解析概論/第3章/微分法以後の求積法

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[編集] 29.微分法以後の求積法

上記の求積法は実に巧妙で,古代にあっては Archimedes をまって初めてできたのであろう.しかしながら,その方法は放物線にのみ適用されうるものである.然るに18世紀には,このような求積問題は,次のような一般的の方法によって何人にも容易に解かれたであろう.

前のとおり,放物線の方程式を

y^2=cx.

として,面積 SOM=x の函数 S(x) として考察する.然らば例の記号を用いて

\triangle S= 面積 (ABB'A').

この面積は AB,A'B' の間に挟まれて,それらを底とする二つの平行四辺形の面積なる AB\cdot\Delta x\cdot\sin\omegaA'B'\cdot\Delta x\cdot\sin\omega との中間にある.すなわち (AM=y)


  2y\sin\omega\cdot\Delta x<\Delta S< 2(y+\Delta y)\sin\omega\cdot\Delta x,

  2y\sin\omega\cdot\Delta x<\frac{\Delta S}{\Delta x}<2y\sin\omega+2\sin\omega\cdot\Delta y.

ここまでは \Delta x > 0 としたが,\Delta x < 0 でも同様で,ただ不等号の向きが変わるだけである.さて \Delta x\to 0 のとき \Delta y\to 0.故に


  \frac{dS}{dx}=2y\sin\omega=2\sin\omega\cdot\sqrt{cx}.

然るに

\frac{dx^{\frac{3}{2}}}{dx}=\frac{3}{2}\sqrt{x}.

故に

F(x)=\frac{4}{3}\sqrt{c}\cdot \sin \omega \cdot x^\frac{3}{2}

と置くならば,

\frac{dF}{dx}=\frac{dS}{dx}, すなわち \frac{d(F-S)}{dx}=0.

故に F-S は定数であるが(定理22),x=0 のとき F(0)=0,S=0 だから,この定数は 0 で,S=F.すなわち

S(x)=\frac{4}{3}\sqrt{c}\cdot \sin \omega x^\frac{3}{2}

で,それが求める面積である.それは Archimedes の計算と一致する.実際,

\begin{align} S(x)
 &=\frac{4}{3}\cdot\sqrt{cx}\cdot x\sin\omega
  =\frac{4}{3}yx\sin\omega=\frac{4}{3}AM\cdot OM\cdot\sin\omega\\
 &=\frac{4}{3}\cdot \frac{1}{2}AB\cdot OM \cdot \sin \omega
  =\frac{4}{3}\triangle OAB. 
\end{align}
KaisekiGairon-3-29-fig2.png

このような方法ならば,放物線に限らないで,次の図に示すような曲線 y=f(x)x 軸との中間において二つの縦線の間に挟まれる面積 S が上記と同様にして求められる.すなわち f(x) が連続函数ならば,\Delta x\to 0 のとき,\Delta y\to 0 だから,前のように

\frac{dS}{dx}=f(x).

故に今 F(x)

F'(x)=f(x)

なる函数とするならば,

\frac{d(S-F)}{dx}=0.

従って

S(x)-F(x)=C.Cは定数)

さて x=a のとき S(a)=0 だから,C=-F(a).故に

(1)
S(x)=F(x)-F(a).

初等函数の範囲から F(x) を取れば,F'(x) も初等函数である.それを f(x) とすれば,曲線 y=f(x) に関する面積 S(1) によって求められる.そのような F(x) は無数にあるから,無数の求積問題が解けてしまう.

これが微分法の発見がもたらした大脅威であった.

f(x) が与えられたとき,それを導函数とする函数 F(x),すなわち F'(x)=f(x) なる F(x)f(x)原始函数といい,また後に説明するような意味で,積分記号を用いて,それを

F(x)=\int f(x)dx

と書く.次の頁に応用上重要な原始函数を掲げる.

\begin{array}{cllc|clc}\hline
 & & & & & &\\[-8pt]
\ & & \!\!\!\!\!\!\!\!\!\!\!f(x)=F'(x)&\ &\ & \qquad\qquad\qquad F(x)&\ \\[5pt]\hline
 & & & & & &\\[-6pt]
 &x^\alpha       &(\alpha\ne-1)&&&\dfrac{x^{\alpha+1}}{\alpha+1}\\[9pt]
 &\dfrac{1}{x}     &(x\ne 0)   &&&\log|x| \\[9pt]
 &\dfrac{1}{1+x^2} &           &&&\mathrm{Arc\,tan}\,x \\[9pt]
 &\dfrac{1}{1-x^2} &(x\ne\pm1) &&&\dfrac12\,\log\Big|\dfrac{1+x}{1-x}\Big|\\[9pt]
 &\dfrac{1}{x^2-1} &(x\ne\pm1) &&&\dfrac12\,\log\Big|\dfrac{x-1}{x+1}\Big|\\[9pt]
 &\dfrac{1}{\sqrt{1-x^2}}&(|x|<1)&&&\mathrm{Arc\,sin}\,x\\[9pt]
 &\dfrac{1}{\sqrt{x^2-1}}&(|x|>1)&&&\log|x+\sqrt{x^2-1} \\[9pt]
 &\dfrac{1}{\sqrt{x^2+1}}&    &&&\log(x+\sqrt{x^2+1})\\[9pt]
 &\sqrt{1-x^2} &(|x|\leqq 1)&&&\dfrac12(x\sqrt{1-x^2}+\mathrm{Arc\,sin}\,x)\\[9pt]
 &\sqrt{x^2-1} &(|x|\geqq 1)&&&\dfrac12(x\sqrt{x^2-1}-\log|x+\sqrt{x^2-1}\,|)\\[9pt]
 &\sqrt{x^2+1} &            &&&\dfrac12(x\sqrt{x^2+1}+\log(x+\sqrt{x^2+1}\,))\\[9pt]
 &e^x                 & &&& e^x\\[5pt]
 &a^x     &(a>0,a\ne 1) &&&\dfrac{a^x}{\log a}\\[9pt]
 &\sin x              & &&&-\cos x\\[5pt]
 &\cos x              & &&& \sin x\\[5pt]
 &\dfrac{1}{\sin^2 x} & &&&-\cot x\\[9pt]
 &\dfrac{1}{\cos^2 x} & &&& \tan x\\[9pt]
 &\tan x              & &&&-\log|\cos x|\\[5pt]
 &\cot x              & &&& \log|\sin x|\\[5pt]\hline
\end{array}

原始函数が初等函数として得られる場合,それはこれらの公式を反復応用して求めうるのである.しかし,そのような手段では


  \int\frac{dx}{\sqrt{1-x^4}},\qquad \int\frac{dx}{\sqrt{\cos x}}

のように一見簡単な函数の原始函数が容易に求められない.然らば連続函数の原始函数は必らず存在するであろうか?

さきには面積を使って,むぞうさに原始函数を出してしまったが,原始函数の存在が問題になるならば,面積の可能性も同様でなければならない.我々は無頓着に面積,体積などといっているが,そもそも面積,体積とは何を意味するか? このような問題が縁起になって,19世紀以後に,かなり安全なる解析学の建立が成就したのである.

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