[千九百七十三]
新約全書使徒パウロガラテヤ人に贈れる書
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人よりに非ず亦人に由ずイエス キリストと彼を死より甦らしゝ父なる神に由て立られたる使徒パウロ
二
及び我と偕に在すべての兄弟ガラテヤの諸教會に書を達る
三
なんぢら願くは父なる神および我儕の主イエス キリストより恩寵と平康を受よ
四
キリストハ我儕の父なる神の旨に循ひ今の惡世より我儕を救出さんとて我儕の罪の爲に己が身を捨たまへり
五
願くは榮彼に歸して世々に至れアメン
六
キリストの恩をもて爾曹を召たる者を爾曹が如此すみやかに離れて異なる福音に遷し事を我怪しむ
七
此ハ福音に非ず或人たゞ爾曹を擾しキリストの福音を更んとする也
八
我儕にもせよ天よりの使者にもせよ若われらが曾て爾曹に傳し所に逆ふ福音を爾曹に傳る者ハ詛るべし
九
我儕既に言しが今また我その如く言ん若なんぢらが受し所に逆ふ福音を爾曹に傳る者ハ詛るべし
十
今われ人の親を得んことを求ハゞキリストの僕に非ざるべし
十一
兄弟よ我なんぢらに示す我曾て爾曹に傳し所の福音ハ人より出るに非ず
十二
蓋われ之を人より受ず亦教られず惟イエス キリストの默示に由て受たれば也
十三
わが曩にユダヤ教に在しとき行ひたる事を爾曹聞り卽ち甚しく神の教會を窘かつ之を殘賊せり
十四
我また心を人よりも先祖等の遺傳に熱しユダヤ教に在てハ我が國人のうち年相若おほくの人に超りたり
十五
然ども我が母の胎を出し時より我を簡びおき恩をもて我を召給ひし神
十六
その子を異邦人の中に宣しめんがため心に善として彼を我が心に示し給へる其時われ直に血肉と謀ることを
[千九百七十四]
せず
十七
また我より先に使徒と作てエルサレムに在ところの者にも往ずアラビヤに往またダマスコに返れり
十八
三年を經て後ペテロを尋ん爲にエルサレムに上り十五日彼と偕に居しが
十九
他の使徒等にハ主の兄弟ヤコブを除てハ誰にも遇ざりき
二十
今わが爾曹に書遣る所は神の前に謊れる言なし
二一
厥後われスリヤ、キリキヤの地に至れり
二二
然どもユダヤに在キリストの諸教會ハ我が面を識ざりき
二三
只かれらハ前に己等を窘しもの今ハ其前に滅さんとしたる信仰の道を宣傳ふと聞
二四
我事に因て神を崇ることを爲り
十四年の後われバルナバと偕にテトスを偕ひて亦エルサレムに上る
二
わが上りしハ默示に循へるなり異邦人の中に於て我が宣し所の福音を彼等に告また私に名ある人等に之を告たり蓋いま勤る所の事の徒然ならざらんが爲なり
三
我と偕に在しテトスハギリシャ人なるになほ強てハ之に割禮を受させざりき
四
そハ私に入られし僞の兄弟あるに因てなり彼等の私に入しハ我儕がイエス キリストに在て有ところの自由を窺ひ我儕を奴隷とせんが爲なり
五
われら一時も之に服することをせず此ハ福音の眞つねに爾曹と偕に在んことを望めバ也
六
かの名ある者より我ハ受しことなし彼等ハ何なる人なるにもせよ我に於て與る所なし神ハ偏る者に非ず彼の名ある者われに誨を加しこと無なり
七
反て彼等ハペテロが割禮を受たる者に福音を傳ることを託られし如く我が割禮を受ざる者に福音を傳ることを託られしを見
八
(ペテロに能力を予て割禮を受たる人の使徒と爲し者また我にも能力を予て異邦人の使徒と爲り)
九
また我に賜し所の恩を知しにより柱と意るゝヤコブ、ケパ、ヨハ子も其右手を予て我
[千九百七十五]
とバルナバに交を結べり是われらハ異邦人に至り彼等ハ割禮を受たる者に至らん爲なり
十
彼等の惟ねがふ所ハ我儕が貧民を眷顧んことなり我儕も亦この事ハ素より進んで爲んとする所なり
十一
ペテロアンテオケに至りしとき彼に責べき所ありしに因われ當面これを詰めたり
十二
蓋ヤコブより來る者の未だ至らざる前にハペテロ異邦人と同に食したれども彼等が至るに及て割禮を受たる者を懼れ退きて異邦人と別たれバ也
十三
その餘のユダヤ人も彼と偕に僞の行をなしバルナバも遂に其僞の行に誘れたり
十四
我かれらが福音の眞に遵ひ正く行ハざるを見すべての人の前に於てペテロに曰けるハ爾ユダヤ人にして若し異邦人の如く行ひユダヤ人の如く行ハざるときは何ぞ異邦人を強てユダヤ人の例に遵ハせんと爲や
十五
夫われらは生來のユダヤ人にして異邦より出たる罪人に非ず
十六
然ど人の義とせらるゝは律法の行に由に非ず惟イエス キリストを信ずるに由なるを知この故に我儕も律法の行に由ずキリストを信ずるに由て義とせられんが爲にイエス キリストを信ず蓋律法の行に由て義とせらるゝ者なければ也
十七
若われらキリストに在て義とせられん事を欲ひなほ罪人ならばキリストは罪の僕なるか决て然らず
十八
我が先に毀し此ものを今もし復び建なば自ら其罪人なるを顯すなり
十九
我れ律法により律法に向ひて死り是神に向ひて生ん爲なり
二十
我キリストと偕に十字架に釘られたり既われ生るに非ずキリスト我に在て生るなり今われ肉體に在て生るなり今われ肉體に在て生るハ我を愛して我が爲に己を捨し者すなハち神の子を信ずるに由て生るなり
二一
我ハ神の恩を徒然せず若し義とせらるゝこと律法に由ばキリストの死は徒然なる業なり
[千九百七十六]
愚なる哉すでにイエス キリストの十字架に釘られし事を明かに其目前に著されたるガラテヤ人よ誰が爾曹を誑かしゝ乎
二
我たゞ此事を爾曹が靈を受しは律法を行ふに由か將きゝて信ぜしに由か
三
爾曹かく愚なる乎なんぢら靈に因て始り今肉に因て全うせらるゝ乎
四
なんぢら如此おほくの苦を徒然に受しや實に徒然には有まじ
五
それ爾曹に靈を予へかつ奇跡を行はしめ給ふ者の如此なすは爾曹が律法を行ふに由てなる乎または聞て信ぜしに由てなる乎
六
即ちアブラハム神を信じ其信仰を義と爲れたるが如し
七
是故に信仰による者は是アブラハムの子なりと爾曹知べし
八
かつ聖書すでに信仰に由て神の異邦人を義と爲給ふことを預じめ曉まづ福音をアブラハムに傳て諸国の民は爾に由て福を獲んと云り
九
是故に信仰に由ものは信仰ありしアブラハムと偕に福を受
十
凡そ律法の行に由ものは詛るべし蓋律法の書に載たる凡の事を恒に行ハざる者は詛ると錄されたれば也
十一
かつ義人は信仰に由て生べしと有バ律法に由て義とせらるゝ者なきことは明かなり
十二
それ律法は信仰に由ず即ち曰これを行ふ者ハ之に由て生べしと
十三
キリスト既に我儕の爲に詛ハるゝ者となりて我儕を贖ひ律法の詛より脱しめ給へり蓋すべて木に懸る者ハ詛れし者なりと錄されたれば也
十四
是アブラハムに約束し給ひし恩惠イエス キリストに由て異邦人にまで及び我儕にも信仰に由て約束の靈を受しめん爲なり
十五
兄弟よ我いま人の事に由て曰ん人の契約だに既に定れバ之を廢また加ふることなし
十六
それ約束ハアブラハムと其裔とに立給ひし者にして多の人を指て裔々と言るに非ず惟一人を指て爾の裔と言る也此即ちキリストなり
十七
我これを言ん神の預じ
[千九百七十七]
め定給ひし契約は四百三十年のちの律法これを棄その約束の言を徒然することをせざる也
十八
嗣業と爲こと若し律法に由バ約束にハ由ざるべし然ど神ハ約束に由て之をアブラハムに賜へり
十九
然らバ律法の用ハ何ぞや此ハ約束を受べき裔の來るまで罪の爲に加へし者にて天使等により中保の手に備へ給ひし也
二十
それ中保ハ一人に屬る者に非ず神ハ即ち一人なり
二一
然らバ律法ハ神の約束に反るや决て非ず若し人を生しうる律法を賜りしならバ義とせらるゝハ必ず律法に由べし
二二
然ども聖書ハ反て萬人を罪の下に拘幽たり此ハイエス キリストを信ずるに由る約束のものを諸 の信者に賜らんが爲なり
二三
信仰の來らざる先には我儕律法の下に拘幽られ且守れて其顯れんとする信仰を俟り
二四
かく律法ハ我儕をして信仰に由て義とせらるゝ事を得しめんが爲に我儕をキリストに導く師傳となれり
二五
然ども今信仰すでに來たれば我儕もハや師傳の下にあらず
二六
爾曹ハ皆キリスト イエスを信ずるに由て神の子となれり
二七
そハ凡そバプテスマを受てキリストに入る爾曹ハキリストを衣たる者なれば也
二八
斯る者の中にハユダヤ人またギリシャ人あるひハ奴隷あるひハ自主あるひハ男あるひハ女の分なし蓋なんぢら皆キリスト イエスに在て一なれば也
二九
若なんぢらキリストに屬する者ならバ爾曹ハアブラハムの裔すなハち約束に循ひて嗣子たる也
我いハん嗣子たる者ハ全業の主なれども其童蒙の時ハ僕に異なることなし
二
父の定し期いたるまで受託身および家宰の下に在
三
此の如く我儕も童蒙の時ハ此世の小学の下に在て僕たる也
四
然ども期すでに至るに及びて神その子を遣し給へり彼ハ女より生れ律法の下に
[千九百七十八]
生れたり
五
これ律法の下にある者を贖ひ我儕をして子たることを得しめんが爲なり
六
且なんぢら既に子たることを得しが故に神その子の靈を爾曹の心に遣りアバ父と呼しむ
七
是故に爾はもはや僕に非ず子なり既に子ならバ亦神に由て嗣子たる也
八
然ども爾曹神を識ざりし時ハ其實神に非ざる者に事て僕たりき
九
然ども爾曹いま神を識り反て神に識れたりと謂べし何ぞ弱く賤き小学に返りて復び之が僕たらんことを欲ふや
十
なんぢら愼て月と日と節と歳とを守る
十一
われ爾曹に就て危む恐くハ爾曹の爲に我が勤めし事の徒然ならんことを
十二
兄弟よ願くハ爾曹わが如くなれ蓋われ爾曹の如くなりたれバ也なんぢらハ我を害せしことなし
十三
曩に我よわき身にして爾曹に福音を傳しことハ爾曹の知ところ也
十四
爾曹を試る者の我が身に在しを爾曹ハ卑めず亦厭ず反て天使の如くキリスト イエスの如くに我を待ひたり
十五
爾曹その時の福ハ如何ありし乎われ爾曹に證す若し爲得べくば爾曹みづからの目を抉て我に予んとてまで願たり
十六
然るに我なんぢらに眞理を語りしに緣て我なんぢらの仇となりし乎
十七
彼等が爾曹に熱心なるハ善意に非ず爾曹を己に熱心ならしめんとて爾曹を離しめんとする也
十八
然ど唯わが爾曹と偕なる時のみならず善事の爲に常に熱心なるは宜きなり
十九
我が小子よ我なんぢらの心にキリストの狀成までハ復び爾曹の爲に産の劬勞をなす
二十
我いま爾曹と偕に在て口氣を改めんことを欲ふ蓋われ爾曹に就て惑バなり
二一
なんぢら律法の下に在んことを欲ふ者よ我に語れ爾曹律法を聞ざる乎
二二
錄してアブラハムに二人の子あり一人ハ婢より一人ハ自主の婦より生たりと有
二三
その婢より生れし者ハ肉に循ひ自主の婦より生れし者は約束に因て生れたる也
二四
こ
[千九百七十九]
の言ハ譬喩にして即ち此婦ハ二の契約に比ふべし一ハシナイ山より出て子を奴隷に生これ即ちハガルなり
二五
此ハガルハアラビアのシナイ山今のエルサレムに當るなり蓋かれ其諸子と偕に奴隷たれバ也
二六
然ど上に在ところのエルサレムハ自主にして是われらの母なり
二七
そハ錄して姙ず生ざる者よ喜べ産の劬勞せざる者よ聲を揚て呼れ寡居る者の子ハ夫ある者の子よりも多が故なりと有バなり
二八
兄弟よ我儕ハイサクの如く約束の子なり
二九
然ども當時の肉に循ひて生しもの靈に循ひて生れし者を窘し如く今も亦然り
三十
然ど聖書は何と言るや婢および其子を逐そは婢の子は自主の婦の子と共に嗣子となる可らざれば也と言り
三一
兄弟よ此の如なれバ我儕は婢の子に非ず此自主の婦の子なり
イエス キリスト我儕を釋て自由を得させたり是故に爾曹堅立て復び奴隷の軛に繋るゝ勿れ
二
我パウロ爾曹にいふ爾曹もし割禮を受なバキリスト更に爾曹に益なし
三
我また割禮を受たる各 の人に就て證す其人ハ全き律法を行ふべき者なり
四
なんぢら律法に由て義とせらるゝ者ハキリストと與りなく恩より堕たる者なり
五
われら望む所のもの即ち信仰を以て義とせらるゝことを靈に由て俟なり
六
夫キリスト イエスに在てハ割禮を受るも受ざるも益なく惟愛に由て行く所の信仰のみ益あり
七
なんぢら前にハ善走りたり誰が爾曹の眞理に循はざるやう阻ることを爲しや
八
その勸は爾曹を召者より出るに非ず
九
少許の麪酵ハ全團をみな發しむ
十
爾曹に就てハ我なんぢらが少しも異念を懷ざることを主に由て信ず誰にても爾曹なんぢらを煩はす者は其審判を受べし
十一
兄弟よ我もし今も尚割禮を宣バ何ぞ窘らるゝ事あらん乎もし然せば
[千九百八十]
既や十字架に礙くこと止べし
十二
爾曹を亂す者の自ら爾曹より離んことを願ふ
十三
そは兄弟よ爾曹は召を蒙りて自由を得たる者なれば也されど其自由を得る機會として肉に循ふ勿れ惟愛を以て互に事ることを爲よ
十四
それ己の如く爾の隣を愛すべしと曰る此一言すべての律法を全うする也
十五
なんぢら愼よ若たがひに呑噬はゞ恐くハ互に滅されん
十六
われ謂なんぢら靈に由て行むべし然ば肉の慾を成こと莫らん
十七
そハ肉の慾ハ靈に逆ひ靈の慾ハ肉に逆ひ此二のもの互に相敵る是故に爾曹好む所の事をなすを得ず
十八
然ど爾曹もし靈に導かるゝときハ律法の下に在ざるべし
十九
それ肉の行ハ顯著なり即ち苟合、汚穢、好色、
二十
偶像に事ること、巫術、仇恨、爭鬪、妒忌、忿怒、分爭、結黨、異端、
二一
娼嫉、兇殺、醉酒、放蕩、などの如し此等の事につき我甞て爾曹に斯る事をなす者は神國を嗣べからずと告しその如く今また預じめ之を告
二二
靈の結ぶ所の果ハ仁愛、喜樂、平和、忍耐、慈悲、良善、忠信、
二三
温柔、撙節かくの如き類を禁ずる律法ハある事なし
二四
夫キリストに屬する者ハ肉と其情および慾とを十字架に釘たり
二五
若われら靈に由て生なバ亦靈に由て行むべし
二六
互に怒たがひに妒むことを爲て虛榮を求る勿れ
兄弟よ若はからずも過に陥る者あらば爾曹のうち靈に感じたる者柔和なる心をもて之を爲正べし亦自己をも顧みよ恐くハ爾誘るゝこと有ん
二
なんぢら彼此の勞を任へ斯してキリストの律法を全すべし
三
人もし有ことなくして自ら有とせバ是みづから欺くなり
四
各人その行ところを勘へ視よ如此せバ誇る基ハたゞ己に在て人に非ず
五
そハ人おのゝゝ其荷を負べけれバ也
六
然ど道を教らるゝ者ハ道を教る者に凡て有益なる物を分予ふべし
七
自ら欺く勿れ
[千九百八十一]
神ハ慢るべき者に非ず蓋人の種ところの者ハ亦その穫ところと爲なり
八
己が肉のために種ものハ肉より敗壞ものを穫とり靈のために種ものハ靈より永生を穫とるべし
九
善を行ふに臆する勿れ蓋もし倦ことなくバ我儕時に至りて穫取べければ也
十
是故に若し機會あらバ衆の人に善を行べし信仰の徒にハ別て之を行べし
十一
爾曹わが親手なんぢらに書遣る字の何に大なるかを見よ
十二
凡そ肉について美しからんことを欲ふ者は爾曹に割禮を強ふ是たゞ己キリストの十字架の爲に窘らるゝことを免れんが爲なり
十三
そハ割禮をうけたる彼等なほ自ら律法を守ることをせず彼等が爾曹に割禮を受させんとするハ爾曹の肉に於て誇らんと欲ふなり
十四
然ど我には惟われらの主イエス キリストの十字架の外に誇る所なからんことを願ふ此キリストに由て我世に向へバ世ハ十字架に釘られ世の我に向ふも亦然り
十五
夫イエス キリストに於ては割禮を受るも受ざるも益なく唯新に作れし者のみ益あり
十六
凡そ此規矩に循ひて行む者に願くハ平康と恩惠とあれ神のイスラエルにも亦然り
十七
今よりのち誰も我を擾ハす勿れ蓋われ身にイエスの印記を佩たれバ也
十八
兄弟よ願くは我儕の主イエス キリストの恩なんぢらの靈と偕ならんことをアメン
新約全書加拉太書 終