解析概論/第1章/函数

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[編集] 8.函数

区間 [a,b] が与えられたとき,

(1)
a\leqq x\leqq b

なる数 x はこの区間に属するという.もしも我々が x にこの区間に属する任意の数値を与えようと欲するならば,x をこの区間における変数という.そのとき x はこの区間内において自由に変動しうるのである.

今この区間内における変数 x の個々の数値に対応して,それぞれ変数 y の数値を確定すべき或る一つの規準が与えられたと仮定するとき,yx函数といい,特定の函数を示すために特定の文字を用いて

y=f(x),\quad y=F(x)

などと書く.函数 y の値は x の値に伴って変動する.よって x独立変数y従属変数という.

例 1: y=x^2
例 2: y=sin x
例 3: y=sqrt{1-x^2}

上記の場合,函数 y は区間 [a,b] において定義されているから,[a,b] をこの函数の定義区間という.定義区間が (1) のように閉区間ならば,x=a または x=b に対応する y の値は確定であるが,或る場合には,定義区間を開区間

(a,b) \quad a<x<b,

または一方のみ閉じた区間

\begin{align}
{[}a&,b) & &a\leqq x<b,\\(a&,b{]} & &a<x\leqq b
\end{align}

に,または,なお一般に或る集合 S に属する x だけに,限定することもある.それらの差別は厳格に尊重されねばならない.

もしまた xa よりも大なる任意の値を取りうるならば,標語的に区間を

(a,+\infty) \quad a<x<+\infty

と書く.[a,+\infty), (-\infty,a), (-\infty,+\infty) 等も同様である.

次に函数の例二,三を掲げる.

[例 1]
y=x^2 とすれば,y は区間 (-\infty,+\infty) における x の函数である.
[例 2]
y=\sin x も同様.ただし x は弧度法による角の数値である.すなわち‘ラジアン’を単位とする.
[例 3]
y=\sqrt{1-x^2}.平方根は正の値(負でない値)を表わすとすれば,この場合 y は区間 [-1,+1] において x の函数である.

上記の例では,函数が算式に基づいて定義されたのであるが,それは必要でない.また一つの区間の各部分において,相異なる算式によって,一つの函数を定めることもできる.

[例 4]
区間 -1\leqq x<0では y=x+1,また区間 0<x \leqq 1 では y=1-x,x=0 のときは y=1 とすれば,y は区間 [-1,+1] において定義された函数である.
例 4: y=x+1(-1 \leqq x < 0); y=1-x(0 < x \leqq 1) 例 5: y=sign x
[例 5]
y=\mathrm{sign}\,x.これは区間 (-\infty,+\infty) において,次のようにして定められる函数である.すなわち x が正ならば y=+1x が負ならば y=-1x=0 ならば y=0
次の例も上記函数の定義に適合する.
[例 6]
区間 0<x<1 において,x が有理数ならば y=0x が無理数ならば y=+1
[例 7]
区間 0<x<1 に属する x の値を二進法で書き表わして,それを十進法によって読むときの値を y=f(x) とする.ただし,2 の巾を分母とする有理数は有限二進数で書き表わすものとする. 例えば x=\tfrac12 ならば,二進法で x=(0.1).故に f(\tfrac12)=\tfrac1{10}.また x=\tfrac14 ならば,二進法で x=(0.01).故に f(\tfrac14)=\tfrac1{100}.等々.

変数 x の値とそれに対応する函数 y=f(x) の値とを組合せて,点 (x,y) を平面上に取るとき,それらの点の集合(軌跡)は,常用の函数の場合,一つの曲線である.それを函数 f(x) のグラフという.上記の例 1―5 ではグラフを記しておいたが,例 6,7 ではグラフは線として表わすことが困難である.

或る数 a に十分近い x のみに着目して,x の函数 f(x) のグラフを考察する必要が,しばしば生ずる.このような場合,a に十分近い x を,a の近傍に属するという.詳しくいえば,a近傍とは,a を含む開区間 (b,c),\,b<a<c, のことで,その幅 c-b は,臨機,十分小さくとる.

なお,函数には,次のような例もある.

[例 8]
0<x<\infty なる区間において y=\sin\tfrac{1}xx=0 の近傍ではグラフは実際には画ききれない.
[例 9]
x\ne 0 なるとき y=x\sin\tfrac{1}xx=0 なるとき y=0 とすれば,y(-\infty,+\infty) における x の函数である.x=0 の近傍において y のグラフは無限に頻繁に振動するから画ききれない.
例 8: y=sin(1/x) 例 9: y=x sin(1/x)

上記例 69 のような函数は,一見はなはだ奇怪なものであるけれども,函数の定義を本節の初めに述べたように設定する以上,それらが函数の中に加入することを拒むことはできない.いわゆる自縄自縛である.これらの函数,特に例 6,7 などは,実用に適しないけれども,さし当っては,軽率な推理に基因する誤謬を警戒するために,おりおり引用される.実用に適する函数を限定するためには,上記の一般的定義になんらかの制限を加える必要のあることは明白である.

二次元以上,すなわち独立変数が二つ以上ある場合にも,函数の定義は同様である.今二次元に関していえば,一つの点 P=(x,y) に対応して一つの数 z を確定する規準が定められたときに,z(x,y) の函数という.記号は z=f(x,y),あるいは略して z=f(P) など.変数 x,y が取りうる値の範囲には通例或る制限があって,函数 f(P) は或る区域(あるいは点集合)において定義される.

[例 10]
z=ax+by+ca,b,c は定数)とすれば,z(x,y) の函数(一次整函数)である.この場合 x,y の値は無制限でよい.
[例 11]
z=\sqrt{r^2-x^2-y^2} とすれば,z は原点 (0,0) を中心とする半径 r の円(周をも入れていう)内において定まった函数である.
[例 12]
z=xyx,y は無制限.
[例 13]
f(x,y)=\tfrac{2xy}{x^2+y^2}.ただし (x,y)\ne(0,0).しかし,もしも,f(0,0) を例えば 0 と定めるならば,f(x,y)x,y のすべての値に関して定義される.
[例 14]
0\leqq x\leqq 1,0\leqq y\leqq 1 なる区域内において,あるいは P=(x,y)x^2+y^2=1 なる円(それを単位円という)の内部にあるとき,xy も有理数ならば f(x,y)=1,その他の場合には f(x,y)=0

z=f(x,y) が与えられたときに,x,y の値をそれに対応する z の値とを三次元の一点 (x,y,z) で表わすならば,それらの点の集合は,常用の函数の場合には,一つの面を組成する.この面によって函数 z=f(x,y) を幾何学的に表わすことができる.

上記の例 10z=ax+by+c は一つの平面で表わされる.

例 11z=\sqrt{r^2-x^2-y^2} は一つの半球面で表わされる.

例 12zxy は双曲放物面で表わされる.この場合,z に一定の値 k を与えるような (x,y) は一つの等辺双曲線(xy=k)上にある.それを z=k に対応する等位線という.

例 11 では,等位線は原点を中心とする同心円周で,例 10 では,等位線は平行線である.

例 12 における等位線の様子 例 13 における等位線の様子

例 13 では,z=k\,(-1\leqq k\leqq 1)2xy=k(x^2+y^2) なる二直線上の点 (x,y) に対応する.|z|>1 には決してならない.等位線は原点を通る直線である.もちろん原点(x=0,y=0)は除外される.その点は特異である.

例 14 の函数は曲面では表わされない.



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