解析概論/第3章/定積分の性質

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[編集] 31.定積分の性質

定積分の性質の中で,この後たえず引用されるものを次に掲げる.

(1º)
f(x) が微分可能な区間内で
\int_a^b f(x)dx=\int_a^c f(x)dx+\int_c^b f(x)dx.\qquad(a< c< b)
約言すれば,積分は区間に関して加法性を有するadditive).
区間 [a,b] の分割 \Delta において c を一つの分点ときめて,極限へ行ってもよいから.

運用の便宜上,一般に

(1)
\int_b^a f(x)dx=-\int _a^b f(x)dx,\quad\int_a^a f(x)dx =0

と規約する.然らば上記公式は a,b,c の大小の順序にかかわらず常に成立する.

例えば a< b< c ならば \textstyle
  \int_a^c f(x)dx = \int_a^b + \int_b^c
,従って\textstyle
  \int_a^c - \int_b^c = \int_a^c + \int_c^b = \int_a^b
(2º)
f(x),g(x) が区間 [a,b] において積分可能ならば,f(x)\pm g(x) も同様で
\int_a^b (f(x)\pm g(x))dx=\int_a^b f(x)dx\pm\int_a^b g(x)dx.
これは

  \lim \sum (f(\xi_i) \pm g(\xi_i) (x_i - x_{i-1})
 =\lim \sum f(\xi_i) (x_i - x_{i-1})\pm\lim \sum g(\xi_i) (x_i - x_{i-1})
にほかならない.
(3º)
C が定数ならば,

  \int_a^b Cf(x)dx=C \int_a^b f(x)dx,\qquad
  \int_a^b C(dx)=C \int_a^b dx=C(b - a).
(4º)
[a,b] において f(x),g(x) が積分可能で f(x)\geqq 0 ならば,\textstyle\int_a^b f(x)\,dx\geqq 0
f(x) \geqq g(x) ならば, \int_a^b f(x)\,dx\geqq \int_a^b g(x)dx.
初めの方は明白であろう.次のは (2º) を用いて
\int_a^b (f(x) - g(x))dx \geq 0
から出る.

いっそう精密に,上記の条件に適合する函数 f(x) が,区間 [a,b] の一点 x_0 において連続で f(x_0) ならば,\textstyle\int_a^b f(x)dx > 0――-f(x_0)=k とすれば,k=0 だから,x_0 を含む或る小区間 [c,d],\,a \geq c < d \geqq b, において f(x) >\tfrac{k}{2} である.そのとき上記によって \textstyle\int_a^b \geqq 0,\int_c^a \geqq (d-c)\frac{k}{2} >0, \int_a^b \geqq 0 だから,(1º) を用いて \textstyle\int_a^b > 0 を得る.

故にまた,(4º) において,\geqq をすべて  > に置き換えても,(4º) は成立する.

(5º)
f(x)[a,b] で積分可能ならば,|f(x)| も同様で,
\left|\int_a^b f(x)\,dx \right| \leq \int_a^b |f(x)|\,dx.
f(x)が正なるところでも,負なるところでも,0なるところでも
|f(x)|\geqq f(x),\quad |f(x)|\geqq -f(x),
従って \textstyle\int_a^b |f(x)|\,dx \geqq \int_a^b f(x)\,dx また \textstyle\int_a^b |f(x)|\,dx \geqq -\int_a^b f(x)\,dx.故に上記の通り.
|f(x)| の積分可能性は f(x) が連続ならば論はないが,一般の場合には
||f(x)| - |f(x')||\leqq |f(x) - f(x')|
から出る.すなわち f(x) の振動量を前の通り v で表わし,|f(x)| の振動量を v' で表すならば,各小区間において v_i' \leqq v_i.故に \textstyle\sum v_i\delta_i \to 0.すなわち f(x) が積分可能ならば |f(x)| も同様である.

逆に |f(x)| が積分可能ならば f(x) も同様とは,連続性を仮定しなくてはいいきれない.手近な一例を挙げるならば: x が有理数ならば f(x)=+1x が無理数ならば f(x)=-1 とするとき \textstyle\int_0^1 |f(x)|\,dx = 1 だが \textstyle\int_0^1 f(x)\,dx は不可能(このように |f(x)| は連続でも,f(x) は連続とは限らない.)

与えられた函数 f(x) から,次のようにして二つの正なる(負ではない)函数 f^+(x),f^-(x) が作られる.すなわち,f(x)>0 なる x に対しては,f^+(x)=|f(x)| で,その他の x に対しては f^+(x)=0 とする.また f(x)<0 なる x に対しては,f^-(x)=|f(x)| で,その他の x に対しては f^-(x)=0 とする.然らば

f(x) = f^+(x) - f^-(x),\quad |f(x)| = f^+(x) + f^-(x),

従って

f^+(x)=\frac{1}{2}(|f(x)|+f(x)),\quad f^-(x)=\frac{1}{2}(|f(x)|-f(x)).

故に,[a,b] において,f(x) が積分可能,従って |f(x)| が積分可能ならば,(2º) によって f^+(x)f^-(x) も積分可能である.

(6º)
f(x),g(x) が積分可能なる区間において,積 f(x)g(x) も積分可能である.
不連続点が有限個ならば,これは当然であるが,一般の場合には 
  |f(x)g(x)-f(x')g(x')|=|(f(x)-f(x'))g(x)+(g(x)-g(x'))f(x')| \leqq (v+v')C
から出る.ただし v,v'[x,x'] における f(x),g(x) の振動量で C|f(x)||g(x)| の共通の上界である.

同様に,もしも区間内で |g(x)| >k >0 ならば,商 f(x)/g(x) も積分可能である.

(7º)
M,m前節の通りとすれば,(4º) によって (a< b)
(2)
m(b-a)=\int_a^b m\,dx\leqq\int_a^b f(x)\,dx\leqq\int_a^b M\,dx=M(b-a).
故に積分の値を区間の幅 b-a に関して平均して
\frac{1}{b-a} \int_a^b f(x)\,dx = \mu
と置けば
m\leqq\mu\leqq M.
すなわち積分の平均値はf(x)の上限と下限の間にある.特にf(x)が連続ならば,中間値の定理によって,区間内に f(\xi) = \mu になる \xi があるから
\int_a^b f(x)\,dx=f(\xi)(b-a).\qquad(a<\xi< b)
f(x) が連続なる場合[* 1],もしも [a,b] において f(x) が定数でないならば (4º) の後段により,不等式 (2) は等号なしで成立する.従って m<\mu<M で,[a,b] に属する二つの点において f(x) はそれぞれ m,M になり,その中間の点 \xi において f(\xi)=\mu になるから,\xi[a,b] の内点としてよい,すなわち a<\xi<bf(x) が定数ならば,\xi[a,b] の任意の点でよいから,a<\xi<b としても,さしつかえない.

f(x) が連続でないならば,上記 m\leqq\mu\leqq M において両所ともに記号(=)をはぶくことは許されない.(例えば f(x) が区間内の一点だけで正または負の値を取って,その他は 0 なるとき.)

上記の定理を平均値の第一定理という.応用上はそれを次のように拡張して使うことが多い.

定理 33.
区間 [a,b] において f(x) は連続,\varphi(x) は積分可能で,一定の符号を有するならば,a<\xi<b なる或る点 \xi において
\int_{a}^{b}f(x)\varphi(x)\,dx=f(\xi)\int_{a}^{b}\varphi(x)\,dx.
[証]
\varphi(x)\geqq 0 とする.(\varphi(x) \leqq 0 なら,-\varphi\varphi に代用すればよい.)然らば
(3)
m\varphi(x)\leqq f(x)\varphi(x)\leqq M\varphi(x)
であるが,\varphi(x)が連続なる点 x_1,x_2 があって,x_1 において (3) の前段,x_2 においてその後段の不等式が,等号なしで,それぞれ成立する場合には,(4º) から
m\int_{a}^{b}\varphi(x)\,dx<\int_{a}^{b}f(x)\varphi(x)\,dx<M\int_{a}^{b}\varphi(x)\,dx.
然らば \textstyle\int_{a}^{b}\varphi(x)\,dx>0 だから
\int_{a}^{b}f(x)\varphi(x)\,dx = \mu\int_{a}^{b}\varphi(x)\,dx
と置けば,m<\mu<M,従って f(\xi)=\mu なる \xia,b の中間にあって,上記定理の等式が成り立つ.

もしも,(3) の前段の不等式に関し,上記のような点 x_1 がないならば,\varphi(x) が連続な点 x においては m\varphi(x)=f(x)\varphi(x)\varphi(x) が連続なる点は区間内に稠密に分布しているから

(4)
m\int_a^b\varphi(x)\,dx=\int_a^b f(x)\varphi(x)\,dx
である(96/97 頁[注意]参照).よって m=f(x) なる \xi が区間 [a,b] の内部にある場合には,定理の等式が成り立つ.そのような \xi がない場合には,\varphi(x) が連続な,区間内の点で \varphi(x)=0.従って (4) の両辺の積分は 0 に等しいから,区間内の任意の点を \xi として,定理の等式が成り立つ.

(3) の後段の不等式に関し,上記のような点 x_2 がないときも,同様である.

(証終)

  1. この場合は微分法の平均値の定理に帰する(定理 35参照).
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