解析概論/第1章/連続函数

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[編集] 10.連続函数

或る区域内において,変数 x が連続的に変動するに伴って連続的に変動する函数 f(x),すなわち,いわゆる連続函数が応用上重要である.

変数 x が限りなく一つの値 a に近づくとき, f(x) もまた限りなく f(a) に近づくならば, f(x)x=a なる点において連続であるという.故に

f(x)x=a なる点において連続であるとは

x \to a のとき f(x) \to f(a)

であることにほかならない.常例の型で,いわゆる \varepsilon\text{-}\delta 式にいえば: 正なる \varepsilon が任意に与えられたとき,それに対応して正なる \delta を適当に取って

|x-a|<\delta なるとき |f(x)-f(a)|<\varepsilon

ならしめうるのである.

或る区域の各点において連続なる函数を,その区域において連続という.

或る点で連続なる函数の和,差,積,商はその点において連続である.ただし商に関しては分母がその点で 0 にならないとする.点の代りに区間といっても同様である.例えば f(x), g(x) が区間内の一点 a において連続なるとき,f(x)+g(x)=h(x) とすれば,

x \to a のとき f(x) \to  f(a),\,g(x) \to g(a), 故に h(x) \to h(a). (定理 5
[例]
定数 a および xx の函数として各点で連続だから,それから四則によって生ずる x の有理函数は,分母が 0 になる点を除けば,連続である. 三角函数 \sin x, \cos x(-\infty,+\infty) において連続である.今 \sin x についていえば, x=a+h と置いて

  |\sin(a+h)-\sin a| = \left|2\sin\frac{h}{2}\cos\!\left(a+\frac{h}{2}\right)\right|
  < 2\cdot\frac{|h|}{2}\cdot 1 = |h|.
故に x \to a のとき h \to 0,\sin x\to\sin a\cos x も同様である.故に \tan x\cos x\ne 0 すなわち x\ne\tfrac{n\pi}{2}n は奇数)ならば,連続である.

その他の初等函数に関しては,後に至って適当なる機会において述べるであろう.

§8 に掲げた函数の中で,例 4[-1,+1] において連続である. x=0 なる点が目立つけれども,連続函数の定義に従えば,連続性を認めざるをえない.例 9f(x)=x\sin \tfrac{1}{x} も同様である.例 5f(x)=\text{sign}\,xx=0 においてだけ不連続である.例 6 は各点において不連続である.

時としては x が増大しつつ(左から)a に近づく場合,あるいは x が減少しつつ(右から)a に近づく場合において,f(x) の極限を考察することがある.その極限を

\lim_{x\to a-0}(左から), \lim_{x\to a+0}(右から)

なる記号で表わすのが簡便である.x=a\pm\varepsilon,\varepsilon>0,\varepsilon\to 0 を示唆するために x\to a\pm 0 と略記するのである.例えば

\begin{align}
 &\lim_{x\to\frac{\pi}{2}-0}\tan x=+\infty, & &\lim_{x\to\frac{\pi}{2}+0}\tan x=-\infty,\\
 &\lim_{x\to-0}\text{sign}\,x=-1, & &\lim_{x\to+0}\text{sign}\,x=+1,\\
 &\lim_{x\to-0}e^{\frac1x}=0, & &\lim_{x\to+0}e^{\frac1x}=+\infty.
\end{align}

同様の意味で記号


  \lim_{x\to a-0}f(x)=f(a-0),\quad \lim_{x\to a+0}f(x)=f(a+0)

を用いる.それらは x が左から,あるいは,右から a に近づくときの f(x) の極限を表わす.

左へ,また右へ連続

次のグラフでは

f(a-0)=\alpha,\quad f(a+0)=\beta.

これらは f(a) とは別の物であるが,もしも f(a)=\alpha ならば,f(x)x=a において左へ連続であるといい,またもし f(a)=\beta ならば右へ連続であるという.左へも右へも連続なるときがすなわち前に述べた意味の連続である.

f(x) が閉区間 [a,b] で連続であるというときには,x=a においては右へ,また x=b においては左へ連続であることを意味する.

f(x) が開区間 (a,b) において定義されているとき,もしも f(a+0) が確定ならば,それを f(a) として f(x) の定義を [a,b) にまで拡張すれば,f(x)x=a において右へ連続になる.

例えば §8,[例 9]において f(x)=x\sin\tfrac{1}{x} なる式は x=0 のとき意味を有しないが,\textstyle\lim_{x\to 0}x\sin\frac{1}{x}=0 である.故に f(0)=0 として f(x) の定義を補なえば f(x)(-\infty,\infty) において連続になる.このような‘式の欠点’から生ずる不連続は補正されたものと,みなすことが,多くの場合,適切である.例えば f(x)=\tfrac{x^2-1}{x-1} において f(1)=2,等々.

f(x) が単調増大(すなわち x<x' なるとき f(x)<f(x'),または広義において f(x)\leqq f(x'))なるとき,x=a を定義区間内の一点とすれば f(a-0)f(a+0) も確定で f(a-0)\leqq f(a)\leqq f(a+0)

\{x_n\}a に収束する単調数列とすれば,\{f(x_n)\}f(a) を限界とする単調数列であるから収束する.その極限は数列 \{x_n\} の選択に無関係で,それが f(a-0) または f(a+0) である(§9 参照).

もしも f(a-0)=f(a+0) ならば,f(a) もそれに等しいから f(x)x=a において連続であるが,f(a-0)<f(a+0) ならば,もちろん,不連続である.単調減少の場合も同様.

§8,[例 7]の函数は単調増大であるが,不連続点が稠密に分布されている.例えば x=\tfrac12 とすれば二進法では \tfrac12=(0.1)=(0.0111\ldots).それを十進法で読めば \tfrac{1}{10} または \tfrac{1}{90} である.従って

  f\!\left(\frac12-0\right)=\frac1{90},\quad
  f\!\left(\frac12\right)=f\!\left(\frac12+0\right)=\frac1{10}.
一般に x=\tfrac{a}{2^n}a は奇数)において同様の現象がある(跳びは \tfrac89\cdot\tfrac{1}{10^n}).これは不連続点が稠密に分布されている単調函数の一例である.
指数函数について
一例として,上記の考察を指数函数に適用してみよう.底 a1 より大として,指数 x が有理数なるときには,a^x の意味と性質は既知とする.今 x を一つの無理数とし,\{x_n\} を単調に増大しつつ x に収束する任意の有理数列とすれば,\{a^{x_n}\} は単調に増大するが,それは有界である.すなわち,bx より大なる有理数とすれば,a^{x_n}<a^b.故に \{a^{x_n}\} は極限値を有するが,その極限値は数列 \{x_n\} の選択に無関係である(22 頁).その極限値を無理数 x に関する a^x の定義とする.然らば上記の b に関して a^x\leqq a^b であるが,ここで等号はない.(なぜなら,x<b'<b なる有理数 b' を取れば a^x\leqq a^{b'}<a^b だから.)故に a^x<a^b.同様にして,bx より小なる有理数ならば a^b>a^x.このようにして,すべての実数 x に関して定義された函数 a^x は単調増大である.すなわち x<x' ならば a^x<a^{x'}.それは x または x' が有理数である場合にはすでにわかったのであるが,x および x' が無理数ならば,x<b<x' たる有理数 b を取れば a^x<a^b<a^{x'}

a^x が単調増大であることが知れた上は,前頁の記号を用いるために f(x)=a^x と置けば,f(a-0)=f(x+0) が確かめられたときに,f(x) すなわち a^x の連続性が証明される.そのために p<x<q,q-p<\tfrac{1}{n} なる有理数 p,q を取る(n は任意の自然数).然らば a^p<a^x<a^q で,a^q-a^p=a^p(a^{q-p}-1)<a^p(a^{1/n}-1).この差は n を十分大きく取れば,どれほどでも小さくなる(§4,[例 1]).さて a^p<f(x-0)\leqq f(x+0)<a^q だから f(x-0)=f(x+0) でなければならない.

0<a<1 の場合も同様で,この場合 a^x は単調減少な連続函数である.また a=1 ならば,a^x=1

任意の指数に関して a^x\cdot a^y=a^{x+y} を証明するには極限による.\{x_n\},\{y_n\} を有理数列 x_n\to x,y_n\to y とすれば,x_n+y_n\to x+y.さて有理指数に関しては a^{x_n}\cdot a^{y_n}=a^{x_n+y_n} は既知で,n\to\infty のとき左辺の極限は a^x\cdot a^y,右辺の極限は a^{x+y}.従って a^xa^y=a^{x+y}.同様にして a^x\cdot b^x=(ab)^x(a^x)^y=a^{xy} も証明される.(最後の式の証明は,x^rr は有理数]の連続性を用いて,(a^{x_n})^{y_m}=a^{x_ny_m} において,まず x_n\to x とする.)

二つ以上の変数の函数に関しても,連続性の定義は同様である.

今二次元の場合についていえば,平面上の或る区域で函数 f(P)=f(x,y) が定義されているとして,P=(x,y) がその区域に属する定点 A=(a,b) に限りなく近づくとき,f(P) が限りなく f(A) に近づくならば,f(P)A において連続であるという.例の通り \varepsilon\text{-}\delta 式でいえば,P がその区域に属して

PA<\delta のとき |f(P)-f(A)|<\varepsilon,

\varepsilon が与えられて後に \delta が定められるのである.

或る区域に属する各点で連続なる函数をその区域で連続であるという.

[注意] 
f(x,y) が連続ならば,y に一定の値を与えるとき,それは x の連続函数になり,また x に一定の値を与えるとき,y の連続函数になる.これの逆は真でない. 例えば (x,y)=(0,0) 以外では f(x,y)=\tfrac{2xy}{x^2+y^2}.また f(0,0)=0§8,[例 13])とすれば,f(x,y)x または y の一方のみに関しては連続であるが,双方の函数としては (0,0) において不連続である.実際,点 Py=x\,\tan\alpha なる直線上において (0,0) に近づくとすれば,f(P) の値は常に \tfrac{2\tan\alpha}{1+\tan^2\alpha}=\sin 2\alpha である.故に f(x,y)(0,0) において連続でない.



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