解析概論/第1章/集積点

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[編集] 7.集積点

数の場合と同様に,二次元以上でも,或る一定の条件に適合する点の全部を一つの点集合という.集合に属するすべての点 P = (x_{1}, x_{2}, \ldots, x_{n}) の各座標 x_{k} が有界なるとき,点集合を有界という.そのとき,集合の点はすべて一定の有限範囲内にある.例えば一次元ならば一定の区間内,二次元ならば一定の正方形内または一定の円内にある,等々.

一つの集合 S に関して或る点 A集積点であるとは,点 A にどれほど近いところにも S に属する点が無数にあることをさしていう.ただし A が集合 S に属するというのではない.

[例 1]
x, y を任意の有理数として,点 (x, y) の集合を S とすれば,すべての点 (a, b) は集積点である. なぜならば,a または b が有理数であっても,無理数であっても,任意の \epsilon > 0 に対して |x-a| < \varepsilon, |y-b| < \varepsilon なる有理数 x, y が無数にあるから.
[例 2]
m, n を任意の自然数として,点 (\tfrac{1}{m}, \tfrac{1}{n}) の集合を S とすれば,(\tfrac{1}{m}, 0), (0, \tfrac{1}{n}), (0, 0) が集積点である.一般に,集積点の集積点は,やっぱり集積点である.
[注意] 
数列 \{a_{n}\} に含まれる数 a_{n} の集合を S とする.数列 \{a_{n}\} の中に,同じ数 a が無数に繰り返して出て来る場合には,aS の集積点であるとは限らない.これに反し,\{a_{n}\} に同じ数が無数に含まれることがなければ,\{a_{n}\}a に収束することは,S が有界で aS の唯一の集積点であることと同等である.またその場合, \varlimsup a_n, \varliminf a_n は,それぞれ S の最大,最小の集積点にほかならない.
定理 9.
有界なる無数の点の集合に関して,集積点が必らず存在する[Weierstrass の定理].
[証]
四つの正方形に等分
正方形の一列
定理は各次元に通用するけれども,簡明のために二次元として証明をする.この集合 S は有界だから,その点はすべて辺が軸に平行なる一つの正方形 Q に含まれると考えてよい.正方形 QS の無数の点が含まれるから,今Qを四つの正方形に等分するならば,それらのうち少くとも一つは S の無数の点を含む(内部または周上に,以下同様).その一つを Q_{1} とする.そのような正方形が二個以上あるとき,明確を欲するならば,象限順で最初のものを取ることにすればよい.さて Q_{1}S に属する点を無数に含むから,Q_{1} を四つの正方形に等分すれば,それらのうち少くとも一つ Q_{2} は,必らず S の点を無数に含まなければならない.このようにして行けば,Q, Q_{1}, Q_{2}, \ldots, Q_{n}, \ldots なる正方形の一列が生じて,n \to \infty のとき,Q_{n} の辺は限りなく小さくなる.

今一般に Q_{n} の四つの頂点の中で左下のもの(各座標が最小なるもの)を (a_{n}, b_{n}) とするならば,

\begin{align} Q \supset Q_{1} \supset Q_{2} \supset \ldots \supset Q_{n} \supset \ldots \end{align}
から,
a \leqq a_{1} \leqq a_{2} \leqq \ldots \leqq a_{n} \leqq  \ldots,
b \leqq b_{1} \leqq b_{2} \leqq \ldots \leqq b_{n} \leqq  \ldots.
これら二つの数列は明らかに有界だから,
\lim_{n \to \infty}a_{n} = \alpha,\quad \lim_{n \to \infty}b_{n} = \beta. (定理 6
然らば点 P=(\alpha,\beta) は集積点である.

なぜならば,今 (\alpha, \beta) を中心とするどれほど小さな円を取ってみても,十分大なる或る番号以上は,Q_{n} がすべてその円に含まれる.然るに Q_{n}S の点を無数に含むのだから,どれほど (\alpha, \beta) に近いところにも,S の点が無数に存在する.

上記の例 2 では,Q は原点を一つの頂点とし,両軸上に長さ 1 の辺を置く正方形としてよい.然らば Q_{n}x 軸または y 軸に接するものに限る.

A が集合 S の集積点ならば,S から A に収束する点列 \{P_{n}\},(P_{n} \neq A) を取り出すことができる.実際,PA とは異なる S の任意の点として,A から AP\tfrac{1}{2} 以内の距離にある S の点を P_{1}(\neq A) とする.A は集積点だから,そのような点は必らず存在する.同様に AP_{2} < \tfrac{1}{2}AP_{1}, AP_{3} < \tfrac{1}{2}AP_{2}, \ldots なる点 P_{2}, P_{3},\ldots を取れば,AP_{n} < \tfrac{1}{2^n}AP だから,点列 \{P_{n}\},(P_{n} \neq A),A に収束する.

[注意 1] 
上方に有界なる数の集合 S の上限 aS に属しないならば,上限の意味から,aS の集積点である.故に上記によって,S から a に収束する数列 \{a_{n}\} を取り出すことができる.aS に属するときは,a_{n} = a とすれば,数列 \{a_{n}\}a に収束する.いずれにしても,S の上限に収束する数列を S から取り出すことができる.下限についても同様である.
[注意 2] 
点列 \{P_{n}\} が有界ならば,\{P_{n}\} の部分点列 \{P_{m}\}(番号 m は自然数の一部分)を適当に取り出して,点列 {P_{m}} が収束するようにすることができる.実際,S を点 P_{n} の集合とすれば,S が無数の点の集合のときには,定理 9によって S の集積点が存在するから,S の一つの集積点に収束する \{P_{n}\} の部分点列 \{P_{m}\} を上記と同様の方法で取り出せばよい.また,もし S が有限個の点の集合ならば,点列 \{P_{n}\} の中に,同じ点 P が無数に出てくるから,P_{m} = P なる部分点列 \{P_{m}\} を取り出せばよい.

S に関する集積点は必らずしも S に属する点ではないが,もしも,すべての集積点が S に属するならば,S閉集合という.

例えば閉区間 [a, b],または二次元では,周をも入れた円または正方形などは閉集合を成す.

S が閉集合でないときに,S に集積点をつけ加えて集合 [S] を作れば,それは閉集合である: S の集積点の集積点は,やはり S の集積点であるからである.

この注意によって,区間縮小法を次のように拡張することができる.

定理 10.
有界なる閉集合の列 S_1,S_2,\ldots において
(1º)
S_1\supset S_2\supset\cdots\supset S_n\supset\cdots,
(2º)
n が限りなく増大するとき,S_nが限りなく小さくなる
ならば,これらの集合 S_n に共通する点がただ一つ存在する.
有界なる点集合の径とは,その集合に属する二点間の距離の上限をいう.故に,S_n の径が限りなく小さくなるとは,S_n が限りなく小さくなる円に含まれるというのと同じことである.
[証]
S_1,S_2,\ldots から任意にそれぞれ点 P_1,P_2,\ldots を取り出したとする.然らば (1º) によって P_n,P_{n+1},\ldotsS_n に属するから,(2º) によって点列 \{P_n\}Cauchy の収束条件を満たす.よって \{P_n\} の極限を A とする.或る番号から先の P_m がことごとく同じ点であるときには,P_m=AAS_n に属する.その他の場合には,A は閉集合 S_n の点 P_n,P_{n+1},\ldots の集積点だから,A は,やはり,S_n に属する.n は任意だから,A はすべての集合 S_1,S_2,\ldots に共通である.さて,これらの集合に共通なる点がただ一つに限ることは,仮定 (2º) によって明らかである.
(証終)

定理 910 に関連して,次の重要な定理を述べておく.

定理 11.
無数の円の一組が,全体として,有界なる閉集合 F を覆うならば,F はすでに,それらの円の中の有限個だけで覆われる[Heine-Borel の被覆定理].

ここで F を覆うというのは,F に属する各点が,これらの円のどれかの内部にあることをいう.

[証]
かりに定理は真でないとする.然らば,F を含む一つの正方形 Q を取って,それを四つの小正方形に等分するとき,それらの小正方形(辺をも入れていう)のうちの少くとも一つに属する F の部分集合に関して,定理は真でない[* 1].(さもなければ,F において定理が真!)この部分閉集合を F_1,それを含む小正方形を Q_1 とする.同様の操作を繰り返して,閉集合の無限列 F\supset F_1\supset F_2\cdots を得るが,それらは,それを含む小正方形と共に限りなく小さくなるから,F に属する一点 P_0 を共有する(定理 10).P_0F に属するから,P_0 は与えられた円の中の或る一つの内部に含まれる.故に十分大きい n に対して F_n は,それを包む小正方形 Q_n と共に全くこの円内に入る.これは F_n に関する約束(F_n において定理が真でないこと)に矛盾する.故に定理を承認せざるをえない.
(証終)
この証明において F が閉集合であるという仮定が重大である.さもなければ,P_0F に属することがでてこない.また F の各点が円の内部に含まれることが肝要である.P_0 が円の周上にあるのでは,n をどれほど大きくしても,Q_n 従って F_n が全くは円内に入らないかも知れないから,証明が拘束力を失うであろう[* 2]

  1. 二つの閉集合の双方に属する点の集合は閉集合である.
  2. ここで円(円の内部)というのは一例である.実際は円を任意の開集合としても,定理は成り立つ(§12 参照).



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