解析概論/第3章/有界変動の函数

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[編集] 39. 有界変動の函数

曲線の長さについて述べる前に,その準備として,好機会に,標記の函数を紹介する.

区間 [a,b] において函数 f(x) が与えられたとき,この区間を
(\Delta)\qquad a=x_1<x_2<\cdots<x_n<x_{n+1}=b
なる点 x_i において小区間に分割して,
(1)
v_\Delta=\sum_{i=1}^n|f(x_{i+1})-f(x_i)|
なる和を作る.もしもすべての分割 \Delta に関して v_\Delta が有界ならば,その上限を V として,それを [a,b] における f(x) の総変動量(変動の純量)といい,f(x)[a,b] において有界変動の函数と名づける.
この場合,f(x)[a,b] において有界である.実際 x を区間内の任意の点とすれば,|f(x)-f(a)|+|f(b)-f(x)|\leqq V から |f(x)-f(a)|\leqq V

(1) における f(x_{i+1})-f(x_i) の中で,正なるものと,負なるものとの総和をそれぞれ p_\Delta,-n_\Delta で表すならば,

v_\Delta=p_\Delta+n_\Delta,\quad f(b)-f(a)=p_\Delta-n_\Delta.

故に有界変動の場合,p_\Deltan_\Delta も有界である.それらの上限を P,N とすれば

V=P+N,\quad f(b)-f(a)=P-N.

また [a,b] 内の一点 x を取れば,区間 [a,x] において f(x) はもちろん有界変動で,[a,x] に対応する V,P,Nx の函数である.それらを V(x),P(x),N(x) と書けば

(2)
V(x)=P(x)+N(x),\quad f(x)-f(a)=P(x)-N(x).

P(x),N(x),V(x) をそれぞれ [a,b] における f(x)正の変動負の変動全変動という.

P(x),N(x) は単調増大(不減少)であるから,(2) から次の定理を得る.

定理 38.
有界変動の函数は二つの有界なる増大函数の差に等しい.

f(x)=f(a)+P(x)-N(x) において,P(x),N(x) は特定の単調函数であるが,一般に,\varphi(x),\psi(x) が有界なる増大函数ならば,その差 f(x)=\varphi(x)-\psi(x) は有界変動で,f に関する全変動は \varphi,\psi に関する全変動の和を越えない: V(x)\leqq(\varphi(x)-\varphi(a))+(\psi(x)-\psi(a))

\varphi(x),\psi(x) の和も積も有界変動である.商 \varphi(x)/\psi(x)[a,b] において |\psi(x)|>m>0 ならば,有界変動である.――和に関しては明白.積に関しては,
\begin{align}
  |\varphi(x_1)\psi(x_1)-\varphi(x_2)\psi(x_2)|
 &= |\psi(x_1)(\varphi(x_1)-\varphi(x_2))+\varphi(x_2)(\psi(x_1)-\psi(x_2))| \\
 &\leqq M(|\varphi(x_1)-\varphi(x_2)|+|\psi(x_1)-\psi(x_2)|),
\end{align}
(|\varphi(x)|<M,|\psi(x)|<M) から出る.商に関しても同様である.

従って,有界変動の函数の和,差,積はまた有界変動である.

有界変動の函数 f(x) の全変動 V(x) は区間に関して加法的である.――というのは,区間 [a,b]c において [a,c][c,b] とに分割するとき,区間を明示して全変動を書き表せば,

(3)
V(a,b)=V(a,c)+V(c,b).

これは明白である.よって (2) から,P,N に関しても同様に

P(a,b)=P(a,c)+P(c,b),\quad N(a,b)=N(a,c)+N(c,b).

故に,もしも区間の左端を c として P,N を作るならば,

(4)
\left.\begin{align}
  P(c,x)&=P(a,x)+P(a,c), \\ N(c,x)&=N(a,x)-N(a,c).
\end{align}\right\}

区間 [a,b] において f(x) が連続でかつ有界変動ならば,P(x),N(x),従って V(x) も連続である.――今例えば,かりに区間内の一点 x_0 において P(x) が右へ連続でないとしてみる.然らば(4)によって x_0=a としてよいから,P(a)=0,P(a+0)=\omega>0f(x) は連続だから,N(a+0)=\omega.よって x\ne a のとき P_1(x)=P(x)-\omega,N_1(x)=N(x)-\omega,P_1(a)=N_1(a)=0 と置けば,f(x)=P_1(x)-N_1(x)+f(a).従って V(x)\leqq P_1(x)+N_1(x).一方 V(x)=P(x)+N(x)=P_1(x)+N_1(x)+2\omega だから,これは矛盾である.

 [a,b] において f(x) が区分的に単調ならば,有界変動である.しかし,連続函数は必ずしも有界変動でない.例えば f(x)=x\,\sin\tfrac{1}{x} の区間 [0,\tfrac{1}{\pi}] における全変動は \textstyle
  \frac{4}{\pi}(\frac{1}{3}+\frac{1}{5}+\frac{1}{7}+\cdots)
より大で,従って有界変動でない.同時にまた有界変動の函数はもちろん必ずしも連続でない.(例えば連続でない単調函数.)

区間 [a,b] において,f(x) が積分可能ならば,積分函数

F(x)=\int_a^xf(x)\,dx

は連続であるが(定理 34),それはまた有界変動である[* 1].それをみるには,例のように

f(x)=f^+(x)-f^-(x),\quad
  f^+(x)=\mathrm{Max}(f(x),0)\geqq 0,\quad f^-(x)=-\mathrm{Min}(f(x),0)\geqq 0

とすればよい.そのとき

F(x)=\int_a^x f^+(x)\,dx-\int_a^x f^-(x)\,dx

で,右辺の二つの積分は単調増加で有界であるから,f(x) は有界変動である.

もしも f(x)[a,b] において微分可能で,かつ f'(x) が連続ならば(それを標語的に連続的微分可能というが,むしろ滑らかglatt)というのが印象的であろう),\textstyle f(x)=\int_a^xf'(x)\,dx+f(a) だから,f(x) は有界変動である.

[注意] 
これまで種々の属性によって函数を限定したが,それらの属性に精粗の段階がある.もっとも粗雑な属性は有界性で,有界なる函数の一部分のみが積分可能であり,積分可能なる函数の中には,連続函数があり,また有界変動の函数がある.連続でかつ有界変動なる函数は,かなり簡単らしいが,それでも必ずしも微分可能でない.微分可能でも,導函数は必ずしも連続でない.連続的微分可能,すなわちいわゆる滑らかな函数でも,第二階以上の微分可能性は保証されていない.各階の微分が可能でも,Taylor 級数には展開されないこともある.Taylor 級数に展開されるのは,解析函数で,それこそは相当簡単,従って応用上手頃なものであるが,不幸にして,それは複素数の世界において発生したものである(第 5 章).
[附記] 
Stieltjes 積分は有界変動の函数 \varphi(x) を用いて作られる一種の積分である.まず \varphi(x) を単調増大とし,被微分函数 f(x)[a,b] において有界とする.§30 のように,区間 [a,b] を小区間 \omega_i=[x_{i-1},x_i] に分割して,\omega_i における f(x) の上限 M_i,下限 m_i をもって,和

  S_\Delta=\sum_{i=1}^n M_i\,\delta_i\varphi,\quad
  s_\Delta=\sum_{i=1}^n m_i\,\delta_i\varphi
を作る.ただし,ここでは \delta_i\varphi=\varphi(x_i)-\varphi(x_{i-1}) である.さて \delta=\mathrm{Max}(x_i-x_{i-1}) を限りなく小さくするとき,小区間 \omega_i から任意の値 \xi_i を取って作られる和
\mathit\Sigma_\Delta=\sum f(\xi_i)\,\delta_i\varphi
が一定の極限値に収束するならば,その極限値を
\int_a^b f(x)\,d\varphi(x)
と書く[* 2].これがいわゆる Stieltjes 積分である.
S_\Delta の下限を Ss_\Delta の上限を s とするならば,この場合 Darboux の定理(§30)は任意の有界なる f(x) に関して必ずしも成り立たない(同所 (8) の不等式が成り立たないから).しかし,もしも f(x) が連続ならば,Stieltjes 積分は可能である.実際,
(5)

  s_\Delta\leqq s\leqq S\leqq S_\Delta,\quad
  s_\Delta\leqq\mathit\Sigma_\Delta\leqq S_\Delta
であるが,f(x) の一様連続性(定理 14)によって,任意の \epsilon>0 に対して十分小さく \delta を取れば M_i-m_i<\varepsilon,従って \textstyle
  S_\Delta-s_\Delta
  < \varepsilon\sum\delta_i\varphi
  = \varepsilon(\varphi(b)-\varphi(a))
.故に (5) の第一式から S=s .また,(5) の第二式から 
  |S-\mathit\Sigma_\Delta|\leqq\varepsilon(\varphi(b)-\varphi(a))
.故に \delta\to0 のとき \mathit\Sigma_\Delta\to S

一般の有界変動の函数 \varphi(x) に関しては,それを二つの有界なる単調(増大)函数の差として,\varphi(x)=\varphi_1(x)-\varphi_2(x) と置けば


  \int_a^bf(x)\,d\varphi(x)=\int_a^bf(x)\,d\varphi_1(x)-\int_a^bf(x)\,d\varphi_2(x)
を得る.

  1. 逆は真ではないが,ともかくも,任意の連続函数は積分函数でありえない(第 9 章
  2. ここで d\varphi(x) は単なる符牒で,もちろん \varphi(x) の微分を示すのではない.しかし,もしも \varphi(x) が微分可能で \varphi'(x) が連続ならば,Stieltjes 積分は Riemann 積分 \textstyle\int_a^b f(x)\varphi'(x)\,dx に帰する.
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