解析概論/第1章
目次 |
[編集] 第 1 章 基本的な概念
[編集] 1.数の概念
数の概念および四則算法は既知と仮定する[* 1].初めのうちは実数のみを取扱うから一々ことわらない.次の用語は周知である.
等.物の順位または物の集合の個数を示すために用いられる.
等.自然数は正の整数である.
および
,ただし
は自然数.
なるとき,それは整数である.
.無理数を十進数で表わすならば,無限の位数を要し,数字は決して循環しない.
我々が十進法によって数を表わすに至ったのは,手指の数にその原因があるのであろうが,理論上は1以外の任意の自然数を基本として,十進法と同様の方法によって,数を表わすことができる.
特に二進法では,数字は
と
とだけで足りる.有理数を二進法で表わせば,分母が
の巾[* 2]になるもののほかは,循環二進数になる.
![\begin{align}
\frac{5}{8} &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2^3} = (0.101).\\[10pt]
\frac{5}{8} &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2^4} + \frac{1}{2^5} + \cdots = (0.100111\ldots).\\[10pt]
\frac{2}{3} &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2^3} + \frac{1}{2^5} + \cdots = (0.101010\ldots).
\end{align}](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/a/2/0/a20b5ea32e1dfebc5e590e7cd388834e.png)
の上で,
を表わす点
は座標の原点で,また
が半直線
上の点
で表わされるとすれば,
は長さの単位である.一般に
を表す点
は,
が正あるいは負なるに従って,半直線
あるいは
の上にあって,
の長さがすなわち
の絶対値である.それを
と書く.このようにして実数
が点
で表わされるならば,
は
の長さである. 絶対値に関する次の関係は,しばしば引用される.

二つの実数
を一組として,それを
と書くならば,個々の組
と平面上の個々の点
との間に,座標法によって一対一の対応が成立する.このとき
を点
と略称する.通常は直交座標を用いる.
同じように,三つの実数の組
は空間の一点によって表わされる.
なお一般に,
個の実数の一組
を
次元空間の一点といい,それを一つの文字
で表わす.
なるとき

の距離と略称して,それを
と書く.然らば‘三角関係’
が成り立つ.もしも
を固定すれば

は,
を中心とする半径
なる ‘
次元の球’の内部にあるという.もしまた


は
を中心として稜が座標軸に並行で,その長さが
なる‘
次元の立方体’の内部にあるという.
次元空間に関して奇怪な空想をほしいままにする必要はない.しかし,このような表現法が印象を鮮明にすることの効果は,容易に承認されるであろう.[編集] 2.数の連続性
実数に関して前節で述べたことは,誰もが承認することを仮定したのであったが,数の連続性は解析学の基礎であるからそれを説明しなければならない.
すべての数を
の二組に分けて,
に属する各数を
に属する各数よりも小ならしめることができたとするとき,このような組分け
を Dedekind の切断といい,
を下組,
を上組という.
切断
において,どんな数も,もれなく,下組か上組のいずれか一方,しかも一方のみに属するという規約は厳重である[* 1].
今一つの数
を取って,
よりも小なる数をすべて下組に入れ,
よりも大なる数をすべて上組に入れるとする.切断を完成させるためには,
自身も下組または上組に入らなければならないが,もしも
を下組に入れるならば,
は下組の最大数で,そのとき上組に最小数はない.またもし
を上組に入れるならば,
は上組の最小数で,そのとき下組に最大数はない.このように任意の数
を境界とする切断ができるが,重要なのはその逆である.すなわち次の定理が成り立つ.
すなわち切断
が与えられたとき,一つの数
が存在して,
は
の最大数または
の最小数であり,初めの場合には
に最小数はなく,後の場合には
に最大数がないのである.前のように,初めに
を取って,それを境界として切断
を作るのではなく,反対に切断
があるとき,それによって
が決定されるのである.
これが実数の連続性である.今我々はこの定理は承認されたものとして,それを基礎として,理論を組立てることにする.
大小の順序のあるところには切断ができるが,理論上切断の三つの型が可能である.すなわち
Dedekind の定理は実数の切断は (3º) の型に限ることをいうのである.
なる有理数
を上組
とし,その他の有理数
を下組
とすれば,
なる有理数
はないから,
は有理数の切断であるが,それは (2º) の型である.このように有理数だけなら,一つの有理数にも触れないで,それを
の二組に切り離してしまうことができる.このような状態を Dedekind は切断(Schnitt)なる語で示唆したのであろう.
しかし無理数をも入れてしまえば,このような切り離しはできない.実数の範囲内では,切断の切れ目(下組と上組との境界)に必らず実数がある.それが実数の連続性である.
- ↑ ただし,下組
,または,上組
が空虚(空集合)なることは許さない.
[編集] 3.数の集合・上限・下限
或る一定の条件に適合する数の全部を集合という.その条件に適する個々の数はこの集合に属し,またその条件に適しない個々の数はこの集合に属しない.どんな数も,前者か後者か,いずれか一つでなければならない.
,
は定数で,
とするとき
なるすべての
の集合.この集合を閉区間
という.
,
は例2と同様として,
なるすべての
の集合.この集合を開区間
という.
なる有理数
の集合.(もちろん,このような
の全部の集合の意味である.)
なる正の有理数
の集合.
は与えられた函数(例えば多項式),また
,
は与えられた数であるとき
なる
の集合.集合
に属する数がすべて一つの数
よりも大[あるいは小]でないときには,
は上方[あるいは下方]に有界であるといい,
をその一つの上界[あるいは下界]という.上方にも下方にも有界ならば,単に有界という.
集合
に関して,上界または下界は確定でない.すなわち一つの上界よりも大なる数はやはり上界であり,また一つの下界よりも小なる数は下界である.故に集合の限界としては,なるべく小なる上界,および,なるべく大なる下界に興味がある.集合
に最大数があるならば,それは,もちろん上界の中で最小なるものであり,また
に最小数があれば,それは下界の中で最大なるものである.さて次に証明するように,
が有界ならば,最大または最小の数がないときにも,最小の上界および最大の下界が存在する.それらを
の上限または下限という.故に上限,下限は必らずしも
に属する数ではない.すなわち,
に最大数がないときには,上限は
に属しない.下限も同様である.
再言すれば,集合
の上限
とは次の条件 1, 2 に適合する数である.
に属するすべての数
に関して
.
とすれば,
なる或る数
が
に属する.上記 (1º) は
が
の上界であること,(2º) は
よりも小なる上界のないことを意味する.故に上限すなわち最小上界である.
下限に関しては不等号の向きを反対にすればよい.
例 1 の集合は上下共に有界でない.
例 2,3 の集合は有界で,
が下限,
が上限である.例2では,上限も下限も集合に属するが,例3では,上限も下限も集合に属しない.
例 4 の集合は有界であるが,最大数も最小数もなく,
が上限,
が下限である.
例 5 の集合は上方に有界でないが,下方には有界で,
が下限である.
以上,上限下限の意味を述べたが,次にその存在の証明をする.
が上方[または下方]に有界ならば
の上限[または下限]が存在する[Weierstrass の定理].
は下方に有界であると仮定して,下限の存在を証明しよう.
の一つの下界を
とすれば,
よりも小なる数はやはり
の下界である.よって
の下界でありうる数の全部を
組とし,その他の数の全部を
組とすれば,一つの切断が生ずる.実際,
組に属する数は
の下界でありえない数だから,それは,どんな下界よりも大でなければならない.従って
組に属する数よりも大である.
この切断によって確定される数を
とする.然らば
は
に属して
の最大数であるか,あるいは
は
に属して
の最小数であるか,いずれか一つである(定理1).
さて,
は
に属するであろうか.
かりに
が
に属するとすれば,
は
の下界でありえないのだから,
よりも小で,しかも
に属する数がある.その一つを
とする.すなわち
.
と
との中間にある一つの数を
とする.すなわち
.
然らば
は
に属する数
よりも大であるから,
の下界ではない.すなわち
に属する.しかも,その
が
よりも小であるから,これは矛盾である.
故に
は
の最小数ではありえない.
故に
は
の最大数,すなわち
の最大下界,すなわち
の下限である.
が上方に有界なるとき,上限の存在することも,同じように証明される.
[編集] 4.数列の極限
のように,無数の数を一定の順序に並べたものを数列という.その項
は自然数の範囲内において変動する変数
の‘函数’である.この函数が確定したときは,数列を
と書く.さて
が限りなく増大するとき,
が一定の数
に限りなく近づくならば,数列
は
に収束(あるいは収斂)するといい,また
を 
の極限という.記号では

または見やすく
のとき 
と書く.詳しくいえば,任意の正数
が与えられたとき,それに対応して一つの番号
が
なるとき 
なるように定められるのである.
数列
が収束するとき,その極限
は一意的に確定する.それは定義によって明白であろう.
もしも,どれほど大きい正数
を取っても,それに対応して
なるとき 
なる
があるならば,記号
を用いて,標語的に
または 
と書く.
または 
も同様である[* 1].
上記の定義によれば,収束する数列の若干項を取り去っても,そのあとに無数の項が残留すれば,同一の極限値に収束する.簡単にいえば
または
で表わされる場合も同様である.
これとは反対に,収束しない数列の部分数列が収束することは可能である.
例えば
のとき,その部分数列
は1に収束し,
は
に収束する.数列の各項
が絶対値において一定の数を超えないとき,その数列は有界であるという. 有界なる数列は必らずしも収束しない(例
). しかし,収束数列は有界で,その極限値も同じ限界を出ない.すなわち:
ならば,
なる定数
がある.そうして 
を取る.然らば仮定によって
なるとき
, すなわち 
がある.そこで

個の数のどれよりも大なる一つの数を
とすれば,
でも,
でも
.それが定理の初めの部分である. 次に
,
とする.もしも,かりに
とするならば,
なる数
がある.然らば
.これは
に矛盾する.故に
.
から
は得られない.例えば
.
のとき,或る数
があって,すべての
に関して
ならば
である.
このことは,ことわりなしに,しばしば用いられるであろう.証明は,定理4の証明後段と同様である.
とする.(1º),(2º) は明白であろう.さて

(定理4)とすれば,

を十分大きくすれば,右辺はどれほどでも小さくなる.故に
.すなわち (3º) である. (4º) を証明するには,手数を省くために,まず



.また
だから,或る番号以上は
,従って

を十分大きくすれば,右辺,従って左辺も,どれほどでも小さくなる.すなわち (4º) が証明されたのである.定理 3,4,5 では数列が収束することを仮定したのであるが,逆に一つの数列が与えられたときに,それが収束するか,しないかを判定する方法は,後に述べるであろう.ここでは最も基本的なる単調数列だけを片づけて置く.

のように,各項がその番号と共に増大する数列
を単調に増大するという.もしもこの数列が有界ならば,すべての
に関して
なる定数
がある.すなわち,
の集合は有界である.今,その上限を
とする(定理2)ならば,
は数列
の極限である.なぜなら,今
とすれば,上限の定義によって
なる
があるが,数列は単調に増大するのだから,
のとき
.しかるに,すべての
に関して
であるから,
なるとき,
,従って
.
は
よりも小なる任意の数であったから
.もちろん
である.
単調増大の意味を拡張して(不減少),
としても,同様である.
が全部
で,
のようになる場合も生ずる.その場合には,これらの相等しい値が極限
である.そうしても極限の定義の文字には抵触しない.単調減少に関しても同様である.総括して:
単調数列が有界でないならば,増大の場合には
,減少の場合には
.これは明白である.
次に一,二の例を掲げる.
ならば,
.
とする.然らば
.また
.故に
は単調減少で,1が一つの下界である.従ってそれは
なる極限値を有する.今かりに
とするならば,
とするとき
で,
,従って
.右辺は
と共に限りなく増大するから,これは不合理である.故に
.
のときは明白.
,
ならば,
のとき
.
とする.
と置けば,
.故に
,
のとき,第三辺は限りなく増大するから,
.
とする.
だから明白.
とする.
だから
.故に1.によって任意に
を取るとき,十分大なる
に関して
従って ![\frac{a^n}{n^k}= \left[\frac{(a^\frac{1}{k})^n}{n} \right] ^k> M^k >M.](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/9/d/a/9da196fd75fcf53b9366e4b9b33e23ad.png)
.
ならば
.
なる一つの自然数
を取って
と書く.然らば
のとき
.故になお
とすれば,
.
ならば,
.
と置けば,
.そのとき
,
とすれば,仮定によって一つの番号
よりも大きい
に関して
.さて
の最大のものを
とすれば,
なるとき
.
を十分大きく取って,
を
よりも小ならしめれば,
.
は任意だから,これは 0 に収束する.
の定義)

の代りに
を取れば,右辺において各項が増大して,かつ項数が増すから,数列
は単調に増大する.しかも上記の等式から見えるように

は,単調に増大して,かつ有界であるから,収束する.古典数学では,それの極限値をもって
なる数の定義とした.- ↑ このような記法は標語的にのみ使用する.すなわち‘極限値がある’というとき,その極限値は
または
ではないとする.それらをも入れていうときには,特別にことわる.
[編集] 5.区間縮小法
において,(1º) 各区間
がその前の区間
に含まれ,(2º)
が限りなく増すとき,区間
の幅
が限りなく小さくなるとすれば,これらの各区間に共通なるただ一つの点が存在する.この定理によって一つの数(各区間に共通なる数)を確定することを,区間縮小法という.

は単調でかつ有界である.よって

に関して
だから,
のとき
,従って
のとき
(7 頁[注意]). さて仮定 (2º) によって,任意の
に対応して,

が存在する.然らば

.
は任意だから
. 任意の
に関して
だから,
は各区間
に属する.
以外に各区間に共通なる数の存在しないことは仮定 (2º) によって明白である.
この定理において,区間
を閉区間として,
の両端
が
に属すると仮定した.この仮定は必要である.
は開区間
に属するとは限らないから,
が閉区間でなければ,上記証明は拘束力を失うであろう.実際,区間の左端(または右端)がすべて同一の点なる場合には,その点がすなわち
である.
以上において,実数の連続性に関する四つの基本的定理を述べた.すなわち
我々は (I) を公理のように取扱って,(I) から (II) を導き,次に (II) から (III) を,また (III) から (IV) を導いたが,これらの定理は,実は,同等である.すなわち四つの定理の中の任意の一つを承認すれば,他の定理はそれから導かれる.それを示すためには,(IV) を仮定して (I) を証明すればよい.
今
を実数の切断とする.我々の目標は定理 7 を仮定して,下組
に最大数があるかあるいは上組
に最小数があるか,いずれか一方,しかもただ一方のみの可能性を証明することである.
から一対の数
を取り出して,区間
を
と名づける.さて
は
と
との中間にあるが,それは
または
のいずれか一方に属しなければならない.
が
に属するか,または,
に属するかに従って,
: または 
と置けば,区間
の左端は
に属し,右端は
に属する.区間
は区間
の左半または右半で,その幅は
である.
同様にして区間
の左半または右半を
とすれば,
は
に属し,
は
に属して,
.
このような操作を継続すれば,区間の列
![I_n=[a_n,b_n],\quad b_n-a_n=\frac{1}{2^n}(b-a)](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/d/5/2/d526798ebfc716b7089127f5cb31f725.png)
を得るが,それは定理 7 の条件に適合するものである.そこで定理 7 に従って,この区間列によって定められる確定の数を
とすれば,
は切断
の下組または上組に属しなければならない.
今
とする[* 2].然らば
なる
を取れば,
によって
なる
が存在するから,
は
に属する.すなわち
は
に属して,
よりも大なる
はすべて
に属する.換言すれば
は
の最大数である.このとき,
に最小数はない.――もしも,かりに
を
の最小数とするならば
,従って上記のように
なる
が存在する.しかも
は
に属するから,これは不合理である.
もしも
ならば,全く同様にして,
が
の最小数で,
に最大数がないことが示される.
すなわち,定理 7から Dedekind の定理が導かれたのである.
[編集] 6.収束の条件 Cauchy の判定法
が収束するために必要かつ十分なる条件は,任意の
に対応して番号
が定められて,
なるとき 
とすれば,収束の意味によって,

が定められる.従って
. 定理の核心は条件が十分なることである.まずこの条件から数列
が有界であることがでてくる.実際,上記条件に従って,一つの
に
が対応するとすれば,
なるとき


より大きい番号に関しては
は有界である.
は確定だから,有限個の数
をつけ加えても,
は有界である. よって今任意の
に関して,
の上限および下限をそれぞれ
として,
と置けば,


に
が対応して,
なるとき

とすれば,上限の意味により,任意の
に対して
.従って,下限の意味により


が存在する.然らば

は区間
に属するから,十分大なる
に関して,

の有界性だけから導かれたのであった.(1) において,単調数列
は収束する.その極限を
とするとき,
を有界数列
の上極限(limes superior)といい,それを記号
あるいは見やすく
で表わす.同様に
を
の下極限(limes inferior)といい,
または
と書く.このように有界数列
は常に上極限
と下極限
とを有して,
であるが,それらが一致するときに限って,数列は収束して

は次の性質を有する.
よりも大なる
を取れば,十分大なる
に関して常に
.
よりも小なる
を取れば

が無数にある.
に近いところにも無数の
がくる.しかし
よりも大なる
を取れば,このようなことはない.あるいは:
の部分数列で
に収束するものはあるが,
よりも大なる
に収束するものはない.
を
の上極限というのは,それを示唆するのである.下極限
に関しては上記 (I),(II),(III) において大小の関係を逆にすればよい.
有界でない数列
に関しても上極限,下極限を定義することが,応用上便利である.それをなるべく簡明に述べるために,(III) において収束数列の極限として
を許容することにする.よって
が上方に有界でないならば
,
が下方に有界でないならば
,
が上方に有界で下方に有界でないときには,
または
に従って
または
.
が下方に有界で,上方に有界でないときの
も同様である.
をも入れていえば,任意の数列
に関して
は常に存在するが,それらが一致するときに限って,その共通の値として
が存在する.

.すなわち数列は
で,
.ここでは,数列中に
よりも大きい項も,
よりも小さい項も無数にある.
(ただし
は無理数).
(証明はむつかしいが,
が無理数ならば,単位円周上の定点
を起点として同じ向きに長さが
なる弧
を取れば,点
は円周上に稠密に分布される).
に対応して点
が定められるとき,点列
が生ずる.
点列
の極限とは,次の条件に適する定点
をいう: すなわち,どれほど小なる正数
を取っても,それに対応して番号
を十分大きく取れば,
なるとき 
は
に収束するという.
三次元以上でも同様である.点列の収束に関しては,Cauchy の判定法を次のように述べることができる.
点列
が収束するために必要かつ十分なる条件は,正なる
を任意に取るとき,それに対応して自然数
が定められて,
よりも大なる任意の
に関して
なることである.[編集] 7.集積点
数の場合と同様に,二次元以上でも,或る一定の条件に適合する点の全部を一つの点集合という.集合に属するすべての点
の各座標
が有界なるとき,点集合を有界という.そのとき,集合の点はすべて一定の有限範囲内にある.例えば一次元ならば一定の区間内,二次元ならば一定の正方形内または一定の円内にある,等々.
一つの集合
に関して或る点
が集積点であるとは,点
にどれほど近いところにも
に属する点が無数にあることをさしていう.ただし
が集合
に属するというのではない.
を任意の有理数として,点
の集合を
とすれば,すべての点
は集積点である. なぜならば,
または
が有理数であっても,無理数であっても,任意の
に対して
なる有理数
が無数にあるから.
を任意の自然数として,点
の集合を
とすれば,
が集積点である.一般に,集積点の集積点は,やっぱり集積点である.
に含まれる数
の集合を
とする.数列
の中に,同じ数
が無数に繰り返して出て来る場合には,
は
の集積点であるとは限らない.これに反し,
に同じ数が無数に含まれることがなければ,
が
に収束することは,
が有界で
が
の唯一の集積点であることと同等である.またその場合,
は,それぞれ
の最大,最小の集積点にほかならない.
は有界だから,その点はすべて辺が軸に平行なる一つの正方形
に含まれると考えてよい.正方形
に
の無数の点が含まれるから,今
を四つの正方形に等分するならば,それらのうち少くとも一つは
の無数の点を含む(内部または周上に,以下同様).その一つを
とする.そのような正方形が二個以上あるとき,明確を欲するならば,象限順で最初のものを取ることにすればよい.さて
が
に属する点を無数に含むから,
を四つの正方形に等分すれば,それらのうち少くとも一つ
は,必らず
の点を無数に含まなければならない.このようにして行けば,
なる正方形の一列が生じて,
のとき,
の辺は限りなく小さくなる.
今一般に
の四つの頂点の中で左下のもの(各座標が最小なるもの)を
とするならば,



(定理 6)
は集積点である.
なぜならば,今
を中心とするどれほど小さな円を取ってみても,十分大なる或る番号以上は,
がすべてその円に含まれる.然るに
は
の点を無数に含むのだから,どれほど
に近いところにも,
の点が無数に存在する.
上記の例 2 では,
は原点を一つの頂点とし,両軸上に長さ
の辺を置く正方形としてよい.然らば
は
軸または
軸に接するものに限る.
が集合
の集積点ならば,
から
に収束する点列
を取り出すことができる.実際,
を
とは異なる
の任意の点として,
から
の
以内の距離にある
の点を
とする.
は集積点だから,そのような点は必らず存在する.同様に
なる点
を取れば,
だから,点列
は
に収束する.
の上限
が
に属しないならば,上限の意味から,
は
の集積点である.故に上記によって,
から
に収束する数列
を取り出すことができる.
が
に属するときは,
とすれば,数列
は
に収束する.いずれにしても,
の上限に収束する数列を
から取り出すことができる.下限についても同様である.
が有界ならば,
の部分点列
(番号
は自然数の一部分)を適当に取り出して,点列
が収束するようにすることができる.実際,
を点
の集合とすれば,
が無数の点の集合のときには,定理 9によって
の集積点が存在するから,
の一つの集積点に収束する
の部分点列
を上記と同様の方法で取り出せばよい.また,もし
が有限個の点の集合ならば,点列
の中に,同じ点
が無数に出てくるから,
なる部分点列
を取り出せばよい.
に関する集積点は必らずしも
に属する点ではないが,もしも,すべての集積点が
に属するならば,
を閉集合という.
例えば閉区間
,または二次元では,周をも入れた円または正方形などは閉集合を成す.
が閉集合でないときに,
に集積点をつけ加えて集合
を作れば,それは閉集合である:
の集積点の集積点は,やはり
の集積点であるからである.
この注意によって,区間縮小法を次のように拡張することができる.
において

が限りなく増大するとき,
の径が限りなく小さくなる
に共通する点がただ一つ存在する.
の径が限りなく小さくなるとは,
が限りなく小さくなる円に含まれるというのと同じことである.
から任意にそれぞれ点
を取り出したとする.然らば (1º) によって
は
に属するから,(2º) によって点列
は Cauchy の収束条件を満たす.よって
の極限を
とする.或る番号から先の
がことごとく同じ点であるときには,
で
は
に属する.その他の場合には,
は閉集合
の点
の集積点だから,
は,やはり,
に属する.
は任意だから,
はすべての集合
に共通である.さて,これらの集合に共通なる点がただ一つに限ることは,仮定 (2º) によって明らかである.
を覆うならば,
はすでに,それらの円の中の有限個だけで覆われる[Heine-Borel の被覆定理].ここで
を覆うというのは,
に属する各点が,これらの円のどれかの内部にあることをいう.
を含む一つの正方形
を取って,それを四つの小正方形に等分するとき,それらの小正方形(辺をも入れていう)のうちの少くとも一つに属する
の部分集合に関して,定理は真でない[* 1].(さもなければ,
において定理が真!)この部分閉集合を
,それを含む小正方形を
とする.同様の操作を繰り返して,閉集合の無限列
を得るが,それらは,それを含む小正方形と共に限りなく小さくなるから,
に属する一点
を共有する(定理 10).
が
に属するから,
は与えられた円の中の或る一つの内部に含まれる.故に十分大きい
に対して
は,それを包む小正方形
と共に全くこの円内に入る.これは
に関する約束(
において定理が真でないこと)に矛盾する.故に定理を承認せざるをえない.
が閉集合であるという仮定が重大である.さもなければ,
が
に属することがでてこない.また
の各点が円の内部に含まれることが肝要である.
が円の周上にあるのでは,
をどれほど大きくしても,
従って
が全くは円内に入らないかも知れないから,証明が拘束力を失うであろう[* 2].[編集] 8.函数
区間
が与えられたとき,

なる数
はこの区間に属するという.もしも我々が
にこの区間に属する任意の数値を与えようと欲するならば,
をこの区間における変数という.そのとき
はこの区間内において自由に変動しうるのである.
今この区間内における変数
の個々の数値に対応して,それぞれ変数
の数値を確定すべき或る一つの規準が与えられたと仮定するとき,
を
の函数といい,特定の函数を示すために特定の文字を用いて

などと書く.函数
の値は
の値に伴って変動する.よって
を独立変数,
を従属変数という.
上記の場合,函数
は区間
において定義されているから,
をこの函数の定義区間という.定義区間が (1) のように閉区間ならば,
または
に対応する
の値は確定であるが,或る場合には,定義区間を開区間

または一方のみ閉じた区間
![\begin{align}
{[}a&,b) & &a\leqq x<b,\\(a&,b{]} & &a<x\leqq b
\end{align}](http://upload.wikimedia.org/wikisource/ja/math/0/6/0/0607328be8576a6b512d51ac5fdf9212.png)
に,または,なお一般に或る集合
に属する
だけに,限定することもある.それらの差別は厳格に尊重されねばならない.
もしまた
が
よりも大なる任意の値を取りうるならば,標語的に区間を

と書く.
等も同様である.
次に函数の例二,三を掲げる.
とすれば,
は区間
における
の函数である.
も同様.ただし
は弧度法による角の数値である.すなわち‘ラジアン’を単位とする.
.平方根は正の値(負でない値)を表わすとすれば,この場合
は区間
において
の函数である.上記の例では,函数が算式に基づいて定義されたのであるが,それは必要でない.また一つの区間の各部分において,相異なる算式によって,一つの函数を定めることもできる.
において,
が有理数ならば
,
が無理数ならば
.
に属する
の値を二進法で書き表わして,それを十進法によって読むときの値を
とする.ただし,
の巾を分母とする有理数は有限二進数で書き表わすものとする. 例えば
ならば,二進法で
.故に
.また
ならば,二進法で
.故に
.等々.変数
の値とそれに対応する函数
の値とを組合せて,点
を平面上に取るとき,それらの点の集合(軌跡)は,常用の函数の場合,一つの曲線である.それを函数
のグラフという.上記の例 1―5 ではグラフを記しておいたが,例 6,7 ではグラフは線として表わすことが困難である.
或る数
に十分近い
のみに着目して,
の函数
のグラフを考察する必要が,しばしば生ずる.このような場合,
に十分近い
を,
の近傍に属するという.詳しくいえば,
の近傍とは,
を含む開区間
のことで,その幅
は,臨機,十分小さくとる.
なお,函数には,次のような例もある.
上記例 6―9 のような函数は,一見はなはだ奇怪なものであるけれども,函数の定義を本節の初めに述べたように設定する以上,それらが函数の中に加入することを拒むことはできない.いわゆる自縄自縛である.これらの函数,特に例 6,7 などは,実用に適しないけれども,さし当っては,軽率な推理に基因する誤謬を警戒するために,おりおり引用される.実用に適する函数を限定するためには,上記の一般的定義になんらかの制限を加える必要のあることは明白である.
二次元以上,すなわち独立変数が二つ以上ある場合にも,函数の定義は同様である.今二次元に関していえば,一つの点
に対応して一つの数
を確定する規準が定められたときに,
を
の函数という.記号は
,あるいは略して
など.変数
が取りうる値の範囲には通例或る制限があって,函数
は或る区域(あるいは点集合)において定義される.
(
は定数)とすれば,
は
の函数(一次整函数)である.この場合
の値は無制限でよい.
とすれば,
は原点
を中心とする半径
の円(周をも入れていう)内において定まった函数である.
.
は無制限.
.ただし
.しかし,もしも,
を例えば
と定めるならば,
は
のすべての値に関して定義される.
なる区域内において,あるいは
が
なる円(それを単位円という)の内部にあるとき,
も
も有理数ならば
,その他の場合には
.
が与えられたときに,
の値をそれに対応する
の値とを三次元の一点
で表わすならば,それらの点の集合は,常用の函数の場合には,一つの面を組成する.この面によって函数
を幾何学的に表わすことができる.
上記の例 10,
は一つの平面で表わされる.
例 11,
は一つの半球面で表わされる.
例 12,
は双曲放物面で表わされる.この場合,
に一定の値
を与えるような
は一つの等辺双曲線(
)上にある.それを
に対応する等位線という.
例 11 では,等位線は原点を中心とする同心円周で,例 10 では,等位線は平行線である.
![]() |
![]() |
例 13 では,
は
なる二直線上の点
に対応する.
には決してならない.等位線は原点を通る直線である.もちろん原点(
)は除外される.その点は特異である.
例 14 の函数は曲面では表わされない.
[編集] 9.連続的変数に関する極限
点
の函数
が或る区域内において定義されているとする.そのとき
がこの区域内において変動して,限りなく一つの定点
に近づくとき,それに伴って
が限りなく一定の値
に近づくならば,
を
における
の極限という.記号では
のとき 
または二次元を例に取って
とすれば,

詳しくいえば,
を任意に取るとき,それに対応して
を定めて
なるとき 
ならしめることをうるのである[* 1].
このような極限に関しても,定理 5 と同様なる定理が成り立つこと明白である.すなわち
のとき ならば, |
(ただし ). |
極限値としての
の意味も,数列の場合と同様である.
次の二つの例は基本的だから,周知であろうけれども,一応述べて置く.

は
が自然数なるとき
として定義されたのであったが(§4,[例 5]),連続的変数
に関しても標記の等式が成り立つのである.
(
は自然数)とすれば,


のとき,第一辺と第三辺とは極限値
に収束する(定理 5).故に任意の
に対して一つの正数
を取って,
なるとき

なるとき




半径
なる円において弧
を張る弦が
であるから,これは弧,従って弦が限りなく小さくなるとき,弦と弧との比の極限が
に等しいというのである.これは弧長の定義(後述,§40)からの当然の帰結であるが,通常次のように説明する.
として証明をすれば十分である.さて
なるときは

の長さは,弧に内接する折線の長さの上限として定義されるから,それは弦
よりも大で,折線
よりも小である.
から,
.故に
を用いて
.故に (1) から標記の関係を得る.
連続的変数に関しても,Cauchy の収束条件は適用される.それを説明するために,まず次の考察をする.
とするならば,
に収束する任意の点列
,に関して
なることは明白である.さて逆に
に収束するすべての点列
,に関して
が収束すると仮定する.然らば
は点列
の選択に無関係な一定の値を有するであろう.なぜなら,もしも
のとき 
のとき 
と
とを合併して作られる点列(例えば
)を
と書けば,
も
に収束するから,仮定によって
も収束する.その極限を
とする.然らば
も
も
の部分数列であるから,
(定理 3).従って
,すなわち極限値
は一定である.
に関して,
が任意に
に近づくとき,

が存在して任意の
に対して
でかつ 
が存在することである.然らば
に対応して

が存在するはずである.さて (3) によれば点列
は
に収束するが,
は
に収束しない.これは不合理である.故に (2) が成り立つ.
さて Cauchy の収束条件は次のように述べられる.
が存在するために必要かつ十分なる条件は
に
が対応して
なるとき 
実際,この条件の下において,
,を
に収束する任意の点列とすれば,
は収束する(定理 8).故に (2) によって
は存在する.条件が必要なることは明白であろう.
が限りなく定点
に近づくとき,
の上極限,下極限が,数列の場合と同様に定義される.今
なる点
に対応する
の値の全体を
の値域と名づける.
が小さくなれば,値域は減縮するから,値域の上限
は単調に減少(不増大)し,下限
は単調に増大(不減少)する.
のときそれらの極限
が,それぞれ上極限,下極限である.記号で書けば[* 2]

に収束する任意の点列
,から生ずる数列
の上極限の上限,下極限の下限がそれぞれ
に等しい.
は
が限りなく
に近づくとき,
がついには上越しえない最小限界で,
は
がついには下越しえない最大限界である.
上限,下限として
をも許すならば,
は常に確定する.
が一致すれば,その共通の値はすなわち
である.[編集] 10.連続函数
或る区域内において,変数
が連続的に変動するに伴って連続的に変動する函数
,すなわち,いわゆる連続函数が応用上重要である.
変数
が限りなく一つの値
に近づくとき,
もまた限りなく
に近づくならば,
は
なる点において連続であるという.故に
が
なる点において連続であるとは
のとき 
であることにほかならない.常例の型で,いわゆる
式にいえば: 正なる
が任意に与えられたとき,それに対応して正なる
を適当に取って
なるとき 
ならしめうるのである.
或る区域の各点において連続なる函数を,その区域において連続という.
或る点で連続なる函数の和,差,積,商はその点において連続である.ただし商に関しては分母がその点で
にならないとする.点の代りに区間といっても同様である.例えば
が区間内の一点
において連続なるとき,
とすれば,
および
は
の函数として各点で連続だから,それから四則によって生ずる
の有理函数は,分母が
になる点を除けば,連続である. 三角函数
は
において連続である.今
についていえば,
と置いて

のとき
.
も同様である.故に
は
すなわち
(
は奇数)ならば,連続である.
その他の初等函数に関しては,後に至って適当なる機会において述べるであろう.
§8 に掲げた函数の中で,例 4 は
において連続である.
なる点が目立つけれども,連続函数の定義に従えば,連続性を認めざるをえない.例 9,
も同様である.例 5,
は
においてだけ不連続である.例 6 は各点において不連続である.時としては
が増大しつつ(左から)
に近づく場合,あるいは
が減少しつつ(右から)
に近づく場合において,
の極限を考察することがある.その極限を
(左から),
(右から)なる記号で表わすのが簡便である.
を示唆するために
と略記するのである.例えば

同様の意味で記号

を用いる.それらは
が左から,あるいは,右から
に近づくときの
の極限を表わす.
次のグラフでは

これらは
とは別の物であるが,もしも
ならば,
は
において左へ連続であるといい,またもし
ならば右へ連続であるという.左へも右へも連続なるときがすなわち前に述べた意味の連続である.
が閉区間
で連続であるというときには,
においては右へ,また
においては左へ連続であることを意味する.
が開区間
において定義されているとき,もしも
が確定ならば,それを
として
の定義を
にまで拡張すれば,
は
において右へ連続になる.
なる式は
のとき意味を有しないが,
である.故に
として
の定義を補なえば
は
において連続になる.このような‘式の欠点’から生ずる不連続は補正されたものと,みなすことが,多くの場合,適切である.例えば
において
,等々.
が単調増大(すなわち
なるとき
,または広義において
)なるとき,
を定義区間内の一点とすれば
も
も確定で
.
もしも
ならば,
もそれに等しいから
は
において連続であるが,
ならば,もちろん,不連続である.単調減少の場合も同様.
とすれば二進法では
.それを十進法で読めば
または
である.従って

(
は奇数)において同様の現象がある(跳びは
).これは不連続点が稠密に分布されている単調函数の一例である.
は
より大として,指数
が有理数なるときには,
の意味と性質は既知とする.今
を一つの無理数とし,
を単調に増大しつつ
に収束する任意の有理数列とすれば,
は単調に増大するが,それは有界である.すなわち,
を
より大なる有理数とすれば,
.故に
は極限値を有するが,その極限値は数列
の選択に無関係である(22 頁).その極限値を無理数
に関する
の定義とする.然らば上記の
に関して
であるが,ここで等号はない.(なぜなら,
なる有理数
を取れば
だから.)故に
.同様にして,
が
より小なる有理数ならば
.このようにして,すべての実数
に関して定義された函数
は単調増大である.すなわち
ならば
.それは
または
が有理数である場合にはすでにわかったのであるが,
および
が無理数ならば,
たる有理数
を取れば
.
が単調増大であることが知れた上は,前頁の記号を用いるために
と置けば,
が確かめられたときに,
すなわち
の連続性が証明される.そのために
なる有理数
を取る(
は任意の自然数).然らば
で,
.この差は
を十分大きく取れば,どれほどでも小さくなる(§4,[例 1]).さて
だから
でなければならない.
の場合も同様で,この場合
は単調減少な連続函数である.また
ならば,
.
を証明するには極限による.
を有理数列
とすれば,
.さて有理指数に関しては
は既知で,
のとき左辺の極限は
,右辺の極限は
.従って
.同様にして
,
も証明される.(最後の式の証明は,
[
は有理数]の連続性を用いて,
において,まず
とする.)二つ以上の変数の函数に関しても,連続性の定義は同様である.
今二次元の場合についていえば,平面上の或る区域で函数
が定義されているとして,
がその区域に属する定点
に限りなく近づくとき,
が限りなく
に近づくならば,
は
において連続であるという.例の通り
式でいえば,
がその区域に属して
のとき 
が与えられて後に
が定められるのである.
或る区域に属する各点で連続なる函数をその区域で連続であるという.
が連続ならば,
に一定の値を与えるとき,それは
の連続函数になり,また
に一定の値を与えるとき,
の連続函数になる.これの逆は真でない. 例えば
以外では
.また
(§8,[例 13])とすれば,
は
または
の一方のみに関しては連続であるが,双方の函数としては
において不連続である.実際,点
が
なる直線上において
に近づくとすれば,
の値は常に
である.故に
は
において連続でない.[編集] 11.連続函数の性質
が,この区間に属する点
において相異なる値
を有するとき,
の中間にある任意の値を
とすれば,
は
の中間の或る点
において,この
なる値を取る.すなわち

が存在する.
として証明する.
と置けば,
.
は
において連続で,
だから,
の或る近傍では
.故に
において常に
なる
が存在する.しかし
だから
.故にこのような
に上限がある.それを
とすれば,
でなければならない.もしも,かりに
とすれば,上記の区間
は
を超えて延長されるであろう.それは
の意味に反する.またもし
とすれば,十分小なる
に関して
で
の右端は
を超えない.それも
の意味に反する.故に
,すなわち
.さて
であったが,
だから
でなければならない.
において
が連続で,
に属する点
において
とする.今
内において
を一つの連続曲線
(例えば折線
)で連結して,
はこの線上を動くとする.この線上任意の一点を起点として
までの長さを
とすれば,
上において
は変数
の連続函数である.それを
とする.今点
に対応する
の値を
とすれば
で,
なる
において
.すなわち
に対応する曲線
上の一点
において
.もちろん
は
の中間の値である.次に述べる定理は各次元に関して成立するけれども,たいていは一次元または二次元に関して説明する.変数の区域は閉じたものとする.すなわち境界をも入れていう.一次元ならば閉区間である.
において連続なる函数
は有界で,かつその区域において最大および最小の値に到達する.
における
.
が上界を有しないとする.然らば
なる点
がある.同様に
なる点
,
なる点
,等々がある.
は,無数の相異なる点で,
は有界なる閉区域だから,
において集積点を有する(定理 9).その一つを
とする.さて
の部分列で,
に収束するものを取って,それを
とする(15 頁参照).然らば
.然るに
で,
は限りなく大きくなるのだから,これは不合理である.故に
は上界を有する.下界も同様.
よって
における
の値の上限,下限を
とする.定理の後の部分は
において
なる点
が存在することである.
もしも
において
とするならば,
は
において連続である.然るに
はどのようにも小さくなるから,
は有界でない.それは不合理である.故に
において,
なる点
がある.
は
よりも大きくはならないから,
が最大値である.最小値も同様.
定理 12,13 を総括していえば,閉区域における連続函数の値域は閉区間
である.
において,
は連続とする.正なる
が任意に与えられたとき,それに対応して正なる
があって,区域
の任意の点
に関して
なるとき 
に属する一点
を固定すれば,
は
において連続だから
なるとき 
があるが,
が変動すれば,
も変わるであろうから,それを明示するために,
の代りに
と記したのである[* 1].然るに定理は
の位置にかかわらず,一定の
をもって (1) が成り立つというのである.故にそれを連続の一様性という[* 2].
における
の連続性として,(1) が成り立つことを要望するのは,自然であるが,一点
における
の連続性を (2) のようにいい表わすのは技巧的である.然るに我々は各点
における‘原子的’の連続性をもって,区域
における連続性を定義した.このような暫定的の定義によって,はたして上記の要望が満たされるであろうか.そこに問題があるのだが,少なくとも有界なる閉区域に関しては,我々は然りと答えうるのである.
に属する点
を中心として半径
の円を画いて,その周上および内部の点の集合を
と名づける.円
は区域
の外に跨る場合もあろう.よって,
の点の中で,
にも属する点の集合を
とする.
は有界なる閉集合だから(16 頁脚註),定理 13 によって,
における函数
の最大値と最小値が存在する.その差を,その円
に関する
の振動量といい,それを
と書く.然らば
を固定すれば,
が増大するに従って,
も増大(不減少)する.いま,閉集合
に関する
の振動量を
とする.もしも,
ならば定理は明白である.よって,
のときに証明をする.そのとき
なる
に上限がある.それを
とする.
は
の函数だからそれを
と書けば,
である.実際,
は
において連続だから,十分小なる
をとれば,
に属する任意の二点
に関し


.それは,
を意味する.すなわち,
.
さて
は連続函数であることを示そう.今円
の内部に
に属する点
を取って,
を通る直径
を引く.
を中心とし
よりも小なる半径を有する円は
の内部にあるから,その中における
の振動量は
よりも小である.従って
.また
を中心として,
よりも大なる半径を有する円は
を内部に含むから,その中における
の振動量は
よりも小でない(さもなければ
が拡大される).従って
.さて
だから


は連続である. 有界なる閉区域
において連続なる
は最小値を有する(定理 13).それを
とすれば,
だから,
で
.すなわち
なるとき
.
[編集] 12.区域・境界
区域,境界などという語を上文しばしば用いたが,ここで少しくその意味を明確にして置こう.以下述べることは,各次元に通用するが,一次元ないし三次元を連想して考えればよい.
に属する一つの点
に十分近い点がすべて
に属するとき,
を
の内点という.
に属しない点
に十分近い点が,一つも
に属しえないとき,
を
の外点という.
に属しない点の全体を
の余集合という.それを
と書くならば,
の外点はすなわち
の内点である.
は
自身である.よって
と
とは互に余集合であるという.
の内点でも外点でもない点の全体を
の境界という.故に
を境界の点とすれば,どのように
に近いところにでも,
に属する点もあり,また
に属しない点,すなわち
に属する点もある.(ただしこれは
自身をも入れていう.)
この定義に従えば,
の境界は同時に
の境界である.境界の点は
と
とに分属する.(といってもすべて
に属し,またはすべて
に属することもある.)
が空間のすべての点の集合である場合を除けば,
は内点または外点を一つも有しないことはあるが,境界点は必らず存在する.――実際,点
は
に属し,
は
に属するとして,線分
上の点を考察すれば,まず
が
の内点でないならば,
がすでに境界点である.もしまた
が
の内点ならば,線分
上で,
に十分近い点はすべて
の内点である.今
上で,線分
の点がすべて
の内点であるような点
に着眼して,
の長さを
とするならば,
は
に属しないのだから,
に上限がある.それを
として
とすれば,
は境界点である.
一例として
を平面上の有理点(すなわち座標
が共に有理数なる点)の集合とすれば,平面上の各点が
の境界の点である.内点,外点は一つもない.
の各点が内点であるとき,
を開集合という.
の集積点がすべて
に属するとき,
を閉集合ということはすでに述べた(§7).
互に余集合なる二つの集合
の中一つが開集合ならば,外の一つは閉集合である.
開集合は空間の次元に関係する.例えば,平面上では,一つの円の内部(内部の点の全体の集合)は開集合である.しかし三次元空間における点集合としては,それは一つの内点をも有しない.それとは違って,閉集合は次元に関係しない.例えば円周をも入れていえば,円は三次元空間においても閉集合である.円周だけでも,すでに閉集合である.開集合,閉集合は反対語ではない.
集合
の内点全部の集合を
の開核(または核)という.それをかりに
と書くならば,
は開集合で,しかも
に含まれる最大の開集合である.
また
の集積点で
に属しないものがあれば,それを
に合併して生ずる集合を
の閉包という.それをかりに
と書けば,
は閉集合,しかも
を含む最小の閉集合である.
から
を除いた残りはすなわち
の境界である.
の部分集合
が
を満たすとき,
は
の中に稠密に分布しているという.例えば,有理数全体の集合は,実数全体の集合の中に稠密に分布している.
にそれぞれ属する点
の間の距離の下限を集合
の距離という.すなわち距離を記号
で表わせば
が有界で共通点を有しないならば,
の境界上の或る点
において
.
なる点列
がある(15 頁[注意 1]).そこで,
は有界だから,点列
から収束する部分点列
を抽き出せば(15 頁[注意 2]),
.今度は
の中から,同様にして,収束する部分点列
を抽き出せば[* 2],
.さて,
とすれば,
は
に関して連続であるから,
.従って
.このような
は
の内点ではありえない.(もしも
が
の内点ならば,仮定によって,
に共通点はないから,
で,線分
の上に,
なる点
があるであろう.)然るに
の点列
が
に収束するから,
は
の外点ではありえない.すなわち
は
の境界点である.同様に
は
の境界点である.
特に
が有界なる閉集合ならば
.この場合,
に共通点がないならば,
.
集合
のどちらかが閉集合でなければ,共通点がなくても
なることがある.(例えば
が互に余集合なるとき.)
と書けば,

が有界ならば,
の境界上の二点
において

開集合は,それが共通点を有しない二つの開集合に分割されえないときに,連結されているという.
連結された開集合を領域という.領域は開集合だから,境界点を含まないが,領域にそれの境界点を付け加えた点集合,すなわち領域の閉包を閉域という.
を領域とすれば,
に属する任意の二点を
に属する連続線(例えば線分または折線)で連結することができる.
内の一点
に,
内の連続線で結ばれる点と,結ばれない点とがあれば,それらは別々に開集合を作るであろう.)閉集合も同様で,それが共通点を有しない二つの閉集合に分割されえないときに,連結されているという.連結されている閉集合が少なくとも二点を含むとき,それを連続体という.
二次元以上でも,点
を含む任意の領域(または一般に開集合)を点
の近傍というが,近傍の径は,適宜,十分小さくとる.
を開集合,
を
の一点とすれば,
は内点だから,
は
を含む或る開区間を含む.そのような区間の左端の下限を
,右端の上限を
とすれば,
は開区間
を含む.開区間
は一つの領域である.ただし
,または
なる場合もある.もしも
が
に含まれない点
を含むならば,
は
を含む開区間
を含み,
と
とは共通点を有しない.ただしその端が一致することは可能である.例えば
.そのとき
は
に属しないのだから,
と
とは連結されていない.すなわち
は一個以上または無数の共通点を有しない開区間の合併である.
が閉集合で,内点を有するならば,それを含む閉区間
が
に属して,
は無数の互に隔離した閉区間を含みうるが,
はまた孤立する点をも含みうる.その場合,それらの孤立点の集積点があれば,それも含まねばならない.
の内部(
)を
とすれば,
は領域であるが,
から
なる縦線上の点を除けば,残りの
は開集合であるが,連結が失われて,無数の領域に分割される. もしも
軸の下側において,正方形
(
)を
に付け加えて,それからさらに点
,を除いた集合
を作れば,連結が回復されて一つの領域が生ずる.
の境界は
の外周と
から除いた縦線(下端をも入れて)上の点である.
の左辺(
)の点は
の境界であるが,そこへは領域内からは到達されない.すなわち,それらの点を内点のみを通る線で一つの内点と連結することができない.境界論はやっかいである.然らば曲線とは何をいうか.我々は解析学において便宜上幾何学的の用語を使うけれども,空間的の直観を論理の根拠とはしないつもりだから,このような問題が生ずる.
今かりに次のように曲線の定義を立ててみる(二次元).
媒介変数
は閉区間
において変動し,
は
の連続函数なるとき,点
の軌跡が一つの曲線である.起点
と終点
とを連結する一つの曲線である.
我々が直観的に連続なる線[* 3]と考えるものは皆この定義に適合するが,逆は真でない.すなわち,この定義に適合するものをすべて線というならば,意外なものが線の名の下に包括されてしまう.(自縄自縛!)
まず
の相異なる値に同一の点
が対応することが可能である.そのような点を重複点と名づけよう.しからば,上記の定義の下においては,重複回数が無限なる重複点も可能であり,また重複点が無数にあることも可能である.実際 Peano(1890)は,重複点が無数にあることも許されるとして,一つの正方形の内部の各点をすべて洩れなく通過する曲線の実例を作って,当時の数学会を驚かせた.このような曲線は迷惑である.上記の定義は曲線の定義として,あまりに広範に過ぎるのである.
そこで,上記の定義に,重複点の存在を許さないという制限を付け加えて,そのような曲線を Jordan 曲線という.然らば Jordan 曲線とは,その点が一つの線分(
)上の点と一対一に,かつ連続的に,対応する点集合である.それは線分の位相的写像というものである.もしも,区間の両端
に対応する点のみが一致するときは,Jordan 閉曲線という.それは一つの円周の位相的写像である.
二次元においては,Jordan 閉曲線は平面を内外の二領域に分割して,それらの二領域に共通なる境界を成すものである.(その証明は存外むずかしい.)
この後,本書で取扱う二次元の区域は大概 Jordan 閉曲線を境界とするものに限るが,なお我々はその曲線に多大の制限(接線の存在,接線の連続的変動等々)を加える.
三次元以上では,区域の境界はいっそうむずかしくなる.しかし球や立方体は簡明で,それらを適当に活用すれば,応用の範囲は存外に広いのである.[編集] 練習問題(1)
とすれば,数列
は同一の極限値に収束する.この極限値を
の算術幾何平均という(Gauss).
,一般に
とすれば,
が存在する.
のとき,
,と置けば,
なる円に内接,外接する辺数
の正多角形の周の長さを
と書いて,
とすれば,
で,極限
.故に
または
として,
の近似値が求められる.これは円周率
の素朴なる計算法の整理である.ただし収束は,はなはだ緩慢である.
に関して

または
は
で置き換えられない.例:
和の代りに差,積,商を取ればどうか.
が無理数ならば,
,
が有理数(
は既約分数で,
)ならば,
とする.このようにして区域
において定義される函数
の連続性はどうであるか
が有理数ならば,
において不連続.
が無理数ならば,
において連続
が小数
桁までの十進数(すなわち
で
は
で割れない整数)なるとき,
で,その他の
に対しては
とするならば,結果は同様である.
は
において連続とする.もしも
内に稠密に分布されている点
において(例えば
が有理数なるとき)
と
が相等しい値を取るならば,
のすべての点
において
.
二次元以上でも同様である.
は或る区間
の有理数
に関してのみ定義されていて,かつ連続の条件を満足するとする.すなわち
式でいえば
なるとき,
.そのとき,
の定義を拡張して区間
において連続なる函数が得られるであろうか? (例: 25 頁に述べた
の拡張.)
のみに関係して
に関係しない
が存在すること)である.25 頁で,
に関しては単調性を用いたが,今度は Cauchy の判定法を用いる.
は
で連続で
ならば
.(Cauchy)
に
を代用すれば
なる場合に帰して,幾分か簡単になる.一例として
が挙げられる.
は区域
における連続函数で,
が区域
に属するとき,
は区域
に属するとする.また,
は区域
における連続函数とする.然らば,
は区域
における連続函数である.
要約すれば,連続函数の連続函数は連続函数である.二次元以上でも同様である.
| この日本を法管轄とする文書は、著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の死亡した日の属する年の翌年から起算して50年を経過したものであるため、日本の著作権法第51条及び57条の規定により著作権の保護期間が満了しています。 |
は
の最大の値を表わす記号.同様に
は最小の値を示す.



とする.
ならば
,故に
,従って
(
または
は‘
だから,
.それが
の上限としての
の意味によって,任意の
,なる
をいう(
であるが,逆にこれから
を得る.故に 
では
,また区間
では
のときは
とすれば,
.これは区間
,
なる区間において
.
なるとき
,



ならば,
(ただし
).
が正数であることを一々ことわらないこともある.
は上限(
は
なる
は下限(
また
とも書く.それらは最小上界(
, 故に
. (
は 

は点
は
の一部分である.
のとき,
と置けば,
.ただし
(
が
において,
平面上の有界なる区域で,