茶音頭
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世の中に勝れて花は吉野山、紅葉は立田、茶は宇治の、都の辰巳《たつみ》それよりも。里は都の未申《ひつじさる》。数寄《すき》とは誰が名に立てし、濃茶《こいちゃ》が色の深緑《ふかみどり》、松の位にくらべては。かこひと言ふも低けれど、情《なさけ》は同じ床飾《とこかざ》り、飾らぬ胸の裏表、帛紗《ふくさ》さばけぬ心から、聞けば思惑《おもわく》違い棚、逢ふて如何《どう》してかう筥《ばこ》の、柄杓《ひしゃく》の竹は直ぐなれど、そちは茶杓の曲《ゆが》み文字。憂さを晴しの初昔《はつむかし》、昔話の爺婆《じじばば》と、なるまで釜の中冷めず、縁はくさりの末永く、千代《ちよ》万代《よろずよ》もえ。
- 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』中、武蔵野書院、1975年。
この作品は1899年3月4日以前に公表されたもので、作者の死亡から100年以上経過しているため全世界でパブリックドメインの状態にあります。