刑法 (明治13年太政官布告第36号)
法令情報
刑法（けいほう）明治13年太政官布告第36号
- 公布：明治13年7月17日
- 施行：明治15年1月1日（明治14年太政官布告第36号による）
- 廃止：明治41年10月1日（明治40年4月24日法律第45号刑法の施行による）（ただし、刑法施行法（明治41年3月28日法律第29号）第25条により、「旧刑法第二編第四章第九節ノ規定ハ当分ノ内刑法施行前ト同一ノ効力ヲ有ス」。最大判昭和24年4月6日刑集3巻4号456頁は、「当分ノ内」について、「『当分ノ内』の字句があるとしても、他の法律によつて廃止されないかぎり法規としての効力を失つたものと言うことはできない」と判示している。）
- 沿革（法令全書の注釈による）
- 明治元年10月（第916）刑律は仮に旧幕府へ委任の刑律によりその中磔刑は弑逆に限りその他の重罪及び焚刑は梟首に換え追放所払は徒刑に換え流刑は蝦夷地に限り盗窃百両以下は罪不至死とし死刑は勅裁を仰がしむ○2年7月（付録第11）晒引廻し鋸引を廃す○2年8月（付録第14）磔梟首刎首徒刑笞刑の刑名を改定す○3年正月（第43）財産没籍の法を停む○3年7月（第437）偽造宝貨律を定む○3年8月（第521）販売鴉片烟律を定む○3年11月（第839）北海道流所規則を定るまで暫く流刑を停め準流法を設く○3年12月（第944）新律綱領を頒布す○4年正月（第33）宝貨偽造律の内三等流は準流法に照準せしむ○6年太政官第206号を以て改定律令を公布す○8年第110号布告を以て讒謗律を定む○13年第36号布告を以て刑法を改定す○14年第36号布告を以て15年1月1日より刑法を実施せしむ
凡例
- 異体字（正字、旧字）については、原則としてJIS第一水準及び第二水準の範囲内で、法令全書の活字に最も近いものを使用する。「しんにょう」（点が一つのものと二つのもの）、「示へん」（「示」と「ネ」）その他、活字と字画が多少異なっていても、いずれも上記範囲内のフォントを使用する。
- 例外として、JIS第一水準及び第二水準のフォントと字形が大きく異なる異体字、及び同フォントに収録されていない字については、Unicodeのフォントを使用した上で、環境により読めないことを考慮して、脚注を付す。
- 「┐」は「コト」と、送りがなの「子」は「ネ」と書き下す。
- 踊り字の「ヽ」は用いず、書き下す。
- 法令全書の明らかな誤植は修正する（「度量衝」→「度量衡」など）。
- 編・章・節番号は算用数字を用いる。
- 条番号は「第二十一條」を「第２１条」などと表記する。ただし本文中での条数の引用については、そのまま「第二十一條」などと表記する。
- 項番号は原文には付されていないが、便宜のため、第２項以下に算用数字で付した。
- 号番号の次には、便宜のため、一文字分の空白を挿入した。
布告文及び目録
[編集]刑法別册ノ通改定候條此旨布告候事
但實際施行ノ期日ハ追テ布告スヘキ事
（別册）
刑法
刑法目録
第一編 總則
第一章 法例
第二章 刑例
第一節 刑名
第二節 主刑處分
第三節 附加刑處分
第四節 徴償處分
第五節 刑期計算
第六節 假出獄
第七節 期滿免除
第八節 復權
第三章 加減例
第四章 不論罪及ヒ減輕
第一節 不論罪及ヒ宥恕減輕
第二節 自首減輕
第三節 酌量減輕
第五章 再犯加重
第六章 加減順序
第七章 數罪倶發
第八章 數人共犯
第一節 正犯
第二節 從犯
第九章 未遂犯罪
第十章 親屬例
第二編 公益ニ關スル重罪輕罪
第一章 皇室ニ對スル罪
第二章 國事ニ關スル罪
第一節 内亂ニ關スル罪
第二節 外患ニ關スル罪
第三章 静謐ヲ害スル罪
第一節 兇徒聚衆ノ罪
第二節 官吏ノ職務ヲ行フヲ妨害スル罪
第三節 囚徒逃走ノ罪及ヒ罪人ヲ藏匿スル罪
第四節 附加刑ノ執行ヲ遁ルル罪
第五節 私ニ軍用ノ銃礮彈藥ヲ製造シ及ヒ所有スル罪
第六節 往來通信ヲ妨害スル罪
第七節 人ノ住所ヲ侵ス罪
第八節 官ノ封印ヲ破棄スル罪
第九節 公務ヲ行フヲ拒ム罪
第四章 信用ヲ害スル罪
第一節 貨幣ヲ僞造スル罪
第二節 官印ヲ僞造スル罪
第三節 官ノ文書ヲ僞造スル罪
第四節 私印私書ヲ僞造スル罪
第五節 免状鑑札及ヒ疾病證書ヲ僞造スル罪
第六節 僞證ノ罪
第七節 度量衡ヲ僞造スル罪
第八節 身分ヲ詐稱スル罪
第九節 公選ノ投票ヲ僞造スル罪
第五章 健康ヲ害スル罪
第一節 阿片烟ニ關スル罪
第二節 飮料ノ浄水ヲ汚穢スル罪
第三節 傳染病豫防規則ニ關スル罪
第四節 危害品及ヒ健康ヲ害ス可キ物品製造ノ規則ニ關スル罪
第五節 健康ヲ害ス可キ飮食物及ヒ藥劑ヲ販賣スル罪
第六節 私ニ醫業ヲ爲ス罪
第六章 風俗ヲ害スル罪
第七章 死屍ヲ毀棄シ及ヒ墳墓ヲ發掘スル罪
第八章 商業及ヒ農工ノ業ヲ妨害スル罪
第九章 官吏涜職ノ罪
第一節 官吏公益ヲ害スル罪
第二節 官吏人民ニ對スル罪
第三節 官吏財産ニ對スル罪
第三編 身體財産ニ對スル重罪輕罪
第一章 身體ニ對スル罪
第一節 謀殺故殺ノ罪
第二節 毆打創傷ノ罪
第三節 殺傷ニ關スル宥恕及ヒ不論罪
第四節 過失殺傷ノ罪
第五節 自殺ニ關スル罪
第六節 擅ニ人ヲ逮捕監禁スル罪
第七節 脅迫ノ罪
第八節 墮胎ノ罪
第九節 幼者又ハ老疾者ヲ遺棄スル罪
第十節 幼者ヲ略取誘拐スル罪
第十一節 猥褻姦淫重婚ノ罪
第十二節 誣告及ヒ誹毀ノ罪
第十三節 祖父母父母ニ對スル罪
第二章 財産ニ對スル罪
第一節 竊盗ノ罪
第二節 強盗ノ罪
第三節 遺失物埋藏物ニ關スル罪
第四節 家資分散ニ關スル罪
第五節 詐欺取財ノ罪及ヒ受寄財物ニ關スル罪
第六節 贓物ニ關スル罪
第七節 放火失火ノ罪
第八節 決水ノ罪
第九節 船舶ヲ覆沒スル罪
第十節 家屋物品ヲ毀壊シ及ヒ動植物ヲ害スル罪
第四編 違警罪
本文
[編集]刑法
第１条 凡法律ニ於テ罰ス可キ罪別テ三種ト爲ス
一 重罪
二 輕罪
三 違警罪
第２条 法律ニ正條ナキ者ハ何等ノ所爲ト雖モ之ヲ罰スルコトヲ得ス
第３条 法律ハ頒布以前ニ係ル犯罪ニ及ホスコトヲ得ス
２ 若シ所犯頒布以前ニ在テ未タ判決ヲ經サル者ハ新舊ノ法ヲ比照シ輕キニ從テ處斷ス
第４条 此刑法ハ陸海軍ニ關スル法律ヲ以テ論ス可キ者ニ適用スルコトヲ得ス
第５条 此刑法ニ正條ナクシテ他ノ法律規則ニ刑名アル者ハ各其法律規則ニ從フ
２ 若シ他ノ法律規則ニ於テ別ニ總則ヲ掲ケサル者ハ此刑法ノ總則ニ從フ
第６条 刑ハ主刑及ヒ附加刑ト爲ス
２ 主刑ハ之ヲ宣告ス
３ 附加刑ハ法律ニ於テ其宣告スル者ト宣告セサル者トヲ定ム
第７条 左ニ記載シタル者ヲ以テ重罪ノ主刑ト爲ス
一 死刑
二 無期徒刑
三 有期徒刑
四 無期流刑
五 有期流刑
六 重懲役
七 輕懲役
八 重禁獄
九 輕禁獄
第８条 左ニ記載シタル者ヲ以テ輕罪ノ主刑ト爲ス
一 重禁錮
二 輕禁錮
三 罰金
第９条 左ニ記載シタル者ヲ以テ違警罪ノ主刑ト爲ス
一 拘留
二 科料
第１０条 左ニ記載シタル者ヲ以テ附加刑ト爲ス
一 剥奪公權
二 停止公權
三 禁治産
四 監視
五 罰金
六 沒收
第１１条 刑ヲ執行シ及ヒ犯人ヲ檢束スル方法細目ハ別ニ規則ヲ以テ之ヲ定ム
第１２条 死刑ハ絞首ス但規則ニ定ムル所ノ官吏臨檢シ獄内ニ於テ之ヲ行フ
第１３条 死刑ハ司法卿ノ命令アルニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス
第１４条 大祀令節國祭ノ日ハ死刑ヲ行フコトヲ禁ス
第１５条 死刑ノ宣告ヲ受ケタル婦女懐胎ナル時ハ其執行ヲ停メ分娩後一百日ヲ經ルニ非サレハ刑ヲ行ハス
第１６条 死刑ノ遺骸ハ親屬故舊請フ者アレハ之ヲ下付ス但式ヲ用ヒテ葬ルコトヲ許サス
第１７条 徒刑ハ無期有期ヲ分タス島地ニ發遣シ定役ニ服ス
２ 有期徒刑ハ十二年以上十五年以下ト爲ス
第１８条 徒刑ノ婦女ハ島地ニ發遣セス内地ノ懲役場ニ於テ定役ニ服ス
第１９条 徒刑ノ囚六十歳ニ滿ル者ハ通常ノ定役ヲ免シ其體力相當ノ定役ニ服ス
第２０条 流刑ハ無期有期ヲ分タス島地ノ獄ニ幽閉シ定役ニ服セス
２ 有期流刑ハ十二年以上十五年以下ト爲ス
第２１条 無期流刑ノ囚五年ヲ經過スレハ行政ノ處分ヲ以テ幽閉ヲ免シ島地ニ於テ地ヲ限リ居住セシムルコトヲ得
２ 有期流刑ノ囚三年ヲ經過スル者亦同シ
第２２条 懲役ハ内地ノ懲役場ニ入レ定役ニ服ス但六十歳ニ滿ル者ハ第十九條ノ例ニ從フ
２ 重懲役ハ九年以上十一年以下輕懲役ハ六年以上八年以下ト爲ス
第２３条 禁獄ハ内地ノ獄ニ入レ定役ニ服セス
２ 重禁獄ハ九年以上十一年以下輕禁獄ハ六年以上八年以下ト爲ス
第２４条 禁錮ハ禁錮場ニ留置シ重禁錮ハ定役ニ服シ輕禁錮ハ定役ニ服セス
２ 禁錮ハ重輕ヲ分タス十一日以上五年以下ト爲シ仍ホ各本條ニ於テ其長短ヲ區別ス
第２５条 定役ニ服スル囚人ノ工錢ハ監獄ノ規則ニ從ヒ其幾分ヲ獄舎ノ費用ニ供シ其幾分ヲ囚人ニ給與ス但現役百日以内ハ給與ノ限ニ在ラス
第２６条 罰金ハ二圓以上ト爲シ仍ホ各本條ニ於テ其多寡ヲ區別ス
第２７条 罰金ハ裁判確定ノ日ヨリ一月内ニ納完セシム若シ限内納完セサル者ハ一圓ヲ一日ニ折算シ之ヲ輕禁錮ニ換フ其一圓ニ滿サル者ト雖モ仍一日ニ計算ス
２ 罰金ヲ禁錮ニ換フル者ハ更ニ裁判ヲ用ヒス檢察官ノ求ニ因リ裁判官之ヲ命ス但禁錮ノ期限ハ二年ニ過クルコトヲ得ス
３ 若シ禁錮限内罰金ヲ納メタル時ハ其經過シタル日數ヲ扣除シテ禁錮ヲ免ス親屬其他ノ者代テ罰金ヲ納メタル時亦同シ
第２８条 拘留ハ拘留所ニ留置シ定役ニ服セス其刑期ハ一日以上十日以下ト爲シ仍ホ各本條ニ於テ其長短ヲ區別ス
第２９条 科料ハ五錢以上一圓九十五錢以下ト爲シ仍ホ各本條ニ於テ其多寡ヲ區別ス
第３０条 科料ハ裁判確定ノ日ヨリ十日内ニ納完セシム若シ限内納完セサル者ハ第二十七條ノ例ニ照シ之ヲ拘留ニ換フ
第３１条 剥奪公權ハ左ノ權ヲ剥奪ス
一 國民ノ特權
二 官吏ト爲ルノ權
三 勲章年金位記貴號恩給ヲ有スルノ權
四 外國ノ勲章ヲ佩用スルノ權
五 兵籍ニ入ルノ權
六 裁判所ニ於テ證人ト爲ルノ權但單ニ事實ヲ陳述スルハ此限ニ在ラス
七 後見人ト爲ルノ權但親屬ノ許可ヲ得テ子孫ノ爲メニスルハ此限ニ在ラス
八 分散者ノ管財人ト爲リ又ハ會社及ヒ共有財産ヲ管理スルノ權
九 學校長及ヒ敎師學監ト爲ルノ權
第３２条 重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ別ニ宣告ヲ用ヒス終身公權ヲ剥奪ス
第３３条 禁錮ニ處セラレタル者ハ別ニ宣告ヲ用ヒス現在ノ官職ヲ失ヒ及ヒ其刑期間公權ヲ行フコトヲ停止ス
第３４条 輕罪ノ刑ニ於テ監視ニ付シタル者ハ別ニ宣告ヲ用ヒス監視ノ期限間公權ヲ行フコトヲ停止ス
２ 主刑ヲ免シテ止タ監視ニ付シタル者亦同シ
第３５条 重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ別ニ宣告ヲ用ヒス其主刑ノ終ルマテ自ラ財産ヲ治ムルコトヲ禁ス
第３６条 流刑ノ囚幽閉ヲ免セラレタル時ハ行政ノ處分ヲ以テ治産ノ禁ノ幾分ヲ免スルコトヲ得
第３７条 重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ別ニ宣告ヲ用ヒス各本刑ノ短期三分ノ一ニ等シキ時間監視ニ付ス
第３８条 輕罪ノ刑ニ附加スル監視ハ之ヲ宣告ス但各本條ニ記載スルノ外監視ニ付スルコトヲ得ス
第３９条 死刑及ヒ無期刑ノ期滿免除ヲ得タル者ハ別ニ宣告ヲ用ヒス五年間監視ニ付ス
第４０条 監視ノ期限ハ主刑ノ終リタル日ヨリ起算ス主刑ノ期滿免除ヲ得タル時ハ其捕ニ就キタル日ヨリ起算ス
２ 若シ主刑ヲ免シテ止タ監視ニ付シタル時ハ其裁判確定ノ日ヨリ起算ス
第４１条 監視ニ付セラレタル者其情状ニ因リ行政ノ處分ヲ以テ假ニ監視ヲ免スルコトヲ得
第４２条 附加ノ罰金ハ之ヲ宣告ス若シ一月内ニ納完セサル時ハ第二十七條ノ例ニ照シ輕禁錮ニ換ヘ主刑滿限ノ後之ヲ執行ス
第４３条 左ニ記載シタル物件ハ宣告シテ官ニ沒收ス但法律規則ニ於テ別ニ沒收ノ例ヲ定メタル者ハ各其法律規則ニ從フ
一 法律ニ於テ禁制シタル物件
二 犯罪ノ用ニ供シタル物件
三 犯罪ニ因テ得タル物件
第４４条 法律ニ於テ禁制シタル物件ハ何人ノ所有ヲ問ハス之ヲ沒收ス犯罪ノ用ニ供シ及ヒ犯罪ニ因テ得タル物件ハ犯人ノ所有ニ係リ又ハ所有主ナキ時ノ外之ヲ沒收スルコトヲ得ス
第４５条 刑事ノ裁判費用ハ其全部又ハ幾分ヲ犯人ニ科ス但其費用ノ額ハ別ニ規則ヲ以テ之ヲ定ム
第４６条 犯人刑ニ處セラレ又ハ放免セラルルト雖モ被害者ノ請求ニ對シ贓物ノ還給損害ノ賠償ヲ免カルルコトヲ得ス
第４７条 數人共犯ニ係ル裁判費用贓物ノ還給損害ノ賠償ハ共犯人ヲシテ之ヲ連帶セシム
第４８条 裁判費用贓物ノ還給損害ノ賠償ハ被害者ノ請求ニ因リ刑事裁判所ニ於テ之ヲ審判スルコトヲ得若シ贓物犯人ノ手ニアル時ハ請求ナシト雖モ直チニ之ヲ被害者ニ還付ス
第４９条 刑期ヲ計算スルニ一日ト稱スルハ二十四時ヲ以テシ一月ト稱スルハ三十日ヲ以テシ一年ト稱スルハ暦ニ從フ
２ 受刑ノ初日ハ時間ヲ論セス一日ニ算入シ放免ノ日ハ刑期ニ算入セス
第５０条 刑ハ裁判確定シタル後ニ非サレハ之ヲ執行スルコトヲ得ス
第５１条 刑期ハ刑名宣告ノ日ヨリ起算ス若シ上訴ヲ爲シタル者ハ左ノ例ニ從フ
一 犯人自ラ上訴シテ其上訴正當ナル時ハ前判宣告ノ日ヨリ起算ス若シ其上訴不當ナル時ハ後判宣告ノ日ヨリ起算ス
二 檢察官ノ上訴ニ係ル者ハ其上訴正當ナルト否トヲ分タス前判宣告ノ日ヨリ起算ス
三 上訴中保釋ヲ得又ハ責付セラレタル者ハ其日數ヲ刑期ニ算入スルコトヲ得ス
第５２条 刑期限内逃走シ再ヒ捕ニ就キタル者ハ其逃走ノ日數ヲ除キ前後受刑ノ日ヲ計算ス
第５３条 重罪輕罪ノ刑ニ處セラレタル者獄則ヲ謹守シ悛改ノ状アル時ハ其刑期四分ノ三ヲ經過スルノ後行政ノ處分ヲ以テ假ニ出獄ヲ許スコトヲ得
２ 無期徒刑ノ囚ハ十五年ヲ經過スルノ後亦同シ
３ 流刑ノ囚ハ第二十一條ニ照シ幽閉ヲ免スルノ外假出獄ノ例ヲ用ヒス
第５４条 徒刑ノ囚ハ假出獄ヲ許サルルト雖モ仍ホ島地ニ居住セシム
第５５条 假出獄ヲ許サレタル者ハ行政ノ處分ヲ以テ治産ノ禁ノ幾分ヲ免スルコトヲ得但本刑期限内特別ニ定メタル監視ニ付ス
第５６条 假出獄中更ニ重罪輕罪ヲ犯シタル者ハ直チニ出獄ヲ停止シ出獄中ノ日數ハ刑期ニ算入スルコトヲ得ス
第５７条 刑期限内更ニ重罪輕罪ヲ犯シタル者ハ仮出獄ヲ許サス
第５８条 刑ノ執行ヲ遁レタル者法律ニ定メタル期限ヲ經過スルニ因テ期滿免除ヲ得
第５９条 主刑ハ左ノ年限ニ從テ期滿免除ヲ得
一 死刑ハ三十年
二 無期徒流刑ハ二十五年
三 有期徒流刑ハ二十年
四 重懲役重禁獄ハ十五年
五 輕懲役輕禁獄ハ十年
六 禁錮罰金ハ七年
七 拘留科料ハ一年
第６０条 剥奪公權停止公權及ヒ監視ハ期滿免除ヲ得ス
２ 附加ノ罰金ハ主刑ト共ニ期滿免除ヲ得
３ 沒收ハ五年ヲ經テ期滿免除ヲ得但禁制物ハ期滿免除ノ限ニ在ラス
第６１条 期滿免除ハ刑ノ執行ヲ遁レタル日ヨリ起算ス若シ捕ニ就キ再ヒ逃走シタル時ハ其逃走ノ日ヨリ起算シ闕席裁判ニ係ル時ハ其宣告ノ日ヨリ起算ス
第６２条 刑ノ執行ヲ遁レタル者ニ對シ逮捕ヲ命シタル時ハ最終ノ令状ヲ出シタル日ヨリ期滿免除ヲ起算ス
第６３条 公權ヲ剥奪セラレタル者ハ主刑ノ終リタル日ヨリ五年ヲ經過スルノ後其情状ニ因リ將來ノ公權ヲ復スルコトヲ得
２ 主刑ノ期滿免除ヲ得タル者ハ監視ニ付シタル日ヨリ五年ヲ経過スルノ後亦同シ
第６４条 大赦ニ因テ免罪ヲ得タル者ハ直チニ復權ヲ得特赦ニ因テ免罪ヲ得タル者ハ赦状中記載スルニ非サレハ復權ヲ得ス
２ 赦ニ因テ復權ヲ得タル者ハ自ラ監視ヲ免シタル者トス
第６５条 復權ハ勅裁ニ非サレハ之ヲ得可カラス
第６６条 法律ニ於テ刑ヲ加重減輕ス可キ時ハ後ノ數條ニ記載シタル例ニ照シテ加減ス但加ヘテ死刑ニ入ルコトヲ得ス
第６７条 重罪ノ刑ハ左ノ等級ニ照シテ加減ス
一 死刑
二 無期徒刑
三 有期徒刑
四 重懲役
五 輕懲役
第６８条 國事ニ關スル重罪ノ刑ハ左ノ等級ニ照シテ加減ス
一 死刑
二 無期流刑
三 有期流刑
四 重禁獄
五 輕禁獄
第６９条 輕懲役ニ該ル者減輕ス可キ時ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ處スルヲ以テ一等ト爲ス
２ 輕禁獄ニ該ル者減輕ス可キ時ハ二年以上五年以下ノ輕禁錮ニ處スルヲ以テ一等ト爲ス
第７０条 禁錮罰金ニ該ル者減輕ス可キ時ハ各本條ニ記載シタル刑期金額ノ四分ノ一ヲ減スルヲ以テ一等ト爲シ其加重ス可キ時ハ亦四分ノ一ヲ加フルヲ以テ一等ト爲ス
２ 輕罪ノ刑ハ加ヘテ重罪ニ入ルコトヲ得ス但禁錮ハ加ヘテ七年ニ至ルコトヲ得
第７１条 禁錮ヲ減盡シタル時ハ拘留[1]ニ處シ罰金ヲ減盡シタル時ハ科料ニ處ス禁錮罰金ヲ減シテ其短期十日以下寡數一圓九十五錢以下ニ及フ時ハ亦拘留科料ニ處スルコトヲ得
第７２条 拘留科料ニ該ル者加減ス可キ時ハ禁錮罰金ノ例ニ照シ其四分ノ一ヲ加減スルヲ以テ一等ト爲ス
２ 違警罪ノ刑ハ加ヘテ輕罪ニ入ルコトヲ得ス但拘留ハ加ヘテ十二日ニ至ルコトヲ得減シテ一日以下ニ降スコトヲ得ス科料ハ加ヘテ二圓四十錢ニ至ルコトヲ得減シテ五錢以下ニ降スコトヲ得ス
第７３条 禁錮拘留ヲ加減スルニ因テ其期限ニ零數ヲ生シ一日ニ滿サル時ハ之ヲ除棄ス
第７４条 附加ノ罰金ハ主刑ニ從テ加減シ其金額ノ四分ノ一ヲ加減スルヲ以テ一等ト爲ス若シ減盡シタル時ハ止タ主刑ヲ科ス
第７５条 抗拒ス可カラサル強制ニ遇ヒ其意ニ非サルノ所爲ハ其罪ヲ論セス
２ 天災又ハ意外ノ變ニ因リ避ク可カラサル危難ニ遇ヒ自己若クハ親屬ノ身體ヲ防衛スルニ出タル所爲亦同シ
第７６条 本屬長官ノ命令ニ從ヒ其職務ヲ以テ爲シタル者ハ其罪ヲ論セス
第７７条 罪ヲ犯ス意ナキノ所爲ハ其罪ヲ論セス但法律規則ニ於テ別ニ罪ヲ定メタル者ハ此限ニアラス
２ 罪トナルヘキ事實ヲ知ラスシテ犯シタル者ハ其罪ヲ論セス
３ 罪本重カル可クシテ犯ス時知ラサル者ハ其重キニ從テ論スルコトヲ得ス
４ 法律規則ヲ知ラサルヲ以テ犯スノ意ナシト爲スコトヲ得ス
第７８条 罪ヲ犯ス時知覺精神ノ喪失ニ因テ是非ヲ辨別セサル者ハ其罪ヲ論セス
第７９条 罪ヲ犯ス時十二歳ニ滿サル者ハ其罪ヲ論セス但滿八歳以上ノ者ハ情状ニ因リ滿十六歳ニ過キサル時間之ヲ懲治場ニ留置スルコトヲ得
第８０条 罪ヲ犯ス時滿十二歳以上十六歳ニ滿サル者ハ其所爲是非ヲ辨別シタルト否トヲ審案シ辨別ナクシテ犯シタル時ハ其罪ヲ論セス但情状ニ因リ滿二十歳ニ過キサル時間之ヲ懲治場ニ留置スルコトヲ得
２ 若シ辨別アリテ犯シタル時ハ其罪ヲ宥恕シテ本刑ニ二等ヲ減ス
第８１条 罪ヲ犯ス時滿十六歳以上二十歳ニ滿サル者ハ其罪ヲ宥恕シテ本刑ニ一等ヲ減ス
第８２条 瘖唖[2]者罪ヲ犯シタル時ハ其罪ヲ論セス但情状ニ因リ五年ニ過キサル時間之ヲ懲治場ニ留置スルコトヲ得
第８３条 違警罪ハ滿十六歳以上二十歳ニ滿サル者ト雖モ其罪ヲ宥恕スルコトヲ得ス
２ 滿十二歳以上十六歳ニ滿サル者ハ其罪ヲ宥恕シテ本刑ニ一等ヲ減ス十二歳ニ滿サル者及ヒ瘖唖者ハ其罪ヲ論セス
第８４条 此節ニ記載スルノ外特別ノ不論罪宥恕減輕ハ各本條ニ於テ之ヲ記載ス
第８５条 罪ヲ犯シ事未タ發覺セサル前ニ於テ官ニ自首シタル者ハ本刑ニ一等ヲ減ス但謀殺故殺ニ係ル者ハ自首減輕ノ限ニ在ラス
第８６条 財産ニ対スル罪ヲ犯シタル者自首シテ其贓物ヲ還給シ損害ヲ賠償シタル時ハ自首減等ノ外仍ホ本刑ニ二等ヲ減ス其全部ヲ還償セスト雖モ半數以上ヲ還償シタル時ハ一等ヲ減ス
第８７条 財産ニ對スル罪ヲ犯シ被害者ニ首服シタル者ハ官ニ自首スルト同ク前二條ノ例ニ照シテ處斷ス
第８８条 此節ニ記載スルノ外本條別ニ自首ノ例ヲ掲ケタル者ハ各其本條ニ從フ
第８９条 重罪輕罪違警罪ヲ分タス所犯情状原諒ス可キ者ハ酌量シテ本刑ヲ減輕スルコトヲ得
２ 法律ニ於テ本刑ヲ加重シ又ハ減輕ス可キ者ト雖モ其酌量ス可キ時ハ仍ホ之ヲ減輕スルコトヲ得
第９０条 酌量減輕ス可キ者ハ本刑ニ一等又ハ二等ヲ減ス
第９１条 先ニ重罪ノ刑ニ處セラレタル者再犯重罪ニ該ル時ハ本刑ニ一等ヲ加フ
第９２条 先ニ重罪輕罪ノ刑ニ處セラレタル者再犯輕罪ニ該ル時ハ本刑ニ一等ヲ加フ
第９３条 先ニ違警罪ノ刑ニ處セラレタル者再犯違警罪ニ該ル時ハ本刑ニ一等ヲ加フ但一年内再ヒ其違警罪裁判所ノ管轄地内ニ於テ犯シタル時ニ非サレハ再犯ヲ以テ論スルコトヲ得ス
第９４条 再犯加重ハ初犯ノ裁判確定ノ後ニ非サレハ之ヲ論スルコトヲ得ス
第９５条 刑期限内再ヒ罪ヲ犯スニ因リ刑ヲ宣告シタル時ハ先ツ其定役ニ服ス可キ者ヲ執行シ定役ニ服セサル者ヲ後ニス若シ初犯再犯共ニ定役ニ服スル刑ニ該ル時又ハ共ニ定役ニ服セサル刑ニ該ル時ハ先ツ其重キ者ヲ執行ス
２ 罰金科料ニ該ル者ハ順序ニ拘ハラス各之ヲ徴收ス
第９６条 陸海軍裁判所ニ於テ判決ヲ經タル者再ヒ重罪輕罪ヲ犯シタル時ハ初犯ノ罪常律ニ從ヒ處斷シタル者ニ非サレハ再犯ヲ以テ論スルコトヲ得ス
第９７条 大赦ニ因テ免罪ヲ得タル者ハ再ヒ罪ヲ犯スト雖モ再犯ヲ以テ論スルコトヲ得ス
第９８条 三犯以上ノ者ト雖モ其加重ノ法ハ再犯ノ例ニ同シ
第９９条 犯罪ノ情状ニ因リ總則ニ照シ同時ニ本刑ヲ加重減輕ス可キ時ハ左ノ順序ニ從テ其刑名ヲ定ム但從犯及ヒ未遂犯ノ減等其他各本條ニ記載スル特別ノ加重減輕ハ其加減シタル者ヲ以テ本刑ト爲ス
一 再犯加重
二 宥恕減輕
三 自首減輕
四 酌量減輕
第１００条 重罪輕罪ヲ犯シ未タ判決ヲ經ス二罪以上倶ニ發シタル時ハ一ノ重キニ從テ處斷ス
２ 重罪ノ刑ハ刑期ノ長キ者ヲ以テ重ト爲シ刑期ノ等シキ者ハ定役アル者ヲ以テ重ト爲ス
３ 輕罪ノ刑ハ其所犯情状最重キ者ニ從テ處斷ス
第１０１条 違警罪二罪以上倶ニ發シタル時ハ各其刑ヲ科ス若シ重罪又ハ輕罪ト倶ニ發シタル時ハ一ノ重キニ從フ
第１０２条 一罪前ニ發シ已ニ判決ヲ經テ餘罪後ニ發シ其輕ク若クハ等シキ者ハ之ヲ論セス其重キ者ハ更ニ之ヲ論シ前發ノ刑ヲ以テ後發ノ刑ニ通算ス但前發ノ刑罰金科料ニ該リ已ニ納完シタル者ハ第二十七條ノ例ニ照シ折算シテ後發ノ刑期ニ通算ス
２ 若シ前發ノ罪ヲ判決スル時未タ発セサル罪再犯ノ罪ト倶ニ發シタル者ハ其再犯ト比較シ一ノ重キニ從ヒ前發ノ刑ヲ通算セス
第１０３条 數罪倶ニ發シ一ノ重キニ從フ時ト雖モ其沒收及ヒ徴償ノ處分ハ各本法ニ從フ
第１０４条 二人以上現ニ罪ヲ犯シタル者ハ皆正犯ト爲シ各自ニ其刑ヲ科ス
第１０５条 人ヲ敎唆シテ重罪輕罪ヲ犯サシメタル者ハ亦正犯ト爲ス
第１０６条 正犯ノ身分ニ因リ別ニ刑ヲ加重ス可キ時ハ他ノ正犯從犯及ヒ敎唆者ニ及ホスコトヲ得ス
第１０７条 犯人ノ多數ニ因リ刑ヲ加重ス可キ時ハ敎唆者ヲ算入シテ多数ト爲スコトヲ得ス
第１０８条 事ヲ指定シテ犯罪ヲ敎唆スルニ當リ犯人敎唆ニ乗シ其指定シタル以外ノ罪ヲ犯シ又ハ其現ニ行フ所ノ方法敎唆者ノ指示シタル所ト殊ナル時ハ左ノ例ニ照シテ敎唆者ヲ處斷ス
一 所犯敎唆シタル罪ヨリ重キ時ハ止タ其指定シタル罪ニ從テ刑ヲ科ス
二 所犯敎唆シタル罪ヨリ輕キ時ハ現ニ行フ所ノ罪ニ從テ刑ヲ科ス
第１０９条 重罪輕罪ヲ犯スコトヲ知テ器具ヲ給與シ又ハ誘導指示シ其他豫備ノ所爲ヲ以テ正犯ヲ幇助シ犯罪ヲ容易ナラシメタル者ハ從犯ト爲シ正犯ノ刑ニ一等ヲ減ス但正犯現ニ行フ所ノ罪從犯ノ知ル所ヨリ重キ時ハ止タ其知ル所ノ罪ニ照シ一等ヲ減ス
第１１０条 身分ニ因リ刑ヲ加重ス可キ者從犯ト爲ル時ハ其重キニ從テ一等ヲ減ス
２ 正犯ノ身分ニ因リ刑ヲ減免ス可キ時ト雖モ從犯ノ刑ハ其輕キニ從テ減免スルコトヲ得ス
第１１１条 罪ヲ犯サンコトヲ謀リ又ハ其豫備ヲ爲スト雖モ未タ其事ヲ行ハサル者ハ本條別ニ刑名ヲ記載スルニ非サレハ其刑ヲ科セス
第１１２条 罪ヲ犯サントシテ已ニ其事ヲ行フト雖モ犯人意外ノ障礙若クハ舛錯ニ因リ未タ遂ケサル時ハ已ニ遂ケタル者ノ刑ニ一等又ハ二等ヲ減ス
第１１３条 重罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ前條ノ例ニ照シテ處斷ス
２ 輕罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ本條別ニ記載スルニ非サレハ前條ノ例ニ照シテ處斷スルコトヲ得ス
３ 違警罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ其罪ヲ論セス
第１１４条 此刑法ニ於テ親屬ト稱スルハ左ニ記載シタル者ヲ云フ
一 祖父母父母夫妻
二 子孫及ヒ其配偶者
三 兄弟姉[3]妹及ヒ其配偶者
四 兄弟姉妹ノ子及ヒ其配偶者
五 父母ノ兄弟姉妹及ヒ其配偶者
六 父母ノ兄弟姉妹ノ子
七 配偶者ノ祖父母父母
八 配偶者ノ兄弟姉妹及ヒ其配偶者
九 配偶者ノ兄弟姉妹ノ子
十 配偶者ノ父母ノ兄弟姉妹
第１１５条 祖父母ト稱スルハ高曾祖父母外祖父母同シ父母ト稱スルハ繼父母嫡母同シ子孫ト稱スルハ庶子曾玄孫外孫同シ兄弟姉妹ト稱スルハ異父異母ノ兄弟姉妹同シ
２ 養子其養家ニ於ル親屬ノ例ハ實子ニ同シ
第１１６条 天皇三后皇太子ニ對シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ處ス
第１１７条 天皇三后皇太子ニ對シ不敬ノ所爲アル者ハ三月以上五年以下ノ重禁錮ニ處シ二十圓以上二百圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 皇陵ニ對シ不敬ノ所爲アル者亦同シ
第１１８条 皇族ニ對シ危害ヲ加ヘタル者ハ死刑ニ處ス其危害ヲ加ヘントシタル者ハ無期徒刑ニ處ス
第１１９条 皇族ニ對シ不敬ノ所爲アル者ハ二月以上四年以下ノ重禁錮ニ處シ十圓以上百圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第１２０条 此章ニ記載シタル罪ヲ犯シ輕罪ノ刑ニ處スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス
第１２１条 政府ヲ顛覆[4]シ又ハ邦土ヲ僣竊シ其他朝憲ヲ紊亂スルコトヲ目的ト爲シ内亂ヲ起シタル者ハ左ノ區別ニ從テ處斷ス
一 首魁及ヒ敎唆者ハ死刑ニ處ス
二 群衆ノ指揮ヲ爲シ其他樞要ノ職務ヲ爲シタル者ハ無期流刑ニ處シ其情輕キ者ハ有期流刑ニ處ス
三 兵器金穀ヲ資給シ又ハ諸般ノ職務ヲ爲シタル者ハ重禁獄ニ處シ其情輕キ者ハ輕禁獄ニ處ス
四 敎唆ニ乗シテ附和隨行シ又ハ指揮ヲ受ケテ雜役ニ供シタル者ハ二年以上五年以下ノ輕禁錮ニ處ス
第１２２条 内亂ヲ起スノ目的ヲ以テ兵器彈藥船舶金穀其他軍備ノ物品ヲ劫掠シタル者ハ已ニ内亂ヲ起シタル者ノ刑ニ同シ
第１２３条 政府ヲ變亂スルノ目的ヲ以テ人ヲ謀殺シタル者ハ兵ヲ擧ルニ至ラスト雖モ内亂ト同ク論シ其敎唆者及ヒ下手者ヲ死刑ニ處ス
第１２４条 前三條ノ罪ハ未遂犯罪ノ時ニ於テ乃チ本刑ヲ科ス
第１２５条 兵隊ヲ招募シ又ハ兵器金穀ヲ準備シ其他内亂ノ豫備ヲ爲シタル者ハ第百二十一條ノ例ニ照シ各一等ヲ減ス
２ 内亂ノ陰謀ヲ爲シ未タ豫備ニ至ラサル者ハ各二等ヲ減ス
第１２６条 内亂ノ豫備又ハ陰謀ヲ爲スト雖モ未タ其事ヲ行ハサル前ニ於テ官ニ自首シタル者ハ本刑ヲ免シ六月以上三年以下ノ監視ニ付ス
第１２７条 内亂ノ情ヲ知テ犯人ニ集會所ヲ給與シタル者ハ二年以上五年以下ノ輕禁錮ニ處ス
第１２８条 内亂ニ乗シテ人ノ身體財産ニ對シ内亂ノ目的ニ關セサル重罪輕罪ヲ犯シタル者ハ通常ノ刑ニ照シ重キニ從テ處斷ス
第１２９条 外國ニ與シテ本國ニ抗敵シ又ハ外国ト交戰中同盟國ニ抗敵シ其他本國ニ背叛シテ敵兵ニ附屬シタル者ハ死刑ニ處ス
第１３０条 交戰中敵兵ヲ誘導シテ本國管内ニ入ラシメ若クハ本國及ヒ同盟国ノ都府城塞又ハ兵器彈藥戦艦其他軍事ニ關スル土地家屋物件ヲ敵國ニ交付シタル者ハ死刑ニ處ス
第１３１条 本國及ヒ同盟国ノ軍情機密ヲ敵国ニ漏泄シ若クハ兵隊屯集ノ要地又ハ道路ノ險夷ヲ敵国ニ通知シタル者ハ無期流刑ニ處ス
２ 敵國ノ間諜ヲ誘導シテ本國管内ニ入ラシメ若クハ之ヲ藏匿シタル者亦同シ
第１３２条 陸海軍ヨリ委任ヲ受ケ物品ヲ供給シ及ヒ工作ヲ爲ス者交戰ノ際敵國ニ通謀シ又ハ其賂遺ヲ收受シテ命令ニ違背シ軍備ノ缺乏ヲ致シタル時ハ有期流刑ニ處ス
第１３３条 外國ニ對シ私ニ戰端ヲ開キタル者ハ有期流刑ニ處ス其豫備ニ止ル者ハ一等又ハ二等ヲ減ス
第１３４条 外國交戰ノ際本國ニ於テ局外中立ヲ布告シタル時其布告ニ違背シタル者ハ六月以上三年以下ノ輕禁錮ニ處シ拾圓以上百圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第１３５条 此章ニ記載シタル罪ヲ犯シ輕罪ノ刑ニ處スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス
第１３６条 兇徒多衆ヲ嘯聚シテ暴動ヲ謀リ官吏ノ説諭ヲ受クルト雖モ仍ホ解散セサル者首魁及ヒ敎唆者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ處ス附和隨行シタル者ハ二圓以上五圓以下ノ罰金ニ處ス
第１３７条 兇徒多衆ヲ嘯聚シテ官廳ニ喧閙シ官吏ニ強逼シ又ハ村市ヲ騒擾シ其他暴動ヲ爲シタル者首魁及ヒ敎唆者ハ重懲役ニ處ス其嘯聚ニ應シ煽動シテ勢ヲ助ケタル者ハ輕懲役ニ處シ其情輕キ者ハ一等ヲ減ス附和隨行シタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第１３８条 暴動ノ際人ヲ殺死シ若クハ家屋船舶倉庫等ヲ燒燬シタル時ハ現ニ手ヲ下シ及ヒ火ヲ放ツ者ヲ死刑ニ處ス
２ 首魁及ヒ敎唆者情ヲ知テ制セサル者亦同シ
第１３９条 官吏其職務ヲ以テ法律規則ヲ執行シ又ハ行政司法官署ノ命令ヲ執行スルニ當リ暴行脅迫ヲ以テ其官吏ニ抗拒シタル者ハ四月以上四年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 暴行脅迫ヲ以テ其官吏ノ爲ス可カラサル事件ヲ行ハシメタル者亦同シ
第１４０条 前條ノ罪ヲ犯シ因テ官吏ヲ毆傷シタル者ハ毆打創傷ノ各本條ニ照シ一等ヲ加ヘ重キニ從テ處斷ス
第１４１条 官吏ノ職務ニ對シ其目前ニ於テ形容若クハ言語ヲ以テ侮辱シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 其目前ニ非スト雖モ刊行ノ文書圖書又ハ公然ノ演説ヲ以テ侮辱シタル者亦同シ
第１４２条 已決ノ囚徒逃走シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ處ス
２ 若シ獄舎獄具ヲ毀壊シ又ハ暴行脅迫ヲ爲シテ逃走シタル者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ處ス
第１４３条 已決ノ囚徒逃走ノ罪ヲ犯スト雖モ再犯ヲ以テ論セス其刑期限内再ヒ逃走シタル者ハ再犯ヲ以テ論ス
第１４４条 未決ノ囚徒入監中逃走シタル者ハ第百四十二條ノ例ニ同シ但原犯ノ罪ヲ判決スル時ニ於テ數罪倶發ノ例ニ照シテ處斷ス
第１４５条 囚徒三人以上通謀シテ逃走シタル時ハ第百四十二條ノ例ニ照シ各一等ヲ加フ
第１４６条 囚徒ヲ逃走セシムル爲メ兇器其他ノ器具ヲ給與シ又ハ逃走ノ方法ヲ指示シタル者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス因テ囚徒ノ逃走ヲ致シタル時ハ一等ヲ加フ
第１４７条 囚徒ヲ劫奪シ又ハ暴行脅迫ヲ以テ囚徒ノ逃走ヲ助ケタル者ハ一年以上五年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 若シ重罪ノ刑ニ處セラレタル囚徒ニ係ル時ハ輕懲役ニ處ス
第１４８条 囚徒ヲ看守シ又ハ護送スル者囚徒ヲ逃走セシメタル時ハ亦前條ノ例ニ同シ
第１４９条 前數條ニ記載シタル輕罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ處斷ス
第１５０条 看守又ハ護送者其懈怠ニヨリ囚徒ノ逃走ヲ覺ラサル時ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
２ 若シ重罪ノ刑ニ處セラレタル囚徒ニ係ル時ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第１５１条 犯罪人又ハ逃走ノ囚徒及ヒ監視ニ付セラレタル者ナルコトヲ知テ之ヲ藏匿シ若クハ隱避セシメタル者ハ十一日以上一年以下ノ輕禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 若シ重罪ノ刑ニ處セラレタル囚徒ニ係ル時ハ一等ヲ加フ
第１５２条 他人ノ罪ヲ免カレシメンコトヲ圖リ其罪證ト爲ル可キ物件ヲ隱蔽シタル者ハ十一日以上六月以下ノ輕禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第１５３条 前二條ノ罪ヲ犯シタル者犯人ノ親屬ニ係ル時ハ其罪ヲ論セス
第１５４条 公權ヲ剥奪セラレ又ハ公權ヲ停止セラレタル者私ニ其權ヲ行ヒタル時ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第１５５条 監視ニ付セラレタル者其規則ニ違背シタル時ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮ニ處ス
第１５６条 前二條ノ罪ハ其刑期限内再ヒ犯シタル時ニ非サレハ再犯ヲ以テ論スルコトヲ得ス
第１５７条 官命ヲ受ケス又ハ官許ヲ得スシテ陸海軍ノ用ニ供スル銃礮彈藥其他破裂質ノ物品ヲ製造シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ二十圓以上二百圓以下ノ罰金ヲ附加ス其之ヲ輸入シタル者亦同シ
２ 前項ノ物品ヲ私ニ販賣シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ十圓以上百圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第１５８条 前條ノ罪ヲ犯スト雖モ職工又ハ雇人ニシテ止タ正犯ノ使令ニ供シタル者ハ各本刑ニ照シ二等ヲ減ス
第１５９条 前二條ノ罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサルモノハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ處斷ス
第１６０条 第百五十七條ニ記載シタル物品ヲ私ニ所有シタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第１６１条 第百五十七條ニ記載シタル物品ノ製造ニ供シタル器械ニシテ單ニ其用ニ供ス可キ者ハ何人ノ所有ヲ問ハス之ヲ沒收ス
第１６２条 道路橋梁河溝港埠ヲ損壊シテ往來ヲ妨害シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第１６３条 僞計又ハ威力ヲ以テ郵便ヲ妨害シ若クハ之ヲ阻止シタル者ハ亦前條ニ同シ
第１６４条 電信ノ器械柱木ヲ損壊シ又ハ條線ヲ切斷シテ電氣ヲ不通ニ致シタル者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 若シ器械柱木條線ヲ損壊シテ電信ノ妨害ヲ爲スト雖モ不通ニ至ラサル時ハ一等ヲ減ス
第１６５条 汽車ノ往來ヲ妨害スル爲メ鐵道及ヒ其標識ヲ損壊シ其他危險ナル障礙ヲ爲シタル者ハ重懲役ニ處ス
第１６６条 船舶ノ往來ヲ妨害スル爲メ燈臺浮標其他航海ノ安寧ヲ保護スル標識ヲ損壊シ又ハ詐僞ノ標識ヲ點示シタル者ハ亦前條ニ同シ
第１６７条 前數條ニ記載シタル罪其事務ニ關スル官吏及ヒ雇人職工自ラ犯シタル時ハ各本刑ニ照シ一等ヲ加フ
第１６８条 第百六十二條ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ殺傷シタル者ハ毆打創傷ノ各本條ニ照シ重キニ從テ處斷ス
第１６９条 第百六十五條第百六十六條ノ罪ヲ犯シ因テ汽車ヲ顛覆シ又ハ船舶ヲ覆沒シタル時ハ無期徒刑ニ處シ人ヲ死ニ致シタル時ハ死刑ニ處ス
第１７０条 此節ニ記載シタル輕罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ處斷ス
第１７１条 晝間故ナク人ノ住居シタル邸宅又ハ人ノ看守シタル建造物ニ入リタル者ハ十一日以上六月以下ノ重禁錮ニ處ス
２ 若シ左ニ記載シタル所爲アル時ハ一等ヲ加フ
一 門戸牆壁ヲ踰越損壊シ又ハ鎖鑰ヲ開キテ入リタル時
二 兇器其他犯罪ノ用ニ供ス可キ物品ヲ携帶シテ入リタル時
三 暴行ヲ爲シテ入リタル時
四 二人以上ニテ入リタル時
第１７２条 夜間故ナク人ノ住居シタル邸宅又ハ人ノ看守シタル建造物ニ入リタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處ス
２ 若シ前條ニ記載シタル加重ス可キ所爲アル時ハ一等ヲ加フ
第１７３条 故ナク皇居禁苑離宮行在所及ヒ皇陵内ニ入リタル者ハ前二條ノ例ニ照シ各一等ヲ加フ
第１７４条 官署ノ處分ニ因リ特別ニ家屋倉庫其他ノ物件ニ施シタル封印ヲ破棄シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ處ス
２ 若シ看守者自ラ犯シタル時ハ一等ヲ加フ
第１７５条 官ノ封印ヲ破棄シテ其物件ヲ盗取シ又ハ毀壊シタル者ハ盗罪及ヒ毀壊ノ各本條ニ照シ重キニ從テ處斷ス
第１７６条 看守者其懈怠ニ因リ封印ヲ破棄シ又ハ其物件ヲ盗取毀壊スル犯人アルコトヲ覺ラサル時ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第１７７条 陸海軍ノ將校タル者出兵ヲ要求スル權アル官署ヨリ其要求ヲ受ケ故ナクシテ之ヲ肯セサル時ハ二月以上二年以下ノ輕禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第１７８条 陸海軍ノ徴兵ニ編入セラル可キ者身體ヲ毀傷シテ疾病ヲ作爲シ其他詐僞ノ所爲ヲ以テ免役ヲ圖リタル時ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 若シ他人ニ囑託シ其氏名ヲ詐稱シ代テ徴募ニ應セシメタル者亦同シ其囑託ヲ受ケテ徴募ニ應シタル者ハ第二百三十一条ノ例ニ照シテ處斷ス
第１７９条 醫師化學家其他職業ニ因リ官署ヨリ解剖分析又ハ鑑定ヲ命セラレタル者故ナクシテ之ヲ肯セサル時ハ四圓以上四十圓以下ノ罰金ニ處ス
第１８０条 裁判所ヨリ證人トシテ證據ヲ陳述スルコトヲ命セラレタル者故ナクシテ之ヲ肯セサル時ハ亦前條ニ同シ
第１８１条 傳染病流行ノ際又ハ傳染病ノ疑アル船舶入港スルニ當リ醫師其病患ヲ檢査シ又ハ消滅ノ方法ヲ陳述スルコトヲ命セラレタル者故ナクシテ之ヲ肯セサル時ハ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス
２ 獸類傳染病流行ノ際獸醫此條ノ罪ヲ犯シタル時ハ一等ヲ減ス
第１８２条 内國通用ノ金銀貨及ヒ紙幣ヲ僞造シテ行使シタル者ハ無期徒刑ニ處ス
２ 若シ變造シテ行使シタル者ハ輕懲役ニ處ス
第１８３条 内國ニ於テ通用スル外國ノ金銀貨ヲ僞造シテ行使シタル者ハ有期徒刑ニ處ス
２ 若シ變造シテ行使シタル者ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ處ス
第１８４条 官許ヲ得テ發行スル銀行ノ紙幣ヲ僞造シ若クハ變造シテ行使シタル者ハ内外國ノ區別ニ從ヒ前二條ノ例ニ照シテ處斷ス
第１８５条 内國通用ノ銅貨ヲ僞造シテ行使シタル者ハ輕懲役ニ處ス
２ 若シ變造シテ行使シタル者ハ一年以上三年以下ノ重禁錮ニ處ス
第１８６条 前數條ニ記載シタル貨幣ノ僞造變造已ニ成テ未タ行使セサル者ハ各本刑ニ照シ一等ヲ減シ其未タ成ラサル者ハ二等ヲ減ス
２ 若シ僞造ノ機械ヲ豫備シテ未タ着手セサル者ハ各三等ヲ減ス
第１８７条 貨幣ヲ僞造變造スルノ情ヲ知テ雇ヲ受ケタル職工ハ前數條ニ記載シタル犯人ノ受ク可キ刑ニ照シ各一等ヲ減ス
２ 若シ職工ノ補助ヲ爲シテ雜役ニ供シタル者ハ職工ノ刑ニ照シ一等又ハ二等ヲ減ス
第１８８条 貨幣ヲ僞造變造スルノ情ヲ知テ房屋ヲ給與シタル者ハ僞造變造ノ各本刑ニ照シ二等ヲ減ス
第１８９条 僞造變造ノ貨幣ヲ内國ニ輸入シタル者ハ僞造變造ノ刑ニ同シ
第１９０条 僞造變造ノ情ヲ知テ其貨幣ヲ取受シ之ヲ行使シタル者ハ僞造變造シテ行使シタル者ノ刑ニ照シ各二等ヲ減ス
２ 其未タ行使セサル者ハ各三等ヲ減ス
第１９１条 前數條ニ記載シタル罪ヲ犯シ輕罪ノ刑ニ處スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス
第１９２条 貨幣ヲ僞造變造シ及ヒ輸入取受シタル者未タ行使セサル前ニ自首シタル時ハ本刑ヲ免シ六月以上三年以下ノ監視ニ付ス
２ 若シ職工雜役及ヒ房屋ヲ給與シタル者未タ行使セサル前ニ於テ自首シタル時ハ本刑ヲ免ス
第１９３条 貨幣ヲ取受スルノ後ニ於テ僞造又ハ變造ナルコトヲ知リ之ヲ行使シタル者ハ其價額二倍ノ罰金ニ處ス但其罰金ハ二圓以下ニ降スコトヲ得ス
第１９４条 御璽國璽ヲ僞造シ又ハ其僞璽ヲ使用シタル者ハ無期徒刑ニ處ス
第１９５条 各官署ノ印ヲ僞造シ又ハ其僞印ヲ使用シタル者ハ重懲役ニ處ス
第１９６条 産物商品等ニ押用スル官ノ記號印章ヲ僞造シ又ハ其僞印ヲ使用シタル者ハ輕懲役ニ處ス
２ 書籍什物等ニ押用スル官ノ記號印章ヲ偽造シ又ハ其僞印ヲ使用シタル者ハ一年以上三年以下ノ重禁錮ニ處ス
第１９７条 御璽國璽官印記號印章ノ影蹟ヲ盗用シタル者ハ前數條ニ記載シタル僞造ノ刑ニ照シ各一等ヲ減ス
２ 若シ監守者自ラ犯シタル時ハ僞造ノ刑ニ同シ
第１９８条 官ヨリ發行スル各種ノ印紙界紙及ヒ郵便切手ヲ僞造變造シ又ハ其情ヲ知テ之ヲ使用シタル者ハ一年以上五年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第１９９条 已ニ貼用シタル各種ノ印紙及ヒ郵便切手ヲ再ヒ貼用シタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第２００条 此節ニ記載シタル輕罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ處斷ス
第２０１条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シ輕罪ノ刑ニ處スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス
第２０２条 詔書ヲ僞造シ又ハ増減變換シタル者ハ無期徒刑ニ處ス
２ 其詔書ヲ毀棄シタル者亦同シ
第２０３条 官ノ文書ヲ僞造シ又ハ増減變換シテ行使シタル者ハ輕懲役ニ處ス
２ 其官ノ文書ヲ毀棄シタル者亦同シ
第２０４条 公債證書地券其他官吏ノ公證シタル文書ヲ僞造シ又ハ増減變換シテ行使シタル者ハ輕懲役ニ處ス
２ 若シ無記名ノ公債證書ニ係ル時ハ一等ヲ加フ
第２０５条 官吏其管掌ニ係ル文書ヲ僞造シ又ハ増減變換シテ行使シタル者ハ前二條ノ例ニ照シ各一等ヲ加フ
２ 其文書ヲ毀棄シタル者亦同シ
第２０６条 官ノ文書ヲ僞造スルニ因テ官印ヲ僞造シ又ハ盗用シタル者ハ僞造官印ノ各本條ニ照シ重キニ從テ處斷ス
第２０７条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シ減刑ニ因テ輕罪ノ刑ニ處スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス
第２０８条 他人ノ私印ヲ僞造シテ使用シタル者ハ六月以上五年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ付加ス
２ 若シ他人ノ印影ヲ盗用シタル者ハ一等ヲ減ス
第２０９条 爲替手形其他裏書ヲ以テ賣買ス可キ證書若クハ金額ト交換ス可キ約定手形ヲ僞造シ又ハ増減變換シテ行使シタル者ハ輕懲役ニ處ス
２ 其手形證書ニ詐僞ノ裏書ヲ爲シテ行使シタル者亦同シ
第２１０条 賣買貸借贈遺交換其他權利義務ニ關スル證書ヲ僞造シ又ハ増減變換シテ行使シタル者ハ四月以上四年以下ノ重禁錮ニ處シ四圓以上四十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 其餘ノ私書ヲ僞造シ又ハ増減變換シテ行使シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２１１条 此節ニ記載シタル輕罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ處斷ス
第２１２条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シ輕罪ノ刑ニ處スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス
第２１３条 官ノ免状又ハ鑑札ヲ僞造シテ行使シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ四圓以上四十圓以下ノ罰金ヲ附加ス但官印ヲ僞造シ又ハ盗用シタル時ハ僞造官印ノ各本條ニ照シテ處斷ス
第２１４条 屬籍身分氏名ヲ詐稱シ其他詐僞ノ所爲ヲ以テ免状鑑札ヲ受ケタル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 官吏情ヲ知テ其免状鑑札ヲ下付シタル者ハ一等ヲ加フ
第２１５条 公務ヲ免カル可キ爲メ醫師ノ氏名ヲ用ヒ疾病ノ證書ヲ僞造シテ行使シタル者ハ自己ノ爲メニシ他人ノ爲メニスルヲ分タス一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 醫師囑託ヲ受ケテ其詐僞ノ證書ヲ造リタル者ハ一等ヲ加フ
第２１６条 陸海軍ノ徴兵ヲ免カル可キ爲メ疾病ノ證書ヲ僞造シテ行使シタル者及ヒ囑託ヲ受ケテ其詐僞ノ證書ヲ造リタル醫師ハ前條ノ例ニ照シ一等ヲ加フ
第２１７条 免状鑑札及ヒ疾病ノ證書ヲ増減變換シテ行使シタル者ハ亦僞造ノ刑ニ同シ
第２１８条 刑事ニ關スル證人トシテ裁判所ニ呼出サレタル者被告人ヲ曲庇スル爲メ事實ヲ掩蔽シテ僞證ヲ爲シタル時ハ左ノ例ニ照シテ處斷ス
一 重罪ヲ曲庇スル爲メ僞證シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ四圓以上四十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
二 輕罪ヲ曲庇スル爲メ僞證シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
三 違警罪ヲ曲庇スル爲メ僞證シタル者ハ違警罪ノ本條ニ依テ處斷ス
第２１９条 僞證ノ爲メ被告人正當ノ刑ヲ免カレタル時ハ僞證者ノ刑前條ノ例ニ照シ各一等ヲ加フ
第２２０条 被告人ヲ陷害スル爲メ僞證ヲ爲シタル者ハ左ノ例ニ照シテ處斷ス
一 重罪ニ陷ラシムル爲メ僞證シタル者ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ處シ十圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
二 輕罪ニ陷ラシムル爲メ僞證シタル者ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ四圓以上四十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
三 違警罪ニ陷ラシムル爲メ僞證シタル者ハ一月以上三月以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２２１条 僞證ノ爲メ被告人刑ニ處セラレタル後ニ於テ僞證ノ罪發覺シタル時ハ僞證者ヲ其刑ニ反坐ス若シ反坐ノ刑前條ニ記載シタル僞證ノ刑ヨリ輕キ時ハ前條ノ例ニ照シテ處斷ス
２ 其刑期限内ニ於テ僞證ノ罪發覺シタル時ハ現ニ經過シタル日數ニ照シテ反坐ノ刑期ヲ減スルコトヲ得但減シテ前條僞證ノ刑ヨリ降スコトヲ得ス
第２２２条 僞證ノ爲メ被告人死刑ニ處セラレタル時ハ反坐ノ刑一等ヲ減ス其未タ刑ヲ執行セサル前ニ於テ發覺シタル時ハ二等ヲ減ス
２ 若シ被告人ヲ死ニ陷ルルノ目的ヲ以テ僞證ヲ爲シタル時ハ死刑ニ反坐ス其未タ刑ヲ執行セサル前ニ於テ發覺シタル時ハ一等ヲ減ス
第２２３条 民事商事又ハ行政裁判ニ關シテ僞證ヲ爲シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２２４条 鑑定又ハ通事ノ爲メ裁判所ニ呼出サレタル者詐僞ノ陳述ヲ爲シタル時ハ前數條ニ記載シタル僞證ノ例ニ照シテ處斷ス
第２２５条 賄賂其他ノ方法ヲ以テ人ニ囑託シテ僞證又ハ詐僞ノ鑑定通事ヲ爲サシメタル者ハ亦僞證ノ例ニ同シ
第２２６条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シタル者其事件ノ裁判宣告ニ至ラサル前ニ於テ自首シタル時ハ本刑ヲ免ス
第２２７条 度量衡ヲ僞造シ又ハ變造シテ販賣シタル者ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ處シ十圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス但官ノ記號印章ヲ偽造シ又ハ盗用シタル時ハ僞造官印ノ各本條ニ照シ重キニ從テ處斷ス
第２２８条 僞造變造ノ情ヲ知テ其度量衡ヲ販賣シタル者ハ前條ノ刑ニ一等ヲ減ス
第２２９条 商賈農工定規ヲ増減シタル度量衡ヲ所有シタル者ハ一月以上三月以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 若シ其度量衡ヲ使用シテ利ヲ得タル者ハ詐僞取財ヲ以テ論ス
第２３０条 人ノ囑託ヲ受ケテ度量衡ヲ僞造シ又ハ變造シタル者ハ其囑託シタル犯人ノ刑ニ照シ各一等ヲ減ス
第２３１条 官署ニ對シ文書又ハ言語ヲ以テ其屬籍身分氏名年齡職業ヲ詐稱シタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第２３２条 官職位階ヲ詐稱シ又ハ官ノ服飾徽章若クハ内外國ノ勲章ヲ僣用シタル者ハ十五日以上二月以下ノ輕禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２３３条 公選ノ投票ヲ僞造シ又ハ其數ヲ増減シタル者ハ一月以上一年以下ノ輕禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２３４条 賄賂ヲ以テ投票ヲ爲サシメ又ハ賄賂ヲ受ケテ投票ヲ爲シタル者ハ二月以上二年以下ノ輕禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２３５条 投票ヲ檢査シ及ヒ其數ヲ計算スル者其投票ヲ僞造シ又ハ増減シタル時ハ六月以上三年以下ノ輕禁錮ニ處シ四圓以上四十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２３６条 調書ヲ造リ投票ノ結局ヲ報告スル者其數ヲ増減シ其他詐僞ノ所爲アル時ハ一年以上五年以下ノ輕禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２３７条 阿片烟ヲ輸入シ及ヒ製造シ又ハ之ヲ販賣シタル者ハ有期徒刑ニ處ス
第２３８条 阿片烟ヲ吸食スルノ器具ヲ輸入シ及ヒ製造シ又ハ之ヲ販賣シタル者ハ輕懲役ニ處ス
第２３９条 税關官吏情ヲ知テ阿片烟及ヒ其器具ヲ輸入セシメタル者ハ前二條ノ刑ニ照シ各一等ヲ加フ
第２４０条 阿片烟ヲ吸食スル爲メ房屋ヲ給與シテ利ヲ圖ル者ハ輕懲役ニ處ス
２ 人ヲ引誘シテ阿片烟ヲ吸食セシメタル者亦同シ
第２４１条 阿片烟ヲ吸食シタル者ハ二年以上三年以下ノ重禁錮ニ處ス
第２４２条 阿片烟及ヒ吸食ノ器具ヲ所有シ又ハ受寄シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處ス
第２４３条 人ノ飮料ニ供スル浄水ヲ汚穢シ因テ之ヲ用フルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ十一日以上一月以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上五圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２４４条 人ノ健康ヲ害ス可キ物品ヲ用ヒテ水質ヲ變シ又ハ腐敗セシメタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２４５条 前條ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ疾病又ハ死ニ致シタル者ハ毆打創傷ノ各本條ニ照シ重キニ從テ處斷ス
第２４６条 傳染病豫防ノ爲メ設ケタル規則ニ違背シテ入港ノ船舶ヨリ上陸シ又ハ物品ヲ陸地ニ運搬シタル者ハ一月以上一年以下ノ輕禁錮ニ處シ又ハ二十圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第２４７条 船長自ラ前條ノ罪ヲ犯シ又ハ人ノ犯スコトヲ知テ制セサル者ハ前條ノ刑ニ一等ヲ加フ
第２４８条 傳染病流行ノ際豫防規則ニ違背シテ流行地方ヨリ他處ニ出タル者ハ十五日以上六月以下ノ輕禁錮ニ處シ又ハ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
第２４９条 獸類ノ傳染病流行ノ際豫防規則ニ違背シテ獸類ヲ他處ニ出シタル者ハ十一日以上二月以下ノ輕禁錮ニ處シ又ハ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第２５０条 官許ヲ得スシテ危害ヲ生ス可キ物品ノ製造所ヲ創設シタル者ハ二十圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處ス
２ 若シ健康ヲ害ス可キ物品ノ製造所ヲ創設シタル者ハ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
第２５１条 官許ヲ得テ前條ニ記載シタル製造所ヲ創設スト雖モ危害ヲ豫防シ健康ヲ保護スル規則ニ違背シタル者ハ前條ノ例ニ照シ各一等ヲ減ス
第２５２条 前二條ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ疾病死傷ニ致シタル時ハ過失殺傷ノ各本條ニ照シ重キニ從テ處斷ス
第２５３条 人ノ健康ヲ害ス可キ物品ヲ飮食物ニ混和シテ販賣シタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第２５４条 規則ニ違背シテ毒藥劇藥ヲ販賣シタル者ハ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
第２５５条 前二條ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ疾病又ハ死ニ致シタル者ハ過失殺傷ノ各本條ニ照シ重キニ從テ處斷ス
第２５６条 官許ヲ得スシテ醫業ヲ爲シタル者ハ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
第２５７条 前條ノ犯人治療ノ方法ヲ誤リ因テ人ヲ死傷ニ致シタル時ハ過失殺傷ノ各本條ニ照シ重キニ從テ處斷ス
第２５８条 公然猥褻ノ所行ヲ爲シタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第２５９条 風俗ヲ害スル册子圖畫其他猥褻ノ物品ヲ公然陳列シ又ハ販賣シタル者ハ四圓以上四十圓以下ノ罰金ニ處ス
第２６０条 賭場ヲ開帳シテ利ヲ圖リ又ハ博徒ヲ招結シタル者ハ三月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ十圓以上百圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２６１条 財物ヲ賭シテ現ニ博奕ヲ爲シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス其情ヲ知テ房屋ヲ給與シタル者亦同シ但飮食物ヲ賭スル者ハ此限ニ在ラス
２ 賭博ノ器具財物其現場ニ在ル者ハ之ヲ沒收ス
第２６２条 財物ヲ醵集シ富籤ヲ以テ利益ヲ僥倖スルノ業ヲ興行シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２６３条 神祠佛堂墓所其他禮拜所ニ對シ公然不敬ノ所爲アル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
２ 若シ説教又ハ禮拜ヲ妨害シタル者ハ四圓以上四十圓以下ノ罰金ニ處ス
第２６４条 埋葬ス可キ死屍ヲ毀棄シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２６５条 墳墓ヲ發掘シテ棺槨又ハ死屍ヲ見ハシタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 因テ死屍ヲ毀棄シタル者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２６６条 此章ニ記載シタル罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ處斷ス
第２６７条 僞計又ハ威力ヲ以テ穀類其他衆人ノ需要ニ缺ク可カラサル食用物ノ賣買ヲ妨害シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 前項ニ記載シタル以外ノ物品ノ賣買ヲ妨害シタル者ハ一等ヲ減ス
第２６８条 僞計又ハ威力ヲ以テ糶賣又ハ入札ヲ妨害シタル者ハ十五日以上三月以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２６９条 僞計又ハ威力ヲ以テ農工ノ業ヲ妨害シタル者ハ亦前條ニ同シ
第２７０条 農工ノ雇人其雇賃ヲ増サシメ又ハ農工業ノ景況ヲ變セシムル爲メ雇主及ヒ他ノ雇人ニ對シ僞計威力ヲ以テ妨害ヲ爲シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２７１条 雇主其雇賃ヲ減シ又ハ農工業ノ景況ヲ變スル爲メ雇人及ヒ他ノ雇主ニ對シ僞計威力ヲ以テ妨害ヲ爲シタル者ハ亦前條ニ同シ
第２７２条 虚僞ノ風説ヲ流布シテ穀類其他衆人需要物品ノ價直ヲ昂低セシメタル者ハ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
第２７３条 官吏其管掌ニ係ル法律規則ヲ公布施行セス又ハ他ノ官吏ノ公布施行ヲ妨害シタル者ハ二月以上六月以下ノ輕禁錮ニ處シ十圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２７４条 兵隊ヲ要求シ及ヒ之ヲ使用スル權アル官吏地方ノ騒擾其他兵權ヲ以テ鎭撫ス可キ時ニ當リ其處分ヲ爲ササル者ハ三月以上三年以下ノ輕禁錮ニ處シ二十圓以上百圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２７５条 官吏規則ニ違背シテ商業ヲ爲シタル者ハ二十圓以上五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第２７６条 官吏擅ニ威權ヲ用ヒ人ヲシテ其權利ナキ事ヲ行ハシメ又ハ其爲ス可キ權利ヲ妨害シタル者ハ十一日以上二月以下ノ輕禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２７７条 人ノ身體財産ヲ妨害スルノ犯人アルニ當リ豫審判事檢事警察官吏其報告ヲ受ケテ速ニ保護ノ處分ヲ爲ササル者ハ十五日以上三月以下ノ輕禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２７８条 逮捕官吏法律ニ定メタル程式規則ヲ遵守セスシテ人ヲ逮捕シ又ハ不正ニ人ヲ監禁シタル者ハ十五日以上三月以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス但監禁日數十日ヲ過クル毎ニ一等ヲ加フ
第２７９条 司獄官吏程式規則ヲ遵守セスシテ囚人ヲ監禁シ若クハ囚人ヲ出獄セシム可キノ時ニ至リ之ヲ放免セサル者ハ亦前條ノ例ニ同シ
第２８０条 前二條ニ記載シタル官吏又ハ護送者囚人ニ對シ飮食衣服ヲ屏去シ其他苛刻ノ所爲ヲ施シタル者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ處シ四圓以上四十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 因テ囚人ヲ死傷ニ致シタル時ハ毆打創傷ノ各本條ニ照シ一等ヲ加ヘ重キニ從テ處斷ス
第２８１条 水火震災ノ際官吏囚人ノ監禁ヲ解クコトヲ怠リ因テ死傷ニ致シタル者ハ毆打創傷ノ各本條ニ照シ一等ヲ加フ
第２８２条 裁判官檢事及ヒ警察官吏被告人ニ對シ罪状ヲ陳述セシムル爲メ暴行ヲ加ヘ又ハ陵虐ノ所爲アル者ハ四月以上四年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 因テ被告人ヲ死傷ニ致シタル時ハ毆打創傷ノ各本條ニ照シ一等ヲ加ヘ重キニ從テ處斷ス
第２８３条 裁判官檢察官故ナクシテ刑事ノ訴ヲ受理セス又ハ遷延シテ審理セサル者ハ十五日以上三月以下ノ輕禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 其民事ノ訴ニ係ル者亦同シ
第２８４条 官吏人ノ囑託ヲ受ケ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ聽許シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ四圓以上四十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 因テ不正ノ處分ヲ爲シタル時ハ一等ヲ加フ
第２８５条 裁判官民事ノ裁判ニ關シテ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ聽許シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 因テ不正ノ裁判ヲ爲シタル時ハ一等ヲ加フ
第２８６条 裁判官檢事警察官吏刑事ノ裁判ニ關シテ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ聽許シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 因テ被告人ヲ曲庇シタル者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ處シ十圓以上百圓以下ノ罰金ヲ附加ス
３ 其被告人ヲ陷害シタル者ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ處シ二十圓以上二百圓以下ノ罰金ヲ附加ス若シ枉斷シタル所ノ刑此刑ヨリ重キ時ハ第二百二十一條第二百二十二條ノ例ニ照シテ反坐ス
第２８７条 裁判官檢事警察官吏賄賂ヲ收受聽許セスト雖モ情ニ徇カヒ又ハ怨ヲ挟サミ被告人ヲ曲庇陷害シタル者ハ亦前條ノ例ニ同シ
第２８８条 前數條ニ記載シタル賄賂已ニ收受シタル者ハ之ヲ沒收シ費用シタル者ハ其價ヲ追徴ス
第２８９条 官吏自ラ監守スル所ノ金穀物件ヲ竊取シタル者ハ輕懲役ニ處ス
２ 因テ官ノ文書簿册ヲ増減變換シ又ハ毀棄シタル時ハ第二百五條ノ例ニ照シテ處斷ス
第２９０条 租税其他諸般ノ入額ヲ徴収スル官吏正數外ノ金穀ヲ徴収シタル者ハ二月以上四年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第２９１条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シ輕罪ノ刑ニ處スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス
第２９２条 豫メ謀テ人ヲ殺シタル者ハ謀殺ノ罪ト爲シ死刑ニ處ス
第２９３条 毒物ヲ施用シテ人ヲ殺シタル者ハ謀殺ヲ以テ論シ死刑ニ處ス
第２９４条 故意ヲ以テ人ヲ殺シタル者ハ故殺ノ罪ト爲シ無期徒刑ニ處ス
第２９５条 支解折割其他慘刻ノ所爲ヲ以テ人ヲ故殺シタル者ハ死刑ニ處ス
第２９６条 重罪輕罪ヲ犯スニ便利ナル爲メ又ハ已ニ犯シテ其罪ヲ免カルル爲メ人ヲ故殺シタル者ハ死刑ニ處ス
第２９７条 人ヲ殺スノ意ニ出テ詐稱誘導シテ危害ニ陷レ死ニ致シタル者ハ故殺ヲ以テ論シ其豫メ謀ル者ハ謀殺ヲ以テ論ス
第２９８条 謀殺故殺ヲ行ヒ誤テ他人ヲ殺シタル者ハ仍ホ謀故殺ヲ以テ論ス
第２９９条 人ヲ毆打創傷シ因テ死ニ致シタル者ハ重懲役ニ處ス
第３００条 人ヲ毆打創傷シ其兩目ヲ瞎シ兩耳ヲ聾シ又ハ兩肢ヲ折リ及ヒ舌ヲ斷チ陰陽ヲ毀敗シ若クハ知覺精神ヲ喪失セシメ篤疾ニ致シタル者ハ輕懲役ニ處ス
２ 其一目ヲ瞎シ一耳ヲ聾シ又ハ一肢ヲ折リ其他身體ヲ殘虧シ癈疾ニ致シタル者ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ處ス
第３０１条 人ヲ毆打創傷シ二十日以上ノ時間疾病ニ罹リ又ハ職業ヲ營ムコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ一年以上三年以下ノ重禁錮ニ處ス
２ 其疾病休業ノ時間二十日ニ至ラサル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處ス
３ 疾病休業ニ至ラスト雖モ身體ニ創傷ヲ成シタル者ハ十一日以上一月以下ノ重禁錮ニ處ス
第３０２条 豫メ謀テ人ヲ毆打創傷シ休業癈篤疾又ハ死ニ致シタル者ハ前數條ニ記載シタル刑ニ照シ各一等ヲ加フ
第３０３条 重罪輕罪ヲ犯スニ便利ナル爲メ又ハ已ニ犯シテ其罪ヲ免カルル爲メ人ヲ毆打創傷シタル者ハ亦前條ノ例ニ同シ
第３０４条 毆打ニ因リ誤テ他人ヲ創傷シタル者ハ仍ホ毆打創傷ノ本刑ヲ科ス
第３０５条 二人以上共ニ人ヲ毆打創傷シタル者ハ現ニ手ヲ下シ傷ヲ成スノ輕重ニ從テ各自ニ其刑ヲ科ス若シ共毆シテ傷ヲ成スノ輕重ヲ知ルコト能ハサル時ハ其重傷ノ刑ニ照シ一等ヲ減ス但敎唆者ハ減等ノ限ニ在ラス
第３０６条 二人以上共ニ人ヲ毆打スルニ當リ自ラ人ヲ傷セスト雖モ幇助シテ傷ヲ成サシメタル者ハ現ニ傷ヲ成シタル者ノ刑ニ一等ヲ減ス
第３０７条 健康ヲ害ス可キ物品ヲ施用シテ人ヲ疾苦セシメタル者ハ豫メ謀テ毆打創傷スルノ例ニ照シテ處斷ス
第３０８条 人ヲ殺スノ意ニ非スト雖モ詐稱誘導シテ危害ニ陷レ因テ疾病死傷ニ致シタル者ハ毆打創傷ヲ以テ論ス
第３０９条 自己ノ身體ニ暴行ヲ受クルニ因リ直チニ怒ヲ發シ暴行人ヲ殺傷シタル者ハ其罪ヲ宥恕ス但不正ノ所爲ニ因リ自ラ暴行ヲ招キタル者ハ此限ニ在ラス
第３１０条 毆打シテ互ニ創傷シ其手ヲ下スノ先後ヲ知ルコト能ハサル者ハ各其罪ヲ宥恕スルコトヲ得
第３１１条 本夫其妻ノ姦通ヲ覺知シ姦所ニ於テ直チニ姦夫又ハ姦婦ヲ殺傷シタル者ハ其罪ヲ宥恕ス但本夫先ニ姦通ヲ縱容シタル者ハ此限ニ在ラス
第３１２条 晝間故ナク人ノ住居シタル邸宅ニ入リ若クハ門戸牆壁ヲ踰越損壊セントスル者ヲ防止スル爲メ之ヲ殺傷シタル者ハ其罪ヲ宥恕ス
第３１３条 前數條ニ記載シタル宥恕ス可キ罪ハ各本刑ニ照シ二等又ハ三等ヲ減ス
第３１４条 身體生命ヲ正當ニ防衛シ已ムコトヲ得サルニ出テ暴行人ヲ殺傷シタル者ハ自己ノ爲メニシ他人ノ爲メニスルヲ分タス其罪ヲ論セス但不正ノ所爲ニ因リ自ラ暴行ヲ招キタル者ハ此限ニ在ラス
第３１５条 左ノ諸件ニ於テ已ムコトヲ得サルニ出テ人ヲ殺傷シタル者ハ其罪ヲ論セス
一 財産ニ對シ放火其他暴行ヲ爲ス者ヲ防止スルニ出タル時
二 盗犯ヲ防止シ又ハ盗贓ヲ取還スルニ出タル時
三 夜間故ナク人ノ住居シタル邸宅ニ入リ若クハ門戸牆壁ヲ踰越損壊スル者ヲ防止スルニ出タル時
第３１６条 身體財産ヲ防衛スルニ出ルト雖モ已ムコトヲ得サルニ非スシテ害ヲ暴行人ニ加ヘ又ハ危害已ニ去リタル後ニ於テ勢ニ乗シ仍ホ害ヲ暴行人ニ加ヘタル者ハ不論罪ノ限ニ在ラス但情状ニ因リ第三百十三條ノ例ニ照シ其罪ヲ宥恕スルコトヲ得
第３１７条 疎虞懈怠又ハ規則慣習ヲ遵守セス過失ニ因テ人ヲ死ニ致シタル者ハ二十圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第３１８条 過失ニ因テ人ヲ創傷シ癈篤疾ニ致シタル者ハ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
第３１９条 過失ニ因テ人ヲ創傷シ疾病休業ニ至ラシメタル者ハ二圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第３２０条 人ヲ敎唆シテ自殺セシメ又ハ囑託ヲ受ケテ自殺人ノ爲メニ手ヲ下シタル者ハ六月以上三年以下ノ輕禁錮ニ處シ十圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス其他自殺ノ補助ヲ爲シタル者ハ一等ヲ減ス
第３２１条 自己ノ利ヲ圖リ人ヲ敎唆シテ自殺セシメタル者ハ重懲役ニ處ス
第３２２条 擅ニ人ヲ逮捕シ又ハ私家ニ監禁シタル者ハ十一日以上二月以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス但監禁日數十日ヲ過クル毎ニ一等ヲ加フ
第３２３条 擅ニ人ヲ監禁制縛シテ毆打拷責シ又ハ飮食衣服ヲ屏去シ其他苛刻ノ所爲ヲ施シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第３２４条 前條ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ疾病死傷ニ致シタル者ハ毆打創傷ノ各本條ニ照シ重キニ從テ處斷ス
第３２５条 擅ニ人ヲ監禁シ水火震災ノ際其監禁ヲ解クコトヲ怠リ因テ死傷ニ致シタル者ハ亦前條ノ例ニ同シ
第３２６条 人ヲ殺サント脅迫シ又ハ人ノ住居シタル家屋ニ放火セント脅迫シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 毆打創傷其他暴行ヲ加ヘント脅迫シ又ハ財産ニ放火シ及ヒ毀壊劫掠セント脅迫シタル者ハ十一日以上二月以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第３２７条 兇器ヲ持シテ前條ノ罪ヲ犯シタル者ハ各一等ヲ加フ
第３２８条 親屬ニ害ヲ加フ可キ事ヲ以テ脅迫シタル者ハ亦前二條ノ例ニ同シ
第３２９条 此節ニ記載シタル罪ハ脅迫ヲ受ケタル者又ハ其親屬ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス
第３３０条 懐胎ノ婦女藥物其他ノ方法ヲ以テ墮胎シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ處ス
第３３１条 藥物其他ノ方法ヲ以テ墮胎セシメタル者ハ亦前條ニ同シ因テ婦女ヲ死ニ致シタル者ハ一年以上三年以下ノ重禁錮ニ處ス
第３３２条 醫師穩婆又ハ藥商前條ノ罪ヲ犯シタル者ハ各一等ヲ加フ
第３３３条 懐胎ノ婦女ヲ威逼シ又ハ誆騙[7]シテ墮胎セシメタル者ハ一年以上四年以下ノ重禁錮ニ處ス
第３３４条 懐胎ノ婦女ナルコトヲ知テ毆打其他暴行ヲ加ヘ因テ墮胎ニ至ラシメタル者ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ處ス其墮胎セシムルノ意ニ出タル者ハ輕懲役ニ處ス
第３３５条 前二條ノ罪ヲ犯シ因テ婦女ヲ癈篤疾又ハ死ニ致シタル者ハ毆打創傷ノ各本條ニ照シ重キニ從テ處斷ス
第３３６条 八歳ニ滿サル幼者ヲ遺棄シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處ス
２ 自ラ生活スルコト能ハサル老者疾病者ヲ遺棄シタル者亦同シ
第３３７条 八歳ニ滿サル幼者又ハ老疾者ヲ寥闃無人ノ地ニ遺棄シタル者ハ四月以上四年以下ノ重禁錮ニ處ス
第３３８条 給料ヲ得テ人ノ寄託ヲ受ケ保養ス可キ者前二條ノ罪ヲ犯シタル時ハ各一等ヲ加フ
第３３９条 幼者老疾者ヲ遺棄シ因テ癈疾ニ致シタル者ハ輕懲役ニ處シ篤疾ニ致シタル者ハ重懲役ニ處シ死ニ致シタル者ハ有期徒刑ニ處ス
第３４０条 自己ノ所有地又ハ看守ス可キ地内ニ遺棄セラレタル幼者老疾者アルコトヲ知テ之ヲ扶助セス又ハ官署ニ申告セサル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮ニ處ス
２ 若シ疾病ニ罹リ昏倒スル者アルコトヲ知テ扶助セス又ハ申告セサル者亦同シ
第３４１条 十二歳ニ滿サル幼者ヲ略取シ又ハ誘拐シテ自ラ藏匿シ若クハ他人ニ交付シタル者ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ處シ十圓以上百圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第３４２条 十二歳以上二十歳ニ滿サル幼者ヲ略取シテ自ラ藏匿シ若クハ他人ニ交付シタル者ハ一年以上三年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス其誘拐シテ自ラ藏匿シ若クハ他人ニ交付シタル者ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第３４３条 略取誘拐シタル幼者ナルコトヲ知テ自己ノ家屬僕婢ト爲シ又ハ其他ノ名稱ヲ以テ之ヲ收受シタル者ハ前二條ノ例ニ照シ各一等ヲ減ス
第３４４条 前數條ニ記載シタル罪ハ被害者又ハ其親屬ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス但略取誘拐セラレタル幼者式ニ從テ婚姻ヲ爲シタル時ハ告訴ノ效ナシ
第３４５条 二十歳ニ滿サル幼者ヲ略取誘拐シテ外國人ニ交付シタル者ハ輕懲役ニ處ス
第３４６条 十二歳ニ滿サル男女ニ對シ猥褻ノ所行ヲ爲シ又ハ十二歳以上ノ男女ニ對シ暴行脅迫ヲ以テ猥褻ノ所行ヲ爲シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第３４７条 十二歳ニ滿サル男女ニ對シ暴行脅迫ヲ以テ猥褻ノ所行ヲ爲シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ四圓以上四十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第３４８条 十二歳以上ノ婦女ヲ強姦シタル者ハ輕懲役ニ處ス藥酒等ヲ用ヒ人ヲ昏睡セシメ又ハ精神ヲ錯亂セシメテ姦淫シタル者ハ強姦ヲ以テ論ス
第３４９条 十二歳ニ滿サル幼女ヲ姦淫シタル者ハ輕懲役ニ處ス若シ強姦シタル者ハ重懲役ニ處ス
第３５０条 前數條ニ記載シタル罪ハ被害者又ハ其親屬ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス
第３５１条 前數條ニ記載シタル罪ヲ犯シ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ毆打創傷ノ各本條ニ照シ重キニ從テ處斷ス但強姦ニ因テ癈篤疾ニ致シタル者ハ有期徒刑ニ處シ死ニ致シタル者ハ無期徒刑ニ處ス
第３５２条 十六歳ニ滿サル男女ノ淫行ヲ勸誘シテ媒合シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第３５３条 有夫ノ婦姦通シタル者ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ處ス其相姦スル者亦同シ
２ 此條ノ罪ハ本夫ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス但本夫先ニ姦通ヲ縱容シタル者ハ告訴ノ効ナシ
第３５４条 配偶者アル者重ネテ婚姻ヲ爲シタル時ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第３５５条 不實ノ事ヲ以テ人ヲ誣告シタル者ハ第二百二十条ニ記載シタル僞證ノ例ニ照シテ處斷ス
第３５６条 誣告ヲ爲スト雖モ被告人ノ推問ヲ始メサル前ニ於テ誣告者自首シタル時ハ本刑ヲ免ス
第３５７条 誣告ニ因テ被告人刑ニ處セラレタル時ハ第二百二十一條第二百二十二條ニ記載シタル例ニ照シテ處斷ス
第３５８条 惡事醜行ヲ摘發シテ人ヲ誹毀シタル者ハ事實ノ有無ヲ問ハス左ノ例ニ照シテ處斷ス
一 公然ノ演説ヲ以テ人ヲ誹毀シタル者ハ十一日以上三月以下ノ重禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
二 書類畫圖ヲ公布シ又ハ雜劇偶像ヲ作爲シテ人ヲ誹毀シタル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第３５９条 死者ヲ誹毀シタル者ハ誣罔ニ出タルニ非サレハ前條ノ例ニ照シテ處斷スルコトヲ得ス
第３６０条 醫師藥商穩婆又ハ代言人辯護人代書人若クハ神官僧侶其身分職業ニ於テ委託ヲ受ケタル事ニヨリ知得タル陰私ヲ漏告シタル者ハ誹毀ヲ以テ論シ十一日以上三月以下ノ重禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス但裁判所ノ呼出ヲ受ケテ事實ヲ陳述スル者ハ此限ニ在ラス
第３６１条 此節ニ記載シタル誹毀ノ罪ハ被害者又ハ死者ノ親屬ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス
第３６２条 子孫其祖父母父母ヲ謀殺故殺シタル者ハ死刑ニ處ス
２ 其自殺ニ關スル罪ハ凡人ノ刑ニ照シ二等ヲ加フ
第３６３条 子孫其祖父母父母ニ對シ毆打創傷ノ罪其他監禁脅迫遺棄誣告誹毀ノ罪ヲ犯シタル者ハ各本條ニ記載シタル凡人ノ刑ニ照シ二等ヲ加フ但癈疾ニ致シタル者ハ有期徒刑ニ處シ篤疾ニ致シタル者ハ無期徒刑ニ處シ死ニ致シタル者ハ死刑ニ處ス
第３６４条 子孫其祖父母父母ニ對シ衣食ヲ供給セス其他必要ナル奉養ヲ缺キタル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 因テ疾病又ハ死ニ致シタル者ハ亦前條ノ例ニ同シ
第３６５条 祖父母父母ニ對シタル殺傷ノ罪ハ特別ノ宥恕及ヒ不論罪ノ例ヲ用フルコトヲ得ス但其犯ス時知ラサル者ハ此限ニ在ラス
第３６６条 人ノ所有物ヲ竊取シタル者ハ竊盗ノ罪ト爲シ二月以上四年以下ノ重禁錮ニ處ス
第３６７条 水火震災其他ノ變ニ乗シテ竊盗ヲ犯シタル者ハ六月以上五年以下ノ重禁錮ニ處ス
第３６８条 門戸牆壁ヲ踰越損壊シ若クハ鎖鑰ヲ開キ邸宅倉庫ニ入リ竊盗ヲ犯シタル者ハ亦前條ニ同シ
第３６９条 二人以上共ニ前三條ノ罪ヲ犯シタル者ハ各一等ヲ加フ
第３７０条 兇器ヲ携帶シテ人ノ住居シタル邸宅ニ入リ竊盗ヲ犯シタル者ハ輕懲役ニ處ス
第３７１条 自己ノ所有物ト雖モ典物トシテ他人ニ公布シ又ハ官署ノ命令ニ因リ他人ノ看守シタル時之ヲ竊取シタル者ハ竊盗ヲ以テ論ス
第３７２条 田野ニ於テ穀類菜菓其他ノ産物ヲ竊取シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處ス
第３７３条 山林ニ於テ竹木礦物其他ノ産物ヲ竊取シ又ハ川澤池沼湖海ニ於テ人ノ生養シ若クハ營業ニ關スル産物ヲ竊取シタル者ハ亦前條ニ同シ
第３７４条 牧場ニ於テ牧畜ノ獸類ヲ竊取シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ處ス
第３７５条 此節ニ記載シタル輕罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ處斷ス
第３７６条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シ輕罪ノ刑ニ處スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス
第３７７条 祖父母父母夫妻子孫及ヒ其配偶者又ハ同居ノ兄弟姉妹互ニ其財物ヲ竊取シタル者ハ竊盗ヲ以テ論スルノ限ニ在ラス
２ 若シ他人共ニ犯シテ財物ヲ分チタル者ハ竊盗ヲ以テ論ス
第３７８条 人ヲ脅迫シ又ハ暴行ヲ加ヘテ財物ヲ強取シタル者ハ強盗ノ罪ト爲シ輕懲役ニ處ス
第３７９条 強盗左ニ記載シタル情状アル者ハ一個毎ニ一等ヲ加フ
一 二人以上共ニ犯シタル時
二 兇器ヲ携帶シテ犯シタル時
第３８０条 強盗人ヲ傷シタル者ハ無期徒刑ニ處シ死ニ致シタル者ハ死刑ニ處ス
第３８１条 強盗婦女ヲ強姦シタル者ハ無期徒刑ニ處ス
第３８２条 竊盗財ヲ得テ其取還ヲ拒ク爲メ臨時暴行脅迫ヲ爲シタル者ハ強盗ヲ以テ論ス
第３８３条 藥酒等ヲ用ヒ人ヲ醉迷セシメ其財物ヲ盗取シタル者ハ強盗ヲ以テ論シ輕懲役ニ處ス
第３８４条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シ減刑ニ因テ輕罪ノ刑ニ處スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス
第３８５条 遺失及ヒ漂流ノ物品ヲ拾得テ隱匿シ所有主ニ還付セス又ハ官署ニ申告セサル者ハ十一日以上三月以下ノ重禁錮ニ處シ又ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第３８６条 他人ノ所有地内ニ於テ埋藏ノ物品ヲ掘得テ隱匿シタル者ハ亦前條ニ同シ
第３８７条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シタル者第三百七十七條ニ掲ケタル親屬ニ係ル時ハ其罪ヲ論セス
第３８８条 家資分散ノ際其財産ヲ藏匿脱漏シ又ハ虚僞ノ負債ヲ増加シタル者ハ二月以上四年以下ノ重禁錮ニ處ス
２ 情ヲ知テ虚僞ノ契約ヲ承諾シ若クハ其媒介ヲ爲シタル者ハ一等ヲ減ス
第３８９条 家資分散ノ際牒簿ノ類ヲ藏匿毀棄シ若クハ分散決定ノ後債主中ノ一人又ハ數人ニ其負債ヲ私償シテ他ノ債主ヲ害シタル者ハ一月以上二年以下ノ重禁錮ニ處ス
第３９０条 人ヲ欺罔シ又ハ恐喝シテ財物若クハ證書類ヲ騙取シタル者ハ詐欺取財ノ罪ト爲シ二月以上四年以下ノ重禁錮ニ處シ四圓以上四十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 因テ官私ノ文書ヲ偽造シ又ハ増減變換シタル者ハ僞造ノ各本條ニ照シ重キニ從テ處斷ス
第３９１条 幼者ノ知慮淺薄又ハ人ノ精神錯亂シタルニ乗シテ其財物若クハ證書類ヲ授與セシメタル者ハ詐欺取財ヲ以テ論ス
第３９２条 物件ヲ販賣シ又ハ交換スルニ當リ其物質ヲ變シ若クハ分量ヲ僞テ人ニ交付シタル者ハ詐欺取財ヲ以テ論ス
第３９３条 他人ノ動産不動産ヲ冒認シテ販賣交換シ又ハ抵當典物ト爲シタル者ハ詐欺取財ヲ以テ論ス
２ 自己ノ不動産ト雖モ已ニ抵當典物ト爲シタルヲ欺隱シテ他人ニ賣與シ又ハ重ネテ抵當典物ト爲シタル者亦同シ
第３９４条 前數條ニ記載シタル罪ヲ犯シタル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス
第３９５条 受寄ノ財物借用物又ハ典物其他委託ヲ受ケタル金額物件ヲ費消シタル者ハ一月以上二年以下ノ重禁錮ニ處ス若シ騙取拐帶其他詐欺ノ所爲アル者ハ詐欺取財ヲ以テ論ス
第３９６条 自己ノ所有ニ係ルト雖モ官署ヨリ差押ヘタル物件ヲ藏匿脱漏シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ處ス但家資分散ノ際此罪ヲ犯シタル者ハ第三百八十八條ノ例ニ照シテ處斷ス
第３９７条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ處斷ス
第３９８条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シタル者第三百七十七條ニ掲ケタル親屬ニ係ル時ハ其罪ヲ論セス
第３９９条 強竊盗ノ贓物ナルコトヲ知テ之ヲ受ケ又ハ寄贓故買シ若クハ牙保ヲ爲シタル者ハ一月以上三年以下ノ重禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第４００条 前條ノ罪ヲ犯シタル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス
第４０１条 詐欺取財其他ノ犯罪ニ関シタル物件ナルコトヲ知テ之ヲ受ケ又ハ寄贓故買シ若クハ牙保ヲ爲シタル者ハ十一日以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第４０２条 火ヲ放テ人ノ住居シタル家屋ヲ燒燬シタル者ハ死刑ニ處ス
第４０３条 火ヲ放テ人ノ住居セサル家屋其他ノ建造物ヲ燒燬シタル者ハ無期徒刑ニ處ス
第４０４条 火ヲ放テ廢屋及ヒ柴草肥料等ヲ貯フル屋舎ヲ燒燬シタル者ハ重懲役ニ處ス
第４０５条 火ヲ放テ人ヲ乗載シタル船舶汽車ヲ燒燬シタル者ハ死刑ニ處ス
２ 其人ヲ乗載セサル船舶汽車ニ係ル時ハ重懲役ニ處ス
第４０６条 火ヲ放テ山林ノ竹木田野ノ穀麥又ハ露積シタル芝草竹木其他ノ物件ヲ燒燬シタル者ハ輕懲役ニ處ス
第４０７条 火ヲ放テ自己ノ家屋ヲ燒燬シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ處ス
第４０８条 放火ノ罪ヲ犯シ輕罪ノ刑ニ處スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス
第４０９条 火ヲ失シテ人ノ家屋財産ヲ燒燬シタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第４１０条 火藥其他激發ス可キ物品又ハ煤氣井蒸氣罐ヲ破裂セシメテ人ノ家屋財産ヲ毀壊シタル者ハ其故意ニ出ルト過失トヲ分チ放火失火ノ例ニ照シテ處斷ス
第４１１条 堤防ヲ決潰シ又ハ水閘ヲ毀壊シテ人ノ住居シタル家屋ヲ漂失シタル者ハ無期徒刑ニ處ス
２ 若シ人ノ住居セサル家屋其他ノ建造物ヲ漂失シタル者ハ重懲役ニ處ス
第４１２条 堤防ヲ決潰シ水閘ヲ毀壊シテ田圃礦坑牧場等ヲ荒廢シタル者ハ輕懲役ニ處ス
第４１３条 他人ノ便益ヲ損シ又ハ自己ノ便益ヲ圖ル爲メ堤防ヲ決潰シ水閘ヲ毀壊シ其他水利ヲ妨害シタル者ハ一月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第４１４条 過失ニ因テ水害ヲ起シタル者ハ失火ノ例ニ照シテ處斷ス
第４１５条 衝突其他ノ所爲ヲ以テ人ヲ乗載シタル船舶ヲ覆沒シタル者ハ死刑ニ處ス但船中死亡ナキ時ハ無期徒刑ニ處ス
第４１６条 前條ノ所爲ヲ以テ人ヲ乗載セサル船舶ヲ覆沒シタル者ハ輕懲役ニ處ス
第４１７条 人ノ家屋其他ノ建造物ヲ毀壊シタル者ハ一月以上五年以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
２ 因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ毆打創傷ノ各本條ニ照シ重キニ從テ處斷ス
第４１８条 人ノ家屋ニ屬スル牆壁及ヒ園池ノ装飾又ハ田圃ノ樊圍牧場ノ柵欄ヲ毀壊シタル者ハ十一日以上三月以下ノ重禁錮ニ處シ又ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第４１９条 人ノ稼穡竹木其他需用ノ植物ヲ毀損シタル者ハ十一日以上六月以下ノ重禁錮ニ處シ又ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第４２０条 土地ノ經界ヲ表シタル物件ヲ毀壊シ又ハ移轉シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第４２１条 人ノ器物ヲ毀棄シタル者ハ十一日以上六月以下ノ重禁錮ニ處シ又ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第４２２条 人ノ牛馬ヲ殺シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第４２３条 前條ニ記載シタル以外ノ家畜ヲ殺シタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス但被害者ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス
第４２４条 人ノ權利義務ニ關スル證書類ヲ毀棄滅盡シタル者ハ二月以上四年以下ノ重禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第４２５条 左ノ諸件ヲ犯シタル者ハ三日以上十日以下ノ拘留ニ處シ又ハ一圓以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處ス
一 規則ヲ遵守セスシテ火藥其他破裂ス可キ物品ヲ市街ニ運搬シタル者
二 規則ヲ遵守セスシテ火藥其他破裂ス可キ物品又ハ自ラ火ヲ發ス可キ物品ヲ貯藏シタル者
三 官許ヲ得スシテ烟火ヲ製造シ又ハ販賣シタル者
四 人家稠密ノ場所ニ於テ濫リニ烟火其他火器ヲ玩ヒタル者
五 蒸氣器械其他烟筒火竈ヲ建造修理シ及ヒ掃除スル規則ニ違背シタル者
六 官署ノ督促ヲ受ケテ崩壊セントスル家屋牆壁ノ修理ヲ爲ササル者
七 官許ヲ得スシテ死屍ヲ解剖シタル者
八 自己ノ所有地内ニ死屍アルコトヲ知テ官署ニ申告セス又ハ他所ニ移シタル者
九 人ヲ毆打シテ創傷疾病ニ至ラサル者
十 密ニ賣淫ヲ爲シ又ハ其媒合容止ヲ爲シタル者
十一 人ノ住居セサル家屋内ニ潜伏シタル者
十二 定リタル住居ナク平常營生ノ産業ナクシテ諸方ニ徘徊スル者
十三 官許ノ墓地外ニ於テ私ニ埋葬シタル者
十四 違警罪ノ犯人ヲ曲庇スル爲メ僞證シタル者但被告人僞證ノ爲メ刑ヲ免カレタル時ハ第二百十九條ノ例ニ從フ
第４２６条 左ノ諸件ヲ犯シタル者ハ二日以上五日以下ノ拘留ニ處シ又ハ五十錢以上一圓五十錢以下ノ科料ニ處ス
一 人家ノ近傍又ハ山林田野ニ於テ濫リニ火ヲ焚ク者
二 水火其他ノ變ニ際シ官吏ヨリ防禦ス可キノ求メヲ受ケ傍觀シテ之ヲ肯セサル者
三 不熟ノ菓物又ハ腐敗シタル飮食物ヲ販賣シタル者
四 健康ヲ保護スル爲メ設ケタル規則又ハ傳染病豫防規則ニ違背シタル者
五 人ノ通行ス可キ場所ニアル危險ノ井溝其他凹所ニ蓋又ハ防圍ヲ爲ササル者
六 路上ニ於テ犬其他ノ獸類ヲ嗾シ又ハ驚逸セシメタル者
七 發狂人ノ看守ヲ怠リ路上ニ徘徊セシメタル者
八 狂犬猛獸等ノ繋鎖ヲ怠リ路上ニ放チタル者
九 變死人ノ檢視ヲ受ケスシテ埋葬シタル者
十 墓碑及ヒ路上ノ神佛ヲ毀損シ又ハ汚涜シタル者
十一 神祠佛堂其他公ノ建造物ヲ汚損シタル者
十二 公然人ヲ罵詈嘲弄シタル者但訴ヲ待テ其罪ヲ論ス
第４２７条 左ノ諸件ヲ犯シタル者ハ一日以上三日以下ノ拘留ニ處シ又ハ二十錢以上一圓二十五錢以下ノ科料ニ處ス
一 濫リニ車馬ヲ疾驅シテ行人ノ妨害ヲ爲シタル者
二 制止ヲ肯セスシテ人ノ群集シタル場所ニ車馬ヲ牽キタル者
三 夜中燈火ナクシテ車馬ヲ疾驅スル者
四 木石等ヲ道路ニ堆積シテ防圍ヲ設ケス又ハ標識ノ點燈ヲ怠リタル者
五 瓦礫ヲ道路家屋園囿ニ投擲シタル者
六 禽獸ノ死屍ヲ道路ニ棄擲シ又ハ取除カサル者
七 汚穢物ヲ道路家屋園囿ニ投擲シタル者
八 警察ノ規則ニ違背シテ工商ノ業ヲ爲シタル者
九 醫師隱婆事故ナクシテ急病人ノ招キニ應セサル者
十 死亡ノ申告ヲ爲サスシテ埋葬シタル者
十一 流言浮説ヲ爲シテ人ヲ誑惑シタル者
十二 妄ニ吉凶禍福ヲ説キ又ハ祈祷符咒等ヲ爲シ人ヲ惑ハシテ利ヲ圖ル者
十三 私有地外ヘ濫リニ家屋牆壁ヲ設ケ又ハ軒楹ヲ出シタル者
十四 官許ヲ得スシテ路傍又ハ河岸ニ床店等ヲ開キタル者
十五 路上ノ植木市街ノ常燈及ヒ厠場等ヲ毀損シタル者
十六 道路橋梁其他ノ場所ニ榜示シタル通行禁止及ヒ指道標ノ類ヲ毀棄汚損シタル者
第４２８条 左ノ諸件ヲ犯シタル者ハ一日ノ拘留ニ處シ又ハ十錢以上一圓以下ノ科料ニ處ス
一 官署ヨリ價額ヲ定メタル物品ヲ定價以上ニ販賣シタル者
二 渡船橋梁其他ノ場所ニ於テ定價以上ノ通行錢ヲ取リ又ハ故ナク通行ヲ妨ケタル者
三 渡船橋梁其他通行錢ヲ拂フ可キ場所ニ於テ其定價ヲ出サスシテ通行シタル者
四 路上ニ於テ賭博ニ類スル商業ヲ爲シタル者
五 官許ヲ得スシテ劇場其他觀物場ヲ開キ及ヒ其規則ニ違背シタル者
六 溝渠下水ヲ毀損シ又ハ官署ノ督促ヲ受ケテ溝渠下水ヲ浚ハサル者
七 制止ヲ肯セスシテ路傍ニ食物其他ノ商品ヲ羅列シタル者
八 官許ヲ得スシテ獸類ヲ官有地ニ放チ又ハ牧畜シタル者
九 身體ニ刺文ヲ爲シ及ヒ之ヲ業トスル者
十 他人ノ繋キタル牛馬其他ノ獸類ヲ解放シタル者
十一 他人ノ繋キタル舟筏ヲ解放シタル者
第４２９条 左ノ諸件ヲ犯シタル者ハ五錢以上五十錢以下ノ科料ニ處ス
一 橋梁又ハ堤防ノ害ト爲ル可キ場所ニ舟筏ヲ繋キタル者
二 牛馬諸車其他物件ヲ道路ニ横タヘ又ハ木石薪炭等ヲ堆積シテ行人ノ妨害ヲ爲シタル者
三 車馬ヲ竝ヘ牽テ行人ノ妨害ヲ爲シタル者
四 水路ニ於テ舟ヲ竝ヘ通船ノ妨害ヲ爲シタル者
五 氷雪塵芥等ヲ路上ニ投棄シタル者
六 官署ノ督促ヲ受ケテ道路ノ掃除ヲナササル者
七 制止ヲ肯セスシテ路上ニ遊戯ヲ爲シ行人ノ妨害ヲ爲シタル者
八 牛馬ヲ牽キ又ハ繋クコトヲ忽カセニシテ行人ノ妨害ヲ爲シタル者
九 出入ヲ禁止シタル場所ニ濫リニ出入シタル者
十 通行禁止ノ榜示ヲ犯シテ通行シタル者
十一 道路ニ於テ放歌高聲ヲ發シテ制止ヲ肯セサル者
十二 酩酊シテ路上ニ喧噪シ又ハ醉臥シタル者
十三 路上ノ常燈ヲ消シタル者
十四 人家ノ牆壁ニ貼紙及ヒ樂書シタル者
十五 邸宅ノ番號標札招牌又ハ貸家賣家ノ貼紙其他報告ノ榜標等ヲ毀損シタル者
十六 他人ノ田野園囿ニ於テ菜菓ヲ採食シ又ハ花卉ヲ採折シタル者
十七 公園ノ規則ヲ犯シタル者
十八 通路ナキ他人ノ田圃ヲ通行シ又ハ牛馬ヲ牽入レタル者
第４３０条 前數條ニ記載スルノ外各地方ノ便宜ニヨリ定ムル所ノ違警罪ヲ犯シタル者ハ其罰則ニ從テ處斷ス
脚注
[編集]- ↑ 法令全書において、本条以下では、９条以下と異なり、「拘」の旁は「勾」となっている。
- ↑ 「瘖」（JIS外）は「やまいだれ」に「音」。また「唖」の活字は「啞」（JIS外）。
- ↑ 「姉」の活字は「姊」（JIS外）。
- ↑ 「顛」の活字は「顚」（JIS外）。
- ↑ 「礮」（JIS外）は「砲」の正字、「石へん」に「駮」。
- ↑ 「涜」の活字は「瀆」（JIS外）。
- ↑ 「誆」（JIS外）は「ごんべん」に「匡」。
