国土開発縦貫自動車道建設法

提供:Wikisource


公布時[編集]

国土開発縦貫自動車道建設法をここに公布する。

御名御璽
昭和三十二年四月十六日

内閣総理大臣 岸 信介


法律第六十八号
国土開発縦貫自動車道建設法
 (目的)

第一条 この法律は、国土の普遍的開発をはかり、画期的な産業の立地振興及び国民生活領域の拡大を期するとともに、産業発展の不可欠の基盤たる高速自動車交通網を新たに形成させるため、国土を縦貫する高速幹線自動車道を開設し、及びこれと関連して新都市及び新農村の建設等を促進することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律で「自動車道」とは、自動車(道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第二項に規定する自動車をいう。)のみの一般交通の用に供することを目的として設けられた道をいう。

 (国土開発縦貫自動車道の予定路線)

第三条 国土を縦貫する高速幹線自動車道として国において建設すべき自動車道(以下「国土開発縦貫自動車道」という。)の予定路線は、別表に掲げる中央自動車道のうち小牧市附近から吹田市までを別表のとおりとするのほか、別に法律で定める。

 政府は、すみやかに、前項の法律で定めるべき国土開発縦貫自動車道の予定路線に関する法律案を別表に定める路線を基準として作成し、これを国会に提出しなければならない。

 内閣総理大臣は、前項の規定により国会に提出すべき法律案の内容となるべき国土開発縦貫自動車道の予定路線を、国土開発縦貫自動車道建設審議会の議を経て、決定しなければならない。

 (国以外の者の行う建設)

第四条 政府は、別に法律で定めるところにより、国土開発縦貫自動車道の予定路線の一部について、国以外の者に高速幹線自動車道の建設を行わせることができる。

 (建設線の基本計画)

第五条 内閣総理大臣は、高速自動車交通の需要の充足、国土の普遍的開発の地域的な重点指向その他国土開発縦貫自動車道の効率的な建設をはかるため必要な事項を考慮し、国土開発縦貫自動車道の予定路線のうち建設を開始すべき路線(以下「建設線」という。)の建設に関する基本計画(以下「基本計画」という。)を立案し、国土開発縦貫自動車道建設審議会の議を経て、これを決定しなければならない。

 内閣総理大臣は、前項の規定により建設線の基本計画を決定したときは、遅滞なく、これを国の関係行政機関の長に送付するとともに、政令で定めるところにより、公表しなければならない。

 前項の規定により公表された事項に関し利害関係を有する者は、同項の公表の日から三十日以内に、政令で定めるところにより、国の行政機関の長にその意見を申し出ることができる。

 前項の規定による意見の申出があつたときは、国の行政機関の長は、これをしんしやくして、必要な措置を採らなければならない。

 (建設線の基本計画と関連する事項の調整)

第六条 内閣総理大臣は、第一条の目的を達成するため、建設線の基本計画にてらして必要があると認めるときは、次に掲げる事項に関し、国の行政機関の長の処分について必要な調整をすることができる。

 国土開発縦貫自動車道に接続する主要な道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第二条第一項に規定する道路をいう。以下同じ。)又は一般自動車道(道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第二条第八項に規定する一般自動車道をいう。以下同じ。)の整備又は建設

 国土開発縦貫自動車道の沿線における新都市又は新農村の整備又は建設

 (継続費)

第七条 建設線の基本計画に基く国土開発縦貫自動車道の建設に必要な資金については、これを財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第十四条の二の規定により継続費とすることができる。

 (資金の融通のあつせん)

第八条 政府は、建設線の基本計画にてらして必要があると認めるときは、第四条の規定により高速幹線自動車道の建設を行う者又は国土開発縦貫自動車道に接続する一般自動車道について当該事業の免許を受けた者に対し、当該路線の建設に必要な資金の融通をあつせんすることができる。

 (損失補償と相まつ生活再建又は環境整備のための措置)

第九条 国土開発縦貫自動車道の建設又は第四条の規定により行われる高速幹線自動車道の建設に必要な土地等を供したため生活の基礎を失う者がある場合においては、政府は、その者に対し、政令で定めるところにより、その受ける補償と相まつて行うことを必要と認める生活再建又は環境整備のための措置について、その実施に努めなければならない。

 (基礎調査)

第十条 政府は、別表に掲げる中央自動車道のうち小牧市附近から吹田市までの区間についてはこの法律の施行後、その他の国土開発縦貫自動車道の予定路線については第三条第一項の法律の施行後、すみやかに建設線の基本計画の立案のため必要な基礎調査を行わなければならない。

 (審議会の設置)

第十一条 総理府に国土開発縦貫自動車道建設審議会(以下「審議会」という。)を置く。

 (所掌事務)

第十二条 審議会は、次に掲げる事項をつかさどる。

 国土開発縦貫自動車道の予定路線に関し調査審議すること。

 建設線の基本計画に関し調査審議すること。

 建設線の建設に要する資金の調達及びその融通のあつせんに関し調査審議すること。

 国土開発縦貫自動車道に接続する主要な道路又は一般自動車道の整備又は建設に関し調査審議すること。

 国土開発縦貫自動車道の沿線における新都市又は新農村の整備又は建設に関し調査審議すること。

 その他第一条の目的を達成するために必要な事項に関し調査審議すること。

 (組織)

第十三条 審議会は、会長及び委員二十九人以内をもつて組織する。

 会長は、内閣総理大臣をもつて充てる。

 委員は、次に掲げる者をもつて充てる。

 大蔵大臣

 農林大臣

 通商産業大臣

 運輸大臣

 建設大臣

 国家公安委員会委員長

 自治庁長官

 経済企画庁長官

 衆議院議員のうちから衆議院の指名した者           八人

 参議院議員のうちから参議院の指名した者           五人

十一 学識経験がある者のうちから内閣総理大臣が任命する者 八人以内

 前項第十一号に掲げる委員の任期は、三年とする。ただし、再任されることができる。

 会長及び委員は、非常勤とする。

 (関係都道府県知事の意見の聴取)

第十四条 審議会は、その所掌事務を処理するため必要があるときは、関係都道府県知事の出席を求め、その意見をきくことができる。

 (資料の提出)

第十五条 国の関係行政機関の長は、審議会の求めに応じて、資料の提出、意見の陳述又は説明をしなければならない。

 (政令への委任)

第十六条 この法律に定めるもののほか、審議会の組織及び運営その他この法律を実施するため必要な事項は、政令で定める。

 この法律は、公布の日から施行する。

 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。

 第十五条第一項の表中売春対策審議会の項の次に次の一項を加える。
国土開発縦貫自動車道建設審議会 国土開発縦貫自動車道建設法(昭和三十二年法律第六十八号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を調査審議すること。


別表

路線名 起点 終点 主たる経過地
中央自動車道 東京都 吹田市 神奈川県津久井郡相模湖町附近 富士吉田市附近 静岡県安倍郡井川村附近 飯田市附近 中津川市附近 小牧市附近 大垣市附近 大津市附近 京都市附近
東北自動車道 東京都 青森市 浦和市附近 館林市附近 宇都宮市附近 福島市附近 仙台市附近 盛岡市附近 秋田県鹿角郡十和田町附近
北海道自動車道 函館市 稚内市 札幌市附近
釧路市 札幌市附近
中国自動車道 吹田市 下関市 兵庫県加東郡滝野町附近 津山市附近 三次市附近 山口市附近
四国自動車道 徳島市 松山市 徳島県三好郡池田町附近 高知市附近
九州自動車道 門司市 鹿児島市 福岡市附近 鳥栖市附近 日田市附近 熊本市附近 小林市附近
(内閣総理・大蔵・農林・通商産業・運輸・建設大臣署名)

改正[編集]

 (昭和三五年六月三〇日法律第一一三号) 抄

(施行期日)

第一条  この法律は、昭和三十五年七月一日から施行する。

(経過規定)

第三条  この法律の施行の際現にこの法律による改正前のそれぞれの法律の規定により内閣総理大臣若しくは自治庁長官がし、又は国家消防本部においてした許可、認可その他これらに準ずる処分は、この法律による改正後のそれぞれの法律の相当規定に基づいて、自治大臣がし、又は消防庁においてした許可、認可その他これらに準ずる処分とみなす。

 この法律の施行の際現にこの法律による改正前のそれぞれの法律の規定により内閣総理大臣若しくは自治庁長官又は国家消防本部に対してした許可、認可その他これらに準ずる処分の申請、届出その他の行為は、この法律による改正後のそれぞれの法律の相当規定に基づいて、自治大臣又は消防庁に対してした許可、認可その他これらに準ずる処分の申請、届出その他の行為とみなす。


法律第百十三号(昭三五・六・三〇)

  ◎自治庁設置法の一部を改正する法律
 (国土開発縦貫自動車道建設法の一部改正)

第二十四条 国土開発縦貫自動車道建設法(昭和三十二年法律第六十八号)の一部を次のように改正する。

  第十三条第三項中第七号を削り、第六号を第七号とし、第五号の次に次の一号を加える。
  六 自治大臣

この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 法律命令及官公󠄁文󠄁書
  2. 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
  3. 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁

この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。