解析概論/第2章/微分の順序

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[編集] 23.微分の順序

f(x,y) をまず x に関して微分して,導函数 f_x(x,y) を得,次に f_xy に関して微分して第二階の導函数の一つである f_{xy} を得る.故に f_{xy}f_{yx} とは観念上別々の物である.然るに或る条件の下において,f_{xy}f_{yx} とが同一の函数になる.今そのうちで最も手近かなものを取るならば:

定理 27.
或る領域において f_{xy},f_{yx} が連続ならばその領域で f_{xy}=f_{yx}
[証]
領域内の任意の一点 (a,b) の近傍を考察する.簡単のために
(1)

  \Delta=f(a+h,b+k)-f(a+h,b)-f(a,b+k)+f(a,b)
と置く.すなわち図の記号を用いて
点 (a,b) の近傍

  \Delta=f(P_3)-f(P_1)-f(P_2)+f(P).
また
(2)

  \varphi(x)=f(x,b+k)-f(x,b)
と置く.然らば \varphi(a)=f(P_2)-f(P),\varphi(a+h)=f(P_3)-f(P_1),
(3)

  \Delta=\varphi(a+h)-\varphi(a).
仮定によって (a,b) の近傍[* 1]f_x が存在するから,(2) から
(4)

  \varphi'(x)=f_x(x,b+k)-f_x(x,b).
そこで x=ax=a+h との間の区間に関して,平均値の定理\varphi(x) 似適用すれば,

  \varphi(a+h)-\varphi(a)=h\varphi'(a+\theta h).\quad(0<\theta<1)
(3)(4) によって詳しく書けば
(5)

  \Delta=h\{f_x(a+\theta h,b+k)-f_x(a+\theta h,b)\}.
さて仮定によって,(a,b) の近傍で f_{xy} が存在するから,(5) の右辺に y=by=b+k との間の区間に関して,平均値の定理を適用すれば

  \Delta=hkf_{xy}(a+\theta h,b+\theta'k).\quad(0<\theta'<1)
仮定によって f_{xy} は点 (a,b) において連続である.故に
(6)

  \lim_{(h,k)\to(0,0)}\frac{\Delta}{hk}=f_{xy}(a,b).
x,hy,k とを交換して考察しても同様に
(7)

  \lim_{(h,k)\to(0,0)}\frac{\Delta}{hk}=f_{yx}(a,b)
を得る.(6)(7) を比較すれば,点 (a,b) において,すなわち領域内の各点において,
f_{xy}=f_{yx}.
[注意] 
上記の証明を再考してみよう.(6) を得るまでには,定理の仮定の一部分,すなわち領域において f_x,f_{xy} が存在することと,f_{xy} が点 (a,b) において連続であることだけを用いた.今その上に,領域内で f_y が存在することを仮定するならば,(1) から

  \frac{\Delta}{hk}=\frac{1}{h}\left\{
    \frac{f(a+h,b+k)-f(a+h,b)}{k}-\frac{f(a,b+k)-f(a,b)}{k}
  \right\},
従って k\to 0 のとき

  \frac{\Delta}{hk}\to\frac{1}{h}\{f_y(a+h,b)-f_y(a,b)\}.
然るに (6) によって,k\to 0,h\to 0 のとき,\tfrac{\Delta}{hk} は一定の極限値 f_{xy}(a,b) に収束する.故に h\to 0 のとき

  \lim\frac{1}{h}\{f_y(a+h,b)-f_y(a,b)\}=f_{xy}(a,b).
左辺の極限値は定義によって f_{yx}(a,b) であるから,
f_{yx}(a,b)=f_{xy}(a,b).

よって定理 27 の仮定を緩和して,次のようにいうことができる.

或る領域において,f_x,f_y,f_xy が存在して,領域内の一点において f_{xy} が連続ならば,その点において f_{yx} も存在し,かつ f_{xy}=f_{yx}Schwarz の定理).もちろん xy とを交換してもよい.

故に f_x,f_y が存在する場合,例えば f_{xy} を求めたときに,それが連続ならば,f_{yx} を求めるには及ばない.

定理 27 でも,またはそれを精密にした Schwarz の定理でも,定理の仮定は f_{xy}=f{yx} が成り立つための十分なる条件であるにすぎない.十分なる条件ならば,次のようにもいわれる.

或る領域において f_x,f_y が(存在して,それらが)領域内の一点において微分可能ならば,その点において f_{xy}=f_{yx}Young の定理).
この場合にも上記証明中の (5) までは通用する.(5) において h=k として f_x の微分可能性の仮定を用いて(§22
\begin{alignat}{2}
  &f_x(a+\theta h,b+h)=f_x(a,b)+\theta hf_{xx}(a,b)+hf_{xy}(a,b)&&+oh,\\
  &f_x(a+\theta h,b)=f_x(a,b)+\theta hf_{xx}(a,b)               &&+oh.
\end{alignat}
これを (5) に代入して,\Delta=h^2f_{xy}(a,b)+oh^2,故に

  \lim_{h\to 0}\frac{\Delta}{h^2}=f_{xy}(a,b).
仮定が x,y に関して対称的であるから,f_{xy}(a,b)=f_{yx}(a,b) を得る.
Young の定理では f_x,f_y の微分可能性,従って f_{xx},f_{xy},f_{yx},f_{yy} の存在を仮定する.しかしそれらの連続性を仮定しない.Schwarz の定理では f_x,f_y,f_{xy} の存在の上に f_{xy} の連続性を仮定するが,f_{yx}(および f_{xx},f_{yy})に関しては存在すらも仮定しない.場合に応じて便宜兼用すべきである.応用上は一般的に定理 27 で用が足りるであろう.

もちろん無条件で f_{xy}=f_{yx} とはいわれない.それを認識することは重要だから,今その一例を挙げておく.

\begin{cases}
  f(x,y)=xy\frac{x^2-y^2}{x^2+y^2},&(x,y)\ne(0,0)\\
  f(0,0)=0
\end{cases}

とする. (x,y)\ne(0,0) として計算すれば


  f_x(x,y)=\frac{3x^2y-y^3}{x^2+y^2}-\frac{2x^2y(x^2-y^2)}{(x^2+y^2)^2}.

x,y を交換して符号を変えれば f_y を得る.また


  f_{xy}(x,y)=\frac{x^2-y^2}{x^2+y^2}+\frac{8x^2y^2(x^2-y^2)}{(x^2+y^2)^3}.

(x,y)\ne(0,0) ならば,これは連続だから,f_{yx} に等しい.さて,\textstyle f_{xy}(0,y)=-1,(y\ne 0),\lim_{y\to 0}f_{xy}(0,y)=-1.然るに f_x(0,y)=-y,y\ne 0 で,f_x(0,0)=0 だから f_x(0,y)y=0 で連続.故に f_{xy}(0,0)=-1定理 23).同様に f_{yx}(x,0)=1 から f_{yx}(0,0)=1

第三階以上でも,導函数が連続ならば,それに達した微分の順序を変更してもよい.例えば f_{xxy}=(f_x)_{xy}=(f_x)_{yx}=f_{xyx} のように相接する二つの添字を交換してもよいから,それを繰返えして


  f_{xyz}=f_{xzy}=f_{zxy}=f_{zyx}=f_{yzx}=f_{yxz},

  f_{xxyy}=f_{xyxy}=f_{xyyx}=f_{yxxy}=f_{yxyx}=f_{yyxx},
 等々.

よって二つの変数の場合には第二階の導函数は


  f_{x^2}=\frac{\partial^2f}{\partial x^2},\quad
  f_{xy}=\frac{\partial^2f}{\partial x\partial y},\quad
  f_{y^2}=\frac{\partial^2f}{\partial y^2}

の三つで,第 n 階のは


  f_{x^ry^s}=\frac{\partial^nf}{\partial x^r\partial y^s}\qquad
  (r+s=n,\, s=0,1,2,\ldots,n)

n+1 個である.三次元以上もこれに準ずる.


  1. 近傍といっても,矩形 PP_1P_2P_3 を全く含めていう.h,k は任意に小さく取れるから,近傍といってよろしい.
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