解析概論/第1章/収束の条件Cauchyの判定法

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[編集] 6.収束の条件 Cauchy の判定法

定理 8.
数列 \{a_n\} が収束するために必要かつ十分なる条件は,任意の \varepsilon>0 に対応して番号 n_0 が定められて,
p>n_0,\quad q>n_0 なるとき |a_p-a_q|<\varepsilon
なることである.
[証]
条件が必要なることは明白であろう: 今 a_n\to\lambda とすれば,収束の意味によって,
p>n,\ q>n,\ |a_p-\lambda|<\frac{\varepsilon}{2},\ |a_q-\lambda|<\frac{\varepsilon}{2}
なる n が定められる.従って |a_p-a_q|<\varepsilon. 定理の核心は条件が十分なることである.まずこの条件から数列 \{a_n\} が有界であることがでてくる.実際,上記条件に従って,一つの \varepsilonn_0 が対応するとすれば, p>n_0 なるとき
|a_{n_0+1}-a_p|<\varepsilon,
a_{n_0+1}-\varepsilon<a_p<a_{n_0+1}+\varepsilon
だから, n_0 より大きい番号に関しては \{a_n\} は有界である. n_0 は確定だから,有限個の数 a_1,a_2,\ldots,a_{n_0} をつけ加えても,\{a_n\} は有界である. よって今任意の n に関して,a_n,a_{n+1},\ldots の上限および下限をそれぞれ l_n,m_n として,I_n=[m_n,l_n] と置けば,
(1)
m_1\leqq m_2 \leqq \cdots \leqq m_n \leqq \cdots\cdots \leqq l_n \leqq \cdots \leqq l_2 \leqq l_1,
I_1\supset I_2\supset\cdots\supset I_n\supset\cdots.
さて仮定によって, \varepsilon>0n_0 が対応して, p>n_0,q>n_0 なるとき
a_p-a_q<\varepsilon.
よって, n>n_0 とすれば,上限の意味により,任意の q\geqq n に対して l_n-a_q\leqq\varepsilon .従って,下限の意味により
l_n-m_n\leqq\varepsilon
であるから,区間縮小法によって,
l_n\to\lambda,m_n\to\lambda
なる \lambda が存在する.然らば
a_n\to\lambda
でなければならない.実際, a_n は区間 [m_n,l_n] に属するから,十分大なる n に関して,
|a_n-\lambda|\leqq l_n-m_n\leqq\varepsilon.
(証終)
[附記] 
上極限・下極限
上記証明において,(1) は数列 \{a_n\} の有界性だけから導かれたのであった.(1) において,単調数列 \{l_n\},\{m_n\} は収束する.その極限を \lambda,\mu とするとき, \lambda を有界数列 \{a_n\} の上極限(limes superior)といい,それを記号 \textstyle\limsup_{n \to \infty}a_n あるいは見やすく \textstyle\varlimsup_{n \to \infty}a_n で表わす.同様に \mu\{a_n\} の下極限(limes inferior)といい, \textstyle\liminf_{n \to \infty}a_n または \textstyle\varliminf_{n \to \infty}a_n と書く.このように有界数列 \{a_n\} は常に上極限 \lambda と下極限 \mu とを有して, \mu \leqq\lambda であるが,それらが一致するときに限って,数列は収束して
\lim_{n \to \infty}a_n =\lambda=\mu.
(I)
上極限 \lambda は次の性質を有する.
(1º)
\lambda よりも大なる \lambda+\varepsilon を取れば,十分大なる n に関して常に a_n<\lambda+\varepsilon
(2º)
\lambda よりも小なる \lambda-\varepsilon を取れば
\lambda-\varepsilon<a_n
なる n が無数にある.
実際, \lambda の定義によって,n が十分大きいとき l_n<\lambda+\varepsilon だから, a_n\leqq l_n<\lambda+\varepsilon .それが (1º) である.また a_p,a_{p+1},\ldots の上限としての l_p の意味によって,任意の p に関して \lambda-\varepsilon\leqq l_p-\varepsilon<a_n,n\geqq p ,なる a_n がある. p は任意だから,このような a_n が無数にある(n の異る a_n は区別していう).それが (2º) である.

上記 (1º)(2º) を換言すれば:

(II)
どんなに \lambda に近いところにも無数の a_n がくる.しかし \lambda よりも大なる \lambda' を取れば,このようなことはない.

あるいは:

(III)
\{a_n\} の部分数列で \lambda に収束するものはあるが, \lambda よりも大なる \lambda' に収束するものはない. \lambda\{a_n\} の上極限というのは,それを示唆するのである.

下極限 \mu に関しては上記 (I)(II)(III) において大小の関係を逆にすればよい.

有界でない数列 \{a_n\} に関しても上極限,下極限を定義することが,応用上便利である.それをなるべく簡明に述べるために,(III) において収束数列の極限として +\infty,-\infty を許容することにする.よって

 
\{a_n\} が上方に有界でないならば \varlimsup a_n=+\infty
 
\{a_n\} が下方に有界でないならば \varliminf a_n=-\infty
 
\{a_n\} が上方に有界で下方に有界でないときには, l_n\to\lambda または l_n\to-\infty に従って \varlimsup a_n=\lambda または \varlimsup a_n=-\infty\{a_n\} が下方に有界で,上方に有界でないときの \varliminf a_n も同様である.

\pm\infty をも入れていえば,任意の数列 \{a_n\} に関して \varlimsup a_n,\varliminf a_n は常に存在するが,それらが一致するときに限って,その共通の値として \lim a_n が存在する.

[例 1]
a_n=\tfrac{(-1)^n n+1}{n},\varlimsup a_n=1,\varliminf a_n=-1.
[例 2]
a_{2n}=1+\tfrac{(-1)^n}{n},a_{2n-1}=\tfrac{(-1)^n}{n} .すなわち数列は -1,0,\tfrac{1}{2},\tfrac{3}{2},-\tfrac{1}{3},\tfrac{2}{3},\ldots で,\varlimsup a_n=1,\varliminf a_n = 0.ここでは,数列中に 1 よりも大きい項も,0 よりも小さい項も無数にある.
[例 3]
 a_n=(-1)^n n.\varlimsup a_n=+\infty,\varliminf a_n=-\infty.
[例 4]
a_n=\cos\,n\alpha (ただし \pi/\alpha は無理数).\varlimsup a_n=+1.\varliminf a_n=-1.

(証明はむつかしいが, \alpha/\pi が無理数ならば,単位円周上の定点 A を起点として同じ向きに長さが n\alpha なる弧 AP_n を取れば,点 P_n は円周上に稠密に分布される).

点列
一次元における数列と同じように,二次元でも,順位を示す各自然数 n に対応して点 P_n=(x_n,y_n) が定められるとき,点列 \{P_n\} が生ずる.

点列 \{P_n\} の極限とは,次の条件に適する定点 A=(a,b) をいう: すなわち,どれほど小なる正数 \varepsilon を取っても,それに対応して番号 n_0 を十分大きく取れば,

n>n_0 なるとき AP_n<\varepsilon
なることをいうのである.そのとき点列 \{P_n\}A に収束するという.
距離 AP_n とは \sqrt{(a-x_n)^2+(b-y_n)^2} をいう(§1.参照).それが \varepsilon よりも小ならば,もちろん |a-x_n|<\varepsilon,|b-y_n|<\varepsilon であるが,逆にこれから AP_n<2\varepsilon を得る.故に P_n\to A
\lim_{n\to\infty}x_n=a,\ \lim_{n\to\infty}y_n=b
にほかならない.

三次元以上でも同様である.点列の収束に関しては,Cauchy の判定法を次のように述べることができる.

点列 \{P_n\} が収束するために必要かつ十分なる条件は,正なる \varepsilon を任意に取るとき,それに対応して自然数 n_0 が定められて,n_0 よりも大なる任意の m,n に関して P_mP_n<\varepsilon なることである.



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