解析概論/第2章/接線および曲率
[編集] 27.接線および曲率
本章の終りにおいて曲線の接線および曲率に関して述べる.それは微分法発祥の問題である.ただし記述を簡明にするために,ベクトル法の記号を用いる.一定の大きさと方向とを有する量としてのベクトルの意味は既知とする.直角座標の原点
から点
に至る線分
で表わされるベクトルを
と書き、
を
の座標(または成分)という.また
の大きさを
と書く.すなわち
.
二つのベクトル
に関して,次のように二種の乗法を定義する.

が零ベクトルではないとき,それらの方向余弦は,それぞれ
および 
の間の角を
とすれば


が互に垂直であるとき



が変数
の函数であるときは,ベクトル

の函数と考えることができる.そのとき
に対応するベクトルを

は,すなわち,ベクトル
で

が微分可能ならば,
のときベクトル

と書けば


が常に単位ベクトル(すなわち
)で,その方向のみが変化するときには,
だから
である.そのとき
ならば,
と
とは互に垂直である.



のベクトル積といい,それを
と書く[* 1].それの幾何学的の意味は次の通りである. 今簡単のために
と書けば


は
および
に垂直である.また

を三つの稜とする平行六面体の体積で,それが正であるから
は座標軸と同意(すなわち右ねじ)の三稜系である.この体積が
に等しいから,
は
が作る平行四辺形の面積に等しい.
特に
の方向が一致するときは 



が
の函数ならば


で表わす.すなわち

が右ねじならば,それらは単位三稜系を成すという.この場合

さて曲線
が媒介変数
によって表わされているとする.然らば
上の点
の座標
は与えられた
の函数であるが,点
の代りにベクトル
を
と書いて,
を
の函数として考察する.今曲線
において
に対応する点を
,あるいは,ベクトル
を
とすれば,前に述べたように,
はベクトル
で

今
が第三階まで微分可能とすれば,Taylor の公式(定理29)によって

も同様であるが,これらを一括して簡明に書けば

はベクトルである.
も同様で,また
は
のとき
なるベクトルとみてよい.(1) における三つのベクトル
は曲線
の点
における幾何学上の性質に関して重要な意味を有する. ベクトル
の大きさは

また点
における曲線
の接線の方向余弦は

によって与えられる.ただし
すなわち
が同時に 0 になる点(特異点)は除く[* 2].
媒介変数として,
の代りに,曲線
の一つの定点から起算した弧長
を取れば,結果が簡明である.
よって,以下
に関する微分を
で示して

とする. 弧長の理論は後に述べるが,ここでは弧
と弦
との比が距離
のとき
に収束することだけを用いる.すなわち

従って

故に
すなわち 
を媒介変数とすれば,
は接線上において
の増加する向きに取った単位ベクトルである.
だから,
を仮定すれば,
は
に垂直である(74 頁).
において
に平行な直線を曲線
の主法線(principal normal),
を含む平面を接触平面(osculating plane)という.
を通る任意の平面の方程式を標準形で

は平面の法線上の単位ベクトルである.曲線上の点
からこの平面への距離は

に等しい.ただし
.これは (2) によってファイル:図

が
に垂直(
),すなわち平面が
を含むときに限って,
よりも高位の微小数である.これが接触平面の意味である.さて
および
における接線の間の角を
とすれば,
はベクトル
と
との間の角で,
の長さは常に
に等しいのだから,
のとき

然るに

故に
すなわち 
ここで
は
の接線の方向が弧長に伴って変動する率であるから,それを点
における曲率といい,その逆数
を曲率半径という.すなわち

における接触平面の垂線を陪法線(binormal)という.今,接線,主法線,倍法線上に単位三稜系
を取れば,上記によって

然らば

であるが,
は
に平行だから
,従って

故に
は
に垂直である.また
から
は
に垂直,従って
は
に平行である.(ここで
を仮定した.)前に述べた
と同じように,
は
の変動に伴う倍法線の向きの変動率,すなわち接触平面が接線のまわりを回転する角の変動率である.
の増す向きを接線の正の向きと定めたから,この回転は正負を区別することができる.
は
に平行で,
だから
であるが,今

と置いて
を曲線
の第二曲率または捩率(あるいはねじれ)といい,その逆数を捩率半径という.
が曲線
の上を進むとき,単位三稜系
は,
の正負に従って,右ねじまたは左ねじに回りつつ変動する.任意のベクトルは
の結合として
の形で表わされるが,今
を考察すれば

であったから,
を用いて

上記
を集めて書けば
![\left\{\begin{array}{lrl}
\boldsymbol i'= & \dfrac{1}{\rho}\boldsymbol j, & \\[5pt]
\boldsymbol j'= -\dfrac{1}{\rho}\boldsymbol i& & +\dfrac{1}{\tau}\boldsymbol k,\\[5pt]
\boldsymbol k'= & -\dfrac{1}{\tau}\boldsymbol j. &
\end{array}\right.](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/6/a/7/6a71e871c42e51347aa0e4a488dc7607.png)
これが Frenet の公式である.
の成分は接線・主法線・陪法線の方向余弦で,
は弧長
に関する微分を示すのであった.さて (4) から
.よって (5) を用いて,

よって行列式を作れば(75 頁),

従って

これが
を変数としての捩率の式である. 任意の媒介変数
に関して
と
とを計算しよう.前のように,
に関する微分を
で表わすならば

と
とは互に垂直であるから,上の第二の式によって
は二つの互に垂直なベクトルの和に分解される.一つは
で,それは
の接線に平行で,その大きさは
(
だから),また一つは
で,それは
の主法線に平行で,その大きさは
(
だから)である.
を時間とみるとき,加速度
がこのような二つの成分に分解されることは,運動学で周知である.故に

また
を
に関して微分して

従って

故に

また (7) から


任意の媒介変数
の函数として,(8),(9) から曲率および捩率が計算される.
平面曲線に関しては
として,Talor 展開を二次の項まで取って

を考察する.この場合にも
,従って
を
軸の正の向きから,接線の正の向きまでの角とすれば(77 頁と同様に),

は弧長
に対する接線の方向の変動率で,それを曲率というのであるが,三次元で捩率の符号を差別したのと同様に,二次元では既に接線の方向の変わる向きの符号を差別できるから

を曲率の定義として,
を曲率半径という.然らば

から,
に関して微分して

これから

一般の媒介変数に関しては,(7) の初めの二つの方程式を用いて

従って

75 頁 (3º) と同様の記号を用いてこれを

と書けば簡明であろう.(ただし
,すなわち
の増す向きに弧長を計るとしていう.) 要約すれば,独立変数に無関係に微分記号を用いて

特に曲線が

の形で与えられているときには,
を独立変数として

点
において曲線
に接し,接線に関して
と同じ側にあって
に等しい半径を有する円を曲率円といい,その中心
を曲率の中心という.然らば

(10) によって
の符号が
の符号であるから,ちょうどこれでよいのである.または (14) によれば,
は
と同符号だから,次の図のように曲率の中心は曲線の凹なる側にある. ファイル:図
曲線
の曲率の中心
の軌跡を曲線
おすれば,(15) は
と同一の媒介変数によって
を表わす.特に
の弧長
を媒介変数とすれば,
は

で表わされる.
に関してさらに微分すれば,(11) によって


すなわち原曲線
の接線と,それに対応する点における
の接線とは互に垂直である.故に
の法線は曲率の中心において
に接する.すなわち
は原曲線
の法泉の包絡線(§88)である.
今
の弧長を
とすれば

すなわち
.故に
における弧長を適当なる向きに計るならば,
なる各範囲内において
で,
に
が対応するとすれば,
.その条件の下において,
の二点間の弧長は対応する
の二点における曲率半径の差に等しい.
に糸を捲いて置いて,その端
を糸のたるまぬように,かたく引張りつつほぐして行けば,
は
を描くであろう.よって
を
の伸開線(involute)といい,逆に
を
の縮閉線(evolute)という.
が与えられるとき,その縮閉線
は一定であるが,与えられた
の伸開線
は無数にある.
,回転の角を
,定直線を
軸として,
のとき円周上の定点
が定直線に接する点を座標の原点とするならば,擺線は
を媒介変数として次のように表わされる.








は原曲線の弧
とそれぞれ合同である.
に対応して
であるから,弧
の長さは
,従って擺線
の全長は
である.


を追い出せば縮閉線の方程式として

の内部の点からは楕円の四つの法線,また外部の点からは二つの法線が引かれる.






とは同符号で,それの正負は右ねじ,左ねじを差別する.



