解析概論/第1章

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目次

[編集] 第 1 章 基本的な概念

[編集] 1.数の概念

数の概念および四則算法は既知と仮定する[* 1].初めのうちは実数のみを取扱うから一々ことわらない.次の用語は周知である.

自然数
1, 2, 3 等.物の順位または物の集合の個数を示すために用いられる.
整数
0, \pm1, \pm2 等.自然数は正の整数である.
有理数
0 および \pm\frac{a}{b},ただし a,b は自然数.b=1 なるとき,それは整数である.
無理数
有理数以外の実数.例えば
\begin{align}
 \sqrt{2} &= 1.4142135\ldots,\\
        e &= 2.718281828\ldots,\\
      \pi &= 3.1415926535\ldots,
\end{align}
(ただし,それらが有理数でないことは証明を要する.)
十進法
実数を十進法で表すことも周知である.有理数を十進法で表わせば,数字は有限か,または無限ならば循環小数になる.ただし,有限位数の十進数を循環小数の形に表わすこともできる.例えば 0.6=0.5999....無理数を十進数で表わすならば,無限の位数を要し,数字は決して循環しない.

我々が十進法によって数を表わすに至ったのは,手指の数にその原因があるのであろうが,理論上は1以外の任意の自然数を基本として,十進法と同様の方法によって,数を表わすことができる.

特に二進法では,数字は 01 とだけで足りる.有理数を二進法で表わせば,分母が 2 の巾[* 2]になるもののほかは,循環二進数になる.

[例]
\begin{align}
 \frac{5}{8} &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2^3} = (0.101).\\[10pt]
 \frac{5}{8} &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2^4} + \frac{1}{2^5} + \cdots = (0.100111\ldots).\\[10pt]
 \frac{2}{3} &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2^3} + \frac{1}{2^5} + \cdots = (0.101010\ldots).
\end{align}
数の幾何学的表現
解析学では便宜上自由に幾何学の術語を流用する.例えば座標法によって実数を直線上の点で表現する.その方法は周知である.直線 XX' の上で,0 を表わす点 O は座標の原点で,また 1 が半直線 OX 上の点 E で表わされるとすれば,OE は長さの単位である.一般に x を表す点 P は,x が正あるいは負なるに従って,半直線 OX あるいは OX' の上にあって,OP の長さがすなわち x の絶対値である.それを |x| と書く.このようにして実数 x,x' が点 P,P' で表わされるならば,|x-x'|PP' の長さである. 絶対値に関する次の関係は,しばしば引用される.
|x| + |x'| \geqq |x+x'| \geqq |x| - |x'|.
これも周知である.

二つの実数 x,y を一組として,それを (x,y) と書くならば,個々の組 (x,y) と平面上の個々の点 P との間に,座標法によって一対一の対応が成立する.このとき (x,y) を点 P と略称する.通常は直交座標を用いる.

同じように,三つの実数の組 (x,y,z) は空間の一点によって表わされる.

なお一般に,n 個の実数の一組 (x_{1},x_{2},\ldots,x_{n})n 次元空間の一点といい,それを一つの文字 P で表わす.

P=(x_{1},x_{2},\ldots,x_{n}),P'=(x_{1}',x_{2}',\ldots,x_{n}') なるとき
\sqrt{(x_{1}-x_{1}')^2 + (x_{2}-x_{2}')^2 + \cdots + (x_{n}-x_{n}')^2}
なる数を P,P' の距離と略称して,それを PP' と書く.然らば‘三角関係’ PP' + P'P'' \geqq PP'' が成り立つ.もしも P を固定すれば
PP'^2=(x_{1} - x_{1}')^2 + (x_{2} - x_{2}')^2 + \cdots + (x_{n} - x_{n}')^2 < \delta
なる点 P' は,P を中心とする半径 \delta なる ‘n 次元の球’の内部にあるという.もしまた
|x_{1} - x_{1}'| < \delta,\quad |x_{2} - x_{2}'| < \delta,\quad \ldots ,\quad |x_{n} - x_{n}'| < \delta,
いい換えれば
\mathrm{Max}( |x_{1} - x_{1}'|, \ldots, |x_{n} - x_{n}'|) < \delta
ならば[* 3]P'P を中心として稜が座標軸に並行で,その長さが 2\delta なる‘n 次元の立方体’の内部にあるという.
我々は言語の短縮を欲するために,上記のような幾何学的の表現法を用いるのであるから,文字に拘泥して,n 次元空間に関して奇怪な空想をほしいままにする必要はない.しかし,このような表現法が印象を鮮明にすることの効果は,容易に承認されるであろう.

  1. 付録(I)を参照.
  2. 巾は冪の仮字(和算の用例による).
  3. \mathrm{Max}(a_{1},a_{2},\ldots,a_{n})a_{1},a_{2},\ldots,a_{n} の最大の値を表わす記号.同様に \mathrm{Min} は最小の値を示す.


[編集] 2.数の連続性

実数に関して前節で述べたことは,誰もが承認することを仮定したのであったが,数の連続性は解析学の基礎であるからそれを説明しなければならない.

すべての数を A,B の二組に分けて,A に属する各数を B に属する各数よりも小ならしめることができたとするとき,このような組分け (A,B)Dedekind切断といい,A を下組,B を上組という.

切断 (A,B) において,どんな数も,もれなく,下組か上組のいずれか一方,しかも一方のみに属するという規約は厳重である[* 1]

今一つの数 s を取って,s よりも小なる数をすべて下組に入れ,s よりも大なる数をすべて上組に入れるとする.切断を完成させるためには,s 自身も下組または上組に入らなければならないが,もしも s を下組に入れるならば,s は下組の最大数で,そのとき上組に最小数はない.またもしs を上組に入れるならば, s は上組の最小数で,そのとき下組に最大数はない.このように任意の数 s を境界とする切断ができるが,重要なのはその逆である.すなわち次の定理が成り立つ.

定理 1.
実数の切断は,下組と上組を境界として,一つの数を確定する[Dedekindの定理].

すなわち切断 (A,B) が与えられたとき,一つの数 s が存在して,sA の最大数または B の最小数であり,初めの場合には B に最小数はなく,後の場合には A に最大数がないのである.前のように,初めに s を取って,それを境界として切断 (A,B) を作るのではなく,反対に切断 (A,B) があるとき,それによって s が決定されるのである.

これが実数の連続性である.今我々はこの定理は承認されたものとして,それを基礎として,理論を組立てることにする.

大小の順序のあるところには切断ができるが,理論上切断の三つの型が可能である.すなわち

(1º)
下組に最大数があり,同時に上組に最小数がある.約言すれば,下組と上組の間に飛び(leap)がある.
(2º)
下組に最大数がなく,かつ上組に最小数がない.すなわち下組と上組の間に途切れ(gap)がある.
(3º)
下組または上組に端(最大または最小)があって,他の一方には端がない.すなわち下組と上組は連続している.

Dedekind の定理は実数の切断は (3º) の型に限ることをいうのである.

整数の範囲内では,切断は (1º) の型に限る.有理数の範囲内では,二つの有理数の中間に必ず他の有理数がある(有理数の稠密性)から,(1º) の型の切断は不可能であるが,一方 (2º) の型の切断が可能である.例えば b>\sqrt{2} なる有理数 b を上組 B とし,その他の有理数 a を下組 A とすれば, s=\sqrt{2} なる有理数 s はないから,(A,B) は有理数の切断であるが,それは (2º) の型である.このように有理数だけなら,一つの有理数にも触れないで,それを A,B の二組に切り離してしまうことができる.このような状態を Dedekind は切断(Schnitt)なる語で示唆したのであろう.

しかし無理数をも入れてしまえば,このような切り離しはできない.実数の範囲内では,切断の切れ目(下組と上組との境界)に必らず実数がある.それが実数の連続性である.


  1. ただし,下組 A,または,上組 B が空虚(空集合)なることは許さない.


[編集] 3.数の集合・上限・下限

或る一定の条件に適合する数の全部を集合という.その条件に適する個々の数はこの集合に属し,またその条件に適しない個々の数はこの集合に属しない.どんな数も,前者か後者か,いずれか一つでなければならない.

[例 1]
すべての有理数の集合.条件は有理数なることである.
[例 2]
a, b は定数で,a<b とするとき a\leqq x\leqq b なるすべての x の集合.この集合を閉区間 [a,b] という.
[例 3]
a, b は例2と同様として,a<x<b なるすべての x の集合.この集合を開区間 (a,b) という.
[例 4]
x^2<2 なる有理数 x の集合.(もちろん,このような x の全部の集合の意味である.)
[例 5]
x^2>2 なる正の有理数 x の集合.
[例 6]
f(x) は与えられた函数(例えば多項式),また a, b は与えられた数であるとき a<f(x)<b なる x の集合.

集合 S に属する数がすべて一つの数 M よりも大[あるいは小]でないときには, S は上方[あるいは下方]に有界であるといい, M をその一つの上界[あるいは下界]という.上方にも下方にも有界ならば,単に有界という.

集合 S に関して,上界または下界は確定でない.すなわち一つの上界よりも大なる数はやはり上界であり,また一つの下界よりも小なる数は下界である.故に集合の限界としては,なるべく小なる上界,および,なるべく大なる下界に興味がある.集合 S に最大数があるならば,それは,もちろん上界の中で最小なるものであり,また S に最小数があれば,それは下界の中で最大なるものである.さて次に証明するように, S が有界ならば,最大または最小の数がないときにも,最小の上界および最大の下界が存在する.それらを S の上限または下限という.故に上限,下限は必らずしも S に属する数ではない.すなわち, S に最大数がないときには,上限は S に属しない.下限も同様である.

再言すれば,集合 S上限 a とは次の条件 1, 2 に適合する数である.

(1º)
S に属するすべてのx に関して x\leq a
(2º)
a'<a とすれば, a'<x なる或るxS に属する.

上記 (1º)aS の上界であること,(2º)a よりも小なる上界のないことを意味する.故に上限すなわち最小上界である.

下限に関しては不等号の向きを反対にすればよい.

例 1 の集合は上下共に有界でない.

例 23 の集合は有界で, a が下限, b が上限である.例2では,上限も下限も集合に属するが,例3では,上限も下限も集合に属しない.

例 4 の集合は有界であるが,最大数も最小数もなく,\sqrt{2} が上限, -\sqrt{2} が下限である.

例 5 の集合は上方に有界でないが,下方には有界で, \sqrt{2} が下限である.

以上,上限下限の意味を述べたが,次にその存在の証明をする.

定理 2.
数の集合 S が上方[または下方]に有界ならば S の上限[または下限]が存在する[Weierstrass の定理].
[証]
まずは S は下方に有界であると仮定して,下限の存在を証明しよう.

S の一つの下界を a とすれば, a よりも小なる数はやはり S の下界である.よって S の下界でありうる数の全部を A 組とし,その他の数の全部を B 組とすれば,一つの切断が生ずる.実際, B 組に属する数は S の下界でありえない数だから,それは,どんな下界よりも大でなければならない.従って A 組に属する数よりも大である.

この切断によって確定される数を s とする.然らば sA に属して A の最大数であるか,あるいは sB に属して B の最小数であるか,いずれか一つである(定理1).

さて, sB に属するであろうか.

かりに sB に属するとすれば, sS の下界でありえないのだから, s よりも小で,しかも S に属する数がある.その一つを x とする.すなわち x<s

xs との中間にある一つの数を b とする.すなわち x<b<s

然らば bS に属する数 x よりも大であるから, S の下界ではない.すなわち B に属する.しかも,その bs よりも小であるから,これは矛盾である.

故に sB の最小数ではありえない.

故に sA の最大数,すなわち S の最大下界,すなわち S の下限である.

S が上方に有界なるとき,上限の存在することも,同じように証明される.


[編集] 4.数列の極限

a_1, a_2, \cdots , a_n, \cdots のように,無数の数を一定の順序に並べたものを数列という.その項 a_n は自然数の範囲内において変動する変数 n の‘函数’である.この函数が確定したときは,数列を \{a_n\} と書く.さて n が限りなく増大するとき,a_n が一定の数 \alpha に限りなく近づくならば,数列 \{a_n\}\alpha収束(あるいは収斂)するといい,また \alphaa_n

極限という.記号では

\lim_{n\to\infty}a_n = \alpha ,

または見やすく

n\to\infty のとき a_n\to\alpha

と書く.詳しくいえば,任意の正数\varepsilonが与えられたとき,それに対応して一つの番号 n_0

n > n_0 なるとき |\alpha - a_n| < \varepsilon

なるように定められるのである.

数列 \{a_n\} が収束するとき,その極限 \alpha は一意的に確定する.それは定義によって明白であろう.

もしも,どれほど大きい正数 R を取っても,それに対応して

n > n_0 なるとき a_n > R

なる n_0 があるならば,記号 \infty を用いて,標語的に

\lim_{n\to\infty} a_n = \infty または a_n\to\infty

と書く.

\lim_{n\to\infty} a_n = -\infty または a_n\to-\infty

も同様である[* 1]

上記の定義によれば,収束する数列の若干項を取り去っても,そのあとに無数の項が残留すれば,同一の極限値に収束する.簡単にいえば

定理 3.
収束数列の部分数列は,もとの極限値に収束する.
極限が \infty または -\infty で表わされる場合も同様である.

これとは反対に,収束しない数列の部分数列が収束することは可能である.

例えば a_n = (-1)^n のとき,その部分数列 a_2, a_4, \cdots は1に収束し,a_1, a_3, \cdots-1 に収束する.

数列の各項 a_n が絶対値において一定の数を超えないとき,その数列は有界であるという. 有界なる数列は必らずしも収束しない(例 a_n = (-1)^n). しかし,収束数列は有界で,その極限値も同じ限界を出ない.すなわち:

定理 4.
a_n\to\alpha ならば,|a_n| < M なる定数 M がある.そうして |\alpha| \le M
[証]
一つの正数 \varepsilon を取る.然らば仮定によって
n > p なるとき |\alpha - a_n| < \varepsilon, すなわち \alpha - \varepsilon < a_n < \alpha + \varepsilon
なる自然数 p がある.そこで
|a_1|, |a_2|, \cdots , |a_p|, |\alpha - \varepsilon|, |\alpha + \varepsilon|
なる p+2 個の数のどれよりも大なる一つの数を M とすれば,n \le p でも,n > p でも |a_n| < M.それが定理の初めの部分である. 次に a_n\to\alpha|a_n| < M とする.もしも,かりに |\alpha| > M とするならば,|\alpha| > M' > M なる数M'がある.然らば |\alpha - a_n| > M' - M > 0.これは a_n \to \alpha に矛盾する.故に |\alpha| \le M
(証終)

|a_n| < M から |\alpha| < M は得られない.例えば a_n = 1 - \tfrac{1}{n} < 1, \alpha = 1

[注意] 
a_n\to\alpha のとき,或る数 M があって,すべての n に関して a_n \le M ならば \alpha \le M である.

このことは,ことわりなしに,しばしば用いられるであろう.証明は,定理4の証明後段と同様である.

定理 5.
\{a_n\}, \{b_n\} が収束するとき,
(1º)
\lim_{n\to\infty} (a_n+b_n) = \lim_{n\to\infty} a_n + \lim_{n\to\infty} b_n.
(2º)
\lim_{n\to\infty} (a_n-b_n) = \lim_{n\to\infty} a_n - \lim_{n\to\infty} b_n.
(3º)
\lim_{n\to\infty} (a_n b_n) = (\lim_{n\to\infty} a_n)(\lim_{n\to\infty} b_n).
(4º)
\lim_{n\to\infty} \frac{a_n}{b_n} = \cfrac{\lim_{n\to\infty} a_n}{\lim_{n\to\infty} b_n}.

ただし,(4º) においては \textstyle b_n \neq 0, \lim_{n\to\infty} b_n \neq 0 とする.

[証]
a_n\to\alpha, b_n\to\beta とする.(1º)(2º) は明白であろう.さて
\alpha\beta - a_n b_n = (\alpha - a_n)\beta + a_n(\beta - b_n)
そこで |\beta| < M, |a_n| < M定理4)とすれば,
|\alpha\beta - a_n b_n| \le M(|\alpha - a_n| + |\beta - b_n|)
n を十分大きくすれば,右辺はどれほどでも小さくなる.故に a_n b_n \to \alpha\beta.すなわち (3º) である. (4º) を証明するには,手数を省くために,まず
(4')
\lim_{n\to\infty} \frac{1}{b_n} = \frac{1}{\beta}
を証明するがよい.そうすれば (3º) によって
\lim_{n\to\infty} a_n\cdot\frac{1}{b_n} = \alpha\cdot\frac{1}{\beta}
を得る.それが (4º) である.さて
\frac{1}{\beta} - \frac{1}{b_n} = \frac{b_n - \beta}{\beta b_n}.
仮定によって |\beta| > 0.また b_n\to\beta だから,或る番号以上は |b_n| > \tfrac12 |\beta|,従って
\left|\frac{1}{\beta} - \frac{1}{b_n}\right| \le \frac{2|b_n - \beta|}{|\beta|^2}.
n を十分大きくすれば,右辺,従って左辺も,どれほどでも小さくなる.すなわち (4º) が証明されたのである.

定理 345 では数列が収束することを仮定したのであるが,逆に一つの数列が与えられたときに,それが収束するか,しないかを判定する方法は,後に述べるであろう.ここでは最も基本的なる単調数列だけを片づけて置く.

a_1<a_2<a_3<\cdots<a_n<\cdots

のように,各項がその番号と共に増大する数列 \{a_n\} を単調に増大するという.もしもこの数列が有界ならば,すべての n に関して a_n<M なる定数 M がある.すなわち, a_n の集合は有界である.今,その上限を \alpha とする(定理2)ならば, \alpha は数列 \{a_n\} の極限である.なぜなら,今 \alpha'<\alpha とすれば,上限の定義によって \alpha'<a_p\leqq\alpha なる a_p があるが,数列は単調に増大するのだから, n>p のとき \alpha'<a_n.しかるに,すべての n に関して a_n\leqq\alpha であるから, n>p なるとき, \alpha'<a_n\leqq\alpha,従って |\alpha-a_n|<\alpha-\alpha'\alpha'\alpha よりも小なる任意の数であったから a_n\to\alpha.もちろん a_n\leqq M である.

単調増大の意味を拡張して(不減少), a_1\leqq a_2\leqq\cdots\leq a_n\leqq\cdots としても,同様である.

そうすれば,或る番号以上 \leqq が全部 = で,a_p=a_{p+1}=\cdots=a_n=\cdots のようになる場合も生ずる.その場合には,これらの相等しい値が極限 \alpha である.そうしても極限の定義の文字には抵触しない.

単調減少に関しても同様である.総括して:

定理 6.
有界なる単調数列は収束する.

単調数列が有界でないならば,増大の場合には a_n\to +\infty,減少の場合には a_n\to -\infty.これは明白である.

次に一,二の例を掲げる.

[例 1]
a>0 ならば,\textstyle\lim_{n\to\infty}\sqrt[n]{a}=1
[証]
(1º)
a>1 とする.然らば \sqrt[n]{a}>1.また \sqrt[n]{a}>\sqrt[n+1]{a}.故に \{\sqrt[n]{a}\} は単調減少で,1が一つの下界である.従ってそれは \alpha\leqq 1 なる極限値を有する.今かりに \alpha >1 とするならば, \alpha-1>h>0 とするとき \alpha>1+h で, \sqrt[n]{a}>1+h,従って a>(1+h)^n>nh.右辺は n と共に限りなく増大するから,これは不合理である.故に \alpha=1
(2º)
a<1 ならば a'=\tfrac{1}{a}>1,故に \sqrt[n]{a'}\to 1,従って \sqrt[n]{a}\to 1定理 5,(4º)).
(3º)
a=1 のときは明白.
[例 2]
a>1, k>0 ならば, n\to\infty のとき \tfrac{a^n}{n^k}\to\infty
[証]
(1º)
k=1 とする. a=1+h と置けば, h>0.故に
a^n=(1+h)^n=1+nh+\frac{n(n-1)}{2}h^2+\cdots>\frac{n(n-1)}{2}h^2,
\frac{a^n}{n}=\frac{(1+h)^n}{n}>(n-1)\frac{h^2}{2}.
故に,n\to\infty のとき,第三辺は限りなく増大するから,\tfrac{a^n}{n}\to\infty
(2º)
k<1 とする.\tfrac{a^n}{n^k}>\tfrac{a^n}{n}\quad(n>1) だから明白.
(3º)
k>1 とする. a>1 だから a^{1\over{k}}>1.故に1.によって任意に M>1 を取るとき,十分大なる n に関して
\frac{(a^{1\over{k}})^n}{n}>M, 従って \frac{a^n}{n^k}= \left[\frac{(a^\frac{1}{k})^n}{n} \right] ^k> M^k >M.
故に \tfrac{a^n}{n^k}\to\infty
[例 3]
a>0 ならば \textstyle\lim_{n\to\infty}\frac{a^n}{n!}=0
[証]
k>2a なる一つの自然数 k を取って \tfrac{a^k}{k!}=C と書く.然らば n>k のとき \tfrac{a^n}{n!}=C\tfrac{a}{k+1}\tfrac{a}{k+2}\cdots\tfrac{a}{n}<\tfrac{C}{2^{n-k}}=\tfrac{C\cdot 2^k}{2^n}<\tfrac{C\cdot 2^k}{n}.故になお n>\tfrac{C\cdot 2^k}{\varepsilon} とすれば,\tfrac{a^n}{n!}<\varepsilon
(証終)
[例 4]
a_n \to\alpha ならば, \tfrac{a_1+a_2+\cdots+a_n}{n}\to\alpha
[証]
a_n=\alpha+b_n と置けば,b_n\to 0.そのとき
\frac{a_1+a_2+\cdots+a_n}{n}=\alpha+\frac{b_1+b_2+\cdots+b_n}{n},
故に
\frac{b_1+b_2+\cdots+b_n}{n}\to 0
なることを示せばよい.\varepsilon >0 とすれば,仮定によって一つの番号 k よりも大きい n に関して |b_n|<\varepsilon.さて |b_1|, |b_2|, \cdots, |b_k| の最大のものを A とすれば,n>k なるとき
\left|\frac{b_1+b_2+\cdots+b_n}{n}\right|<\frac{Ak+\varepsilon(n-k)}{n}<\frac{Ak}{n}+\varepsilon.
n を十分大きく取って,\tfrac{Ak}{n}\varepsilon よりも小ならしめれば,
\left|\frac{b_1+b_2+\cdots+b_n}{n}\right|<2\varepsilon.
\varepsilon は任意だから,これは 0 に収束する.
[例 5]
e の定義)
a_n=\left(1+\frac{1}{n}\right) ^n
とすれば,二項定理によって
\begin{align}
a_n &= 1+\frac{n}{1!}\frac{1}{n}+\frac{n(n-1)}{2!}\frac{1}{n^2}+\frac{n(n-1)(n-2)}{3!}\frac{1}{n^3}+\cdots+\frac{1}{n^n}\\
&= 1+1+\frac{1-\frac{1}{n}}{2!}+\frac{\left(1-\frac{1}{n}\right)\left(1-\frac{2}{n}\right)}{3!}+\cdots+\frac{\left(1-\frac{1}{n}\right)\cdots\left(1-\frac{n-1}{n}\right)}{n!}.
\end{align}
n の代りに n+1 を取れば,右辺において各項が増大して,かつ項数が増すから,数列 \{a_n\} は単調に増大する.しかも上記の等式から見えるように
\begin{align}
a_n &< 1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\cdots+\frac{1}{n!}\\
&< 1+1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2^2}+\cdots+\frac{1}{2^{n-1}}<3.
\end{align}
すなわち \{a_n\} は,単調に増大して,かつ有界であるから,収束する.古典数学では,それの極限値をもって e なる数の定義とした.

  1. このような記法は標語的にのみ使用する.すなわち‘極限値がある’というとき,その極限値は+\inftyまたは-\inftyではないとする.それらをも入れていうときには,特別にことわる.


[編集] 5.区間縮小法

定理 7.
閉区間 I_n=[a_n,b_n]\, (n=1,2,\ldots) において,(1º) 各区間 I_n がその前の区間 I_{n-1}に含まれ(2º) n が限りなく増すとき,区間 I_n の幅 b_n-a_n が限りなく小さくなるとすれば,これらの各区間に共通なるただ一つの点が存在する.

この定理によって一つの数(各区間に共通なる数)を確定することを,区間縮小法という.

[証]
仮定 (1º) によって
a_1\leqq a_2\leqq\cdots\leqq a_n\leqq\cdots\cdots\leqq b_n\leqq\cdots\leqq b_2\leqq b_1.
すなわち数列 \{a_n\}, \{b_n\} は単調でかつ有界である.よって
\lim a_n=\alpha, \quad \lim b_n=\beta
が存在する(定理 6).さて任意の m, n に関して a_n<b_m だから,n\to\infty のとき \alpha\leqq b_m,従って m\to\infty のとき \alpha\leqq\beta7 頁[注意]). さて仮定 (2º) によって,任意の \varepsilon>0 に対応して,
b_n-a_n<\varepsilon
なる n が存在する.然らば
a_n\leqq\alpha\leqq\beta\leqq b_n
から,
0\leq\beta-\alpha<\varepsilon.
\varepsilon は任意だから \alpha=\beta. 任意の n に関して a_n\leqq\alpha\leqq b_n だから,\alpha は各区間 I_n に属する.\alpha 以外に各区間に共通なる数の存在しないことは仮定 (2º) によって明白である.
(証終)

この定理において,区間 I_n を閉区間として, I_n の両端 a_n, b_nI_n に属すると仮定した.この仮定は必要である.\alpha は開区間 (a_n,b_n) に属するとは限らないから,I_n が閉区間でなければ,上記証明は拘束力を失うであろう.実際,区間の左端(または右端)がすべて同一の点なる場合には,その点がすなわち \alpha である.

以上において,実数の連続性に関する四つの基本的定理を述べた.すなわち

(I)
Dedekind の定理(定理 1).
(II)
Weirstrass の定理(上限または下限の存在,定理 2).
(III)
有界な単調数列の収束(定理 6).
(IV)
区間縮小法(定理 7).

我々は (I) を公理のように取扱って,(I) から (II) を導き,次に (II) から (III) を,また (III) から (IV) を導いたが,これらの定理は,実は,同等である.すなわち四つの定理の中の任意の一つを承認すれば,他の定理はそれから導かれる.それを示すためには,(IV) を仮定して (I) を証明すればよい.

四つの基本的定理

(A,B) を実数の切断とする.我々の目標は定理 7 を仮定して,下組 A に最大数があるかあるいは上組 B に最小数があるか,いずれか一方,しかもただ一方のみの可能性を証明することである.

A, B から一対の数 a, b を取り出して,区間 [a,b]I_0 と名づける.さて \tfrac{a+b}{2}ab との中間にあるが,それは A または B のいずれか一方に属しなければならない.\tfrac{a+b}{2}A に属するか,または,B に属するかに従って,

a_1=\frac{a+b}{2}, b_1=b: または a_1=a, b_1=\frac{a+b}{2}

と置けば,区間 I_1=[a_1,b_1] の左端は A に属し,右端は B に属する.区間 I_1 は区間 I_0 の左半または右半で,その幅は b_1-a_1=\tfrac{1}{2}(b-a) である.

同様にして区間 [a_1,b_1] の左半または右半を I_2=[a_2,b_2] とすれば, a_2A に属し,b_2B に属して,b_2-a_2=\tfrac{1}{4}(b-a)

このような操作を継続すれば,区間の列

I_0\supset I_1 \supset I_2 \supset \cdots \supset I_n \supset\cdots [* 1]

I_n=[a_n,b_n],\quad b_n-a_n=\frac{1}{2^n}(b-a)

を得るが,それは定理 7 の条件に適合するものである.そこで定理 7 に従って,この区間列によって定められる確定の数を s とすれば,s は切断 (A,B) の下組または上組に属しなければならない.

s\in A とする[* 2].然らば s<s' なる s' を取れば,b_n\to s によって s<b_n<s' なる b_n が存在するから,s'B に属する.すなわち sA に属して,s よりも大なる s' はすべて B に属する.換言すれば sA の最大数である.このとき, B に最小数はない.――もしも,かりに s'B の最小数とするならば s<s',従って上記のように b_n<s' なる b_n が存在する.しかも b_nB に属するから,これは不合理である.

もしも s\in B ならば,全く同様にして,sB の最小数で,A に最大数がないことが示される.

すなわち,定理 7から Dedekind の定理が導かれたのである.


  1. 集合 A,B に関して A\supset B は‘AB を含む’ことを表わす.すなわち B に属する数は全て A に属するのである.
  2. s\in A は,‘s が集合 A に属する’ことの略記である.s が集合 A に属するとき,sA の元(element)という.s\in A は ‘s ἐστί A’(sA である)に由来する.


[編集] 6.収束の条件 Cauchy の判定法

定理 8.
数列 \{a_n\} が収束するために必要かつ十分なる条件は,任意の \varepsilon>0 に対応して番号 n_0 が定められて,
p>n_0,\quad q>n_0 なるとき |a_p-a_q|<\varepsilon
なることである.
[証]
条件が必要なることは明白であろう: 今 a_n\to\lambda とすれば,収束の意味によって,
p>n,\ q>n,\ |a_p-\lambda|<\frac{\varepsilon}{2},\ |a_q-\lambda|<\frac{\varepsilon}{2}
なる n が定められる.従って |a_p-a_q|<\varepsilon. 定理の核心は条件が十分なることである.まずこの条件から数列 \{a_n\} が有界であることがでてくる.実際,上記条件に従って,一つの \varepsilonn_0 が対応するとすれば, p>n_0 なるとき
|a_{n_0+1}-a_p|<\varepsilon,
a_{n_0+1}-\varepsilon<a_p<a_{n_0+1}+\varepsilon
だから, n_0 より大きい番号に関しては \{a_n\} は有界である. n_0 は確定だから,有限個の数 a_1,a_2,\ldots,a_{n_0} をつけ加えても,\{a_n\} は有界である. よって今任意の n に関して,a_n,a_{n+1},\ldots の上限および下限をそれぞれ l_n,m_n として,I_n=[m_n,l_n] と置けば,
(1)
m_1\leqq m_2 \leqq \cdots \leqq m_n \leqq \cdots\cdots \leqq l_n \leqq \cdots \leqq l_2 \leqq l_1,
I_1\supset I_2\supset\cdots\supset I_n\supset\cdots.
さて仮定によって, \varepsilon>0n_0 が対応して, p>n_0,q>n_0 なるとき
a_p-a_q<\varepsilon.
よって, n>n_0 とすれば,上限の意味により,任意の q\geqq n に対して l_n-a_q\leqq\varepsilon .従って,下限の意味により
l_n-m_n\leqq\varepsilon
であるから,区間縮小法によって,
l_n\to\lambda,m_n\to\lambda
なる \lambda が存在する.然らば
a_n\to\lambda
でなければならない.実際, a_n は区間 [m_n,l_n] に属するから,十分大なる n に関して,
|a_n-\lambda|\leqq l_n-m_n\leqq\varepsilon.
(証終)
[附記] 
上極限・下極限
上記証明において,(1) は数列 \{a_n\} の有界性だけから導かれたのであった.(1) において,単調数列 \{l_n\},\{m_n\} は収束する.その極限を \lambda,\mu とするとき, \lambda を有界数列 \{a_n\} の上極限(limes superior)といい,それを記号 \textstyle\limsup_{n \to \infty}a_n あるいは見やすく \textstyle\varlimsup_{n \to \infty}a_n で表わす.同様に \mu\{a_n\} の下極限(limes inferior)といい, \textstyle\liminf_{n \to \infty}a_n または \textstyle\varliminf_{n \to \infty}a_n と書く.このように有界数列 \{a_n\} は常に上極限 \lambda と下極限 \mu とを有して, \mu \leqq\lambda であるが,それらが一致するときに限って,数列は収束して
\lim_{n \to \infty}a_n =\lambda=\mu.
(I)
上極限 \lambda は次の性質を有する.
(1º)
\lambda よりも大なる \lambda+\varepsilon を取れば,十分大なる n に関して常に a_n<\lambda+\varepsilon
(2º)
\lambda よりも小なる \lambda-\varepsilon を取れば
\lambda-\varepsilon<a_n
なる n が無数にある.
実際, \lambda の定義によって,n が十分大きいとき l_n<\lambda+\varepsilon だから, a_n\leqq l_n<\lambda+\varepsilon .それが (1º) である.また a_p,a_{p+1},\ldots の上限としての l_p の意味によって,任意の p に関して \lambda-\varepsilon\leqq l_p-\varepsilon<a_n,n\geqq p ,なる a_n がある. p は任意だから,このような a_n が無数にある(n の異る a_n は区別していう).それが (2º) である.

上記 (1º)(2º) を換言すれば:

(II)
どんなに \lambda に近いところにも無数の a_n がくる.しかし \lambda よりも大なる \lambda' を取れば,このようなことはない.

あるいは:

(III)
\{a_n\} の部分数列で \lambda に収束するものはあるが, \lambda よりも大なる \lambda' に収束するものはない. \lambda\{a_n\} の上極限というのは,それを示唆するのである.

下極限 \mu に関しては上記 (I)(II)(III) において大小の関係を逆にすればよい.

有界でない数列 \{a_n\} に関しても上極限,下極限を定義することが,応用上便利である.それをなるべく簡明に述べるために,(III) において収束数列の極限として +\infty,-\infty を許容することにする.よって

 
\{a_n\} が上方に有界でないならば \varlimsup a_n=+\infty
 
\{a_n\} が下方に有界でないならば \varliminf a_n=-\infty
 
\{a_n\} が上方に有界で下方に有界でないときには, l_n\to\lambda または l_n\to-\infty に従って \varlimsup a_n=\lambda または \varlimsup a_n=-\infty\{a_n\} が下方に有界で,上方に有界でないときの \varliminf a_n も同様である.

\pm\infty をも入れていえば,任意の数列 \{a_n\} に関して \varlimsup a_n,\varliminf a_n は常に存在するが,それらが一致するときに限って,その共通の値として \lim a_n が存在する.

[例 1]
a_n=\tfrac{(-1)^n n+1}{n},\varlimsup a_n=1,\varliminf a_n=-1.
[例 2]
a_{2n}=1+\tfrac{(-1)^n}{n},a_{2n-1}=\tfrac{(-1)^n}{n} .すなわち数列は -1,0,\tfrac{1}{2},\tfrac{3}{2},-\tfrac{1}{3},\tfrac{2}{3},\ldots で,\varlimsup a_n=1,\varliminf a_n = 0.ここでは,数列中に 1 よりも大きい項も,0 よりも小さい項も無数にある.
[例 3]
 a_n=(-1)^n n.\varlimsup a_n=+\infty,\varliminf a_n=-\infty.
[例 4]
a_n=\cos\,n\alpha (ただし \pi/\alpha は無理数).\varlimsup a_n=+1.\varliminf a_n=-1.

(証明はむつかしいが, \alpha/\pi が無理数ならば,単位円周上の定点 A を起点として同じ向きに長さが n\alpha なる弧 AP_n を取れば,点 P_n は円周上に稠密に分布される).

点列
一次元における数列と同じように,二次元でも,順位を示す各自然数 n に対応して点 P_n=(x_n,y_n) が定められるとき,点列 \{P_n\} が生ずる.

点列 \{P_n\} の極限とは,次の条件に適する定点 A=(a,b) をいう: すなわち,どれほど小なる正数 \varepsilon を取っても,それに対応して番号 n_0 を十分大きく取れば,

n>n_0 なるとき AP_n<\varepsilon
なることをいうのである.そのとき点列 \{P_n\}A に収束するという.
距離 AP_n とは \sqrt{(a-x_n)^2+(b-y_n)^2} をいう(§1.参照).それが \varepsilon よりも小ならば,もちろん |a-x_n|<\varepsilon,|b-y_n|<\varepsilon であるが,逆にこれから AP_n<2\varepsilon を得る.故に P_n\to A
\lim_{n\to\infty}x_n=a,\ \lim_{n\to\infty}y_n=b
にほかならない.

三次元以上でも同様である.点列の収束に関しては,Cauchy の判定法を次のように述べることができる.

点列 \{P_n\} が収束するために必要かつ十分なる条件は,正なる \varepsilon を任意に取るとき,それに対応して自然数 n_0 が定められて,n_0 よりも大なる任意の m,n に関して P_mP_n<\varepsilon なることである.


[編集] 7.集積点

数の場合と同様に,二次元以上でも,或る一定の条件に適合する点の全部を一つの点集合という.集合に属するすべての点 P = (x_{1}, x_{2}, \ldots, x_{n}) の各座標 x_{k} が有界なるとき,点集合を有界という.そのとき,集合の点はすべて一定の有限範囲内にある.例えば一次元ならば一定の区間内,二次元ならば一定の正方形内または一定の円内にある,等々.

一つの集合 S に関して或る点 A集積点であるとは,点 A にどれほど近いところにも S に属する点が無数にあることをさしていう.ただし A が集合 S に属するというのではない.

[例 1]
x, y を任意の有理数として,点 (x, y) の集合を S とすれば,すべての点 (a, b) は集積点である. なぜならば,a または b が有理数であっても,無理数であっても,任意の \epsilon > 0 に対して |x-a| < \varepsilon, |y-b| < \varepsilon なる有理数 x, y が無数にあるから.
[例 2]
m, n を任意の自然数として,点 (\tfrac{1}{m}, \tfrac{1}{n}) の集合を S とすれば,(\tfrac{1}{m}, 0), (0, \tfrac{1}{n}), (0, 0) が集積点である.一般に,集積点の集積点は,やっぱり集積点である.
[注意] 
数列 \{a_{n}\} に含まれる数 a_{n} の集合を S とする.数列 \{a_{n}\} の中に,同じ数 a が無数に繰り返して出て来る場合には,aS の集積点であるとは限らない.これに反し,\{a_{n}\} に同じ数が無数に含まれることがなければ,\{a_{n}\}a に収束することは,S が有界で aS の唯一の集積点であることと同等である.またその場合, \varlimsup a_n, \varliminf a_n は,それぞれ S の最大,最小の集積点にほかならない.
定理 9.
有界なる無数の点の集合に関して,集積点が必らず存在する[Weierstrass の定理].
[証]
四つの正方形に等分
正方形の一列
定理は各次元に通用するけれども,簡明のために二次元として証明をする.この集合 S は有界だから,その点はすべて辺が軸に平行なる一つの正方形 Q に含まれると考えてよい.正方形 QS の無数の点が含まれるから,今Qを四つの正方形に等分するならば,それらのうち少くとも一つは S の無数の点を含む(内部または周上に,以下同様).その一つを Q_{1} とする.そのような正方形が二個以上あるとき,明確を欲するならば,象限順で最初のものを取ることにすればよい.さて Q_{1}S に属する点を無数に含むから,Q_{1} を四つの正方形に等分すれば,それらのうち少くとも一つ Q_{2} は,必らず S の点を無数に含まなければならない.このようにして行けば,Q, Q_{1}, Q_{2}, \ldots, Q_{n}, \ldots なる正方形の一列が生じて,n \to \infty のとき,Q_{n} の辺は限りなく小さくなる.

今一般に Q_{n} の四つの頂点の中で左下のもの(各座標が最小なるもの)を (a_{n}, b_{n}) とするならば,

\begin{align} Q \supset Q_{1} \supset Q_{2} \supset \ldots \supset Q_{n} \supset \ldots \end{align}
から,
a \leqq a_{1} \leqq a_{2} \leqq \ldots \leqq a_{n} \leqq  \ldots,
b \leqq b_{1} \leqq b_{2} \leqq \ldots \leqq b_{n} \leqq  \ldots.
これら二つの数列は明らかに有界だから,
\lim_{n \to \infty}a_{n} = \alpha,\quad \lim_{n \to \infty}b_{n} = \beta. (定理 6
然らば点 P=(\alpha,\beta) は集積点である.

なぜならば,今 (\alpha, \beta) を中心とするどれほど小さな円を取ってみても,十分大なる或る番号以上は,Q_{n} がすべてその円に含まれる.然るに Q_{n}S の点を無数に含むのだから,どれほど (\alpha, \beta) に近いところにも,S の点が無数に存在する.

上記の例 2 では,Q は原点を一つの頂点とし,両軸上に長さ 1 の辺を置く正方形としてよい.然らば Q_{n}x 軸または y 軸に接するものに限る.

A が集合 S の集積点ならば,S から A に収束する点列 \{P_{n}\},(P_{n} \neq A) を取り出すことができる.実際,PA とは異なる S の任意の点として,A から AP\tfrac{1}{2} 以内の距離にある S の点を P_{1}(\neq A) とする.A は集積点だから,そのような点は必らず存在する.同様に AP_{2} < \tfrac{1}{2}AP_{1}, AP_{3} < \tfrac{1}{2}AP_{2}, \ldots なる点 P_{2}, P_{3},\ldots を取れば,AP_{n} < \tfrac{1}{2^n}AP だから,点列 \{P_{n}\},(P_{n} \neq A),A に収束する.

[注意 1] 
上方に有界なる数の集合 S の上限 aS に属しないならば,上限の意味から,aS の集積点である.故に上記によって,S から a に収束する数列 \{a_{n}\} を取り出すことができる.aS に属するときは,a_{n} = a とすれば,数列 \{a_{n}\}a に収束する.いずれにしても,S の上限に収束する数列を S から取り出すことができる.下限についても同様である.
[注意 2] 
点列 \{P_{n}\} が有界ならば,\{P_{n}\} の部分点列 \{P_{m}\}(番号 m は自然数の一部分)を適当に取り出して,点列 {P_{m}} が収束するようにすることができる.実際,S を点 P_{n} の集合とすれば,S が無数の点の集合のときには,定理 9によって S の集積点が存在するから,S の一つの集積点に収束する \{P_{n}\} の部分点列 \{P_{m}\} を上記と同様の方法で取り出せばよい.また,もし S が有限個の点の集合ならば,点列 \{P_{n}\} の中に,同じ点 P が無数に出てくるから,P_{m} = P なる部分点列 \{P_{m}\} を取り出せばよい.

S に関する集積点は必らずしも S に属する点ではないが,もしも,すべての集積点が S に属するならば,S閉集合という.

例えば閉区間 [a, b],または二次元では,周をも入れた円または正方形などは閉集合を成す.

S が閉集合でないときに,S に集積点をつけ加えて集合 [S] を作れば,それは閉集合である: S の集積点の集積点は,やはり S の集積点であるからである.

この注意によって,区間縮小法を次のように拡張することができる.

定理 10.
有界なる閉集合の列 S_1,S_2,\ldots において
(1º)
S_1\supset S_2\supset\cdots\supset S_n\supset\cdots,
(2º)
n が限りなく増大するとき,S_nが限りなく小さくなる
ならば,これらの集合 S_n に共通する点がただ一つ存在する.
有界なる点集合の径とは,その集合に属する二点間の距離の上限をいう.故に,S_n の径が限りなく小さくなるとは,S_n が限りなく小さくなる円に含まれるというのと同じことである.
[証]
S_1,S_2,\ldots から任意にそれぞれ点 P_1,P_2,\ldots を取り出したとする.然らば (1º) によって P_n,P_{n+1},\ldotsS_n に属するから,(2º) によって点列 \{P_n\}Cauchy の収束条件を満たす.よって \{P_n\} の極限を A とする.或る番号から先の P_m がことごとく同じ点であるときには,P_m=AAS_n に属する.その他の場合には,A は閉集合 S_n の点 P_n,P_{n+1},\ldots の集積点だから,A は,やはり,S_n に属する.n は任意だから,A はすべての集合 S_1,S_2,\ldots に共通である.さて,これらの集合に共通なる点がただ一つに限ることは,仮定 (2º) によって明らかである.
(証終)

定理 910 に関連して,次の重要な定理を述べておく.

定理 11.
無数の円の一組が,全体として,有界なる閉集合 F を覆うならば,F はすでに,それらの円の中の有限個だけで覆われる[Heine-Borel の被覆定理].

ここで F を覆うというのは,F に属する各点が,これらの円のどれかの内部にあることをいう.

[証]
かりに定理は真でないとする.然らば,F を含む一つの正方形 Q を取って,それを四つの小正方形に等分するとき,それらの小正方形(辺をも入れていう)のうちの少くとも一つに属する F の部分集合に関して,定理は真でない[* 1].(さもなければ,F において定理が真!)この部分閉集合を F_1,それを含む小正方形を Q_1 とする.同様の操作を繰り返して,閉集合の無限列 F\supset F_1\supset F_2\cdots を得るが,それらは,それを含む小正方形と共に限りなく小さくなるから,F に属する一点 P_0 を共有する(定理 10).P_0F に属するから,P_0 は与えられた円の中の或る一つの内部に含まれる.故に十分大きい n に対して F_n は,それを包む小正方形 Q_n と共に全くこの円内に入る.これは F_n に関する約束(F_n において定理が真でないこと)に矛盾する.故に定理を承認せざるをえない.
(証終)
この証明において F が閉集合であるという仮定が重大である.さもなければ,P_0F に属することがでてこない.また F の各点が円の内部に含まれることが肝要である.P_0 が円の周上にあるのでは,n をどれほど大きくしても,Q_n 従って F_n が全くは円内に入らないかも知れないから,証明が拘束力を失うであろう[* 2]

  1. 二つの閉集合の双方に属する点の集合は閉集合である.
  2. ここで円(円の内部)というのは一例である.実際は円を任意の開集合としても,定理は成り立つ(§12 参照).


[編集] 8.函数

区間 [a,b] が与えられたとき,

(1)
a\leqq x\leqq b

なる数 x はこの区間に属するという.もしも我々が x にこの区間に属する任意の数値を与えようと欲するならば,x をこの区間における変数という.そのとき x はこの区間内において自由に変動しうるのである.

今この区間内における変数 x の個々の数値に対応して,それぞれ変数 y の数値を確定すべき或る一つの規準が与えられたと仮定するとき,yx函数といい,特定の函数を示すために特定の文字を用いて

y=f(x),\quad y=F(x)

などと書く.函数 y の値は x の値に伴って変動する.よって x独立変数y従属変数という.

例 1: y=x^2
例 2: y=sin x
例 3: y=sqrt{1-x^2}

上記の場合,函数 y は区間 [a,b] において定義されているから,[a,b] をこの函数の定義区間という.定義区間が (1) のように閉区間ならば,x=a または x=b に対応する y の値は確定であるが,或る場合には,定義区間を開区間

(a,b) \quad a<x<b,

または一方のみ閉じた区間

\begin{align}
{[}a&,b) & &a\leqq x<b,\\(a&,b{]} & &a<x\leqq b
\end{align}

に,または,なお一般に或る集合 S に属する x だけに,限定することもある.それらの差別は厳格に尊重されねばならない.

もしまた xa よりも大なる任意の値を取りうるならば,標語的に区間を

(a,+\infty) \quad a<x<+\infty

と書く.[a,+\infty), (-\infty,a), (-\infty,+\infty) 等も同様である.

次に函数の例二,三を掲げる.

[例 1]
y=x^2 とすれば,y は区間 (-\infty,+\infty) における x の函数である.
[例 2]
y=\sin x も同様.ただし x は弧度法による角の数値である.すなわち‘ラジアン’を単位とする.
[例 3]
y=\sqrt{1-x^2}.平方根は正の値(負でない値)を表わすとすれば,この場合 y は区間 [-1,+1] において x の函数である.

上記の例では,函数が算式に基づいて定義されたのであるが,それは必要でない.また一つの区間の各部分において,相異なる算式によって,一つの函数を定めることもできる.

[例 4]
区間 -1\leqq x<0では y=x+1,また区間 0<x \leqq 1 では y=1-x,x=0 のときは y=1 とすれば,y は区間 [-1,+1] において定義された函数である.
例 4: y=x+1(-1 \leqq x < 0); y=1-x(0 < x \leqq 1) 例 5: y=sign x
[例 5]
y=\mathrm{sign}\,x.これは区間 (-\infty,+\infty) において,次のようにして定められる函数である.すなわち x が正ならば y=+1x が負ならば y=-1x=0 ならば y=0
次の例も上記函数の定義に適合する.
[例 6]
区間 0<x<1 において,x が有理数ならば y=0x が無理数ならば y=+1
[例 7]
区間 0<x<1 に属する x の値を二進法で書き表わして,それを十進法によって読むときの値を y=f(x) とする.ただし,2 の巾を分母とする有理数は有限二進数で書き表わすものとする. 例えば x=\tfrac12 ならば,二進法で x=(0.1).故に f(\tfrac12)=\tfrac1{10}.また x=\tfrac14 ならば,二進法で x=(0.01).故に f(\tfrac14)=\tfrac1{100}.等々.

変数 x の値とそれに対応する函数 y=f(x) の値とを組合せて,点 (x,y) を平面上に取るとき,それらの点の集合(軌跡)は,常用の函数の場合,一つの曲線である.それを函数 f(x) のグラフという.上記の例 1―5 ではグラフを記しておいたが,例 6,7 ではグラフは線として表わすことが困難である.

或る数 a に十分近い x のみに着目して,x の函数 f(x) のグラフを考察する必要が,しばしば生ずる.このような場合,a に十分近い x を,a の近傍に属するという.詳しくいえば,a近傍とは,a を含む開区間 (b,c),\,b<a<c, のことで,その幅 c-b は,臨機,十分小さくとる.

なお,函数には,次のような例もある.

[例 8]
0<x<\infty なる区間において y=\sin\tfrac{1}xx=0 の近傍ではグラフは実際には画ききれない.
[例 9]
x\ne 0 なるとき y=x\sin\tfrac{1}xx=0 なるとき y=0 とすれば,y(-\infty,+\infty) における x の函数である.x=0 の近傍において y のグラフは無限に頻繁に振動するから画ききれない.
例 8: y=sin(1/x) 例 9: y=x sin(1/x)

上記例 69 のような函数は,一見はなはだ奇怪なものであるけれども,函数の定義を本節の初めに述べたように設定する以上,それらが函数の中に加入することを拒むことはできない.いわゆる自縄自縛である.これらの函数,特に例 6,7 などは,実用に適しないけれども,さし当っては,軽率な推理に基因する誤謬を警戒するために,おりおり引用される.実用に適する函数を限定するためには,上記の一般的定義になんらかの制限を加える必要のあることは明白である.

二次元以上,すなわち独立変数が二つ以上ある場合にも,函数の定義は同様である.今二次元に関していえば,一つの点 P=(x,y) に対応して一つの数 z を確定する規準が定められたときに,z(x,y) の函数という.記号は z=f(x,y),あるいは略して z=f(P) など.変数 x,y が取りうる値の範囲には通例或る制限があって,函数 f(P) は或る区域(あるいは点集合)において定義される.

[例 10]
z=ax+by+ca,b,c は定数)とすれば,z(x,y) の函数(一次整函数)である.この場合 x,y の値は無制限でよい.
[例 11]
z=\sqrt{r^2-x^2-y^2} とすれば,z は原点 (0,0) を中心とする半径 r の円(周をも入れていう)内において定まった函数である.
[例 12]
z=xyx,y は無制限.
[例 13]
f(x,y)=\tfrac{2xy}{x^2+y^2}.ただし (x,y)\ne(0,0).しかし,もしも,f(0,0) を例えば 0 と定めるならば,f(x,y)x,y のすべての値に関して定義される.
[例 14]
0\leqq x\leqq 1,0\leqq y\leqq 1 なる区域内において,あるいは P=(x,y)x^2+y^2=1 なる円(それを単位円という)の内部にあるとき,xy も有理数ならば f(x,y)=1,その他の場合には f(x,y)=0

z=f(x,y) が与えられたときに,x,y の値をそれに対応する z の値とを三次元の一点 (x,y,z) で表わすならば,それらの点の集合は,常用の函数の場合には,一つの面を組成する.この面によって函数 z=f(x,y) を幾何学的に表わすことができる.

上記の例 10z=ax+by+c は一つの平面で表わされる.

例 11z=\sqrt{r^2-x^2-y^2} は一つの半球面で表わされる.

例 12zxy は双曲放物面で表わされる.この場合,z に一定の値 k を与えるような (x,y) は一つの等辺双曲線(xy=k)上にある.それを z=k に対応する等位線という.

例 11 では,等位線は原点を中心とする同心円周で,例 10 では,等位線は平行線である.

例 12 における等位線の様子 例 13 における等位線の様子

例 13 では,z=k\,(-1\leqq k\leqq 1)2xy=k(x^2+y^2) なる二直線上の点 (x,y) に対応する.|z|>1 には決してならない.等位線は原点を通る直線である.もちろん原点(x=0,y=0)は除外される.その点は特異である.

例 14 の函数は曲面では表わされない.


[編集] 9.連続的変数に関する極限

P の函数 f(P) が或る区域内において定義されているとする.そのとき P がこの区域内において変動して,限りなく一つの定点 A に近づくとき,それに伴って f(P) が限りなく一定の値 \alpha に近づくならば,\alphaA における f(P) の極限という.記号では

P\to A のとき f(P)\to\alpha.

または二次元を例に取って P=(x,y),A=(a,b) とすれば,


  \lim_{(x,y)\to(a,b)}f(x,y)=\alpha.

詳しくいえば,\varepsilon>0 を任意に取るとき,それに対応して \delta>0 を定めて

|x-a|<\delta,|y-b|<\delta,P\ne A なるとき |f(x,y)-\alpha|<\varepsilon

ならしめることをうるのである[* 1]

このような極限に関しても,定理 5 と同様なる定理が成り立つこと明白である.すなわち

P\to A のとき f(P)\to\alpha,g(P)\to\beta ならば,
f(P)\pm g(P)\to\alpha\pm\beta,\quad
   f(P)g(P)\to\alpha\beta,\quad \frac{f(P)}{g(P)}\to\frac{\alpha}{\beta}
   (ただし \beta\ne0).

極限値としての +\infty,-\infty の意味も,数列の場合と同様である.

次の二つの例は基本的だから,周知であろうけれども,一応述べて置く.

[例 1]

  \lim_{x\to\infty}\left(1+\frac{1}{x}\right)^x=e.

en が自然数なるとき \lim(1+\tfrac{1}{n})^n として定義されたのであったが(§4,[例 5]),連続的変数 x に関しても標記の等式が成り立つのである.

それを証明するために n\leqq x<n+1n は自然数)とすれば,

  \left(1+\frac{1}{n+1}\right)^n <\left(1+\frac{1}{x}\right)^x <\left(1+\frac{1}{n}\right)^{n+1},
すなわち

  \cfrac{\left(1+\frac{1}{n+1}\right)^{n+1}}{1+\frac{1}{n+1}}
 <\left(1+\frac{1}{x}\right)^x
 <\left(1+\frac{1}{n}\right)^n\cdot\left(1+\frac{1}{n}\right).
n\to\infty のとき,第一辺と第三辺とは極限値 e に収束する(定理 5).故に任意の \varepsilon>0 に対して一つの正数 N を取って,n\geqq N なるとき

  e-\varepsilon<\left(1+\frac{1}{n+1}\right)^n,\quad
  \left(1+\frac{1}{n}\right)^{n+1}<e+\varepsilon
ならしめうる.然らば x\geqq N なるとき

  e-\varepsilon<\left(1+\frac{1}{x}\right)^x<e+\varepsilon,
すなわち

  \left|\left(1+\frac{1}{x}\right)^x-e\right|<\varepsilon.
故に

  \lim_{x\to\infty}\left(1+\frac{1}{x}\right)^x=e.
[例 2]
\lim_{x\to0}\frac{\sin x}x=1.

半径 1 なる円において弧 2x を張る弦が 2\sin x であるから,これは弧,従って弦が限りなく小さくなるとき,弦と弧との比の極限が 1 に等しいというのである.これは弧長の定義(後述,§40)からの当然の帰結であるが,通常次のように説明する.

まず x>0 として証明をすれば十分である.さて 0<x<\tfrac{\pi}2 なるときは
0<\sin x<x<\tan x.
\mathrm{AB} の長さは,弧に内接する折線の長さの上限として定義されるから,それは弦 \mathrm{AB} よりも大で,折線 \mathrm{ACB} よりも小である.
従って
(1)
1>\frac{\sin x}{x}>\cos x.
さて 0<\sin x<x から,\textstyle\lim_{x\to 0}\sin x=0.故に \cos^2 x=1-\sin^2 x を用いて \textstyle\lim_{x\to 0}\cos x=1.故に (1) から標記の関係を得る.
(証終)

連続的変数に関しても,Cauchy の収束条件は適用される.それを説明するために,まず次の考察をする.

\textstyle\lim_{P\to A}f(P)=l とするならば,A に収束する任意の点列 \{P_n\},P_n\ne A,に関して \textstyle\lim_{n\to\infty}f(P_n)=l なることは明白である.さて逆に A に収束するすべての点列 \{P_n\},P_n\ne A,に関して f(P_n) が収束すると仮定する.然らば \textstyle\lim_{n\to\infty}f(P_n) は点列 \{P_n\} の選択に無関係な一定の値を有するであろう.なぜなら,もしも
P_n\to A のとき f(P_n)\to l,
P'_n\to A のとき f(P'_n)\to l'
とすれば,\{P_n\}\{P'_n\} とを合併して作られる点列(例えば P_1,P'_1,P_2,P'_2,\ldots)を \{P''_n\} と書けば,\{P''_n\}A に収束するから,仮定によって f(P''_n) も収束する.その極限を l'' とする.然らば \{f(P_n)\}\{f(P'_n)\}\{f(P''_n)\} の部分数列であるから,l=l'',l'=l''定理 3).従って l=l',すなわち極限値 l は一定である.
さてこの l に関して,P が任意に A に近づくとき,
(2)
\lim_{P\to A}f(P)=l
であることを証明することができる.それを間接法でするために,(2) を否定してみよう.(2) を否定することは何を意味するか.それは或る \varepsilon>0 が存在して任意の \delta>0 に対して
AP<\delta,P\ne A でかつ |f(P)-l|\geqq\varepsilon
なる点 P が存在することである.然らば \tfrac{1}n\,(n=1,2,\ldots) に対応して
(3)

  AP_n<\frac{1}n,\quad P_n\ne A,\quad |f(P_n)-l|\geqq \varepsilon
なる P_n が存在するはずである.さて (3) によれば点列 \{P_n\}A に収束するが,f(P_n)l に収束しない.これは不合理である.故に (2) が成り立つ.
(証終)

さて Cauchy の収束条件は次のように述べられる.

\textstyle\lim_{P\to A}f(P) が存在するために必要かつ十分なる条件は \varepsilon\delta が対応して
0<PA<\delta,\ 0<P'A<\delta なるとき |f(P)-f(P')|<\varepsilon
なることである.

実際,この条件の下において,\{P_n\},P_n\ne A,を A に収束する任意の点列とすれば,f(P_n) は収束する(定理 8).故に (2) によって \textstyle\lim_{P\to A}f(P) は存在する.条件が必要なることは明白であろう.

[附記] 
連続的変数に関する上極限,下極限
P が限りなく定点 A に近づくとき,f(P) の上極限,下極限が,数列の場合と同様に定義される.今 AP<t,P\ne A なる点 P に対応する f(P) の値の全体を f の値域と名づける.t が小さくなれば,値域は減縮するから,値域の上限 l(t) は単調に減少(不増大)し,下限 m(t) は単調に増大(不減少)する.t\to 0 のときそれらの極限 \lambda,\mu が,それぞれ上極限,下極限である.記号で書けば[* 2]
\begin{align}
  &\lambda=\varlimsup_{P\to A}f(P)=\lim_{t\to 0}(\sup_{0<AP<t}f(P)),\\
  &\mu=\varliminf_{P\to A}f(P)=\lim_{t\to 0}(\inf_{0<AP<t}f(P)).
\end{align}
故に A に収束する任意の点列 \{P_n\},P_n\ne A,から生ずる数列 f(P_n) の上極限の上限,下極限の下限がそれぞれ \lambda,\mu に等しい.\textstyle\varlimsup_{P\to A}f(P)P が限りなく A に近づくとき,f(P) がついには上越しえない最小限界で,\textstyle\varliminf_{P\to A}f(P)f(P) がついには下越しえない最大限界である.

上限,下限として \pm\infty をも許すならば,\varlimsup,\varliminf は常に確定する.

\varlimsup f(P),\varliminf f(P) が一致すれば,その共通の値はすなわち \lim f(P) である.

  1. \varepsilon\text{-}\delta 式の陳述で,\varepsilon,\delta が正数であることを一々ことわらないこともある.
  2. \sup は上限(supremum)の略記.\textstyle\sup_{0<AP<t}f(P)0<AP<t なる P に対応する f(P) の上限の意.従って,この上限は t の函数である.また \inf は下限(infimum)の略記である.近頃,英語の文獻では \sup\mathrm{l.u.b.} また \inf\mathrm{g.l.b.} とも書く.それらは最小上界(least upper bound)および最大下界(greatest lower bound)の略記である(§3 参照).


[編集] 10.連続函数

或る区域内において,変数 x が連続的に変動するに伴って連続的に変動する函数 f(x),すなわち,いわゆる連続函数が応用上重要である.

変数 x が限りなく一つの値 a に近づくとき, f(x) もまた限りなく f(a) に近づくならば, f(x)x=a なる点において連続であるという.故に

f(x)x=a なる点において連続であるとは

x \to a のとき f(x) \to f(a)

であることにほかならない.常例の型で,いわゆる \varepsilon\text{-}\delta 式にいえば: 正なる \varepsilon が任意に与えられたとき,それに対応して正なる \delta を適当に取って

|x-a|<\delta なるとき |f(x)-f(a)|<\varepsilon

ならしめうるのである.

或る区域の各点において連続なる函数を,その区域において連続という.

或る点で連続なる函数の和,差,積,商はその点において連続である.ただし商に関しては分母がその点で 0 にならないとする.点の代りに区間といっても同様である.例えば f(x), g(x) が区間内の一点 a において連続なるとき,f(x)+g(x)=h(x) とすれば,

x \to a のとき f(x) \to  f(a),\,g(x) \to g(a), 故に h(x) \to h(a). (定理 5
[例]
定数 a および xx の函数として各点で連続だから,それから四則によって生ずる x の有理函数は,分母が 0 になる点を除けば,連続である. 三角函数 \sin x, \cos x(-\infty,+\infty) において連続である.今 \sin x についていえば, x=a+h と置いて

  |\sin(a+h)-\sin a| = \left|2\sin\frac{h}{2}\cos\!\left(a+\frac{h}{2}\right)\right|
  < 2\cdot\frac{|h|}{2}\cdot 1 = |h|.
故に x \to a のとき h \to 0,\sin x\to\sin a\cos x も同様である.故に \tan x\cos x\ne 0 すなわち x\ne\tfrac{n\pi}{2}n は奇数)ならば,連続である.

その他の初等函数に関しては,後に至って適当なる機会において述べるであろう.

§8 に掲げた函数の中で,例 4[-1,+1] において連続である. x=0 なる点が目立つけれども,連続函数の定義に従えば,連続性を認めざるをえない.例 9f(x)=x\sin \tfrac{1}{x} も同様である.例 5f(x)=\text{sign}\,xx=0 においてだけ不連続である.例 6 は各点において不連続である.

時としては x が増大しつつ(左から)a に近づく場合,あるいは x が減少しつつ(右から)a に近づく場合において,f(x) の極限を考察することがある.その極限を

\lim_{x\to a-0}(左から), \lim_{x\to a+0}(右から)

なる記号で表わすのが簡便である.x=a\pm\varepsilon,\varepsilon>0,\varepsilon\to 0 を示唆するために x\to a\pm 0 と略記するのである.例えば

\begin{align}
 &\lim_{x\to\frac{\pi}{2}-0}\tan x=+\infty, & &\lim_{x\to\frac{\pi}{2}+0}\tan x=-\infty,\\
 &\lim_{x\to-0}\text{sign}\,x=-1, & &\lim_{x\to+0}\text{sign}\,x=+1,\\
 &\lim_{x\to-0}e^{\frac1x}=0, & &\lim_{x\to+0}e^{\frac1x}=+\infty.
\end{align}

同様の意味で記号


  \lim_{x\to a-0}f(x)=f(a-0),\quad \lim_{x\to a+0}f(x)=f(a+0)

を用いる.それらは x が左から,あるいは,右から a に近づくときの f(x) の極限を表わす.

左へ,また右へ連続

次のグラフでは

f(a-0)=\alpha,\quad f(a+0)=\beta.

これらは f(a) とは別の物であるが,もしも f(a)=\alpha ならば,f(x)x=a において左へ連続であるといい,またもし f(a)=\beta ならば右へ連続であるという.左へも右へも連続なるときがすなわち前に述べた意味の連続である.

f(x) が閉区間 [a,b] で連続であるというときには,x=a においては右へ,また x=b においては左へ連続であることを意味する.

f(x) が開区間 (a,b) において定義されているとき,もしも f(a+0) が確定ならば,それを f(a) として f(x) の定義を [a,b) にまで拡張すれば,f(x)x=a において右へ連続になる.

例えば §8,[例 9]において f(x)=x\sin\tfrac{1}{x} なる式は x=0 のとき意味を有しないが,\textstyle\lim_{x\to 0}x\sin\frac{1}{x}=0 である.故に f(0)=0 として f(x) の定義を補なえば f(x)(-\infty,\infty) において連続になる.このような‘式の欠点’から生ずる不連続は補正されたものと,みなすことが,多くの場合,適切である.例えば f(x)=\tfrac{x^2-1}{x-1} において f(1)=2,等々.

f(x) が単調増大(すなわち x<x' なるとき f(x)<f(x'),または広義において f(x)\leqq f(x'))なるとき,x=a を定義区間内の一点とすれば f(a-0)f(a+0) も確定で f(a-0)\leqq f(a)\leqq f(a+0)

\{x_n\}a に収束する単調数列とすれば,\{f(x_n)\}f(a) を限界とする単調数列であるから収束する.その極限は数列 \{x_n\} の選択に無関係で,それが f(a-0) または f(a+0) である(§9 参照).

もしも f(a-0)=f(a+0) ならば,f(a) もそれに等しいから f(x)x=a において連続であるが,f(a-0)<f(a+0) ならば,もちろん,不連続である.単調減少の場合も同様.

§8,[例 7]の函数は単調増大であるが,不連続点が稠密に分布されている.例えば x=\tfrac12 とすれば二進法では \tfrac12=(0.1)=(0.0111\ldots).それを十進法で読めば \tfrac{1}{10} または \tfrac{1}{90} である.従って

  f\!\left(\frac12-0\right)=\frac1{90},\quad
  f\!\left(\frac12\right)=f\!\left(\frac12+0\right)=\frac1{10}.
一般に x=\tfrac{a}{2^n}a は奇数)において同様の現象がある(跳びは \tfrac89\cdot\tfrac{1}{10^n}).これは不連続点が稠密に分布されている単調函数の一例である.
指数函数について
一例として,上記の考察を指数函数に適用してみよう.底 a1 より大として,指数 x が有理数なるときには,a^x の意味と性質は既知とする.今 x を一つの無理数とし,\{x_n\} を単調に増大しつつ x に収束する任意の有理数列とすれば,\{a^{x_n}\} は単調に増大するが,それは有界である.すなわち,bx より大なる有理数とすれば,a^{x_n}<a^b.故に \{a^{x_n}\} は極限値を有するが,その極限値は数列 \{x_n\} の選択に無関係である(22 頁).その極限値を無理数 x に関する a^x の定義とする.然らば上記の b に関して a^x\leqq a^b であるが,ここで等号はない.(なぜなら,x<b'<b なる有理数 b' を取れば a^x\leqq a^{b'}<a^b だから.)故に a^x<a^b.同様にして,bx より小なる有理数ならば a^b>a^x.このようにして,すべての実数 x に関して定義された函数 a^x は単調増大である.すなわち x<x' ならば a^x<a^{x'}.それは x または x' が有理数である場合にはすでにわかったのであるが,x および x' が無理数ならば,x<b<x' たる有理数 b を取れば a^x<a^b<a^{x'}

a^x が単調増大であることが知れた上は,前頁の記号を用いるために f(x)=a^x と置けば,f(a-0)=f(x+0) が確かめられたときに,f(x) すなわち a^x の連続性が証明される.そのために p<x<q,q-p<\tfrac{1}{n} なる有理数 p,q を取る(n は任意の自然数).然らば a^p<a^x<a^q で,a^q-a^p=a^p(a^{q-p}-1)<a^p(a^{1/n}-1).この差は n を十分大きく取れば,どれほどでも小さくなる(§4,[例 1]).さて a^p<f(x-0)\leqq f(x+0)<a^q だから f(x-0)=f(x+0) でなければならない.

0<a<1 の場合も同様で,この場合 a^x は単調減少な連続函数である.また a=1 ならば,a^x=1

任意の指数に関して a^x\cdot a^y=a^{x+y} を証明するには極限による.\{x_n\},\{y_n\} を有理数列 x_n\to x,y_n\to y とすれば,x_n+y_n\to x+y.さて有理指数に関しては a^{x_n}\cdot a^{y_n}=a^{x_n+y_n} は既知で,n\to\infty のとき左辺の極限は a^x\cdot a^y,右辺の極限は a^{x+y}.従って a^xa^y=a^{x+y}.同様にして a^x\cdot b^x=(ab)^x(a^x)^y=a^{xy} も証明される.(最後の式の証明は,x^rr は有理数]の連続性を用いて,(a^{x_n})^{y_m}=a^{x_ny_m} において,まず x_n\to x とする.)

二つ以上の変数の函数に関しても,連続性の定義は同様である.

今二次元の場合についていえば,平面上の或る区域で函数 f(P)=f(x,y) が定義されているとして,P=(x,y) がその区域に属する定点 A=(a,b) に限りなく近づくとき,f(P) が限りなく f(A) に近づくならば,f(P)A において連続であるという.例の通り \varepsilon\text{-}\delta 式でいえば,P がその区域に属して

PA<\delta のとき |f(P)-f(A)|<\varepsilon,

\varepsilon が与えられて後に \delta が定められるのである.

或る区域に属する各点で連続なる函数をその区域で連続であるという.

[注意] 
f(x,y) が連続ならば,y に一定の値を与えるとき,それは x の連続函数になり,また x に一定の値を与えるとき,y の連続函数になる.これの逆は真でない. 例えば (x,y)=(0,0) 以外では f(x,y)=\tfrac{2xy}{x^2+y^2}.また f(0,0)=0§8,[例 13])とすれば,f(x,y)x または y の一方のみに関しては連続であるが,双方の函数としては (0,0) において不連続である.実際,点 Py=x\,\tan\alpha なる直線上において (0,0) に近づくとすれば,f(P) の値は常に \tfrac{2\tan\alpha}{1+\tan^2\alpha}=\sin 2\alpha である.故に f(x,y)(0,0) において連続でない.


[編集] 11.連続函数の性質

定理 12.
[中間値の定理]. 或る区間において連続なる函数 f(x) が,この区間に属する点 a,b において相異なる値 f(a)=\alpha,f(b)=\beta を有するとき,\alpha,\beta の中間にある任意の値を \mu とすれば,f(x)a,b の中間の或る点 c において,この \mu なる値を取る.すなわち

  a<c<b,\quad f(c)=\mu
なる c が存在する.
[証]
\alpha<\mu<\beta として証明する.F(x)=f(x)-\mu と置けば,F(a)=\alpha-\mu<0,F(b)=\beta-\mu>0F(x)[a,b] において連続で,F(a)<0 だから,a の或る近傍では F(x)<0.故に [a,\xi] において常に F(x)<0 なる \xi が存在する.しかし F(b)>0 だから \xi<b.故にこのような \xi に上限がある.それを c とすれば,F(c)=0 でなければならない.もしも,かりに F(c)<0 とすれば,上記の区間 [a,\xi]c を超えて延長されるであろう.それは c の意味に反する.またもし F(c)>0 とすれば,十分小なる \varepsilon に関して f(c-\varepsilon)>0[a,\xi] の右端は c-\varepsilon を超えない.それも c の意味に反する.故に F(c)=0,すなわち f(c)=\mu.さて a<c\leqq b であったが,f(b)=\beta\ne\mu だから c<b でなければならない.
(証終)
定理 12 は二次元以上にも通用する.或る区域 K において f(P) が連続で,K に属する点 A,B において f(A)=\alpha,f(B)=\beta とする.今 K 内において A,B を一つの連続曲線 C(例えば折線 AB)で連結して,P はこの線上を動くとする.この線上任意の一点を起点として P までの長さを s とすれば,C 上において f(P) は変数 s の連続函数である.それを \varphi(s) とする.今点 A,B に対応する s の値を a,b とすれば \varphi(a)=\alpha,\varphi(b)=\beta で,a<c<b なる c において \varphi(c)=\mu.すなわち s=c に対応する曲線 C 上の一点 P において f(P)=\mu.もちろん \mu\alpha,\beta の中間の値である.

次に述べる定理は各次元に関して成立するけれども,たいていは一次元または二次元に関して説明する.変数の区域は閉じたものとする.すなわち境界をも入れていう.一次元ならば閉区間である.

定理 13.
有界なる閉区域 K において連続なる函数 f(P) は有界で,かつその区域において最大および最小の値に到達する.
[注意] 
閉区域とせねばならない一例は -\tfrac{\pi}{2}<x<+\tfrac{\pi}{2} における \tan x
[証]
まず上界を論ずる.かりに f(P) が上界を有しないとする.然らば f(P_0)>0 なる点 P_0 がある.同様に f(P_1)>2f(P_0) なる点 P_1f(P_2)>2f(P_1) なる点 P_2,等々がある.P_1,P_2,\ldots は,無数の相異なる点で,K は有界なる閉区域だから,K において集積点を有する(定理 9).その一つを A とする.さて P_1,P_2,P_3,\ldots の部分列で,A に収束するものを取って,それを P_{\alpha_1},P_{\alpha_2}, \ldots,P_{\alpha_n},\ldots とする(15 頁参照).然らば \lim_{n\to\infty}f(P_n)=f(A).然るに f(P_{\alpha_n})>2^{\alpha_n}f(P_0) で,\alpha_n は限りなく大きくなるのだから,これは不合理である.故に f(P) は上界を有する.下界も同様.

よって K における f(P) の値の上限,下限を M,m とする.定理の後の部分は K において f(P)=M,f(Q)=m なる点 P,Q が存在することである.

もしも K において f(P)\ne M とするならば,F(P)=\tfrac{1}{M-f(P)}K において連続である.然るに M-f(P) はどのようにも小さくなるから,F(P) は有界でない.それは不合理である.故に K において,f(P_0)=M なる点 P_0 がある.f(P)M よりも大きくはならないから,M=f(P_0) が最大値である.最小値も同様.

定理 1213 を総括していえば,閉区域における連続函数の値域は閉区間 [m,M] である.

定理 14.
[連続の一様性]. 有界なる閉区域 K において,f(P) は連続とする.正なる \varepsilon が任意に与えられたとき,それに対応して正なる \delta があって,区域 K の任意の点 P,Q に関して
(1)
PQ<\delta なるとき |f(P)-f(Q)|<\varepsilon
になる.
[注意] 
まず定理の意味を説明する.K に属する一点 P を固定すれば,f(P)P において連続だから
(2)
PQ<\delta_P なるとき |f(P)-f(Q)|<\varepsilon
なる \delta があるが,P が変動すれば,\delta も変わるであろうから,それを明示するために,\delta の代りに \delta_P と記したのである[* 1].然るに定理は P の位置にかかわらず,一定の \delta をもって (1) が成り立つというのである.故にそれを連続の一様性という[* 2]
区域 K における f(P) の連続性として,(1) が成り立つことを要望するのは,自然であるが,一点 P における f(P) の連続性を (2) のようにいい表わすのは技巧的である.然るに我々は各点 P における‘原子的’の連続性をもって,区域 K における連続性を定義した.このような暫定的の定義によって,はたして上記の要望が満たされるであろうか.そこに問題があるのだが,少なくとも有界なる閉区域に関しては,我々は然りと答えうるのである.
[証]
K に属する点 P を中心として半径 r の円を画いて,その周上および内部の点の集合を C(P,r) と名づける.円 C(P,r) は区域 K の外に跨る場合もあろう.よって,C(P,r) の点の中で,K にも属する点の集合を C_r' とする.C_r' は有界なる閉集合だから(16 頁脚註),定理 13 によって,C_r' における函数 f の最大値と最小値が存在する.その差を,その円 C(P,r) に関する f の振動量といい,それを v(P,r) と書く.然らば P を固定すれば,r が増大するに従って,v も増大(不減少)する.いま,閉集合 K に関する f の振動量を V とする.もしも,0\leqq V<\varepsilon ならば定理は明白である.よって,0<\varepsilon\leqq V のときに証明をする.そのとき v(P,r)<\varepsilon なる r に上限がある.それを \rho とする.\rhoP の函数だからそれを \rho(P) と書けば,\rho(P)>0 である.実際,fP において連続だから,十分小なる r_0>0 をとれば,C_{r_0}' に属する任意の二点 A,B に関し

  |f(A)-f(P)|<\frac\varepsilon2,\ |f(B)-f(P)|\frac\varepsilon2.
従って,

  |f(A)-f(B)|\leqq|f(A)-f(P)|+|f(B)-f(P)|<\varepsilon.
故に,v(P,r_0)<\varepsilon.それは,\rho(P)\geqq r_0 を意味する.すなわち,\rho(P)>0 さて \rho(P) は連続函数であることを示そう.今円 C(P,\rho) の内部に K に属する点 Q を取って,Q を通る直径 AB を引く.Q を中心とし QA よりも小なる半径を有する円は C(P,\rho) の内部にあるから,その中における f の振動量は \varepsilon よりも小である.従って \rho(Q)\geqq QA.また Q を中心として,QB よりも大なる半径を有する円は C(P,\rho) を内部に含むから,その中における f の振動量は \varepsilon よりも小でない(さもなければ C(P,\rho) が拡大される).従って \rho(Q)\leqq QB.さて QA=\rho(P)-PQ,QB=\rho(P)+PQ だから

  \rho(P)-PQ\leqq\rho(Q)\leqq\rho(P)+PQ,
従って
|\rho(P)-\rho(Q)|\leqq PQ,
すなわち \rho(P) は連続である. 有界なる閉区域 K において連続なる \rho(P) は最小値を有する(定理 13).それを \rho_0 とすれば,\rho(P)>0 だから,\rho_0>0v(P,\rho_0/2)\leqq v(P,\rho/2)<\varepsilon.すなわち PQ<\rho_0 なるとき |f(P)-f(Q)|\leqq v(P,\rho_0)\leqq \varepsilon
(証終)

  1. 明確を欲するならば,\delta_PP における \delta の上限とするがよい.然らば \delta_PP の函数として確定する: \delta_P=\delta(P).
  2. 一様(uniform)を平等(gleichmässig)ともいう.


[編集] 12.区域・境界

区域,境界などという語を上文しばしば用いたが,ここで少しくその意味を明確にして置こう.以下述べることは,各次元に通用するが,一次元ないし三次元を連想して考えればよい.

内点・外点・境界
点集合 S に属する一つの点 P に十分近い点がすべて S に属するとき,PS内点という.

S に属しない点 P に十分近い点が,一つも S に属しえないとき,PS外点という.S に属しない点の全体を S余集合という.それを S' と書くならば,S の外点はすなわち S' の内点である.S''S 自身である.よって SS' とは互に余集合であるという.

S の内点でも外点でもない点の全体を S境界という.故に P を境界の点とすれば,どのように P に近いところにでも,S に属する点もあり,また S に属しない点,すなわち S' に属する点もある.(ただしこれは P 自身をも入れていう.)

この定義に従えば,S の境界は同時に S' の境界である.境界の点は SS' とに分属する.(といってもすべて S に属し,またはすべて S' に属することもある.)S が空間のすべての点の集合である場合を除けば,S は内点または外点を一つも有しないことはあるが,境界点は必らず存在する.――実際,点 AS に属し,BS' に属するとして,線分 AB 上の点を考察すれば,まず AS の内点でないならば,A がすでに境界点である.もしまた AS の内点ならば,線分 AB 上で,A に十分近い点はすべて S の内点である.今 AB 上で,線分 AP の点がすべて S の内点であるような点 P に着眼して,AP の長さを x とするならば,BS に属しないのだから,x に上限がある.それを x_0 として AP_0=x_0 とすれば,P_0 は境界点である.

一例として S を平面上の有理点(すなわち座標 x,y が共に有理数なる点)の集合とすれば,平面上の各点が S の境界の点である.内点,外点は一つもない.

内点,外点,境界点は直感的ないい表わしであるが,それらの定義を上記の文句どおり素直に受け入れて,論理的に考えるならば,この例のような‘非常識’な場合も容易に承認されるであろう.このような論理的の態度が解析学の理解に絶対的に必要であって,それがなくては,応用が不安心であろう.
開集合・閉集合
集合 S の各点が内点であるとき,S開集合という.S の集積点がすべて S に属するとき,S を閉集合ということはすでに述べた(§7).

互に余集合なる二つの集合 S,S' の中一つが開集合ならば,外の一つは閉集合である.

開集合は空間の次元に関係する.例えば,平面上では,一つの円の内部(内部の点の全体の集合)は開集合である.しかし三次元空間における点集合としては,それは一つの内点をも有しない.それとは違って,閉集合は次元に関係しない.例えば円周をも入れていえば,円は三次元空間においても閉集合である.円周だけでも,すでに閉集合である.開集合,閉集合は反対語ではない.

集合 S の内点全部の集合を S開核(または)という.それをかりに (S) と書くならば,(S) は開集合で,しかも S に含まれる最大の開集合である.

また S の集積点で S に属しないものがあれば,それを S に合併して生ずる集合を S閉包という.それをかりに [S] と書けば,[S] は閉集合,しかも S を含む最小の閉集合である.

[S] から (S) を除いた残りはすなわち S の境界である.

集合 S の部分集合 T[T]\supset S を満たすとき,TS の中に稠密に分布しているという.例えば,有理数全体の集合は,実数全体の集合の中に稠密に分布している.
点集合の間の距離
二つの点集合 A,B にそれぞれ属する点 P,Q の間の距離の下限を集合 A,B距離という.すなわち距離を記号 \rho で表わせば A,B が有界で共通点を有しないならば,A,B の境界上の或る点 P_0,Q_0 において \rho(P_0,Q_0)=\rho(A,B)
[証]
下限の意味によって,P_n\in A,Q_n\in B,\rho(P_n,Q_n)\to\rho(A,B) なる点列 \{P_n\},\{Q_n\} がある(15 頁[注意 1]).そこで,A は有界だから,点列 \{P_n\} から収束する部分点列 \{P_m\} を抽き出せば(15 頁[注意 2]),\rho(P_m,Q_m)\to\rho(A,B).今度は \{Q_m\} の中から,同様にして,収束する部分点列 \{Q_k\} を抽き出せば[* 2]\rho(P_k,Q_k)\to\rho(A,B).さて,P_k\to P_0,Q_k\to Q_0 とすれば,\rho(P,Q)P,Q に関して連続であるから,\rho(P_k,Q_k)\to\rho(P_0,Q_0).従って \rho(P_0,Q_0)=\rho(A,B).このような P_0A の内点ではありえない.(もしも P_0A の内点ならば,仮定によって,A,B に共通点はないから,\rho(P_0,Q_0)>0 で,線分 P_0Q_0 の上に,P_0'\in A,\rho(P_0',Q_0)<\rho(P_0,Q_0) なる点 P_0' があるであろう.)然るに A の点列 \{P_k\}P_0 に収束するから,P_0A の外点ではありえない.すなわち P_0A の境界点である.同様に Q_0B の境界点である.
(証終)

特に A,B が有界なる閉集合ならば P_0\in A,Q_0\in B.この場合,A,B に共通点がないならば,\rho(A,B)>0

集合 A,B のどちらかが閉集合でなければ,共通点がなくても \rho(A,B)=0 なることがある.(例えば A,B が互に余集合なるとき.)

点集合の径とは,それに属する二点間の距離の上限であった(§7).すなわち径を \delta と書けば,

 \delta(A)=\sup \rho(P,Q),\quad P\in A,\quad Q\in A.
集合 A が有界ならば,A の境界上の二点 P_0,Q_0 において

  \delta(A)=\rho(P_0,Q_0).
証明は上記と同様.
領域・閉域
区域というのは,一つの点集合である.しかし,通例,我々は区域は内点を有することを要求し,また区域が連結されていることを要求する.連結の意味は開集合および閉集合に関しては次のように明確に述べられる.

開集合は,それが共通点を有しない二つの開集合に分割されえないときに,連結されているという.

連結された開集合を領域という.領域は開集合だから,境界点を含まないが,領域にそれの境界点を付け加えた点集合,すなわち領域の閉包を閉域という.

K を領域とすれば,K に属する任意の二点を K に属する連続線(例えば線分または折線)で連結することができる.

K 内の一点 A に,K 内の連続線で結ばれる点と,結ばれない点とがあれば,それらは別々に開集合を作るであろう.)

閉集合も同様で,それが共通点を有しない二つの閉集合に分割されえないときに,連結されているという.連結されている閉集合が少なくとも二点を含むとき,それを連続体という.

二次元以上でも,点 P を含む任意の領域(または一般に開集合)を点 P近傍というが,近傍の径は,適宜,十分小さくとる.

[例 1]
一次元で,S を開集合,xS の一点とすれば,x は内点だから,Sx を含む或る開区間を含む.そのような区間の左端の下限を a,右端の上限を b とすれば,S は開区間 (a,b) を含む.開区間 (a,b) は一つの領域である.ただし a=-\infty,または b=+\infty なる場合もある.もしも S(a,b) に含まれない点 x_1 を含むならば,Sx_1 を含む開区間 (a_1,b_1) を含み,(a,b)(a_1,b_1) とは共通点を有しない.ただしその端が一致することは可能である.例えば b=a_1.そのとき a_1S に属しないのだから,(a,b)(a_1,b_1) とは連結されていない.すなわち S は一個以上または無数の共通点を有しない開区間の合併である. S が閉集合で,内点を有するならば,それを含む閉区間 [a,b]S に属して,S は無数の互に隔離した閉区間を含みうるが,S はまた孤立する点をも含みうる.その場合,それらの孤立点の集積点があれば,それも含まねばならない.
円内の一点または円内の一つの線分を除いた領域および円の全部にその周上の一点から外部へ引かれた一つの線分を付け加えた閉集合
[例 2]
二次元では,円の内部は領域で,円周はその境界である.円内の一点または円内の一つの線分を除いても,残りは領域で,除いた点または線分は境界である.しかし,それの閉包は円の全部(周をも入れて)である.その周上の一点から外部へ引かれた一つの線分(端をも入れて)をつけ加えても閉集合であるが,それの核は円の内部,その核の閉包は円板で,円外に引いた線分を含まない.
正方形  の内部から無数の縦線上の点を除いて得られる無数の領域および正方形  を付け加えた領域
[例 3]
正方形 Q の内部(0<x<1,0<y<1)を S とすれば,S は領域であるが,S から x=\tfrac1n\,(n=2,3,\ldots) なる縦線上の点を除けば,残りの S_1 は開集合であるが,連結が失われて,無数の領域に分割される. もしも x 軸の下側において,正方形 Q'0<x<1,-1<y\leqq 0)を S_1 に付け加えて,それからさらに点 (\tfrac1n,0),(n=2,3,\ldots),を除いた集合 S_2 を作れば,連結が回復されて一つの領域が生ずる.S_2 の境界は Q,Q' の外周と Q から除いた縦線(下端をも入れて)上の点である.Q の左辺(x=0,0<y\leqq 1)の点は S_2 の境界であるが,そこへは領域内からは到達されない.すなわち,それらの点を内点のみを通る線で一つの内点と連結することができない.境界論はやっかいである.
本書で取扱う区域は,たいがいは境界が一つの連続曲線であるものに限る.

然らば曲線とは何をいうか.我々は解析学において便宜上幾何学的の用語を使うけれども,空間的の直観を論理の根拠とはしないつもりだから,このような問題が生ずる.

今かりに次のように曲線の定義を立ててみる(二次元).

媒介変数 t は閉区間 a\leqq t\leqq b において変動し,x=\varphi(t),y=\psi(t)t の連続函数なるとき,点 P=(x,y) の軌跡が一つの曲線である.起点 A=(\varphi(a),\psi(a)) と終点 B=(\varphi(b),\psi(b)) とを連結する一つの曲線である.

我々が直観的に連続なる線[* 3]と考えるものは皆この定義に適合するが,逆は真でない.すなわち,この定義に適合するものをすべて線というならば,意外なものが線の名の下に包括されてしまう.(自縄自縛!)

始点  と終点  とを連結する一つの曲線とその上の動点

まず t の相異なる値に同一の点 (x,y) が対応することが可能である.そのような点を重複点と名づけよう.しからば,上記の定義の下においては,重複回数が無限なる重複点も可能であり,また重複点が無数にあることも可能である.実際 Peano(1890)は,重複点が無数にあることも許されるとして,一つの正方形の内部の各点をすべて洩れなく通過する曲線の実例を作って,当時の数学会を驚かせた.このような曲線は迷惑である.上記の定義は曲線の定義として,あまりに広範に過ぎるのである.

そこで,上記の定義に,重複点の存在を許さないという制限を付け加えて,そのような曲線を Jordan 曲線という.然らば Jordan 曲線とは,その点が一つの線分(a\leqq t\leqq b)上の点と一対一に,かつ連続的に,対応する点集合である.それは線分の位相的写像というものである.もしも,区間の両端 t=a,t=b に対応する点のみが一致するときは,Jordan 閉曲線という.それは一つの円周の位相的写像である.

二次元においては,Jordan 閉曲線は平面を内外の二領域に分割して,それらの二領域に共通なる境界を成すものである.(その証明は存外むずかしい.)

この後,本書で取扱う二次元の区域は大概 Jordan 閉曲線を境界とするものに限るが,なお我々はその曲線に多大の制限(接線の存在,接線の連続的変動等々)を加える.

三次元以上では,区域の境界はいっそうむずかしくなる.しかし球や立方体は簡明で,それらを適当に活用すれば,応用の範囲は存外に広いのである.

  1. P\in A は点 P が集合 A に属することの記号(既出,11 頁).記号 \inf も既出(23 頁).
  2. 番号 m は自然数の一部分,また \{k\}\{m\} の一部分である.
  3. 文字に拘泥しないで線を曲線(curve)という.直線も曲線の中へ特別の場合として入れる.


[編集] 練習問題(1)

(1)
a_1>b_1>0;\; a_n=\tfrac12(a_{n-1}+b_{n-1}),b_n=\sqrt{a_{n-1}b_{n-1}} とすれば,数列 a_n,b_n は同一の極限値に収束する.この極限値を a_1,b_1算術幾何平均という(Gauss).
(2)
a>0,b>0;\; a_1=\tfrac12(a+b),b_1=\sqrt{a_1b},一般に a_n=\tfrac12(a_{n-1}+b_{n-1}),b_n=\sqrt{a_{n}b_{n-1}} とすれば,l=\lim_{n\to\infty}a_n=\lim_{n\to\infty}b_n が存在する.
[1º]
|a|<b のとき,a=b\cos x,\,-\pi<x<\pi,と置けば,l=b\tfrac{\sin x}x.
[2º]
a>b>0 のとき,a=b\cosh x と置けば,l=b\tfrac{\sinh x}x.ただし \cosh x=\tfrac{e^x+e^{-x}}2,\,\sinh x=\tfrac{e^x-e^{-x}}2§54 参照).
[注意] 
[1º] において,直径 1 なる円に内接,外接する辺数 n の正多角形の周の長さを p(n),P(n) と書いて,a=1/P(k),b=1/p(k) とすれば,a_n=1/P(2^nk),b_n=1/p(2^nk) で,極限 l=1/\pi.故に k=4 または k=6 として,\pi の近似値が求められる.これは円周率 \pi の素朴なる計算法の整理である.ただし収束は,はなはだ緩慢である.
(3)
有界なる数列 a_n,b_n に関して
\begin{align}
  \varlimsup(a_n+b_n) &\leqq \varlimsup a_n +\varlimsup b_n,\\
  \varliminf(a_n+b_n) &\geqq \varliminf a_n +\varliminf b_n,
\end{align}
ここで \geqq または \leqq= で置き換えられない.例: a_n=(-1)^n,b_n=(-1)^{n+1}.

和の代りに差,積,商を取ればどうか.

(4)
x が無理数ならば,f(x)=0x=\tfrac{p}{q} が有理数(\tfrac{p}{q} は既約分数で,q>0)ならば,f(x)=\tfrac{1}q とする.このようにして区域 x>0 において定義される函数 f(x) の連続性はどうであるか
[解]
x が有理数ならば,x において不連続.x が無理数ならば,x において連続
問題を少しく変更して,x が小数 n 桁までの十進数(すなわち x=\tfrac{p}{10^n}p10 で割れない整数)なるとき,f(x)=\tfrac{1}{10^n} で,その他の x に対しては f(x)=0 とするならば,結果は同様である.
(5)
f(x),g(x)[a,b] において連続とする.もしも [a,b] 内に稠密に分布されている点 x において(例えば x が有理数なるとき)f(x)g(x) が相等しい値を取るならば,[a,b] のすべての点 x において f(x)=g(x)

二次元以上でも同様である.

(6)
f(x) は或る区間 [a,b] の有理数 x に関してのみ定義されていて,かつ連続の条件を満足するとする.すなわち \varepsilon\text{-}\delta 式でいえば |x-x'|<\delta なるとき,|f(x)-f(x')|<\varepsilon.そのとき,f(x) の定義を拡張して区間 [a,b] において連続なる函数が得られるであろうか? (例: 25 頁に述べた a^x の拡張.)
[解]
必要かつ十分なる条件は,上記の連続条件が一様性を有すること(\varepsilon のみに関係して x,x' に関係しない \delta が存在すること)である.25 頁で,a^x に関しては単調性を用いたが,今度は Cauchy の判定法を用いる.
有理数というのは一例で,区間内において稠密なる点集合でもよい.また二次元以上でも同様である.
(7)
f(x)(a,\infty) で連続で \lim_{x\to\infty}(f(x+1)-f(x))=l ならば \lim_{x\to\infty}\frac{f(x)}x=l.(Cauchy
[解]
f(x)f(x)-lx を代用すれば l=0 なる場合に帰して,幾分か簡単になる.一例として f(x)=\log x が挙げられる.
(8)
f(x) は区域 K における連続函数で,x が区域 K に属するとき,f(x) は区域 G に属するとする.また,g(y) は区域 G における連続函数とする.然らば,g(f(x)) は区域 K における連続函数である.

要約すれば,連続函数の連続函数は連続函数である.二次元以上でも同様である.

(9)
a>0 のとき (a^x)^y=a^{xy} はすべての実数値 x,y に関して成り立つ.ただし,x,y が有理数なるとき,それは既知とする.
[解]
f(x,y)=x^yx>0,y>0 において,x,y の連続函数であることを用いて,25 頁と同様に証明される(上記問題 (8) 参照).f(x,y) の連続性は,xy 平面上の有界なる区域で,f(x,y) が有理数 x,y に関して,一様に連続の条件(問題 (6))を満たすことから得られる.(この解法は,問題 (6) の適用の一例を示す.)




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