解析概論/第3章/定積分
[編集] 30.定積分
前節に述べた問題を解くことは積分法の任務である.我々は考察の範囲を連続函数以内に止めたいのだけれども,それでは応用上にさしつかえが生ずる.例えば若干の不連続点がある場合を除外することはできない.よって,さしあたり,考察の範囲を少しく拡大して,函数の有界性のみを仮定する.
において
は有界とする. この区間を
において
個の細空間に分割する.


において,左から第
番の細区間の幅を
などと略記する.
など本節で用いる細区間はすべて閉区間とする.
における
の最大値を
とする.
における
の値の上限,下限を
とする.
における
の上限,下限は添字なしに
で表わす.従って

の上記分割
に関して,次のような和を考察する:

から



に関して
も
も有界であるが,我々が興味を持つのは
の下限と
の上限とである.
の下限を
,また
の上限を
と書く.
の分割
における各細区間をさらに細分して分割
を作るならば,

における一つの細区間
の内部に,一つの分点を追加して,
を
に再分すれば,
における一項
が
で置き換えられるが,
だから

は分点追加のために増大(不減少)する.分点をいくつ追加しても同様だから,上記の通り
.
に関しても同様であるが,ただ
だから,不等式の向きが反対になって,
.
さて
を任意の二つの分割法として,
に対応する
と
に対応する
と比較しよう.
および
における分点を合併して生ずる分割を
とすれば,(1) によって


に関して

と右辺の下限
との間の大小関係は

に関していえば,
は実線で囲まれた多角形の面積で,
は点線より下にある面積である. この図において
のグラフの下の面積
というようなものが確定であるならば
で,区間を細分して各細区間の幅を限りなく小さくするに従って,
は上から,
は下から,限りなく
に近づくであろう.従って
.しかし我々の立場においては,面積
の意味はまだ確定していない.
または
の極限として,面積
の意味を確定することを試みるのが,我々に課せられた問題である.
の部分区間
に関する和
の下限を一般に
と書くならば(
として)

の分割
の分点による
の分割を
とすれば,それらに対する和
に関し

を取れば,下限の意味から
になる
がある.そのとき
,だから,(2) から

は任意だから

なる
を合併した
に対して,
.然るに
だから

は任意だから

とすれば

における
の上限,下限を
とすれば

が連続ならば,中間値の定理によって



としても同様である.
そこで,
とすれば,
で,
は
の原始函数である.すなわち連続函数の原始函数が存在することは,これですでに証明されたのである.
の代りに
を取っても,同様に
は
の原始函数である.従って
は定数であるが,
のとき
だから
.すなわち
が連続ならば
.
の極限として考察することが,実際計算上重要である.
を細分して
,それを細分して
,等々とするならば,それらの分割に対応する
は上記のように単調増大で,
がその一つの上界だから,極限値が存在する.もしも,その際,細区間の最大幅
が限りなく小さくなるとするとき,その極限値が(それは
を超えないことは明白だが)
に等しいであろうか.同様に
は単調に減少するが,その極限値は
に等しいであろうか.このような問題が生ずる.区間の分割法は無数にあるが,それにもかかわらず,幸にして次のような簡単な定理が成り立つ.
における細区間の最大幅を
とすれば
のとき 
今
に関して証明をする.
に関しても証明は同様である.
を取る.
の定義によって

がある.そのような一つの分割法
を固定して,それを証明のテコにする.分割
における分点の数を
とする.
を任意の分割法とし,
と
とにおける分点を合併して生ずる分割を
とする.よって

分割
において
がすでに十分小で,
における各細区間が,
に属する分点を一つよりも多くは含まないと仮定する.(
を分割
における細区間の最小幅よりも小さくとればよい.)
における一つの細区間
が
に属する一つの分点をその内部に含むならば,
は
においては左右二つの区間に細分される.それらを
とすれば,前にも述べたように,
における一項
が
においては
で置き換えられるから,その差は

に属する分点を含まない小区間
においては,上記の差はもちろん
である.
さて
における分点の数を
としたのであったから

も
も定数だから,
を十分小さくすれば



に対応して,
を十分小にするとき

のとき,
.同様に
を得るから
.
の有界性のみを仮定したが,我々が興味を持つのは
なる場合である.その場合には,分割
に関して各細区間
において任意の点
を取って,和

.然るに,任意の
に対応して分割
の細区間の幅の最大値
を十分小さく取れば,上記定理の証明のように,
だから,
なる条件の下で,
と置けば

のとき分割
と
の選択に無関係に
の極限が存在して,それが
である:

を区間
における
の定積分といい,それを次の記号で表す:

は Leibniz が用いた.和の略記
の変形であろう.
の下の
と
とは
と
とを代表的に表記するのである.函数
と区間
とが与えられてある以上,
はもちろん定数だから,(10) の右辺に
なる文字があっても,
が
の函数ではない.
の
のところへどんな文字を書いても意味は同一で,その値は一定の数
である.上記によれば,
は
が積分可能なるための十分条件である.それはまた必要条件でもある.すなわち
は積分可能の判定律である.
が連続ならば,各細区間において
なる
があり,また
なる
もあるから,それは明白である.
の有界性だけを仮定するなら,任意に
を取るとき
なる
が区間
にあるからそれに対応する
に関し

が存在するならば,

は任意だから
.同様に
,従って
.
における細区間
に関する
の振動量すなわち
を
と書くならば,
だから,条件
を

のとき
だから,これは明白である.
実際は任意の
に対して
なる一つの分割法
があればよい.
の存在はすでに証明されているから,そのとき
が得られる.
において
が積分可能ならば,それに含まれる区間
においても,
は積分可能であることは見やすい.実際,区間
に関する
から,それを越えない
が区間
に関して得られるから.我々の目標とする連続函数に関しては
であったから次の定理はすでに証明ずみである.
なお一般に
が
において有限個数の不連続点を持つときにも,
が有界ならば,積分可能である.なぜなら: 今,不連続点の数を
とすれば,分割
においてそれらの不連続点を含む細区間からの
への寄与は,
よりも小だから,
と共にどれほどでも小さくなる.その他の細区間からの
への寄与はもちろん全体において
と共にどれほどでも小さくなるから,
のとき
.また不連続点が無数にあっても,それらを任意に小なる総幅を有する有限個の細区間の中へ入れてしまうことができるならば,同様である.
が区間
において単調(従って有界)ならば,積分可能である.
.故に



のとき 
において有界で単調に増大するが,不連続点
は無数にあって,しかも区間内に稠密に分布されている(25 頁).すなわち任意の小区間内に不連続点が(無数に)ある.それでも積分可能!
において
を§8,[例 6]の函数とする.すなわち
が有理数ならば
で,
が無理数ならば,
.この場合には,各細区間において
.
.従って
.故に
は積分可能でない.
区間
において
の不連続点が稠密に存在したとしても,
は積分可能でありうることを上記の例で示したが,反対に
が
において積分可能ならば,区間内に連続点は必らず存在する.然らば
の代りに,その内の任意の小区間を取っても同様だから連続点は区間内に稠密に分布されている.――実際,積分可能の条件から,任意の
に対応して
なる分割
があるが,
において
の最小のものを
とすれば
.従って
.故に任意の
に対応して
とすれば,
内の或る小区間
において
.
の両端を切捨てて区間
にこの方法を適用すれば,
は全く
の内部にある.今
として,同様の操作を繰り返えせば
なる区間を得て,
における
の振動量は
でかつすべての
に共通の内点がある.それを
とすれば,
において
は連続である.なぜなら:
に対応して
とすれば,
なるとき
.
で
が積分可能で,
内に稠密に分布する集合
の各点
において
ならば,
である.実際,この仮定の下において,(9) の
はすべて
に属する点としてよい.特に
が
で積分可能で,
の連続点において常に
ならば
.