解析概論/第2章/導函数の性質

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[編集] 18.導函数の性質

定理 19.
Rolle の定理]. f(x) は区間 [a,b] で連続, (a,b) で微分可能とする.もしも f(a)=f(b) ならば,区間 (a,b) のある点において f'(x)0 になる.すなわち a<\xi<b,f'(\xi)=0 なる \xi がある.
[証]
まず f(a)=f(b)=0 とする.その場合, f(x) が常に 0 ならば,定理は明白である.もしも f(x) が正なる値を取るならば,[a,b] において連続なる f(x) の最大値は正である.その最大値を f(\xi) とする(定理 13).然らば f(\xi)>0 だから a<\xi<b

さて x=\xi において \Delta f\leqq 0 .故に

\Delta x>0  とすれば  \frac{\Delta f}{\Delta x}\leqq 0,  従って  f'(\xi)\leqq 0,
\Delta x<0  とすれば  \frac{\Delta f}{\Delta x}\geqq 0,  従って  f'(\xi)\geqq 0,
故に f'(\xi)=0

もしも f(x) が負の値のみを取るならば,最小値を考察すればよい.

f(a)=f(b)=k\ne 0 ならば, f(x)-k を考察すればよい.
(証終)
[注意] 
応用上,多くの場合 f(x) が連続で,かつ微分可能なる区間内の点 a,b に関して Rolle の定理が適用されるが,上記のように連続性は閉区間 [a,b] で,また微分可能性は開区間 (a,b) だけで仮定しても定理が成り立つのである.なお一般に連続性に関しては,f(x) は開区間 (a,b) で連続で,\textstyle\lim_{x\to a+0}f(x)=\lim_{x\to b-0}f(x) だけを仮定してもよい.そのとき x=a に関して(x=b でも同様),f(x) の定義を \textstyle f(a)=\lim_{x\to a+0}f(x) によって x=a まで拡張し,あるいは x=a において変更すれば,f(x)[a,b] において連続になるから,f(x) をその意味に取れば定理 19 は成り立つ.以下このような特別の場合に関して,くどくどしく説明しないこともあろう.
定理 20.
[平均値の定理]. f(x)[a,b] において連続, (a,b) において微分可能とする.然らば
\frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(\xi),\qquad a<\xi<b,
なる \xi が存在する(Lagrange).
[証]
F(x)=f(x)-Ax と置いて F(a)=F(b) になるように,定数 A を定めることができる.すなわち
f(a)-Aa=f(b)-Ab  から  A=\frac{f(b)-f(a)}{b-a}.
然らば Rolleの定理によって F'(\xi)=0,a<\xi<b.さて F'(x)=f'(x)-A.故に
f'(\xi)=\frac{f(b)-f(a)}{b-a}.
定理掲出の公式の左辺は区間 [a,b] に関する f(x) の平均増加率で,それが区間内の一点における増加率 f'(\xi) と等しいのである. 上記の公式をフランス系では‘有限増加の公式’ともいう.上記公式の左辺は \tfrac{\Delta y}{\Delta x} であるが, \Delta x\to 0 とはしないのだから.

定理 20 を次のように拡張することができる.

定理 21.
区間 [a,b] において f(x),g(x) は連続で, (a,b) において微分可能とする,然らば (a,b) 内の或る点 \xi において
\frac{f(a)-f(b)}{g(a)-g(b)}=\frac{f'(\xi)}{g'(\xi)},\qquad a<\xi<b.
ただし,(1º) g(a)\ne g(b)(2º) f'(x),g'(x) は区間内で同時に 0 にならないと仮定する(Cauchy).
[注意] 
この仮定を強くして,(a,b) において g'(x)\ne 0 としてもよい.そのとき Rolle の定理によって g(a)\ne g(b) であるから.
[証]
今度は F(x)=\mu f(x)-\lambda g(x) と置いて, \lambda : \mu を適当に定めて F(a)=F(b) ならしめる.すなわち
\mu f(a)-\lambda g(a)=\mu f(b)-\lambda g(b)
から
\mu\{f(b)-f(a)\}=\lambda\{g(b)-g(a)\}.
よって
\lambda=f(b)-f(a),\quad \mu=g(b)-g(a)
として
F(x)=\{g(b)-g(a)\}f(x)-\{f(b)-f(a)\}g(x)
とする.然らば F'(\xi)=0 から(定理 19
\{g(b)-g(a)\}f'(\xi)=\{f(b)-f(a)\}g'(\xi).
ここで g'(\xi)\ne 0 .なぜならば:もしも g7(\xi)=0 とすれば,仮定 (1º) によって g(b)-g(a)\ne 0 だから, f'(\xi)=0 になるが,それは仮定 (2º) に反する. よって両辺を \{g(b)-g(a)\}g'(\xi) で割って
\frac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}=\frac{f'(\xi)}{g'(\xi)}.
(証終)

上記定理に興味ある幾何学的の説明を与えることができる.わかりやすくいうために,独立変数を t と書いて,曲線

x=g(t),\quad y=f(t),\qquad a \leqq t \leqq b

を考察する. t=a,t=b に対応する点を A,B とすれば定理掲出の公式の左辺は弦 AB の勾配で,右辺は t=\xi に対応する点 P における接線の勾配である.すなわち曲線 A,B 上の中間の或る点 P における接線が,弦 AB に並行になるのである.

KaisekiGairon-2-18-fig1.png

f'(x)g'(x) が同時に 0 にならないという仮定は,曲線が各点において確定の接線を有することを意味する. g(b)-g(a)\ne 0 と仮定するのは,それを左辺の分母に置くからである.実質的には f(b)-f(a) または g(b)-g(a)0 にならなければ(A \ne B ならば)よい.

定理 22.
或る区間において常に
f'(x)>0  ならば, f(x)  は単調に増大する,
f'(x)<0  ならば, f(x)  は単調に減少する,
f'(x)=0  ならば, f(x)  は定数である.
[注意] 
増大,減少はともに狭義でいう.すなわち a<b なるとき f(a)<f(b) または f(a)>f(b) で, f(a) \leqq f(b) または f(a) \geqq f(b) の意味ではない.
[証]
平均値の定理による.第一の場合には,区間内の任意の二つの点 a,b とその中間の一点 \xi とに関して
\frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f(\xi)>0.
故に a<b なるときは f(a)<f(b)

その他も同様.

[注意] 
一点 x=a において f'(a)>0[あるいは <0]ならば,f(x)その点において増大[あるいは減少]しつつあるという.微分商の定義によって,その場合,|x-a| が十分少なるとき,x \lessgtr a に従って f(x) \lessgtr f(a)[あるいは f(x) \gtrless f(a)].それは f(x) を一定の f(a) に比較していうのであるから,区間に関して単調増大[あるいは減少]とは違う.

定理 22では f'(x) を連続とは仮定していない.もしも f'(x)x=a において連続ならば, f'(a)>0 なるときには,a を含む十分小なる或る区間内で f'(x)>0 ,従って定理 22 によって,その区間内では f(x) は単調増大である.f'(a)<0 の場合は単調減少である.

f'(a)=0 なるときは,f'x) が連続でも,f(x) の増大または減少に関して一般的になんらの断言もなしえない.

定理 22 の第一,第二の場合に,逆は真でない.すなわち f(x) が狭義で単調なるとき,区間内の或る点において f'(x)=0 になることがある(43 頁の上の図)もしも単調を広義に取れば: f'(x) \geqq 0 ならば, f(x) は単調増大(不減少)で,逆も真である. f'(x) \leqq 0 なるときも同様.
[附記] 
導函数の連続性について
区間 [a,b] においてf(x) が微分可能ならば,f(x) は連続であるが,導函数 f'(x) は必らずしも連続でない.すなわち微分法は連続性を保存しない.
[例]
f(x)=x^2\sin\frac{1}{x},\quad f(0)=0. x\ne 0 ならば
f'(x)=2x\sin\frac1x-\cos\frac1x.
ここで \tfrac{1}{x} を微分するとき x\ne 0 を仮定したから,これは x=0 のときは通用しない.x=0 のときは,規則通りに計算して

  f'(0)=\lim_{h\to 0}\frac{h^2\sin\frac1h-0}h
  =lim_{h\to 0}h\sin\frac1h=0.
すなわち \textstyle\lim_{x\to 0}f'(x)=f'(0) でないから,f'(x)x=0 において不連続である.

導函数は必らずしも連続でないから,x\to a のとき f'(x)\to f'(a) とはいかない.\textstyle\lim_{x\to a}f'(x) は存在すらも保証されない.ここに注意すべきは,その裏が成り立つことである: すなわち

定理 23.
f(x) が連続なる区間内の一点 a は別として,a の近傍では f(x) が微分可能で \textstyle\lim_{x\to a}f'(x)=l が存在するならば,f'(a)=l.すなわち a においても f(x) は微分可能で,f'(x)a において連続である.
[証]
平均値の定理によって

  \frac{f(x)-f(a)}{x-a}=f'(\xi),\quad a\lessgtr\xi\lessgtr x.
x\to a のとき,\xi\to a.故に仮定によって f'(\xi)\to l.すなわち
<\lim_{x\to a}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}=l, すなわち f'(a)=l.
[注意] 
a が区間の左端(または右端)ならば f'(a)=l は右(または左)への微分商である.

導函数に関しては,(それが連続でなくても)中間値の定理が成り立つことが注意に値する.

定理 24.
f(x)[a,b] において微分可能なるとき,\muf'(a)f'(b) との中間にある任意の値とすれば,f'(\xi)=\mu,a<\xi<b なる \xi が存在する.
[証]
F(x)=f(x)-\mu x と置いて

   F'(a)=f'(a)-\mu<0,\quad F'(b)=f'(b)-\mu>0
と仮定して,F'(\xi)=0, a<\xi<b なる \xi の存在を示せばよい.この仮定によれば,[a,b] において連続なる F(x) は,その最小値を x=a または x=b において取りえない(49 頁,[注意]).故に a<\xi<b なる \xi に対応して F(\xi) が最小値を取る.然らば F'(\xi)=0 でなければならない.それは定理 19 の証明で述べた通りである.
(証終)
[注意] 
定理 2324 によって任意の函数が或る函数の導函数になりえないことがわかる.
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