解析概論/第2章/逆函数の微分法

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[編集] 16.逆函数の微分法

区間 a\leqq x\leqq b において連続なる函数 y=f(x) が与えられているとする.この区間における y の最小および最大の値を p, q とすれば(定理 13),y は区間 p\leqq y\leqq q における任意の値を取る(定理 12).しかし y=f(x) が単調(狭義)である場合においてのみ,y の一つの値に対応する x の値が一意に確定する.

f(x)が単調でない
もしも f(x) が単調でないとするならば,x_1< x_2< x_3 に対応して y_1< y_2< y_3 または y_1> y_2> y_3 にならないことがある.もしも例えば y_1< y_2, y_2> y_3 ならば,y_2>\eta>\mathop{\mathrm{Max}}(y_1, y_3) なる \eta に対応して,区間 (x_1, x_2) および (x_2, x_3) において \eta=f(x) なる x の値が少くとも一つずつある.

単調の場合には,区間 p\leqq x\leqq q における y の各〻の値に y=f(x) なるような x の一つの値が対応するから,xy の函数である.よって x=\varphi(y) として,\varphif逆函数という.そうすれば,f\varphi の逆函数で,f\varphi とは互に逆なる函数である.

定理 18.
或る区間において x の函数 y が連続で単調ならば,y の変動区間において xy の逆函数として確定される.逆函数も連続でかつ単調である.もしも yx の函数として微分可能ならば,xy の函数として微分可能で,
\frac{dy}{dx} \cdot \frac{dx}{dy} = 1.
接線がx軸となす角\theta, y軸となく角\varphi, 然るに dy/dx=\tan\theta, dx/dy=\tan\varphi.
\scriptstyle\frac{dy}{dx}=\tan\theta, \frac{dx}{dy}=\tan\varphi
[証]
逆函数が確定することはすでに述べた.そこで y=f(x),x=\varphi(y) と書いて,x=\xiy=\eta が対応するとする.\varphi(y) が単調であることは明白であろう.よって今 \{y_n\}\eta に収束する任意の単調数列とすれば,それに対応する \{x_n\} も単調でかつ有界だから,或る極限値 \lambda に収束する.然らば,f(x) の連続性から,f(\lambda)=\xi.故に \lambda=\varphi(\eta)=\xi.すなわち y_n\to \eta のとき x_n\to \xi,すなわち \varphi(y_n)\to\varphi(\eta).故に逆函数 \varphi(y) は連続である.
さて
\frac{\Delta x}{\Delta y}=1\bigg/\frac{\Delta y}{\Delta x}.
故に \Delta y\to 0,従って \Delta x\to 0 のとき 
  \lim\tfrac{\Delta x}{\Delta y}=1/\lim\tfrac{\Delta y}{\Delta x}
,すなわち \tfrac{dx}{dy}=1/\tfrac{dy}{dx},ただし \tfrac{dy}{dx}=0 になるところは除くべきである.そのところでは \tfrac{\Delta x}{\Delta y}\to\pm\infty.それを \tfrac{dx}{dy}=\pm\infty と書くのは格別である.
dy/dx=0なるところは除くべきである
逆三角函数を逆函数の例に取ってみよう.
(1º)
\arcsin x. y = \sin x は区間 -\tfrac\pi2\leqq x\leqq\tfrac\pi2 または一般に

  (2n-1)\frac\pi2\leqq x\leqq (2n+1)\frac\pi2,\quad(n=0,\pm1,\pm2,\ldots)
において単調で,区間 -1\leqq y\leqq 1 に属する値を取る.故に函数 y=\sin x の逆函数,すなわち x=\mathrm{arc\,sin}\,x が区間 -1\leqq y\leqq 1 において可能であるが,そのためには x を上記の区間の中の一つに限定しなければならない.

x に関して一つの区間を指定するとき,それを逆函数 \mathrm{arc\,sin}\,x の一つのという.これら \mathrm{arc\,sin} の無数の枝の中で [-\tfrac\pi2,\tfrac\pi2] に対応するものを,引用の便宜上主値といい,それを特記するために,大文字を用いて \mathrm{Arc\,sin}\,x と書くことにする.

x, y は変数の記号に過ぎないから,逆函数においても独立変数を x,従属変数を y と書くことにすれば

 y=\mathrm{Arc\,sin}\,x.\qquad(-1\leqq x\leqq 1)
それは

  x=\sin y,\qquad\left(-\frac\pi2\leqq y\leqq \frac\pi2\right)
を意味する.
y=sin x y=Arc sin x
\scriptstyle y=\sin x \scriptstyle y=\mathrm{Arc\,sin}\,x
さて y = \sin x から

  \frac{d\sin x}{dx}=\cos x,\quad
  \frac{d\,\mathrm{arc\,sin}\,x}{dx}=\frac{1}{\cos x}=\pm\frac{1}{\sqrt{1-y^2}}.
主値に関しては -\tfrac\pi2\leqq x\leqq\tfrac\pi2 だから \cos x\geqq 0 故に \pm{}+{} である.すなわち変数 x,y を取り換えて書けば

  D\,\mathrm{Arc\,sin}\,x=\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}.
(2º)
\arctan x. y = \tan x は区間 -\tfrac\pi2< x<\frac\pi2 において -\infty から +\infty まで単調に増大する.よって \tan の逆函数 \mathrm{arc\,tan} の主値が次のように定義される.すなわち独立変数を x と書いて,区間 -\infty< x<\infty において

  y=\mathrm{Arc\,tan}\,x,\qquad -\frac\pi2<y<\frac\pi2.
例えば
\begin{align}
  &\mathrm{Arc\,tan}\,0=0,\quad \mathrm{Arc\,tan}(\pm1)=\pm\frac\pi4,\\
  &\mathrm{Arc\,\tan}(\pm\infty)
   =\lim_{x\to\pm\infty}\mathrm{Arc\,tan}\,x=\pm\frac\pi2.
\end{align}
y = \tan x
y = Arc tan x
\scriptstyle y=\tan x \scriptstyle y=\mathrm{Arc\,tan}\,x
また y=\tan x,\tfrac{dy}{dx}=\tfrac{1}{\cos^2 x}=1+y^2 から,記号を変えて
D\,\mathrm{Arc\,tan}\,x=\frac{1}{1+x^2}.
[注意] 
上記と同様に \mathrm{arc\,cos},\,\mathop{\mathrm{arc\,cot}} 等に関しても主値を定義することは,もちろん,できるが,そのような規約に頼らないで,全てを \mathop{\mathrm{Arc\,sin}} または \mathop{\mathrm{Arc\,tan}} から導く方が紛れがなくて安全であろう. y = \mathrm{arc\,sin}\,x または y = \mathrm{arc\,tan}\,x において y の値を区間 [-\tfrac{\pi}{2}, +\tfrac{\pi}{2}] に限定して,それを主値と呼ぶことは便宜上の規約で,実質上の必要によるのではないから,もしもその規約に拘泥すれば,往々不自然なる結果を招くことがある.
[例 1]
y = \mathrm{arc\,sin}\sqrt{1 - x^{2}}\sqrt{1-x^2}=\sin y を意味する.従って x^2=\cos^2 y,x=\pm\cos y.故に xy との関係は次の図の曲線で示される.もしも \mathrm{arc\,sin} を主値とすればグラフは ABC で,点 B(0,\tfrac\pi2) が角立つ.しかし y を主値と限らないならば,グラフは A'BC または ABC' のように滑らかな曲線(\mathrm{arc\,cos}\,x または \mathrm{arc\,cos}(-x) の枝)である. y を主値として微分すれば(§17 の最後参照)

  \frac{dy}{dx}=\frac{1}{\sqrt{1-(1-x^2)}}\frac{-x}{\sqrt{1-x^2}}
  =\frac{1}{|x|}\frac{-x}{\sqrt{1-x^2}}=\mp\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}
  \quad (x\gtrless 0)
で,x=0 においては D^+y=-1,D^-y=+1.同じように,y=\mathrm{arc\,sin}\,2\pi\sqrt{1-x^2} を考察してみるとよい.
[例 2]
y=\mathrm{arc\,tan}\,\tfrac{1}{x}.

しいて主値を取れば x=0 は不連続点になる.しかし点線で示したような滑らかな分枝もある.それらは \mathrm{arc\,cot}\,x の枝である.

主値を取れば arc tan 1/x は x = 0 で不連続,しかし滑らかな枝もある.



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