夜
提供: Wikisource
< Wikisource:文学 < 『死刑宣告』
本文 [編集]
夜
萩原恭次郎
酔つぱらつてしまつた
食ひ飽きてしまつた墓場だ
金を払つて出て行つてしまつた墓場だ
胸もしぼむやうな蒼ざめた
ふるえる冷い炎が燃える墓場だ
人間の遁れざるあきらめの
骸骨が飛び出して来る墓場だ
夜はただかたまりに更けて行く——
黒い空しい行列が怖ろしい楽隊と一緒に進んで行く
夜は泥の手だ 泥の頭だ
疲れて行方もない 盲目のぼんやりした泥だ
みな堪え絶えに ひつそりと ふらふらに
歩つて行く一列だ!
泥の手だ! 泥の頭だ!
解題 [編集]
作者:萩原恭次郎
底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1
表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。