[3]{x}},\quad
  \int_{-1}^1 \frac{dx}{\sqrt[3]{x^2}}

は収束する.(定理 36).しかし被積分函数の積を取れば \textstyle\int_{-1}^1 \frac{dx}{x} は収束しない.

微分積分法の基本公式(101 頁)は,f(x) の不連続点が有限個なる区間において,次のように広義積分にまで拡張される.

定理 37.
区間 [a,b] において,f(x) の不連続点が有限個であるとき,[a,b] で連続な函数 F(x) があって,有限個の点を除いては,F(x) は微分可能で,しかも F'(x)=f(x) とする.然らば,[a,b]f(x) の広義積分が可能で
(9)
\int_a^b f(x)\,dx = F(b) - F(a).
[証]
仮定により区間 [a,b] を有限個の区間に分割し,各区間の内部において f(x) は連続,F(x) は微分可能で F'(x) = f(x) ならしめることができる.それらの区間を
[x_{i-1},x_1],\quad i=1,2,\ldots,n,
 ただし a = x_0,b = x_n,
とすれば,任意の十分小なる \varepsilon > 0, \varepsilon' > 0 に対し

  \int_{x_{i-1} + \varepsilon}^{x_i - \varepsilon'} f(x)\,dx
  =F(x_i - \varepsilon')-F(x_{i-1} + \varepsilon),\qquad i = 1,2,\ldots,n.
F(x)[a,b] において連続だから,\varepsilon\to 0,\varepsilon'\to 0 のとき右辺,従って左辺の極限が存在する.すなわち f(x)[x_{i-1},x_i] において広義積分可能で,

  \int_{x_{i-1}}^{x_i} f(x)\,dx=F(x_i) -F(x_{i-1}),\qquad i=1,2,\ldots ,n.

これらの等式を加えて (9) を得る.

[例 1]
[-1,+1] において F(x)=\tfrac{1}{x}, f(x)=\tfrac{-1}{x^2} とすれば,x=0 だけを除いて F'(x)=f(x).しかし
\int_{-1}^1 f(x) dx= -\int_{-1}^1 \frac{dx}{x^2}\neq F(1) - F(-1)=2.
左辺の積分は収束しない.F(x) は連続でないからである.
[例 2]
[-1,+1] において F(x) = 3 \sqrt[3]{x},f(x) = \tfrac{1}\sqrt[3]{x^2} とすれば,x=0 を除いて F'(x) = f(x).ここでは
\int_{-1}^1 f(x)\,dx=\int_{-1}^1\frac{dx}\sqrt[3]{x^2}=F(1)-F(-1)=6.
[附記] 
連続函数の積分を和の極限値として基本的考察を試みたのは Cauchy(1823)であろう[* 4].連続性を仮定しないで,積分可能の条件を確定したのは Riemann(1854)である[* 5].故に本章で述べた意味においての積分を今は Riemann 積分といっている.

広義積分を定義するに際して,我々は,いわゆる特異点が有限区間内に無数に或る場合を放棄した.Riemann の立場において,この場合を取り上げるのは労多く功少いであろうから,それは Lebesgue 積分論に委譲するのが適当であろう. もしも初めから不連続点が無数にある場合を放棄することに決心するならば,積分の理論は簡明である.その立場において,まず考察を連続函数に限定するならばすでに 92 頁[挿記]に述べたように,原始函数の存在が証明されて,同時に S=s が得られる.よってまず S(a,b) をもって積分の定義とするならば,S に関して平均値の定理[* 6]が成り立つから,区間 (a,b) の任意の分割 \Delta に関して

S(a,b)=\sum_{i=1}^n S(x_{i-1},x_i)=\sum_{i=1}^n f(\xi_i^0)(x_i - x_{i-1}),

ただし \xi_i^0[x_{i-1},x_i] において適当に選ばれた値である. よって任意の \xi_i に関する和

\mathit\Sigma_{\Delta}=\sum_{i = 1}^n f(\xi_i) (x_i - x_{i-1})

と比較するならば,


  S(a,b) - \mathit\Sigma_{\Delta}
  =\sum_{i=1}^n (f(\xi_i^0) - f(\xi_i)) (x_i - x_{i-1}).

従って連続の一様性から

\lim_{\delta\to 0} \mathit\Sigma_{\Delta}=S(a,b)

が得られて,和の極限として積分の意味が確定する. さて不連続点がある場合に,積分の意味を拡張するには,本節で広義積分を定義したのと全く同様の方法によるべきである.すなわち,例えば [a,b] の上端 b
のみが不連続点ならば


  \int_a^b f(x)\,dx=\lim_{\varepsilon\to 0} \int_a^{b-\varepsilon} f(x)\,dx

と置くのであるが,f(x) が有界ならば,この \lim必らず存在する.それは Cauchy の判定法平均値の第一定理によって明白である. もしも f(x) が有限個数の不連続点を有して積分可能であり,そうして有限個の点を除いて F'(x) = f(x) で,かつ F(x) が連続ならば,(9) のように,

\int_a^b f(x)\,dx=F(b) - F(a)

だから,その意味において微分法と積分法の相互的の逆関係が成立する.

§30 に述べた一般の Riemann 積分法からの,これより以上の収穫は,f(x) が有界ならば,無数の不連続点があっても積分可能でありうるということの認識であるが,Riemann 積分法は積分論を終結させるものではない.20世紀に入って,Lebesgue 積分論が出現してからは,Riemann 積分は中間的の存在になってしまった.ここでは,しばらく伝統に従って,Riemann 積分論を比較的に重く取扱ったのである.

以上積分の理論をのべたが,以下 §§34-38 において積分の計算法を説明する.


  1. 広義積分=intégrale généralisée,または変格積分=improper integraluneigentliches Integral ともいう.
  2. f(x)x=a の近傍で有界でないというのは,a にどれほど近いところでも |f(x)| がどれほどでも大なる値を取ることを意味する.すなわち \textstyle\varlimsup_{x\to a} |f(x)| =\infty である.それには必ずしも \textstyle\lim_{x\to a} f(x) =\infty なることを要しないから,‘x=a において f(x) が無限大になる’と略言するのは,いささか明確を欠くであろう.例えば x=0 における f(x) = 1/\sin\tfrac{1}{x}
  3. ここの計算で,部分積分および変数の変換を用いる(§34§35参照).
  4. Resumé Des leçons sur le calcul infinitésimal.
  5. 論文集,239頁
  6. S(a,x) が原始函数であるから,\tfrac{d}{dx} S(a,x)  = f(x).従って S(a,x) = S(a,x) - S(a,a) = (x - a)f(\xi).ただし,a < \xi < x.これは微分法の平均値の定理そのものである.
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